(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719688
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】張力付与装置及び経糸層の経糸に張力を再付与する方法
(51)【国際特許分類】
D03J 1/14 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
D03J1/14 C
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-113986(P2011-113986)
(22)【出願日】2011年5月20日
(65)【公開番号】特開2011-246867(P2011-246867A)
(43)【公開日】2011年12月8日
【審査請求日】2014年2月5日
(31)【優先権主張番号】10405105.7
(32)【優先日】2010年5月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511123913
【氏名又は名称】ストーブリ アーゲー プフェフィコン
【氏名又は名称原語表記】Staubli AG Pfaffikon
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロマグナ、ハンスペーター
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−516815(JP,A)
【文献】
特開平08−109552(JP,A)
【文献】
特開2010−031447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03J 1/00 − 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸層(KFS)の経糸(KF)用の張力付与装置(S)であって、
前記張力付与装置は、2つの支持部材(S−10、S−20)を有し、
前記支持部材(S−10、S−20)は、これらを接続する位置決め機構(S−30)を介して互いの相対距離を変更することができ、案内要素(S−11、S−11’、S−21)に接続され、これらの案内要素を介して共通のガイドレール(FS)に取り外し可能に接続され、前記ガイドレールに沿って移動することができ、
前記支持部材の一方(S−20)は、少なくとも1本の経糸(KF)に張力を再付与するための張力付与ユニット(S−40)を運び、
前記支持部材(S−10、S−20)には、前記ガイドレール(FS)上の適切な位置に前記支持部材(S−10、S−20)を交互に固定するためのロック要素(S−12、S−22)が設けられており、前記張力付与ユニット(S−40)は、前記位置決め機構(S−30)の援助により前記ガイドレール(FS)に沿って移動可能である、張力付与装置(S)。
【請求項2】
前記張力付与ユニット(S−40)は、互いに略平行に整列した3つの棒状部材(S−41、S−41’、S−42)を有し、これらの棒状部材のうち、第1及び第2棒状部材(S−41、S−41’)は、少なくとも1本の経糸(KF)用の止め具をそれぞれ構成し、第3棒状部材(S−42)は、前記経糸(KF)を捕まえて張力を再付与するために、前記第1及び第2棒状部材(S−41、S−41’)の間を移動することができる、請求項1に記載の装置(S)。
【請求項3】
前記棒状部材(S−41、S−41’、S−42)の少なくとも1つの、一方の自由端は先細りになっている、請求項2に記載の装置(S)。
【請求項4】
前記第3棒状部材(S−42)は、偏心機構(S−43)を介して移動することができる、請求項2又は3に記載の装置(S)。
【請求項5】
前記ロック要素(S−12、S−22)は、クランプ機構又はラッチ機構を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の装置(S)。
【請求項6】
前記位置決め機構(S−30)は、スピンドル駆動機構(S−31)を備える、請求項1〜5のいずれかに記載の装置(S)。
【請求項7】
前記支持部材(S−10、S−20)は、可動式のシャーシ(S−50)に搭載される、請求項1〜6のいずれかに記載の装置(S)。
【請求項8】
前記2つの支持部材(S−10、S−20)の一方は、前記可動式のシャーシ(S−50)に固定的に接続される、請求項7に記載の装置(S)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の張力付与装置(S)と、経糸層(KFS)に張力を付与するための張力付与フレーム(R)との組合せであって、
前記張力付与装置(S)の前記ガイドレール(FS)が前記張力付与フレーム(R)に接続される、組合せ。
