(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るハイブリッド建設機械の制御装置について説明する。なお、以下の実施形態では、ハイブリッド建設機械がパワーショベルである場合について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態のハイブリッド建設機械の制御システムの説明図である。
【0014】
ハイブリッド建設機械には、原動機としてのエンジン73で駆動する可変容量型の第1、2メインポンプ71、72が設けられる。第1、2メインポンプ71、72は同軸回転する。エンジン73には、エンジン73の余力を利用して発電機能を発揮するジェネレータ1が設けられる。また、エンジン73には、エンジン73の回転数を検出する回転数センサ74が設けられる。
【0015】
第1メインポンプ71から吐出される作動油は第1回路系統75に供給される。第1回路系統75は、旋回モータ76を制御する操作弁2と、アームシリンダ(図示せず)を制御する操作弁3と、後述する操作弁16と連動してブームシリンダ77を制御するブーム2速用の操作弁4と、予備用アタッチメント(図示せず)を制御する操作弁5と、左走行用の第1走行用モータ(図示せず)を制御する操作弁6とを有する。各操作弁2〜6は、第1メインポンプ71から各アクチュエータへ導かれる吐出油の流量を制御して、各アクチュエータの動作を制御する。
【0016】
各操作弁2〜6と第1メインポンプ71とは、中立流路7及び中立流路7と並列なパラレル流路8を通じて接続されている。中立流路7における第1走行モータ用の操作弁6の下流側には、パイロット圧を生成するための絞り9が設けられる。絞り9は、通過する流量が多ければ高いパイロット圧を、通過する流量が少なければ低いパイロット圧を、上流側に生成する。
【0017】
中立流路7は、操作弁2〜6の全てが中立位置又は中立位置近傍にあるときには、第1メインポンプ71から吐出された作動油の全部又は一部を、絞り9を介してタンク94に導く。このとき、絞り9を通過する流量はストローク時と比較して多くなるため、高いパイロット圧が生成される。
【0018】
一方、操作弁2〜6がフルストロークの状態に切り換えられると、中立流路7が閉ざされて流体の流通がなくなる。この場合には、絞り9を通過する流量がほとんどなくなり、パイロット圧がゼロとなる。ただし、操作弁2〜6の操作量によっては、第1メインポンプ71から吐出された作動油の一部がアクチュエータに導かれ、残りが中立流路7からタンク94に導かれるので、絞り9は、中立流路7の作動油の流量に応じたパイロット圧を生成する。つまり、絞り9は、操作弁2〜6の操作量に応じたパイロット圧を生成する。
【0019】
中立流路7における最下流の操作弁6と絞り9との間には、中立流路切換電磁弁10が設けられる。中立流路切換電磁弁10は、そのソレノイドがコントローラ90に接続されている。中立流路切換電磁弁10は、ソレノイドが非励磁のときにはスプリングのばね力の作用で図示の全開位置に設定され、ソレノイドが励磁のときにはスプリングのばね力に抗して絞り位置に設定される。中立流路切換電磁弁10が絞り位置に切り換わったときの絞り開度は、絞り9の開度よりも小さく設定されている。
【0020】
中立流路7における操作弁6と中立流路切換電磁弁10との間にはパイロット流路11が接続される。パイロット流路11には、絞り9の上流側に発生する圧力がパイロット圧として導かれる。パイロット流路11は、第1メインポンプ71の傾転角を制御するレギュレータ12に接続される。レギュレータ12は、パイロット流路11のパイロット圧と逆比例して第1メインポンプ71の傾転角を制御して、第1メインポンプ71の1回転当たりの押しのけ容積を制御する。すなわち、パイロット圧に応じて、ポンプ71の吐出量が可変する。
【0021】
