特許第5719822号(P5719822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719822
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20150430BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150430BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20150430BHJP
   C08K 5/44 20060101ALI20150430BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08K3/04
   C08K5/20
   C08K5/44
   B60C1/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-246385(P2012-246385)
(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-95012(P2014-95012A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 匡伸
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 達也
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/147984(WO,A1)
【文献】 特開昭64−020246(JP,A)
【文献】 特開平02−202936(JP,A)
【文献】 特開平04−234445(JP,A)
【文献】 特開平10−087899(JP,A)
【文献】 特開平08−188672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、pHが7.9以下、揮発分が0.8質量%以上のカーボンブラックと、下記式(I)で表される化合物と、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドとを含有し、
前記ゴム成分100質量%中、天然ゴムの含有量が95質量%以上であり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記カーボンブラックの含有量が10〜100質量部であり、
前記カーボンブラック100質量部に対する前記式(I)で表される化合物の含有量が0.5〜20質量部であるゴム組成物。
【化1】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基又は炭素数1〜20のアルキニル基である。Mr+は金属イオンを示し、rはその価数を表す。)
【請求項2】
前記式(I)で表される化合物が下記式(I−1)、(I−2)又は(I−3)で表される化合物である請求項1記載のゴム組成物。
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項3】
前記金属イオンがナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンである請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が40〜330m/g、ジブチルフタレート吸油量が40〜200cm/100gである請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に対する低燃費性の要請が高まり、低燃費性に優れたタイヤ用ゴム組成物を提供することが望まれている。一般に、低燃費性を改善するためにはゴム組成物のヒステリシスロスを低下させることが有効である。
【0003】
タイヤ用ゴム組成物の充填剤としては、補強性と耐摩耗性が良好であるという点でカーボンブラックが汎用されている。カーボンブラック配合で低燃費性を改善する場合、粒子径の大きいカーボンブラックを使用する、カーボンブラック量を少なくするといった方法が考えられるが、この場合、ゴム強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性能などが低下するという点で改善の余地がある。
【0004】
また、カーボンブラックをシリカに置換することで低燃費性を改善できることも知られているが、シリカはカーボンブラックと比較して補強性が劣るため、ゴム強度などが低下するという点で改善の余地がある。
【0005】
低燃費性を改善する方法として、特許文献1には、シリカ配合においてゴムに特定の極性基を付加することによってシリカの分散性を高める方法が記載されているが、近年では、低燃費性の更なる改善が求められている。また、この方法を使用しても、カーボンブラック配合と比較してゴム強度が劣るという点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−114939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、ゴム強度及び低燃費性をバランス良く改善できるゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ゴム成分と、カーボンブラックと、下記式(I)で表される化合物とを含有し、上記ゴム成分100質量部に対する上記カーボンブラックの含有量が10〜100質量部であるゴム組成物に関する。
【化1】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基又は炭素数1〜20のアルキニル基である。Mr+は金属イオンを示し、rはその価数を表す。)
【0009】
上記式(I)で表される化合物が下記式(I−1)、(I−2)又は(I−3)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】
【化3】
【化4】
【0010】
上記金属イオンがナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンであることが好ましい。
【0011】
上記カーボンブラック100質量部に対する上記式(I)で表される化合物の含有量が0.5〜20質量部であることが好ましい。
【0012】
上記カーボンブラックは、pHが7.9以下、揮発分が0.8質量%以上であることが好ましい。
【0013】
上記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が40〜330m/g、ジブチルフタレート吸油量が40〜200cm/100gであることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゴム成分と、カーボンブラックと、式(I)で表される化合物とを含有するゴム組成物であるので、低燃費性及びゴム強度がバランス良く改善された空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、カーボンブラックと、式(I)で表される化合物とを含有する。式(I)で表される化合物は、末端の窒素官能基がカーボンブラック表面に存在するカルボキシル基などの官能基と反応することでカーボンブラックと結合することができ、また、炭素−炭素二重結合の部分がポリマーラジカルとの反応や硫黄架橋を伴う反応によりポリマーと結合することができる。そのため、カーボンブラックの分散性を向上させ、かつその良好な分散状態を使用中も維持することができる。更に、ポリマーが式(I)で表される化合物を介してカーボンブラックを拘束しているため、発熱性を抑えることができる。これらの作用により、カーボンブラック配合の優れたゴム強度を維持しながら、低燃費性を改善し、これらの性能を高次元でバランス良く確保することができる。
