特許第5719885号(P5719885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5719885電圧変化予測システム、電圧変化予測プログラムおよび電圧変化予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5719885
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】電圧変化予測システム、電圧変化予測プログラムおよび電圧変化予測方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20150430BHJP
   H02J 3/12 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H02J3/00 170
   H02J3/12
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-143352(P2013-143352)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-19440(P2015-19440A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2014年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】武内 信二
(72)【発明者】
【氏名】三上 時志
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕
(72)【発明者】
【氏名】高井 一次
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−223805(JP,A)
【文献】 特開2002−023864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配電用変圧器を有する配電用変電所において、第1の配電用変圧器の二次側母線と第2の配電用変圧器の二次側母線とを接続する母線連絡開閉器を投入した後に前記第2の配電用変圧器を停止する変圧器停止操作時における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧の変化を予測し、前記変圧器停止操作後に前記第2の配電用変圧器を動作させ、前記母線連絡開閉器を開放して、前記変圧器停止操作前の状態に復旧する変圧器復旧操作時における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの二次側母線電圧の変化をさらに予測する電圧変化予測システムであって、
前記変圧器停止操作前における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力に基づいて、前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の無効電力を算出する無効電力算出部と、
前記第1の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器停止操作前後のそれぞれにおける前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器停止操作前における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出する母線電圧算出部と、
前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧が所定の電圧範囲内にあるか否かを判定する判定部と、
を有し、
前記無効電力算出部は、前記変圧器復旧操作前における前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器停止操作前における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力の記録値に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力を算出し、
前記母線電圧算出部は、
前記第1の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器復旧操作前後のそれぞれにおける前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器復旧操作前における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出するとともに、
前記第2の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器復旧操作前後のそれぞれにおける前記第2の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器復旧操作前における前記第2の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第2の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出し、
前記判定部は、前記変圧器復旧操作後における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの二次側母線電圧が前記所定の電圧範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする電圧変化予測システム。
