特許第5719797号(P5719797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5719797ガラス板の製造方法及びガラス板の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719797
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法及びガラス板の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/225 20060101AFI20150430BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   C03B5/225
   C03B17/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-87733(P2012-87733)
(22)【出願日】2012年4月6日
(65)【公開番号】特開2013-216531(P2013-216531A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2013年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 隼人
(72)【発明者】
【氏名】村上 次伸
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/043769(WO,A1)
【文献】 特開平03−103328(JP,A)
【文献】 特開2004−091244(JP,A)
【文献】 特開2005−132713(JP,A)
【文献】 特許第5329725(JP,B1)
【文献】 特開2010−111533(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/093571(WO,A2)
【文献】 特表2009−502715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/00 − 5/44
C03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板を製造するガラス板の製造方法であって、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる工程と、
前記熔融ガラスを昇温することにより、前記熔融ガラスを清澄する工程と、を含み、
前記熔融ガラスの清澄は、白金あるいは白金合金で構成された管であって、前記熔融ガラスを外壁から加熱することにより昇温する前記熔融ガラスの移送管と、白金あるいは白金合金で構成された管であって、前記移送管の断面より大きい断面を有し、前記移送管から前記熔融ガラスが供給されて前記熔融ガラスが流れるとともに、前記熔融ガラスの脱泡のための気相の空間を有する清澄管と、で少なくとも行われ、
前記移送管では、前記熔融ガラスが前記移送管の内側断面全体に充填されて流れ、
前記熔融ガラスが前記移送管を流れるときの前記熔融ガラスの第1の最高温度は、前記清澄管を流れるときの前記熔融ガラスの第2の最高温度と同等、あるいはそれより高
前記移送管を熔融ガラスが通過する時間をTime(分)とし、前記移送管の入り口における前記熔融ガラスの温度から、前記移送管を流れる前記熔融ガラスの前記第1の最高温度までの昇温の温度差をΔT(℃)としたとき、ΔT/Timeは、3〜10(℃/分)である、ことを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記熔融ガラスが前記移送管を流れる途中で、前記熔融ガラスの温度は前記第1の最高温度に達する、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記熔融ガラスには、清澄剤としてSnO2を含む、請求項1または2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス板に用いるガラスは、102.5 poiseにおける温度が1500℃以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
ガラス板を製造するガラス板の製造装置であって、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解槽と、
前記熔融ガラスを流しながら清澄する、白金あるいは白金合金で構成された清澄管と、
白金あるいは白金合金で構成された管であって、前記熔解槽と前記清澄管を接続し、外壁を加熱することにより前記熔融ガラスを昇温し前記熔融ガラスを清澄する前記熔融ガラスの移送管と、を含み、
前記清澄管は、前記移送管の断面より大きい断面を有するとともに、前記熔融ガラスの脱泡のための気相の空間を有し、
前記熔融ガラスが前記移送管を流れるときの前記熔融ガラスの第1の最高温度は、前記熔融ガラスが前記清澄管を流れるときの前記熔融ガラスの第2の最高温度と同等、あるいはそれより高くなるように、前記移送管は加熱され、前記移送管を熔融ガラスが通過する時間をTime(分)とし、前記移送管の入り口における前記熔融ガラスの温度から、前記移送管を流れる前記熔融ガラスの前記第1の最高温度までの昇温の温度差をΔT(℃)としたとき、前記加熱は、ΔT/Timeを3〜10(℃/分)とする加熱である、ことを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を製造するガラス板の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス板を製造する際、ガラス原料を熔解槽で熔融して熔融ガラスをつくり、この熔融ガラスを、移送管を通して白金あるいは白金合金で構成された清澄管に供給する。
