特許第5719692号(P5719692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719692
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】プソイドフルクトースの製造法
(51)【国際特許分類】
   C07H 1/08 20060101AFI20150430BHJP
   C07H 3/02 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   C07H1/08
   C07H3/02
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-119567(P2011-119567)
(22)【出願日】2011年5月27日
(65)【公開番号】特開2012-246254(P2012-246254A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】511046265
【氏名又は名称】山下 政続
(73)【特許権者】
【識別番号】503186560
【氏名又は名称】株式会社ベスビオ
(73)【特許権者】
【識別番号】397019287
【氏名又は名称】コスメテックスローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】山下 政続
(72)【発明者】
【氏名】奥田 吉則
(72)【発明者】
【氏名】松田 幸助
(72)【発明者】
【氏名】松田 朋剛
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−153591(JP,A)
【文献】 特開2001−354690(JP,A)
【文献】 特開2004−143062(JP,A)
【文献】 香川県産業技術センター研究報告,2008年,No.8,Page.62-64
【文献】 香川県産業技術センター研究報告,2010年,No.10,Page.56-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 1/08
C07H 3/02
CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
さとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣を分画分子量180以上のナノろ過膜または限外ろ過膜で膜処理し、
前記膜処理により糖濃度が10重量%以上、プソイドフルクトース組成が40重量%以上の膜透過液を製造し、
前記膜処理により得られた膜透過液を擬似移動層カラムでクロマト分離することによりプソイドフルクトースを得る
ことを特徴とするプソイドフルクトースの製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣からプソイドフルクトースを得る製造法に関する。詳しくは、糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣から得られる分子量180以上の分画物を擬似移動層カラムでクロマト分離してプソイドフルクトースを得ることを特徴とするプソイドフルクトースの製造法に関する。
本明細書において、糖蜜とは、さとうきび搾汁から遠心分離によって砂糖を除去して残った残渣のことをいい、糖蜜アルコール発酵蒸留残渣とは、前記糖蜜を酵母によってアルコール発酵させた後、蒸留して得られる残渣のことをいい、黒糖アルコール発酵蒸留残渣とは、黒糖焼酎の製造で得られる蒸留残渣及びラム酒の製造で得られる蒸留残渣などのことをいう。
【背景技術】
【0002】
自然界において、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、リボース、キシロースなどは、多量に存在する単糖の代表的なものとして知られている。
一方、自然界に微量しか存在しない単糖は非常に多く、プソイドフルクトース、アロピラノース、アリトールなど約50種類存在すると言われており、低カロリーのもの、糖吸収を抑制し糖尿病を予防や改善するもの、動脈硬化を予防や改善するもの、抗菌作用、活性酸素産生抑制作用などを示すものなどが基礎研究によって解明され、食品や化粧品分野への高付加価値の利用の研究が盛んに行われ始めている。これらの単糖は、微量しか存在していないためにほとんどは市販されておらず、市販されていても大変高価である。そのために実用的には使用されていないのが現状であるが、大量生産できれば製造価格も安価になり、種々の用途に使用できるものである。
【0003】
自然界に微量しか存在しない単糖の内、プソイドフルクトースの製造方法として、アルカリゲネス属の細菌によるタリトールから産生する方法(特許文献1、特許文献2)、グルコノバクター属の細菌によるアリトール(アロ−ヘキシトール)から産生する方法(特許文献3)、シュードモナス属の細菌の産生するD−ケトヘキソース・3−エピメラーゼ酵素による変換反応による方法(特許文献4)、焙煎したコーヒー豆の外皮、シルバースキンから抽出する方法(特許文献5)などが知られている。
