特許第5719804号(P5719804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719804
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】車両用ペダルブラケット
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20150430BHJP
   B60T 7/06 20060101ALI20150430BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20150430BHJP
【FI】
   B62D25/08 J
   B60T7/06 A
   G05G1/30 E
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-141450(P2012-141450)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-4906(P2014-4906A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】北口 和章
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−262784(JP,A)
【文献】 特開平03−028086(JP,A)
【文献】 特開2001−010537(JP,A)
【文献】 実開平02−117959(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60T 7/06
G05G 1/30
B60R 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームと車室とを区切るダッシュパネルの車室側に固定される板状のベースプレート部と、
該ベースプレート部に一体的に設けられてペダルアームを回動可能に軸支する支持部と、
前記ベースプレート部を前記ダッシュパネルから離間して固定するために、該ベースプレート部から該ダッシュパネル側へ向かって突き出すように該ベースプレート部に一体的に設けられる複数の筒形状のスペーサと
を有し、該複数のスペーサ内をそれぞれ挿通させられた複数のねじ部材により前記ダッシュパネルに固定される車両用ペダルブラケットにおいて、
前記ベースプレート部の前記ダッシュパネル側の裏面には、前記複数のスペーサの外周面に密着するように複数の筒形状の保持部が突設されているとともに、該保持部を除いて前記ダッシュパネルに対面する部分には多数の有底穴を有する吸音構造部が設けられており、
前記保持部および前記吸音構造部を備える前記ベースプレート部が合成樹脂材料にて一体に構成されている
ことを特徴とする車両用ペダルブラケット。
【請求項2】
前記ベースプレート部の裏面には、前記複数の保持部を互いに連結するように補強リブが一体に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ペダルブラケット。
【請求項3】
前記ベースプレート部は、発泡剤を含有した合成樹脂材料にて一体成形されており、該ベースプレート部の内部には膨張成形によって発泡層が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ペダルブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ペダルブラケットに係り、特に、その車両用ペダルブラケットの取付部分から車室内に侵入するエンジンルームの騒音を簡便な手法で低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) エンジンルームと車室とを区切るダッシュパネルの車室側に固定される板状のベースプレート部と、(b) そのベースプレート部に一体的に設けられてペダルアームを回動可能に軸支する支持部と、(c) 前記ベースプレート部を前記ダッシュパネルから離間して固定するために、そのベースプレート部からそのダッシュパネル側へ向かって突き出すようにそのベースプレート部に一体的に設けられる複数の筒形状のスペーサとを有し、(d) その複数のスペーサ内をそれぞれ挿通させられた複数のねじ部材により前記ダッシュパネルに固定される車両用ペダルブラケットが知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、内部にスペーサが設けられるとともに加熱発泡によるインシュレータ(吸音材)が充填された箱型ブラケットの蓋部がベースプレート部として機能するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−117959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の車両用ペダルブラケットにおいては、底部と蓋部とを結合して内部に加熱発泡によるインシュレータを充填した箱型ブラケットが必要であるため、部品点数や作業工数が多くなって製造コストが高くなる。