(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
剛性を有する芯材と、前記芯材の表面を覆う表皮材によって構成される自動車内装品において、前記表皮材は、射出成形又は反応射出成形によって成形されたものであり、表面側に表皮層があり、裏面側に凹凸が形成された凹凸部があり、前記凹凸部は部位によって凹凸の形状及び/又は分布が相違するものであり、
自動車内装品はドアトリムであって肘置き部があり、さらに肘置き部の上部側を構成する上部側壁部と、肘置き部の下部側を構成する下部側壁部を有し、前記表皮材の裏面側の凹凸は、その高さが肘置き部に比べて上部側壁部の方が低く、さらに上部側壁部に比べて下部側壁部の方が低いことを特徴とする自動車内装品。
【背景技術】
【0002】
ドアトリム等の自動車内装品は、乗車する者の体が触れる機会が多いので、手触り感の良好さや、クッション性が要求される。また自動車内装品にも相当の剛性を有することが要求される。
そこで自動車内装品の多くは、剛性を有する芯材に、柔軟性を有する表皮材が接合された構造が採用されている。
即ち剛性を有する芯材と、外形がドアトリム等の形に予備成形され且つ柔軟性を有する表皮材を個別に製造し、後の工程で両者を接合して一体化させる。
【0003】
ここで表皮材は、前記した様に手触り感が良好なことと、クッション性を有することが要求されることから、表面側にソリッド層があり、裏面側にクッション層を有する二層構造を備えたものが多い。
上記した様に、ドアトリム等の形に予備成形され、且つソリッド層とクッション層とを備えた表皮材を成形する方法として、スラッシュ成形による方法と、真空成形による方法が知られている。
【0004】
ここでスラッシュ成形による表皮材は、製造の際における工程数が多く、且つ原材料が高価であるため、高級車の自動車内装品に用いられる。
比較的廉価の自動車には、真空成形による表皮材が採用される場合が多い。
【0005】
真空成形による表皮材の製造方法を簡単に説明すると次の通りである。
即ち真空成形による自動車内装品用の表皮材の製造は、大きくシート製造工程と、成形工程とに分かれている。
シート製造工程は、表面側にソリッド層があり、裏面側にクッション層を有する二層構造のシートを製造する工程である。
この工程では、公知のカレンダー成形や、押し出し成形によって、長尺且つ平面状のシートを製造する。即ち原料反を製造する。そして製造された長尺状のシートを、2メートル程度の定尺に切断する。
【0006】
成形工程は、定尺のシートを加熱して軟化させ、雄型の上に被せ、雄型の表面からシートと雄型との間の空気を吸引して定尺のシートを雄型に密着させる。その後、シートを冷却して固化し、雄型からシートを脱型する。
さらに、必要以外の部分を切り取る(トリム工程)ことによって、ドアトリム等の形に予備成形され、且つソリッド層とクッション層とを備えた表皮材を得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した様に、真空成形によって得られる表皮材は、スラッシュ成形による表皮材に比べて安価に製造することができる。しかしながら市場においては、さらに安価且つ、高品質の自動車内装品が求められている。
そこで本発明者らが、真空成形によって得られる表皮材の問題点を検討したところ、次の点が挙げられた。
製造工程に関する問題点として、トリム工程によって、シートの多くの部分が切り取られ、廃棄されるという問題がある。即ち真空成形による表皮の製造は歩留りが悪い。
【0009】
具体的に説明すると、真空成形においては、加熱軟化した平面状のシートを雄型に被せ、両者の間を真空引きする。そのため、空気が漏れない様に、シートをしっかりと雄型にクランプする必要があり、シートの辺部にクランプしろが必要である。また空気が漏れない様に、製品となる成形部と、クランプされる部分との間にある程度の緩衝領域を置かねばならない。
そして前記したクランプしろの領域と緩衝領域は、トリム工程によって除去される。そのため真空成形による表皮の製造は歩留りが悪い。
また除去されたシートは、異種の材料が積層されたものであるから、再利用が困難であり、廃棄せざるを得ない。そのため真空成形による表皮の製造は、資源の有効利用という点でも改善すべき問題がある。
【0010】
また性能上の問題として、手触り感やクッション性が一様であるという問題がある。
ドアトリムを例にとると、上部側の壁面については、手指が当たる機会が多いので、手触り感やクッション性が良好であることが必要である。これに対して足元に相当する下部側の壁面は、足や膝がズボン等を介して当たるだけであり、人肌が直接触れる機会は少ない。そのため手触り感やクッション性は必要なく、むしろ、表皮自体の剛性が要求される。