プソイドフルクトースは、さとうきび由来の糖蜜中にも存在することが知られている(非特許文献1)。黒砂糖、黒かりんとう、ウイスターソース、ちんすこう、スポンジケーシなどの食品にも0.01〜0.13%含有されることが報告されている(非特許文献2)。
高純度のプソイドフルクトースを得るために、フルクトースとの混合物からカルシウム型陽イオン交換樹脂の擬似移動層カラムによるクロマト分離方法(特許文献6)、アロピラノースとの混合物からカルシウム型陽イオン交換樹脂の擬似移動層カラムによるクロマト分離方法(特許文献7)、フルコース、グルコース及びマンノースとの混合物からカルシウム交換Y型ゼオライトの擬似移動層カラムによるクロマト分離方法(特許文献8)が知られている。
【0004】
しかしながら、アルカリゲネス属やグルコノバクター属の微生物による製造法、あるいはシュードモナス属の細菌の産生する酵素による製造法では、安全性の問題から微生物由来の不純物の除去、酵素の調製における不純物の除去をしなければならないという問題や、原料に用いるフルクトースやその他の単糖などを分離しなければならないという問題があった。
焙煎したコーヒー豆の外皮、シルバースキンから抽出する方法では、得られるプソイドフルクトースの収率が0.3〜0.8%と低く、経済的に大量に得られないという問題があった。黒砂糖、黒かりんとうなどの食品からプソイドフルクトースを抽出する方法は経済的に困難であり、実用化はされていないのが現状である。
微生物や酵素によるプソイドフルクトースの製造、または異性化反応によるプソイドフルクトースの製造においては、イオン交換樹脂による脱塩やカルシウム型陽イオン交換樹脂やカルシウム交換Y型ゼオライトの擬似移動層カラムによるクロマト分離方法によって高純度のプソイドフルクトースを得る方法が知られているが、限外ろ過膜やナノろ過膜などの膜による精製方法は知られていない。
コーヒー豆の外皮やシルバースキンなどの食品副産物からのプソイドフルクトースの抽出法においては、カルシウム型陽イオン交換樹脂やカルシウム交換Y型ゼオライトの擬似移動層カラムによるクロマト分離方法、及び限外ろ過膜やナノろ過膜などの膜による精製方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−228687号公報
【特許文献2】特開平8−103286号公報
【特許文献3】特開平9−56390号公報
【特許文献4】特開平6−125776号公報
【特許文献5】特開2004−143062号公報
【特許文献6】特開2001−354690号公報
【特許文献7】特開2006−153591号公報
【特許文献8】特開昭64−50893号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】International Sugar Journal, 65,105-106(1963)
【非特許文献2】Food Sci. Technol. Res., 12(2), 137-143(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、さとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣や黒糖アルコール発酵蒸留残渣の中に、プソイドフルクトースが高濃度で含有されていることを発見し、これらのアルコール発酵蒸留残渣より得られる分子量180以上の分画物から高純度のプソイドフルクトースを経済的に安価に得られることを見出した。
【0008】
従って、本発明の目的は、これまで飼料や肥料としてしか利用されていなかったさとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣や黒糖アルコール発酵蒸留残渣からプソイドフルクトースを得る方法を提供することであり、詳しくは、糖蜜アルコール発酵蒸留残渣や黒糖アルコール発酵蒸留残渣から得られる分画分子量180以上の分画物から、高純度のプソイドフルクトースを高収率で得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、さとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣を分画分子量180以上のナノろ過膜または限外ろ過膜で膜処理し、前記膜処理により糖濃度が10重量%以上、プソイドフルクトース組成が40重量%以上の膜透過液を製造し、前記膜処理により得られた膜透過液を擬似移動層カラムでクロマト分離することによりプソイドフルクトースを得ることを特徴とするプソイドフルクトースの製造法に関する。
【発明の効果】
【0012】
発明によれば、プソイドフルクトースがさとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣に高濃度で含まれることにより、容易に高純度のプソイドフルクトースを得ることができる。
