(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719765
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】構造部品及び背もたれを有する車両座席
(51)【国際特許分類】
B60N 2/44 20060101AFI20150430BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
B60N2/44
A47C7/40
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-505426(P2011-505426)
(86)(22)【出願日】2009年4月22日
(65)【公表番号】特表2011-518072(P2011-518072A)
(43)【公表日】2011年6月23日
(86)【国際出願番号】EP2009002929
(87)【国際公開番号】WO2009130014
(87)【国際公開日】20091029
【審査請求日】2011年10月27日
(31)【優先権主張番号】102008020290.8
(32)【優先日】2008年4月22日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502156098
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】エッケンロス、 ダーク
(72)【発明者】
【氏名】ロブケス、 オルガー
【審査官】
佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許出願公開第02802156(FR,A1)
【文献】
特開2006−051272(JP,A)
【文献】
実開昭59−184234(JP,U)
【文献】
国際公開第2006/055616(WO,A1)
【文献】
国際公開第01/089875(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10324979(DE,A1)
【文献】
特開平09−254689(JP,A)
【文献】
特開平04−329907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/44
A47C 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両座席(10)の背もたれ(20)用の構造部品(21)であって、
少なくとも1つのパネル要素(30)と、
少なくとも1つの第1形状要素(41)及び1つの第2形状要素(42)を含み、且つ前記パネル要素(30)の縁に沿って実質的に延びた補強フレーム(40)と、
前記補強フレーム(40)の平面内に少なくとも部分的に設けられ、前記パネル要素及び前記補強フレームに連結され、前記第1形状要素(41)においてのみ前記補強フレームに連結され、前記第1形状要素の領域で、前記第1の形状要素の50から60%の範囲に広がる補強要素(50)と、を含み、
前記補強要素(50)は安全ベルトのベルトリトラクターを連結するために設けられ、前記ベルトリトラクターに割り当てられたベルト偏向装置(55)が前記第1形状要素(41)に連結され、前記補強要素は前記ベルトリトラクター及び前記ベルト偏向装置の間に作用する力を吸収するように構成された、構造部品。
【請求項2】
前記第1及び/又は第2形状要素(41、42)は少なくとも部分的に突合せ溶接によって前記パネル要素(30)に連結される、請求項1に記載の構造部品(21)。
【請求項3】
前記第1及び/又は第2形状要素(41、42)はU字形状及び/又はC形状及び/又はZ形状として設けられ、
断面において、前記第1及び/又は第2形状要素(41、42)の1つのリム端部又は複数のリム端部は、ファスニングラグなしで設けられる、請求項1又は2に記載の構造部品(21)。
【請求項4】
前記第1形状要素(41)及び前記第2形状要素(42)の両方の互いに対する溶接と、更に前記パネル要素(30)に対する溶接とは、いずれの場合も1つのレーザ溶接動作によって設けられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造部品(21)。
【請求項5】
背もたれ(20)を有し且つ/又はシート部(15)を有し、前記背もたれ(20)及び/又は前記シート部(15)は請求項1〜4のいずれか1項に記載の少なくとも1つの構造部品(21)を有する車両座席(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部品と、背もたれを有する車両座席とに関する。
【背景技術】
【0002】
車両座席用の背もたれは一般に知られている。例えば、文献の独国特許出願公開102006036935号明細書、及び独国特許出願公開102005043084号明細書はそれぞれ、車両のシートベンチ用の背もたれ、及び車両のシートベンチ用の傾斜可能な背もたれを製造するための構造セットを開示する。
【0003】
