【実施例1】
【0043】
手順1
調製:400 Lの反応容器で水酸化ナトリウム16 kg(400 mol)を80 Lの水に溶解させ、トリエチレングリコール 18.8 L(140 mol)とTHF32 Lを加える。5 ℃以下に冷却した後、塩化トシル47.84 kg(260 mol)とTHF50 Lの液剤を滴下する。続いて、その反応混合物をこの温度で2時間保管し、氷水240 Lに注ぐ。沈殿物が形成したら、ろ過し、少量の水で洗って乾燥する。白色粉末結晶のBPI-01、58.64 kgが、収率91.4%、mp: 77-80 ℃、HPLC: 97%、TLC(石油エーテル:エチルアセテート=1:1)Rf=0.87で生成された。
【0044】
NMRデータ: 1H-NMR(CDCl3):δ ppm:7.78(d, 4H, J=10.4 Hzスルホニル基のベンゼンプロトン)、7.34(メチル基のd, 4H, J=11.6 Hzベンゼンプロトン)、4.129(dd, 4H, J=5.6 Hzスルホニル基のエチレンプロトン)、3.64(ス dd, 4H, J=5.6 Hzルホニル基外のエチレンプロトン)、3.517(s, 4H、中間のエチレンプロトン)、2.438(s, 6H、ベンゼンのメチルプロトン)
【0045】
手順2
調製:3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル3.64 kg(20 mol)、炭酸カリウム12.4 kg(89.6 mol)を含むN,N-ジメチルホルムアミド300 Lを撹拌し、およそ30分間85〜90℃に熱する。1時間半から2時間の間、40 LのN,N-ジメチルホルムアミドに9.17 kg(20 mol)のBPI-01溶液を滴下する。滴下の終了後、化学反応を30分間保持し、TLCによって反応完了を確認する(展開溶媒:石油エーテル:エチルアセテート=1:1、Rf=0.58)。反応容器から反応混合物を取り除き、ろ過し、ろ液を蒸発させてN、N-ジメチルホルムアミドを取り除き、残留物にエチルアセテート240 Lを加えて溶解させる。ろ過および真空蒸発の後、残った液剤が石油エーテル300 Lと共に抽出される。石油エーテルの蒸発後、1:2.5(W/V)の割合で残留した固体がイソプロパノールと共に再結晶化され、白色粉末のBPI-02(1.68 kg)が28%の収率、mp:73-76 ℃, HPLC:96.4%で得られた。
【0046】
NMRデータ: 1H-NMR(CDCl3):δ ppm:7.701(d, 1H, J=2.4 Hz, ポジション6のベンゼンプロトン); 7.68(s, 1H, ポジション2のベンゼンプロトン); 6.966(d, 1H, J=10.8 Hz, ポジション5のベンゼンプロトン); 4.374-3.81(q, 2H, J=9.6 Hz, エチルのメチレンプロトン); 3.78-4.23(dd, 12H, J=4.8 Hz, クラウンエーテルプロトン); 1.394(t, 3H, J=9.6 Hz, エチルのメチルプロトン).
MS:m/z 296.
