特許第5719656号(P5719656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719656
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】エアクリーナ
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20150430BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   F02M35/10 301D
   F02M35/024 501A
   F02M35/024 521C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-71447(P2011-71447)
(22)【出願日】2011年3月29日
(65)【公開番号】特開2012-207540(P2012-207540A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2013年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】畑浦 潔
(72)【発明者】
【氏名】上山 満
(72)【発明者】
【氏名】石原 睦久
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−124741(JP,A)
【文献】 特開2005−264880(JP,A)
【文献】 特開平08−252417(JP,A)
【文献】 特開昭58−061411(JP,A)
【文献】 特開2000−110676(JP,A)
【文献】 特開2003−138994(JP,A)
【文献】 特開2010−229934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/00−35/16
G01F 1/56−1/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(1)内に筒状のフィルタエレメント(22)を収容し、フィルタエレメント(22)の周囲に未浄気室(3)を設け、フィルタエレメント(22)内に浄気室(6)を設け、ケーシング端壁(7)から外側に浄気出口管(8)を導出し、フィルタエレメント(22)の端部に浄気出口(10)を開口し、この浄気出口(10)の開口端面(11a)にシール材(12)を設け、シール材(12)を接当部(13)に接当させ、シール材(12)に浄気出口(10)の開口端面(11a)から内周面(11b)に沿って折り返された内側折り返し部(14)を設け、フィルタエレメント(22)の浄気出口(10)と浄気出口管(8)の浄気入口(15)とを連通させ、浄気出口管(8)にエアフローセンサ(9)を配置した、エアクリーナにおいて、
浄気出口管(8)の浄気入口(15)からシール材(12)の内側折り返し部(14)の内側に沿って浄気導入筒(16)を導出し、この浄気導入筒(16)の導出端(17)をシール材(12)の内側折り返し部(14)の内側折り返し端縁(26)よりも浄気室(6)側に大きく突出させ、
浄気導入筒(16)を浄気出口管(8)と一体成型した、ことを特徴とするエアクリーナ。
【請求項2】
請求項1に係るエアクリーナにおいて、
浄気導入筒(16)の浄気入口(30)からエアフローセンサ(9)の取付位置までの通路内径をシール材(12)の内側折り返し部(14)の内径よりも小さく絞った、ことを特徴とするエアクリーナ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に係るエアクリーナにおいて、
浄気導入筒(16)の導出端(17)をシール材(12)の外側折り返し部(29)の外側折り返し端縁(27)よりも浄気室(6)側に大きく突出させた、ことを特徴とするエアクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナに関し、詳しくは、シール材の内側折り返し端縁のバリによる乱流を無くし、エアフローセンサの計測確度を高めることができるエアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーシング内に筒状のフィルタエレメントを収容し、フィルタエレメントの周囲に未浄気室を設け、フィルタエレメント内に浄気室を設け、ケーシング端壁から外側に浄気出口管を導出し、フィルタエレメントの端部に浄気出口を開口し、この浄気出口の開口端面にシール材を設け、シール材を接当部に接当させ、シール材に浄気出口の開口端面から内周面に沿って折り返された内側折り返し部を設け、フィルタエレメントの浄気出口と浄気出口管の浄気入口とを連通させ、浄気出口管にエアフローセンサを配置したエアクリーナがある(例えば、特許文献1参照)。
