(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記参照電極の電位を基準とする前記被めっき対象の前記独立部の電位を予め取得し、前記参照電極の電位を基準とする前記被めっき対象の前記導通部の電位が前記取得された前記独立部の電位に等しくなるように、前記参照電極の電位を基準とする前記被めっき対象の前記導通部の電位を制御することを特徴とする請求項1記載の無電解めっき装置。
前記制御部は、前記参照電極の電位を基準とする前記被めっき対象の前記独立部の電位の変化に基づいて、前記参照電極の電位を基準とする前記被めっき対象の前記導通部の電位を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の無電解めっき装置。
前記制御部は、無電解めっき液による前記被めっき対象の処理量と前記参照電極の電位を基準とする前記被めっき対象の前記独立部の電位との関係を第1の関係として予め取得し、前記取得された第1の関係および現時点までの無電解めっき液による被めっき対象の処理量に基づいて、前記参照電極の電位を基準とする前記被めっき対象の前記導通部の電位を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無電解めっき装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、特許文献1の無電解めっき析出速度測定装置を用いると、無電解めっき液中の金属の析出速度を測定することができる。また、特許文献2の無電解めっき装置を用いると、特定のタイミングでめっき処理の化学反応を強制的に開始させることができる。
【0010】
しかしながら、被めっき対象に異なる析出電位を有する複数の被めっき部分が存在する場合がある。このような場合、無電解めっきにより複数の被めっき部分の表面に金属薄膜を形成した場合、それぞれの金属薄膜の厚みが異なる。
【0011】
本発明の目的は、被めっき対象の導通部およびその導通部から電気的に分離された独立部の表面に均一に金属薄膜を形成することが可能な無電解めっき装置、無電解めっき方法およびそれを用いた配線回路基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)第1の発明に係る無電解めっき装置は、導通部とその導通部から電気的に分離された独立部とを有する被めっき対象に無電解めっきを行うための無電解めっき装置であって、めっき材料である金属を含む無電解めっき液を収容するめっき槽と、めっき槽内の無電解めっき液に接するように配置される参照電極と、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御する制御部とを備えるものである。
【0013】
その無電解めっき装置においては、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が制御される。それにより、被めっき対象の導通部および独立部の表面に同じ厚みの金属薄膜が形成される。その結果、被めっき対象の導通部および独立部の表面に均一に金属薄膜を形成することが可能となる。
【0014】
(2)制御部は、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位を予め取得し、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が取得された独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御してもよい。
【0015】
この場合、無電解めっき中に参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位をモニターする必要がない。したがって、無電解めっき装置の構成が複雑化しない。
【0016】
(3)制御部は、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位の変化に基づいて、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を変化させてもよい。
【0017】
この場合、無電解めっき液の状態が変化することにより参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位が変化する場合でも、被めっき対象の導通部および独立部の表面に同じ厚みの金属薄膜を形成することができる。
【0018】
(4)制御部は、無電解めっき液による被めっき対象の処理量と参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位との関係を第1の関係として予め取得し、取得された第1の関係および現時点までの無電解めっき液による被めっき対象の処理量に基づいて、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御してもよい。
【0019】