【請求項10】
前記ガイドレール(FS)は、前記張力付与フレーム(R)の一部として設計される、請求項9に記載の組合せ。
【請求項11】
前記張力付与フレーム(R)は、前記張力付与装置(S)に対して相対移動可能に搭載される、請求項9又は10に記載の組合せ。
【請求項12】
織機ハーネスの要素における経糸層(KFS)の経糸(KF)用の引通し装置(E)であって、
請求項1〜8のいずれかに記載の張力付与装置(S)と、
張力を再付与した糸(KF)を捕まえて分離するための分離ユニット(E−10)と、
前記分離された経糸(KF)を織機ハーネスの要素に引き通すための引通しユニット(E−20)とを備え、
前記分離ユニット(E−10)及び前記引通しユニット(E−20)は、前記張力付与ユニット(S−40)の移動に追従して移動できるように設計される、引通し装置(E)。
【請求項13】
前記分離ユニット(E−10)及び/又は前記引通しユニット(E−20)は、前記張力付与ユニット(S−40)を運ばない前記支持部材(S−10)に搭載される、請求項12に記載の引通し装置(E)。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかに記載の張力付与装置(S)を用いて経糸層(KFS)の経糸(KF)に張力を再付与する方法であって、
前記張力付与ユニット(S−40)は、前記経糸層(KFS)上で位置決めされ、
前記支持部材(S−10、S−20)は、前記ガイドレール(FS)上の適切な位置に交互に固定され、
各変化の後には、前記張力付与ユニット(S−40)が前記経糸層(KFS)に沿って移動し、かつ連続する経糸(KF)に張力を再付与できるように、前記支持部材(S−10、S−20)の間の距離が変更される、方法。
【請求項15】
前記支持部材(S−10、S−20)が適切な位置に固定されると、前記経糸層(KFS)が前記張力付与装置(S)に対して相対移動され、これにより、前記経糸層(KFS)に沿った、前記張力付与装置(S)の全体的な連続移動が起きる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
分離ユニット(E−10)及び引通しユニット(E−20)は、前記張力付与ユニット(S−40)の移動に追従して前記経糸層(KFS)に沿って移動され、各場合において、分離された経糸(KF)は織機ハーネスの要素に引き通される、請求項14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製織技術の分野に関し、特に、請求項1に記載の経糸層の経糸に張力を再付与するための張力付与装置、この張力付与装置と請求項9に記載の張力付与フレームとの組合せ、張力付与装置を備える請求項12に記載の引通し装置、及び請求項13に記載の経糸層の経糸に張力を再付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経糸及び緯糸を組み合わせて織機で織物又は素材を作成する前に、これらの経糸を、特定の順序に従って織機ハーネスに引き通さなければならない。通常、織機ハーネスの要素には、綜絖枠、綜絖、経糸停止ベーン(warp stop−motion vanes)及び筬が含まれる。引通し手段は、通常所要長さで経糸ビームに巻きつけられる経糸のそれぞれを、経糸小枠停止ベーンの目、綜絖の目、筬の2本の歯の間の間隙の目を通し、これにより、引き通された経糸の端部は、筬から飛び出すこととなる。綜絖は特定の綜絖枠に割り当てられ、すなわち、そのような1つの枠内に導入されて、織物のパターンが規定される。
【0003】
通常、数百本から数千本の間の経糸が特定の幅に亘って経糸ビーム上に平行に巻かれるため、経糸が織機ハーネスに完全に引き通されるまで、この処理を必要な回数だけ繰り返さなければならない。この処理は、これまで手作業で行なわれてきており、現在も、以前のように依然手作業で行われているが、工程のある部分を実行したり(半自動引通し機)、手順全体を自動的に実行したり(自動引通し機)する、様々な設計の機械も利用可能である。
【0004】
半自動引通し機は、自動引通し機に比べて比較的費用効率が高い一方で、これらには、1人のオペレーターが100%その機械に従事して、部分的に手作業で引通し工程を行なわなければならないという大きなデメリットがある。この方法では、手作業による引通しに比べて生産性をわずかに向上させることができるだけであり、欠陥率は比較的高い。
【0005】
自動引通し機は公知技術であり、様々な態様のものが市販されている。これらは、織機ハーネスに経糸を引き通すために必要なすべての工程において、独立した制御装置を利用するものである。オペレーターの役割は、運転の手順及び機能を準備し監視することと、原料を供給し撤去することに制限されている。この方法では、手作業による引通しに比べて生産性を数倍向上することができ、欠陥率を大幅に低下させることができる。