清澄管に熔融ガラスを供給する移送管では、熔解槽でつくられた熔融ガラスが降温しないように、すなわち、熔融ガラスの温度を維持する程度に熔融ガラスは加熱される。
清澄管では、熔融ガラスに含まれる清澄剤の還元作用により放出される酸素ガスを熔融ガラス中の泡が取り込むことにより、熔融ガラス中の泡を成長させて熔融ガラスの液面に浮上させて脱泡させる。上記清澄剤の還元作用を効果的に行い、さらに熔融ガラスの粘度を低下させて熔融ガラス中の泡の液面への浮上を効果的に行うために、清澄管は、自らの外壁を加熱して熔融ガラスを昇温させる。その後、熔融ガラス中に残存する泡を、清澄剤の酸化作用により、泡中の酸素ガスを吸収して泡を消滅させるために熔融ガラスを降温させる。
【0003】
このような移送管によって熔融ガラスが清澄管に供給され、清澄管で清澄される熔融ガラスに関して、熔融ガラスの流れに沿った温度プロファイルをみたとき、熔融ガラスは昇温し、その後下降するため、清澄管内で熔融ガラスは最高温度に達する。
上記ガラス板の製造方法の一例として、下記特許文献1が挙げられる。特許文献1では、熔融炉から流れ出た熔融ガラスは、当該文献の図1に示す清澄管22において、熔融ガラスは昇温されて最高温度に達する。
【0004】
一方、近年、清澄管における熔融ガラスの温度は、従来に比べて高温にする場合が多い。その要因として、ガラス板を、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板に用いること、及び、環境負荷の低減の点から、As23等の清澄剤を用いず、SnO2等の清澄剤を用いること、が挙げられる。
【0005】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用ガラス板に用いる場合、フラットパネルディスプレイ用ガラス板に形成されるTFT(Thin Film Transistor)の損傷を防止するために、Li,Na,K等のアルカリ金属成分を全く含まない無アルカリガラスか、アルカリ金属成分を含んでも微量であるアルカリ微量含有ガラスが用いられている。この無アルカリガラスあるいはアルカリ微量含有ガラスは、熔解性が低く高温粘性が高い。このため、上述した清澄管における熔融ガラスの脱泡を効果的に行い、泡を効果的に消滅させるために、清澄管において、熔融ガラスは、従来よりも高く昇温される。
また、環境負荷低減の点から、As23に比べて清澄剤としての機能が劣るが、毒性の少ないSnO2等が好適に用いられる。しかし、このような清澄剤を好適に機能させるには従来よりも熔融ガラスの温度を高くする必要がある。
このため、上述した清澄管内を流れる熔融ガラスの最高温度も、従来に比べて高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−523457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、熔融ガラスを高温にするためには、白金あるいは白金合金で構成された清澄管は、従来に比べて高温に加熱する必要がある。例えば、清澄剤としてSnO2を用いた場合、SnO2の清澄機能を効果的に機能させるために、熔融ガラスの温度は1700℃程度まで上昇される。このため、従来に比べて高温に加熱される清澄管を構成する白金あるいは白金合金の一部は揮発して、清澄管の肉厚が薄くなり易く、清澄管の寿命が従来に比べて短くなる、といった問題がある。
【0008】
また、清澄管内には、熔融ガラスを脱泡するための気相が存在するが、この気相に接する清澄管の内側壁面から白金が揮発し、その一部が部分的に冷やされて固化し、清澄管内の内側壁面(天井部分)に結晶物として付着する。この付着物は、清澄管を流れる熔融ガラス内に微粒子として落下し、熔融ガラス内の異物として下流工程に流れ、ガラス板の欠陥を作る原因となる場合もある。
【0009】
そこで、本発明は、従来の問題点を解決するために、白金あるいは白金合金で構成される清澄管から白金の揮発を抑制しつつ、ガラス板を製造することができるガラス板の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、ガラス板を製造するガラス板の製造方法である。当該製造方法は、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる工程と、
前記熔融ガラスを昇温することにより、前記熔融ガラスを清澄する工程と、を含む。
前記熔融ガラスの清澄は、白金あるいは白金合金で構成された管であって、前記熔融ガラスを外壁から加熱することにより昇温する前記熔融ガラスの移送管と、白金あるいは白金合金で構成された管であって、前記移送管の断面より大きい断面を有し、前記移送管から前記熔融ガラスが供給されて前記熔融ガラスが流れるとともに、前記熔融ガラスの脱泡のための気相の空間を有する清澄管と、で行われる。
前記移送管では、前記熔融ガラスが前記移送管の内側断面全体に充填されて流れる。
