(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光ファイバ接続器は、ベース側素子と前記ベース側素子の長手方向に複数に分割された蓋側素子とを組み合わせた把持部材と、この把持部材を閉じ合せ方向に付勢するクランプバネと、を備え、
前記接続器支持部は、前記ベース側素子の両端面に当接して前記光ファイバ接続器を長手方向に位置決めする位置決め用凸部を有する請求項1または2に記載の光ファイバ接続工具。
前記支持台の前記光ファイバ接続器を支持する面とは反対の面には、前記第1および第2介挿部材に干渉しない位置に、前記支持台を所定の高さ位置に支持する載せ台が設けられている請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光ファイバ接続工具。
前記ホルダ支持部は、前記光ファイバホルダを、接続器支持部に支持された光ファイバ接続器に対して前進および後退する方向にスライド移動可能に支持するレール機構を備えている請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の光ファイバ接続工具。
突き合わせ接続される2本の光ファイバを一対の素子の間に挟み込む光ファイバ接続器を用いた光ファイバ同士の接続作業に用いられ、前記2本の光ファイバをそれぞれ保持する一対の光ファイバホルダと、この光ファイバホルダおよび前記光ファイバ接続器を支持する支持台と、前記光ファイバ接続器の前記素子間に挿入されることで前記素子間を開放する介挿片を有する第1および第2介挿部材と、を備え、前記支持台は、前記光ファイバ接続器を支持する接続器支持部と、前記接続器支持部の一端側および他端側に前記光ファイバホルダを支持する一対のホルダ支持部とを有し、前記第1および第2介挿部材は、前記支持台の前記光ファイバ接続器を支持する面とは反対の面側に、互いに独立に動作可能となるように取り付けられ、前記第1介挿部材は、前記介挿片が前記光ファイバ接続器の中央より一端側の位置に挿入および抜出する方向に回動自在とされ、前記第2介挿部材は、前記介挿片が前記光ファイバ接続器の中央より他端側の位置に挿入および抜出する方向に回動自在とされ、前記介挿片は、前記第1および第2介挿部材の回動により前記支持台に対し接近および離間する方向に移動することによって、前記支持台に形成された介挿片通過部を通して前記光ファイバ接続器に対し進退可能である光ファイバ接続工具を使用し、
前記光ファイバ接続器の中央より一端側の位置に第1介挿部材の介挿片を挿入するとともに、前記中央より他端側の位置に第2介挿部材の介挿片を挿入し、
第1光ファイバを、前記光ファイバ接続器の一端側から、前記素子の間に挿入し、
前記第1介挿部材の介挿片を前記素子から引き抜いて前記第1光ファイバを前記光ファイバ接続器の一端側で把持固定し、
第2光ファイバを、前記光ファイバ接続器の他端側から前記素子の間に挿入して前記第1光ファイバに突き合わせ、突き当てにより前記第2光ファイバにたわみ部を形成し、
前記第2介挿部材の介挿片を前記素子から引き抜いて前記第2光ファイバを前記光ファイバ接続器の他端側で把持固定する光ファイバ接続方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一形態例を、図面を参照して説明する。
図1〜
図7に示すように、本形態例の光ファイバ接続工具10は、第1光ファイバ1Aと第2光ファイバ1Bとを、光ファイバ接続器30を用いて突き合わせ接続する工具である。
光ファイバ1A、1Bは、裸光ファイバ2aの外周面(側面)を被覆2bで覆った構成の被覆付き光ファイバであり、例えば光ファイバ心線や光ファイバ素線等である。光ファイバ接続器30は、メカニカルスプライス30であり、以下、単にスプライス30ということがある。
【0010】
図1および
図7に示すように、光ファイバ接続工具10は、光ファイバ1A、1Bを保持する光ファイバホルダ20、20と、光ファイバホルダ20、20およびスプライス30を支持する支持台40と、スプライス30の素子31、32間を開放する介挿片51を有する介挿部材50、50と、を備えている。
以下の説明において、
図1の上方および
図2の紙面手前方向を上といい、その反対方向を下方という。また、
図2における左右方向を長手方向といい、これに直交する方向を幅方向という。また、接続器支持部41内のスプライス30に近づくことを前進といい、スプライス30から離れることを後退という。
【0011】
図1および