【0006】
原則として、自動引通し機は、互いに相対移動可能な2つの主要ユニットから成る。一方のユニットは、経糸の準備用の装置(経糸層用の張力付与ユニット)を含み、他方のユニットは、引通し工程用及び織機ハーネスの調節用の装置(引通しユニット)を備える。引通し工程中、引通しユニット及び張力付与ユニットは、引通し工程の進行に応じて、経糸層の始めから終わりまで相対的に横移動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第02/101132号パンフレット
【特許文献2】国際公開第92/07127号パンフレット
【特許文献3】スイス国特許第479735号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の形態に係る自動引通し機は、処理対象の経糸層が取り付けられる張力付与装置(糸フレーム又は張力付与フレーム)を常に含む。この経糸層から、個々の経糸が順番に拾い上げられ(分離され)、引通しユニットによって織機ハーネス要素に引き通される。個々の経糸が異常なく分離するためには、糸フレーム上において、経糸に特定の初期張力を付与する必要がある。この張力は、材料及び糸の品質によって異なる。経糸幅全体に対しては大きな力が生じ、これらは、引通し工程の間に変化する。ある状況下では、
初期張力を再調整するために、オペレーターが介在する必要がある。これらの問題を回避するために、WO 02/101132に見られるように、経糸のごく一部分、すなわち分離点の直前に位置する部分のみに張力を付与する(部分的な張力付与)という解決策が存在する。この手段によって、糸フレーム上にかかる全体的な力が減少するのは確かである。しかしながら、これらの解決策には、糸フレームが引通しユニットに対して相対移動する度に部分的な張力付与が緩められ、この移動が行われた後に再度張力を糸に付与しなければならないというデメリットがある。この処理のために個々の構成要素間で必要な相互作用を行うには、通常複雑でコストのかかる方法でのみ実現可能な移動手順及び駆動であって、それにもかかわらず、正確かつ異常なく動作しなければならない移動手順及び駆動が必要とされる。
【0009】
互いに相対移動可能な2つの主要ユニットが、重い本体という形態をとり、これに伴う完成が大きいことにより更なる一連の問題が発生するが、これらの重量はまた特定の用途に依存する。しかしながら、分離対象の経糸の位置に対する相対的な引通し位置が、引通し工程の間に連続的に変化するため、2つの主要ユニットの少なくとも一方が周期運動を行うことが不可欠となる。この問題を軽減するために、例えば、WO 92/07127において、移動対象のユニットを軽い部分と重い部分とに分け、軽い部分を重い部分から独立させて、より高い精度で移動させるという解決策が見出されている。
【0010】
張力付与ユニットに対する引通しユニットの相対移動のための他の解決策は、例えば、CH 479735に記載されている。このような解決策においては、例えばレール上又は平らな鋼板上で行われる引通しユニット及び張力付与ユニットの位置決めに高精度が要求されるが、これは従って高コストであり、材料の流れを変更する場合に、柔軟性が結果的に低いレベルとなってしまう。
【0011】
本発明の目的は、挙げられたデメリットを解消することと、機械的に簡単に実行でき、信頼性が高く、正確で、適用において柔軟で、動作の費用効率が高い、経糸層の経糸の改善された張力の再付与を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載の張力付与装置によって達成される。
【0013】
本発明による張力付与装置の重要な特徴は、まず最初に、位置決め機構とロック要素との協調的な作動によって、それが独立して単独でガイドレールに沿って移動できることにある。このために、位置決め機構は単一の駆動機構(drive)を備えるだけでよく、これにより、重量を大きく減少させることに貢献する。この自律的な移動及び減少した重量は共に、装置のとりわけ柔軟な配置を可能にすることに貢献する。装置の信頼度及び精度もガイドレールによって決まるため、装置を配置する場所の床品質については簡単な要件だけが課される。特に、レール系又は鋼板がもはや必要なくなるので、コストが減少する。
【0014】
本発明による張力付与装置の実施形態の有利な態様は、従属請求項2〜8に特定される。
【0015】
