(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液状の香気放出組成物が、前記香料保持材を前記香料担持吸着剤粒子の総重量の5〜20%の量で含有し、前記香料を前記香料保持材の重量の10〜50%の量で含有することを特徴とする請求項1に記載の香料担持吸着剤粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
本発明の香料担持吸着剤粒子は、吸着剤核粒子と、前記吸着剤核粒子の表面に担持され、香料および該香料を保持する香料保持材を含む香気発生媒体とを備える。前記香料保持材は前記香料担持吸着剤粒子の総重量の5〜20%の量で存在し、前記香料は、前記保持材の重量の10〜50%の量で存在する。
【0015】
本発明に使用される吸着剤核粒子は、700m
2/g以上のBET比表面積を有する。本明細書において、BET比表面積は、公知のBET法に従って求められる比表面積をいう。BET比表面積が700m
2/g未満であると、シガレット主流煙中の成分を十分に吸着することができない。本発明において、吸着能は、シガレット主流煙中の代表的な成分の一つであるアセトン等を基準とする。吸着剤核粒子は、好ましくは、1000m
2/g以上のBET比表面積を有する。吸着剤核粒子のBET比表面積は、通常、2000m
2/g以下である。
【0016】
このような吸着剤核粒子の例には、活性炭粒子、ゼオライト粒子、シリカゲル粒子が含まれる。
【0017】
吸着剤核粒子は、75〜1000μmの平均粒径を有することが好ましく、例えば平均粒径が75μm〜600μmのものを好適に使用することができる。
【0018】
吸着剤核粒子の表面を覆う香気発生媒体は、香料と、この香料を保持する香料保持材を含む。
【0019】
香料の例には、親水性香料と疎水性香料が含まれる。親水性香料の例は、葉たばこ抽出エキス、天然植物性香料(例えば、リコリス、セントジョンズブレッド、スモモエキス、ピーチエキス等)、酸類(例えば、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、酪酸等)、糖類(例えば、グルコース、フルクトース、異性化糖等)を含む。疎水性香料の例は、メントール、ココア類(パウダー、エキス等)、エステル類(例えば、酢酸イソアミル、酢酸リナリル、プロピオン酸イソアミル、酪酸リナリル等)、天然精油類(植物性精油として、例えば、バニラエキス、スペアミント、ペパーミント、カシア、ジャスミン等;動物性精油として、例えば、ムスク、アンバーグリス、シベット、カストリウム等)、単体香料(例えば、アネトール、リモネン、リナロール、オイゲノール、バニリン等)を含む。
【0020】
香料を保持する保持材には、膜形成材および必要に応じて乳化剤が含まれる。本発明で使用される膜形成材の代表的な例は、グルカンであり、グルカンには、例えば、プルラン、マルトデキストリン、ヒドロキシプロピルセルロースが含まれる。グルカンは、水溶性である。グルカン等の膜形成材は、それから形成される膜中に香料を組み込むことによって香料を保持することができる。膜形成材は、親水性香料、疎水性香料のいずれに対しても用いることができる。
【0021】
乳化剤の例は、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンを含む。乳化剤分子は、水性媒体中で、それらの疎水性基を疎水性香料の油滴の周りに吸着させることによって疎水性香料を保持し、乾燥後も、疎水性香料を保持する。
【0022】
本発明の香料担持吸着剤粒子において、香料保持材は、香料担持吸着剤粒子の総重量の5〜20%の量、好ましくは5〜10%の量で存在する。そして、香料は、香料保持材の重量の10〜50%の量で存在する。
【0023】
