(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719851
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】循環電解液貯留システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20150430BHJP
H01M 8/04 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/04 L
H01M8/04 Z
H01M8/04 N
H01M8/04 G
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-543416(P2012-543416)
(86)(22)【出願日】2010年12月17日
(65)【公表番号】特表2013-514604(P2013-514604A)
(43)【公表日】2013年4月25日
(86)【国際出願番号】AU2010001698
(87)【国際公開番号】WO2011072339
(87)【国際公開日】20110623
【審査請求日】2013年11月19日
(31)【優先権主張番号】2009906174
(32)【優先日】2009年12月18日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】511046922
【氏名又は名称】レッドフロー アールアンドディ プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】REDFLOW R&D PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100117042
【弁理士】
【氏名又は名称】森脇 正志
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター,アレクサンダー・ルドルフ
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−357676(JP,A)
【文献】
特表平11−514130(JP,A)
【文献】
実開平01−066756(JP,U)
【文献】
特開2001−216994(JP,A)
【文献】
特開昭63−016573(JP,A)
【文献】
特開昭62−229665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液循環型電池の循環電解液貯留システムであって、
電池セルスタックと、
前記電池セルスタックの下方に位置する外側タンクと、
前記外側タンクの内側であって前記電池セルスタックの下方に位置する内側タンクとを有し、
前記外側タンクから前記電池セルスタックへの負極電解液の流入口および負極電解液の流出口が、前記外側タンクの真上にあって、前記内側タンクの真上にはない、
ことを特徴とする循環電解液貯留システム。
【請求項2】
前記内側タンクが、前記外側タンクの対角の間で前記電池セルスタックの対角の下方に、横切って配置されている、
請求項1に記載の循環電解液貯留システム。
【請求項3】
前記外側タンクの上に、前記電池セルスタックに隣接して設けられた第1のポンプと、
前記内側タンクの上に、前記電池セルスタックに隣接して設けられた第2のポンプとをさらに有する、
請求項1に記載の循環電解液貯留システム。
【請求項4】
前記外側タンクが亜鉛電解液を含み、前記内側タンクが臭素電解液を含む、
請求項1に記載の循環電解液貯留システム。
【請求項5】
前記外側タンクおよび前記内側タンクが回転成形されたプラスチックで形成されている、
請求項1に記載の循環電解液貯留システム。
【請求項6】
前記外側タンクおよび前記内側タンクが共通の蓋を共有する、
請求項1に記載の循環電解液貯留システム。
【請求項7】
前記外側タンクおよび前記内側タンクが、完全な、分離可能なタンクであり、前記内側タンクは前記外側タンクのくぼみに収まっている、
請求項1に記載の循環電解液貯留システム。
【請求項8】
前記外側タンクの縁に、隆起したリップが一体化されている、
請求項1に記載の循環電解液貯留システム。
【請求項9】
前記内側タンクの底面は、電解液回収領域に向かって傾斜している、