前記熔融ガラスが前記移送管を流れるときの前記熔融ガラスの第1の最高温度は、前記清澄管を流れるときの前記熔融ガラスの第2の最高温度と同等、あるいはそれより高い。前記移送管を熔融ガラスが通過する時間をTime(分)とし、前記移送管の入り口における前記熔融ガラスの温度から、前記移送管を流れる前記熔融ガラスの前記第1の最高温度までの昇温の温度差をΔT(℃)としたとき、ΔT/Timeは、3〜10(℃/分)である。
前記熔融ガラスの第1の最高温度は、前記清澄管を流れるときの前記熔融ガラスの第2の最高温度と同等、あるいはそれより高いので、前記移送管において熔融ガラスの中の泡は大きく成長する。このため、泡は、前記清澄管において熔融ガラスの液面上に浮上して容易に脱泡される。熔融ガラスが前記移送管から前記清澄管に移動するとき、熔融ガラスの温度は十分に高く、清澄剤の還元反応が生じる温度以上に維持されるので、前記清澄管は、熔融ガラスをさらに昇温するための加熱を要しない。このため、前記清澄管の加熱温度を従来よりも低く抑えることができる。したがって、白金あるいは白金合金で構成される前記清澄管から白金の揮発を抑制し、白金の揮発により清澄管内の内壁面に付着する白金結晶物などの異物に起因する欠陥が少ないガラス板を製造することができる。
前記移送管において熔融ガラスの温度を前記第1の最高温度にするために、熔融ガラスを加熱する場合、白金あるいは白金合金で構成された移送管の加熱温度を高くすることは、白金の揮発を促進させることになり、前記移送管の寿命の点で好ましくない。このため、ΔT/Timeを3〜10(℃/分)とすることにより、前記移送管の加熱温度と熔融ガラスの温度との間の温度差を小さくする。これにより、前記移送管の加熱温度の上昇の程度を抑え前記移送管の寿命を長くすることができる。
【0011】
前記熔融ガラスが前記移送管を流れる途中で、前記熔融ガラスの温度は前記第1の最高温度に達する、ことが好ましい。
この場合、前記移送管と前記清澄管との接続位置で熔融ガラスが前記第1の最高温度及び前記第2の最高温度に達する場合に比べて、前記清澄管の加熱温度は低くなるので、白金あるいは白金合金で構成される前記清澄管から白金の揮発をより容易に抑制することができる。
【0012】
前記熔融ガラスには、清澄剤としてSnO2を含んでもよい。
前記SnO2は、従来の清澄剤であるAs23に比べて清澄機能は低いが、環境負荷が少ない点で清澄剤として好適に用いることができる。しかし、前記SnO2は、清澄機能がAs23に比べて低いので、前記SnO2を用いた場合、熔融ガラスの清澄工程時の熔融ガラスの温度を従来より高くしなければならない。上述のガラス板の製造方法では、前記清澄管における加熱温度を従来よりも低く抑えることができるので、清澄剤として前記SnO2を含む熔融ガラスを用いる場合であっても、白金あるいは白金合金で構成される前記清澄管から白金の揮発を抑制し、白金結晶物などの異物等に起因する欠陥が少ないガラス板を製造することができる。
【0013】
前記ガラス板に用いるガラスは、102.5 poiseにおける温度を1500℃以上とすることができる。さらには、前記温度を1550℃以上、さらには1600℃以上とすることができる。
このような熔融ガラスは、粘性の高いガラスである。上記製造方法では、前記清澄管の加熱温度を従来よりも低く抑えることができるので、粘性の高いガラスであっても、白金あるいは白金合金で構成される前記清澄管から白金の揮発をより容易に抑制することができる。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、ガラス板を製造するガラス板の製造方法である。当該製造方法は、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる工程と、
前記熔融ガラスの昇温をした後、段階的にあるいは連続的に降温することにより、前記熔融ガラスを清澄する工程と、を含む。
前記熔融ガラスの清澄は、白金あるいは白金合金で構成された管であって、前記熔融ガラスを外壁から加熱することにより昇温する前記熔融ガラスの移送管と、白金あるいは白金合金で構成された管であって、前記移送管の断面より大きい断面を有し、前記移送管から前記熔融ガラスが供給されて前記熔融ガラスが流れるとともに、前記熔融ガラスの脱泡のための気相の空間を有する清澄管と、で少なくとも行われる。
前記移送管では、前記熔融ガラスが前記移送管の内側断面全体に充填されて流れる。
前記移送管では、前記熔融ガラスの前記昇温により前記熔融ガラスの温度を前記清澄における最高温度にした後、前記清澄管では、前記熔融ガラスの前記降温により前記熔融ガラスの温度を前記最高温度と同等、あるいはそれより低い温度に維持する。
熔融ガラスの温度は、前記移送管において前記清澄における最高温度になるので、熔融ガラス中の泡は前記移送管内で成長し、前記清澄管において熔融ガラスの液面上に浮上して容易に脱泡される。熔融ガラスが前記移送管から前記清澄管に移動するとき、清澄管において熔融ガラスの温度を前記最高温度より低い温度に維持するので、熔融ガラスをさらに昇温するための加熱を要しない。このため、前記清澄管の加熱温度を従来よりも低く抑えることができる。したがって、白金あるいは白金合金で構成される前記清澄管から白金の揮発を抑制し、白金の揮発により清澄管内の内壁面に付着する白金結晶物などの異物に起因する欠陥が少ないガラス板を製造することができる。
【0016】
本発明の他の一態様は、ガラス板を製造するガラス板の製造装置である。当該製造装置は、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解槽と、
前記熔融ガラスを流しながら清澄する、白金あるいは白金合金で構成された清澄管と、