本発明の香料担持吸着剤粒子は、吸着剤核粒子を減圧下に攪拌しながら、香料と香料保持材を含む液状の香気放出組成物を吸着剤核粒子に噴霧することによって調製することができる。
【0024】
液状の香気放出組成物に含まれる香料は、先に説明したとおりであり、香料保持材も先に説明したとおりである。
【0025】
液状の香気放出組成物が、香料として親水性香料だけを含有する場合、当該組成物は、通常、膜形成材としてのグルカンと、親水性香料を含み、さらに、グルカンと親水性香料を溶解する溶媒としての水を含むことが好ましい。
【0026】
液状の香気放出組成物が、香料として疎水性香料を含む場合(例えば、液状香料発生組成物が、香料として疎水性香料だけを含む場合、または香料として親水性香料とともに疎水性香料を含む場合)、当該香気放出組成物は、膜形成材としてのグルカンと、グルカンの溶媒としての水と、疎水性香料(および親水性香料)と、疎水性香料を溶解させる油性溶媒(例えば、植物性油脂または飽和脂肪酸トリグリセリド、好ましくは中鎖飽和脂肪酸トリグリセリド)と、乳化剤を含むことが好ましい。この組成物が、疎水性香料に加えて、親水性香料を含む場合、その親水性香料は、水に溶解する。
【0027】
香料担持吸着剤粒子を製造するに際し、吸着剤核粒子は、液状の香気放出組成物を噴霧している間、12.3kPa以下の減圧下、たとえば7.4〜12.3kPaの減圧下に置くことが好ましい。また、そのとき、吸着剤核粒子は、60℃以下の温度、たとえば40〜60℃の温度にあることが好ましい。減圧下において、香料と香料保持材を含む液状の香気放出組成物を噴霧することにより、多量の香料を吸着剤核粒子に担持させることができるとともに、高粘度の香気放出組成物(たとえば2Pa・s程度の粘度)をスプレーノズルから噴霧できるという利点も有する。
【0028】
本発明の香料担持吸着剤粒子を製造するために、円錐型リボン混合/乾燥機を利用することができる。円錐型リボン混合/乾燥機は、例えば、特開2003−71263公報、特開2003−290641公報、特開2007−229633公報に記載され、また大川原製作所から商業的に入手できるものである。
【0029】
そのような円錐型リボン混合/乾燥機の基本的な構造を
図1を参照して説明する。
図1は、円錐型リボン混合/乾燥機10の一例を概略的に断面で示すものである。円錐型リボン混合/乾燥機10は、内部で、混合/乾燥処理が行われる、逆円錐部121とその上に連設された円筒部122からなる処理槽12を備える。処理槽12内に設置された二重螺旋リボン回転翼14を備える。螺旋リボン回転翼14は、処理槽12内中央を縦に延びる回転軸16に、この回転軸16に互いに離間して固定された複数の支持バー(
図1では、支持バー18a〜18e)に取り付けられている。回転翼14の上方で処理槽12の円筒部122の内壁には、例えば一対の板状体からなる渦流ブレーカ20a、20bが固定されている。渦流ブレーカ20a、20bは、リボン回転翼14によって処理槽12の内壁に沿って上昇してきた処理物(本発明においては、吸着剤粒子)を、処理槽12の中央付近に移動させるとともに処理槽12の下部に落下させるものである。
【0030】
処理槽12の外周は、ジャケット22が取り囲んでおり、このジャケット22内には、容器内容物を加熱するために、スチーム導入口22aからラインL1を介してスチームが導入され、そのスチームはスチーム排出口22bからラインL2を介して系外に排出される。
【0031】
容器の上部開口部は、天板24により閉塞されている。この天板24上には、モータ26と減速機28が設置され、減速機28の出力軸は、処理槽12内に設置された回転軸16に連結されている。また、天板24には、被処理物(本発明の場合、吸着剤核粒子)の投入口24aが設けられ、処理槽12の底部には、処理物(本発明の場合、香料担持吸着剤粒子)の排出口12aが設けられている。
【0032】