請求項1に記載の循環電解液貯留システム。
【請求項10】
前記内側および外側タンクの上部は、冷却機構のための空洞の壁を形成している、
ことを特徴とする請求項1に記載の循環電解液貯留システム。
【請求項11】
前記冷却機構のための空洞の壁は、冷却ファンを取り付けるための穴を有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の循環電解液貯留システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液循環型電池に関する。本発明は、特に、これに限定されるわけではないが、タンク内にタンクを有する循環電解液貯留システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スタンドアロン型の電源システムで使用される電池は通常鉛蓄電池である。しかし、鉛蓄電池は性能と環境安全性の面で限界を有する。たとえば、典型的な鉛蓄電池では、暑い気候条件で、特に時折完全に放電されるような場合には、しばしば寿命が非常に短くなる。鉛蓄電池は環境にも有害である。なぜなら、鉛が鉛蓄電池の主要な構成要素であるため、製造時や廃棄時に重大な環境問題を引き起こす可能性があるからである。
【0003】
亜鉛臭素電池、亜鉛塩素電池、バナジウムフロー電池などの電解液循環型電池は、鉛蓄電池の上記限界を打開する可能性を秘めている。特に、電解液循環型電池の実用寿命は深放電が行われることによって影響されず、電解液循環型電池のエネルギー対重量比は鉛蓄電池の6倍も高い。
【0004】
電解液循環型電池は、鉛蓄電池と同様、個々のセルよりも高い全電圧を生成するセルのスタックを有する。しかし、鉛蓄電池とは異なり、電解液循環型電池のセルは、電解液循環経路を介して流体的に接続されている。
【0005】
図1を参照すると、先行技術によって知られた基本的な亜鉛−臭素電解液循環型電池100のフロー図が示されている。亜鉛−臭素電池100は、負極電解液循環経路105と独立した正極電解液循環経路110を有する。負極電解液循環経路105は活性化学物質として亜鉛イオンを含み、正極電解液循環経路110は活性化学物質として臭素イオンを含む。亜鉛−臭素電池100はまた、負極電解液ポンプ115、正極電解液ポンプ120、負極亜鉛電解液(アノライト)タンク125、正極臭素電解液(カソライト)タンク130を有する。ポリ臭素錯体を形成させて元素状臭素の反応性と蒸気圧を減少させるために、錯化剤が臭素電解液に通常添加される。
【0006】
高電圧を得るために、亜鉛−臭素電池100はさらに、バイポーラ構成で接続されたセルのスタックを有する。たとえば、セル135は、バイポーラ電極板155を含む半セル140、145と、微多孔セパレータ板165を有する。亜鉛−臭素電池100は、集電電極板160に正の極性端と、他の集電電極板150に負の極性端を有する。
【0007】
半セル145の様な正の半セルにおける充電中の化学反応は、次式で表すことができる。
2Br
− → Br
2 + 2e
− (式1)
このように臭素が正の電解液循環路110と流体的に接続された半セルで形成され、その後正極臭素電解液タンク130に貯留される。半セル145のような負の半セルにおける充電中の化学反応は、次式で表すことができる。
Zn
2+ + 2e
− → Zn (式2)
このように金属亜鉛層170が負極電解液循環経路105と接触している集電電極板150上に形成される。半セル140、145における放電中の化学反応は、式1および式2の逆になる。
【0008】
先行技術は電解液循環型電池システムのパッケージングについて、電解液貯留タンクの標準サイズと位置を含む種々のアプローチを開示している。一般に、2つの独立したタンク、アノライト用とカソライト用、が互いに隣接して、電池セルスタックに隣接して配置される。ポンプとホースを含む適切な「配管」が、電解液を貯留タンクから、セルスタックを経て、元の貯留タンクに循環させるために用いられる。しかし、このような電解液貯留タンクの従来の形状と配置は、電解液の漏れに関連する安全上の懸念、過度の配管コスト、材料の無駄遣い、高い製造コスト、大きすぎるシステムなどの多くの問題を引き起こす。
【0009】