【0047】
手順3
調製:5 Lの反応用フラスコ内でBPI-02液剤 592 g(2 mol)と酢酸600 mL を0℃に冷却し、濃硫酸 1640 mL(25.4 mol)を少しずつ加える。内部の温度は 10 ℃を超えないようにする。0℃以下に冷却する間、濃硫酸1 Lを滴下する。内部の温度は 5 ℃を超えないようにする。滴下後、0-5 ℃で反応を1〜2時間保持する。反応完了後、プラスチックのバケツの氷水15 L に反応液剤を注ぐ。混合、ろ過、エタノール内での再結晶化の後、薄い黄色〜黄色の結晶粉末のBPI-03(449 g)が65.7%の収率、mp:92-95 ℃、HPLC:98.2%、TLC(石油エタール:エチルアセテート=1:1)で得られた。
【0048】
NMRデータ: 1H-NMR(CDCl
3):δ ppm:7.56(s、1H、ポジション5のベンゼンプロトン);7.20(s、1H、ポジション2のベンゼンプロトン);4.402(q、2H、J=9.2 Hz、エチルのメチレンプロトン);4.294(dd、12H、J=4.8 Hz、クラウンエーテルプロトン);1.368(t、3H、J=9.2 Hz、エチルのメチルプロトン)
【0049】
手順4
調製:3 Lの水素化反応器の中にメタノール2 LとBPI-03(195 g(0.57 mol))を加えた後、塩化アセチル63 mLを少しずつ加える。少し撹拌した後、40%の水分を含むPd/C33gを加える。水素吸蔵が止まるまで、4 ATM水素のもとで反応が起こり、1〜2時間続く。反応完了後、反応混合物を5 Lの反応容器に移す。ろ過、結晶化、ろ過の後、生成物が得られる。母液が真空下で濃縮され、さらに生成物が得られる。白色からピンク色の粉末結晶のBPI-04、168gが収率85%、mp:198-201 ℃、HPLC:99.1%、TLC(石油エーテル:エチルアセテート=1:1)Rf=0.33で生成された。
【0050】
NMRデータ: 1H-NMR(DMSO-d6):δ ppm:8-9(br.、3H、アミノ基のプロトン2および塩酸のプロトン);7.37(s、1H、ポジション5のベンゼンプロトン);6.55(s、1H、ポジション2のベンゼンプロトン);4.25(q、2H、J=7.06 Hz、エチルのメチレンプロトン);4.05(dd、12H、J=4.04 Hz、クラウンエーテルプロトン);1.31(t、3H、J=7.06 Hz、エチルのメチルプロトン)
【0051】
手順5
調製:BPI-04(1105 g(3.175 mol))、ホルムアミド(4810 g(106.9 mol))、ギ酸アンモニウム(540 g(8.55 mol))を10 Lの3ネックボトルに加える。反応混合物を還流下、4時間165℃に温める。室温に冷却し、水3 Lを加え、混合物を10分間撹拌する。ろ過、洗浄、乾燥した後、白色粉末結晶のBPI-05(742 g)が収率80%、mp:248-251 ℃、HPLC:99.78%、TLC(クロロホルム:メタノール=8:1)Rf=0.55で得られた。
【0052】
NMRデータ: 1H-NMR(DMSO-d6):δ ppm:12.06(s、1H、キナゾリンのNH);8.0(d、1H、J=3.28 Hz、ポジション3のキナゾリンのプロトン);7.62(s、1H、ポジション6のキナゾリンのプロトン);7.22(s、1H、ポジション9のキナゾリンのプロトン);4.25(dd、12H、J=4.08 Hz、クラウンエーテルプロトン)
【0053】
手順6
調製:BPI-05(337 g(1.13 mol))、クロロホルム7.1 L、POCl