無電解めっき液による被めっき対象の処理量が増加するにつれて無電解めっき液の劣化が進行する。そこで、無電解めっき液による被めっき対象の処理量と参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位との関係が第1の関係として予め取得される。それにより、取得された第1の関係および現時点までの無電解めっき液による被めっき対象の処理量に基づいて、参照電極の電位を基準とする導電部分の電位が参照電極の電位を基準とする独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御することができる。したがって、被めっき対象の処理量の増加により無電解めっき液の劣化が進行した場合でも、被めっき対象の導通部および独立部の表面に同じ厚みの金属薄膜を形成することが可能となる。
【0020】
(5)無電解めっき装置は、めっき槽内の無電解めっき液の酸化還元電位を測定する測定装置をさらに備え、制御部は、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位と無電解めっき液の酸化還元電位との関係を第2の関係として予め取得し、測定装置により測定された酸化還元電位および取得された第2の関係に基づいて、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御してもよい。
【0021】
この場合、無電解めっき中の酸化還元電位の変化に基づいて被めっき対象の独立部の電位の変化を検出することができる。したがって、無電解めっき液の状態が変化することにより参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位が変化する場合でも、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が検出された独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御することができる。その結果、無電解めっき液の状態が変化しても、被めっき対象の導通部および独立部の表面に同じ厚みの金属薄膜を自動的に形成することができる。
【0022】
(6)無電解めっき装置は、めっき槽内の無電解めっき中で被めっき対象を搬送する搬送装置をさらに備え、制御部は、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位と導通部への金属薄膜の形成速度との関係を第3の関係として予め取得し、取得された第3の関係に基づいて、搬送装置による被めっき対象の搬送速度を制御してもよい。
【0023】
参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が変化すると、導通部への金属薄膜の形成速度が変化する。そこで、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位と導通部への金属薄膜の形成速度との関係が第3の関係として予め取得される。それにより、取得された第3の関係に基づいて、搬送装置による被めっき対象の搬送速度を制御することができる。その結果、無電解めっき液の状態が変化することにより参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位が変化した場合でも、導通部および独立部の表面に均一に同じ厚みの金属薄膜を形成することが可能となる。
【0024】
(7)無電解めっき装置は、めっき槽内の無電解めっき液に接するように配置される対極をさらに備え、制御部は、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位に等しくなるように、被めっき対象の導通部と対極との間に流れる電流を制御してもよい。
【0025】
この場合、被めっき対象の導通部と対極との間に流れる電流を制御することにより、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を容易に制御することが可能となる。
【0026】
(8)第2の発明に係る無電解めっき方法は、導通部とその導通部から電気的に分離された独立部とを有する被めっき対象に無電解めっきを行うための無電解めっき方法であって、めっき材料である金属を含む無電解めっき液をめっき槽に収容する工程と、めっき槽内の無電解めっき液に接するように参照電極を配置する工程と、めっき槽内の無電解めっき液に被めっき対象を浸漬させる工程と、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御する工程とを備えるものである。
【0027】
その無電解めっき方法においては、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が制御される。それにより、被めっき対象の導通部および独立部の表面に同じ厚みの金属薄膜が形成される。その結果、被めっき対象の導通部および独立部の表面に均一に金属薄膜を形成することが可能となる。
【0028】
(9)制御する工程は、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位を予め取得する工程と、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が取得された独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御する工程とを含んでもよい。
【0029】
