【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各試験は以下の方法で行った。
【0048】
1.粒度測定法
レーザー回折・散乱法式粒度測定装置(日機装株式会社製 マイクロトラック MT3300II)を用いて、50%粒径を測定した。なお、50%粒径とは、上述の通り、測定粒子数基準の50%粒径を指す。
【0049】
2.耐環境試験(高温安定性試験)
ガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)をアルミ容器に入れて密封した後、107℃に調温された恒温槽に入れて放置した。その後、任意の時間でガス発生剤を取り出し、ガス発生剤の重量減少率を測定し、分解の有無について確認した。
【0050】
3.燃焼性試験(18ccタンク試験)
ガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)2.0gを容積18ccの燃焼用密閉容器に充填してガス発生剤を燃焼させ、最大到達圧力及び最大圧力への到達時間を計測した。また、この計測値に基づき、圧力発生速度を求めた。
【0051】
4.排ガス測定(18ccタンク試験)
18ccタンク試験後、タンク内のガスをテドラーバックに回収し、ガステック製検知管を用いて生成ガス成分の濃度分析を実施した。
【0052】
5.燃焼性試験(28.3Lタンク試験)
ガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)9.9gを、長尺筒状のハウジングを備えたガス発生器に充填し、28.3Lタンク試験を実施し、圧力−時間曲線を計測した。
【0053】
6.着火性試験
ガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)0.5gを大気中でバーナーにより着火し、ガス発生剤が着火し燃焼するかどうかについて確認した。
【0054】
(実施例1)
硝酸グアニジン55質量部、塩基性硝酸銅40質量部、50%粒径が19.84μmの過塩素酸カリウム5質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、更に0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、次いで、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。その後、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径4.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0055】
(実施例2)
硝酸グアニジン56質量部、塩基性硝酸銅34質量部、50%粒径が19.84μmの過塩素酸カリウム10質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径4.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0056】
(実施例3)
硝酸グアニジン45質量部、塩基性硝酸銅31.2質量部、50%粒径が19.84μmの過塩素酸カリウム15質量部、ポリビニルピロリドン1.4質量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.2質量部、高分散シリカ0.4質量部、酸性白土4.8質量部を混合し、次いで、水16質量部、変性エタノール3質量部を添加し、万能混合機で混練した。その後、押出機にて直径φ1.5mm、長さ2.5mmの円柱物に成形した後、55℃で8時間、110℃で8時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0057】
(実施例4)
硝酸グアニジン55質量部、塩基性硝酸銅40質量部、50%粒径が14.89μmの過塩素酸カリウム5質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径4.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0058】
(実施例5)
硝酸グアニジン55質量部、塩基性硝酸銅40質量部、50%粒径が44.41μmの過塩素酸カリウム5質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径4.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0059】
(実施例6)
硝酸グアニジン56質量部、塩基性硝酸銅34質量部、50%粒径が19.84μmの過塩素酸カリウム10質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径3.2mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0060】
(実施例7)
硝酸グアニジン56質量部、塩基性硝酸銅34質量部、50%粒径が19.84μmの過塩素酸カリウム10質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径2.5mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0061】
(比較例1)
硝酸グアニジン53質量部、塩基性硝酸銅47質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液12質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径4.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で熱処理をして比較例用のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0062】
(比較例2)
硝酸グアニジン55質量部、塩基性硝酸銅40質量部、50%粒径が194.4μmの過塩素酸カリウム5質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径4.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0063】
(比較例3)
硝酸グアニジン40.2質量部、塩基性硝酸銅51質量部、ポリビニルピロリドン1.4質量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2.2質量部、高分散シリカ0.4質量部、酸性白土4.8質量部を混合し、次いで、水16質量部、変性エタノール3質量部を添加し、万能混合機で混練した。その後、押出機にて直径φ1.5mm、長さ2.5mmの円柱物に成形した後、55℃で8時間、110℃で8時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0064】
(比較例4)
硝酸グアニジン59質量部、塩基性硝酸銅21質量部、50%粒径が19.84μmの過塩素酸カリウム20質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径4.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0065】
(比較例5)