【0013】
発明によれば、プソイドフルクトースがさとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣から得られる分子量180以上の分画物に、より高濃度で含まれることにより、容易に、より高純度のプソイドフルクトースを高収率で得ることができる。
【0014】
発明によれば、プソイドフルクトースがさとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣から得られる分子量180以上の分画物を擬似移動層カラムでクロマト分離することにより、工業的に有効な高純度のプソイドフルクトースを連続的に大量生産することができ、これにより、プソイドフルクトースを食品、嗜好品、化粧品、石鹸やシャンプーなどのトイレタリー品、医薬部外品、飼料などに経済的な価格で提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に用いられるさとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣とは、さとうきびの搾汁から砂糖を製造する工程において発生する糖蜜を酵母によってアルコール発酵させた後、アルコール蒸留して得られる残渣である。
本発明のさとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣に使用される糖蜜とは、さとうきびの搾汁から砂糖を製造する工程において、遠心分離によって砂糖を除去して残った残渣であり、例えば、原糖製造工場における一番白下、二番白下、製糖廃蜜、および精製糖製造工場における洗糖蜜、ブラウンリカー、製糖廃蜜などが挙げられる。特に製糖廃蜜とは、一般に糖蜜と呼ばれ、さとうきびの搾汁から砂糖の大部分を除去して残った残渣であって、製糖工場で最終的に得られ、経済的に砂糖を回収できない粘稠な液体である。
【0016】
本発明に用いられるさとうきび由来の糖蜜類である黒糖アルコール発酵蒸留残渣とは、黒糖焼酎の製造で得られる蒸留残渣、ラム酒の製造で得られる蒸留残渣などである。
本発明のさとうきび由来の黒糖アルコール発酵蒸留残渣に使用される黒糖とは、さとうきびの搾汁を水分約5%まで濃縮して得られる黒褐色の固体、ブロックまたは粉状の濃縮物であり、前記の糖蜜と白砂糖などの原料糖と加熱混合して得られる加工黒糖、再生糖などがある。
ラム酒の製造に用いられる原料としては、前記記載の糖蜜、黒糖、加工黒糖、再生糖などが挙げられる。
【0017】
本発明に用いられる糖蜜アルコール発酵蒸留残渣または黒糖アルコール発酵蒸留残渣は、アルコール発酵酵母を分離したもの、また分離せずに酵母を含有している固体または液体であってもよい。
本発明に用いられる糖蜜アルコール発酵蒸留残渣で酵母を分離した代表的な液体のものは、一般に水分65〜75%、糖分15〜25%、塩類3〜10%、その他にポリフェノール、たんぱく質、有機酸などから構成されている。乾燥物のものは、糖分50〜65%、塩類15〜25%、その他にポリフェノール、たんぱく質、有機酸、水分などから構成されている。
黒糖アルコール発酵蒸留残渣の成分は、糖蜜アルコール発酵蒸留残渣の成分とほとんど同様である。
【0018】
プソイドフルクトース(Pseudofructose、Ribo-hexulose、Allulose、Altrulose、Erythro-hexulose 、Ribo-2-ketohexose、6 - (hydroxymethyl) oxane -2,3,4,5 - tetrol、IUPAC名:(3R,4R,5R)-1,3,4,5,6-pentahydroxyhexan-2-one、CASNo.551−68−8)とは、六炭糖に分類される単糖の一種であり、希少糖である。希少糖とは、自然界にその存在量が少ない単糖とその誘導体のことをいう。
プソイドフルクトースは、下式(化1)に示す構造を有している。
【0019】
【化1】
【0020】
本発明のプソイドフルクトースの製造法は、さとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣からプソイドフルクトースを得る方法である。
本発明のプソイドフルクトースの製造法としては、さとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣を、活性炭、合成吸着剤などの吸着剤によって脱色精製してプソイドフルクトースを得る方法や、さとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣を、分画分子量180以上のナノろ過膜や限外ろ過膜などで膜処理して得られる膜透過液からプソイドフルクトースを得る方法がある。
【0021】
以下、さとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣を分画分子量180以上のナノろ過膜や限外ろ過膜などで膜処理して得られる膜透過液からプソイドフルクトースを得る方法について説明する。