図2に示すように、支持台40は、スプライス30を支持する接続器支持部41と、接続器支持部41の一端側および他端側に光ファイバホルダ20,20を支持する一対のホルダ支持部42,42を有する。
【0012】
接続器支持部41は、細長板状の底壁部43と、底壁部43の上面43aに幅方向に間隔をおいて立設された一対の側壁部44,44と、底壁部43の上面43aの両端位置に立設された一対の端壁部45,45とを有する。
接続器支持部41は、底壁部43と側壁部44と端壁部45とによって構成される空間にスプライス30を位置決めして収納できる。
接続器支持部41は上方に開口して形成されているため、スプライス30を収納する作業を容易に行うことができる。
【0013】
図3および
図6に示すように、底壁部43には、介挿部材50の介挿片51を通すための介挿片通過口43c(介挿片通過部)が形成されている。介挿片通過口43cは、底壁部43の長手方向に沿うスリット状に形成されている。介挿片通過口43cは、スプライス30より短く形成されている。
介挿片通過口43cは、スプライス30の介挿片挿入穴35に相当する位置に形成されている(
図6参照)。
なお、介挿片通過部は、開口でなくてもよく、例えば底壁部43に形成された切欠き部であってもよい。
【0014】
図1および
図2に示すように、側壁部44は、底壁部43の長手方向に延在して形成されている。側壁部44の上縁44aの長手方向の中央部には、作業者がスプライス30を把持しやすくするための凹所44bが形成されている。
【0015】
図2、
図4および
図5に示すように、端壁部45は、内面45aがスプライス30の両端面に当接してスプライス30の移動を規制できる。
端壁部45には、光ファイバ1A、1Bを挿通させる切欠状のファイバ挿通部45bが形成されている。ファイバ挿通部45bは、底壁部43の長手方向にわたる溝状とされ、ホルダ支持部42に向けて徐々に幅広となるよう形成されている。
【0016】
図4に示すように、スプライス30のベース部材31の両端面に対面する部分の内面45a(例えば
図4においてファイバ挿通部45bより奥側の部分)には、ベース部材31の両端面に当接してスプライス30を位置決めする位置決め用凸部45cが形成されている。
この構造では、位置決め用凸部45cは他の部分の内面45aに比べて突出しているため、ベース部材31が両端から押さえつけられて確実に位置決めされる。一方、他の部分の内面45a(例えば
図4においてファイバ挿通部45bより手前側の部分)では、押さえ蓋32に対する押圧はそれほど大きくならない。
このため、押さえ蓋32はベース部材31に対し接近および離間する方向に移動しやすくなり、開閉動作が容易になる。
【0017】
図1に示すように、スプライス30は、クランプばね33の背板部33aを上方に向け、クランプばね33の一対の側板部33bを側壁部44に向けて接続器支持部41内に収容されている。
このため、スプライス30は、クランプばね33の背板部33aとは反対の側(開放側)を底壁部43に向けて接続器支持部41内に収容されている。
【0018】
図5に示すように、ホルダ支持部42は、底壁部43と同じ方向に延在する長方形の底壁部46と、光ファイバホルダ20を接続器支持部41に接近および離間する方向にスライド移動可能に支持するレール機構47と、ホルダ位置決め機構48とを有する。
レール機構47は、レール台部47Aと、レール台部47から幅方向に離れて形成された案内凸部47Bとを有する。
レール台部47Aは、底壁部46の上面46aから上方に突出して形成され、底壁部46の長手方向に延在している。レール台部47Aは、底壁部46に平行な平坦面である基面47aと、基面47aの外側縁47a1を起点として基面47aから離れるほど上昇する傾斜面47bとを有する。
【0019】
基面47aには、レール台部47Aの長手方向に間隔をおいて、複数の位置確認用の開口部47M1〜47M3が形成されている。
開口部47M1〜47M3は、光ファイバホルダ20で保持した光ファイバ2の先端位置を確認するためのものである。
例えば、開口部47M1は光ファイバ2の裸光ファイバ2aの先端位置確認用の第1マークとして使用でき、開口部47M2は光ファイバ2の内周側の被覆の先端位置確認用の第2マークとして使用でき、開口部47M3は、光ファイバ2の外周側の被覆の先端位置確認用の第3マークとして使用できる。
【0020】
レール台部47Aの後端位置には、光ファイバホルダ20の前端縁が係止可能な段部47cが形成されている。