この種のエアクリーナによれば、浄気出口管の下流側のダクト構造が相違しても、エアフローセンサの計測値に相違が生じにくく、エアクリーナを汎用的に使用することができる利点がある。
しかし、この種の従来技術では、シール材形成時に生じるシール材の内側折り返し端縁のバリにより浄気が撹乱され、エアフローセンサで計測する浄気に不測の乱流が生じることがあるが、シール材の内側折り返し端縁のバリによる乱流を無くす手段を備えていないため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−124741号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 エアフローセンサの計測確度が低くなる。
シール材の内側折り返し端縁のバリによる乱流の発生を無くす手段を備えていないため、乱流でエアフローセンサの計測が邪魔され、エアフローセンサの計測精度が低くなる。
【0005】
本発明の課題は、シール材の内側折り返し端縁のバリによる乱流の発生を無くし、エアフローセンサの計測確度を高めることができるエアクリーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1(A)(B)に例示するように、ケーシング(1)内に筒状のフィルタエレメント(22)を収容し、フィルタエレメント(22)の周囲に未浄気室(3)を設け、フィルタエレメント(22)内に浄気室(6)を設け、ケーシング端壁(7)から外側に浄気出口管(8)を導出し、フィルタエレメント(22)の端部に浄気出口(10)を開口し、この浄気出口(10)の開口端面(11a)にシール材(12)を設け、シール材(12)を接当部(13)に接当させ、シール材(12)に浄気出口(10)の開口端面(11a)から内周面(11b)に沿って折り返された内側折り返し部(14)を設け、フィルタエレメント(22)の浄気出口(10)と浄気出口管(8)の浄気入口(15)とを連通させ、浄気出口管(8)にエアフローセンサ(9)を配置した、エアクリーナにおいて、
図1(A)(B)に例示するように、浄気出口管(8)の浄気入口(15)からシール材(12)の内側折り返し部(14)の内側に沿って浄気導入筒(16)を導出し、この浄気導入筒(16)の導出端(17)をシール材(12)の内側折り返し部(14)の内側折り返し端縁(26)よりも浄気室(6)側に大きく突出させ、
浄気導入筒(16)を浄気出口管(8)と一体成型した、ことを特徴とするエアクリーナ。
【発明の効果】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 シール材の内側折り返し端縁のバリによる乱流の発生を無くし、エアフローセンサの計測確度を高めることができる。
図1(A)(B)に例示するように、浄気出口管(8)の浄気入口(15)からシール材(12)の内側折り返し部(14)の内側に沿って浄気導入筒(16)を導出し、この浄気導入筒(16)の導出端(17)をシール材(12)の内側折り返し部(14)の内側折り返し端縁(26)よりも浄気室(6)側に大きく突出させたので、シール材(12)の内側折り返し部(14)の内側折り返し端縁(26)が内側から浄気導入筒(16)で覆われ、シール材(12)の内側折り返し端縁(26)のバリ(28)による乱流の発生を無くし、エアフローセンサ(9)の計測確度を高めることができる。
《効果》 部品点数の減少を図ることができる。
図1(A)(B)に例示するように、浄気導入筒(16)を浄気出口管(8)と一体成型したので、専用の浄気導入筒(16)が不要になり、部品点数の減少を図ることができる。
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 乱流がエアフローセンサの計測に与える影響を軽減し、エアフローセンサの計測確度を高めることができる。
図1(A)(B)に例示するように、浄気導入筒(16)の浄気入口(30)からエアフローセンサ(9)の取付位置までの通路内径をシール材(12)の内側折り返し部(14)の内径よりも小さく絞ったので、浄気導入筒(16)の上流で乱流が生じた場合でも、浄気導入筒(16)の絞り作用で乱流を整流し、乱流がエアフローセンサ(9)の計測に与える影響を軽減し、エアフローセンサ(9)の計測確度を高めることができる。