実施形態の好ましい態様において、張力付与ユニットは、互いに略平行に整列した3つの棒状部材を有し、これらの棒状部材のうち、第1及び第2棒状部材は、少なくとも1本の経糸用の止め具(stop)をそれぞれ構成し、第3棒状部材は、経糸を捕まえて張力を再付与するために、第1と第2棒状部材との間を通って移動することができる。このような張力付与ユニットによって、原理上は、所望の張力再付与を行うことが可能である。張力付与ユニットを横断するにあたり、第3棒状部材は、中間の空間に経糸層の更なる一部分を収納するために、他の2つの棒状部材から離れた位置へ戻される。従って、この更なる一部分をこの空間内へガイドし、かつ張力付与ユニットと経糸層との間でいかなる詰まり(jamming)も発生しないようにするため、棒状部材の少なくとも1つの一方の自由端は先細りになっていることが好ましい。従って、広範囲の調整が可能で、できるだけ単純かつ省スペースな駆動を確保するために、第3棒状部材は偏心機構を介して移動できることが好ましい。
【0016】
実施形態の更なる好ましい態様において、ロック要素(locking elements)は、クランプ機構又はラッチ機構を有し、これにより、支持部材をガイドレール上の適切な位置に、とりわけ単純に、迅速に、安全に固定することが可能となる。このような機構は、例えば、電気モーターによって又は電磁的に動作可能なアクチュエーターによって実現できる。他方で、各支持部材間の距離のための位置決め機構は、とりわけ単純に、省スペースで実現することができて、また張力付与ユニットの位置決めを十分な精度で可能にするスピンドル駆動機構(spindle drive)を備えることが好ましい。
【0017】
その支持部材が可動式のシャーシに搭載されれば、張力付与装置のとりわけ柔軟な配置が確実に行われる。特に、このような方法で取り付けられた装置は、複数の張力付与フレーム上で運転することができ、これにより、各張力付与フレーム上に張力付与装置を局在させる必要がなくなる。従って、2つの支持部材の一方は、可動式のシャーシに固定的に接続され、シャーシが支持部材と共に移動することが好ましい。これに伴って、支持部材の台として短いシャーシで十分である。
【0018】
上記の目的は、上記張力付与装置と請求項9に記載の張力付与フレームとの組合せによっても達成される。
【0019】
本発明による組合せの重要な特徴は、経糸に張力を再付与するために必要とされる方法において、ガイドレールが張力付与フレームに対して常に正確に整列することにある。
【0020】
本発明による組合せの実施形態の好ましい態様は、従属請求項10及び11によって特定される。
【0021】
従って、ガイドレールが張力付与フレームの一部として設計されることが好ましい。というのも、経糸の一部分だけに張力が付与され、張力付与フレームの力調節については簡単な要件だけを設定すればよいからである。張力付与フレームは全体としてより軽量であるため、これを、張力付与装置に対して相対移動可能に搭載することもできる。この手段によれば、張力付与ユニット自体がロックされる場合、張力付与フレームを張力付与ユニットに対して相対移動させることができる。これにより、張力付与ユニットをフレームに沿って全体的に連続移動させることが可能となり、その結果、経糸層の処理時間が短縮される。
【0022】
上記の目的は、経糸層の経糸を引き通すための請求項12に記載の引通し装置であって、上記の張力付与装置を備えた構成によっても達成される。
【0023】
この発明による引通し装置の重要な特徴は、これによって、本発明による張力付与ユニットのすべての利点が、経糸の分離及び引通しに同時に利用されることにある。従って、特に引通し装置も、張力付与装置の横移動可能なシャーシに搭載することができ、最も単純なケースでは、この張力付与装置の張力付与ユニット上に分離ユニット及び引通しユニットが保持されたまま張力付与装置と一緒に移動される。
【0024】
本発明による引通し装置の有利な更なる実施形態は、従属請求項13によって特定される。
【0025】
従って、分離ユニット及び/又は引通しユニットは、張力付与ユニットを移動させない支持部材に搭載されるのが好ましい。この手段によれば、張力付与ユニットを移動しない場合、特に経糸の連続的な更なる処理を確実に行うことができる。これは、支持部材がロックされ、分離ユニット及び引通しユニットを搭載した他方の支持部材が、張力付与ユニットの移動用の隙間空間を再度作るようにして追跡されるような場合である。
【0026】
また、上記の目的は、上記張力付与装置を用いて経糸層の経糸に張力を再付与する請求項14に記載の方法によっても達成される。
【0027】
従って、本発明による方法の重要な特徴は、支持部材を交互にロックし、張力付与ユニットの位置決め機構をその後作動させることによって、張力付与ユニットが経糸に沿ってとりわけ単純に移動することが可能となり、これにより、複雑な駆動や複雑な運動学がもはや必要とされないことにある。これにより、この方法の特に信頼度及び精度が向上する。