光ファイバ2の先端位置を確認するには、例えば光ファイバホルダ20の前端を段部47cに合わせ、光ファイバ2をレール台部47A上に延出させて、裸光ファイバ2aや被覆先端が開口部47M1〜47M3の位置に一致することを確認すればよい。
案内凸部47Bは、断面矩形とされ、底壁部46の長手方向に延在して形成されている。
【0021】
レール台部47Aと案内凸部47Bとは、光ファイバホルダ20の側方移動を規制し、光ファイバホルダ20を幅方向に位置決めするとともに、光ファイバホルダ20の前後方向(
図2の左右方向)のスライド移動を案内することができる。
【0022】
ホルダ位置決め機構48は、光ファイバホルダ20を所定位置に位置決めする機構であって、レール部46の幅方向(
図2の左右方向)両側に互いに対向して設けられた一対の弾性係止片48a,48aを有する。
弾性係止片48aは、底壁部46の上面46aから上方に延出する延出板部48bの先端に、板状の係合片部48cを突設した形状になっている。係合片部48cは、延出板部48bの先端から内方に向けて張り出されている。
【0023】
係合片部48cの突端の前後方向中央部には、光ファイバホルダ20の係止用突起24bが入り込む係合用凹所48dが形成されている。係合用凹所48dは、係合片部48cの突端から窪む切り欠き状に形成されている。
弾性係止片48aは、係合用凹所48dに光ファイバホルダ20の係止用突起24bが入り込んで該係止用突起24bと係合したときに、レール機構47に対する光ファイバホルダ20の前後方向の移動を規制できる。
この状態では、弾性係止片48aが、延出板部48bの弾性によって光ファイバホルダ20を挟み込み、光ファイバホルダ20を安定に保持し、位置決めする。
【0024】
図2に示すように、両方のホルダ支持部42の底壁部46の一方の側縁部46bに近い位置には、落下防止用ひも49を装着可能な開口部46cが形成されている。
落下防止用ひも49は、合成繊維や天然繊維などからなるひもであって、例えば首にかけて使用できる。
落下防止用ひも49の使用によって、光ファイバ接続工具10を携帯して使用する際の作業性が良好となる。また、光ファイバ接続工具10の紛失を防ぐことができる。
【0025】
支持台40の材料としては、ポリアセタール(ポリオキシメチレン(POM))が好適である。
【0026】
図13〜
図15に示すように、スプライス30は、細長板状のベース部材31と、ベース部材31の長手方向に沿って配列設置した3つの蓋部材321、322、323によって構成される押さえ蓋32とを、細長形状のクランプばね33の内側に一括保持した構成になっている。
このスプライス30は、ベース部材31(ベース側素子)と蓋部材321、322、323(蓋側素子)とからなる半割り把持部材34を有する。ベース部材31と蓋部材321、322、323とは、クランプばね33の弾性によって互いに閉じ合わせ方向に弾性付勢されている。
【0027】
ベース部材31の長手方向に沿って配列設置した3つの蓋部材321、322、323のうち、中央に位置する符号322の蓋部材を、以下、中央蓋、該中央蓋322の両側の蓋部材321、323をサイド蓋とも言う。また、サイド蓋のうち、符号321の蓋部材を、以下、第1サイド蓋、符号323の蓋部材を、以下、第2サイド蓋とも言う。
【0028】
クランプばね33は、1枚の金属板を成形したものである。このクランプばね33は、細長板状の背板部33aの両側から、該背板部33aの長手方向全長にわたって、背板部33aに垂直に側板部33bが張り出された構成になっている。
一対の側板部33bの一方はベース部材31の蓋部材321、322、323に対向する対向面31aとは反対の背面に当接し、他方の側板部33bは蓋部材321、322、323のベース部材31に対向する対向面321a、322a、323aとは反対の背面に当接する。クランプばね33は、ベース部材30と蓋部材321、322、323とを、互いに対向する対向面31a、321a、322a、323aを閉じ合わせる方向に弾性付勢している。
【0029】
スプライス30のベース部材31の対向面31aは、ベース部材31の長手方向全長にわたって延在形成されている。このベース部材31の対向面31aの長手方向(延在方向)中央部には、裸光ファイバ2a同士を突き合わせ接続(光接続)可能に互いに高精度に位置決め、調心するための調心溝31bが形成されている。
【0030】
調心溝31bは、ベース部材31の対向面31aの中央蓋323に対向する部分に形成されている。
ベース部材31の対向面31aの第1、第2サイド蓋321、323に対向する部分には、調心溝31bに比べて溝幅を大きくした被覆部挿入溝31c、31dが形成されている。被覆部挿入溝31c、31dは、ベース部材31長手方向において調心溝31bの延長上に延在形成されている。