さらに、天板24には、バグフィルタ30が取り付けられている。このバグフィルタは、処理槽12の内容物中の粒状物(本発明の場合、吸着剤粒子)を捕捉し、揮発物(本発明の場合、香気放出組成物中の水)を通過させ、これをラインL3を介して凝縮器32に導く。凝縮器32は、例えば水冷式冷却器により構成され、内筒321内を揮発物が通過し、揮発物は、ラインL5から外筒322内に導入される冷却水により冷却され、ラインL6から凝縮液(水)として排出される。外筒322に導入された水は、ラインL5から排出される。内筒ラインL7を介して、減圧ポンプP1に接続され、この減圧ポンプP1の駆動により処理槽12内が減圧される。
【0033】
円錐型リボン混合/乾燥機の基本的な構造は以上の通りであるが、本発明の香料担持吸着剤粒子を調製するために、液状の香気放出組成物を処理槽12内に導入するためのスプレーノズル34を天板24を貫通して設け、液状の香気放出組成物LFCを収容する容器36から、送液ポンプP2を備えるラインL8を介して液状の香気放出組成物を処理槽12内に噴霧する。また、処理槽12の下部に処理槽12内の吸着剤粒子の温度を測定するための温度センサー(例えば、熱電対)38を設ける。
【0034】
図1に示す円錐型リボン混合/乾燥機10を用いて本発明の香料担持吸着剤粒子を製造するためには、処理槽12内に、容器40に収容した吸着剤核粒子APをラインL9を介して処理槽12内に導入する。ジャケット22内に温度80℃以上、好ましくは温度100〜120℃のスチームを導入することにより、処理槽12内を加熱し、モータ26の駆動により、二重螺旋リボン回転翼14を回転させて吸着剤粒子を攪拌しながら、容器36に収容された液状の香気放出組成物を、送液ポンプP2の駆動によりラインL8を介してスプレーノズル34から処理槽12内に噴霧する。この噴霧中、吸着剤粒子の温度を70℃以下、好ましくは、60℃以下に維持することが好ましい。このような吸着剤粒子の温度は、処理槽12内に導入された液状の香気放出組成物中の水が、ジャケット22内に導入された80℃以上のスチームにより加熱されて蒸発する際、吸着剤粒子から水が奪う蒸発熱により維持することができる。
【0035】
このようにして製造される香料担持吸着剤粒子は、製造中に水分が揮発除去されるだけであり、製造中に吸着剤核粒子に適用された液状の香気放出組成物における水分以外の成分は、ほぼ全てが吸着剤核粒子に担持される。従って、吸着剤核粒子に適用される液状の香気放出組成物は、使用される吸着剤核粒子の重量の5〜20%、好ましくは5〜10%に相当する量の香料保持材を含み、かつ液状の香気放出組成物に含まれる香料保持材の重量の10〜50%に相当する量の香料を含む。なお、液状の香気放出組成物に含まれる香料保持材、特に膜形成材の一部の水溶液もしくは水分散液を、予め吸着剤核粒子に適用することができる。膜形成材の一部の水溶液もしくは水分散液の事前適用は、香料担持吸着剤粒子の製造初期における吸着剤核粒子の温度上昇を抑制し、また吸着剤からの微粉末の発生を抑制することができる。
【0036】
さて、本発明の香料担持吸着剤粒子は、初期状態において、吸着剤核粒子の固有の吸着能の50%以上に相当する吸着能、好ましくは、吸着剤核粒子の固有の吸着能の70%以上に相当する吸着能、より好ましくは、吸着剤核粒子の固有の吸着能の90%〜ほぼ100%に相当する吸着能を発揮し得る。ここで、初期状態とは、香料担持吸着剤粒子がシガレット主流煙と接触する前の状態をいう。吸着剤核粒子の固有の吸着能は、上に述べたように、シガレット主流煙中のアセトンを基準としたものである。すなわち、本発明の香料担持吸着剤粒子は、シガレット主流煙と接触するとすぐにシガレット主流煙中の成分を吸着することができる。香料担持吸着剤粒子がシガレット主流煙と接触するにつれ、香料担持吸着剤粒子の香気発生媒体中の香料保持材がシガレット主流煙中の極性成分、特に水分により、溶解し、次第に吸着能が増大する。いうまでもなく、蔵置中は、香料発生媒体から香料が放出されることはほとんどない。