インストルメントパネルについても同様であり、運転席や助手席の近傍は、手指が当たる機会が多いので、手触り感やクッション性が良好であることが必要である。これに対してフロントガラスの近傍は、人が触れる機会が極めて少なく、手触り感やクッション性は不要である。
【0011】
これに対して真空成形によって製造される表皮材は、原料反たるシートそのものの表面層及びクッション層に依存して手触り感やクッション性が付与されるので、部分的にこれらを変えることができない。
また真空成形によって製造される表皮材は、角の部分が深絞り状態となり、厚さが薄くなってしまうという問題点もある。
【0012】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、歩留りがよく、且つ手触り感やクッション性に変化のある自動車内装品を提供することを課題とする。またその自動車内装品の表皮を製造する方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、剛性を有する芯材と、前記芯材の表面を覆う表皮材によって構成される自動車内装品において、前記表皮材は、射出成形又は反応射出成形によって成形されたものであり、表面側に表皮層があり、裏面側に凹凸が形成された凹凸部があり、前記凹凸部は部位によって凹凸の形状及び/又は分布が相違するものであ
り、自動車内装品はドアトリムであって肘置き部があり、さらに肘置き部の上部側を構成する上部側壁部と、肘置き部の下部側を構成する下部側壁部を有し、前記表皮材の裏面側の凹凸は、その高さが肘置き部に比べて上部側壁部の方が低く、さらに上部側壁部に比べて下部側壁部の方が低いことを特徴とする自動車内装品である。
【0014】
本発明の自動車内装品は、射出成形又は反応射出成形(RIM成形)によって成形された表皮材を使用している。そのため製造時の中間物にクランプ領域や緩衝領域が生じず、歩留りが高い。
本発明の自動車内装品では、表皮材の裏面側に凹凸が形成された凹凸部があり、当該凹凸部によってクッション性を確保している。
また凹凸部は部位によって凹凸の形状等が相違するので、手触り感やクッション性が部位によって異なる。そのため真空成形による自動車内装品に比べて高級感を出すこともできる。
なお「凹凸の形状」とは、凹凸の平面形状や立体形状であり、個々の凹凸の大きさが相違する場合を含む。円柱形状であっても、高さが異なれば「凹凸の形状」が相違すると言え、断面直径が異なっていても「凹凸の形状」が相違すると言える。もちろん、シルエットが円錐形である場合、四角柱状である場合、円柱形である場合は、いずれも「凹凸の形状」が相違するものである。
また分布とは例えば単位面積あたりの数や、散らばり具合を意味する。
【0015】
本発明の自動車内装品は、ドアトリムである。
本発明によると、表皮材の裏面側の凹凸形状(具体的には高さ)が部位によって相違し、肘置き部が最も高く、次いで上部側壁部が高く、下部側壁部が最も低い。
そのため人が接触する機会が最も多い部位たる、肘置き部は柔らかく、人が接触する機会が中程度の上部側壁部は中程度の硬さであり、人肌が直接接触する機会が少ない下部側壁部は硬い。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記表皮層は部位によって厚さが相違するものであることを特徴とする請求項1に記載の自動車内装品である。
【0017】
本発明によると、手触り感やクッション性により顕著な差を設けることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、凹凸の高さが、表皮層の厚さよりも低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車内装品である。
【0019】
本発明によると、凹凸の高さが、表皮層の厚さよりも低いので、表面を触った時に、凹凸感を感じない。
【0020】
請求項
4に記載の発明は、
肘置き部と、肘置き部の上部側を構成する上部側壁部と、肘置き部の下部側を構成する下部側壁部を有する自動車内装品であるドアトリムの表皮材を、成形型を使用する射出成形又は反応射出成形によっ
て製造する方法であって、成形型の成形する成形面に凹凸が設けられており、当該凹凸は、成形面の領域によって前記凹凸の形状及び/又は分布に差異があり、
前記凹凸は、その高さが肘置き部に比べて上部側壁部の方が低く、さらに上部側壁部に比べて下部側壁部の方が低く、前記成形型に樹脂原料を注入し、成形型内で原料樹脂を固化させた後、脱型することを特徴とする自動車内装品用表皮材の製造方法である。
【0021】