【請求項2】
請求項に記載の電圧変化予測システムであって、
前記無効電力算出部は、前記変圧器復旧操作前における前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器停止操作前の前記変圧器復旧操作時と同じ曜日の同じ時間帯における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力の記録値に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力を算出することを特徴とする電圧変化予測システム。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の電圧変化予測システムであって、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧が前記所定の電圧範囲から逸脱することを報知する報知部をさらに有することを特徴とする電圧変化予測システム。
【請求項4】
請求項または請求項に記載の電圧変化予測システムであって、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの二次側母線電圧が前記所定の電圧範囲から逸脱することを報知する報知部をさらに有することを特徴とする電圧変化予測システム。
【請求項5】
コンピュータに、
複数の配電用変圧器を有する配電用変電所において、第1の配電用変圧器の二次側母線と第2の配電用変圧器の二次側母線とを接続する母線連絡開閉器を投入した後に前記第2の配電用変圧器を停止する変圧器停止操作前における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力に基づいて、前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の無効電力を算出し、前記変圧器停止操作後に前記第2の配電用変圧器を動作させ、前記母線連絡開閉器を開放して、前記変圧器停止操作前の状態に復旧する変圧器復旧操作前における前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器停止操作前における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力の記録値に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力を算出する無効電力算出処理と、
前記第1の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器停止操作前後のそれぞれにおける前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器停止操作前における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出し、
前記第1の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器復旧操作前後のそれぞれにおける前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器復旧操作前における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出し、
前記第2の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器復旧操作前後のそれぞれにおける前記第2の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器復旧操作前における前記第2の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第2の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出する母線電圧算出処理と、
前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧が所定の電圧範囲内にあるか否かを判定し、前記変圧器復旧操作後における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの二次側母線電圧が前記所定の電圧範囲内にあるか否かを判定する判定処理と、
を実行させることを特徴とする電圧変化予測プログラム。
【請求項6】
複数の配電用変圧器を有する配電用変電所において、第1の配電用変圧器の二次側母線と第2の配電用変圧器の二次側母線とを接続する母線連絡開閉器を投入した後に前記第2の配電用変圧器を停止する変圧器停止操作時における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧の変化を予測し、前記変圧器停止操作後に前記第2の配電用変圧器を動作させ、前記母線連絡開閉器を開放して、前記変圧器停止操作前の状態に復旧する変圧器復旧操作時における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの二次側母線電圧の変化をさらに予測する方法であって、
前記変圧器停止操作前における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力に基づいて、前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の無効電力を算出し、