ここで、後部シートベンチの背もたれの領域に配置される安全ベルトのために生じ得る力を吸収するべく背もたれを補強するために、例えば形状部品から作られたフレームを完全に横切る、すなわち複数のフレームリム又は形状部品に固定された連続形状部品又は補強要素を使用する。しかしながら、ここで使用される補強要素は比較的大きく且つ重く、結果として第一に費用支出が高くなり、第二に上記タイプの背もたれの重量が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、特にベルト力を吸収するための補強要素をかなり軽量であり且つ従って安価でもあるように形成することができ、それにもかかわらず自動車の乗員のために高レベルの安全性を確保にするように、特に車両座席の背もたれ用の構造部品、及び特に車両の後部シートベンチ用の背もたれを有する車両座席を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、特に車両座席の背もたれ用の構造部品であって、少なくとも1つのパネル要素を有し、少なくとも1つの第1形状要素と1つの第2形状要素とを有し且つ実質的にパネル要素の縁に沿って延びる補強フレームを更に有し、補強フレームの平面内に少なくとも部分的に補強要素が設けられ、更に補強要素は第1形状要素とパネル要素とのみに連結されている構造部品によって達成される。本発明によれば、フレームを形成する形状要素の1つのみへの連結の結果として、特に簡単で且つ速い構造部品の製造が可能であるという特別な利点が達成される。
【0006】
上記目的はまた、背もたれを有し且つ適当な場合にはシート部を有し、背もたれ及び/又はシート部が本発明による少なくとも1つの構造部品を有する車両座席、特に車両の後部シートベンチによって達成される。
【0007】
本発明によれば、補強要素は安全ベルトのベルトリトラクターを連結するために提供され、ベルトリトラクターに配置されたベルト偏向装置が第1形状要素及び/又は補強要素に連結されることが特に極めて好ましい。又は、補強要素は、第1形状要素の領域で、第1形状要素の30%〜80%の範囲、好ましくは第1形状要素の40%〜70%の範囲、特に好ましくは第1形状要素の45%〜65%の範囲、特に極めて好ましくは第1形状要素の50%〜60%の範囲に広がることが好ましい。
【0008】
このようにして、特に有利なことに、第一に比較的大きい面積にわたって荷重が分布し、第二にパネル要素も実質的に応力を吸収する形で組み込むことができるように、ベルト力又はベルト固定部品の連結に起因する力をフレームへ又は形状要素から作られた補強フレームへ導入することができる。このようにして、本発明によれば、極めて有利なことに、例えばベルトリトラクターを連結するための実際の補強要素は、比較的軽量且つ安価な形で製造することができ、それにより車両座席又は背もたれの全重量にそれほど関与しない。
【0009】
本発明によれば、第1及び/又は第2形状要素を少なくとも部分的に突合せ溶接によってパネル要素に連結することが特に極めて好ましい。これは詳細には、例えば形状要素の1つのリムがその縁(形状部品に沿って延び且つ実質的に材料厚さに縁の長さを掛けた表面積のみを有する)でパネル要素の面に溶接作業によって連結されることを意味する。また本発明によれば、上記タイプの溶接をレーザー(レーザー溶接)によって行い、(溶接される)パネル要素の形状要素から見て外を向く側からレーザー光線を当てることが好ましい。また本発明によれば、補強要素がパネル要素に及び/又は補強フレームにレーザー溶接によって連結されることが好ましい。
【0010】
また本発明によれば、第1及び/又は第2形状要素は、U字形状及び/又はC形状及び/又はZ形状として設けられることが好ましく、断面において、第1及び/又は第2形状要素の1つのリム端部又は複数のリム端部は、好ましくはファスニングラグ(取付け用出張り)なしで設けられる。本発明は、しかしながら、第1及び/又は第2形状要素は(同様に)ラグを有し得ることを完全に除外しない。
【0011】
本発明によれば、第1及び/又は第2形状要素は、パネル要素への連結の後に比較的高い安定度を有する中空の形状が形成されるような形状又は断面を有することが特に好ましい。本発明によれば、(断面において、パネル要素への連結の結果として中空の形状を形成するように閉じられる開いた側部を有する)U字形状又はC形状は、特にこの目的に適している。しかしながら、本発明によれば、第1及び/又は第2形状要素は、L字形状又はZ形状として設計されることもできる。上記タイプの形状要素によっても、特にパネル要素の変形した縁と共に、中空の形状を作り出す(組立て後に)ことができる。
【0012】
本発明によれば特に、形状要素は、共に閉じた(特に実質的に四角形又は長方形の)補強フレームか或いは単にU字形の配置のみをパネル要素上に形成する。完全に閉じたフレームを実現するために、本発明によれば特に、4つの形状要素(第1及び第2形状要素と共に第3及び第4形状要素)が設けられ、各形状要素は第一にパネル要素に連結され、各形状要素は第二にフレームを形成するように他の形状要素の2つに連結される。
【0013】
本発明によれば、同様に、フレームを完成するために4つ以上の形状要素が使用されてもよい。また特に、本発明によれば、フレームのコーナー領域にコーナーピース又はコーナー形状要素が設けられてもよい。