本発明によると、部位によって硬さ等に変化を設けた表皮材を歩留りよく製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の自動車内装品は、歩留りよく製造することができ、且つ手触り感やクッション性が部位によって異なる。また本発明の製造方法は、上記した自動車内装品の表皮材を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態の自動車内装品であり、より具体的にはドアトリム1である。
ドアトリム1は、
図2、
図3、
図4に示す様に、芯材2の表面に表皮材3が接着されたものである。
芯材2は、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)やABS樹脂等の熱可塑性樹脂を原料とする射出成形によって作られたものであり、硬く、相当の剛性を備えている。即ち芯材2は、単独で姿勢を維持することができる。
【0025】
表皮材3は、熱可塑性樹脂を原料とする射出成形、あるいは、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を原料とする反応射出成形によって製造されたものであり、柔軟性を有する。即ち表皮材3は、ドアトリム1の外観形状に予備成形されたシートであり、それ自体は、剛性を持たず、単独では本来の姿勢を維持することができない。
【0026】
表皮材3は、
図5、
図6に示す様に、表面側に表皮層10があり、裏面側に凹凸が形成された凹凸部11がある。
表皮層10は、緻密な層であり、実質的に無発泡層である。
凹凸部11は、
図6に示すように、円柱状の小突起12が一定のピッチで設けられた部位であり、クッション層として機能する。
表皮層10の厚さTと、小突起12の高さtを比較すると、表皮層10の厚さTの方が小突起12の高さtよりも大きい。
言い換えると、表皮材3は、表皮層10とクッション層として機能する凹凸部11を持つが、表皮層10の厚さTは、クッション層の厚さtよりも厚い。
【0027】
また本実施形態では、表皮層10の厚さTと、小突起12の高さtは、部位によって変化が付けられている。
図7乃至
図10は、ドアトリム1の部位を説明する説明図である。
ドアトリム1は、
図1、
図7、
図8、
図9、
図10に示すように、全体が壁状である。そしてその中央部に、肘置き部20が設けられている(
図8参照)。
肘置き部20は、壁面に対して車内側に突出した部位である。肘置き部20の上面21は、ドアトリム1が自動車に取り付けられた場合に、略水平となる。
肘置き部20の上面21は、運転者等の肘が接する部位である。
肘置き部20の側面18はなだらかに傾斜している。
【0028】
肘置き部20は、前記した様にドアトリム1の中央部に設けられており、肘置き部20の上部側(自動車に取り付けられた姿勢を基準とする)に、略垂直姿勢の上部側壁部22がある。上部側壁部22は、乗車した者の肘から肩にかけての高さにあり、腕や肩が触れる機会が多い。即ち人の肌が直接ふれる機会が多い。なお上部側壁部22には、ドア開閉用のハンドル23が設けられる。
【0029】
また肘置き部20の下部側には、略垂直姿勢の下部側壁部25がある。下部側壁部25は、乗車した者の腹から足元にかけての高さにあり、人が触れる機会があるものの、多くの場合は、被服を介しての接触であり、人の肌が直接ふれる機会は少ない。なお下部側壁部25には、スピーカー26が設けられる。
【0030】
さらに、後方縦側面側には、後方縦側面壁27がある。後方縦側面壁27は、自動車に取り付けられた場合に、後方側に位置し、ドアを開閉した際の、端辺を構成する部位である。後方縦側面壁27は、ドアを閉じた際には、ドア枠に接する部位であるから、人が触れる機会は極めて少ない。
【0031】
また自動車に取り付けられた場合に、前方側に位置する部位には、前方側壁面30がある。前方側壁面30は、ドアを閉じた際に、インストルメントパネルの側面に面する部位であり、人が触れる機会は極めて少ない。
【0032】
前記した様に、ドアトリム1は、大きく肘置き部20、上部側壁部22、下部側壁部25、後方縦側面壁27及び前方側壁面30に区分され、表皮層10の厚さTと、小突起12の高さtは、前記区分ごとに変化が付けられている。
即ち各区分ごとに人の肌が触れる機会が相違する。そのため本実施形態のドアトリム1では、人の肌が触れる機会が多い部位は小突起12の高さtを高くしてソフト感を高め、人が触れる機会が少ない部位は小突起12の高さtを低くするか、小突起12そのものを無くし、表皮材3の剛性を高めている。
【0033】
各部位ごとの表皮の厚さT及び小突起12の高さtは、次の表の通りである。
【0035】
本実施形態のドアトリム1では、人の肌が触れる機会が最も多い肘置き部20は、小突起12の高さtを高くしてクッション性を高めている。また肘置き部20は他の部位に比べて表皮材3が薄い。