パイロット流路11には、減圧弁80とパイロット流路切換電磁弁81とが並列に設けられる。パイロット流路切換電磁弁81は、減圧弁80を迂回するバイパス流路82に設けられる。パイロット流路切換電磁弁81は、そのソレノイドがコントローラ90に接続されている。ソレノイドが非励磁のときに図示の連通位置に設定され、中立流路7からパイロット流路11に至る作動油は減圧弁80を迂回する。一方、ソレノイドが励磁したときに遮断位置に設定され、中立流路7は減圧弁80のみを通じてパイロット流路11と連通する。
【0022】
パイロット流路11には、パイロット流路11の圧力を検出する第1圧力センサ13が設けられる。第1圧力センサ13にて検出された圧力信号はコントローラ90に出力される。パイロット流路11のパイロット圧は、操作弁2〜6の操作量に応じて変化するため、第1圧力センサ13が検出する圧力信号は、第1回路系統75の要求流量に応じて変化する。
【0023】
第2メインポンプ72は第2回路系統78に接続している。第2回路系統78は、その上流側から順に、右走行用の第2走行用モータ(図示せず)を制御する操作弁14と、バケットシリンダ(図示せず)を制御する操作弁15と、ブームシリンダ77を制御する操作弁16と、アームシリンダ(図示せず)を制御するアーム2速用の操作弁17とを有する。操作弁16には、操作方向及び操作量を検出するセンサ(図示せず)が設けられ、このセンサの検出信号はコントローラ90に出力される。各操作弁14〜17は、第2メインポンプ72から各アクチュエータへ導かれる吐出油の流量を制御して、各アクチュエータの動作を制御する。
【0024】
各操作弁14〜17と第2メインポンプ72とは、中立流路18及び中立流路18と並列なパラレル流路19を通じて接続されている。中立流路18における操作弁17の下流側には、パイロット圧を生成するための絞り20が設けられる。絞り20は、第1メインポンプ71側の絞り9と同じ機能を有する。
【0025】
中立流路18における最下流の操作弁17と絞り20との間には、中立流路切換電磁弁21が設けられる。中立流路切換電磁弁21は、第1メインポンプ71側の中立流路切換電磁弁10と同じ構成である。
【0026】
中立流路18における操作弁17と中立流路切換電磁弁21との間にはパイロット流路22が接続される。パイロット流路22には、絞り20の上流側に発生する圧力がパイロット圧として導かれる。パイロット流路22は、第2メインポンプ72の傾転角を制御するレギュレータ23に接続される。
【0027】
パイロット流路22には、減圧弁84とパイロット流路切換電磁弁85とが並列に設けられる。パイロット流路切換電磁弁85は、減圧弁84を迂回するバイパス流路86に設けられる。また、パイロット流路22にはパイロット流路22の圧力を検出する第2圧力センサ24が設けられる。第2圧力センサ24にて検出された圧力信号はコントローラ90に出力される。
【0028】
レギュレータ23、減圧弁84、及びパイロット流路切換電磁弁85は、第1メインポンプ71側のレギュレータ12、減圧弁80、及びパイロット流路切換電磁弁81と同じ構成であり、それらの作動も同じであるため、説明を省略する。
【0029】
第1、2メインポンプ71、72にはそれぞれ流路55、56が接続され、流路55、56にはそれぞれ電磁弁58、59が設けられる。流路55、56は、第1、2回路系統75、78の上流側で第1、2メインポンプ71、72に接続されている。電磁弁58、59は、ソレノイドがコントローラ90に接続されている。電磁弁58、59は、ソレノイドが非励磁のときに図示の閉位置に設定され、ソレノイドが励磁したときに開位置に設定される。
【0030】
電磁弁58、59は、合流通路57及びチェック弁60を介して油圧モータ88に接続される。油圧モータ88は、モータジェネレータ(MG)91と連係して回転する。MG91が発電した電力はインバータ92を介して蓄電ユニット26に充電される。なお、油圧モータ88とMG91とは、直接連結してもよいし、減速機を介して連結してもよい。
【0031】
第1、2メインポンプ71、72から吐出された作動油は、電磁弁58、59を経由して油圧モータ88に供給され、油圧モータ88を駆動する。油圧モータ88は、その駆動力によってMG91を回転して発電する。MG91で発電された電力は、インバータ92を介して蓄電ユニット26に充電される。これにより、第1、2メインポンプ71、72が吐出するスタンバイ流量によって回生が行われる。