【0017】
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、式(I)で表される化合物による低燃費性の改善効果が高いという点から、NR、IRなどのイソプレン系ゴムが好ましく、NRがより好ましい。イソプレン系ゴム(特にNR)はBRなどの合成ゴムと比較して分子量が大きく、混練り中にポリマー鎖が切断されてラジカルが発生する。この発生したラジカルを式(I)で表される化合物が捕捉することにより、ポリマー鎖と式(I)で表される化合物とが効率良く結合することができる。
【0018】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0019】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。40質量%未満であると、低燃費性を充分に改善できないおそれがある。
【0020】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0021】
カーボンブラックのpHは、好ましくは7.9以下、より好ましくは7.8以下、更に好ましくは7.7以下、特に好ましくは7.6以下である。7.9を超えると、カーボンブラックの酸性官能基量が少ないため、式(I)で表される化合物との相互作用が小さくなり、低燃費性などを充分に改善できないおそれがある。カーボンブラックのpHの下限は特に限定されない。
【0022】
カーボンブラックの揮発分は、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは0.9質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上である。0.8質量%未満では、式(I)で表される化合物との相互作用が小さくなり、低燃費性などを充分に改善できないおそれがある。カーボンブラックの揮発分の上限は特に限定されない。
【0023】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは40m/g以上、より好ましくは70m/g以上である。40m/g未満では、充分なゴム強度を確保できないおそれがある。カーボンブラックのNSAは、好ましくは330m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下、特に好ましくは190m/g以下、最も好ましくは125m/g以下である。330m/gを超えると、カーボンブラックの分散性を充分に確保できないおそれがある。
【0024】
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、好ましくは40cm/100g以上、より好ましくは70cm/100g以上である。40cm/100g未満では、充分なゴム強度を確保できないおそれがある。カーボンブラックのDBP吸油量は、好ましくは200cm/100g以下、より好ましくは180cm/100g以下である。200cm/100gを超えると、最低限必要な破断伸びを確保できないおそれがある。
【0025】
なお、本明細書において、カーボンブラックのDBP吸油量、pH、揮発分はJIS K6221(1982)に、カーボンブラックのNSAはJIS K6217(2001)に記載の方法で測定される値である。
【0026】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、好ましくは30質量部以上、より好ましくは45質量部以上である。10質量部未満であると、充分なゴム強度を確保できないおそれがある。カーボンブラックの含有量は、100質量部以下、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。100質量部を超えると、ゴムが硬くなり過ぎて、かえってゴム強度が低下するおそれがある。また、低燃費性や加工性が悪化するおそれもある。
【0027】
本発明のゴム組成物は、下記式(I)で表される化合物を含有する。
【化5】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基又は炭素数1〜20のアルキニル基である。Mr+は金属イオンを示し、rはその価数を表す。)
【0028】
、Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などを挙げることができる。
、Rのアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1−メチルエテニル基などを挙げることができる。
、Rのアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基などを挙げることができる。
【0029】
、Rとしては、好ましくは、水素原子、アルキル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基であり、更に好ましくは、水素原子である。すなわち、式(I)で表される化合物は、下記式(I−1)、(I−2)又は(I−3)で表される化合物であることが好ましく、下記式(I−1)で表される化合物であることがより好ましい。
【化6】
【化7】
【化8】
【0030】
式(I)、(I−1)、(I−2)、(I−3)において、金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンが挙げられ、ナトリウムイオンであることが好ましい。
【0031】
式(I)で表される化合物の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上である。0.5質量部未満であると、低燃費性を充分に改善できないおそれがある。式(I)で表される化合物の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。20質量部を超えると、充分なゴム強度を確保できないおそれがある。
【0032】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、クレーなどの補強用充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加工助剤、老化防止剤、軟化剤、ワックス、加硫促進剤、硫黄などを適宜配合することができる。
【0033】
上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤などが挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)などが挙げられる。
【0034】
本発明のゴム組成物を製造する方法としては、公知の方法、例えば、各成分をロールやバンバリーのような公知の混合機で混練する方法を用いることができる。
【0035】
本発明のゴム組成物は、トレッドなどのタイヤ部材に好適に用いることができる。
【0036】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドなどの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、本発明の空気入りタイヤを製造できる。