【0022】
糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣は、ナノろ過膜や限外ろ過膜などで膜処理する前に、異物除去の目的でろ過することが好ましい。ろ過の方法としては、特に限定されないが、食品工業で広く用いられているケイソウ土ろ過、スクリーンろ過によるろ過、分画分子量50万以上の限外ろ過膜法や精密ろ過膜法などが挙げられる。ろ過による方法の他に、遠心分離によって異物を除去してもよい。
【0023】
糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣を、分画分子量180以上のナノろ過膜や限外ろ過膜などで膜処理する。
分画分子量180以上とする理由は、プソイドフルクトースの分子量が180であるからであり、プソイドフルクトースを膜透過させるためである。分画分子量180以上のナノろ過膜や限外ろ過膜などで膜処理することにより、糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣から、プソイドフルクトースを含有する膜透過液が得られる。
【0024】
本発明において、膜透過液を得るためのナノろ過膜は、分画分子量180〜1000のものを使用することが好ましい。分画分子量1000以下のナノろ過膜を透過させることにより、分子量1000を超える化合物が膜透過液に含まれることを防ぐことができ、効率的にプソイドフルクトースの純度を高めることができる。
本発明の分画分子量180〜1000のナノろ過膜で処理することによって得られる膜透過液は、プソイドフルクトース以外に、分画分子量以下の分子量を有する、ポリフェノール、単糖、5糖類以下の糖類、塩類、有機酸、アミノ酸などから構成されていると推定される。
ナノろ過膜処理を実施する前に、分画分子量1000〜10万の限外ろ過膜で処理してもよい。これにより、着色物質を除去することができ、効率的に膜透過液を得ることができる。
分画分子量180〜1000のナノろ過膜は、プソイドフルクトースが透過する膜であれば良く、酢酸セルロース系、ポリサルホン系、ポリエーテルサルホン系、ポリアミド系などの高分子膜が好適に用いられる。
【0025】
本発明において、膜透過液を得るための限外ろ過膜は、分画分子量1000〜10万の限外ろ過膜のものが好ましく、より好ましくは分画分子量3000〜2万のものを使用することが、経済的な処理量や分離膜の汚染防止の点から望ましい。分画分子量2万を超える分離膜で得られる膜透過液は、糖蜜アルコール発酵蒸留残渣または黒糖アルコール発酵蒸留残渣中に含まれる高分子量の黒色色素成分を含むために、活性炭などによる脱色工程が必要となる。
本発明の分画分子量1000〜10万の限外ろ過膜は、プソイドフルクトースが透過する膜であれば良く、高分子材料を用いる有機膜やセラミックなどの無機膜に大別され、高分子膜としては酢酸セルロース系、ポリアクリロニトリル系、ポリサルホン系、ポリエーテルサルホン系、ポリフッ化ビニリデン系などが挙げられる。
本発明の分画分子量1000〜10万の限外ろ過膜で処理することによって得られる膜透過液は、プソイドフルクトース以外に、分画分子量以下の分子量を有する、ポリフェノール、単糖、2糖類以上の糖類、塩類、有機酸、アミノ酸、低分子量の黒色色素などから構成されていると推定される。
【0026】
膜処理において、ナノろ過膜や限外ろ過膜などの分離膜を金属、セラミック、プラスチックなどのフィルタ部材に装着した管状のろ過膜装置が通常使用される。膜構造や膜材質についてはいろいろなものがあるが特定するものではない。使用温度が40℃以上に耐えられる仕様の膜がろ過能力や雑菌による汚染を考慮すると好ましい。
【0027】
膜処理によって得られた膜透過液は、プソイドフルクトースの純度を上げるために、擬似移動層カラムによるクロマト分離を行うことが好ましい。
糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣の膜透過液の糖濃度が10重量%以上、プソイドフルクトース組成が40重量%以上の溶液を、擬似移動層により連続的にクロマト分離することにより、工業的に有効な高純度のプソイドフルクトースを高収率で連続的に大量生産することができる。
擬似移動層のカラムに充填する吸着剤として、プソイドフルクトースに対して高い吸着能力を有するカルシウム型強酸性陽イオン交換樹脂が好適に用いられるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明で得られたプソイドフルクトースの応用分野としては、活性酸素産生抑制作用、抗糖尿病作用、抗動脈硬化症作用などの生理機能を有する菓子類、清涼飲料、乳飲料、機能性食品、健康食品、特定保健用食品、調味料などの食品分野、ペットフードなどの飼料分野、クリーム、口紅などの基礎化粧品、石鹸、洗顔クリーム、ボディローション、ボディシャンプー、ヘアケアーシャンプー、歯磨製品、入浴剤などのトイレタリー・サニタリー分野、口腔清涼剤、軟膏などの医薬品・医薬部外品分野などが挙げられる。これらの製品は、本発明品を添加する以外は通常と同様の方法で調製される。
