【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施形態1に係わる給湯機1の例を示す構成図である。
【0014】
図1に示すように、本実施例に係る給湯機1は、給湯機本体としての貯湯タンクユニット2と、ヒートポンプユニットと呼ばれる熱源ユニット3とを含んで構成されており、貯湯タンクユニット2には熱源ユニット3にて加熱された温水を貯留するためのタンク4が備えられる。給湯機1は、接続配管20,21によって浴槽と接続されている。具体的には、浴槽の底面よりも高い位置(例えば、20cm)には浴槽給湯端末としてのアダプタ18が設けられており、このアダプタ18が給湯機1と接続される。
【0015】
また、給湯機1は、給水源からの水を浴槽に供給する浴槽給水経路Aと、浴槽から取り出された水を給湯機本体に導入した後浴槽へ向けて流す水循環経路Bとを有する。給水源には、高温水源や低温水源があり、本実施例では、タンク4が高温水源であり、水道が低温水源となっている。
【0016】
浴槽給水経路Aは、
図1に示すように、タンク4からの水を流通させる高温水配管6と、水道からの水を流通させる低温水配管8と、高温水配管6及び低温水配管8からの水を混合する混合弁5と、混合弁5で混合された水を浴槽ヘ向けて流通させる風呂出湯配管10とを備えている。浴槽給水経路Aは、水循環経路Bに接続されている。
【0017】
高温水配管6には、水圧を設定水圧(例えば160kPa)に減圧する減圧弁7が配置されている。なお、減圧弁7は、それより上流側の水圧が設定水圧よりも高い場合(例えば300kPa)には減圧を行う一方、水圧が設定水圧よりも低い場合(例えば100kPa)にはそのままの水圧で水を通過させるものである。
【0018】
また、混合弁5より下流側で且つ浴槽給水経路Aと水循環経路Bとの接続部Cよりも上流側(即ち、風呂出湯配管10)には、電磁弁9が配置されている。電磁弁9よりも下流側は通常上流側に比べて低圧であるため、電磁弁9が開動作されると電磁弁9よりも上流側に存在する水が圧力によって押出されるようにして流出する。また、風呂出湯配管10には、浴槽給水時の流量を検知するためのふろ流量センサ11が配置されている。
【0019】
浴槽給水動作としては、浴槽設定温度(例えば、42℃)に応じた温度の温水を供給する湯張り動作と、浴槽設定温度よりも高温の温水(例えば、60℃)を供給する高温差し湯動作と、浴槽設定温度よりも低温の水を供給する差し水動作とがある。そして、
図1に示すように、湯張り動作は、タンク4からの高温水と水道からの低温水とを混合弁5において混合して浴槽設定温度に応じた温度とした湯水を浴槽に供給する動作である。また、高温差し湯動作は、基本的には湯張り動作と共通する動作である。また、差し水動作は、低温水源からの低温水(例えば、水道水)をそのまま浴槽に供給する動作であり、差し水動作では水道のみが給水源となる。
【0020】
水循環経路Bは、
図2に示される経路であり、後述するように、浴槽水を加熱する浴槽水加熱動作(いわゆる追焚)と、浴槽水の有無やその温度を検知するために浴槽水を循環させる浴槽水引き込み動作とを行うものである。
【0021】
水循環経路Bは、上述のとおり、浴槽給水経路Aと接続されており、浴槽給水経路Aと水循環経路Bとの接続部Cを挟んで上流部B1と下流部B2とに区分される。また、水循環経路Bの下流部B2には水を浴槽へ送り出すポンプ16が設けられており、このポンプ16の駆動方向によって水循環経路Bの上流部B1と下流部B2とが決定される。本実施例では、前記接続配管20と接続される方が上流部B1であり、前記接続配管21と接続される方が下流部B2となっている。
【0022】
水循環経路Bの上流部B1には、上流部B1を流れる水の温度を検知するふろ温度センサ12と、浴槽の水位を検知する水位センサ13が配置されている。なお、ふろ温度センサ12は、水循環経路Bに引き込まれた浴槽水の温度を検知するために用いられる他、浴槽給水動作の際に浴槽へ供給される水の温度を検知するためにも用いられる。そして、ふろ温度センサ12によって検知された温度に基づいて、混合弁5がフィードバック制御される。