この場合、無電解めっき中に参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位をモニターする必要がない。したがって、無電解めっき装置の構成が複雑化しない。
【0030】
(10)制御する工程は、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位の変化に基づいて、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を変化させる工程を含んでもよい。
【0031】
この場合、無電解めっき液の状態が変化することにより参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位が変化する場合でも、被めっき対象の導通部および独立部の表面に同じ厚みの金属薄膜を形成することができる。
【0032】
(11)制御する工程は、無電解めっき液による被めっき対象の処理量と参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位との関係を第1の関係として予め取得する工程と、取得された第1の関係および現時点までの無電解めっき液による被めっき対象の処理量に基づいて、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御する工程とを含んでもよい。
【0033】
無電解めっき液による被めっき対象の処理量が増加するにつれて無電解めっき液の劣化が進行する。そこで、無電解めっき液による被めっき対象の処理量と参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位との関係が第1の関係として予め取得される。それにより、取得された第1の関係および現時点までの無電解めっき液による被めっき対象の処理量に基づいて、参照電極の電位を基準とする導電部分の電位が参照電極の電位を基準とする独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御することができる。したがって、被めっき対象の処理量の増加により無電解めっき液の劣化が進行した場合でも、被めっき対象の導通部および独立部の表面に同じ厚みの金属薄膜を形成することが可能となる。
【0034】
(12)制御する工程は、めっき槽内の無電解めっき液の酸化還元電位を測定する工程と、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位と無電解めっき液の酸化還元電位との関係を第2の関係として予め取得する工程と、測定された酸化還元電位および取得された第2の関係に基づいて、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御する工程とを含んでもよい。
【0035】
この場合、無電解めっき中の酸化還元電位の変化に基づいて被めっき対象の独立部の電位の変化を検出することができる。したがって、無電解めっき液の状態が変化することにより参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位が変化する場合でも、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が検出された独立部の電位に等しくなるように、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位を制御することができる。その結果、無電解めっき液の状態が変化しても、被めっき対象の導通部および独立部の表面に同じ厚みの金属薄膜を自動的に形成することができる。
【0036】
(13)無電解めっき方法は、めっき槽内の無電解めっき中で被めっき対象を搬送する工程をさらに備え、制御する工程は、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位と導通部への金属薄膜の形成速度との関係を第3の関係として予め取得する工程と、取得された第3の関係に基づいて、被めっき対象の搬送速度を制御する工程とを含んでもよい。
【0037】
参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位が変化すると、導通部への金属薄膜の形成速度が変化する。そこで、参照電極の電位を基準とする被めっき対象の導通部の電位と導通部への金属薄膜の形成速度との関係が第3の関係として予め取得される。それにより、取得された第3の関係に基づいて、搬送装置による被めっき対象の搬送速度を制御することができる。その結果、無電解めっき液の状態が変化することにより参照電極の電位を基準とする被めっき対象の独立部の電位が変化した場合でも、導通部および独立部の表面に均一に同じ厚みの金属薄膜を形成することが可能となる。
【0038】
(14)第3の発明に係る配線回路基板の製造方法は、絶縁層上に導通部とその導通部から電気的に分離された独立部とを有する導体パターンを形成する工程と、導通部および独立部の表面に第2の発明に係る無電解めっき方法により金属薄膜を形成する工程とを備えるものである。
【0039】