【0032】
油圧モータ88を回転させて蓄電ユニット26を充電するには、オペレータがコントローラ90にスタンバイ回生指令信号を手動操作して入力することによって行われる。
【0033】
なお、バッテリチャージャー25は、通常の家庭用の電源27に接続した場合にも、蓄電ユニット26に電力を充電できるようにしている。このように、バッテリチャージャー25は、独立電源にも接続可能である。
【0034】
このように、第1、2メインポンプ71、72から吐出された作動油によって油圧モータ88を駆動させてMG91により発電した電力を蓄電ユニット26に充電することができる。また、蓄電ユニット26に充電した電力は、後述するサブポンプ89のアシスト力に利用することもできる。
【0035】
旋回モータ用の操作弁2のアクチュエータポートには、旋回モータ76に連通する通路28、29が接続されると共に、通路28、29のそれぞれにはブレーキ弁30、31が接続される。操作弁2を中立位置に保っているときには、アクチュエータポートが閉じられて旋回モータ76は停止状態を維持する。
【0036】
旋回モータ76の停止状態から操作弁2をいずれか一方の方向に切り換えると、一方の通路28が第1メインポンプ71に接続され、他方の通路29がタンク94に連通する。これにより、通路28から作動油が供給されて旋回モータ76が回転すると共に、旋回モータ76からの戻り油が通路29を通じてタンク94に戻される。操作弁2を上記とは反対方向に切り換えると、通路29が第1メインポンプ71に接続され、通路28がタンクに連通し、旋回モータ76は逆転する。
【0037】
また、操作弁16を中立位置から一方の方向に切り換えると、第2メインポンプ72から吐出された作動油は、通路32を通じてブームシリンダ77のピストン側室33に供給されると共に、ロッド側室34からの戻り油は通路35から、操作弁17、中立流路切換電磁弁21を通じてタンク94に戻され、ブームシリンダ77は伸長する。
【0038】
操作弁16を上記とは反対方向に切り換えると、第2メインポンプ72から吐出された作動油は、通路35を通じてブームシリンダ77のロッド側室34に供給されると共に、ピストン側室33からの戻り油は通路32から、操作弁17、中立流路切換電磁弁21を通じてしてタンク94に戻され、ブームシリンダ77は収縮する。ブーム2速用の操作弁4は、操作弁16と連動して切り換える。ブームシリンダ77のピストン側室33と操作弁16とを接続する通路32には、コントローラ90によって開度が制御される比例電磁弁36が設けられる。比例電磁弁36はノーマル状態で全開位置を保つ。
【0039】
次に、第1、2メインポンプ71、72の出力をアシストする可変容量型のサブポンプ89について説明する。
【0040】
サブポンプ89は、MG91を電動モータとして使用したときの駆動力で回転し、MG91の駆動力によって、油圧モータ88も同軸回転する。MG91にはインバータ92を介して蓄電ユニット26が接続され、インバータ92に接続されたコントローラ90にてMG91の回転数等が制御される。また、サブポンプ89及び油圧モータ88の傾転角は傾角制御器37、38にて制御され、傾角制御器37、38はコントローラ90の出力信号にて制御される。
【0041】
サブポンプ89には吐出通路39が接続される。吐出通路39は、第1メインポンプ71の吐出側に合流する第1アシスト流路40と、第2メインポンプ72の吐出側に合流する第2アシスト流路41とに分岐して形成される。第1、2アシスト流路40、41のそれぞれには、コントローラ90の出力信号にて開度が制御される第1、2電磁比例絞り弁42、43が設けられる。また、第1、2アシスト流路40、41のそれぞれには、第1、2電磁比例絞り弁42、43の下流に、サブポンプ89から第1、2メインポンプ71、72への作動油の流れのみを許容するチェック弁44、45が設けられる。
【0042】