【0029】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は当該実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1
糖分18重量%からなる黒色の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣(日本アルコール産業株式会社製)の液体品5Lを80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。
その後、分画分子量5千の限外ろ過膜(ダイセル化学工業(株)製、NADIRスパイラル型モジュール、型番:UP005、膜材質:ポリエーテルサルホン)で限外ろ過を実施して黄色の膜透過液3.3Lを得た。この膜透過液の糖分の組成を分析したところ、プソイドフルクトースの純度は75.6%であった。
その後、カルシウム型の強酸性陽イオン交換樹脂:アンバーライトCR1310(ロームアンハース社製)1.13Lを充填したカラム(カラム内径20mm、高さ90cm、4本)からなる擬似移動層方式クロマト分離装置(オルガノ社製)を用いて、充填カラム内温度60℃で濃縮膜透過液を原液として、原液供給量:0.080L、水供給量:0.490L、プソイドフルクトース区分液抜取量(吸着質画分):0.287L、その他糖区分液抜取量(非吸着質画分):0.287L、循環量:0.903L、1サイクルあたりの時間:0.71Hの条件で運転した。
定常状態において抜き出された吸着質画分のプソイドフルクトースの純度は96.1%であった。回収率は95.5%であった。
本明細書の実施例および比較例において、プソイドフルクトースの組成の分析は、純度99.2%のD−プソイドフルクトースの試薬(東京化成工業(株)製品)を標準物質として下記の条件で実施した。
使用機器:ダイネクスHPAEC−PAD:DX−500、カラム:CarboPac PA−20カラム、溶離条件:10mM NaOH(0.4mL/min)
ポストカラムシステム:ポストカラムサプレッサー 300mM NaOH
他に純度98%以上のグルコース、スクロース、フラクトースの試薬を標準物質として同様に分析した。分析の結果、各糖の溶出順序は、グルコース(RT:11.2 min)、スクロース(RT:12.7 min)、フラクトース(RT:14.5 min)、プソイドフルクトース(RT:18.0 min)であった。
【0031】
実施例2
糖分18重量%からなる黒色の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣の液体品(日本アルコール産業株式会社製)5Lを80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。
その後、分画分子量1000に相当するナノろ過膜(コーク社製、スパイラル型モジュール、型番:MPS−36)で、水を補給しながらナノろ過膜処理を実施して淡黄色の膜透過液2.5Lを得た。この膜透過液の糖分の組成を分析したところ、プソイドフルクトースの純度は79.6%であった。
その後、カルシウム型の強酸性陽イオン交換樹脂:アンバーライトCR1310(ロームアンハース社製)1.13Lを充填したカラム(カラム内径20mm、高さ90cm、4本)からなる擬似移動層方式クロマト分離装置(オルガノ社製)を用いて、充填カラム内温度60℃で濃縮膜透過液を原液として、原液供給量:0.080L、水供給量:0.490L、プソイドフルクトース区分液抜取量(吸着質画分):0.287L、その他糖区分液抜取量(非吸着質画分):0.287L、循環量:0.903L、1サイクルあたりの時間:0.71Hの条件で運転した。
定常状態において抜き出された吸着質画分のプソイドフルクトースの純度は98.1%であった。回収率は96.5%であった。
【0032】
実施例3
糖分18重量%からなる黒色の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣の液体品(日本アルコール産業株式会社製)5Lを80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。
その後、分画分子量10万の限外ろ過膜(ダイセル化学工業(株)製、スパイラル型モジュール、型番:US100、膜材質:ポリサルホン)で、水を補給しながら限外ろ過膜処理を実施して黒色の膜透過液3.8Lを得た。この膜透過液の糖分の組成を分析したところ、プソイドフルクトースの純度は73.5%であった。