【0037】
本発明の第2の側面によるシガレットフィルタは、本発明の香料担持吸着剤粒子を含むフィルタセクションを備える。そして、本発明の第3の側面によるフィルタ付きシガレットは、シガレットロッドと、前記シガレットロッドの一端に接続され、本発明のフィルタを備えるフィルタ付きシガレットが提供される。
【0038】
本発明によるシガレットフィルタは、通常のフィルタ素材例えばセルロースアセテート繊維のトウ(トリアセチン等の可塑剤により結着されている)に本発明の香料担持吸着剤粒子を分散させたフィルタセクションを含むことができる。このフィルタセクションの一端にいわゆるプレーンフィルタセクション(例えば、トリアセチン等の可塑剤により結着されたセルロースアセテートトウからなる)を接続することができる。あるいは、本発明によるシガレットフィルタは、離間して配置された2つのプレーンフィルタセクションと、これら2つのプレーンフィルタセクションの間の空間に充填された本発明の香料担持吸着剤粒子を含み得る。
【0039】
図2は、本発明の1つの態様に係るシガレットフィルタを備えたシガレット(フィルタ付きシガレット)50の概略断面図である。フィルタ付きシガレット50は、タバコ刻等のタバコ充填材521をシガレット巻紙522で巻装したシガレットロッド52を備える。シガレットロッド52は、通常のシガレットと同様のものである。
【0040】
シガレットロッド52の一端には、フィルタ54が付設されている。フィルタ54はシガレットロッド52の一端に直接接して設けられた香料担持吸着剤粒子入りフィルタセクション541と、主流煙の流れ方向に対しフィルタセクション541の下流側端に設けられたプレーンフィルタセクション542を備える。
【0041】
香料担持吸着剤粒子入りフィルタセクション541は、香料担持吸着剤粒子FCAを分散させた例えばセルロースアセテート繊維541aをフィルタ巻取紙541bで巻装したものであり、通常のチャコールフィルタと同様の手法により作製することができる。
【0042】
プレーンフィルタセクション542は、例えばセルロースアセテート繊維542aのトウをフィルタ巻取紙542bで巻装したものである。
【0043】
フィルタセクション541および542からなるフィルタ54は、通常のフィルタ付きシガレットと同様、チップペーパ56によりシガレットロッド52に取り付けられている。
【0044】
図3は、本発明の別の態様に係るシガレット用フィルタを備えたシガレット(フィルタ付きシガレット)60の概略断面図である。このフィルタ付きシガレット60において、シガレットロッド52にチップペーパ56により取り付けられたフィルタ62は、シガレットロッド52の一端に直接取り付けられた第1のプレーンフィルタセクション621と、この第1のプレーンフィルタセクション621から間隔を空けて設けられた第2のプレーンフィルタセクション622を備え、その全体が、フィルタ巻取紙66により巻装されている。第1および第2のプレーンフィルタセクション621および622は、
図2に示すプレーンフィルタセクションと同様の構成を有する。第1のプレーンフィルタセクション621と第2のプレーンフィルタセクション622との間の空間(キャビティ)64には、本発明の香料担持吸着剤粒子FCAが充填されている。
【実施例】
【0045】
<液状の香気放出組成物の調製>
下記表1に示す成分を同表1に示す割合で含む混合物を、乳化機(プライミクス社製ROBOMICS MARK II)により、7500rpmで、15分間乳化させた。このとき、混合物の温度が45℃を超えないように、乳化機の周りを水で冷却した。こうして、液状の香気放出組成物A〜Dを得た。
【0046】
なお、中鎖脂肪酸トリグリセリドとして、花王社製のココナードMTを用い、レシチンとして、日清オイリオ社製のLP−20Eを用い、シュガーエステルとして、三菱化学フーズ社製のP−1570を用いた。