また、加熱発泡により吸音材が構成されるため、合成樹脂製のペダルブラケットには適用することが難しかった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ベースプレート部が合成樹脂製の車両用ペダルブラケットにおいて、その取付部分から車室内に侵入するエンジンルームの騒音を、部品点数や作業工数の増加を招くことなく簡便な手法で低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) エンジンルームと車室とを区切るダッシュパネルの車室側に固定される板状のベースプレート部と、(b) そのベースプレート部に一体的に設けられてペダルアームを回動可能に軸支する支持部と、(c) 前記ベースプレート部を前記ダッシュパネルから離間して固定するために、そのベースプレート部からそのダッシュパネル側へ向かって突き出すようにそのベースプレート部に一体的に設けられる複数の筒形状のスペーサとを有し、(d) その複数のスペーサ内をそれぞれ挿通させられた複数のねじ部材により前記ダッシュパネルに固定される車両用ペダルブラケットにおいて、(e) 前記ベースプレート部の前記ダッシュパネル側の裏面には、前記複数のスペーサの外周面に密着するように複数の筒形状の保持部が突設されているとともに、その保持部を除いて前記ダッシュパネルに対面する部分には多数の有底穴を有する吸音構造部が設けられており、(f) 前記保持部および前記吸音構造部を備える前記ベースプレート部が合成樹脂材料にて一体に構成されていることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明の車両用ペダルブラケットにおいて、前記ベースプレート部の裏面には、前記複数の保持部を互いに連結するように補強リブが一体に設けられていることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第1発明または第2発明の車両用ペダルブラケットにおいて、前記ベースプレート部は、発泡剤を含有した合成樹脂材料にて一体成形されており、そのベースプレート部の内部には膨張成形によって発泡層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このような車両用ペダルブラケットにおいては、ベースプレート部の裏面にスペーサの外周面に密着するように複数の筒形状の保持部が突設されているとともに、その保持部を除いてダッシュパネルに対面する部分には多数の有底穴を有する吸音構造部が設けられているため、そのペダルブラケットの取付部分から車室内に侵入するエンジンルームの騒音を適切に低減できる。すなわち、エンジンルームの騒音は、主にねじ部材やスペーサを介して車室側へ伝達されるが、スペーサは合成樹脂製の保持部に密着させられているため、その保持部によって騒音振動が適切に吸収される。ねじ部材もスペーサに接触しているため、そのねじ部材を伝わる騒音振動もスペーサを介して保持部によって良好に吸収される。また、保持部の外側の空間を伝わる騒音振動は、吸音構造部の多数の有底穴内に進入して反射を繰り返すことにより減衰させられる。
【0010】
一方、上記保持部および吸音構造部を備えるベースプレート部は合成樹脂材料にて一体に構成されているため、部品点数や作業工数の増加を招くことなく安価に構成することができる。
【0011】
第2発明では、複数の保持部を互いに連結するように補強リブが設けられているため、保持部によってスペーサが一層強固に保持されるようになり、所定の強度を維持しつつスペーサの肉厚を小さくして軽量化を図ることができる。
【0012】
第3発明では、ベースプレート部が発泡剤を含有した合成樹脂材料にて一体成形されており、そのベースプレート部の内部には膨張成形によって発泡層が設けられているため、多数の有底穴を有する吸音構造部と相まってエンジンルームからの騒音を一層効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例である車両用ペダルブラケットを有する常用ブレーキ用の車両用ブレーキペダル装置の一例を示す図で、一部を切り欠いた側面図である。
図2図1の車両用ペダルブラケットのベースプレート部を裏面側から見た背面図である。
図3図2における III−III 矢視部分の断面図である。
図4図3におけるIV部の拡大図である。
図5図1の車両用ペダルブラケットが取り付けられるダッシュパネルの取付部位を示す正面図である。
図6図5のダッシュパネルにインシュレータが取り付けられた状態を示す正面図である。
図7】本発明の他の実施例を示す図で、図1に対応する一部を切り欠いた側面図である。
図8】本発明の更に別の実施例を示す図で、吸音構造部の拡大断面図である。
図9】本発明の更に別の実施例を示す図で、図3に対応する断面図である。
図10図9の実施例の発泡層を形成する際の膨張成形を説明する断面図である。