その後、カルシウム型の強酸性陽イオン交換樹脂:アンバーライトCR1310(ロームアンハース社製)1.13Lを充填したカラム(カラム内径20mm、高さ90cm、4本)からなる擬似移動層方式クロマト分離装置(オルガノ社製)を用いて、充填カラム内温度60℃で濃縮膜透過液を原液として、原液供給量:0.080L、水供給量:0.490L、プソイドフルクトース区分液抜取量(吸着質画分):0.287L、その他糖区分液抜取量(非吸着質画分):0.287L、循環量:0.903L、1サイクルあたりの時間:0.71Hの条件で運転した。
定常状態において抜き出された吸着質画分のプソイドフルクトースの純度は97.9%であった。回収率は96.1%であった。
【0033】
実施例4
黒色の黒糖アルコール発酵蒸留残渣の液体品(奄美大島産)を固形分30%になるように水を加えて5Lに調製し、80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。
その後、分画分子量3万の限外ろ過膜(ダイセル化学工業(株)製、NADIRスパイラル型モジュール、型番:UP030、膜材質:ポリエーテルサルホン)で限外ろ過を実施して黒褐色の膜透過液3.3Lを得た。この膜透過液の糖分の組成を分析したところ、プソイドフルクトースの純度は65.3%であった。
その後、カルシウム型の強酸性陽イオン交換樹脂:アンバーライトCR1310(ロームアンハース社製)1.13Lを充填したカラム(カラム内径20mm、高さ90cm、4本)からなる擬似移動層方式クロマト分離装置(オルガノ社製)を用いて、充填カラム内温度60℃で濃縮膜透過液を原液として、原液供給量:0.080L、水供給量:0.490L、プソイドフルクトース区分液抜取量(吸着質画分):0.287L、その他糖区分液抜取量(非吸着質画分):0.287L、循環量:0.903L、1サイクルあたりの時間:0.71Hの条件で運転した。
定常状態において抜き出された吸着質画分のプソイドフルクトースの純度は95.6%であった。回収率は96.7%であった。
【0034】
実施例5
糖分18重量%からなる黒色の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣の液体品(日本アルコール産業株式会社製)5Lを80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。
その後、分画分子量180に相当するナノろ過膜(ダイセル化学工業(株)製、スパイラル型モジュール、型番:NP030、膜材質:ポリエーテルサルホン)で、水を補給しながらナノろ過膜処理を実施して淡黄色の膜透過液1.5Lを得た。この膜透過液の糖分の組成を分析したところ、プソイドフルクトースの純度は85.3%であった。
その後、カルシウム型の強酸性陽イオン交換樹脂:アンバーライトCR1310(ロームアンハース社製)1.13Lを充填したカラム(カラム内径20mm、高さ90cm、4本)からなる擬似移動層方式クロマト分離装置(オルガノ社製)を用いて、充填カラム内温度60℃で濃縮膜透過液を原液として、原液供給量:0.080L、水供給量:0.490L、プソイドフルクトース区分液抜取量(吸着質画分):0.287L、その他糖区分液抜取量(非吸着質画分):0.287L、循環量:0.903L、1サイクルあたりの時間:0.71Hの条件で運転した。
定常状態において抜き出された吸着質画分のプソイドフルクトースの純度は98.7%であった。回収率は97.5%であった。
【0035】
実施例6
糖分18重量%からなる黒色の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣(日本アルコール産業株式会社製)の液体品3Lと、固形分20%になるように調製した黒色の黒糖アルコール発酵蒸留残渣の液体品(奄美大島産)2Lを混合してから80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。
その後、分画分子量5千の限外ろ過膜(ダイセル化学工業(株)製、NADIRスパイラル型モジュール、型番:UP005、膜材質:ポリエーテルサルホン)で限外ろ過を実施して黄色の膜透過液3.2Lを得た。この膜透過液の糖分の組成を分析したところ、プソイドフルクトースの純度は69.1%であった。
その後、カルシウム型の強酸性陽イオン交換樹脂:アンバーライトCR1310(ロームアンハース社製)1.13Lを充填したカラム(カラム内径20mm、高さ90cm、4本)からなる擬似移動層方式クロマト分離装置(オルガノ社製)を用いて、充填カラム内温度60℃で濃縮膜透過液を原液として、原液供給量:0.080L、水供給量:0.490L、プソイドフルクトース区分液抜取量(吸着質画分):0.287L、その他糖区分液抜取量(非吸着質画分):0.287L、循環量:0.903L、1サイクルあたりの時間:0.71Hの条件で運転した。
定常状態において抜き出された吸着質画分のプソイドフルクトースの純度は97.1%であった。回収率は96.9%であった。
【0036】
実施例7
糖分18重量%からなる黒色の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣(日本アルコール産業株式会社製)の液体品5Lを80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。