白金あるいは白金合金で構成された管であって、前記熔解槽と前記清澄管を接続し、外壁を加熱することにより前記熔融ガラスを昇温し前記熔融ガラスを清澄する前記熔融ガラスの移送管と、を含む。
前記清澄管は、前記移送管の断面より大きい断面を有するとともに、前記熔融ガラスの脱泡のための気相の空間を有する。
前記熔融ガラスが前記移送管を流れるときの前記熔融ガラスの第1の最高温度は、前記熔融ガラスが前記清澄管を流れるときの前記熔融ガラスの第2の最高温度と同等、あるいはそれより高くなるように、前記移送管が加熱調整される。前記移送管を熔融ガラスが通過する時間をTime(分)とし、前記移送管の入り口における前記熔融ガラスの温度から、前記移送管を流れる前記熔融ガラスの前記第1の最高温度までの昇温の温度差をΔT(℃)としたとき、前記加熱は、ΔT/Timeを3〜10(℃/分)とする加熱である。
当該製造装置において、熔融ガラスの第1の最高温度は、前記第2の最高温度と同等、あるいはそれより高くなるように、前記移送管が加熱調整されるので、前記移送管で成長した熔融ガラス中の泡は、前記清澄管において熔融ガラスの液面上に浮上して容易に脱泡される。熔融ガラスが前記移送管から前記清澄管に移動するとき、熔融ガラスの温度は十分に高く、清澄剤の還元反応が生じる温度以上に維持されるので、前記清澄管は、熔融ガラスをさらに昇温するための加熱を要しない。このため、前記清澄管の加熱温度を従来よりも低く抑えることができる。したがって、当該製造装置は、白金あるいは白金合金で構成される前記清澄管から白金の揮発を抑制することができる。また、白金の揮発により生じる白金結晶物などの異物に起因する欠陥が少ないガラス板を製造することができる。
さらに、ΔT/Timeを3〜10(℃/分)とすることにより、前記移送管の加熱温度と熔融ガラスの温度との間の温度差を小さくする。これにより、前記移送管の加熱温度の上昇の程度を抑え前記移送管の寿命を長くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のガラス板の製造方法および製造装置によれば、白金あるいは白金合金で構成される清澄管から白金の揮発を抑制し、白金結晶物などの異物に起因する欠陥が少ないガラス板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のガラス板の製造方法の工程図である。
図2】本実施形態のガラス板の製造方法の熔解工程〜切断工程を行う装置を模式的に示す図である。
図3】本実施形態のガラス板の製造方法の清澄工程を行う装置構成を主に示す図である。
図4】本実施形態のガラス板の製造方法で用いるガラス供給管及び清澄管における熔融ガラスの流れ方向の温度プロファイルの例を示す図である。
【0019】
以下、本実施形態のガラス板の製造方法について説明する。
【0020】
(ガラス板の製造方法の全体概要)
図1は、本実施形態のガラス板の製造方法の工程図である。
ガラス板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
【0021】
図2は、熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行う装置を模式的に示す図である。
該装置は、図2に示すように、主に熔解装置200と、成形装置300と、切断装置400と、を有する。熔解装置200は、熔解槽201と、清澄管202と、攪拌槽203と、ガラス供給管204,205,206と、を主に有する。なお、ガラス供給管204,205は、後述するように熔融ガラスMGを流す管であるとともに清澄機能を有する。ガラス供給管204は、白金あるいは白金合金で構成された移送管であり、熔融ガラスを外壁から加熱することにより昇温する。ガラス供給管204では、熔融ガラスがガラス供給管204の内側断面全体に充填されて流れる。なお、熔解槽201以降、成形装置300までのガラス供給管204,205,206及び清澄管槽202と攪拌槽203の本体部分は、白金あるいは白金合金管により構成されている。
【0022】
熔解工程(ST1)では、SnO2が清澄剤として添加されて熔解槽201内に供給されたガラス原料を、図示されない火焔および電極を用いた通電加熱により熔解することで熔融ガラスMGを得る。具体的には、図示されない原料投入装置を用いてガラス原料は熔融ガラスMGの液面に供給される。ガラス原料は、酸素バーナまたは空気バーナから発する火炎で高温となった気相の熱輻射により加熱されて徐々に熔解し、熔融ガラスMG中に熔ける。さらに、熔融ガラスMGは、熔解槽201の側壁に挿入されている電極を用いた交流電流の通電加熱により発生するジュール熱によって昇温される。上記電極には、例えばモリブデン、白金あるいは酸化錫が電極材として用いられる。
なお、上記説明では、酸素バーナまたは空気バーナ等のバーナと、電極とを用いてガラス原料を熔解する例を説明したが、バーナのみでガラス原料を熔解してもよいし、電極のみでガラス原料を熔解してもよい。熔解槽201における熔融ガラスMGの温度は、清澄剤の還元反応が生じず、酸素の放出が急激に起こらない程度の温度であることが好ましい。溶解槽201における熔融ガラスMGの温度は、清澄剤として酸化錫(SnO2)を用いた場合、例えば1620℃以下の温度である。
【0023】