前記第1の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器停止操作前後のそれぞれにおける前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器停止操作前における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出し、
前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧が所定の電圧範囲内にあるか否かを判定し、
前記変圧器復旧操作前における前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器停止操作前における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力の記録値に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力を算出し、
前記第1の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器復旧操作前後のそれぞれにおける前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器復旧操作前における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出し、
前記第2の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器復旧操作前後のそれぞれにおける前記第2の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器復旧操作前における前記第2の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第2の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出し、
前記変圧器復旧操作後における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの二次側母線電圧が前記所定の電圧範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする電圧変化予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変化予測システム、電圧変化予測プログラム、および電圧変化予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の配電用変圧器を有する配電用変電所においては、各変圧器の二次側母線を接続する母線連絡開閉器を投入することで、2台以上の配電用変圧器を並列運転することができる。そして、並列運転を行う場合には、母線連絡開閉器を投入する前に、並列運転対象の各変圧器の二次側母線電圧を同程度に調整しておく必要がある。
【0003】
例えば特許文献1では、並列運転を行う前に、並列運転後の二次側母線電圧を予測して、並列運転対象の各変圧器のタップを制御することによって、並列運転後の二次側母線電圧を所望の電圧に迅速に制御することができる変圧器制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−249825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の配電用変圧器のうち1台を停電作業などにより停止する場合、停止する変圧器のバンクに接続されている負荷を、他のバンクにシフトする必要がある。例えば、2台の配電用変圧器のうち1台を停止する場合、一旦これら2台を並列運転した後、停止する変圧器の二次側開閉器を開放して、負荷シフトを完了する。このとき、特許文献1の変圧器制御装置を用いることによって、2台の配電用変圧器を並列運転する際に送出電圧が目標範囲から逸脱するのを防止することができる。
【0006】
しかしながら、2台の並列運転状態から1台を停止することにより、残りの1台の無効電力が大きく変化する場合がある。そのため、この無効電力の変化によって、送出電圧が目標範囲から逸脱する可能性がある。また、停電作業などの終了後、停止した1台を再び動作させ、負荷シフトを行う前の常時の状態に復旧する場合にも、無効電力が大きく変化し、送出電圧が目標範囲から逸脱する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決する主たる本発明は、複数の配電用変圧器を有する配電用変電所において、第1の配電用変圧器の二次側母線と第2の配電用変圧器の二次側母線とを接続する母線連絡開閉器を投入した後に前記第2の配電用変圧器を停止する変圧器停止操作時における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧の変化を予測し、前記変圧器停止操作後に前記第2の配電用変圧器を動作させ、前記母線連絡開閉器を開放して、前記変圧器停止操作前の状態に復旧する変圧器復旧操作時における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの二次側母線電圧の変化をさらに予測する電圧変化予測システムであって、前記変圧器停止操作前における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力に基づいて、前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の無効電力を算出する無効電力算出部と、前記第1の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