被覆部挿入溝31c、31dと調心溝31bとの間には、被覆部挿入溝31c、31dから調心溝31b側に行くにしたがって溝幅が小さくなるテーパ状のテーパ溝31e、31fが形成されている。各被覆部挿入溝31c、31dは、前記テーパ溝31e、31fを介して調心溝31bと連通されている。 被覆部挿入溝31c、31dは、光ファイバ2の被覆2bが除去されていない被覆付き部分(被覆部)を、調心溝31bによって位置決めしたときの裸光ファイバ2aと同軸上に位置決めする。
【0031】
第1、第2サイド蓋321、323の対向面321a、323aの、ベース部材31の被覆部挿入溝31c、31dに対向する部位は、光ファイバ2(1A、1B)の被覆部を被覆部挿入溝31c、31dに押さえ込む平坦なファイバ押さえ面とされている。
中央蓋322の対向面322aの、ベース部材31の調心溝31bに対向する部位は、光ファイバ2(1A、1B)の裸光ファイバ2aを調心溝31bに押さえ込む平坦なファイバ押さえ面とされている。
【0032】
クランプばね33の一対の側板部33bは、それぞれ、スプライス30の押さえ蓋32の3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分かれている。押さえ蓋32に当接する側板部33bは、第1サイド蓋321と中央蓋322との境界、及び中央蓋322と第2サイド蓋323との境界に対応する位置にそれぞれ形成されたスリット状の切り込み部33dによって、3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分断されている。ベース部材31に当接する側板部33bは、蓋部材321、322、323に当接する側板部33bの切り込み部33dに対応する位置に形成された切り込み部33dによって、3つの蓋部材321、322、323に対応する3つの部分に分断されている。
【0033】
クランプばね33は、第1サイド蓋321とベース部材31とを保持する第1クランプばね部331と、中央蓋322とベース部材31とを保持する第2クランプばね部332と、第2サイド蓋323とベース部材31とを保持する第3クランプばね部333とを有する。第1〜3クランプばね部331〜333は、互いに独立したクランプばねとして機能する。
なお、第1クランプばね部331の一対の側板部に符号331b、第2クランプばね部332の一対の側板部に符号332b、第3クランプばね部333の一対の側板部に符号333bを付記する。
【0034】
スプライス30は、3つのクランプばね部に対応する3つのクランプ部を有する。
すなわち、このスプライス30は、第1クランプばね部331の内側に第1サイド蓋321とベース部材31とを保持した第1クランプ部と、第2クランプばね部332の内側に中央蓋322とベース部材31とを保持した第2クランプ部と、第3クランプばね部333の側に第2サイド蓋323とベース部材31とを保持した第3クランプ部とを有する。
3つのクランプ部は、それぞれ、個々のクランプ部に対応するクランプばね部の弾性によって、半割りの素子(ベース部材31(ベース側素子)と蓋部材(蓋側素子))の間に光ファイバを把持固定できる。
【0035】
スプライス30の半割り把持部材34は、クランプばね33の背板部33aとは反対側(開放側)に露出する側面(開放側側面)を有する。該開放側側面には、前記介挿片41を挿入するための介挿片挿入穴35が開口されている。
この介挿片挿入穴35は、ベース部材31及び3つの蓋部材321、322、323の対向面31a、321a、322a、323aの互いに対応する位置に形成された介挿片挿入溝31g、321c、322c、323cによって、ベース部材31と蓋部材321、322、323との間に確保されている。
介挿片挿入穴35は、中央蓋322におけるベース部材31長手方向に沿う方向の中央部を介して両側に対応する2カ所、第1サイド蓋321及び第2サイド蓋323のベース部材31長手方向に沿う方向の中央部に対応する位置の、計4箇所に形成されている。
【0036】
図8(a)および
図9に示すように、光ファイバホルダ20は、ホルダベース体22と、このホルダベース体22の上面に載置された光ファイバ2(1A、1B)を上から押さえる押さえ部材23とを備えている。
図8(b)に示すように、ホルダベース体22は、平面視略直方体形状で形成されており、上面22aには、光ファイバ2(1A、1B)を保持するファイバ保持用凹溝22bと、係止湾曲部28が挿入される受容凹部22dとが形成されている。上面22aには、前後方向に間隔をおいて、ブロック状の前部突出部24と、板状の後部突出部25とが形成されている。