3(1.83 L(19.58mol))、132 mlのN,N-ジメチルホルムアミドを10 Lの3ネックボトルに加える。還流温度で反応混合物を撹拌する。溶解後、TLC(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=15:1、Rf=0.56)によって反応が完了したことを確認する。完了するまで約8時間かかる。その後、反応液を冷却し、真空下で蒸発乾固させる。残渣をクロロホルム4 Lに溶解し、砕氷水4 kgに加え、30分間撹拌する。分離後、水相を2度クロロホルム2 Lで抽出する。有機相を混合し、氷水4 Lを加え、温度を30℃以下に保ちながら、6 NのNaOHでpHをpH 8-9に調整する。分離後、有機相を飽和塩化ナトリウムで洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を真空蒸発で取り除く。残留固形物をアセトンで洗浄、ろ過する。白色粉末結晶のBPI-06(268 g)が収率77%、mp:164-167℃およびHPLC99%で得られた。
【0054】
NMRデータ: 1H-NMR(CDCl
3):δ ppm:8.89(s、1H、ポジション2のキナゾリンのプロトン);7.68(s、1H、ポジション9のキナゾリンのプロトン);7.42(s、1H、ポジション6のキナゾリンのプロトン);4.38-3.81(dd、12H、J=3.88 Hz、クラウンエーテルプロトン)
【0055】
手順7
本発明の化合物の製造:エタノール500 mL中のBPI-06の20.8 gの懸濁液に、25 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを加え、イソプロパノール200 mL中のナトリウムと8.98 gのm-アセチレン・アニリンの溶液を加える。反応混合物が完全に溶解するまで室温で5分間撹拌し、3時間還流で温める。濃縮、乾燥後、エチルアセテートに溶解し、水洗浄し、無水硫酸で乾燥させ、式Iの白色粉末結晶の化合物27.1 gが得られた。
NMRデータ:
1H-NMR(Bruker APX-400、溶剤:DMSO-d6、内部基準TMS):δ ppm:3.58(dd、2H、ポジション12のクラウンのプロトン2個);3.60(dd、2H、ポジション13のクラウンのプロトン2個);3.73(dd、2H、ポジション10のクラウンのプロトン2個);3.80(dd、2H、ポジション15のクラウンのプロトン2個);4.30(s、1H、アルキニルのプロトン);4.34(dd、2H、ポジション16のクラウンのプロトン2個);4.40(dd、2H、ポジション9のクラウンのプロトン2個);7.39(d、1H、ポジション25のベンゼンプロトン);7.46(dd、1H、ポジション26のベンゼンプロトン);7.49(s、1H、ポジション6のキナゾリンプロトン);7.82(d、1H、ポジション27のベンゼンプロトン);7.94(t due dd、1H、ポジション19のキナゾリンプロトン);8.85(s、1H、ポジション23のベンゼンプロトン);8.87(s、1H、ポジション2のキナゾリンのプロトン);11.70(s、1H、塩としての芳香族アミンのプロトン);14-16(bs、1H、塩酸)、
図5参照。
【0056】
NMRデータ:33 13C-NMR(DMSO-d6)
図6参照。
質量分析(MS): 計器: ZAB-HS、試験条件:EI,200℃、700ev、MS測定分子重量:m/z 427
最終生成物の元素分析:
【0057】
(1)C、H、N測定
計器:エレメンタール社―バリオ EL
表1 元素分析結果と計算値の比較(%)
C、H、Nの測定結果と計算値の誤差は0.3%以下であり、最終生成物の仕様を満たす。
【0058】
(2)Cl測定
計器: カルロ社-Erba1112元素分析計、塩素定量:酸素フラスコ方式、硝酸水銀標準液剤:0.01079 mol/L
表2 塩素試験結果と計算値の比較(%)
【実施例5】
【0062】
塩酸イコチニブ結晶体IVの生成