【表1】
【0047】
<香料担持吸着剤粒子の調製>
実施例1
ここでは、大川原製作所製円錐型リボン混合/乾燥機リボコーンRM−50−SRを用いた(
図1参照)。活性炭(クラレケミカル社製クラレコールGGS−H28/70;平均粒径:0.4mm;BET比表面積:1700m
2/g)15kgと5重量%プルラン水溶液6kgを上記混合/乾燥機に投入し、ジャケット内に200kPaの圧力下にある温度120℃のスチームを循環させ、混合/乾燥機内の圧力を12.3kPaに設定し、活性炭を攪拌した。5分間攪拌を行った後、液状の香気放出組成物A7.5kgをスプレーノズルから混合/乾燥機内に60分間掛けて噴霧した後、5分間さらに攪拌乾燥を行った。香料担持吸着剤粒子を混合/混合/乾燥機から取り出し、速やかに連続流動造粒乾燥装置(大川原製作所製ミクスグラード0.5型)に入れ、3分間、活性炭粒子中の顕熱交換および除湿を行い、香料担持吸着剤粒子製品を得た。
【0048】
実施例2
液状の香気放出組成物Aの代わりに、液状の香気放出組成物Bを用いた以外は実施例1と同様の手順で香料担持吸着剤粒子製品を得た。
【0049】
実施例3
液状の香気放出組成物Aの代わりに、液状の香気放出組成物Cを用いた以外は実施例1と同様の手順で香料担持吸着剤粒子製品を得た。
【0050】
実施例4
液状の香気放出組成物Aの代わりに、液状の香気放出組成物Dを用いた以外は実施例1と同様の手順で香料担持吸着剤粒子製品を得た。
【0051】
<フィルタ付きシガレットの作製>
図3に示す構造のフィルタ付きシガレットを作製した。具体的には、フィルタ素材としてセルロースアセテート繊維トウを有するフィルタを備えた市販のフィルタ付きシガレット製品「ウィンストンライト」から、フィルタ素材であるセルロースアセテート繊維トウをピンセットで取り除いた後、その空洞部に、セルロースアセテート繊維トウ(長さ10mm;2.5Y/35000(すなわち、単繊度2.5デニール;フィラメント断面Y型;総繊度35000デニール))を充填し、実施例1〜4で得た香料担持吸着剤粒子30mg(シガレットロッドの軸方向の空間部64の長さ2mm)を充填し、最後にセルロースアセテート繊維トウ(長さ10mm;2.5Y/35000)を充填して、
図3に示す構造のフィルタ付きシガレットを作製した。また、実施例1〜4で得た香料担持吸着剤粒子の代わりに、香料を担持していない活性炭(クラレケミカル社製クラレコールGGS−H28/70)30mgをそのまま用いた以外は、上記と同様に、フィルタ付きシガレット(以下、対照シガレットという)を作製した。
【0052】
これら4種の本発明のフィルタ付きシガレットを喫煙したところ、主流煙中に香料からの香気が放出されていることを確認するとともに、対照のフィルタ付きシガレットに比べ、香味が補強されていることを確認した。これらの結果は、本発明の方法により、短時間の処理で、多量の香料を吸着剤核粒子に担持できたことを示す。
【0053】
比較例
活性炭に対し、エタノール中5重量%l−メントール溶液だけを噴霧した以外は、実施例1と同様に香料担持吸着剤粒子を調製した。この香料担持吸着剤粒子を用いて上記と同様にフィルタ付きシガレットを作製した。このフィルタ付きシガレットを喫煙したが、香料からの香気は認められなかった。
【0054】
実験例
実施例4で作製したフィルタ付きシガレットを吸煙し、主流煙中のアセトン吸着能を調べた。
【0055】
この実験では、シガレット主流煙中成分を捕捉するために、