油圧モータ88には接続用通路46が接続される。接続用通路46は、導入通路47及びチェック弁48、49を介して、旋回モータ76に接続された通路28、29に接続されている。導入通路47には、コントローラ90にて開閉制御される電磁切換弁50が設けられる。また、電磁切換弁50とチェック弁48、49との間には、旋回モータ76の旋回時の圧力あるいはブレーキ時の圧力を検出する圧力センサ51が設けられ、圧力センサ51の圧力信号はコントローラ90に出力される。
【0043】
導入通路47における電磁切換弁50の下流には、導入通路47の圧力が所定圧力に達した場合に接続用通路46へと作動油を導く安全弁52が設けられる。安全弁52は、例えば電磁切換弁50など、導入通路47系統に故障が生じたときに、通路28、29の圧力を維持して旋回モータ76がいわゆる逸走するのを防止する。また、接続用通路46は、チェック弁61を介してタンク94に接続する。
【0044】
ブームシリンダ77と比例電磁弁36との間には、接続用通路46に連通する導入通路53が設けられる。導入通路53にはコントローラ90にて開閉が制御される電磁開閉弁54が設けられる。
【0045】
次に、サブポンプ89のアシスト力を利用する場合について説明する。サブポンプ89のアシスト流量は予め設定され、コントローラ90は、サブポンプ89の傾転角、油圧モータ88の傾転角、及びMG91の回転数等をどのように制御したら最も効率的かを判断してそれぞれの制御を実行する。
【0046】
第1回路系統75あるいは第2回路系統78のいずれかの操作弁2〜6、14〜17が切り換えられたとき、中立流路切換電磁弁10、21は絞り位置から開位置に切り換えられる。これにより、パイロット流路11、22のパイロット圧が低くなり、その低くなったパイロット圧を第1、2圧力センサ13、24が検出して、パイロット圧信号をコントローラ90に出力する。
【0047】
コントローラ90は、第1、2圧力センサ13、24から出力されたパイロット圧信号に基づいて、電磁弁58、59を閉位置に切り換える。第1、2メインポンプ71、72は低くなったパイロット圧に伴って、レギュレータ12、23によって1回転当たりの押しのけ容積が増大し、電磁弁58、59が閉位置に切り替わったことで第1、2メインポンプ71、72の全吐出量が第1、2回路系統75、78に接続されたアクチュエータに供給される。
【0048】
第1、2メインポンプ71、72の1回転当たりの押しのけ容積を増大するときには、コントローラ90は、MG91を回転した状態に保つ。MG91の駆動源は蓄電ユニット26に蓄電された電力であり、この電力の一部は、第1、2メインポンプ71、72から吐出された作動油を利用して蓄電したものである。
【0049】
MG91の駆動力でサブポンプ89が回転すれば、サブポンプ89からアシスト流量が吐出される。コントローラ90は、第1、2圧力センサ13、24からの圧力信号に応じて、第1、2電磁比例絞り弁42、43の開度を制御し、サブポンプ89の吐出量を案分して第1、2回路系統75、78に供給する。
【0050】
まず、第1回路系統75に接続された旋回モータ76を駆動する場合を説明する。
【0051】
コントローラ90が、操作弁2を一方の方向に切り換えると、一方の通路28が第1メインポンプ71に連通し、他方の通路29がタンクに連通して、旋回モータ76が回転する。
【0052】
通路28、29の圧力は、旋回動作あるいはブレーキ動作に必要な圧力に保たれていなければ、旋回モータ76を旋回させたり、ブレーキをかけたりできなくなる。そこで、通路28、29の圧力を旋回圧あるいはブレーキ圧に保つために、コントローラ90は油圧モータ88の傾転角を制御しながら、旋回モータ76の負荷を制御する。
【0053】
導入通路47及び接続用通路46を通じて油圧モータ88に作動油が供給され、油圧モータ88が回転力を得れば、その回転力は同軸回転するMG91に作用する。油圧モータ88の回転力は、MG91に対するアシスト力として作用する。したがって、油圧モータ88の回転力の分だけ、MG91の消費電力を少なくすることができる。また、油圧モータ88の回転力でサブポンプ89の回転力をアシストすることもできる。
【0054】