この場合、簡単な制御により、配線回路基板の導通部および独立部の表面に均一に金属薄膜を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、被めっき対象の導通部および独立部の表面に均一に金属薄膜を形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態に係る無電解めっき装置および無電解めっき方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
(1)無電解めっき装置の構成
図1は本発明の一実施の形態に係る無電解めっき装置の構成を示す模式図である。
図1の無電解めっき装置1は、被めっき対象として長尺状基材10に無電解めっきを行うために用いられる。
【0044】
図1の無電解めっき装置1は、めっき槽2を備える。めっき槽2は、無電解めっき液30を収容する。本実施の形態では、無電解めっき液30は、ニッケル(Ni)のイオンを含む。
【0045】
めっき槽2の対向する一対の側壁には
それぞれ開口が設けられる。一方の開口を閉塞するように、水平方向に延びる一対の搬送ローラ21,22が回転可能に設けられる。また、他方の開口を閉塞するように水平方向に延びる一対の搬送ローラ23,24が回転可能に設けられる。
【0046】
送出ロール31から長尺状基材10が送り出される。長尺状基材10は、一対の搬送ローラ21,22間、めっき槽2内および一対の搬送ローラ23,24間を通って巻取ロール32により巻き取られる。送出ロール31および巻取ロール32が回転することにより、長尺状基材10が矢印の方向に搬送される。送出ロール31および巻取ロール32の回転速度は、搬送制御装置7により制御される。それにより、長尺状基材10の搬送速度が制御される。
【0047】
長尺状基材10は、例えば、回路付きサスペンション基板の製造工程における半製品である。半製品は、例えばステンレスからなる長尺状の金属基板、例えばポリイミドからなる絶縁層および所定のパターンを有する例えば銅からなる導体層(導体パターン)を順に備える。導体層は、例えば配線、パッド電極または接地導体である。導体層は、電気的に互いに分離された複数の部分を有する。複数の部分のうち後述する導通部材4と電気的に接続可能な部分を導通部と呼び、その導通部から電気的に分離された部分を独立部と呼ぶ。
【0048】
無電解めっき装置1は、ポテンショスタット3、主制御装置8、一対の導通部材4、参照電極5および対極6を備える。ポテンショスタット3および主制御装置8が制御部100を構成する。一方の導通部材4は、めっき槽2の上流側で長尺状基材10の導通部に電気的に接触するように設けられ、他方の導通部材4は、めっき槽2の下流側で長尺状基材10の導通部に電気的に接触するように設けられる。この場合、長尺状基材10の導通部が作用電極となる。
【0049】
参照電極5および対極6は、めっき槽2内の無電解めっき30液中に浸漬される。参照電極5は、例えば飽和カロメル電極である。対極6は、例えば白金(Pt)からなる不溶性電極である。対極6はアノード(陽極)となり、長尺状基材10の導通部がカソードとなる。
【0050】
導通部材4、参照電極5および対極6は、ポテンショスタット3に接続される。主制御装置8は、ポテンショスタット3および搬送制御装置7の動作を制御する。ポテンショスタット3は、参照電極5の電位を基準とする長尺状基材10の導通部(作用電極)の電位を主制御装置8により指令された値に制御するために、長尺状基材10の導通部(作用電極)と対極6との間に流れる電流を制御する。この場合、主制御装置8は、後述する方法で、参照電極5の電位を基準とする長尺状基材10の導通部(作用電極)の電位が長尺状基材10の独立部の電位と等しくなるように、ポテンショスタット3に指令を与える。
【0051】
(2)被めっき対象の一例および無電解めっき方法
図2は被めっき対象の一例を示す模式的断面図である。
図2(a)は無電解めっき前の被めっき対象を示し、
図2(b)は無電解めっき後の被めっき対象を示す。
【0052】
図2の被めっき対象は、
図1の長尺状基材10を用いて形成される回路付きサスペンション基板である。
図2には、回路付きサスペンション基板の一部が示される。
図2(a)に示すように、長尺状基材10は、例えばステンレスからなる金属基板11を備える。金属基板11上に、例えばポリイミドからなる絶縁層12、銅からなる導体層13,16、および例えばポリイミドからなる絶縁層14が順に形成される。絶縁層12は開口を有する。それにより、導体層13は絶縁層12の開口を通して金属基板11に電気的に接続される。
図2の例では、絶縁層14は、導体層13の表面の一部が露出するとともに導体層16の全体が露出するように設けられる。
【0053】
回路付きサスペンション基板の製造工程では、
図2(b)に示すように、導体層13,16の露出した表面に無電解めっきにより例えばニッケルから金属薄膜15が形成される。金属薄膜15の厚みは、例えば0.03μm以上5μm以下である。
【0054】
長尺状基材10の無電解めっき時には、
図1のめっき槽2内に無電解めっき液30を収容する。また、無電解めっき液30に接触するように、参照電極5および対極6を配置する。長尺状基材10の導体層13に電気的に接触するように導通部材4を配置する。本例では、導体層13が導通部CNに相当し、導体層16が独立部INに相当する。
図1の導通部材4は、金属基板11に接触するように設けられてもよい。
【0055】