前部突出部24および後部突出部25には、光ファイバ2(1A、1B)をファイバ保持用凹溝22aに導く凹所24a、25aが形成されている。
後部突出部25の両側面には、ホルダ位置決め機構48の係合用凹所48d,48d(
図5等を参照)に係合する係合突起24b、24bが形成されている。
【0037】
ホルダベース体22の下面には、レール機構47のレール台部47Aと案内凸部47Bとの間に嵌合するガイド凸部26がファイバ保持用凹溝22bと同じ方向に延在して形成されている。
ガイド凸部26は、ホルダベース体22の下面の一方の側縁に近い位置に形成されているため、光ファイバホルダ20は前後方向を逆にするとレール機構47に嵌合しない。このため、光ファイバホルダ20の前後方向を取り違える誤操作を防止できる。
【0038】
図9に示すように、押さえ部材23は、平板状の本体部27と、この本体部27の幅方向の一方の側縁に設けられた係止湾曲部28とを有し、ホルダベース体22の前部突出部24と後部突出部25との間に設けられる。
本体部27は、他方の側縁27aにおいてホルダベース体22の側縁22cに連結されており、この側縁27aを支点として、押さえ部材23はホルダベース体22に対し回動できる。
【0039】
係止湾曲部28は、本体部27の内面側に断面U字状に突出して形成されており、外側面28aには、ホルダベース体22の受容凹部22d内面の係止突部22eに係止する係止爪部28bが形成されている。係止湾曲部28の先端には、操作用延出部28cが形成されている。
係止湾曲部28は、断面U字状に形成されているため、係止爪部28bが本体部27に対し接近および離間する方向に移動するように弾性変形可能である。
【0040】
図9に示す状態では、押さえ部材23は閉止位置にあって、本体部27とホルダベース体22との間に光ファイバ2を挟み込んだ状態となっている。
操作用延出部28cを操作して係止湾曲部28を弾性変形させて係止突部22eに対する係止爪部28bが解除すれば、2点鎖線で示すように、押さえ部材23を開放方向に回動させることができる。この位置を開放位置という。この開放位置にあっては、光ファイバ2を光ファイバホルダ20から取り外すことができる。
【0041】
図6、
図7および
図10に示すように、第1および第2介挿部材50(50A,50B)は、支持台40の底壁部43の下面43b側に、互いに独立に動作可能となるように取り付けられている。
介挿部材50(50A,50B)は、支持台40に軸支された回転軸部52から延出する介挿部材本体53と、介挿部材本体53の基端部53aから延出する操作片54とを備えている。
介挿部材本体53は、断面略矩形の延出体55と、その上面55a(支持台40側の面)に形成された介挿片51、51とを有する。
介挿片51は、その厚さ方向が幅方向と一致する向きで、介挿部材本体53の長手方向に間隔をおいて2箇所に突設されている。
【0042】
第1介挿部材50Aの介挿片51は、スプライス30の第1サイド蓋321に対応する1カ所、及び中央蓋322における第1サイド蓋321側の1カ所の計2カ所の介挿片挿入穴35に挿入可能な位置に形成されている(
図13、
図14参照)。
これら2カ所の介挿片挿入穴35は、スプライス30の略中央より一端側の位置にある。この位置は、スプライス30の一端側を開放できる位置であって、スプライス30の略中央から一端までの範囲にある。
第2介挿部材50Bの介挿片51は、スプライス30の中央蓋322における第2サイド蓋323側の1カ所、及び第2サイド蓋323に対応する1カ所の計2カ所の介挿片挿入穴35に挿入可能な位置に形成されている。
これら2カ所の介挿片挿入穴35は、スプライス30の略中央より他端側の位置にある。この位置は、スプライス30の他端側を開放できる位置であって、スプライス30の略中央から他端までの範囲にある。
【0043】
回転軸部52は、幅方向に間隔をおいて立設された一対の突出板部52aを有し、突出板部52aには、軸受口部52bが形成されている。
軸受口部52bには、軸受口部52aを有する支持台40の端壁部45に外側方に突出して形成された凸状の軸部45dが挿入され、これによって介挿部材50は支持台40に軸支される。
図7に示すように、介挿部材50は、回転軸部52を中心にして回動可能である。すなわち、介挿部材50は、実線で示すように介挿片51がスプライス30の介挿片挿入穴35に挿入される位置(挿入位置)と、2点鎖線で示すように介挿片51がスプライス30から抜出された位置(抜出位置)との間で任意に回動できる。