図11】本発明の更に別の実施例を示す図で、図2に対応するベースプレート部の背面図である。
図12図11における XII−XII 矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、オペレーティングロッド等によりペダル操作力を伝達するために、インシュレータに穴を空けてダッシュパネルに直接固定される車両用ペダルブラケット、例えばブレーキペダルやブレーキアクセル一体型ペダルなどのペダルブラケットに好適に適用されるが、ダッシュパネルとの間にインシュレータを挟んで取り付けられる車両用ペダルブラケットに適用することも可能である。
【0015】
ペダルアームを軸支する支持部は、例えばペダルアームの両側に一対設けられ、ベースプレート部と一体に合成樹脂材料にて構成することができるが、金属等により別体に構成してインサート成形や溶融かしめ加工、或いは他の固定手段によりベースプレート部に一体的に固定しても良い。スペーサを利用して固定することもできる。ねじ部材によりベースプレート部をダッシュパネルに取り付ける際に、そのねじ部材によって支持部をベースプレート部に一体的に固定しても良いが、組付作業性の点で予めベースプレート部に固定しておくことが望ましい。
【0016】
スペーサは金属等の高強度材料にて構成され、インサート成形や圧入によって保持部に一体的に固定される。スペーサは、円筒形状等の単純な筒形状の部材であっても良いが、一端部に外向きのフランジが設けられ、そのフランジがベースプレート部の表面(ダッシュパネルと反対側の面)に密着するように固定されても良い。このスペーサ内を挿通させられるねじ部材は、例えばエンジンルーム側に配設されるブレーキブースタに設けられたスタッドボルトなどで、スペーサ内を通過して車室側へ突き出す先端部にナットが螺合されて、スペーサの端部に当接するように締結されることにより、ベースプレート部がスペーサを介してダッシュパネルに一体的に固定される。車室側からスペーサ内にボルトを挿入し、エンジンルーム側に設けられたナット部材に螺合して、ベースプレート部をダッシュパネルに固定することもできる。スペーサは円筒形状が望ましいが、角筒形状であっても良いし、径寸法が徐々に変化しているテーパ形状などでも良い。スペーサの外周面に密着するように設けられる保持部についても、スペーサと同様に種々の態様が可能である。保持部は、スペーサの外周面の全周に密着していることが望ましいが、外周面の一部に密着しているだけでも騒音振動を吸収する効果が得られる。
【0017】
吸音構造部の有底穴は、径寸法が一定の円穴であっても良いが、底部に向かうに従って径寸法が小さくなるテーパ穴であっても良いし、断面が多角形の角穴や深さ寸法が比較的小さい半球形状等の凹所などでも良い。これ等の有底穴は、例えばダッシュパネルに対して垂直方向に設けられる。また、上下左右方向に等間隔で規則的に設けることが望ましいが、ランダムに設けることもできる。
【0018】
ベースプレート部を構成する合成樹脂材料としては、発泡剤を含有した熱可塑性樹脂等の合成樹脂材料が好適に用いられ、コアバックによる膨張成形により内部に発泡層を設けることが望ましいが、発泡剤を含有しない合成樹脂材料にて構成することも可能である。ベースプレート部には保持部が一体に設けられるが、その保持部にまで膨張成形で発泡層が設けられることは適当でなく、保持部を除く板状部分にだけ膨張成形を施して発泡層を設けることが望ましい。すなわち、ベースプレート部の裏面側の成形型を、保持部を成形するものと、保持部を除く板状部分を成形するものとに分割し、板状部分を成形するものだけコアバックさせて膨張成形すれば良い。
【0019】
ベースプレート部には、例えばオペレーティングロッド等の出力部材を挿通させる挿通穴が設けられ、上記スペーサや保持部は、その挿通穴の周囲に複数(例えば4本)設けられる。出力部材を挿通させる挿通穴をベースプレート部に設けることなく、車両用ペダルブラケットから離間した位置に出力部材が配設される場合にも本発明は適用され得る。
【0020】
第2発明では、ベースプレート部の裏面に補強リブが設けられているが、他の発明の実施に際しては必ずしも補強リブを設ける必要はなく、必要に応じて適宜設けられれば良い。補強リブが設けられる場合、多数の有底穴を有する吸音構造部や発泡層は、保持部および補強リブを除いた部分に設けることが望ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が常用ブレーキ用の車両用ブレーキペダル装置10に適用された場合の一例を示す図で、その車両用ブレーキペダル装置10の一部を切り欠いた側面図である。この車両用ブレーキペダル装置10は、エンジンルームと車室とを区切るダッシュパネル12の車室側に配設された車両用ペダルブラケット14と、その車両用ペダルブラケット14に略水平な支持軸16の軸心まわりに回動可能に軸支されたペダルアーム18とを有する。そして、ペダルアーム18の下端部に設けられたペダルシート20が運転者によって踏込み操作されると、ペダルアーム18の中間位置にクレビスを介して連結されたオペレーティングロッド22が車両前方(図1の左方向)へ押圧され、ダッシュパネル12のエンジンルーム側に配設されたブレーキブースタ24により倍力されて、常用ブレーキ用のブレーキ油圧が発生させられる。