25 mLの丸底フラスコで塩酸イコチニブ0.5gをN,N-ジメチルホルムアミド10 mL中に温めて溶解し、ろ過後、結晶化するまで冷却する。固形物をろ過し、アセトン5 mLで洗浄し、60 ℃以下の真空下で乾燥させる。mp 223-226℃の薄黄色の結晶粉末が得られる。
結晶体IVの構造を特性化するために粉末X線回折パターン方式を使用する。
図4参照。(TGA計器:DSC204(NETZSCH 社))TGA結果では、塩酸イコチニブ結晶体IVの各分子には結晶N,N-ジメチルホルムアミド分子が0.158含まれることがわかった。
【0063】
有効性試験
試験1:ポリアクリアミドゲル電気泳動による塩酸イコチニブ結晶体IのEGFRチロシンキナーゼの抑制と選択性
【0064】
方法:タンパク質キナーゼが基質リン酸化を解媒する能力に基づき、タンパク性基質を32Pで放射活性物質で標識するために反応系で放射性元素32P標識ATP(32P-γ-ATP)を使用する。ポリアクリアミドゲル電気泳動法によるタンパク性基質の分離、単離の後、放射性32P標識タンパク性基質の強度が記録される。
【0065】
EGFRチロシンキナーゼ(2.4 μg/μl, 14.5 単位/μg, シグマ)および Crk(EGFR基質、32 ng/μl)をキナーゼ反応バッファー25 μlに混合する。キナーゼ反応バッファーは非同位元素標識ATPを1 μMを含む。上述の混合物には様々な濃度の塩酸イコチニブ結晶体I(0、0.5、2.5、12.5、62.5 nM)を含む。混合物を10分間氷で冷却し、32P-γ-ATP を1 μCi加える。20分間30℃で放置した後、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)サンプルバッファーを加え、その混合物を4分間100℃の水浴で沸騰させる。サンプルをSDS-PAGE10%によって分離させる。ポリアクリアミドゲルの真空乾燥後、放射能で標識されたタンパク質の強度を測り、ホスフォイメージャー(モレキュラー・ダイナミクス株式会社)を使用し、記録を取る。ImageQuantを使ってシグナルを定量的に分析する。Crk 基質リン酸化の度合いをキナーゼの活性を予測するのに使用する。
【0066】
抑制(%)=(1-試験グループのキナーゼ活性/制御グループのキナーゼ活性)×100%
【0067】
結果:
(1)塩酸イコチニブ結晶体Iは、用量反応に従属する関係でEGFRチロシンキナーゼ活性を抑制する。塩酸イコチニブ結晶体Iの濃度が0.5、2.5、12.5、62.5 nMのとき、EGFRキナーゼ活性の抑制率はそれぞれ20.5、36.6、63、87.6%であった。用量反応曲線から、EGFRキナーゼ活性を抑制する塩酸イコチニブ結晶体IのIC50(活性の50%が抑制されるときの阻害剤の濃度)は、海外製品と同様に5 nMである。
【0068】
(2)EGFRキナーゼ抑制に対する塩酸イコチニブ結晶体IIの選択性を研究するため、EGFRやArg(abl関連遺伝子)チロシンキナーゼ活性とCrk基質リン酸化を抑制する塩酸イコチニブ結晶体Iの能力を同様に平行利用して比較する。塩酸イコチニブ結晶体I62.5 nMの濃度はArgキナーゼを抑制しないが、EGFRキナーゼを抑制し、EGFRキナーゼに対して97%の塩酸イコチニブ結晶体Iの選択性が示された。
上述の結果、塩酸イコチニブ結晶体Iが敏感で選択的なEGFRキナーゼ阻害剤であることが示される。
【0069】
試験2:細胞レベルの塩酸イコチニブ結晶体IによるEGFR媒介タンパク質リン酸化の抑制