なお、接続用通路46系統の圧力が何らかの原因で、旋回圧あるいはブレーキ圧よりも低くなったときには、コントローラ90は、圧力センサ51の圧力信号に基づいて電磁切換弁50を閉じて旋回モータ76に影響を及ぼさないようにする。また、接続用通路46に圧油の漏れが生じたときには、安全弁52が機能して通路28、29の圧力が必要以上に低くならないようにして、旋回モータ76の逸走を防止する。
【0055】
次に、ブームシリンダ77を作動する場合を説明する。
【0056】
ブームシリンダ77を作動させるために操作弁16を切り換えると、操作弁16に設けられたセンサ(図示せず)によって、操作弁16の操作方向と操作量が検出され、その操作信号がコントローラ90に出力される。
【0057】
上記センサの操作信号に応じて、コントローラ90は、オペレータがブームシリンダ77を上昇させようとしているのか、あるいは下降させようとしているのかを判定する。コントローラ90は、ブームシリンダ77の上昇を判定すれば、比例電磁弁36をノーマル状態である全開位置に保つ。このとき、コントローラ90は、電磁開閉弁54を閉位置に保つと共に、MG91の回転数やサブポンプ89の傾転角を制御する。
【0058】
一方、コントローラ90は、ブームシリンダ77の下降を判定すれば、操作弁16の操作量に応じてオペレータが求めているブームシリンダ77の下降速度を演算すると共に、比例電磁弁36を閉じて電磁開閉弁54を開位置に切り換える。これにより、ブームシリンダ77の戻り油の全量が油圧モータ88に供給される。
【0059】
しかし、油圧モータ88で消費する流量が、オペレータが求めた下降速度を維持するために必要な流量よりも少なければ、ブームシリンダ77はオペレータが求めた下降速度を維持できない。このようなときには、コントローラ90は、操作弁16の操作量、油圧モータ88の傾転角、及びMG91の回転数等を基にして、油圧モータ88が消費する流量以上の流量をタンク94に戻すように比例電磁弁36の開度を制御し、オペレータが求めるブームシリンダ77の下降速度を維持する。
【0060】
油圧モータ88に圧油が供給されると、油圧モータ88が回転し、その回転力は同軸回転するMG91に作用する。油圧モータ88の回転力は、MG91に対するアシスト力として作用する。したがって、油圧モータ88の回転力の分だけ、MG91の消費電力を少なくすることができる。一方、MG91に対して電力を供給せず、油圧モータ88の回転力だけでサブポンプ89を回転させることもできる。
【0061】
次に、旋回モータ76の旋回作動とブームシリンダ77の下降作動とを同時に行う場合を説明する。
【0062】
旋回モータ76を旋回させながらブームシリンダ77を下降させるときには、旋回モータ76からの圧油と、ブームシリンダ77からの戻り油とが、接続用通路46で合流して油圧モータ88に供給される。
【0063】
このとき、導入通路47の圧力が上昇し、旋回モータ76の旋回圧あるいはブレーキ圧よりも高くなったとしても、チェック弁48、49があるため、旋回モータ76には影響を及ぼさない。また、接続用通路46側の圧力が旋回圧あるいはブレーキ圧よりも低くなれば、コントローラ90は、圧力センサ51の圧力信号に基づいて電磁切換弁50を閉じる。
【0064】
したがって、旋回モータ76の旋回動作とブームシリンダ77の下降動作とを同時に行うときには、旋回圧あるいはブレーキ圧にかかわりなく、ブームシリンダ77の必要下降速度を基準にして油圧モータ88の傾転角を決めればよい。いずれにしても、油圧モータ88の出力によってサブポンプ89の出力をアシストできると共に、サブポンプ89から吐出された作動油を第1、2電磁比例絞り弁42、43にて案分して、第1、2回路系統75、78に供給することができる。
【0065】
油圧モータ88を駆動源としてMG91を発電機として使用するときには、サブポンプ89は傾転角がゼロに設定されほぼ無負荷状態となる。油圧モータ88には、MG91を回転させるために必要な出力を維持しておけば、油圧モータ88の出力を利用して、MG91を発電機として機能させることができる。また、エンジン73の出力を利用してジェネレータ1にて発電させることができる。