介挿片51は、支持台40の接続器支持部41の底壁部43に形成された介挿片通過口43cを通してスプライス30に対し挿入および抜出できる。
【0044】
操作片54は、介挿部材本体53とは異なる方向に延出して形成されている。具体的には、介挿部材本体53に対し傾斜する方向に延出している。
図7に示すように、例えば第1介挿部材50Aは、介挿部材本体53の延出体55は左右方向に延在しているが、操作片54は、この方向に対して傾斜して、右斜め下方に向けて延出している。
延出体55の形成方向(左右方向)に対する操作片54の傾斜角度(
図7のθ)は、例えば0度を越え、180度未満とすることができる。
【0045】
操作片54は、
図7に実線で示すように、介挿部材50の介挿片51をスプライス30に挿入した状態で、延出端部54aが支持台40から下方に離間した位置にある。
このため、操作片54を上方に向けて移動させることにより介挿部材50を容易に回動させることができる。
【0046】
介挿部材50の構成材料としては、ポリカーボネート等の硬質の樹脂材料を挙げることができる。樹脂材料の使用によって、低コスト化が可能となる。
【0047】
図11および
図12に示すように、光ファイバ接続工具10を平坦な載置面に載置するためには、支持台40の下面側にある介挿部材50が邪魔にならないように、光ファイバ接続工具10を載せ台60に載せた状態とすることができる。
図12に示すように、載せ台60は、平面視略矩形の外枠体63と、連結部65、65を介して外枠体63に連結された内枠体64とを備えている。外枠体63は、対向配置された一対の側板61と、側板61の両端に形成された一対の端板62とを有する。
連結部65には、上方に延出する延出片66が形成され、延出片66の先端には、係止爪部66aが形成されている。
載せ台60の高さは、介挿部材50が載置面に当たらないように設定される。
【0048】
載せ台60は、ホルダ支持部42の下面であって、介挿部材50(50A,50B)に干渉しない位置に装着することができる。
載せ台60は、延出片66がレール台部47Aの開口部47M3に挿通し、係止爪部66aが開口部47M3の周縁部に係止することによって、支持台40に装着することができる。載せ台60は、一対のホルダ支持部42の両方にそれぞれ装着することが好ましい。
載せ台60の使用によって、支持台40を所定の高さ位置に支持し、光ファイバ接続工具10を平坦な載置面に載置することができる。
よって、光ファイバ接続工具10を平坦な載置面においた状態で使用できる。
【0049】
次に、光ファイバ接続工具10の使用方法について説明する。
以下に説明する光ファイバ接続方法は、まず、第1光ファイバ1Aをスプライス30に挿入する第1ファイバ挿入工程を行い、次いで第2光ファイバ1Bをスプライス30に挿入する第2ファイバ挿入工程を行う。
以下、
図17〜
図23を参照して、この光ファイバ接続方法を詳しく説明する。
図17〜
図23において、(a)は光ファイバ接続工具10を一部断面状態で平面視した模式図であり、(b)は光ファイバ接続工具10を一部断面状態で側面視した模式図である。
【0050】
(予備工程)
図17に示すように、スプライス30を接続器支持部41に収容する。この図に示す状態では、第1および第2介挿部材50(50A,50B)は、介挿片51がスプライス30から離れた位置にある。
図18に示すように、介挿部材50(50A,50B)を、回転軸部52(
図7等を参照)を中心として回動させることにより、介挿部材本体53を支持台40に向けて移動させ、クランプばね33の弾性に抗して介挿片51を素子31、32間に挿入する。
介挿片51は、底壁部43に形成された介挿片通過口43cを通してスプライス30の素子31、32間に挿入される。
接続器支持部41は上方に開口して形成されているためスプライス30は上下動可能であるが、スプライス30を上から押さえつけながら介挿部材50を回動させれば、介挿片51を挿入する作業に支障は生じない。
図16に示すように、介挿片51が介挿片挿入穴35に挿入されると、素子31、32は、光ファイバ1A、1Bの挿入が可能な程度に押し開かれる。
【0051】
図8に示すように、光ファイバ1A、1B(光ファイバ2)をホルダベース体22上に、押さえ部材23で押さえつけて把持した後、図示せぬ被覆除去器によって光ファイバ1A、1Bの先端部分の被覆を除去する。