この状態で、長尺状基材10がめっき槽2内の無電解めっき液30中を搬送されるように搬送制御装置7が送出ロール31および巻取ロール32を回転させる。搬送制御装置7による長尺状基材10の搬送速度は、主制御装置8により制御される。
【0056】
長尺状基材10の搬送中に、参照電極5の電位を基準とする長尺状基材10の導通部CNの電位が主制御装置8により指令された値になるように、ポテンショスタット3が長尺状基材10の導通部CNと対極6との間に流れる電流を制御する。
【0057】
これにより、長尺状基材10の導通部CNおよび独立部INの露出した表面にニッケルからなる金属薄膜15が形成される。
【0058】
(3)導通部CNの電位の制御方法
以下、参照電極5の電位を基準とする導通部CNの電位を導通部CNの電位と略記する。また、参照電極5の電位を基準とする独立部INの電位を独立部INの電位と略記する。
【0059】
無電解めっき液30中の独立部INの電位は、事前に測定される。長尺状基材10の無電解めっき時には、主制御装置8は、長尺状基材10の導通部CNの電位が独立部INの電位と等しくなるように、ポテンショスタット3により長尺状基材10の導通部CNの電位を制御する。それにより、長尺状基材10の導通部CNの表面および独立部INの表面に同じ厚みを有する金属薄膜15が形成される。
【0060】
長尺状基材10の処理量が増加するにしたがって無電解めっき液30の劣化が進行する。それにより、長尺状基材10の独立部INの表面へのNiの析出電位が変化する。そのため、長尺状基材10の処理量が増加するにしたがって独立部INの電位が変化する。そこで、長尺状基材10の処理量と独立部INの電位との関係が事前に測定される。本実施の形態では、長尺状基材10の処理量は無電解めっきが行われた長尺状基材10の長さ[m]で表される。
【0061】
長尺状基材10の処理量と独立部INの電位との関係は、例えば、次のようにして測定される。銅箔にパラジウム(Pd)触媒を付着させることによりPd触媒処理を行う。長尺状基材10の無電解めっき処理に用いられる前の無電解めっき液中に参照電極5およびその銅箔を浸漬させる。Niが銅箔の表面に析出して安定した後に、参照電極5の電位を基準とする銅箔の自然電位(めっき析出電位)を測定する。次に、一定量の長尺状基材10が無電解めっき液中で無電解めっき処理される。一定量の長尺状基材10の無電解めっき処理に用いられた無電解めっき液中に参照電極5およびPd触媒処理された銅箔を浸漬させ、銅箔の表面にNiが析出して安定した後に上記の方法で参照電極5の電位を基準とする銅箔の自然電位(めっき析出電位)を測定する。その後、さらに一定量の長尺状基材10が無電解めっき液中で無電解めっき処理されるごとに、上記の方法により銅箔の表面にNiが析出して安定した後の参照電極5の電位を基準とする銅箔の自然電位(めっき析出電位)を測定する。このようにして、長尺状基材10の処理量と無電解めっき液中のめっき析出電位との関係が測定される。長尺状基材10の処理量とめっき析出電位との関係は、長尺状基材10の処理量と独立部INの電位との関係に相当する。長尺状基材10の処理量と独立部INの電位との関係は、連続的に測定されてもよく、長尺状基材10の一定の長さごとに測定されてもよい。
【0062】
表1に長尺状基材10の処理量と独立部INの電位との関係(第1の関係)の測定結果の一例を示す。
【0064】
表1の関係では、長尺状基材10の処理量が0m、1000m、2000mおよび3000mのときの独立部INの電位が示される。表1に示されるように、長尺状基材10の処理量が増加するにしたがって独立部INの電位が上昇している。主制御装置8は、表1の関係を予め記憶する。
【0065】
次に、導通部CNの電位とその導通部CNの表面に形成される金属薄膜15の厚みとの関係(第3の関係)が
図1の無電解めっき装置1を用いて事前に測定される。
図3は導通部CNの電位と金属薄膜15の厚みとの関係の測定結果の一例を示す図である。
図3の金属薄膜15の厚みは、1分間の無電解めっきで得られる。
【0066】
図3の関係から導通部CNの電位と金属薄膜15の厚みとの関係を表す関数が求められる。
図3の例では、導通部CNの電位と金属薄膜15の厚みとの関係を表す1次関数が求められる。
【0067】
図3の関係は、導通部CNの電位と金属薄膜15の形成速度との関係を表している。したがって、
図3の関係から導通部CNの電位ごとに一定の厚みを有する金属薄膜15を形成するための無電解めっきの時間が求められる。
【0068】
なお、導通部CNの電位と金属薄膜15の厚みとの関係の代わりに、独立部INの電位と金属薄膜15の厚みとの関係が事前に求められてもよい。
【0069】
次に、
図3の関係からシミュレーションにより、
図1の無電解めっき装置1における導通部CNの電位、長尺状基材10の搬送速度および金属薄膜15の厚みの関係が求められる。
【0070】
図4は
図1の無電解めっき装置1における導通部CNの電位、長尺状基材10の搬送速度および金属薄膜15の厚みの関係の一例を示す図である。
【0071】
長尺状基材10の搬送速度が同一である場合、導通部CNの電位が低いほど金属薄膜15の厚みは大きくなる。また、導通部CNの電位が一定である場合、長尺状基材10の搬送速度が大きいほど金属薄膜15の厚みは小さくなる。
【0072】
したがって、導通部CNの電位が上昇するにしたがって長尺状基材10の搬送速度を低下させることにより、金属薄膜15の厚みを一定にすることができる。
