【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が常用ブレーキ用の車両用ブレーキペダル装置10に適用された場合の一例を示す図で、その車両用ブレーキペダル装置10の一部を切り欠いた側面図である。この車両用ブレーキペダル装置10は、エンジンルームと車室とを区切るダッシュパネル12の車室側に配設された車両用ペダルブラケット14と、その車両用ペダルブラケット14に略水平な支持軸16の軸心まわりに回動可能に軸支されたペダルアーム18とを有する。そして、ペダルアーム18の下端部に設けられたペダルシート20が運転者によって踏込み操作されると、ペダルアーム18の中間位置にクレビスを介して連結されたオペレーティングロッド22が車両前方(
図1の左方向)へ押圧され、ダッシュパネル12のエンジンルーム側に配設されたブレーキブースタ24により倍力されて、常用ブレーキ用のブレーキ油圧が発生させられる。
【0022】
車両用ペダルブラケット14は、ダッシュパネル12に一体的に固定される板状のベースプレート部30と、そのベースプレート部30の表面側すなわち運転席に対面する側の面の左右両側に設けられた一対の支持部32とを有し、その一対の支持部32に跨がって配設された支持軸16にペダルアーム18が回動可能に配設されている。また、ベースプレート部30の裏面側すなわちダッシュパネル12に対面する側の面には、複数の円筒形状の保持部34がそのダッシュパネル12に向かって突き出すように垂直に突設されているとともに、その保持部34内にはそれぞれ金属製の円筒形状のスペーサ36が圧入またはインサート成形により一体的に固設されている。スペーサ36の外周面は、略全周に亘って保持部34の内周面に密着させられている。本実施例では、ベースプレート部30、一対の支持部32、および複数の保持部34が熱可塑性樹脂により一体成形されている。
【0023】
上記スペーサ36は、軸方向の一端部に外向きのフランジ38を有し、そのフランジ38がベースプレート部30の表面に密着するように配設されることにより、他端部が保持部34の先端面と略面一になり、その保持部34の先端面と共にダッシュパネル12に直接当接させられている。すなわち、ダッシュパネル12の車室側には防音のためにフェルト等の柔軟性を有するインシュレータ40が取り付けられているが、車両用ペダルブラケット14が固定される部分には取付穴42が設けられ、上記保持部34およびスペーサ36がダッシュパネル12に直接当接させられるようになっている。そして、このスペーサ36には、前記ブレーキブースタ24に立設されたスタッドボルト44がダッシュパネル12側から挿通させられ、車室内に突き出す先端部にナット46が螺合されてフランジ38に当接するように締結されることにより、ベースプレート部30がダッシュパネル12から離間する状態で、車両用ペダルブラケット14がダッシュパネル12に所定の取付強度で固定される。スタッドボルト44はねじ部材に相当する。
【0024】
図2は、上記車両用ペダルブラケット14のベースプレート部30を裏面側から見た背面図で、
図3は
図2における III−III 矢視部分の断面図である。これ等の
図2、
図3では、スペーサ36が省略されている。
図2から明らかなようにベースプレート部30は略長方形状を成しており、その中央部分には、オペレーティングロッド22を挿通させるための挿通穴50が設けられている。前記保持部34は、その挿通穴50の周囲に4本突設されており、前記スタッドボルト44はこれ等の保持部34に対応して4本設けられている。
図5は、車両用ペダルブラケット14が取り付けられるダッシュパネル12の取付部位を車室内側から見た正面図で、オペレーティングロッド22を挿通させるための挿通穴52が設けられているとともに、その周囲にはスタッドボルト44を挿通させるための4個の挿通穴54が設けられている。また、
図6は、ダッシュパネル12にインシュレータ40が取り付けられた状態を示す正面図で、斜線を付した部分がインシュレータ40である。
図6の一点鎖線はベースプレート部30の外形線で、前記取付穴42はベースプレート部30の内側に定められており、ベースプレート部30の外周部に設けられた押え部56により取付穴42の周縁部がダッシュパネル12との間で挟圧されて位置決めされるとともに、インシュレータ40の取付穴42の周縁部が閉塞されて騒音が車室内へ漏れることが抑制される。押え部56は、ベースプレート部30の外周部の全周をダッシュパネル12に向かって傾斜させた部分で、
図1に示すように先端部(外周縁)がインシュレータ40に食い込んで位置決めする。
【0025】
上記ベースプレート部30の裏面にはまた、
図2および
図3に示すように、保持部34を除いてダッシュパネル12に対面する部分に多数の有底穴58が設けられている。これ等の有底穴58は、傾斜した押え部56を含めて何れもダッシュパネル12に対して垂直方向に設けられているとともに、
図3のIV部を拡大して示す
図4から明らかなように底部側程小径となるテーパ穴で、その開口部の径寸法dは2〜7mm程度の範囲内である。この多数の有底穴58が設けられたベースプレート部30の裏面の表層部分は、エンジンルームの騒音振動を有底穴58の内周面で何度も反射して減衰させる吸音構造部60として機能する。なお、