【0014】
本発明の例示的な実施形態は、図面に示されており、以下の記載で更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】背もたれを有する車両座席の側面図を概略的に示す。
【
図2】例えば車両座席の背もたれに用いる本発明による1つの構造部品を概略的に示す。
【
図4】従来技術から周知である構造部品を概略的に示す。
【
図5】例えば車両座席の背もたれに用いる本発明による1つの構造部品を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、背もたれ20を有し且つシート部15を有する本発明による車両座席10の側面図を概略的に示す。図示される実施例において、背もたれ20は、破線によって概略的に示される本発明による構造部品21を有する。
【0017】
図2及び
図5によれば、構造部品21は、パネル要素30と、例えば第1形状要素41、第2形状要素42、第3形状要素43、及び第4形状要素44を含む補強フレーム40とを有する。構造部品21は
図2に平面図で概略的に示され、一方、上記構造部品21は
図5に斜視図で概略的に示される。
【0018】
図示の実施例において、形状要素41、42、43、44は、構造部品21の側面に、例えば四角形のデザインの、実質的に完全に一周するフレームを形成する。形状要素41、42、43、44は、詳細には、補強フレーム40のコーナー領域で互いに溶接される。また、形状要素41、42、43、44はパネル要素30に溶接される。
【0019】
補強フレーム40を補強するために、補強要素50が設けられる。本発明によれば、補強要素50は特に、ベルトリトラクターから生じる力、又はベルトリトラクターとベルト偏向装置との間に作用する力を吸収することができるように役立つ。ベルトリトラクター用の連結点又は連結位置は、
図2及び
図5において符号56によって示される。ベルト偏向装置は、符号55によって示される。
【0020】
補強要素によって特に補強フレーム40に導入される力が(空間的に)比較的大きい領域にわたって分配されるので、全体的な装置は(補強要素50の重量と比べて)高い荷重負担能力を有する。例えば、補強要素50に比較的小さい材料厚さを使用することができる。これにより荷重下で(特に事故の場合に)比較的大きな変形がもたらされる。比較的大きな変形のために、吸収される荷重の比較的大きな部分が、次いでパネル要素30を介して受け入れられ、またそれにより補強フレーム40に更に一様に導入される。
【0021】
また
図2及び
図5には、補強要素50、ベルト偏向装置55及びベルトリトラクター用の接続位置56に加えて、(特に、車両シャーシ又は車体に背もたれ20を固定するか又はロックするための)サイドロック用の接続位置57、更に(特に、背もたれ20が車体に対して(例えば、より大きな荷物室容積を作り出すために)旋回することを可能にするための)旋回軸58が示されている。
【0022】
図3及び
図6は各々、ベルトリトラクター用の接続位置56が示される(ただし、ベルトリトラクターなしで図示される)補強要素50の斜視図を概略的に示す。
【0023】
図4は、従来技術から周知であるような構造部品210を図示する。周知の構造部品210は、周知のパネル要素300及び周知の補強フレーム400を有する。
図4は、周知の構造部品210を斜視図で概略的に示す。周知の補強フレーム400を補強するために、周知の補強要素500が設けられ、周知の補強要素500は、周知の補強フレーム400の全内法スパンにわたり、周知の補強フレーム400の少なくとも2つの側に(従って、周知の補強フレーム400の少なくとも2つの形状要素(詳細に図示せず)にも)連結される。
【0024】
周知の補強要素500は、ベルトリトラクターから生じる力、又はベルトリトラクターと周知ベルト偏向装置との間に作用する力を吸収することができるように役立つ。ベルトリトラクター用の接続位置は、符号560によって
図4に示される。周知のベルト偏向装置は、符号550によって示される。また
図4には、周知の補強要素500に加えて、サイドロック用の周知の接続位置570と、更に周知の旋回軸580とが示される。
【0025】
周知の補強要素500からの力の周知の補強フレーム400への導入は、本発明による、例えば
図2、3、5及び6による補強要素50又は構造部品21のデザインの場合よりも空間的により極端に集中するので、(同じ荷重負担能力のために)周知の構造部品210には例えばより大きな材料厚さを使用することが必要である。
【符号の説明】
【0026】
10 車両座席
15 シート部
20 背もたれ
21 構造部品
30 パネル要素
40 補強フレーム
41 第1形状要素
42 第2形状要素
43 第3形状要素
44 第4形状要素
50 補強要素
55 ベルト偏向装置
56 ベルトリトラクター用の接続位置
57 サイドロック用の接続位置
58 旋回軸
210 周知の構造部品
30 パネル要素
40 周知の補強フレーム
500 周知の補強要素
550 周知のベルト偏向装置
560 周知の車両座席
570 周知のサイドロック用の接続位置
580 周知の旋回軸