【0066】
本システムには、チェック弁44、45が設けられると共に、電磁切換弁50、電磁開閉弁54、及び電磁弁58、59が設けられるため、例えば、油圧モータ88及びサブポンプ89系統が故障した場合でも、第1、2メインポンプ71、72系統と、油圧モータ88及びサブポンプ89系統とを油圧的に切り離すことができる。
【0067】
特に、電磁切換弁50、電磁開閉弁54、及び電磁弁58、59は、ノーマル状態にあるときにスプリングのバネ力で閉位置を保つと共に、上記比例電磁弁36もノーマル状態にあるときに全開位置を保つため、電気系統が故障したとしても、第1、2メインポンプ71、72系統と、油圧モータ88及びサブポンプ89系統とを油圧的に切り離すことができる。
【0068】
次に、以上のように構成されたハイブリッド建設機械の制御装置において、蓄電装置の一例である蓄電ユニット26について説明する。
【0069】
図2は、本発明の実施形態の蓄電ユニット26の構成回路図である。
【0070】
蓄電ユニット26は、バッテリ回路100を備え、大容量の第1バッテリ101と、この第1バッテリ101の電力の遮断を制御する蓄電ユニット制御装置106とが、バッテリ回路100に接続されて構成されている。
【0071】
バッテリ回路100には、主スイッチ103、コンデンサ104、放電回路105、端子110が接続されている。
【0072】
バッテリ回路100の正極側には主スイッチ103が接続されている。主スイッチよりも負荷(インバータ92、バッテリチャージャ25等)側には、放電回路105が、バッテリ回路100の正極側と負極側とに渡ってに接続される。また、放電回路105よりも負荷側には、コンデンサ104が、正極側と負極側とに渡って接続される。
【0073】
主スイッチ103は、蓄電ユニット制御装置106からの信号に基づいて開閉が制御される。主スイッチ103は、例えば電磁ソレノイドにより接点を開閉するリレー等によって構成されている。
【0074】
放電回路105は、直列に接続された抵抗115と副スイッチ116とを有する。バッテリ回路100は、端子110を介して負荷に電気的に接続されている。これにより、バッテリ回路100は、第1バッテリ101の電力を負荷側に供給すると共に、負荷側が発電した電力によって第1バッテリ101を充電する。
【0075】
蓄電ユニット制御装置106は、主スイッチ103及び副スイッチ116の断続状態を制御して、第1バッテリ101を負荷に導通させて電力の供給及び充電を行うか、第1バッテリ101と負荷とを遮断するか、を制御する。なお、蓄電ユニット制御装置106は、小容量の第2バッテリ102に電力によって動作する。
【0076】
コンデンサ104は、第1バッテリ101に入出力される電力を平滑化することによって、断続時の突入電流や、第1バッテリ101の電圧変動を抑制する。
【0077】
第1バッテリ101は、二次電池セルを複数接続して大容量の電力を蓄積できる蓄電器である。二次電池セルは、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池等から構成される。また、第2バッテリ102は、例えば、第1バッテリと同様に二次電池によって構成される。また、第1バッテリ101及び第2バッテリ102は、バッテリではなく、電気二重層キャパシタによって構成されていてもよい。
【0078】
放電回路105は、コンデンサ104に蓄積された電荷を放電する機能を有する。具体的には、蓄電ユニット制御装置106は、主スイッチ103を遮断して第1バッテリ101の電力を遮断するときに、副スイッチ116を投入してコンデンサ104と抵抗115とで閉回路を形成し、コンデンサ104に蓄積された電荷を抵抗115に放電する。この動作によって、第1バッテリ101の電力供給の遮断後に、コンデンサ104の電荷が負荷側へと出力されることを防止する。なお、コンデンサ104の電荷が十分に放電された後は、副スイッチ116を遮断する。
【0079】