【0023】
水循環経路Bの下流部B2は、浴槽水を加熱する熱交換器22に流通させる加熱経路B21と、熱交換器22をバイパスするバイパス経路B22の二つの経路に分岐している。加熱経路B21とバイパス経路B22とは、前記接続部Cより下流側の分岐部Dにおいて分岐しており、さらに分岐部Dより下流側の合流部Eにおいて合流する。前記ポンプ16は、接続部Cと分岐部Dとの間に配置されている。
【0024】
また、接続部Cと分岐部Dとの間には、上流部B1の水の流れを検知する水流検知部としての水流スイッチ17が配置されている。なお、水流スイッチ17は、水の流れの有無を検知するものであるが、水流検知部としては、これ以外にも単位時間当たりの流量を検知可能な流量センサを用いても良い。
【0025】
また、分岐部Dには、加熱経路B21へ流れる水とバイパス経路B22へ流れる水との流量比率を変更可能な流量調整弁14が配置されている。そして、上述した浴槽水加熱動作を行う場合には、循環経路が加熱経路B21を通る経路となるように流量調整弁14を制御し、浴槽水の温度をふろ温度センサ12で検知する目的のみで浴槽水引き込み動作を行う場合には、循環経路がバイパス経路B22を通る経路となるように流量調整弁14を制御する。また、浴槽給水時も水を加熱する必要はないことから、
図1に示すように、流量調整弁14はバイパス経路B22を通る経路となるように制御される。
【0026】
熱交換器22は、タンク4内に配置されており、導入された水をタンク4内の高温水と熱交換することにより加熱するものである。但し、熱交換器は、タンク内に配置されるものに限定されず、タンク4外に配置され、タンク4から引き出された高温水と水循環経路Bの水とを熱交換させるものであってもよい。
【0027】
上記のような給湯機では、浴槽給水時は、浴槽給水経路Aから水循環経路Bに流入した水が接続部Cにおいて上流部B1と下流部B2とに分岐して流れて浴槽に給水され、水循環経路Bの上流部B1では、水が水循環時とは逆方向に流れる状態となる。
【0028】
また、ポンプ16は、回転数を制御することにより流量が可変に構成されるものであり、制御部19からの信号に基づいて回転数が制御される。このポンプ16は、水循環時に駆動される他、浴槽給水時にも、浴槽への給水を迅速に行うために駆動される。
【0029】
そして、ポンプ16は、浴槽給水時に水循環時よりも小さい所定の回転数で駆動される。ポンプ16の回転数の一例を挙げると、ポンプ16の水循環時の回転数は4000〜4500回転/分であるのに対し、浴槽給水時の所定の回転数は、例えば、2000回転/分に設定される。上述のとおり、浴槽給水時に浴槽給水経路Aの上流部と下流部とを流れる水量は、給湯機が設置される場所やポンプ16の個体差によって異なるものであるが、浴槽給水時の所定の回転数を水循環時の回転数の半分以下に設定しておけば、設置場所やポンプ16の個体差によってばらつきがあったとしても、概ねどの給湯機においても、水循環経路Bの上流部B1を通って浴槽に供給されていた水を水循環経路Bの下流部B2に引き込んでしまうことが無い。従って、浴槽への迅速な給水を行って、浴槽給水時の時間を短縮することがことができる。
【0030】
次に、
図3及び
図4を用いて、浴槽給水動作の一例である湯張り動作について説明する。
【0031】
浴槽への給水時は、
図3のように電磁弁9を開き(S101)、流量調整弁14を循環回路側全開(S102)とし、風呂循環ポンプ16を予め実験的に求めた浴槽内の温水を引き込まない程度の所定の回転数で制御を実施する(S103)。この所定の回転数は、水循環時の回転数よりも小さい回転数に設定される。
【0032】
出湯温度制御(S104)は、
図4のように、ふろ流量センサ11が流量を検知(S104a:YES)することで、混合弁5が温度制御を開始する。ふろ温度センサ12が検知する温度に基づき、「所定温度>ふろ温度センサ12が検知する温度」の場合(S104b:YES)、ふろ温度センサ12が所定の温度となるように混合弁5の混合比率を調整する(S104d)。具体的には、混合弁5の高温水配管6側の比率を大きくする。一方、「所定温度<ふろ温度センサ12が検知する温度」の場合(S104c:YES)、ふろ温度センサ12が所定の温度となるように混合弁5の混合比率を調整する(S104e)。具体的には、混合弁5の低温水配管8側の比率を大きくする。