したがって、先行技術の電解質循環型電池に付随する上記問題の多くを克服または軽減することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、先行技術における1つまたはそれ以上の限界を克服または軽減することであり、それらは、電解液を電池セルスタックを通って循環させるための改良された循環電解液貯留システムを提供すること、製造コストを下げ、安全性を向上し、電解液タンクの構造安定性を向上させ、およびタンクのサイズと重量を減らすことを含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様によれば、本発明は、電解液循環型電池の循環電解液貯留システムであって、
電池セルスタックと、
前記電池セルスタックの下方に位置する外側タンクと、
前記外槽タンクの内側であって前記電池セルスタックの下方に位置する内側タンクとを有し、
前記外側タンクから前記電池セルスタックへの負極電解液の流入口および正極電解液の流出口が、前記外側タンクの真上にあって、前記内側タンクの真上にはない。
【0012】
必要に応じて、前記内側タンクは、前記外側タンクの対角の間で前記電池セルスタックの対角の下方に、横切って配置されている。
【0013】
必要に応じて、前記システムは、前記外側タンクの上に、前記電池セルスタックに隣接して設けられた第1のポンプと、前記内側タンクの上に、前記電池セルスタックに隣接して設けられた第2のポンプとを有する。
【0014】
必要に応じて、前記外側タンクは亜鉛電解液を含み、前記内側タンクは臭素電解液を含む。
【0015】
必要に応じて、前記外側タンクおよび前記内側タンクは回転成形されたプラスチックで形成されている。
【0016】
必要に応じて、前記外側タンクおよび前記内側タンクが共通の蓋を共有する。
【0017】
必要に応じて、前記外側タンクおよび前記内側タンクは、完全な、分離可能なタンクであり、前記内側タンクは前記外側タンクのくぼみに収まっている。
【0018】
必要に応じて、前記外側タンクの縁に、隆起したリップが一体化されている。
【0019】
必要に応じて、前記内側タンクの底面は、電解液回収領域に向かって傾斜している。
【0020】
必要に応じて、前記内側および外側タンクの上部は、冷却機構のための空洞の壁を形成している。
【0021】
必要に応じて、前記冷却機構のための空洞の壁は、冷却ファンを取り付けるための穴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
発明の理解を助け、当業者が本発明を実施可能とするために、本発明の好ましい実施形態が、図を参照して、以下に例示される。
【
図1】先行技術によって知られた基本的な亜鉛−臭素電解液循環型電池を示す図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による電解液循環型電池の循環電解液貯留システムの、隠れた詳細部分を含む上面図である。
【
図3】
図1のA−Aにおける側断面図であり、本発明のいくつかの実施形態による循環電解液貯留システムにおける亜鉛電解液の循環経路を示している。
【
図4】
図1のB−Bにおける側断面図であり、本発明のいくつかの実施形態による循環電解液貯留システムにおける臭素電解液の循環経路を示している。
【
図5】本発明の他の実施形態による循環電解液貯留システム500の上面図である。
【
図6】
図5の
C−Cにおける側断面図であり、本発明の他の実施形態による循環電解液貯留システムにおける亜鉛電解液の循環経路を示している。
【
図7】
図5の
D−Dにおける側断面図であり、本発明の他の実施形態による循環電解液貯留システムにおける臭素電解液の循環経路を示している。
【
図8】本発明の他の実施形態による電解液循環型電池の
図5の循環電解液貯留システムの前面分解透視図である。
【
図9】本発明の他の実施形態による電解液循環型電池の
図5の循環電解液貯留システムの背面分解透視図である。
【
図10】本発明の他の実施形態による電解液循環型電池の
図5の循環電解液貯留システムの前面組立透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
当業者は、図に示した構成要素の配置からのわずかなずれは、本発明の開示された実施形態の正常な機能を損なうものではないことを理解するであろう。
【0024】