バッテリ回路100には電圧計測部107が設けられている。蓄電ユニット制御装置106は、電圧計測部107によってバッテリ回路100の主スイッチ103よりも負荷側の電圧を計測する。
【0080】
次に、蓄電ユニット制御装置106の動作を説明する。
【0081】
前述のように、蓄電ユニット26は、第1、2メインポンプ71、72が吐出するスタンバイ流量によって回生された電力によって充電される。また、充電された電力を用いてMG91を駆動して、サブポンプ89が発生する油圧によって各動作をアシストすることができる。
【0082】
ここで、オペレータが、キーオフ等を行ってハイブリッド建設機械の運転を停止した場合は、コントローラ90は、油圧系統の制御の終了処理を完了した後、蓄電ユニット制御装置106に、蓄電ユニット26の電力を遮断する指令を行う。
【0083】
蓄電ユニット制御装置106は、コントローラ90からの指令を受けて、蓄電ユニット26を遮断する動作を実行する。
【0084】
具体的には、蓄電ユニット制御装置106は、前述のように、主スイッチ103を遮断した後、副スイッチ116を投入してコンデンサ104と抵抗115とで閉回路を形成することによって、コンデンサ104に蓄積された電荷を抵抗115に放電する。
【0085】
このとき、蓄電ユニット制御装置106が主スイッチ103を遮断する信号を主スイッチ103に出力したにもかかわらず、主スイッチ103が遮断できない場合を考える。主スイッチ103が遮断できない場合とは、例えば、主スイッチ103の接点が溶着した場合や、ソレノイドが正常に動作しなかった場合である。
【0086】
主スイッチ103を遮断する信号を出力したにもかかわらず主スイッチ103が遮断しない状態で、コンデンサ104の電荷を放電するために蓄電ユニット制御装置106が副スイッチ116を投入した場合は、第1バッテリ101の電力が抵抗115に供給されてしまう。この状態のままコンデンサ104の電荷を放電する場合と同じ時間放置した場合は、第1バッテリ101の電力が消費されて電力の無駄となるばかりか、第1バッテリ101の寿命が低下したり、抵抗115が必要以上に加熱してしまう可能性がある。
【0087】
これに対して、本発明の実施形態では、主スイッチ103の異常により第1バッテリ101の電力が抵抗115に供給されることを防ぐために、次のような制御を行う。
【0088】
図3は、本発明の実施形態の蓄電ユニット制御装置106が実行する、蓄電ユニット26のシャットダウン処理のフローチャートである。
【0089】
図3に示すフローチャートは、オペレータによるキーオフ等によって建設機械の運転を終了したときなど、コントローラ90が、蓄電ユニット26の電力を遮断する指令を行うことによって開始する。なお、本フローチャートの開始時は、第1バッテリ101の電力を負荷側に供給している状態であって、主スイッチ103は投入状態であり、副スイッチ115は遮断状態である。
【0090】
蓄電ユニット制御装置106は、コントローラ90から蓄電ユニット26の電力を遮断する指令を受けた場合は、まず、主スイッチ103を遮断する(ステップS10)。
【0091】
次に、蓄電ユニット制御装置106は、副スイッチ116を投入する(ステップS20)。これにより、コンデンサ104と抵抗115とで閉回路が形成されて、コンデンサ104に蓄積された電荷が抵抗115に放電される。
【0092】
副スイッチ116を投入した後、蓄電ユニット制御装置106は、所定時間が満了するまで待機する(ステップS30)。このステップS30における所定時間は、抵抗115によってコンデンサ104に蓄積された電荷が十分に放電されるまでに要する時間に設定することが好適である。
【0093】
具体的には、所定時間は、第1バッテリ101の定格電圧、コンデンサ104の静電容量、抵抗115の抵抗値によって予め設定されうるものである。一例として、コンデンサ104の静電容量と抵抗115の抵抗値との積で求まる時定数に対応する時間に設定する。
【0094】
ステップS30において、所定時間が満了した場合は、ステップS40に移行し、蓄電ユニット制御装置106は、電圧計測部107によって主スイッチ103よりも負荷側の電圧を計測して、計測された電圧と、予めコンデンサ104の容量等に基づいて設定された所定電圧とを比較する。