次いで、必要に応じて光ファイバカッター(図示略)を用いて光ファイバ1A、1Bの先端部分を切除し、光ファイバ1A、1Bを所定の長さとする。
【0052】
図2に示すように、この際、第1光ファイバ1Aの光ファイバホルダ20前端からの突出長は、この光ファイバホルダ20がホルダ位置決め機構48により位置決めされた状態で、スプライス30の一端側から挿入された第1光ファイバ1Aの先端が、スプライス30の長手方向中央よりも他端側の位置に達する長さとされる。
また、第2光ファイバ1Bの光ファイバホルダ20前端からの突出長は、この光ファイバホルダ20がホルダ位置決め機構48により位置決めされた状態で、第1光ファイバ1Aと突き合わせされた第2光ファイバ1Bにたわみ部2d(
図21参照)が形成される長さとすることができる。
【0053】
(第1ファイバ挿入工程)
以下の説明において、第1光ファイバ1Aを把持した光ファイバホルダ20が載置されるホルダ支持部42を第1ホルダ支持部42Aといい(
図17〜
図23の右のホルダ支持部42)、第2光ファイバ1Bを把持した光ファイバホルダ20が載置されるホルダ支持部42を第2ホルダ支持部42B(同図における左のホルダ支持部42)という。
【0054】
図19に示すように、第1光ファイバ1Aを把持した光ファイバホルダ20を、第1ホルダ支持部42A上に載置し、レール機構47に沿ってスプライス30に向けて前進させる。
図15に示すように、第1光ファイバ1Aはスプライス30の一端側から素子31、32間に挿入される。
光ファイバホルダ20の係合突起24b、24bがホルダ位置決め機構48の係合用凹所48d,48dに係合すると、光ファイバホルダ20は位置決めされる。
この状態では、第1光ファイバ1Aの裸光ファイバ2aの先端2cは、スプライス30の長手方向中央よりも第2ホルダ支持部42B寄りの位置(
図19における左寄りの位置)にある。
【0055】
次いで、
図20に示すように、第1介挿部材50Aの操作片54に、支持台40に近づく方向への力を作用させて、第1介挿部材50Aを回動させる。第1介挿部材50Aは介挿部材本体53がスプライス30から離れる方向に移動し、介挿片51がスプライス30から抜き出される。
既述のように、第1介挿部材50Aの介挿片51は、スプライス30の第1サイド蓋321に対応する1カ所、及び中央蓋322における第1サイド蓋321側の1カ所の計2カ所の介挿片挿入穴35に挿入されている(
図13、
図14参照)。
第1スプライス用工具40の介挿片51をスプライス30から抜き去ると、第1光ファイバ1Aが、スプライス30のクランプばね33の弾性によって、スプライス30の第1サイド蓋321とベース部材31との間、及び中央蓋322とベース部材31との間に把持固定される。
【0056】
図7に示すように、第1介挿部材50Aを回動させると、介挿部材本体53は基端部53a側を中心として傾動するため、2つの介挿片51のうち、介挿部材本体53の先端側にある第1介挿片51aは、基端側に位置する第2介挿片51bよりも移動距離が大きくなる。
このため、第1介挿片51aのスプライス30からの抜き去りは、第2介挿片51bのスプライス30からの抜き去りより早期に完了する。
第1介挿片51aの抜き去りが、第2介挿片51bよりも先行してなされることによって、光ファイバ1A、1Bの突き合わせ部分を含む裸光ファイバ2aが先行して把持固定されることになる。このため、突き合わせ接続の確実性を高め、接続信頼性を向上させることができる。
第1介挿片51aのスプライス30からの抜き去りが、第2介挿片51bのスプライス30からの抜き去りよりも先行してなされる構成は、第1、第2介挿部材50A、50Bに共通する。
【0057】
介挿部材50は、支持台40に取り付けられているため、介挿片51がスプライス30から引き抜かれても支持台40から脱落することはない。
このため、架空での作業や狭い空間での作業における作業性が良好となる。
【0058】
(第2ファイバ挿入工程)
図21に示すように、第2光ファイバ1Bを把持した光ファイバホルダ20を、第2ホルダ支持部42B上に載置し、レール機構47に沿ってスプライス30に向けて前進させる。
図15に示すように、第2光ファイバ1Bはスプライス30の他端側から素子31、32間に挿入される。
光ファイバホルダ20の係合突起24b、24bがホルダ位置決め機構48の係合用凹所48d,48dに係合すると、光ファイバホルダ20は位置決めされる。
この状態では、第2光ファイバ1Bの先端は、スプライス30に固定済みの第1光ファイバ1A先端に突き当てられる。
【0059】