【0033】
そして、「出湯量≧所定量」に達した場合(S105:YES)、ポンプ16を停止し(S106)、電磁弁9を閉じ(S107)、混合弁5の温度制御を停止して(S108)、浴槽への出湯を終了する。
【0034】
本実施例に係る給湯機によれば、浴槽給水時はポンプが水循環時よりも小さい回転数で駆動されるため、ポンプが水循環経路の上流部から水を不適切に吸い込んでしまうのを防止することができる。従って、浴槽給水時に浴槽への迅速な給水を図りつつも、ポンプが無駄に駆動されるのを抑えることができる。
【0035】
また、仮にポンプを水循環時と浴槽給水時とで同じ回転数で駆動したことで水循環経路の上流部側から下流部に水を引き込んでしまった場合には、ふろ温度センサ12での水の温度が浴槽給水経路から供給される実際の水温とは異なることとなる。このため、正確な温度で浴槽給水を行うことができなかったり、ふろ温度センサ12で検知される温度が不安定となって混合弁のフィードバック制御が安定しない状況も発生し得る。しかし、本実施例に係る給湯機によれば、正確な温度で浴槽給水を行うことができ、また、混合弁のフィードバック制御も安定させることができる。また、給水の正確な温度を検知するためや混合弁のフィードバック制御を安定させるためには、例えば、ふろ温度センサ12とは別に浴槽給水経路にも温度センサを設けるといった方法が考えられるが、このような方法に比べると、本実施例に係る給湯機は温度センサがふろ温度センサ12だけで充分であることから、部品を集約し、コストを低減することができる。
【0036】
さらに、浴槽給水時のポンプ16の回転数を水循環時の回転数よりも小さい所定の値に予め設定しておくことで、制御を簡素化することができる。
【実施例2】
【0037】
次に、実施例2に係る給湯機について、
図5〜8に基づいて説明する。なお、実施例1と共通する構成については実施例1と同一符号を付して説明を割愛することとする。
【0038】
本実施例に係る給湯機1は、浴槽給水時に水循環経路Bの上流部B1を接続部Cから浴槽へ向かって水が流れるようにポンプ16の回転数が制御される。具体的には、
図5に示すように、水循環経路Bの上流部B1に、上流部B1の水の流れを検知する水流検知部としての水流スイッチ17が配置されている。この水流スイッチ17からの信号は、制御部19に入力されている。そして、ポンプ16は、水流検知部で検知される水の流れ方向に基づいて回転数が制御される。即ち、水流スイッチ17での検知結果に基づいて、ポンプ16が制御部19によってフィードバック制御される。なお、水流検知部として例えば単位時間当たりの流量を検知可能な流量センサを用いた場合には、単位時間当たりの流量が0L/分以下であるか0L/分よりも多いかによって、水の流れ方向を検知することができる。水循環経路Bは、
図6に示される経路であるが、説明を省略する。
【0039】
次に、
図7及び
図8を用いて、浴槽給水動作の一例である湯張り動作について説明する。
【0040】
浴槽給水時は、
図5のように電磁弁9を開き(S201)、流量調整弁14を循環回路側全開(SA202)とし、風呂循環ポンプ16を全開で回転させる(S203)。なお、S204の出湯温度制御は、実施例1のS104の出湯温度制御と同様である。
【0041】
通常、湯はり開始の時点では浴槽内が空の状態であるため、温水が浴槽のアダプタ18まで溜まる間は水循環経路Bの上流部B1から水が浴槽へ流出しやすく、ポンプ16を水循環時と同じ程度の高い回転数で回転させても、上流部B1から下流部B2に水を引き込むことがない。延いては、混合弁のフィードバック制御に影響を与えることがない。
【0042】
一方、アダプタ18まで水が溜まった場合には、水循環経路Bの上流部B1の水が浴槽へ流出しにくくなり、本来であれば水循環経路Bの上流部B1を通って浴槽に供給されていた水を水循環経路の下流部に引き込んでしまったり、場合によっては浴槽の水を上流部B1を経て下流部B2まで引き込んでしまうおそれがある。従って、混合弁のフィードバック制御に影響を与えてしまうおそれもある。