清澄工程(ST2)は、ガラス供給管204、清澄管202およびガラス供給管205において行われる。清澄工程は詳しくは、脱泡工程と泡の吸収工程とを有する。脱泡工程では、ガラス供給管204内の熔融ガラスMGが昇温されることにより、熔融ガラスMG中に含まれるO2、CO2あるいはSO2等のガス成分を含んだ泡が、清澄剤、例えばSnO2の還元反応により生じたO2を吸収して成長する。清澄管202では、熔融ガラスMGの成長した泡が、熔融ガラスMGの液面に浮上して泡中のガスが気相に放出される。また、泡の吸収工程では、熔融ガラスMGの温度の低下による泡中のガス成分の内圧が低下することと、清澄剤の還元反応により得られた還元物質、例えばSnOが熔融ガラスMGの温度の低下によって酸化反応をすることにより、熔融ガラスMGに残存する泡中のO2等のガス成分が熔融ガラスMG中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄剤による酸化反応及び還元反応は、熔融ガラスMGの温度を調整することにより行われる。熔融ガラスMGの温度の調整は、ガラス供給管204、清澄管202、ガラス供給管205の温度を調整することにより、行われる。各管の温度の調整は、管そのものへ電気を流す直接通電加熱、あるいは、ガラス供給管204、清澄管202、ガラス供給管205の周りに配置したヒータを用いて各管を加熱する間接加熱などによって行われる。
【0024】
本実施形態の熔融ガラスMGの温度の調整では、上述した方法の一つである直接通電加熱が用いられる。具体的には、清澄管202に熔融ガラスMGを供給するガラス供給管204に設けられた図示されない金属製フランジと、清澄管202に設けられた図示されない金属製フランジとの間で電流を流し(図3中の矢印)、さらに、清澄管202に設けられた図示されない金属製フランジと、この金属フランジに対して熔融ガラスMGの下流側の清澄管202に設けられた図示されない金属製フランジとの間に電流を流す(図3中の矢印)ことにより熔融ガラスMGの温度が調整される。本実施形態では、金属製フランジ間の1つ目の領域と、金属製フランジ間の2つ目の領域に、別々の一定の電流を流してガラス供給管204と清澄管202を通電加熱することにより、熔融ガラスMGの温度を調整するが、この通電加熱は2つの領域の通電加熱による温度調整に限定されず、3つ以上の領域で通電加熱を行って、熔融ガラスMGの温度調整を行うこともできる。
均質化工程(ST3)では、ガラス供給管205を通って供給された攪拌槽203内の熔融ガラスMGを、スターラ203aを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。攪拌槽203は2つ以上設けられてもよい。
供給工程(ST4)では、ガラス供給管206を通して熔融ガラスが成形装置300に供給される。
【0025】
成形装置300では、成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)が行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスMGを板状ガラスGに成形し、板状ガラスGの流れを作る。本実施形態では、後述する成形体310を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いる。徐冷工程(ST6)では、成形されて流れる板状ガラスGが、内部歪、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置400において、成形装置300から供給された板状ガラスGを所定の長さに切断することで、ガラス板を得る。切断されたガラス板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス板が作製される。この後、ガラスの端面の研削、研磨およびガラス板の洗浄が行われ、さらに、泡等の欠点の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0026】
(清澄工程)
図3は、清澄工程を行う装置構成を主に示す図である。清澄工程は、脱泡工程と吸収工程とを含む。以下の説明では、清澄剤としてSnO2を用いた例で説明する。SnO2は、従来のAs23に比べて清澄機能は低いが、環境負荷が少ない点で清澄剤として好適に用いることができる。しかし、SnO2は、清澄機能がAs23に比べて低いので、SnO2を用いた場合、熔融ガラスMGの清澄工程時の熔融ガラスMGの温度を従来より高くしなければならない。この場合、例えば清澄工程における最高温度は1700℃程度、好ましくは1710℃以下、より好ましくは1720℃以下にすることができる。
【0027】
図3にしたがって、清澄を説明する。
熔解槽201で熔解され、ガラス原料の分解反応により生成した泡Bを多く含んだ液状の熔融ガラスMGが、ガラス供給管204に導入される。
ガラス供給管204では、ガラス供給管204の本体である白金あるいは白金合金管の加熱により熔融ガラスMGが例えば1630℃以上1720℃以下に加熱され、清澄剤の還元反応が促進されることにより、多量の酸素が熔融ガラスMGに放出される。熔融ガラスMG内の既存の泡Bは、熔融ガラスMGの温度上昇に起因した、泡B内のガス成分の圧力の上昇効果による泡径の拡大に、清澄剤の還元反応により放出された酸素が泡B内に拡散して入り込むことが重なって、この相乗効果により既存の泡Bの泡径が拡大する。
【0028】
続いて、この熔融ガラスMGが清澄管202に導入される。
清澄管202は、ガラス供給管204と異なり、ガラス供給管202内部の上部に気相の空間を有する。清澄管202では、熔融ガラスMG中の泡Bが熔融ガラスMGの液面に浮上して熔融ガラスMGの外に放出できるようになっている。なお、この状態におけるガラスの粘度は、熔融ガラスMGの粘性の低下による泡Bの浮上を妨げない程度に、例えば120〜400poiseになるように、熔融ガラスMGの温度が低く調整されてもよい。