【0037】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0038】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0039】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
天然ゴム(NR):TSR20
ブタジエンゴム(BR):JSR(株)製のBR01
スチレンブタジエンゴム(SBR):日本ゼオン(株)製のNipol1502
カーボンブラック1:三菱化学(株)製のダイアブラックI(NSA:114m/g、DBP吸油量:114cm/100g、pH:7.5、揮発分:1.0質量%)
カーボンブラック2:三菱化学(株)製のダイアブラック#4000B(NSA:100m/g、DBP吸油量:102cm/100g、pH:10.0、揮発分:0.3質量%)
カーボンブラック3:三菱化学(株)製のダイアブラックH(NSA:79m/g、DBP吸油量:105cm/100g、pH:7.5、揮発分:1.0質量%)
カーボンブラック4:三菱化学(株)製のダイアブラック#30(NSA:74m/g、DBP吸油量:113cm/100g、pH:8.0、揮発分:0.6質量%)
化合物I:住友化学(株)製の(2Z)−4−[(4−アミノフェニル)アミノ]−4−オキソ−2−ブテン酸ナトリウム(下記式で表される化合物)
【化9】
N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン:関東化学(株)製のN,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン
N−フェニルマレアミド酸ナトリウム:下記方法で合成
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製の椿
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0040】
<N−フェニルマレアミド酸ナトリウムの合成>
アニリン1モルに対して、無水マレイン酸を1.0モルの割合で使用し、20〜30℃で2.5時間付加反応させ、N−フェニルマレアミド酸を生成させた。その後、冷却しながら水酸化ナトリウムで中和し、N−フェニルマレアミド酸ナトリウムを得た。
【0041】
(実施例及び比較例)
表1〜4に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0042】
得られた未加硫ゴム組成物及び加硫ゴム組成物について、以下の評価を行った。結果を表1〜4に示す。なお、以下の評価において、表1、2、3、4の基準比較例をそれぞれ比較例1、9、15、16とした。
【0043】
<ムーニー粘度>
未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定し、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。
(ムーニー粘度指数)=(基準比較例のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
【0044】
<スコーチタイム>
キュラストメーターを用い、160℃で振動を加えながら未加硫ゴム組成物を加硫し、トルクが5%上昇する時間t5(分)を測定した。そして、基準比較例1のt5を基準とし、各配合のΔt5(分)を算出した。t5が小さいほど、スコーチタイムが短く、加工性が劣ることを示す。
【0045】
<破壊エネルギー>
JIS K6251の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」にしたがって、加硫組成物からなるゴムシートの引張強度と破断伸びを測定した。更に、引張強度×破断伸び/2により破壊エネルギーを計算し、下記計算式により、各配合の破壊エネルギーを指数表示した。指数が大きいほど、ゴム強度に優れることを示す。
(破壊エネルギー指数)=(各配合の破壊エネルギー)/(基準比較例の破壊エネルギー)×100
【0046】
<低燃費性(転がり抵抗)>
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定し、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示す。
(低燃費性指数)=(基準比較例のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
表1の結果より、
カーボンブラック1(pH:7.5、揮発分:1.0%)を用いた比較例1に対して、pHが高く、揮発分の少ないカーボンブラック2(pH:10.0、揮発分:0.3%)を用いた比較例2では、低燃費性指数の悪化が見られた。
N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミンを配合した比較例3は、比較例1に比べて低燃費性指数の改善は見られたものの、その改善効果は実施例と大きく劣っていた。また、スコーチタイムが著しく短くなり、加工性の悪化が見られた。
N−フェニルマレアミド酸ナトリウムを配合した比較例4は、加工性の悪化はないものの、低燃費性指数の改善は見られなかった。
一方、化合物I(式(I)で表される化合物)を配合した実施例1〜7は、比較例1と比較して、ムーニー粘度指数、スコーチタイム、破壊エネルギー指数を大きく悪化させることなく、低燃費性指数が大幅に改善された。
ただし、pHが高く、揮発分の少ないカーボンブラック2を用いた比較例7、8は、カーボンブラック1で見られたような低燃費性指数の著しい改善は見られなかった。
比較例5は、化合物Iを配合しているものの、その量が少ないため、実施例と比較して低燃費性指数の改善効果が低かった。
比較例6は、化合物Iを配合しているものの、その量が多いため、低燃費性指数は良好であったが、ムーニー粘度指数、スコーチタイム、破壊エネルギー指数が大きく悪化した。
【0052】
表2の結果より、窒素吸着比表面積が小さいカーボンブラックを用いた場合においても、表1と同様の傾向が得られた。具体的には、
カーボンブラック3(pH:7.5、揮発分:1.0%)を用いた比較例9に対して、pHが高く、揮発分の少ないカーボンブラック4(pH:8.0、揮発分:0.6%)を用いた比較例10では、低燃費性指数の悪化が見られた。
化合物Iを配合した実施例8〜10は、比較例9と比較して、ムーニー粘度指数、スコーチタイム、破壊エネルギー指数を大きく悪化させることなく、低燃費性指数が大幅に改善された。
ただし、pHが高く、揮発分の少ないカーボンブラック4を用いた比較例13、14は、カーボンブラック3で見られたような低燃費性指数の著しい改善は見られなかった。
比較例11は、化合物Iを配合しているものの、その量が少ないため、実施例と比較して低燃費性指数の改善効果が低かった。
比較例12は、化合物Iを配合しているものの、その量が多いため、低燃費性指数は良好であったが、ムーニー粘度指数、スコーチタイム、破壊エネルギー指数が大きく悪化した。
【0053】
表1、2の結果から、pHが高く、揮発分の少ないカーボンブラックを配合した場合は、低燃費性が悪く、化合物Iを配合することによる低燃費性の改善も見られないこと、また、化合物Iによる低燃費性の改善効果は、窒素吸着比表面積の小さなカーボンブラックほど大きくなることが明らかとなった。
【0054】
表3、4の結果から、NRとBRのブレンドゴムや、NRとSBRのブレンドゴムを用いた場合にも、化合物Iを配合することにより、低燃費性が大幅に改善されることが明らかとなった。
【0055】
表1〜4の結果から、化合物Iによる低燃費性の改善効果は、NRの含有量と比例して大きくなることが明らかとなった。