【0073】
表2に長尺状基材10の導通部CNおよび独立部INの表面に一定の厚みの金属薄膜15を形成する場合における長尺状基材10の処理量、導通部CNの電位および長尺状基材10の搬送速度の関係の一例を示す。
【0075】
表2において、0<L1<L2<L3であり、−V0<−V1<−V2<−V3であり、v0>v1>v2>v3である。主制御装置8は、表2の関係を予め記憶する。
【0076】
表2に示すように、長尺状基材10の処理量が0[m]以上L1[m]未満のときには、主制御装置8は、導通部CNの電位が事前に測定された独立部INの電位に等しくなるように、ポテンショスタット3により導通部CNの電位を−V0[V]に制御する。このとき、主制御装置8は、搬送制御装置7による長尺状基材10の搬送速度をv0[m/min]に制御する。
【0077】
長尺状基材10の処理量がL1[m]以上L2[m]未満のときには、主制御装置8は、導通部CNの電位が事前に測定された独立部INの電位に等しくなるように、ポテンショスタット3により導通部CNの電位を−V1[V]に制御する。このとき、主制御装置8は、搬送制御装置7による長尺状基材10の搬送速度をv1[m/min]に制御する。
【0078】
長尺状基材10の処理量がL2[m]以上L3[m]未満のときには、主制御装置8は、導通部CNの電位が事前に測定された独立部INの電位に等しくなるように、ポテンショスタット3により導通部CNの電位を−V2[V]に制御する。このとき、主制御装置8は、搬送制御装置7による長尺状基材10の搬送速度をv2[m/min]に制御する。
【0079】
長尺状基材10の処理量がL3[m]以上のときには、主制御装置8は、導通部CNの電位が事前に測定された独立部INの電位に等しくなるように、ポテンショスタット3により導通部CNの電位を−V3[V]に制御する。このとき、主制御装置8は、搬送制御装置7による長尺状基材10の搬送速度をv3[m/min]に制御する。
【0080】
(4)実施の形態の効果
本実施の形態に係る無電解めっき装置1によれば、長尺状基材10の導通部CNの電位が事前に測定された長尺状基材10の独立部INの電位に等しくなるように、長尺状基材10の導通部CNの電位が制御される。それにより、長尺状基材10の導通部CNおよび独立部INの表面に同じ厚みの金属薄膜15が形成される。
【0081】
また、事前に測定された無電解めっき液30による長尺状基材10の処理量と長尺状基材10の独立部INの電位との関係に基づいて、長尺状基材10の導通部CNの電位が長尺状基材10の独立部INの電位に等しくなるように、長尺状基材10の導通部CNの電位が制御される。それにより、長尺状基材10の処理量の増加により無電解めっき液30の劣化が進行した場合でも、長尺状基材10の導通部CNおよび独立部INの表面に同じ厚みの金属薄膜15を形成することが可能となる。
【0082】
さらに、事前に測定された長尺状基材10の導通部CNまたは独立部INの電位と金属薄膜15の形成速度との関係に基づいて、長尺状基材10の搬送速度が制御される。それにより、長尺状基材10の処理量の増加により無電解めっき液30の劣化が進行した場合でも、長尺状基材10の導通部CNおよび独立部INの表面に均一に同じ厚みの金属薄膜15を形成することが可能となる。
【0083】
また、ポテンショスタット3を用いることにより、参照電極5の電位を基準とする長尺状基材10の導通部CNの電位を容易に制御することができる。
【0084】
(5)他の実施の形態
(5−1)
図5は本発明の他の実施の形態に係る無電解めっき装置1の構成を示す模式図である。
【0085】
図5の無電解めっき装置1が
図1の無電解めっき装置1と異なるのは、ORP(酸化還元電位:Oxidation-Reduction Potential)測定装置9をさらに備える点である。
【0086】
長尺状基材10の独立部INの電位(めっき析出電位)と無電解めっき液30のORP(酸化還元電位)の値と関係(第2の関係)が事前に測定される。主制御装置8は、事前に測定され独立部INの電位と無電解めっき液30のORP(酸化還元電位)の値と関係を記憶する。
【0087】
長尺状基材10の無電解めっき時には、ORP測定装置9による測定される無電解めっき液30のORPの値が主制御装置8に与えられる。主制御装置8は、記憶された独立部INの電位と無電解めっき液30のORPの値と関係およびORP測定装置9から与えられるORPの値に基づいて、現在の独立部INの電位を求める。それにより、主制御装置8は、長尺状基材10の導通部CNの電位が長尺状基材10の独立部INの電位に等しくなるように、ポテンショスタット3により長尺状基材10の導通部CNの電位を制御する。また、主制御装置8は、表2の関係に基づいて、搬送制御装置7により長尺状基材10の搬送速度を制御する。
【0088】
その結果、長尺状基材10の処理量の増加により無電解めっき液30の劣化が進行した場合でも、長尺状基材10の導通部CNおよび独立部INの表面に均一に同じ厚みの金属薄膜15を自動的に形成することが可能となる。
【0089】
(5−2)
上記実施の形態では、無電解めっき液30がニッケルのイオンを含むが、これに限定されない。例えば、無電解めっき液30が、金(Au)、Sn(錫)、銀(Ag)、銅(Cu)、錫合金、または銅合金等の種々の金属のイオンまたは合金を含んでもよい。