本発明の実施形態は、電解液循環型電池のセルスタックを含む。本発明の要素は、図において簡潔な概要が示されており、本発明の実施形態を理解するのに必要な具体的詳細のみを示し、しかし本明細書に照らして当業者に明らかな過度な詳細によって開示が乱雑にならないようにしている。
【0025】
本明細書において、第一と第二、左と右、前面と背面、上と下のような形容詞は、必ずしもその形容詞で表される特定の相対位置や順序を必要とするものではなく、単に、一つの要素または工程を他の要素または工程から明確にするために使用される。「有する」または「含む」のような語は、要素や工程の排他的なセットを定義するために使用されているのでない。むしろ、そのような語は単に、本発明の特定の実施形態に含まれる要素や工程の最小セットを定義する。
【0026】
図2を参照すると、図は本発明のいくつかの実施形態による電解液循環型電池の循環電解液貯留システム200の上面図を、隠れた詳細部分を含めて示している。このシステム200は、セルスタック205、臭素電解液タンク210としての内側タンク、亜鉛電解液タンク215としての外側タンクを含む。臭素電解液ポンプ220が臭素電解液タンク210の上方に配置され、亜鉛電解液ポンプ225が亜鉛電解液タンク215の上方に配置されている。
【0027】
亜鉛流入口230によって、亜鉛電解液が亜鉛電解液タンク215からセルスタック205に流れることが可能となり、亜鉛流出口235によって亜鉛電解液がセルスタック205から亜鉛電解液タンク215に流れることが可能となる。同様に、臭素流入口240によって、臭素電解液が臭素電解液タンク210からセルスタック205に流れることが可能となり、臭素流出口245によって
臭素電解液がセルスタック205から臭素電解液タンク210に流れることが可能となる。
【0028】
図3を参照すると、
図1のA−Aにおける側断面図は、本発明のいくつかの実施形態による循環電解液貯留システム200における亜鉛電解液の循環経路を示している。図のように、亜鉛電解液タンク215の底に近い亜鉛電解液が吸入チューブ305に入り、次いで亜鉛電解液ポンプ225によって亜鉛流入口230へと送られる。矢印で示されるように、亜鉛電解液はその後セルスタック205の様々な電極板の間を通って、亜鉛流出口235を出て亜鉛電解液タンク215に戻る。
【0029】
臭素電解液タンク210と亜鉛電解液タンク215の双方が、共通の蓋320を共有している。さらに、臭素錯体の回収と処理を改善するために、臭素電解液タンク210の底面が循環電解液貯留システム200の底面に対して傾斜していてもよい。
【0030】
線310、315は、それぞれ亜鉛電解液と臭素電解液の液面を示している。図のように、電池セルスタック205の亜鉛電解液流入口230と亜鉛電解液流出口235は、亜鉛電解液タンク215の真上にあり、臭素電解液タンク210の真上にはない。これにより、ホースと接続器具のような最小限の「配管」器具のみによって、亜鉛電解液が、直接亜鉛電解液タンク215から電池セルスタック205へ往復して流れることが可能となる。さらに、このような配管におけるどのような漏れも自己完結的であり、亜鉛電解液タンク215と臭素電解液タンク210の間の電解液の相互汚染をもたらさない可能性が高い。
【0031】
また、亜鉛電解液タンク215の縁に沿った隆起したリップ330によって、セルスタック205、ポンプ220、225、その他の配管ホース335から起こり得る漏れを効率的に回収して蓋320の上に保持することができる。これにより、臭素電解液タンク210と亜鉛電解液タンク215双方の下に汚染物質の受け皿を追加する必要がなくなる。
【0032】
図4を参照すると、
図1のB−Bにおける側断面図は、本発明のいくつかの実施形態による循環電解液貯留システム200における臭素電解液の循環経路を示している。図のように、臭素電解液タンク210の底に近い臭素電解液が吸入チューブ405に入り、次いで臭素電解液ポンプ220によって臭素流入口240へと送られる。矢印で示されるように、臭素電解液はその後セルスタック205の様々な電極板の間を通って、臭素流出口245を出て臭素電解液タンク210に戻る。
【0033】