清澄管202では、清澄管202の本体である白金あるいは白金合金管の加熱により熔融ガラスMGは引き続き1630℃以上1720℃以下の高温に維持される。あるいは、
熔融ガラスMGは、清澄管202へ導入されるときの熔融ガラスMGの温度に比べて若干降温するが、依然として脱泡工程にある。このため、熔融ガラスMG中の泡Bは、清澄管202の上方に向かって浮上して、熔融ガラスMGの液表面で破泡することにより、熔融ガラスMGは脱泡される。
ここで、清澄管202の上方の気相の空間で破泡、放出されたガス成分は、図示されないガス放出口より、清澄管202外に放出される。清澄管202において、泡Bの浮上、脱泡によって浮上速度の速い径の大きい泡Bが除去される。
【0029】
本実施形態では、熔融ガラスMGがガラス供給管204を流れるときの熔融ガラスMGの最高温度(第1の最高温度)は、清澄管202を流れるときの熔融ガラスMGの最高温度(第2の最高温度)と同等、あるいはそれより高くなっている。ここで同等とは、第1の最高温度が第2の最高温度と一致する場合の他に、第1の最高温度と第2の最高温度との温度差が±10℃、好ましくは±5℃の範囲にある場合も許容範囲として含む。このように、ガラス供給管204を流れるときの熔融ガラスMGの第1の最高温度を、清澄管202を流れるときの熔融ガラスMGの第2の最高温度以上とするのは、清澄管202における熔融ガラスMGの加熱温度を抑えつつ、清澄管202で脱泡を効率よく行えるようにするためである。
すなわち、ガラス供給管204において熔融ガラスMG中の泡Bは清澄剤が放出する酸素の供給と、泡B内のガス成分の圧力の上昇効果による泡径の拡大とにより、さらに、熔融ガラスMGの粘度の低下により、泡Bは上方に浮上を開始する。
【0030】
この状態で、熔融ガラスMGは清澄管202に導入される。ガラス供給管204では、熔融ガラスMGがガラス供給管204の内側断面全体に充填されて流れるので、熔融ガラスMGの脱泡は起こらない。一方、清澄管202は、清澄管202の上方に気相の空間が設けられ、大気と接続されているので、大きく成長した泡Bは熔融ガラスMGの液面に浮上し破泡する。
この後、熔融ガラスMGは、徐々に(段階的にあるいは連続的に)降温され、清澄管202の後半部分およびガラス供給管205において泡の吸収工程に進む。吸収工程では、上述したように泡Bが熔融ガラスMGの降温により熔融ガラスMG内に吸収され消滅する。熔融ガラスMGの降温は、図3に示す電流以外の電流が、図示されない金属フランジから与えられて、清澄管202の後半部分およびガラス供給205が加熱制御されることにより行われる。
【0031】
このような熔融ガラスMGに関して、ガラス供給管204、清澄管202及びガラス供給管205における熔融ガラスMGの流れ方向の温度プロファイルをみたとき、ガラス供給管204における熔融ガラスの第1の最高温度は、清澄剤の還元反応が生じる温度以上であり、例えば1720℃以下である。この第1の最高温度の位置よりも、熔融ガラスMGの下流側では、第1の最高温度と同じかそれよりも低い温度になるように熔融ガラスMGが加熱調整される。したがって、熔融ガラスMGがガラス供給管204を流れるときの熔融ガラスMGの第1の最高温度は、清澄管202を流れるときの熔融ガラスMGの第2の最高温度と同等、あるいはそれより高くなっている。
また、言い換えると、清澄工程では、清澄剤の還元反応が生じる温度以上に熔融ガラスMGを昇温した後、段階的にあるいは連続的に降温する。このときガラス供給管204では、熔融ガラスMGの昇温により熔融ガラスMGの温度を、清澄における最高温度(第1の最高温度)にした後、清澄管202では、熔融ガラスMGの降温により熔融ガラスの温度を上記最高温度と同等、あるいはそれより低い温度に維持する。
【0032】
図4は、ガラス供給管204及び清澄管202における熔融ガラスMGの流れ方向の温度プロファイルの例を示している。図4に示される温度プロファイルAでは、ガラス供給管204の少なくとも前半部分で熔融ガラスMGは急激に加熱され、それ以降の熔融ガラスMGの流れの下流側では、ガラス供給管204の加熱が維持され、あるいは抑えられる。これにより、位置Xにおいて、熔融ガラスMGは第1の最高温度になる。第1の最高温度は、少なくとも清澄剤の還元反応が生じる温度以上であり、少なくとも清澄管202に熔融ガラスMGが進むまで熔融ガラスMGの温度は清澄剤の還元反応が生じる温度以上となっている。このため、熔融ガラスMGが、ガラス供給管204から清澄管202に進むとき、清澄剤から酸素が熔融ガラスMGに放出される。
一方、清澄管202では、少なくとも清澄管202の前半部分では、熔融ガラスMGは脱泡工程の状態にある。したがって、清澄管202では、熔融ガラスMGの液面に浮上して泡Bの破泡が行われる。この後、温度プロファイルAに示すようになだらかに熔融ガラスMGは降温して、吸収工程に移行する。熔融ガラスMGの降温は、ガラス供給管205のみならず、攪拌槽203、ガラス供給管206においても続行してもよい。そして、熔融ガラスMGが成形装置300に進むとき、成形工程に適した粘度になるように降温される。
【0033】
温度プロファイルAにおける清澄管202における熔融ガラスMGの最高温度(第2の最高温度)の位置は、ガラス供給管204と清澄管202が接続される接続部分である。したがって、温度プロファイルAでは、熔融ガラスMGがガラス供給管204を流れるときの熔融ガラスMGの最高温度(第1の最高温度)は、清澄管202を流れるときの熔融ガラスMGの最高温度(第2の最高温度)と同等、あるいはそれより高くなっている。