光ファイバ1A、1Bの先端同士の突き当ては、具体的には第2光ファイバ1Bの先端部に口出しされた裸光ファイバ2a先端と、第1光ファイバ1A先端部に口出しされた裸光ファイバ2a先端との突き合わせである。このとき、第1光ファイバ1Aはスプライス30に固定済みであるので、第2光ファイバ1Bを第1光ファイバ1Aに突き当て(突き合わせ)たときに、第1光ファイバ1Aにスプライス30に対するその長手方向への位置ずれは生じない。
上述のように、第1光ファイバ1Aの裸光ファイバ2aの先端2cは、スプライス30の長手方向中央よりも第2ホルダ支持部42B寄りの位置(
図21における左寄りの位置)にあるため、光ファイバ1A、1Bの突き合わせ位置P1も、スプライス30の長手方向中央よりも第2ホルダ支持部42B寄りの位置にある。
【0060】
この際、第2光ファイバ1Bには、光ファイバホルダ20とスプライス30との間に、たわみ部2dが形成されることが好ましい。たわみ部2dの形成を確認することにより、光ファイバ1A、1Bが突き合わせられたことを目視で確認することができる。
【0061】
次いで、
図22に示すように、第2介挿部材50Bの操作片54に、支持台40に近づく方向への押圧力を作用させて、第2介挿部材50Bを回動させる。第2介挿部材50Bは介挿部材本体53がスプライス30から離れる方向に移動し、介挿片51がスプライス30から抜き出される。
介挿片51をスプライス30から抜き去ると、第2光ファイバ1Bが、第1光ファイバ1Aとの突き合わせ状態を保ったまま、スプライス30のクランプばね33の弾性によって、スプライス30の第1サイド蓋321とベース部材31との間、及び中央蓋322とベース部材31との間に把持固定される。
これにより、光ファイバ1A、1Bは、突き合わせ接続された状態でスプライス30に把持固定される。
次いで、光ファイバホルダ20の押さえ部材23を開放し、光ファイバ1A、1Bを取り外し可能とする。
【0062】
図23に示すように、スプライス30および光ファイバ1A、1Bを光ファイバ接続工具10から取り外す。
接続器支持部41は上方に開口して形成されているため、介挿部材50(50A,50B)を回動させて介挿部材本体53を支持台40に向けて移動させれば、スプライス30は介挿片51によって押し上げられ、取り出しが容易となる。
【0063】
光ファイバ接続工具10によれば、互いに独立に動作可能な2つの介挿部材50A、50Bを備えているため、まず、第1介挿部材50Aの操作により第1光ファイバ1Aを把持固定し、次いで第2介挿部材50Bの操作によって第2光ファイバ1Bを接続状態で把持固定するという使用方法が可能である。
このため、1つの介挿部材(クサビ)を使用する構造とは異なり、突き合わせ接続の信頼性を確保するためのたわみ調整作業が不要となる。従って、光ファイバ1A、1Bの余長が短い場合でも、これらを接続することができる。
また、たわみ調整作業が不要となるため、作業時間を短縮できる。また、作業者の熟練度等による接続信頼性のばらつきが生じにくい。
【0064】
光ファイバ接続工具10によれば、第1および第2介挿部材50が、支持台40の接続器支持部41側とは反対の面側(支持台40の下面側)に設けられているため、介挿部材50の取り付け構造を簡略化できることから、この接続工具10を小型化および軽量化することができる。
従って、架空での作業や狭い空間での作業において、作業性を良好にすることができる。よって、接続信頼性を高めることができる。
また、接続工具10を小型化できることから、光ファイバ1A、1Bの余長が短い場合でも、光ファイバ1A、1Bを接続することができる。さらには、構造を簡略化できるため、低コスト化が可能となる。
【0065】
光ファイバ接続工具10では、介挿部材50が、支持台40の接続器支持部41側とは反対の面側(支持台40の下面)に設けられているため、光ファイバホルダ20をスプライス30に向けて移動させる操作と、これに続く介挿部材50の回動操作とを、一連の動作で容易に行うことができる。従って、作業性がいっそう良好となる。
また、介挿部材50が回動自在であるため、容易な操作で介挿片51を進退動作させ、スプライス30を開閉することができる。よって、架空での作業や狭い空間での作業がしやすくなる。
【0066】
なお、前述の例では、第1ファイバ挿入工程において、第1光ファイバ1Aは、スプライス30の一端側から挿入され、先端2cがスプライス30の長手方向中央よりも他端寄りの位置に達するように挿入されたが、光ファイバ1Aの先端2cの位置はこれに限定されず、スプライス30の任意の位置としてよい。