器停止操作前後のそれぞれにおける前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器停止操作前における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出する母線電圧算出部と、前記変圧器停止操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧が所定の電圧範囲内にあるか否かを判定する判定部と、を有し、前記無効電力算出部は、前記変圧器復旧操作前における前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器停止操作前における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力の記録値に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの無効電力を算出し、前記母線電圧算出部は、前記第1の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器復旧操作前後のそれぞれにおける前記第1の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器復旧操作前における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第1の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出するとともに、前記第2の配電用変圧器のインピーダンス、前記変圧器復旧操作前後のそれぞれにおける前記第2の配電用変圧器の無効電力、および前記変圧器復旧操作前における前記第2の配電用変圧器の二次側母線電圧に基づいて、前記変圧器復旧操作後における前記第2の配電用変圧器の二次側母線電圧を算出し、前記判定部は、前記変圧器復旧操作後における前記第1および第2の配電用変圧器のそれぞれの二次側母線電圧が前記所定の電圧範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする電圧変化予測システムである。
【0008】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の配電用変圧器のうち1台を停止する際に負荷シフトを行う場合や、停止した変圧器を再び動作させて負荷シフトを行う前の常時の状態に復旧する場合にも、配電用変電所の送出電圧が目標範囲から逸脱するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態における電圧変化予測システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態における電圧変化予測システムが適用される配電用変電所の構成の一例を示す回路ブロック図である。
図3】変圧器停止操作時に適用する場合の電圧変化予測プログラムの動作を説明するフローチャートである。
図4】変圧器停止操作時に適用する場合の電圧変化予測プログラムの表示画面の一例を示す図である。
図5】変圧器復旧操作時に適用する場合の電圧変化予測プログラムの動作を説明するフローチャートである。
図6】変圧器復旧操作時に適用する場合の電圧変化予測プログラムの表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
===電圧変化予測システムの構成===
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態における電圧変化予測システムの構成について説明する。
【0013】
図1に示されている電圧変化予測システム10は、バス109を介して互いに接続された、無効電力算出部101、母線電圧算出部102、判定部103、通信部105、入力部106、出力部107、および記憶部108を含んで構成されている。また、通信部105は、配電用変電所を含む電力系統を監視・制御している制御所システム20と通信可能になっている。なお、電圧変化予測システム10の機能は、通信部105、入力部106、出力部107、記憶部108、およびバス109を備えるコンピュータ100によって実現することができる。
【0014】
===電圧変化予測システムの動作===
以下、図2ないし図6を適宜参照して、本実施形態における電圧変化予測システムの動作について説明する。
【0015】
まず、電圧変化予測システムが適用される配電用変電所の構成の一例を図2に示す。
【0016】
なお、本実施形態の電圧変化予測システムは、複数の配電用変圧器を有する配電用変電所に適用することができ、図2においては、複数の配電用変圧器のうちの2台のみを示している。
【0017】
配電用変圧器TaおよびTbの一次側は、それぞれ開閉器CB1aおよびCB1bを介して、例えば66kV付近の一次側母線に接続されている。また、配電用変圧器TaおよびTbの二次側は、それぞれ開閉器CB2aおよびCB2bを介して、例えば6.6kV付近の二次側母線に接続されている。そして、配電用変圧器Taの二次側母線と配電用変圧器Tbの二次側母線とは、母線連絡開閉器CB3を介して接続されている。
【0018】
なお、配電用変圧器Taの無効電力をQaとし、二次側母線電圧をVaとし、%インピーダンス法で表したインピーダンスを%Xaとする。また、配電用変圧器Tbの無効電力をQbとし、二次側母線電圧をVbとし、%インピーダンス法で表したインピーダンスを%Xbとする。
【0019】