熔融ガラスMGの温度プロファイルに関して、熔融ガラスMGがガラス供給管204を流れるときの熔融ガラスMGの最高温度(第1の最高温度)の位置と、清澄管202を流れるときの熔融ガラスMGの最高温度(第2の最高温度)の位置がともに、ガラス供給管204と清澄管202との接続部分であってもよい。この場合、第1の最高温度は、第2の最高温度と同等である。すなわち、この場合、温度プロファイルは、図4に示す温度プロファイルCのようになる。しかし、温度プロファイルAのように、熔融ガラスMGがガラス供給管204を流れる途中で、熔融ガラスMGの温度は第1の最高温度に達することが、清澄管202の加熱を抑制できる点で好ましい。
【0034】
このように、ガラス供給管204、清澄管202及びガラス供給管205の中で、熔融ガラスMGの最高温度の位置をガラス供給管204の場所に設けることで、ガラス供給管204において熔融ガラスMGの中の泡Bは大きく成長する。このため、泡Bは、清澄管202において熔融ガラスMGの液面上に浮上して容易に脱泡する。このため、従来と同様に、清澄管202において泡Bを脱泡することができる。
熔融ガラスMGは、ガラス供給管204から清澄管202に移動するとき、熔融ガラスMGの温度は清澄剤の還元反応が生じる温度以上に維持されているので、清澄管202において、熔融ガラスMGをより高くする必要はない。このため、清澄管202の加熱温度
を従来よりも低く抑えることができる。
【0035】
また、ガラス供給管204、清澄管202、及びガラス供給管205を流れる清澄工程中の熔融ガラスMGの中で、ガラス供給管204を熔融ガラスMGが流れるとき、ガラス供給管204の外壁から熔融ガラスMGを加速することにより熔融ガラスMGは最高温度に達する。
従来、ガラス供給管204よりも内側断面積の大きい清澄管202において、熔融ガラスMGの温度が清澄工程の中で最高温度に達するように清澄管202の外壁を加熱していた。このため、熔融ガラスMGの体積に対する外壁に接する接触面積の比率は小さく、外壁の加熱に対する熔融ガラスMGの昇温効果は大きくない。しかも、清澄管202内には、熔融ガラスMGが流れない気相の空間を有するので、熔融ガラスMGの昇温効果は小さい。しかし、本実施形態のように、ガラス供給管204では、熔融ガラスMGがガラス供給管204の内側断面全体に充填されて流れるので、しかも、ガラス供給管204の内側断面積は清澄管202の内側断面積に比べて小さいので、ガラス供給管204では、外壁からの加熱による熔融ガラスMGの昇温効果は大きい。
また、従来、気相の空間を有する清澄管202において熔融ガラスMGの温度が清澄工程の中で最高温度に達するように清澄管202の外壁を加熱していたので、清澄管202を構成する白金あるいは白金合金が揮発し、その一部が部分的に冷やされて固化し、清澄管202内の内側壁面(天井部分)に結晶物として付着していた。この付着物は、清澄管202を流れる熔融ガラスMG内に異物として落下し、熔融ガラスMG内の異物として下流工程に流れ、ガラス板への微粒子の混入の原因となる場合もあった。
これに対して、本実施形態では、清澄工程において溶融ガラスMGが最高温度に達する位置は清澄管202にないので、白金あるいは白金合金が揮発し、清澄管202内の内側壁面(天井部分)に結晶物として付着することは抑制される。このため、熔融ガラスMG内に異物として下流工程に流れ込むことは抑制される。
【0036】
最近、高温粘性の高いガラスを用い、従来よりも清澄工程における熔融ガラスMGの温度を高くしてガラス板が製造される傾向にある。
具体的には、TFT(Thin Film Transistor)を使用したフラットパネルディスプレイ(液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等)に用いるガラス板の揚合、TFTの影響を抑制する観点から、本実施形態では、無アルカリガラスを用いた無アルカリガラスガラス板、あるいは、アルカリ成分を微量含有させるアルカリ微量含有ガラスを用いたアルカリ微量含有ガラス板が好適に製造される。しかし、アルカリ微量含有ガラス板あるいは無アルカリガラス板の熔解性は低い。具体的には、熔融ガラスMGの粘度ηにおいてlogη=2.5となる温度は、1500℃〜1750℃であり、この温度はアルカリガラスに比べて高い。このような粘度を有する熔融ガラスは、従来のアルカリガラスのガラス板を製造する場合よりも清澄工程における熔融ガラスMGの温度を高くしなければならない。
【0037】
また、清澄剤としては、環境負荷が小さいもの、例えばSnO2等がAs23等に代わって用いられる。しかし、環境負荷が小さいSnO2等は、還元反応を促進させるために、従来に比べて熔融ガラスMGの温度を高くしなければならない。
【0038】
このように、従来に比べて熔融ガラスMGの温度を高くするために、清澄管202をより高い温度に加熱する傾向にあるため、清澄管を構成する白金の揮発が生じやすい。しかし、本実施形態では、清澄工程において熔融ガラスMGが最高温度に達する位置は清澄管202ではなく、ガラス供給管204である。したがって、高温粘性の高いガラスであっても、例えば102.5poiseにおける温度が1500℃以上であるガラスであっても、本実施形態では,従来よりも清澄管202の加熱を抑えることができる。これにより、清澄管202の白金の揮発を抑制できるので、清澄管202の内側壁面(天井部分)に付着する結晶物は少ない。この結果、清澄管202において結晶物の一部が微粒子となって熔融ガラスMG内に脱落して熔融ガラスMG内に混入する、さらには、最終製品であるガラス板へ微粒子が混入することを抑えることができる。