【0028】
本発明による方法の有利な更なる発展は、従属請求項15及び16によって特定される。
【0029】
この方法の好ましい更なる発展において、張力付与ユニットの支持部材が適切な位置に固定されると、糸層が張力付与ユニットに対して相対移動され、これにより、結果として張力付与ユニットが全体的な連続移動を経糸層に沿って行うこととなる。この手段により、ロックされた張力付与ユニットであっても更なる経糸に張力を再付与することが可能となり、これにより、経糸層の処理時間が結果として全体的に短縮されることとなる。
【0030】
この方法のより好ましい更なる発展において、分離ユニット及び引通しユニットは、張力付与ユニットの移動に追従して経糸層に沿って移動され、各場合において、分離された経糸は織機ハーネスの要素に引き通される。従って、本発明による張力の再付与の工程の利点も、同様の方法で経糸の分離及び引通しに利用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、従来のデメリットを解消でき、機械的に簡単に実行でき、信頼性が高く、正確で、適用において柔軟で、動作の費用効率が高い、経糸層の経糸の改善された張力の再付与が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】張力付与フレーム上の、本発明による張力付与ユニットの概略図
【
図2】引通しユニットと、
図1による張力付与フレームとの組合せの実施形態の具体的な態様を示す図
【
図3】
図2による張力付与フレームのガイドレール上の張力付与装置を示す図
【
図4】
図3による張力付与フレームのガイドレール上の張力付与装置の正面図
【
図5】
図3によるガイドレール上の張力付与装置の側面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下において、添付図面を参照して、本発明を、概要図及び実施形態の具体例を用いて詳細に説明する。同一の構成要素、又は同一の機能を備えた構成要素には、同一の参考番号を付す。
【0034】
図1は、張力付与フレームR上の、本発明による張力付与装置Sの概略図を示す。張力付与装置は、2つの案内要素S−11及びS−11’を介してガイドレールFSに沿って移動可能な第1支持部材S−10を備える。この第1支持部材S−10は、ここではキャリアフレームの態様で設計されており、このキャリアフレームの面内において、位置決め機構S−30が張力付与ユニットS−40を移動させるために保持される。位置決め機構S−30は、ここで示されるように、例えばスピンドル駆動機構(spindle drive)を備えることができ、このスピンドル駆動機構を介して、張力付与ユニットS−40は、キャリアフレームの面内を前後に移動することができる。性能及びコストに応じて、例えばラック駆動、ベルト駆動、又は当業者に公知の他の駆動機構等、別の適切な駆動機構を選択することも当然考えられる。ここで張力付与装置S−40は、第2支持部材S−20に固定的に接続されており、同様に案内要素S−21を介してガイドレールFSに沿って移動することができる。より良く理解するために、キャリアフレーム形状の第1支持部材S−10は、棒状の第2支持部材S−20と交差する点においては、途切れているように表現される。しかしながら、実施形態のこの態様において、キャリアフレームは閉じた設計である。このようにして、張力付与装置S全体は、張力付与フレームR上で張力を付与される経糸層KFSの経糸KFに張力を再付与するために、フレームに沿って移動することができる。ガイドレールFS上で第1又は第2支持部材S−10又はS−20を個別にロックするため、ロック要素S−12及びS−22がそれぞれ設けられる。ここでロック要素S−12は、第1支持部材S−10の案内要素S−11又はS−11’の一方と一体化することもできる。あるいは、この場合における第2支持部材S−20のロック要素S−22及び案内要素S−21と同様に、視認方向において正面又は背後に配置することができる。ここではロック要素S−12及びS−22は、電気機械的に作動可能なクランプとして設計されるようになっている。
【0035】
また、張力付与フレームR自体も、必ずしもその必要はないが、張力付与装置Sに対して相対移動可能に搭載することができる。このために、それは、ガイドレールFSに沿った移動を可能にする案内要素R−10及びR−10’を有しうる。張力付与装置S、張力付与ユニットS−40、及び張力付与フレームRの移動のオプションは、個々の両矢印によって示される。
【0036】