図4に示す装置70を用いた。この装置70は、ケンブリッジフィルタ711(直径47mm)と、シガレットCIGを保持するタバコ主流煙流入ポート71aおよびタバコ主流煙流出ポート71bを備える粒状物質の捕捉器71を有する。さらに、装置70は、インピンジャー72を備える。インピンジャー72内には、タバコ主流煙中の気相成分を捕捉する薬液TAが収容される。本実験では、内部標準物質としてアネトール200ppmを含むメタノール10mLを薬液TAとして入れた。インピンジャー72は、捕捉薬液TAを冷温に維持するための冷媒RMを収容するデュアー瓶73内に収容されている。本実験では、ドライアイスとイソプロパノールの混合物を冷媒RMとして用い、実験中、捕捉薬液TAを−70℃以下の温度に維持した。粒状物質捕捉器71の流出ポート71bには、インピンジャー72内の薬液TA中に延びる導管74が接続されている。そして、自動喫煙器76の吸引ポート76aには、インピンジャー71内の、捕捉薬液TA上部の空間内に延びる導管75が接続されている。シガレットを着火し、自動喫煙器76を駆動すると、導管75を介する吸引によりインピンジャー72内が減圧され、それに伴い、タバコ主流煙は、捕捉器71内のケンブリッジフィルタ711を通過する。そのとき、タバコ主流煙中の粒状物質はケンブリッジフィルタ711で捕捉され、粒状物質が除去された主流煙が導管74を介して、インピンジャー72内の捕捉薬液TA内に導入され、バブリングが生じ、主流煙中の気相成分が捕捉薬液TAに捕捉される。
【0056】
本実験において、実施例4で作製したシガレットを捕捉器71にセットし、自動喫煙器76により、ISOの標準喫煙条件(1パフ:2秒間で35mLの吸煙、パフ間隔:58秒)で喫煙させた。喫煙終了後、インピンジャー72内の薬液を血清瓶に移し、その中に、粒状物質を捕捉したケンブリッジフィルタ711を入れ、250回/分で30分間振盪抽出した。この抽出液1mLをGC/MS分析用バイアルに入れ、以下の条件で主流煙中成分を分析した。
【0057】
主流煙中成分の分析条件:
・GC/MS:ヒューレット・パッカード製HP7890/5975
・カラム:DB−1701
・カラム流量:1.2mL/分
・昇温条件:60℃で5分間保持した後、5℃/分で160℃まで昇温し、10℃/分で250℃まで昇温し、30分間保持した。
【0058】
・インジェクション:スプリット比10:1;注入口220℃;流量12mL/分;総流量16.2mL/分
・MS条件:スキャンパラメータ33.0〜200.0;スレッショルド50;MSイオン源230℃;MS四重極150℃。
【0059】
同様の分析を、プレーンフィルタ付きシガレット(市販のフィルタ付きシガレット製品「ウィンストンライト」のシガレットロッドを有し、その一端にセルロースアセテート繊維トウ(長さ20mm;2.5Y/70000)からなるプレーンフィルタが接続されている;以下、基準シガレットという)および前記対照シガレットについても行った。
【0060】
実施例4のフィルタ付きシガレット、対照シガレットおよび基準シガレットの分析結果から、アセトンのピーク面積値をそれぞれ算出し、実施例4のフィルタ付きシガレットおよび対照シガレットについてのアセトンピーク面積値をそれぞれ基準シガレットについてのアセトンピーク面積値で除し、その値を100倍してアセトン低減率(%)を求め、そのアセトン低減率(%)を100%から減じてアセトン吸着率を算出した。その結果、対照シガレットについてのアセトン吸着率は、48%であり、実施例4のフィルタ付きシガレットについてのアセトン吸着率は、45%であった。この結果は、実施例4の香料担持吸着剤粒子が、吸着剤核粒子の固有の吸着能の約94%に相当する吸着能を有することを示す。すなわち、実施例4のフィルタ付きシガレットは、香料を担持していない活性炭を含む対照シガレットに比べて、吸着能はやや低下するものの、ほぼ同じ吸着能を示した。
【0061】
実施例1〜3で作製したフィルタシガレットも、実施例4のフィルタ付きシガレットと同様の吸着能を示した。
【0062】
参考例
活性炭を比表面積が700m
2/gおよび1000m