【0095】
比較の結果、計測された電圧が所定電圧以下であると判定した場合は、ステップS50に移行する。計測された電圧が所定電圧を上回っていると判定した場合は、ステップS70に移行する。
【0096】
ステップS40の処理において、計測された電圧が所定電圧以下である場合は、コンデンサ104に蓄積された電荷が十分に放電されたと判断して、蓄電ユニット制御装置106は、副スイッチ116を遮断する(ステップS50)。その後、蓄電ユニット制御装置106は処理を終了する(ステップS60)。
【0097】
一方、ステップS40の処理において、計測された電圧が所定電圧を上回っている場合は、主スイッチ103よりも負荷側の電圧が十分に下がっていない状態である。この状態は、例えば、コンデンサ104に蓄積された電荷が十分に放電されていない、又は、主スイッチ103が遮断されていないことが想定される。そこで、蓄電ユニット制御装置106は、コントローラ90に蓄電ユニット26に異常が発生した旨の信号を出力すると共に(ステップS70)、副スイッチ116を遮断する(ステップS80)。その後、蓄電ユニット制御装置106は処理を終了する(ステップS60)。
【0098】
なお、ステップS40における所定電圧は、一例として、第1バッテリ101によって充電されたコンデンサ104が電荷を十分に放電して、バッテリ回路100から出力される電力が十分に安全となる電圧とする。または、コンデンサ104の電荷にかかわらず、主スイッチ103が遮断されなかったことを判定できるように、第1バッテリ101の出力電圧としてもよい。
【0099】
コントローラ90は、蓄電ユニット制御装置106から、蓄電ユニット26のエラーの報知を受信した場合は、オペレータに蓄電ユニット26に関するエラーの警報を発する。オペレータはこの警報を受けて、ハイブリッド建設機械をサービスセンターに持ち込む等の処置を行うことができる。
【0100】
以上のように構成した本発明の実施形態では、ハイブリッド建設機械に備えられる蓄電ユニット26において、コントローラ90からの指令等によって、第1バッテリ101への電力の入出力を遮断するときに、蓄電ユニット制御装置106は、主スイッチ103を遮断すると共に副スイッチ116を投入して、放電回路105によってコンデンサ104に蓄積された電荷を放電する。このとき、副スイッチ116を投入してから所定時間が経過した後に、電圧計測部107が検出した電圧が所定電圧以下とならない場合は、副スイッチ116を遮断して、放電回路105を遮断すると共に、コントローラ90に対してエラーを出力するように構成した。
【0101】
このように構成することによって、例えば、主スイッチ103の接点が溶着した場合や、ソレノイドが正常に動作せず、第1バッテリ101の電力が放電回路105に流れ、第1バッテリ101の電力が消費されることによる、電力の無駄や第1バッテリ101の寿命の低下、抵抗115の加熱を防止することができる。
【0102】
また、電圧計測部107は、主スイッチよりも下流側で第1バッテリ101の電圧を検出するので、コンデンサ104の電荷の放電状態と、主スイッチ103の断続状態とを検出することが可能になる。
【0103】
また、蓄電ユニット制御装置106は、コンデンサ104の静電容量と抵抗115の抵抗値との積で求まる時定数に対応する時間の経過後に、電圧計測部107が、コンデンサ104が電荷を十分に放電して、バッテリ回路100を遮断することができるために十分に安全な電圧となっているかを判定する。これにより、コンデンサ104の電荷が十分に放電されているか否か、主スイッチ103が正常に遮断されているか否か、を判定することができるので、第1バッテリ101への電力の入出力を遮断する指令を行った後に、出力端子から電圧が出力され続けることを防止することができ、正しく遮断されていない場合はエラーを通報する等の安全対策を行うことができる。
【0104】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。