張力を付与する対象の経糸層がフレームR上で張力を付与され、張力付与装置SがガイドレールFSに接続されると、張力付与手順を開始することができる。ここで、クランプS−22は最初は閉じており、クランプS−12は開いている。張力付与ユニットS−40が作動し、経糸層KFSの一部分に張力が再付与される。その後、張力が再付与された複数の経糸KFを、例えば、適切な処理ユニットによって分離し、織機ハーネスの要素に引き通すことができる。次の複数の経糸の処理のために、経糸層KFSのうちの、張力が再付与された一部分の処理が終了するまで、支持部材S−10は、位置決め機構S−30によって経糸層KFSに沿って移動される。その後、クランプS−22は開き、クランプS−12は閉じる。すると、張力付与ユニットS−40が経糸層KFSの次の一部分を覆うまで、位置決め機構S−30は、支持部材S−20を経糸層KFSに沿って更に移動させる。この直後、クランプS−22は閉じ、クランプS−12は開き、張力付与ユニットS−40は作動し、経糸層KFSの次の一部分に張力が再付与される。この時に、支持部材S−10を移動させることができる。この間、支持部材S−10は張力付与フレームRに対して相対的に静止したままなので、支持部材S−10による「張力の再付与」のステップにおいても張力が再付与されていない経糸の連続処理が確実に行われるように、張力付与フレームRを張力付与装置Sと反対に移動させることができる。経糸層KFSのすべての経糸KFに張力が再付与されるまで、及び/又は分離され引き通されるまで、支持部材S−10及びS−20の交互の横移動を継続することができる。
【0037】
本発明による張力付与装置SはガイドレールFS上での横移動が可能なため、装置Sを配置する場所の床品質については簡単な要件だけが課される。特に、レール系や鋼板は、もはや個々の構成要素を支持するために必要ではなくなる。また、張力付与装置Sは、単一の駆動系のみを必要とする。この駆動系には、構成要素の移動精度に関し、僅かな要件のみが必要となるだけである。概してこれは、張力付与装置及びこれに搭載される引通し装置に関しては、負担するコストが比較的低く済み、この装置を現場で設置するための準備におけるコスト削減が可能であることを意味する。これに加え、実質的に中断がなく、経糸の分離中であっても支持部材S−10を送り込むことのできる張力付与及び引通し工程が可能となる。また同時に、本発明による張力付与装置は非常に軽量であるため、極めて柔軟に配置することができる。上述のような張力付与工程によって、経糸の一部分のみに常に張力が付与されるため、張力付与フレームRの力調節については、加えて簡単な要件だけが課されることとなる。
【0038】
図2は、引通し装置Eと、
図1による張力付与フレームRとの組合せの実施形態の具体的な態様を示す。引通し装置Eは、ここでは、横断可能なシャーシS−50を更に備えた、本発明の張力付与装置Sをベースとし、分離ユニットE−10と、織機ハーネスの要素内の経糸用の引通しユニットE−20とを更に備える。張力付与ユニットS−40を経糸層KFS上に位置決めするために、第1支持部材S−10及び第2支持部材S−20が、ガイドレールFS上に移動可能に取り付けられる。案内要素S−11及びS−11’によって、引通し装置Eは支持され、同時に方向安定性も与えられる。
【0039】
その結果、張力付与フレームRは固定位置に配置され、引通し装置Eを張力付与フレームRに対して相対移動させることができる。しかしながら、原理上は、張力付与フレームRが、固定位置にある引通しユニットEに沿って通過するといった逆の配置も可能である。ここで、フレームRの幅は、処理対象の最も広い経糸層KFSに少なくとも対応する。フレームRは、処理のために必要な張力を糸層に提供する手段を有する。床面高さにおいては、フレームRはガイドレールFSに強固に接続される。
【0040】
引通し工程の開始時には、引通し対象の経糸が張力付与フレームRに運ばれ、経糸層KFSは張力付与フレームR上で張力を付与される。筬の使用時には、張力付与フレームRはそのために設けられた台にクランプされる。その後、引通し装置Eは、経糸層KFSの始めに位置決めされ、引通し工程のために準備される。引通し工程においては、複数の綜絖枠及び/又は複数の綜絖キャリアレール、並びに引通しパターンに応じて必要な複数のベーンキャリアレールが、このために設けられた台に挿入され、重ねた綜絖及び重ねたベーンの格納場所が一杯にされ、引通しパターンが入力又はプログラムされる。その後、開始動作によって引通し工程は始まり、綜絖、ベーン、筬への引通しは、引通しパターンに従ってプログラムされた最後の経糸KFに至るまで、公知の方法により行われる。経糸が引き通された綜絖及びベーンは、このために設けられたキャリアレール上に、引通しパターンに従って分配される。筬の間隙に引き通すべき最後の経糸KFは、筬から前方に飛び出す。
【0041】
引通し装置EをガイドレールFSに沿って移動させるために、支持部材S−10及びS−20は、クランプS−12及びS−22(