硝酸グアニジン55質量部、塩基性硝酸銅40質量部、50%粒径が92.73μmの過塩素酸カリウム5質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径4.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0066】
(比較例6)
硝酸グアニジン55質量部、塩基性硝酸銅40質量部、50%粒径が144.8μmの過塩素酸カリウム5質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径4.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0067】
(比較例7)
硝酸グアニジン55質量部、塩基性硝酸銅40質量部、50%粒径が222.9μmの過塩素酸カリウム5質量部、高分散シリカ0.4質量部を混合し、次いで、0.6質量%のポリビニルアルコール水溶液11質量部を噴霧添加し、その後、90℃で5時間熱処理して顆粒を作製した。次に、ステアリン酸マグネシウム0.4質量部を添加し、直径4.0mm、厚さ1.50mmの円柱物に成形した後、110℃で10時間熱処理して本発明のガス発生剤組成物の成形体(ガス発生剤)を得た。
【0068】
<試験例1.耐環境試験(高温安定性試験)>
実施例2のガス発生剤組成物の成形体を、107℃にて400時間、800時間、1200時間の耐環境試験に投入した。初期重量及び試験後重量から算出した重量減少率を表1に示す。実施例2の重量減少率は1%以下であり、高温条件下における分解はほとんどなくガス発生剤として容認できる性能であることを確認できる。また、この耐環境試験に供した実施例2のガス発生剤について、上記燃焼性試験(18ccタンク試験)にて性能評価を行なった。その結果を表2に示す。耐環境試験を経た実施例2のガス発生剤は、最大到達圧力(PMax)及び最大圧力への到達時間(tPmax)、並びに圧力発生速度(dP/dt)が、初期と比較して変化しておらず、高温安定性に優れていることが分かる。
【0069】
【0070】
【0071】
<試験例2.燃焼性試験(18ccタンク試験)>
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2のガス発生剤組成物成形体について、18ccタンク試験を実施した。その結果を表3に示す。実施例1及び実施例2は、比較例1より最大圧力到達時間(tPmax)が短く、圧力上昇速度(dP/dt)も高い値を示しており、燃焼速度が速くなっていることが分かる。また、50%粒径が異なる過塩素酸カリウムを使用した実施例1と比較例2の比較では、実施例1の方が、最大圧力到達時間(tPmax)が短く、圧力上昇速度(dP/dt)も大きいことから、燃焼速度が速くなっていることを確認できる。また、最大到達圧力(Pmax)も、実施例1の方が比較例2より高くなることが確認できる。
【0072】
【0073】
<試験例3.排ガス測定(18ccタンク試験)>
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2のガス発生剤組成物成形体について、18ccタンク試験後の排ガスを回収し、燃焼後の発生ガス分析を実施した。その結果を表4に示す。実施例1は、発生ガス成分の全てにおいて比較例1及び比較例2より発生量が少ないことを確認できる。また、実施例2においても、実施例1と同程度の結果が得られることが分かる。なお、全てのガス発生剤において塩化水素の生成は認められない。
【0074】
【0075】
<試験例4.燃焼性試験(28.3Lタンク試験)>
実施例3及び比較例3のガス発生剤組成物成形体について、28.3Lタンク試験を実施した。通常、ガス発生器には点火具からの火炎を増幅させるエンハンサー剤が使用されているが、この実験では、エンハンサー剤を取り除いた仕様で行った。その結果を
図3に示す。実施例3は、エンハンサー剤がなくても着火しタンク圧を上昇させているが、比較例3では、着火が起きていないことが分かる。このことから、実施例3のガス発生剤は、着火性に優れることが分かる。また、得られた圧力−時間曲線の結果から、実施例3のガス発生剤が、優れた応答性と十分なガス発生特性とを有することは明らかである。
【0076】
<試験例5.着火性試験>
実施例1、実施例2、実施例3及び比較例4のガス発生剤組成物成形体について、バーナーを用いた着火性試験を実施した。その結果を表5に示す。比較例4のガス発生剤は、酸化剤成分中に占める過塩素酸カリウムの含有量が高過ぎるため、自立燃焼が困難になることが分かる。
【0077】
【0078】
<試験例6.燃焼性試験(18ccタンク試験);過塩素酸カリウム粒径の影響>
過塩素酸カリウム(PP)の50%粒径が異なる実施例1、実施例4、実施例5及び比較例5〜7のガス発生剤組成物成形体について、18ccタンク試験を実施した。その結果を表6に示す。使用した過塩素酸カリウムの50%粒径が小さい程、最大圧力到達時間(tPmax)が速く、圧力上昇速度(dP/dt)が大きくなる傾向を示しており、燃焼速度が速くなることが分かる。その上、50%粒径が小さい程、最大到達圧力(PMax)も大きくなる傾向を示す。これらの例では、酸化剤成分中に占める過塩素酸カリウムの含有量が同一であるため、過塩素酸カリウムの50%粒径を小さくすることで、ガス発生剤の性能向上が達成できることが明らかとなる。また、50%粒径が50μm以下の過塩素酸カリウムを用いることにより、ガス発生剤の燃焼性を向上できることが分かる。
【0079】
【0080】
<試験例7.燃焼性試験(18ccタンク試験);ガス発生剤組成物の成形体形状の影響>
本発明のガス発生剤組成物の成形体において、成形体の形状が燃焼性に与える影響を検証するため、打錠成形体の直径が異なる実施例2、実施例6及び実施例7のガス発生剤組成物の成形体について、18ccタンク試験を実施した。結果を表7に示す。実施例2、実施例6及び実施例7は、同一の組成であるにもかかわらず、直径が小さい程、最大圧力到達時間(tPmax)が短くなるため、最大到達圧力(PMax)の差異は認められないが、結果として、圧力上昇速度(dP/dt)が速くなることが分かる。
【0081】
<試験例8.嵩密度測定;ガス発生剤組成物の成形体形状の影響>
実施例2、実施例6及び実施例7のガス発生剤組成物の成形体について、容積100ccの円筒容器を用いて、成形体の嵩密度の測定を行った。測定結果を表7に示す。ガス発生剤の直径が小さい程、嵩密度が高くなることが分かる。
【0082】
【0083】
ガス発生剤組成物の成形体形状に関する試験例7及び試験例8の結果から、本発明に係るガス発生剤組成物の成形体は、円柱直径が小さい程、圧力上昇速度が速く、燃焼性を向上できることが分かる。この理由は解明されていないが、成形体の直径が小さい程、ガス発生剤単位質量当たりのガス発生剤表面積が大きいため、燃焼性の向上に寄与するものと予想される。
【0084】
更に、本発明のガス発生剤組成物の円柱状成形体においては、直径が小さい程、嵩密度が大きくなるという結果が得られた。これは、該ガス発生剤のガス発生器への充填性が向上することを示すものであるため、単位容積当たりのガス発生剤の充填量を増加でき、ガス発生器の高出力化を達成できるという効果を奏する。また、本発明のガス発生剤組成物の円柱状成形体の直径を小さくすれば、充填性が向上する上、応答性に優れるため、ガス発生器へガス発生剤を充填する容積を小さくすることが可能であり、ガス発生器の小型化を達成できるという効果を奏する。