2/gの活性炭30mgに置き換えた以外は上記対照シガレットと同様の2種のフィルタ付きシガレットを作製した。これらシガレットについて上と同様にしてアセトン吸着率を調べたところ、前者のシガレットが23%であり、後者のシガレットが34%であった。このことから、比表面積が700m
2/g以上であれば、シガレット主流煙中の成分に対する吸着に効果があることがわかる。
【0063】
<担持された香料および香料保持材の量の測定>
実施例1〜4で得た香料担持粒子について、担持された香料の量および香料保持材の量を測定した。
【0064】
比較例の香料担持粒子を、先行技術文献(WO2008/072627)の例1〜3に従って調製し、調製された香料担持粒子について、担持された香料の量および香料保持材の量を同様に測定した。
【0065】
比較例の香料担持粒子は、下記のとおり調製した。
【0066】
比較例1(先行技術文献の例1)
予め調製したプルラン10重量%のプルラン水分散液に、コーヒーオイル2重量%を添加した。この混合液を、乳化機中で強攪拌(乳化機回転数2500rpm)し、香料分散液を調製した。他方、平均粒径250μmの炭酸カルシウム粒子100gを流動造粒乾燥機に入れ、75℃の温風を0.6m/秒の流速で吹き込みながら、速やかに上記香料分散液を間欠噴霧(噴霧1分後30分噴霧停止サイクルの繰り返し)し、合計10gの香料分散液を炭酸カルシウム粒子表面に噴霧し、乾燥した。その後、速やかに流動層内を室温まで冷却し、所望の香料ビーズを得た。
【0067】
比較例2(先行技術文献の例2)
平均粒径250μmの炭酸カルシウム粒子100gを流動造粒乾燥機に入れ、30℃の温風を1.0m/秒の流速で吹き込みながら、バニリンを添加したタバコ用香料1重量%とプルラン9重量%を含む香料混合水溶液を連続的に噴霧し、合計5gの混合水溶液を炭酸カルシウム粒子表面に噴霧し、乾燥した。その後、速やかに温風温度を室温まで下げ、0.4m/秒の流速で冷却し、所望の香料ビーズを得た。
【0068】
比較例3(先行技術文献の例3)
予め調製したプルラン10重量%のプルラン水分散液に、コーヒーオイル1重量%およびレシチン0.5重量%を添加した。この混合液を、乳化機中で強攪拌(乳化機回転数7500rpm、15分)し、香料分散液を調製した。他方、平均粒径250μm〜1.4mmの粉砕コーヒー豆粒子300gを転動流動造粒乾燥機(フロイント産業(株)製SFC−MINI)に入れ、底部回転目皿板を約500rpm、造粒防止用攪拌翼を約400rpmで回転させ、75℃の温風を0.6m/秒の流速で吹き込み、粉砕コーヒー豆粒子の流動層を形成した。この流動層へ、上記香料分散液を40℃に保温しながら、連続的に噴霧することにより、合計90gの香料分散液をコーヒー豆粒子表面に噴霧し、乾燥した。その後、速やかに温風温度を室温まで下げ、0.4m/秒の秒速で冷却し、所望の香料ビーズを得た。
【0069】
香料の量および香料保持材の量は、下記のとおり測定した。
【0070】
香料の測定:
香料担持粒子に、精製水・メタノール混液にて振とう抽出を行った。抽出液をガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)に供し、香料を測定した。
【0071】
香料保持材の測定:
香料担持粒子を秤量し(重量A)、粒子内水分の除去を目的として加熱乾燥した(乾燥後の重量B)。乾燥後の粒子に精製水を加え振とう抽出を行い、香料保持材を溶出した。抽出後の粒子をさらに加熱乾燥した(乾燥後の重量C)。重量Cと重量Aの差分を香料保持材量とした。
【0072】
測定結果を
図5に示す。
図5は、担持された香料の量および香料保持材の量を、香料担持粒子の総重量に対する割合(重量%)で示す。
図5は、本発明の香料担持粒子が、比較例の香料担持粒子よりも多量の香料を担持していることを示す。
【0073】
また、本発明の香料担持粒子は、比較例の香料担持粒子よりも短時間の処理で調製することが可能であった。