【0039】
すなわち、高温粘性の高いガラスにおいて、本実施形態の効果は従来に比べて顕著となる。高温粘性の高いガラスは、102.5poiseにおける温度が1500℃以上であるが、102.5poiseにおける温度が1550℃以上のガラス、さらには1600℃以上のガラスにおいて、本実施形態の効果は従来に比べてより顕著となる。また、SnO2を清澄剤として用いて、清澄工程中の熔融ガラスMGの温度を高くする必要がある場合、本実施形態の効果は従来に比べて顕著となる。
【0040】
このようなガラス板の製造方法をより具体的に実施するには、ガラス供給管204を熔融ガラスMGが通過する時間をTime(分)とし、ガラス供給管204の入り口(熔解槽201の出口)における熔融ガラスMGの温度から、ガラス供給管204を流れる熔融ガラスMGの第1の最高温度までの昇温の温度差を△T(℃)としたとき、△T/Timeは、3〜10(℃/分)であることが好ましい。ガラス供給管204において熔融ガラスMGの温度が第1の最高温度に達するためには、ガラス供給管204を構成する白金あるいは白金合金を加熱するが、白金あるいは白金合金から熔融ガラスMGへの熱伝達を効率よくする(短時間に熔融ガラスMGの温度を第1の最高温度にする)ために、白金あるいは白金合金をより高く加熱すればよい。しかし、白金あるいは白金合金をより高く加熱することは、白金の揮発を促進させることになり、高価な白金あるいは白金合金で構成されたガラス供給管204の寿命の点で好ましくない。このため、ガラス供給管204の加熱温度と熔融ガラスMGの温度との間の温度差を小さくする代わり、ガラス供給管204を熔融ガラスが通過する時間Time(分)を従来に比べて長くすることにより、熔融ガラスMGの温度が第1の最高温度に達するようにすることが好ましい。したがって、上記△T/Timeは3〜10(℃/分)にすることが好ましい。上記△T/Timは3〜9(℃/分)にすることがより好ましく、3〜8(℃/分)にすることがより好ましい。ここで、時間Time(分)は、熔融ガラスMGを用いて1日にガラス板を製造する製造量MG(トン/日)の情報と、ガラス供給管204の寸法(流路断面、および管長さ)と、熔融ガラスMGの密度とを用いて定めることができる。
【0041】
(ガラス組成)
本実施形態に用いるガラス板のガラス組成は、質量%表示で例えば以下のものが挙げられる。
SiO2:50〜70%、
Al23:0〜25%、
23:1〜15%、
MgO:0〜10%、
CaO:0〜20%、
SrO:0〜20%、
BaO:0〜10%、
RO:5〜30%(ただし、RはMg、Ca、Sr及びBaの合量)、
を含有する無アルカリガラス。
なお、本実施形態では無アルカリガラスとしたが、ガラス基板はアルカリ金属を微量含んだアルカリ微量含有ガラスであってもよい。アルカリ金属を含有させる場合、R’2Oの合計が0.10%以上0.5%以下、好ましくは0.20%以上0.5%以下(ただし、R’はLi、Na及びKから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス基板が含有するものである)含むことが好ましい。勿論、R’2Oの合計が0.10%より低くてもよい。
また、本発明のガラス基板の製造方法を適用する場合は、ガラス組成物が、上記各成分に加えて、質量%で表示して、SnO2:0.01〜1%(好ましくは0.01〜0.5%)、Fe:0〜0.2%(好ましくは0.01〜0.08%)を含有し、環境負荷を考慮して、As23、Sb23及びPbOを実質的に含有しないようにガラス原料を調製しても良い。
【0042】
本実施形態では、清澄工程中の熔融ガラスMGの温度プロファイルを図4に示す温度プロファイルAのようにするためにガラス供給管204及び清澄管202を通電加熱して加熱の制御をするが、実際の温度プロファイルを温度プロファイルAに示すようにできない場合もある。例えば、ガラス供給管204及び清澄管202を通電加熱するための電極を支持するフランジの冷却効果によって、電極が設けられる位置で熔融ガラスMGの温度が部分的に低下する場合がある。この揚合、熔融ガラスMGの温度プロファイルは、温度プロファイルBに示すようになる。すなわち、フランジ及び電極が設けられる清澄管202の上流側の端部の位置、およびフランジ及び電極が設けられる清澄管202の中間の位置において、局部的に温度が低下する。この場合においても、熔融ガラスMGがガラス供給管204を流れるときの熔融ガラスMGの最高温度(第1の最高温度)は、清澄管202を流れるときの熔融ガラスMGの最高温度(第2の最高温度)と同等、あるいはそれより高い。
【0043】
以上、本発明のガラス基板の製造方法およびガラス板の製造装置について詳細に説明し
たが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々
の改良や変更牽してもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0044】
200 熔解装置
201 熔解槽
202 清澄管
203 撹搾槽
203a スターラ
204,205,206 ガラス供給管
300 成形装置
310 成形体
312 供給溝
400 切断装置





図1
図2
図3
図4