図2に示されるように、亜鉛電解液が流入口230から入って流出口235から出るように、そして臭素電解液が流入口240から入って流出口245から出るように、電解液は通常電池セルスタック205を横切って流れる。臭素電解液タンク210を電池セルスタック205に対して対角線上に設置することによって、流出口245からの臭素電解液の戻りは、真下にある臭素電解液タンク210にぴったりと合う。同様に、流出口235からの亜鉛電解液の戻りは、真下にある亜鉛電解液タンク215にぴったりと合う。したがって、電解液を電池セルスタック205から臭素電解液タンク210または亜鉛電解液タンク215のいずれに戻すためにも、追加の配管は不要である。
【0034】
また、一般的に臭素電解液の臭素錯体は亜鉛電解液よりも著しく化学的に活性であることが知られている。臭素電解液タンク210を亜鉛電解液タンク215の内部に配置することによって、臭素電解液は事実上二重壁の容器中に保持されることになるので、臭素錯体がシステム200の外部に漏れる危険性が低減される。
【0035】
当業者は循環電解液貯留システム200を製造するために様々な手法があることを理解するであろう。例えば、回転成形によって、臭素電解液タンク210と亜鉛電解液タンク215の両方を同時に一体的に成形することができる。したがって、システム200の電解液の容器を完成させるためには、蓋320を固定するために溶接を1回行うだけでよい。さらに、本発明のタンク内タンク構造によってタンク壁の全体の剛性が向上し、そのことがより薄い壁とより小さな総重量を可能とする。
【0036】
図5を参照すると、図は本発明の他の実施形態による電解液循環型電池の循環電解液貯留システム500の上面図を、隠れた詳細部分を含めて示している。このシステム500は、セルスタック640、臭素電解液タンク510としての内側タンク、亜鉛電解液タンク515としての外側タンクを含む。臭素電解液ポンプ520が臭素電解液タンク510の上方に配置され、亜鉛電解液ポンプ525が亜鉛電解液タンク515の上方に配置されている。
【0037】
図6において亜鉛電解液ポンプ525の下方に配置された亜鉛流入口530によって、亜鉛電解液が亜鉛電解液タンク515からセルスタックに流れることが可能となり、亜鉛流出口535によって、亜鉛電解液がセルスタックから亜鉛電解液タンク515に流れることが可能となる。同様に、
図7において、臭素電解液ポンプ520の下方に配置された臭素流入口540によって、臭素電解液が臭素電解液タンク510からセルスタックに流れることが可能となり、臭素流出口545によって、
臭素電解液がセルスタックから臭素電解液タンク510に流れることが可能となる。
【0038】
臭素ガス回収チューブ550が臭素電解液タンク510から伸びている。これにより、もし異常な運転などによって圧力が高まっても、好ましくは圧力感知式の安全弁を介して、臭素電解液タンク510から臭素ガスを排気することが可能となる。同様に、亜鉛ガス回収チューブ555が亜鉛電解液タンク515から伸びている。これにより、もし圧力が高まっても、好ましくは圧力感知式の安全弁を介して、亜鉛電解液タンク515から亜鉛ガスを排気することが可能となる
【0039】
図6を参照すると、
図5のC−Cにおける側断面図は、本発明の他の実施形態による循環電解液貯留システム500における亜鉛電解液の循環経路を示している。図のように、亜鉛電解液は吸入チューブ605に入り、次いで亜鉛電解液ポンプ525によって亜鉛流入口530へと送られる。矢印で示されるように、亜鉛電解液はその後セルスタック640の様々な電極板の間を通って、亜鉛流出口535を出て亜鉛電解液タンク515に戻る。
【0040】
臭素電解液タンク510と亜鉛電解液タンク515はともに完全で分離可能なタンクである。さらに、臭素錯体の回収と処理を改善するために、臭素電解液タンク510の底面625が循環電解液貯留システム500の底面に対して傾斜していてもよい。
【0041】
線610、615は、それぞれ亜鉛電解液と臭素電解液の液面を示している。図のように、電池セルスタック640の亜鉛電解液流入口530と亜鉛電解液流出口535は、亜鉛電解液タンク515の真上にあり、臭素電解液タンク510の真上にはない。これにより、ホースと接続器具のような最小限の「配管」器具のみによって、亜鉛電解液が、直接亜鉛電解液タンク515から電池セルスタック
640へ往復して流れることが可能となる。さらに、このような配管におけるどのような漏れも自己完結的であり、亜鉛電解液タンク515と臭素電解液タンク510の間の電解液の相互汚染をもたらさない可能性が高い。