【0043】
そこで、
図6のように風呂出湯配管10上に配置した水流スイッチ17の状態を参照し、ポンプ16の制御を実施する(S205)。具体的には、ポンプ16は、水が浴槽から接続部へ向かって流れていることを水流スイッチ17で検知した場合には、回転数が小さくなるように制御される。即ち、ポンプ16は、水流スイッチ17が水の流れを検知した場合(S205a:YES)、ポンプ16が浴槽の水を水循環経路B側へ引き込んでいると考えられるため、水流スイッチ17が水の流れを検知しない状態になるまで、ポンプ16の回転数を下げる制御を実施する(S205b)。
【0044】
なお、浴槽内の水量が増えるほど水循環経路Bの上流部B1から水が浴槽へ流出しにくくなると考えられる。従って、このポンプ16の制御は湯はり中継続して実施される。具体的には、水流スイッチ17が水の流れを検知していた状態から水の流れを検知しない状態となった際のポンプ16の回転数を維持するが、その後水流スイッチ17が水の流れを検知した場合には、再度、水流スイッチ17が水の流れを検知しない状態になるまで、ポンプ16の回転数を下げる制御を実施する。
【0045】
そして、「出湯量≧所定量」に達した場合(S206:YES)、ポンプ16を停止し(S207)、電磁弁9を閉じ(S208)、混合弁5の温度制御を停止して(S209)、浴槽への給水を終了する。
【0046】
本実施例に係る給湯機によれば、浴槽給水時はポンプが水循環時よりも小さい回転数で駆動されるため、ポンプが水循環経路の上流部から水を不適切に吸い込んでしまうのを防止して、浴槽給水経路から水循環経路に流入した水を上流部及び下流部から浴槽に給水することができる。従って、浴槽給水時に浴槽への迅速な給水を図りつつも、ポンプが無駄に駆動されるのを抑えることができる。
【0047】
また、仮にポンプを水循環時と浴槽給水時とで同じ回転数で駆動したことで水循環経路の上流部側から下流部に水を引き込んでしまった場合には、ふろ温度センサ12での水の温度が浴槽給水経路から供給される実際の水温とは異なることとなる。このため、正確な温度で浴槽給水を行うことができなかったり、ふろ温度センサ12で検知される温度が不安定となって混合弁のフィードバック制御が安定しない状況も発生し得る。しかし、本実施例に係る給湯機によれば、正確な温度で浴槽給水を行うことができ、また、混合弁のフィードバック制御も安定させることができる。また、給水の正確な温度を検知するためや混合弁のフィードバック制御を安定させるためには、例えば、ふろ温度センサ12とは別に浴槽給水経路にも温度センサを設けるといった方法が考えられるが、このような方法に比べると、本実施例に係る給湯機は温度センサがふろ温度センサ12だけで充分であることから、部品を集約し、コストを低減することができる。
【0048】
さらに、水流スイッチ17の検知結果に基づいてポンプ16の回転数を制御する構成とすれば、水循環経路Bの上流部B1から下流部B2に水を引き込まないようにしつつも比較的高い回転数でポンプ16を駆動することができる。従って、例えば実施例1のように、ある程度余裕を持たせた回転数よりも高い回転数でポンプ16を制御することができ、浴槽給水経路Aから水循環経路の下流部B2に引き込む水の量を増やすことができ、より短時間で湯はりを行うことができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、ヒートポンプを熱源としたヒートポンプ給湯機を例に説明したが、これ以外にも、ヒータを熱源とした電気温水器にも適用することができる。また、本発明は、タンクの温水を浴槽給水に用いる給湯機だけではなく、タンクの高温水を熱媒体として用い、低温水と熱交換させることによって間接的に加熱して浴槽へ給水する給湯機にも適用することができる。さらには、これらの貯湯式の給湯機に係らず、ガスや石油等の燃料を燃焼させて低温水を加熱して浴槽に給水する瞬間式の給湯機にも適用することができる。