その後、分画分子量5千の限外ろ過膜(ダイセル化学工業(株)製、NADIRスパイラル型モジュール、型番:UP005、膜材質:ポリエーテルサルホン)で限外ろ過を実施して黄色の膜透過液3.3Lを得た。この膜透過液の糖分の組成を分析したところ、プソイドフルクトースの純度は75.6%であった。
その後、分画分子量180に相当するナノろ過膜(ダイセル化学工業(株)製、スパイラル型モジュール、型番:NP030、膜材質:ポリエーテルサルホン)で、水を補給しながらナノろ過膜処理を実施して淡黄色の膜透過液1.2Lを得た。この膜透過液の糖分の組成を分析したところ、プソイドフルクトースの純度は88.3%であった。
その後、カルシウム型の強酸性陽イオン交換樹脂:アンバーライトCR1310(ロームアンハース社製)1.13Lを充填したカラム(カラム内径20mm、高さ90cm、4本)からなる擬似移動層方式クロマト分離装置(オルガノ社製)を用いて、充填カラム内温度60℃で濃縮膜透過液を原液として、原液供給量:0.080L、水供給量:0.490L、プソイドフルクトース区分液抜取量(吸着質画分):0.287L、その他糖区分液抜取量(非吸着質画分):0.287L、循環量:0.903L、1サイクルあたりの時間:0.71Hの条件で運転した。
定常状態において抜き出された吸着質画分のプソイドフルクトースの純度は99.0%であった。回収率は98.0%であった。
【0037】
実施例8
黒色の黒糖アルコール発酵蒸留残渣の液体品(奄美大島産)を固形分30%になるように水を加えて5Lに調製し、80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。
その後、活性炭100gを加えて70℃で30分間撹拌処理して、茶色の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣の脱色液を得た。この茶色の脱色液の糖分組成を分析したところ、プソイドフルクトースの純度は71.3%であった。
【0038】
比較例1
糖分45重量%、水分20重量%、塩類20重量%、その他15重量%からなる黒色の種子島産糖蜜(新光糖業株式会社製)に含まれる糖分中のプソイドフルクトースを分析したところ、純度は約0.1%であった。
【0039】
比較例2
糖分93.5重量%、水分4.7重量%を含む黒色の種子島産黒糖(沖ケ浜田生産者組合製)に含まれるプソイドフルクトースを分析したところ、純度は約0.05%であった。
【0040】
比較例3
糖分45重量%、水分20重量%、塩類20重量%、その他15重量%からなる黒色の種子島産糖蜜(新光糖業株式会社製)1kgに水4Lを加え、80℃に加熱してケイソウ土ろ過を行った。
その後、分画分子量5千の限外ろ過膜(ダイセル化学工業(株)製、NADIRスパイラル型モジュール、型番:UP005、膜材質:ポリエーテルサルホン)で限外ろ過を実施して黄色の膜透過液3.3Lを得た。この膜透過液の糖分の組成を分析したところ、プソイドフルクトースの純度は0.15%であった。
その後、カルシウム型の強酸性陽イオン交換樹脂:アンバーライトCR1310(ロームアンハース社製)1.13Lを充填したカラム(カラム内径20mm、高さ90cm、4本)からなる擬似移動層方式クロマト分離装置(オルガノ社製)を用いて、充填カラム内温度60℃で濃縮膜透過液を原液として、原液供給量:0.080L、水供給量:0.490L、プソイドフルクトース区分液抜取量(吸着質画分):0.287L、その他糖区分液抜取量(非吸着質画分):0.287L、循環量:0.903L、1サイクルあたりの時間:0.71Hの条件で運転した。
定常状態において抜き出された吸着質画分のプソイドフルクトースの純度は21.4%であった。回収率は39.5%であった。
【0041】
さとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣にはプソイドフルクトースが高い濃度で含まれており、分画分子量180以上のナノろ過膜や限外ろ過膜で処理することによって得られる膜透過液の分画物からは、更に高い濃度のプソイドフルクトースを得ることができることが明らかである。
糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣の分画分子量180以上のナノろ過膜や限外ろ過膜の分離膜処理液を擬似移動層カラムでクロマト分離を行うことにより、高純度のプソイドフルクトースを得ることができることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の製造法によって、さとうきび由来の糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣から得られるプソイドフルクトースは、経済的に高純度で得られるためにその生理機能性を有する食品、機能性食品、化粧品、トイレタリー、飼料、医薬部外品に応用することができる。