図1では有底穴58が省略されている。
【0026】
ここで、このような車両用ペダルブラケット14においては、インシュレータ40に取付穴42が設けられてスペーサ36や保持部34がダッシュパネル12に直接当接させられるため、高い取付強度でダッシュパネル12に取り付けることができる。しかしながら、取付穴42の内側ではインシュレータ40による防音作用が得られないとともに、金属製のスペーサ36がダッシュパネル12に直接当接させられるため、エンジンルームの騒音が車室内に伝わり易くなる。
【0027】
これに対し、本実施例の車両用ペダルブラケット14は、ベースプレート部30の裏面にスペーサ36の外周面に密着するように円筒形状の保持部34が突設されているとともに、その保持部34を除いてダッシュパネル12に対面する部分には多数の有底穴58を有する吸音構造部60が設けられているため、そのペダルブラケット14の取付部分から車室内に侵入するエンジンルームの騒音を適切に低減できる。すなわち、エンジンルームの騒音は、主にスタッドボルト44やスペーサ36を介して車室側へ伝達されるが、スペーサ36は合成樹脂製の保持部34に密着させられているため、その保持部34によって騒音振動が適切に吸収される。スタッドボルト44もスペーサ36に接触しているため、そのスタッドボルト44を伝わる騒音振動もスペーサ36を介して保持部34によって良好に吸収される。また、保持部34の外側の空間を伝わる騒音振動は、吸音構造部60の多数の有底穴58内に進入して反射を繰り返すことにより減衰させられる。
【0028】
特に、本実施例ではベースプレート部30の外周部がインシュレータ40の取付穴42の外周側まで達しているとともに、ベースプレート部30の外周部には押え部56が設けられ、インシュレータ40の取付穴42の周縁部がダッシュパネル12との間で挟圧されて閉塞されるため、騒音が車室内へ漏れることが抑制されて一層高い防音効果が得られる。
【0029】
一方、本実施例の車両用ペダルブラケット14は、前記保持部34および吸音構造部60を備えるベースプレート部30が合成樹脂材料にて一体に構成されているため、部品点数や作業工数の増加を招くことなく安価に構成することができる。
【0030】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0031】
図7の車両用ペダルブラケット70は、断面コの字形状(角張ったU字形状)に曲げられた金属製の支持部材72をベースプレート部30と別体に構成したもので、例えばスペーサ36を保持部34内に圧入固定する際に、そのスペーサ36のフランジ38によって支持部材72の背部74をベースプレート部30に押圧することにより、ベースプレート部30に一体的に固定することができる。或いは、インサート成形によって支持部材72およびスペーサ36をベースプレート部30に一体的に固設することもできる。支持部材72は、背部74の両側の互いに平行な一対の側壁76が支持部として機能し、それ等の側壁76に跨がって支持軸16が配設されてペダルアーム18が回動可能に支持される。
【0032】
図8は、吸音構造部60の別の例を示す図で、前記
図4に対応する断面図である。この吸音構造部60は、多数の有底穴78が、径寸法が一定の円筒穴の場合で、この有底穴78の径寸法は前記径寸法dと同じ大きさに設定される。
【0033】
図9は前記
図3に対応する断面図で、ベースプレート部80の内部に発泡層82を設けた場合である。すなわち、このベースプレート部80は、発泡剤を含有した熱可塑性樹脂を用いて一体成形されているとともに、
図10に示すように一対の成形型84、86で成形した後に、完全に冷却硬化する前にベースプレート部80の裏面側の成形型84の一部84a、84c、84eを一定寸法だけ後退(コアバック)させる。これにより、保持部34を除いた板状部分すなわち吸音構造部60が設けられた部分が膨張成形され、発泡剤の発泡により吸音構造部60の内部に発泡層82が形成される。成形型84は、保持部34を成形する部分84b、84dと、保持部34以外の板状部分を成形する部分84a、84c、84eとが別体に構成される。
【0034】
このようにベースプレート部80に発泡層82が設けられることにより、多数の有底穴58を有する吸音構造部60と相まってエンジンルームからの騒音を一層効果的に低減できる。
【0035】
図11は、前記
図2に相当する図で、ベースプレート部30の背面図であり、
図12は
図11における XII−XII 矢視断面図である。このベースプレート部30の裏面には、前記複数の保持部34を互いに連結するように複数の補強リブ88が設けられているとともに、保持部34と前記押え部56との間にも、補強リブ88の延長線上に三角形状の補強リブ90が設けられている。このように補強リブ88、90が設けられることにより、保持部34によってスペーサ36が一層強固に保持されるようになり、所定の強度を維持しつつスペーサ36の肉厚を小さくして軽量化を図ることができる。なお、
図12では有底穴58が省略されている。
【0036】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。