即ち、人の肘(図示せず)が、ドアトリム1の肘置き部20の上面21に接すると、小突起12が圧縮変形し、表皮材3の小突起12が
図11(a)の様な自然状態から
図11(b)のように縮んだ状態となり、表皮材3の表面が全体的に沈む。そのため使用者は、柔かみや、クッション性を感じることとなる。
表皮材3の表面にある表皮層10は、緻密な層であり、実質的に無発泡であり、且つ表皮層10の厚さTは、小突起12の高tさよりも厚いから、表皮層10自体は変形しにくい。
これに対して凹凸部11は、円柱状の小突起12が一定のピッチで設けられた部位であるから、個々の小突起12に掛かる応力は、表皮層10が受ける応力よりも高い。小突起12は、強い応力を受けて変形し、縮む。
また前記表皮層10は、個々の小突起12から突き上げ方向の力を受けるが、前記した様に、表皮層10の厚さTは、小突起12の高tさよりも厚いから、表皮層10の表面が波うったり、凹凸が生じることはない。
【0036】
上部側壁部22についても同様に、人が触れた場合に、小突起12が沈み、使用者に柔かみや、クッション性を感じさせるが、上部側壁部22は肘置き部20に比べて小突起12の高さtが低いので、柔かみやクッション性は低い。しかしそれに代わって、使用者に剛性感を与えることができる。
【0037】
下部側壁部25についても同様に、人が触れた場合に、小突起12が沈み、使用者に柔かみや、クッション性を感じさせるが、下部側壁部25は、肘置き部20や上部側壁部22に比べて小突起12の高さtが低いので、柔かみやクッション性は低い。しかしそれに代わって、使用者により強い剛性感を与えることができ、安定感を感じさせることができる。
【0038】
これに対して後方縦側面壁27及び前方側壁面30には小突起12が無いので、人が触れた際に柔かみやクッション性を感じないが、これらの部位は、そもそも人が触れる機会が少ないので、特段の弊害はない。
逆に、これらの領域は、物が挟まるといった様な強い接触や物によって掻かれる事態が想定されるが、物が当たった際の変形量が少ないので、引っ掻き傷等が発生しにくい。
【0039】
上記した様に、本実施形態のドアトリム1は、人が触れる機会が多い部位には、背の高い小突起12を設け、人が触れる機会が少ない部位には、背の低い小突起12を設け、人が触れる機会が極めて少ない部位には小突起12を略した。
この様に、小突起12を設ける部位は、自動車内装品の性質に応じて適宜変更することが望ましい。
例えば、インストルメントパネルに本発明を採用する場合は、運転席や助手席の近傍は、手指が当たる機会が多いので、背の高い小突起12を設けることが望ましい。一方、フロントガラスの近傍は、人が触れる機会が極めて少なく、手触り感やクッション性は不要であるから、背の低い小突起12を設けるか、小突起12を省略する。
【0040】
小突起12を設ける場合の高さは、限定されるものではないが、0.05mmを越える高さであって1.5mm以下であることが望ましい。
即ち小突起12の高さが0.05mm以下である場合には、人が触れてもクッション性を感じにくい。また小突起12の高さが0.05mm以下である場合には、表面に凹凸の形状が表出してしまう場合がある。一方、小突起12の高さが1.5mmを越えると、小突起12が座屈する場合があり、腰折れ感が発生する懸念がある。
小突起12の高さの推奨される範囲は、0.2mmから0.9mmである。もっとも推奨される範囲は、0.3mmから0.8mmである。
【0041】
なお、小突起12の高さは、前記した座屈を防ぐ目的から、断面直径の3倍未満、より望ましくは2倍未満とすることが推奨される。面積の比率で考えると、小突起12の高さは、面積の平方根の3倍未満、より望ましくは2倍未満とすることが推奨される。
【0042】
推奨される小突起12の断面直径の絶対値は、0.3mmから1mmであり、より推奨される範囲は、0.5mmから0.8mmである。
即ち小突起12の断面直径が大きい場合には、小突起12が圧縮変形しにくく、クッション性が劣る。
その一方で、小突起12の断面直径が0.3mm以下の場合には、小突起12側から表皮層10側への突き上げ応力が高くなり、表皮層10の表面に、凹凸模様が浮き出る場合がある。
【0043】
また小突起12の分布割合についても、クッション性の要求に応じて変化させるべきであるが、単位面積当たりの小突起12の占める割合は、1/4から、4/5程度であることが望ましい。即ち小突起12の占める割合(凸部の占める割合)が他の部位(凹部の占める割合)よりも多くてもよい。
【0044】
小突起12の形状は、円柱形に限定されるものではなく、
図12に示す小突起35の様な円錐形のものや、円錐台形のもの、あるいは、