方法:試験には、高EGFR発現細胞株、A431(ヒトの扁平上皮癌)を使用する。対数増殖期のA431細胞を12ウェル細胞培養用プレート(5x105細胞/ウェル)に播種し、これを18時間CO25%に37℃でウシ胎仔血清(FCS)10%を含むDMEM細胞培養基(ギブコ社)で増殖させた。PBSバッファーでその細胞を2度洗浄した後、FCSを含まないDMEMを加え、18時間の培養後、ジメチルスルホキシド(DMSO)内の塩酸イコチニブ結晶体Iを最終濃度0、10、50、250、1000 nMで各ウェルに加えた。37℃で2時間半培養させた後、5分間その細胞に刺激を与えるためにEGF100 ng/mlを加え、細胞内の全タンパク質を収集するために、細胞をバナジン酸1 mM(脱リン酸化を抑制)内で抽出し、タンパク質をSDS- PAGE10%によって分解し、ニトロセルロースへ送られた。以下の抗ホスホチロシン抗体(PY99および 4G10、アップステートバイオテック社)とリン酸化タンパクの検出、およびわさびペルオキシダーゼ標識の二次抗体((トランスダクションラボラトリー株式会社)、ECL化学発光(アマシャム社)での視覚化の後、帯が濃度測定によって定量化された。内部制御として様々な濃度の塩酸イコチニブ結晶体Iに露出する細胞にあるEGFRを比較するため、組織膜を抗EGFR抗体で取り除き、培養した。
抑制(%)=(1-試験グループのキナーゼ活性/制御グループのキナーゼ活性)×100%
【0070】
結果:A431細胞中の塩酸イコチニブ結晶体Iは、10、50、250、1000 nMの濃度でそれぞれ5.4、52.9、61.9、63.7%、EGF誘導、EGFRチロシンキナーゼ仲介細胞内タンパク質チロシンリン酸化を抑制した。半有効濃度(EC
50)は約50 nMであった。この結果では、EGFR発現が様々な濃度の塩酸イコチニブ結晶体Iに露出した細胞間においてそれほど違いがなく、薬剤がEGFR発現を変えはしないが、EGFRキナーゼ活性のみを抑制することが示された。
【0071】
試験3:塩酸イコチニブ結晶体Iによるヒトの癌化細胞株の試験管内における増殖抑制
実験の目的:塩酸イコチニブの結晶体Iの生体外で培養されたヒト腫瘍細胞株への成長阻害効果を観察すること。
実験材料
被験薬:塩酸イコチニブの結晶体I、ロット番号 050106、浙江貝達薬業有限会社から提供され、現場で調製する。
癌細胞株: A431ヒト扁平上皮癌、A549ヒト非小細胞肺癌、BEL-7402ヒト肝臓癌、BGC-823ヒト胃腺癌、HCT8ヒト結腸癌、H460ヒト肺腺癌、KBヒト扁平上皮癌。
中国語のMTT法(methyl thiazolyl tetrazolium assay)を採用して、塩酸イコチニブの結晶体Iの生体外で培養されたヒト腫瘍細胞のA431、A549、Bel7402、BGC823、HCT8、H460、KBへの成長阻害効果を観察する。
MTT試験:腫瘍細胞をトリプシンで消化して、10%仔牛血清含有RPMI1640培養液で濃度104cells/mlとなるように細胞懸濁液を調製し、96ウェルプレートにおいて各ウェルに100μl(1000cells/ウェル)ずつ接種して、24時間培養した後、薬物を加え、各ウェルに試料を100μlずつ加えて、1つの群に3つの平行ウェルを設置した。塩酸イコチニブの結晶体Iは、濃度0.1%未満のDMSOで溶解された後で培地によって50、25、12.5、6.25、3.125、1.56μmol/Lとなるように希釈されたものであり、対照ウェルとしては、0.1%DMSO含有培地が加えられた。37℃、5%CO2のインキュベータに入れて96時間培養した後、培養液を廃棄し、各ウェルに0.5%MTT溶液(RPMI 1640で調製)を100μlずつ加えた。37℃で4時間保温し、上澄みを捨て、各ウェルにDMSO200μlに溶解された中国語のFormazan粒子を加え、振とうして均一に混合し、マイクロプレートリーダーを使用して検出(参照波長450nm、検出波長570nm)し、薬物の細胞成長に対する阻害率を算出した。薬物濃度対数値で阻害率に対して線形回帰を行い、線形方程式を得て、薬物の半阻害濃度(IC50)を求めた。
【0072】