【0022】
車両用ペダルブラケット14は、ダッシュパネル12に一体的に固定される板状のベースプレート部30と、そのベースプレート部30の表面側すなわち運転席に対面する側の面の左右両側に設けられた一対の支持部32とを有し、その一対の支持部32に跨がって配設された支持軸16にペダルアーム18が回動可能に配設されている。また、ベースプレート部30の裏面側すなわちダッシュパネル12に対面する側の面には、複数の円筒形状の保持部34がそのダッシュパネル12に向かって突き出すように垂直に突設されているとともに、その保持部34内にはそれぞれ金属製の円筒形状のスペーサ36が圧入またはインサート成形により一体的に固設されている。スペーサ36の外周面は、略全周に亘って保持部34の内周面に密着させられている。本実施例では、ベースプレート部30、一対の支持部32、および複数の保持部34が熱可塑性樹脂により一体成形されている。
【0023】
上記スペーサ36は、軸方向の一端部に外向きのフランジ38を有し、そのフランジ38がベースプレート部30の表面に密着するように配設されることにより、他端部が保持部34の先端面と略面一になり、その保持部34の先端面と共にダッシュパネル12に直接当接させられている。すなわち、ダッシュパネル12の車室側には防音のためにフェルト等の柔軟性を有するインシュレータ40が取り付けられているが、車両用ペダルブラケット14が固定される部分には取付穴42が設けられ、上記保持部34およびスペーサ36がダッシュパネル12に直接当接させられるようになっている。そして、このスペーサ36には、前記ブレーキブースタ24に立設されたスタッドボルト44がダッシュパネル12側から挿通させられ、車室内に突き出す先端部にナット46が螺合されてフランジ38に当接するように締結されることにより、ベースプレート部30がダッシュパネル12から離間する状態で、車両用ペダルブラケット14がダッシュパネル12に所定の取付強度で固定される。スタッドボルト44はねじ部材に相当する。
【0024】
図2は、上記車両用ペダルブラケット14のベースプレート部30を裏面側から見た背面図で、図3図2における III−III 矢視部分の断面図である。これ等の図2図3では、スペーサ36が省略されている。図2から明らかなようにベースプレート部30は略長方形状を成しており、その中央部分には、オペレーティングロッド22を挿通させるための挿通穴50が設けられている。前記保持部34は、その挿通穴50の周囲に4本突設されており、前記スタッドボルト44はこれ等の保持部34に対応して4本設けられている。図5は、車両用ペダルブラケット14が取り付けられるダッシュパネル12の取付部位を車室内側から見た正面図で、オペレーティングロッド22を挿通させるための挿通穴52が設けられているとともに、その周囲にはスタッドボルト44を挿通させるための4個の挿通穴54が設けられている。また、図6は、ダッシュパネル12にインシュレータ40が取り付けられた状態を示す正面図で、斜線を付した部分がインシュレータ40である。図6の一点鎖線はベースプレート部30の外形線で、前記取付穴42はベースプレート部30の内側に定められており、ベースプレート部30の外周部に設けられた押え部56により取付穴42の周縁部がダッシュパネル12との間で挟圧されて位置決めされるとともに、インシュレータ40の取付穴42の周縁部が閉塞されて騒音が車室内へ漏れることが抑制される。押え部56は、ベースプレート部30の外周部の全周をダッシュパネル12に向かって傾斜させた部分で、図1に示すように先端部(外周縁)がインシュレータ40に食い込んで位置決めする。
【0025】
上記ベースプレート部30の裏面にはまた、図2および図3に示すように、保持部34を除いてダッシュパネル12に対面する部分に多数の有底穴58が設けられている。これ等の有底穴58は、傾斜した押え部56を含めて何れもダッシュパネル12に対して垂直方向に設けられているとともに、図3のIV部を拡大して示す図4から明らかなように底部側程小径となるテーパ穴で、その開口部の径寸法dは2〜7mm程度の範囲内である。この多数の有底穴58が設けられたベースプレート部30の裏面の表層部分は、エンジンルームの騒音振動を有底穴58の内周面で何度も反射して減衰させる吸音構造部60として機能する。なお、図1では有底穴58が省略されている。
【0026】
ここで、このような車両用ペダルブラケット14においては、インシュレータ40に取付穴42が設けられてスペーサ36や保持部34がダッシュパネル12に直接当接させられるため、高い取付強度でダッシュパネル12に取り付けることができる。しかしながら、取付穴42の内側ではインシュレータ40による防音作用が得られないとともに、金属製のスペーサ36がダッシュパネル12に直接当接させられるため、エンジンルームの騒音が車室内に伝わり易くなる。