前述したように、電圧変化予測システム10の機能は、コンピュータ100によって実現することができる。例えば、コンピュータ100に電圧変化予測プログラムを実行させることによって、無効電力算出部101、母線電圧算出部102、および判定部103に相当する処理を実行することができる。図3および図5は、これら各部に相当する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムの動作を示している。
【0020】
図3は、図2に示した配電用変電所において、停電作業などにより配電用変圧器Tbを停止する変圧器停止操作時に適用する場合の電圧変化予測プログラムの動作を示しており、図4は、その場合にディスプレイなどの出力部107に表示される画面の一例を示している。なお、図3において破線で囲まれたS17およびS19は、電圧変化予測システムの動作ではなく、作業者の行為を示している。また、図4において破線で囲まれた数値は、図1に示した通信部105を介して制御所システム20から取得された値を示し、実線で囲まれた数値は、図1に示した無効電力算出部101および母線電圧算出部102によって算出された値を示している。
【0021】
当該変圧器停止操作では、まず、開放されている母線連絡開閉器CB3を投入して、一旦配電用変圧器TaおよびTbを並列運転する。次に、投入されている開閉器CB1bおよびCB2b(少なくとも二次側開閉器CB2b)を開放して、停止する配電用変圧器Tbのバンクに接続されている負荷を、残りの配電用変圧器Taのバンクにシフトする負荷シフトを行う。最後に、配電用変圧器Tbを停止して、停電作業などを行う。
【0022】
なお、配電用変電所が3台以上の配電用変圧器を有する場合も含めて、配電用変圧器Tb(第2の配電用変圧器)は、停電作業などにより停止する1台として選択された配電用変圧器を示す。また、配電用変圧器Ta(第1の配電用変圧器)は、配電用変圧器Tbを停止する際の負荷のシフト先として選択された配電用変圧器を示す。
【0023】
プログラムの実行が開始されると、まず、制御所システム20から、現在の(変圧器停止操作前における)配電用変圧器Taの無効電力Qaおよび配電用変圧器Tbの無効電力Qbを取得する(S11)。そして、無効電力算出部101に相当する無効電力算出処理S12を実行する。
【0024】
無効電力算出処理S12では、無効電力QaおよびQbに基づいて、変圧器停止操作後における配電用変圧器Taの無効電力Qa’を算出する。例えば図4に示すように、Qa=−5.40MVar,Qb=−3.70MVarの場合には、
Qa’=Qa+Qb=−9.10MVar
と算出される。
【0025】
次に、制御所システム20から、配電用変圧器Taの(%インピーダンス法による)インピーダンス%Xa、配電用変電所の送出電圧の目標電圧Vref、および現在の配電用変圧器Taの二次側母線電圧Vaを取得する(S13)。なお、目標電圧Vrefは、時間の経過や配電用変圧器の選択によって変化しないため、制御所システム20から取得する代わりに、予め設定された固定値としてもよい。そして、母線電圧算出部102に相当する母線電圧算出処理S14を実行する。
【0026】
母線電圧算出処理S14では、まず、配電用変圧器Taのインピーダンス%Xa、および変圧器停止操作前後における無効電力の差(Qa−Qa’)に基づいて、変圧器停止操作による二次側母線電圧Vaの電圧変化率%ΔVaを算出する。例えば図4に示すように、%Xa=7.808%(10MVA基準)の場合には、
%ΔVa=%Xa×(Qa−Qa’)÷10=2.89%
と算出される。
【0027】
また、目標電圧Vrefおよび電圧変化率%ΔVaに基づいて、二次側母線電圧Vaの電圧変化値ΔVaを算出する。例えば図4に示すように、Vref=6.60kVの場合には、
ΔVa=Vref×(%ΔVa÷100)=0.19kV
と算出される。
【0028】
そして、二次側母線電圧Vaおよびその電圧変化値ΔVaに基づいて、変圧器停止操作後における配電用変圧器Taの二次側母線電圧(予測値)Va’を算出する。例えば図4に示すように、Va=6.60kVの場合には、
Va’=Va+ΔVa=6.79kV
と算出される。
【0029】
次に、制御所システム20から、配電用変電所の送出電圧の上限電圧Vmaxおよび下限電圧Vminを取得する(S15)。なお、上限電圧Vmaxおよび下限電圧Vminは、時間の経過や配電用変圧器の選択によって変化しないため、制御所システム20から取得する代わりに、予め設定された固定値としてもよい。そして、判定部103に相当する判定処理S16を実行する。
【0030】
判定処理S16では、変圧器停止操作後における配電用変電所の送出電圧、すなわち、配電用変圧器Taの二次側母線電圧Va’が下限電圧Vmin以上かつ上限電圧Vmax以下の目標範囲内(所定の電圧範囲内)にあるか否かを判定する。そして、Vmin≦Va’≦Vmaxが成立する場合(S16:YES)には、作業者は、送出電圧Va’が所定の電圧範囲から逸脱することなく、上記の変圧器停止操作を行って、配電用変圧器Tbを停止することができる(S17)。
【0031】
一方、Vmin≦Va’≦Vmaxが成立しない場合(S16:NO)には、このまま上記の変圧器停止操作を行うと、送出電圧Va’が所定の電圧範囲から逸脱してしまう。そこで、例えば図4に示したディスプレイの表示画面において、算出された二次側母線電圧Va’を点滅させたり、スピーカから音声でアナウンスしたりして、送出電圧Va’が所定の電圧範囲から逸脱することを作業者に報知する(S18)。この場合、ディスプレイやスピーカなどの出力部107が報知部として機能する。
【0032】