結果:表3に見られるように、高EGFR発現A431細胞を含むヒト癌化細胞株の塩酸イコチニブ結晶体Iによる試験管内の増殖抑制は、用量依存的であった。A431細胞線は、IC50が1 μmol/Lと非常に繊細で、続いて胃癌細胞BGC823、ヒト非小細胞肺癌細胞株A549、ヒト肺腺癌細胞株H460となり、IC50がそれぞれ4、12、16μmol/Lである。塩酸イコチニブ結晶体IのHCT8、BEL-7402、KB癌細胞に対する活性は低いものであった。
【0073】
表3 塩酸イコチニブ結晶体Iの癌細胞増殖抑制
【0074】
試験4:ヌードマウスへのヒト腫瘍異種移植片における塩酸イコチニブ結晶体Iによる腫瘍阻止
これは、ヒトA431(ヒト扁平上皮癌)異種移植腫瘍の抑制においてのエルロチニブ塩酸塩と塩酸イコチニブ結晶体Iを比較するための予備研究である。
方法:異種移植片の研究について、高EGFR発現ヒトA431(ヒト扁平上皮癌細胞株)細胞株を選択した。
【0075】
腫瘍移植方法:腫瘍小結節を作るために、BALB/Cヌードマウスの右脇の下にヒト扁平上皮癌細胞A431 を植え付けた。これらの小結節を摘出し、定期移植のため6 mm
3のブロックに切り、研究のために各マウスに移植し、腫瘍が約20 mm
3の大きさになったら(6〜7日)、無作為にマウスを6〜9匹のグループ4つに分け、体重を記録した。このグループは、制御グループ(薬剤治療なし)、エルロチニブ塩酸塩治療グループ(200 mg/kg)、塩酸イコチニブ結晶体I投薬治療の高投与量および低投与量グループ(200および50 mg/kg)がある。薬剤は、一日一回経口にて投与され、この頻度は腫瘍増殖についての個別ケースによるものであった。
室温20〜22℃、相対湿度40〜60%でヌードマウスを飼育した。腫瘍容積[腫瘍容積(V)=腫瘍サイズ(L)× 腫瘍の短直径(S)2/2] を3日に一度測径器で測定した。最後の薬剤投薬と体重測定の24時間後に、マウスは屠殺し、正確に腫瘍のサイズを測るために、腫瘍を取り除き、重さを測った。
試験結果についてOffice Excelのソフトウェアで統計的分析を行った。全てのグループのデータを、
X±で表示し、t検定を使って分析する。p値が0.05以下の場合、それは統計的に有意であったと考えられる。
【0076】
有効性測定:腫瘍抑制率=[1-治療グループ平均腫瘍重量(T)/ 制御グループ平均腫瘍重量(C)] × 100%
【0077】
その結果から、試験用の塩酸イコチニブの結晶体Iは経口投与によってヌードマウスのA431移植腫瘍に対して著しい抗腫瘍効果を有し、且つ投与量依存関係を示していることが表明された。
【0078】
試験5:ヌードマウスへのヒト腫瘍異種移植モデルの抑制におけるイレッサTM錠と塩酸イコチニブ結晶体Iの比較
方法:試験4で詳述された方法を使用し、H460ヒト肺腺腫瘍異種移植片に対する塩酸イコチニブ結晶体IとイレッサTM錠剤の抗腫瘍活性を比較するこの研究を行った。
この結果、塩酸イコチニブ結晶体Iの粉末とイレッサTM錠が14日間毎日1回経口投与されたとき、塩酸イコチニブの投薬量の多い、ふつうの、少ないグループ(120、60、30 mg/kg)のH460腫瘍抑制率は、52.0、49.3 および 37.53%で、イレッサTMグループ(120 mg/kg)の腫瘍抑制率は38.29%であった。塩酸イコチニブ結晶体Iの30 mg/kgのグループでは、H460ヒト腫瘍異種移植片に対し、イレッサTMグループ120 mg/kgと同様の阻害活性を示し、一方ではより投与量の多い2つのグループが120 mg/kgのイレッサTM投薬レベルより優れた阻害活性を示した。塩酸イコチニブ結晶体IよりイレッサTMのほうが、有毒性が高く、マウスの体重が減少し、活発でなくなった。
【0079】