図3に詳細に図示及び注釈付けする)をそれぞれ有する。一方のクランプS−12は、引通し装置Eに固定的に接続され、その間にクランプS−22は、ここでスピンドル駆動機構S−31を備える位置決め機構S−30(同様に、
図3に詳細に図示及び注釈付けする)の援助により、引通し装置Eに対して横移動することができる。クランプS−22が固定的に接続されることによって、張力付与ユニットS−40は、糸層KFSに張力を再付与するために、一部分に対して配置される(部分的な張力付与)。
【0042】
初期状態において、引通し装置EがフレームR上で位置決めされ、分離ユニットE−10が経糸を捕まえられる状態にあれば、この時クランプS−22は閉じ、クランプS−12は開く。張力付与ユニットS−40は作動し、これにより、経糸層KFSの一部にわたって、異常なく分離するために必要な張力が経糸KF
に付与される。経糸KFの引通しが開始し、分離ユニットE−10は、最も近い経糸KFを捕まえ、引通しユニットE−20は、捕まえた経糸KFを織機ハーネス(図示せず)の要素に引き通す。この工程中に、分離ユニットE−10が次の分離対象の経糸KFを捕まえることができるように、引通しユニットE−20は、各場合において糸層KFSの方向に一定距離移動する。この前進移動は、スピンドル駆動S−31機構によって行われる。
【0043】
張力付与ユニットS−40によって張力を付与される経糸層の一部分における経糸がすべて引き通されると、クランプS−12は閉じ、クランプS−22は開く。すると、
経糸層KFSの一部分を張力付与ユニットS−40が再度捕まえることができるように、スピンドル駆動S−31は、クランプS−22を経糸層KFSの方向に一定距離移動させる。その後、クランプS−22は閉じ、クランプS−12は開き、張力付与ユニットS−40は作動する。この工程は、処理対象の経糸の最後の経糸KFが引き通されるまで、必要な回数だけ繰り返される。
【0044】
要約すると、引通し工程中、引通しユニットE及び張力付与フレームRは、引通し工程の進行に応じて、経糸KFSの始めから終わりまで相対的に横移動を行う。経糸層KFSの終わりに到達し、最後の経糸KFが引き通されると、織機ハーネスの要素は、引通し装置E及び張力付与フレームRから解放され、これにより、引通し装置及び張力付与フレームRは互いから独立することとなる。分解のために、筬、綜絖を含んだ綜絖枠及び/又は綜絖キャリアレール、並びに経糸と一緒になったベーンを含んだベーンキャリアレールは、引通しユニット及び張力付与ユニットから取り外される。こうして、張力付与フレームR及び引通し装置Eは、次の引通し工程及び/又はその準備のために再度自由になり、これらを互いに空間的に分離させることもできる。
【0045】
原理上は、引通し装置Eの機能ユニットは、張力付与ユニット、分離ユニット、及び引通しユニットといった区分に制限されない。綜絖の目、経糸停止ベーンの目、筬の間隙のそれぞれに経糸KFを引き通すために、分離ユニット、裁断ユニット、及び引通しユニットといった区分を設けることも考えられる。また、更なるユニットを用いて、綜絖キャリアレール又は綜絖枠の調節、綜絖キャリアレール上の綜絖の蓄積、分離及び分配、経糸KFの筬への引通し、ベーンキャリアレール上の経糸停止ベーンの蓄積、分離及び分配、並びに設備のプログラミング、運転及び制御を行うことができる。
【0046】
図3は、
図2による張力付与フレームRのガイドレールFS上の張力付与装置Sを示す。ここで、シャーシS−50は明瞭さのために省略され、これにより、支持部材S−10及びS−20を次のように明瞭に理解することができる。これらは、スピンドル駆動機構S−31を備える位置決め機構S−30を介して互いに接続される。この位置決め機構S−30によって、2つの支持部材S−10とS−20との間の距離を変更することができる。支持部材S−10及びS−20は、ガイドレールFS上に移動可能に取り付けることのできる案内要素S−11及びS−21を有する。これにより、張力付与装置をレールに沿って移動させることができる。支持部材S−10及びS−20には、例えば電気機械的に作動可能なクランプS−12及びS−22がそれぞれ取り付けられている。これにより、クランプS−12、S−22を交互にロックし、位置決め機構S−30を対応させて作動させることで、張力付与装置SをレールFS上において段階的に移動させることが可能となる。スピンドル駆動機構S−31は第1支持部材S−10上に保持され、張力付与ユニットS−40は、第2支持部材S−20上に保持される。ここで、張力付与ユニットS−40は最初に、位置決め機構S−30によって規定される経路上を横移動することができる。このために、クランプS−12は閉じており、クランプS−22は開いている。