【0027】
これに対し、本実施例の車両用ペダルブラケット14は、ベースプレート部30の裏面にスペーサ36の外周面に密着するように円筒形状の保持部34が突設されているとともに、その保持部34を除いてダッシュパネル12に対面する部分には多数の有底穴58を有する吸音構造部60が設けられているため、そのペダルブラケット14の取付部分から車室内に侵入するエンジンルームの騒音を適切に低減できる。すなわち、エンジンルームの騒音は、主にスタッドボルト44やスペーサ36を介して車室側へ伝達されるが、スペーサ36は合成樹脂製の保持部34に密着させられているため、その保持部34によって騒音振動が適切に吸収される。スタッドボルト44もスペーサ36に接触しているため、そのスタッドボルト44を伝わる騒音振動もスペーサ36を介して保持部34によって良好に吸収される。また、保持部34の外側の空間を伝わる騒音振動は、吸音構造部60の多数の有底穴58内に進入して反射を繰り返すことにより減衰させられる。
【0028】
特に、本実施例ではベースプレート部30の外周部がインシュレータ40の取付穴42の外周側まで達しているとともに、ベースプレート部30の外周部には押え部56が設けられ、インシュレータ40の取付穴42の周縁部がダッシュパネル12との間で挟圧されて閉塞されるため、騒音が車室内へ漏れることが抑制されて一層高い防音効果が得られる。
【0029】
一方、本実施例の車両用ペダルブラケット14は、前記保持部34および吸音構造部60を備えるベースプレート部30が合成樹脂材料にて一体に構成されているため、部品点数や作業工数の増加を招くことなく安価に構成することができる。
【0030】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0031】
図7の車両用ペダルブラケット70は、断面コの字形状(角張ったU字形状)に曲げられた金属製の支持部材72をベースプレート部30と別体に構成したもので、例えばスペーサ36を保持部34内に圧入固定する際に、そのスペーサ36のフランジ38によって支持部材72の背部74をベースプレート部30に押圧することにより、ベースプレート部30に一体的に固定することができる。或いは、インサート成形によって支持部材72およびスペーサ36をベースプレート部30に一体的に固設することもできる。支持部材72は、背部74の両側の互いに平行な一対の側壁76が支持部として機能し、それ等の側壁76に跨がって支持軸16が配設されてペダルアーム18が回動可能に支持される。
【0032】
図8は、吸音構造部60の別の例を示す図で、前記図4に対応する断面図である。この吸音構造部60は、多数の有底穴78が、径寸法が一定の円筒穴の場合で、この有底穴78の径寸法は前記径寸法dと同じ大きさに設定される。
【0033】
図9は前記図3に対応する断面図で、ベースプレート部80の内部に発泡層82を設けた場合である。すなわち、このベースプレート部80は、発泡剤を含有した熱可塑性樹脂を用いて一体成形されているとともに、図10に示すように一対の成形型84、86で成形した後に、完全に冷却硬化する前にベースプレート部80の裏面側の成形型84の一部84a、84c、84eを一定寸法だけ後退(コアバック)させる。これにより、保持部34を除いた板状部分すなわち吸音構造部60が設けられた部分が膨張成形され、発泡剤の発泡により吸音構造部60の内部に発泡層82が形成される。成形型84は、保持部34を成形する部分84b、84dと、保持部34以外の板状部分を成形する部分84a、84c、84eとが別体に構成される。
【0034】
このようにベースプレート部80に発泡層82が設けられることにより、多数の有底穴58を有する吸音構造部60と相まってエンジンルームからの騒音を一層効果的に低減できる。
【0035】
図11は、前記図2に相当する図で、ベースプレート部30の背面図であり、図12図11における XII−XII 矢視断面図である。このベースプレート部30の裏面には、前記複数の保持部34を互いに連結するように複数の補強リブ88が設けられているとともに、保持部34と前記押え部56との間にも、補強リブ88の延長線上に三角形状の補強リブ90が設けられている。このように補強リブ88、90が設けられることにより、保持部34によってスペーサ36が一層強固に保持されるようになり、所定の強度を維持しつつスペーサ36の肉厚を小さくして軽量化を図ることができる。なお、図12では有底穴58が省略されている。
【0036】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
12:ダッシュパネル 14、70:車両用ペダルブラケット 18:ペダルアーム 30、80:ベースプレート部 32:支持部 34:保持部 36:スペーサ 44:スタッドボルト(ねじ部材) 58、78:有底穴 60:吸音構造部 76:側壁(支持部) 82:発泡層 88:補強リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12