塩酸イコチニブ結晶体Iを使ったビーグル犬、マウス、ラットでの薬理学および毒物学実験も行われた。この結果、塩酸イコチニブ結晶体Iは経口有毒性が低く、骨髄毒性や可逆的な肝臓毒性がないことが分かった。安全性薬理試験では、塩酸イコチニブ結晶体Iは、呼吸、血圧、循環器機能、自律神経や中央神経の活動に全く影響を及ぼさないという結果が得られた。追加の毒性試験にて、催奇性、変異原性、生殖毒性がないことも示された。
【0080】
さらに、ビーグル犬やラットの塩酸イコチニブ結晶体Iの非臨床薬物動態研究が行われた。経口投与される塩酸イコチニブ結晶体Iは、ラットや犬における絶対的バイオアベイラビリティが27-62%と吸収率が高いことが示された。薬剤は約1時間でピーク血漿濃度(Tmax)に達し、主に糞便中排せつを通じて、少量が尿により排せつされる。塩酸イコチニブは、様々な組織へ広く行きわたるが、脳組織には広がらず、薬剤が簡単に血液脳関門を通らないことが示された。ラットの肝臓内のP450酵素への誘導作用は見られず、塩酸イコチニブ結晶体Iについて薬物代謝酵素への阻害活性も見られなかった。
【0081】
試験6:臨床試験
1)錠剤の製造に塩酸イコチニブ 結晶体 I を使用し、25、50、100、150、225、325、425、575、1025 mgの単回投与を行った76名の被験者について第1相臨床的安全性試験を行った結果、25-1025 mgの単回投与は安全であることが示された。
【0082】
2)少なくとも一度はプラチナ製剤を中心とした併用レジメンに失敗した進行性非小細胞肺癌(NSCLC)患者104名に、食事抜きで塩酸イコチニブ結晶体Iの経口投薬を行うPK、安全性、有効性の第2相臨床試験を行った。治療における有効性評価を表4に示す。使用される用語の定義:PR:部分寛解、CR:完了寛解、SD:安定、PD:病気の進行、ORR:客観的奏功率、DCR:病勢コントロール率。
【0083】
表4 様々な塩酸イコチニブ結晶体Iの投薬量での治療後の進行性NSCLC患者における有効性評価
上記のデータは、塩酸イコチニブ結晶体Iが非小細胞肺癌の治療に有効であることを示している。
【0084】
試験7:塩酸イコチニブの様々な結晶体およびイコチニブ遊離塩基形における薬物動態学的研究
薬剤および試薬:イコチニブ(遊離塩基)および塩酸イコチニブ結晶体I、II、III、IVを細粒子にした。物質含有量(純度)は少なくとも99.0%で、カルボキシルメチルセルロースナトリウムは医療用クラスであった。
実験動物:雄および雌の各150-220 gのウイスター系ラット
調剤調製:各薬剤の適正量の重量を測り、カルボキシルメチルセルロースナトリウムの0.5%まで加える。水の中で最終濃度3.5 mg/mLの懸濁液を準備した。
【0085】
投与およびサンプル採集:10 ml/kgの投薬量の塩酸イコチニブ35mg/kgに等しい投薬量にて、各懸濁液を絶食したウイスターラットに対し経口投与した。約0.5-1.0 mLの血液を薬剤投与後、1分、2分、3分、6分、10分、24分の間隔でヘパリン化チューブに集め、これを遠心分離、血漿を集め、-20℃で保管した。
【0086】
精製後、サンプルを高速液体クロマトグラフィーで分析した。クロマトグラフィー条件には、静止相としてC18シラン結合シリカを、移動相としてアセトニトリル内リン酸二水素ナトリウム0.02 mol/L(40:60、水酸化ナトリウムを使ってpHを5.0まで調節する)、検出波長334 nmを利用した。各化合物の濃度‐時間曲線下面積を、下の表に示す。
【0087】
【0088】
上記の試験では、塩酸イコチニブ結晶I、II、III、IVの濃度‐時間曲線下面積(0-t)と濃度‐時間曲線下面積(0-∞)が遊離塩基のものより約3倍大きいことを示している。つまり、塩酸イコチニブ結晶体I、II、III、IVの相対的バイオアベイラビリティは、イコチニブの遊離塩基よりも優れている。