そして、作業者は、送出電圧Va’を所定の電圧範囲内に調整すべく配電用変圧器TaおよびTbのタップを変更したうえで(S19)、再びS11から処理を実行させる。このとき、現在の状態からの変圧器停止操作後における二次側母線電圧Va’に追加して、例えば各配電用変圧器に対して1タップ分の上げ操作や下げ操作を行った状態からの変圧器停止操作後における二次側母線電圧をディスプレイに表示させてもよい。当該追加の表示情報により、作業者は、より効率的に送出電圧Va’を所定の電圧範囲内に調整することができる。
【0033】
図5は、図2に示した配電用変電所において、停電作業などの終了後、配電用変圧器Tbを再び動作させて常時の状態に復旧する変圧器復旧操作時に適用する場合の電圧変化予測プログラムの動作を示しており、図6は、その場合にディスプレイなどの出力部107に表示される画面の一例を示している。なお、図5において破線で囲まれたS27およびS29は、電圧変化予測システムの動作ではなく、作業者の行為を示している。また、図6において破線で囲まれた数値は、図1に示した通信部105を介して制御所システム20から取得された値を示し、実線で囲まれた数値は、図1に示した無効電力算出部101および母線電圧算出部102によって算出された値を示している。
【0034】
当該変圧器復旧操作では、まず、配電用変圧器Tbを再び動作させ、開放されている開閉器CB1bおよびCB2bを投入して、一旦配電用変圧器TaおよびTbを並列運転する。そして、投入されている母線連絡開閉器CB3を開放して、変圧器停止操作前(負荷シフトを行う前)の常時の状態に復旧する。
【0035】
プログラムの実行が開始されると、まず、制御所システム20から、現在の(変圧器復旧操作前における)配電用変圧器Taの無効電力Qa’、および変圧器停止操作前における配電用変圧器Ta,Tbの無効電力の記録値Qar,Qbrを取得する(S21)。そして、無効電力算出部101に相当する無効電力算出処理S22を実行する。
【0036】
無効電力算出処理S22では、無効電力Qa’、および無効電力の記録値Qar,Qbrに基づいて、変圧器復旧操作後における配電用変圧器Ta,Tbの無効電力Qa,Qbを算出する。ここで、負荷シフトされた現在の状態では、フィーダーごとの無効電力が計測されていないため、変圧器復旧操作後における各配電用変圧器の無効電力の分担割合は不明である。そこで、本実施形態では、当該無効電力の分担割合を、変圧器停止操作前の現在(変圧器復旧操作時)と同じ曜日の同じ時間帯における配電用変圧器Ta,Tbの無効電力の記録値Qar,Qbrから求める。なお、同じ曜日の同じ時間帯における無効電力の記録値Qar,Qbrが複数存在する場合には、それらのうち最新のものを用いることが望ましい。例えば図6に示すように、Qa’=−8.50MVar,Qar=−5.70MVar,Qbr=−3.50MVarの場合には、
Qa=Qa’×[Qar÷(Qar+Qbr)]=−5.27MVar
Qb=Qa’×[Qbr÷(Qar+Qbr)]=−3.23MVar
と算出される。
【0037】
次に、制御所システム20から、配電用変圧器Ta,Tbの(%インピーダンス法による)インピーダンス%Xa,%Xb、配電用変電所の送出電圧の目標電圧Vref、および現在の配電用変圧器Taの二次側母線電圧Va’を取得する(S23)。なお、目標電圧Vrefは、制御所システム20から取得する代わりに、予め設定された固定値としてもよい。そして、母線電圧算出部102に相当する母線電圧算出処理S24を実行する。
【0038】
母線電圧算出処理S24では、まず、配電用変圧器Taのインピーダンス%Xa,%Xb、および変圧器復旧操作前後における無効電力の差(Qa’−Qa,Qb’−Qb)に基づいて、変圧器復旧操作による二次側母線電圧Va,Vbの電圧変化率%ΔVa,%ΔVbを算出する。例えば図6に示すように、%Xa=7.808%,%Xb=7.750%(いずれも10MVA基準)の場合には、
%ΔVa=%Xa×(Qa’−Qa)÷10=−2.52%
%ΔVb=%Xb×(Qa’−Qb)÷10=−4.08%
と算出される。
【0039】
また、目標電圧Vrefおよび電圧変化率%ΔVa,%ΔVbに基づいて、二次側母線電圧Va,Vbの電圧変化値ΔVa,ΔVbを算出する。例えば図6に示すように、Vref=6.60kVの場合には、
ΔVa=Vref×(%ΔVa÷100)=−0.17kV
ΔVb=Vref×(%ΔVb÷100)=−0.27kV
と算出される。
【0040】
そして、二次側母線電圧Va’およびその電圧変化値ΔVa,ΔVbに基づいて、変圧器復旧操作後における配電用変圧器Ta,Tbの二次側母線電圧(予測値)Va,Vbを算出する。例えば図6に示すように、Va’=6.60kVの場合には、
Va=Va’+ΔVa=6.43kV
Vb=Va’+ΔVb=6.33kV
と算出される。
【0041】
次に、制御所システム20から、配電用変電所の送出電圧の上限電圧Vmaxおよび下限電圧Vminを取得する(S25)。なお、上限電圧Vmaxおよび下限電圧Vminは、制御所システム20から取得する代わりに、予め設定された固定値としてもよい。そして、判定部103に相当する判定処理S26を実行する。
【0042】
判定処理S26では、変圧器復旧操作後における配電用変電所の送出電圧、すなわち、配電用変圧器Ta,Tbの二次側母線電圧Va,Vbが下限電圧Vmin以上かつ上限電圧Vmax以下の目標範囲内(所定の電圧範囲内)にあるか否かを判定する。そして、Vmin≦Va,Vb≦Vmaxが成立する場合(S26:YES)には、作業者は、送出電圧Va,Vbが所定の電圧範囲から逸脱することなく、上記の変圧器復旧操作を行って、配電用変圧器Tbを再び動作させて常時の状態に復旧することができる(S27)。
【0043】