【0009】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 シール材の外側折り返し部による乱流の発生を無くし、エアフローセンサの計測確度を高めることができる。エアフローセンサの計測確度をより高めることができる。
図1(A)(B)に例示するように、浄気導入筒(16)の導出端(17)をシール材(12)の外側折り返し部(29)の外側折り返し端縁(27)よりも浄気室(6)側に大きく突出させたので、シール材(12)の外側折り返し部(29)の外側折り返し端縁(27)が内側から浄気導入筒(16)で覆われ、シール材(12)の外側折り返し部(29)の周方向の肉厚不均一や、外側折り返し端縁(27)のバリ(28)による乱流の発生を無くし、エアフローセンサ(9)の計測確度を高めることができる。
【0010】
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るエアクリーナを説明する図で、図1(A)は縦断側面図、図1(B)は図1(A)のIB部拡大図である。
図2図2(A)は図1のIIA−IIA線断面図、図2(B)は図1のIIB−IIB線断面図、図2(C)は図1のIIC−IIC線断面図である。
図3】本発明の第1参考形態に係るエアクリーナを説明する図で、図3(A)は縦断側面図、図3(B)は図3(A)のIIIB部拡大図である。
図4図4(A)は図3のIVA−IVA線断面図、図4(B)は図3のIVB−IVB線断面図、図4(C)は図3のIVC−IVC線断面図である。
図5】本発明の第2参考形態に係るエアクリーナを説明する図で、図5(A)は縦断側面図、図5(B)は図5(A)のVB部拡大図である。
図6図6(A)は図5のVIA−VIA線断面図、図6(B)は図5のVIB−VIB線断面図、図6(C)は図5のVIC−VIC線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図2は本発明の実施形態に係るエアクリーナを説明する図、図3図4は本発明の第1参考形態に係るエアクリーナを説明する図、図5図6は本発明の第2参考形態に係るエアクリーナを説明する図で、実施形態及び各参考形態では、エンジンのエアクリーナについて説明する。
【0013】
実施形態では、図1(A)(B)に示すように、ケーシング(1)内に筒状のインナーフィルタエレメント(22)を収容し、インナーフィルタエレメント(22)の周囲に未浄気室(3)を設け、インナーフィルタエレメント(22)の中心部に浄気室(6)を設け、ケーシング端壁(7)から外側に浄気出口管(8)を導出し、インナーフィルタエレメント(22)の端部に浄気出口(10)を開口し、この浄気出口(10)の開口端面(11a)にシール材(12)を設け、シール材(12)を接当部(13)に接当させ、シール材(12)に浄気出口(10)の開口端面(11a)から内周面(11b)に沿って折り返された内側折り返し部(14)を設け、フィルタエレメント(22)の浄気出口(10)と浄気出口管(8)の浄気入口(15)とを連通させ、浄気出口管(8)にエアフローセンサ(9)を配置している。
【0014】
図2(A)(B)に示すように、ケーシング(1)は円筒形状である。
インナーフィルタエレメント(22)の外側にはインナーフィルタエレメント(22)と同心状の筒状のアウターフィルタエレメント(21)を配置し、アウターフィルタエレメント(21)とインナーフィルタエレメント(22)とで二重筒構造のフィルタエレメント(2)を構成している。未浄気室(3)はアウターフィルタエレメント(21)の外側にある。
アウターフィルタエレメント(21)は濾紙製、インナーフィルタエレメント(22)はフェルト製である。これらのフィルタエレメントの素材は、他のもの、例えばスポンジ等であってもよい。
【0015】
未浄気室(3)は未浄気旋回室であり、図1に示すように、浄気出口管(8)寄りの端部を始端部(3a)とし、反対側の端部を終端部(3b)とし、始端部(3a)に未浄気入口(5)を臨ませている。未浄気室(3)の始端部(3a)には、アウターフィルタエレメント(21)と同心でアウターフィルタエレメント(21)を外側から覆う円筒の未浄気旋回ガイド筒(23)を設けている。図2(A)に示すように、ケーシング周壁(4)に取り付けた未浄気入口(5)は未浄気室(3)の始端部(3a)の接線方向に沿う向きに方向付けている。