【0042】
また、亜鉛電解液タンク515の縁に沿った隆起したリップ630によって、セルスタック640、ポンプ520、525、その他の配管ホース635から起こり得る漏れを効率的に回収して亜鉛電解液タンク515の上に保持することができる。これにより、臭素電解液タンク510と亜鉛電解液タンク515双方の下に汚染物質の受け皿を追加する必要がなくなる
【0043】
図7を参照すると、
図5のD−Dにおける側断面図は、本発明の他の実施形態による循環電解液貯留システム500における臭素電解液の循環経路を示している。図のように、臭素電解液は吸入チューブ705に入り、次いで臭素電解液ポンプ520によって臭素流入口540へと送られる。矢印で示されるように、臭素電解液はその後セルスタック640の様々な電極板の間を通って、臭素流出口545を出て臭素電解液タンク510に戻る。
【0044】
亜鉛電解液が流入口530から入って流出口535から出るように、そして臭素電解液が流入口540から入って流出口545から出るように、電解液は通常電池セルスタック640を横切って流れる。臭素電解液タンク510を電池セルスタック640に対して対角線上設置することによって、流出口545からの臭素電解液の戻りは、真下にある臭素電解液タンク510にぴったりと合う。同様に、流出口535からの亜鉛電解液の戻りは、真下にある亜鉛電解液タンク515にぴったりと合う。したがって、電解液を電池セルスタック640から臭素電解液タンク
510または亜鉛電解液タンク
515のいずれに戻すためにも、追加の配管は不要である。
【0045】
図8は、本発明の他の実施形態による電解液循環型電池の循環電解液貯留システム500の前面分解透視図である。
【0046】
このシステム500は、臭素電解液タンク510と亜鉛電解液タンク515を含む。亜鉛電解液タンク515と臭素電解液タンク510は完全な、分離可能なタンクであり、臭素電解液タンク510が亜鉛電解液タンク515のくぼみに収まるように形成されている。臭素電解液ポンプ520は臭素電解液タンク510の上方に配置され、亜鉛電解液ポンプ525が亜鉛電解液タンク515の上方に配置されている。
【0047】
臭素電解液タンク510の上面820と亜鉛電解液タンク515の上面830は、セルスタック640が置かれる表面を規定している。臭素電解液タンク510の上部810と亜鉛電解液タンク515の上部800は壁を形成し、セルスタック640とともに、冷却機構(図示せず)のための空洞を規定する。
【0048】
電解液は、亜鉛電解液タンク515または臭素電解液タンク510に戻される前に、ポンプで空洞内に配置された冷却機構を通って送られる。例えば予め形成された空洞に設置されたファンによって、空洞の一端から他端へ、冷却機構を通って、上部800と810、臭素電解液タンク510、亜鉛電解液タンク515と電池セルスタック640に案内されて、空気を強制的に通すことができる。当業者によって理解されるように、冷却機構の一例は、亜鉛および臭素電解液が熱交換できるような広い表面積を有する一連の長い熱交換チューブである。
【0049】
図9は、本発明の他の実施形態による電解液循環型電池の循環電解液貯留システム500の背面分解透視図である。
【0050】
図10は、本発明の他の実施形態による電解液循環型電池の循環電解液貯留システム500の前面組立透視図である。
【0051】
まとめると、本発明のいくつかの実施形態の効果は、電解液循環型電離システムの改良された頑健性、安全性および効率、ならびに低減された大きさと重量を含む。外部配管のホースと固定器具双方の必要性が低下することによって、電解液が漏れる危険性が低下し、循環電解液貯留システムのコストが減少する。
【0052】
本発明の様々な実施形態関する上記の説明は、当業者への説明を目的として提供されている。それは、全てを網羅することや発明を開示された実施形態に限定することを意図したものではない。前述のとおり、本発明の数多くの代替と変形が、上記教示の分野における当業者にとって明らかである。したがって、いくつかの代替的な実施形態が具体的に議論されてきたが、他の実施形態は当業者にとって明らかであるか、容易に開発されるものである。したがって、本明細書は、ここで議論された本発明のすべての代替、修正および変形、ならびに上述した発明の精神と範囲内にあるその他の実施形態を包含することを意図している。