【0090】
(5−3)
また、上記実施の形態では、被めっき対象が長尺状基材10の銅からなる導体層13であるが、被めっき対象の材料はこれに限定されない。被めっき対象の材料は、銅合金、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、錫(Sn)または錫合金等の他の金属または合金であってもよい。
【0091】
(5−4)
さらに、上記実施の形態では、被めっき対象が回路付きサスペンション基板の半製品である長尺状基材10であるが、被めっき対象はこれに限定されない。被めっき対象がフレキシブル配線回路基板、またはリジッド配線回路基板等の他の配線回路基板またはそれらの半製品であってもよい。また、被めっき対象は配線回路基板に限らず、無電解めっき装置1を用いて種々の対象物に無電解めっきを行うことができる。
【0092】
(5−5)
また、上記実施の形態では、ロール・トゥ・ロール方式により長尺状基材10を搬送しつつ導体層13に無電解めっきを行う例について説明したが、本発明は、バッチ式の無電解めっき装置にも適用可能である。バッチ式の無電解めっき装置では、被めっき対象を搬送することなく、めっき槽内の無電解めっき液中に一定時間浸漬させる。この場合、被めっき対象の導通部の電位が独立部の電位に等しくなるように導通部の電位を制御するとともに、無電解めっき液中への被めっき対象の浸漬時間を制御することにより、被めっき対象の導通部および独立部の表面に均一に同じ厚みの金属薄膜を形成することができる。
【0093】
(5−6)
さらに、上記実施の形態では、制御部の一例として
ポテンショスタット3が用いられる。制御部として、
ポテンショスタット3の代わりに他の制御回路が用いられてもよい。
【0094】
(6)実施例
実施例および比較例1,2では、
図2(a)の構成を有する長尺状基材10の表面に無電解めっきによりニッケルからなる金属薄膜を形成した。
【0095】
長尺状基材10の幅は、30cmである。以下のように、長尺状基材10の導通部CNおよび独立部INの表面にニッケルからなる金属薄膜を無電解めっきにより形成した。
【0096】
図6は実施例において
図2(a)の長尺状基材10に無電解めっきを行うために用いた無電解めっきシステムの概略図である。
【0097】
図6の無電解めっきシステムにおいては、無電解めっき装置1の上流側に酸洗処理槽51、水洗処理槽52,53、Pd(パラジウム)触媒処理槽54および水洗処理槽55が順に設けられる。無電解めっき装置1の下流側に水洗処理槽56,57、エアーナイフ処理槽58および乾燥処理槽59が順に設けられる。無電解めっき装置1の構成は、
図1に示した無電解めっき装置1の構成と同様である。
【0098】
送出ロール31から送り出された長尺状基材10が処理槽51〜55、無電解めっき装置1および処理槽57〜59を通過して巻取ロール32により巻き取られる。
【0099】
長尺状基材10には、酸洗処理槽51において酸洗処理が行われ、水洗処理槽52,53において水洗処理が行われる。さらに、Pd触媒処理槽54において、長尺状基材10の表面にパラジウム(Pd)触媒が付着される。無電解めっき装置1において、上記実施の形態の方法により長尺状基材10の導通部CNおよび独立部INの表面に無電解めっきによりニッケルからなる金属薄膜(Ni薄膜)が形成される。その後、水洗処理槽56,57において、長尺状基材10に水洗処理が行われた後、エアーナイフ処理槽58において、長尺状基材10の表面に付着する水分が吹き飛ばされ、乾燥処理槽59において長尺状基材10が乾燥される。
【0100】
図7は比較例1において
図2(a)の長尺状基材10に無電解めっきを行うために用いた無電解めっきシステムの概略図である。
【0101】
図7の無電解めっきシステムにおいては、
図6の無電解めっき装置1の代わりに無電解めっき装置1Aが設けられる。無電解めっき装置1Aは、無電解めっき液を収容するめっき槽2を備える。無電解めっき装置1Aには、
図6のポテンショスタット3、主制御装置8、導通部材4、参照電極5および対極6が設けられない。
【0102】
図8は比較例2において
図2(a)の長尺状基材10に無電解めっきを行うために用いた無電解めっきシステムの概略図である。
【0103】
図8の無電解めっきシステムにおいては、
図6の無電解めっき装置1の代わりに無電解めっき装置1Bが設けられる。無電解めっき装置1Bにおいては、
図6のポテンショスタット3および主制御装置8の代わりに整流器80が設けられる。整流器80は、導通部材4および対極6に接続される。また、
図6の参照電極5は設けられない。
【0104】
実施例および比較例1,2において、Pd触媒として、奥野製薬株式会社製ICPアクセラを用い、Pd触媒処理槽54にて、30℃で1分間触媒処理を行った。また、Niを含む無電解めっき液として、奥野製薬株式会社製ICPニコロンFPFを用い、無電解めっき装置1,1A,1Bにて、82℃で無電解めっきを行った。
【0105】