一方、Vmin≦Va,Vb≦Vmaxが成立しない場合(S26:NO)には、このまま上記の変圧器復旧操作を行うと、送出電圧Va,Vbの少なくとも一方が所定の電圧範囲から逸脱してしまう。そこで、例えば図6に示したディスプレイの表示画面において、算出された二次側母線電圧Va,Vbを点滅させたり、スピーカから音声でアナウンスしたりして、送出電圧Va,Vbが所定の電圧範囲から逸脱することを作業者に報知する(S28)。この場合、ディスプレイやスピーカなどの出力部107が報知部として機能する。
【0044】
そして、作業者は、送出電圧Va,Vbを所定の電圧範囲内に調整すべく配電用変圧器Ta,Tbのタップを変更したうえで(S29)、再びS21から処理を実行させる。このとき、現在の状態からの変圧器復旧操作後における二次側母線電圧Va,Vbに追加して、例えば各配電用変圧器に対して1タップ分の上げ操作や下げ操作を行った状態からの変圧器復旧操作後における二次側母線電圧をディスプレイに表示させてもよい。当該追加の表示情報により、作業者は、より効率的に送出電圧Va,Vbを所定の電圧範囲内に調整することができる。
【0045】
前述したように、電圧変化予測システム10において、変圧器停止操作前における配電用変圧器Ta,Tbの無効電力Qa,Qbに基づいて、変圧器停止操作後における配電用変圧器Taの無効電力Qa’を算出し、配電用変圧器Taのインピーダンス%Xa、変圧器停止操作前後における無効電力の差(Qa−Qa’)、および変圧器停止操作前における配電用変圧器Taの二次側母線電圧Vaに基づいて、変圧器停止操作後における配電用変圧器Taの二次側母線電圧(予測値)Va’を算出して、配電用変電所の送出電圧の目標範囲(所定の電圧範囲)と比較することによって、配電用変電所が有する複数の配電用変圧器のうち1台の配電用変圧器Tbを停止する際に負荷シフトを行う場合に、負荷シフト後の送出電圧Va’が目標範囲から逸脱するのを防止することができる。その結果、ヒューマンエラーによる送出電圧の目標範囲からの逸脱を防止して電力品質を維持確保するとともに、操作時間を短縮することもできる。
【0046】
また、変圧器復旧操作前における配電用変圧器Taの無効電力Qa’、および変圧器停止操作前における配電用変圧器Ta,Tbの無効電力の記録値Qar,Qbrに基づいて、変圧器復旧操作後における配電用変圧器Ta,Tbの無効電力Qa,Qbを算出し、配電用変圧器Ta,Tbのインピーダンス%Xa,%Xb、変圧器復旧操作前後における無効電力の差(Qa’−Qa,Qb’−Qb)、および変圧器停止操作前における配電用変圧器Taの二次側母線電圧Va’に基づいて、変圧器復旧操作後における配電用変圧器Ta,Tbの二次側母線電圧(予測値)Va,Vbを算出して、配電用変電所の送出電圧の目標範囲と比較することによって、停止した配電用変圧器Tbを再び動作させて負荷シフトを行う前の常時の状態に復旧する場合にも、復旧後の送出電圧Va,Vbが目標範囲から逸脱するのを防止することができる。
【0047】
また、変圧器停止操作前の変圧器復旧操作時と同じ曜日の同じ時間帯における配電用変圧器Ta,Tbの無効電力の記録値Qar,Qbrから、変圧器復旧操作後における各配電用変圧器の無効電力の分担割合を求めることによって、変圧器復旧操作前における配電用変圧器Taの無効電力Qa’に各配電用変圧器の無効電力の分担割合を乗算して、変圧器復旧操作後における配電用変圧器Ta,Tbの無効電力Qa,Qbを算出することができる。
【0048】
また、変圧器停止操作後や変圧器復旧操作後における配電用変電所の送出電圧が目標範囲から逸脱することを報知することによって、作業者は、配電用変圧器TaおよびTbのタップを変更して、送出電圧を目標範囲内に調整することができる。
【0049】
また、コンピュータに、電圧変化予測システム10の各部に相当する処理を実行させるためのプログラムにおいて、変圧器停止操作前における配電用変圧器Ta,Tbの無効電力Qa,Qbに基づいて、変圧器停止操作後における配電用変圧器Taの無効電力Qa’を算出し、配電用変圧器Taのインピーダンス%Xa、変圧器停止操作前後における無効電力の差(Qa−Qa’)、および変圧器停止操作前における配電用変圧器Taの二次側母線電圧Vaに基づいて、変圧器停止操作後における配電用変圧器Taの二次側母線電圧(予測値)Va’を算出して、配電用変電所の送出電圧の目標範囲と比較することによって、配電用変圧器Tbを停止する際に負荷シフトを行う場合に、負荷シフト後の送出電圧Va’が目標範囲から逸脱するのを防止することができる。
【0050】
また、変圧器停止操作前における配電用変圧器Ta,Tbの無効電力Qa,Qbに基づいて、変圧器停止操作後における配電用変圧器Taの無効電力Qa’を算出し、配電用変圧器Taのインピーダンス%Xa、変圧器停止操作前後における無効電力の差(Qa−Qa’)、および変圧器停止操作前における配電用変圧器Taの二次側母線電圧Vaに基づいて、変圧器停止操作後における配電用変圧器Taの二次側母線電圧(予測値)Va’を算出して、配電用変電所の送出電圧の目標範囲と比較することによって、配電用変圧器Tbを停止する際に負荷シフトを行う場合に、負荷シフト後の送出電圧Va’が目標範囲から逸脱するのを防止することができる。
【0051】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10 電圧変化予測システム
20 制御所システム
100 コンピュータ
101 無効電力算出部
102 母線電圧算出部
103 判定部
105 通信部
106 入力部
107 出力部(報知部)
108 記憶部
109 バス
Ta、Tb 配電用変圧器
CB1a、CB1b、CB2a、CB2b 開閉器
CB3 母線連絡開閉器
図1
図2
図3
図4
図5
図6