図13に示す小突起36の様な異形のものであってもよい。
【0045】
表皮材3の製造方法は、射出成形又は反応射出成形による。
より好ましくは、反応射出成形によって表皮材3を製造する。
即ち
図14に示す様な、RIM成形型37を使用し、RIM成形型37のキャビティ38にミキシングヘッド40から混合原料を注入する。
即ちRIM成形型37は、
図14の様に、下型42と上型43によって構成され、両者の間に成形キャビティ38が形成される。
なお、本実施形態では、下型42の表面が表皮材3の表面側を成形し、上型43の表面が、表皮材3の裏面側を成形する。
そのため本実施形態では、上型43のキャビティ面に小突起12を成形する凹凸(図示せず)がある。
【0046】
そして
図14に示す様に、下型42と上型43とを閉じた状態で、ミキシングヘッド40から混合原料を注入する。注入する原料は、例えばポリイソシアネートと、ポリオールの混合物であり、RIM成形型37の内部で、原料がウレタン反応を進行させ、硬化(固化)する。そしてその後、下型42と上型43とを開き、表皮材3を脱型する。
さらに別途用意した芯材2に表皮材3を接着し、表皮材3で芯材2を覆うことによってドアトリム1が完成する。
【0047】
上記した実施形態では、ウレタン樹脂を原料とする反応射出成形によって表皮材3を製造したが、塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)や、サーモプラスチックオレフィン樹脂(TPO樹脂)の様な熱可塑性樹脂を原料とする射出成形によって表皮材3を製造してもよい。
【実施例】
【0048】
本発明の実施例として、表皮層10の厚さTと、凹凸部11の厚さ(小突起12の高さt)が異なるドアトリムの表皮材3を成形した。なお原料は、PVCを使用し、製造方法は、射出成形によった。このときのバレル温度は摂氏180度であり、金型温度は摂氏60度であった。
比較例として、小突起12を持たない表皮材を成形した。これらの表皮材を芯材2に貼り付けて、ドアトリムを完成した。
【0049】
そして各ドアトリムの表面硬度を測定した。硬度の測定は、JIS G0202、ロックウェル硬度に準拠し、Cスケールによる硬度を測定した。
結果は、次の表の通りであった。
【0050】
【表2】
【0051】
その結果、小突起12を持つ表皮材(実施例)は、いずれも小突起12を持たない表皮材(比較例)に比べて表面硬度が低く、柔らかいものであった。この点から、小突起12を持つ表皮材(実施例)は、クッション性が優れていることがわかる。
また小突起12の形状として、円柱形のものと、円錐形のものを試作したが、いずれについても、クッション性の向上が見られることがわかった。
【0052】
また表皮層10の厚さTと、凹凸部11の厚さ(小突起12の高さt)に注目すると、両者の厚さが等しいものは表面に凹凸が生じる傾向があった。
この点から、表皮層10の厚さTは、凹凸部11の厚さ(小突起12の高さt)よりも厚いことが望ましいと言える。
【0053】
第2実施例として、表皮層10の厚さTと凹凸部11の厚さ(小突起12の高さt)が異なるインストルメントパネルの表皮材を成形した。なお原料は、ウレタンを使用し、製造方法は、反応射出成形によった。このときの原料温度は、ポリイソシアネート、ポリオールともに、摂氏40度であった。RIM成形型37の温度は、摂氏37度であった。
比較例として、小突起12を持たない表皮材を成形した。これらの表皮材を芯材に貼り付けて、インストルメントパネルを完成した。
【0054】
そして各インストルメントパネルの表面硬度を測定した。硬度の測定は、JIS G0202、ロックウェル硬度に準拠し、Cスケールによる硬度を測定した。
結果は、次の表の通りであった。
【0055】
【表3】
【0056】
その結果、インストルメントパネルを実施例とする場合においても、小突起12を持つ表皮材(実施例)は、小突起12を持たない表皮材(比較例)に比べて表面硬度が低く、柔らかいものであった。この点から、小突起12を持つ表皮材(実施例)は、クッション性が優れていることがわかる。
【0057】
また表皮層10の厚さTと、凹凸部11の厚さ(小突起12の高さt)に注目すると、両者の厚さが等しいもの、及び表皮層10の厚さTよりも凹凸部11の厚さ(小突起12の高さt)の方が厚いものは、表面に凹凸が生じる傾向があった。
この点から、表皮層10の厚さTは、凹凸部11の厚さ(小突起12の高さt)よりも厚いことが望ましいと言える。
一方、凹凸部11の厚さ(小突起12の高さt)が、極めて小さいものについても表面に凹凸が生じる傾向があった。
この点から、凹凸部11の厚さ(小突起12の高さt)は、0.05mmを越えるものであることが推奨される。