クランプS−22を閉じてクランプS−12を開くことによって、張力付与ユニットS−40は、この横断経路を越えて更に移動することが可能となる。この結果、支持部材S−10とS−20との間の距離は、位置決め機構S−30の作動によって再度大きくなり、第1支持部材S−10は、いわば、第2支持部材S−20から距離を置いて位置する。こうなると、クランプS−12は今度は閉じられ、クランプS−22は開かれる。これにより、ロックされた支持部材S−10は、張力付与ユニットS−40による繰返し前進移動のための推力支台(thrust abutment)としての機能を果たすことができる。複数の経糸KFに張力を再付与するために、複数の経糸KFは、一方では張力付与ユニットの2つの棒状部材S−41及びS−41’と、第3棒状部材S−42との間に収容され、第3棒状部材S−42は、2つの棒状部材S−41とS−41’との間の中間空間を通して旋回させることができる。その結果、棒状部材S−41とS−41’は、第3棒状部材S−42によって捕まえられた少なくとも1本の糸KF用の止め具(stop)を構成する。その後、このようにして張力が再付与された糸KFは、容易に分離し、続いて織機ハーネスの要素に引き通すことができる。
【0047】
図4は、
図3によるガイドレールFS上の張力付与装置Sの正面図を示す。この図においては、特に位置決め機構S−30を次のように明瞭に理解することができる。クランプS−12が閉じられると、これは、張力付与ユニットS−40を両矢印によって示された方向に横移動することができる。逆に、クランプS−22が閉じクランプS−12が開いた状態で位置決め機構S−30が作動すると、スピンドル駆動機構S−31は更に押される。従って、経糸層KFS上における、張力付与ユニットS−40の段階的な継続移動が可能である。張力付与ユニットS−40が追跡される間に、張力付与フレームRが支持部材S−10と反対に横移動すると、連続処理を行なうことができる。これにより、分離ユニットE−10は、中断することなく経糸KFを分離することができる。経糸KFを確実に捕えるために、張力付与ユニットの棒状部材S−41及びS−41’は共に、先細りになった自由端を有している。一方、第3棒状部材S−4
2は、糸KFを損傷しないようにローラー状に設計されている。特に側面図において良く理解できるが、張力付与装置Sの小型で軽量の構造によって、張力付与装置Sのとりわけ柔軟な配置を確実に行うことが可能となり、引通し装置の台に更なる機能ユニットを設置するための空間が生じる。本発明による張力付与装置Sが取り付けられることで、引通し装置Eは、経糸KFの、とりわけ信頼性の高い分離と、同時に引通しとを可能にする。
【0048】
最後に、
図5は、
図3によるガイドレールFS上の張力付与装置Sの実施形態の可能な態様の側面図を示す。既に説明された構成要素に加えて、ここでは、第3棒状部材S−42が経糸KFに対してどのように旋回されるかを明瞭に理解することができる。このために、占める場所がより少なく済み、かつ同時に長い経路となるものに亘っても単純な位置決めを可能にする偏心機構S−43が設けられる。張力付与装置Sの側面図においては、加えてロック要素S−12を理解することができる。ロック要素S−12は、(背後に位置しているため見えないロック要素S−22と同様に)支持部材S−10又はS−20の中に凹部をそれぞれ設けており、凹部内を走るガイドレールFSに対して、これらの支持部材S−10又はS−20をクランプS−12及びS−22によって閉じることができる。
【0049】
このように、本発明による張力付与装置Sは、独立したユニットとして配置することもできるが、更なる機能的構成要素を有する引通し装置の構造のために、高い機能的基準も加えて提供する。その簡単な構造によって、とりわけ信頼性が高くなり、配置が柔軟になり、かつその製造とメンテナンスとの両方に関して費用効率が向上する。これらの利点は、このような張力付与装置を備える引通し機にも本来伴うものであって、これらの利点により、引通し工程の質及び速度を大きく改善することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、織機に経糸を引き通す引き通し装置に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
E−10 分離ユニット
E−20 引通しユニット
KFS 経糸層
KF 経糸
FS ガイドレール
R 張力付与フレーム
S 張力付与装置
S−10、S−20 支持部材
S−11、S−11’、S−21 案内要素
S−12、S−22 ロック要素
S−30 位置決め機構
S−31 スピンドル駆動機構
S−40 張力付与ユニット
S−41 第1棒状部材
S−41’ 第2棒状部材
S−42 第3棒状部材
S−43 偏心機構
S−50 シャーシ