図1図2(C)に示すように、浄気出口管(8)はL字形のエルボ管となっている。エアフローセンサ(9)は、浄気出口管(8)のうち、フィルタエレメント(2)と平行な向きの浄気入口寄り部分(20)の周壁に取り付けている。エアフローセンサ(9)にはホットワイヤー式のものを用いている。エアフローセンサ(9)には、他の方式のものを用いてもよい。
エアフローセンサ(9)で計測した浄気流量に基づいて、エンジンECU(図外)がコモンレールの燃料噴射量の調量等を行う。エンジンECUは、エンジン電子制御ユニットの略称である。
【0016】
図1(A)、図2(A)(B)に示すように、未浄気室(3)を未浄気(18)が旋回し、その過程で未浄気(18)から質量の大きな塵埃が遠心分離され、未浄気室(3)から浄気室(6)に向けて未浄気(18)がフィルタエレメント(2)を通過し、その過程で未浄気(18)の微細な塵埃がフィルタエレメント(2)に捕捉され、未浄気(18)は浄気(19)となって浄気室(6)に流入する。浄気室(6)の浄気(16)は浄気出口管(8)からこれに接続した吸気ダクト(図外)を介してエンジンの吸気装置に吸入される。
図2(A)(B)では、浄気室(6)を通過する浄気(19)の向きは紙面手前向き、図2(C)では、浄気出口管(8)を通過する浄気(19)の向きは紙面奥向きである。
【0017】
浄気出口管(8)の浄気入口(15)側に嵌合部(24)を設け、インナーフィルタエレメント(22)の浄気出口(10)の開口端面にシール材(12)を設け、このシール材(12)を接当部(13)に接当させ、シール材(12)を浄気出口(10)の内周面(11b)と外周面(11c)に沿って内外に折り返し状に折り返して、内側折り返し部(14)と外側折り返し部(29)とを形成し、このシール材(12)の外側折り返し部(29)を嵌合部(24)に嵌合させている。
このシール材(12)は発泡ウレタン製で、内外側折り返し端縁(26)(27)にはシール材(12)の成形時にバリ(28)が発生しやすく、内側折り返し部(14)と外側折り返し部(29)の周方向の肉厚も一定になりにくい。
【0018】
図1(A)(B)に示すように、浄気出口管(8)の浄気入口(15)からシール材(12)の内側折り返し部(14)の内側に沿って浄気導入筒(16)を導出し、この浄気導入筒(16)の導出端(17)をシール材(12)の内側折り返し部(14)の内側折り返し端縁(26)よりも浄気室(6)側に大きく突出させている。
【0019】
図1(A)(B)に示すように、浄気導入筒(16)の浄気入口(30)からエアフローセンサ(9)の取付位置までの通路内径をシール材(12)の内側折り返し部(14)の内径よりも小さく絞っている。
図1(A)(B)に示すように、浄気導入筒(16)の導出端(17)をシール材(12)の外側折り返し部(29)の外側折り返し端縁(27)よりも浄気室(6)側に大きく突出させている。
図1(A)(B)に示すように、浄気導入筒(16)を浄気出口管(8)と一体成型している。
【0020】
図3(A)(B)、図4(A)(B)(C)に示す第1参考形態のものは、浄気導入筒(16)を浄気出口管(8)とは別体で構成し、浄気導入筒(16)を浄気出口管(8)の浄気入口寄り部分(20)に内嵌している。
他の構造と機能は、図1(A)(B)、図2(A)(B)(C)に示す実施形態のものと同じであり、図3(A)(B)、図4(A)(B)(C)中、図1図2(A)(B)(C)と同一の要素には同一の符号を付しておく。
【0021】
図5(A)(B)、図6(A)(B)(C)に示す第2参考形態のものは、浄気導入筒(16)を浄気出口管(8)とは別体で構成し、浄気導入筒(16)を浄気出口管(8)の浄気入口(15)に内嵌している。
他の構造と機能は、図1(A)(B)、図2(A)(B)(C)に示す実施形態のものと同じであり、図5(A)(B)、図6(A)(B)(C)中、図1(A)(B)、図2(A)(B)(C)と同一の要素には同一の符号を付しておく。
【符号の説明】
【0022】
(1) ケーシング
(2) 筒状フィルタ
(3) 未浄気室
(4) ケーシング周壁
(6) 浄気室
(7) ケーシング端壁
(8) 浄気出口管
(9) エアフローセンサ
(10) 浄気出口
(11a) 開口端面
(11b) 内周面
(12) シール材
(13) 接当部
(14) 内側折り返し部
(15) 浄気入口
(16) 浄気導入筒
(17) 導出端
(26) シール材の内側折り返し端縁
(27) シール材の外側折り返し端縁
(29) シール材の外側折り返し部
(30) 浄気導入筒の浄気入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6