実施例では、表1に示される長尺状基材10の処理量と独立部INの電位(めっき析出電位)との関係に基づいて、導通部CNの電位が独立部INの電位に等しくなるように、主制御装置8がポテンショスタット3により導通部CNの電位を制御した。具体的には、長尺状基材10の処理量が0m以上1000m未満のときには、導通部CNの電位を−0.867Vに制御し、長尺状基材10の処理量が1000m以上2000m未満のときには、導通部CNの電位を−0.836Vに制御し、長尺状基材10の処理量が2000m以上3000m未満のときには、導通部CNの電位を−0.802Vに制御し、長尺状基材10の処理量が3000m以上のときには、導通部CNの電位を−0.397Vに制御した。
【0106】
また、主制御装置8は、表2に示される長尺状基材10の処理量、導通部CNの電位および長尺状基材10の搬送速度の関係に基づいて、搬送制御装置7により長尺状基材10の搬送速度を制御した。長尺状基材10の処理量が0m以上1000m未満のときには、長尺状基材10の搬送速度をv0[m/min]に制御し、長尺状基材10の処理量が1000m以上2000m未満のときには、長尺状基材10の搬送速度をv1[m/min]に制御し、長尺状基材10の処理量が2000m以上3000m未満のときには、長尺状基材10の搬送速度をv2[m/min]に制御し、長尺状基材10の処理量が3000m以上のときには、長尺状基材10の搬送速度をv3[m/min]に制御した。
【0107】
比較例1では、長尺状基材10の導通部CNの電位を制御しなかった。また、比較例1では、長尺状基材10の搬送速度を実施例と同様に制御した。
【0108】
比較例2では、
図8の整流器80により無電解めっきの期間中に、継続して70mAの電流を対極6と長尺状基材10の導通部CNとの間に流した。また、比較例2では、長尺状基材10の搬送速度を一定とした。
【0109】
実施例および比較例1,2において長尺状基材10の導通部CNおよび独立部INの表面に形成されたNi薄膜の平均の厚みを表3に示す。
【0111】
無電解めっき液が新しい時点(新液時)、長尺状基材10を2000m無電解めっき処理した時点、および長尺状基材10を3000m無電解めっき処理した時点で長尺状基材10の導通部CNおよび独立部INの表面に形成されたNi薄膜の平均厚みをそれぞれ測定した。Ni薄膜の平均厚みは、長尺状基材10の幅方向の複数の位置におけるNi薄膜の厚みの平均値である。
【0112】
表3に示されるように、実施例では、新液時での導通部CNおよび独立部INの表面のNi薄膜の平均厚みがそれぞれ0.90μmおよび0.92μmとなり、ばらつきが0.02μmと小さくなった。また、長尺状基材10を2000m無電解めっき処理した時点での導通部CNおよび独立部INの表面のNi薄膜の平均厚みがそれぞれ0.93μmおよび0.91μmとなり、ばらつきが0.02μmと小さくなった。さらに、新液時および長尺状基材10を2000m無電解めっき処理した時点での導通部CNの表面のNi薄膜の平均厚みはそれぞれ0.90μmおよび0.93μmとなり、ばらつきが0.03μmと小さくなった。新液時および長尺状基材10を2000m無電解めっき処理した時点での
独立部INの表面のNi薄膜の平均厚みはそれぞれ0.92μmおよび0.91μmとなり、ばらつきが0.01μmと小さくなった。長尺状基材10を3000m無電解めっき処理した時点では、導通部CNおよび独立部INの表面にNiは析出しなかった。
【0113】
比較例1では、新液時での導通部CNおよび独立部INの表面のNi薄膜の平均厚みがそれぞれ0.58μmおよび0.92μmとなり、ばらつきが0.34μmと大きくなった。また、長尺状基材10を2000m無電解めっき処理した時点では、導通部CNおよび独立部INの表面にNiは析出しなかった。
【0114】
比較例2では、新液時での導通部CNおよび独立部INの表面のNi薄膜の平均厚みがそれぞれ0.93μmおよび0.78μmとなり、ばらつきが0.15μmと大きくなった。また、長尺状基材10を2000m無電解めっき処理した時点での導通部CNおよび独立部INの表面のNi薄膜の平均厚みがそれぞれ0.95μmおよび0.53μmとなり、ばらつきが0.42μmと大きくなった。長尺状基材10を3000m無電解めっき処理した時点では、導通部CNの表面のNi薄膜の平均厚みは0.90μmとなり、独立部INの表面にNiは析出しなかった。さらに、新液時、長尺状基材10を2000m無電解めっき処理した時点および長尺状基材10を3000m無電解めっき処理した時点での導通部CNの表面のNi薄膜の平均厚みはそれぞれ0.93μm、0.95μmおよび0.90μmとなり、ばらつきが0.05μmと比較的小さくなった。しかしながら、新液時および長尺状基材10を2000m無電解めっき処理した時点での独立部INの表面のNi薄膜の平均厚みはそれぞれ0.78μmおよび0.53μmとなり、ばらつぎが0.25μmと大きくなった。
【0115】
このように、実施例では、導通部CNおよび独立部INの表面のNi薄膜の平均厚みのばらつきが比較例1,2に比べて小さくなるとともに、無電解めっき液が劣化した場合でも、導通部CNおよび独立部INの表面のNi薄膜の厚みが均一になった。したがって、長尺状基材10の導通部CNの電位が独立部INの電位に等しくなるように、導通部CNの電位を制御するとともに、導通部CNの電位に基づいて長尺状基材10の搬送速度を制御することにより、導通部CNおよび独立部INの表面に同じ厚みのNi薄膜を形成することができるとともに、無電解めっき液30の劣化が進んだ場合でも、導通部CNおよび独立部INの表面に均一にNi薄膜を形成できることがわかった。