【実施例】
【0049】
以下、本発明を具体例により説明するが、本発明はそれらの具体例により限定されるものではない。
【0050】
<液状の香気放出組成物の調製>
下記表1に示す成分を同表1に示す割合で含む混合物を、乳化機(プライミクス社製ROBOMICS MARK II)により、7500rpmで、15分間乳化させた。このとき、混合物の温度が45℃を超えないように、乳化機の周りを水で冷却した。こうして、液状の香気放出組成物A〜Dを得た。
【0051】
なお、中鎖脂肪酸トリグリセリドとして、花王社製のココナードMTを用い、レシチンとして、日清オイリオ社製のLP−20Eを用い、シュガーエステルとして、三菱化学フーズ社製のP−1570を用いた。
【表1】
【0052】
<香料担持低吸着性粒子の調製>
実施例1
ここでは、大川原製作所製円錐型リボン混合/乾燥機リボコーンRM−50−VDを用いた(
図1参照)。ケイ酸カルシウム粒子(三和インセクティサイド社製サンワマルメ;平均粒径:1mm、BET比表面積700m
2/g未満)10kgと5重量%プルラン水溶液6kgを上記混合/乾燥機に投入し、ジャケット内に200kPaの圧力下にある温度120℃のスチームを循環させ、混合/乾燥機内の圧力を12.3kPaに設定し、ケイ酸カルシウム粒子を攪拌した。5分間攪拌を行った後、液状の香気放出組成物A5kgをスプレーノズルから混合/乾燥機内に40分間掛けて噴霧した後、20分間さらに攪拌乾燥を行った。香料担持ケイ酸カルシウム粒子を混合/乾燥機から取り出し、速やかに連続流動造粒乾燥装置(大川原製作所製ミクスグラード0.5型)に入れ、3分間、ケイ酸カルシウム粒子中の顕熱交換および除湿を行い、香料担持ケイ酸カルシウム粒子製品を得た。
【0053】
実施例2
液状の香気放出組成物Aの代わりに、液状の香気放出組成物Bを用いた以外は実施例1と同様の手順で香料担持ケイ酸カルシウム粒子製品を得た。
【0054】
実施例3
液状の香気放出組成物Aの代わりに、液状の香気放出組成物Cを用いた以外は実施例1と同様の手順で香料担持ケイ酸カルシウム粒子製品を得た。
【0055】
実施例4
液状の香気放出組成物Aの代わりに、液状の香気放出組成物Dを用いた以外は実施例1と同様の手順で香料担持ケイ酸カルシウム粒子製品を得た。
【0056】
<フィルタ付きシガレットの作製>
図3に示す構造のフィルタ付きシガレットを作製した。より具体的には、フィルタ素材としてセルロースアセテート繊維トウを有するフィルタを備えた市販のフィルタ付きシガレット製品「ウィンストンライト」から、セルロースアセテート繊維トウをピンセットで取り除いた後、新たに活性炭(クラレケミカル社製クラレコールGGS−H28/70)85mgを添加したセルロースアセテート繊維トウ(長さ12mm;8Y/29000(すなわち、単繊度8デニール;フィラメント断面Y型;総繊度29000デニール)、実施例1〜4で製造した香料担持ケイ酸カルシウム粒子製品42mg(シガレットロッドの軸方向の空洞部64の長さ47mm)を充填し、最後にセルロースアセテート繊維トウ(長さ11mm;2.5Y/35000)を充填して、
図3に示す構造のフィルタ付きシガレットを作製した。また、空洞部64に何も充填しない以外は、上記と同様に、対照のフィルタ付きシガレットを作製した。
【0057】
これら4種の本発明のフィルタ付きシガレットを喫煙したところ、主流煙中に香料からの香気が放出されていることを確認するとともに、対照のフィルタ付きシガレットに比べ、香味が補強されていることを確認した。これらの結果は、本発明の方法により、短時間の処理で、多量の香料を低吸着性核粒子に担持できたことを示す。
【0058】
<担持された香料および香料保持材の量の測定>
実施例1〜4で得た香料担持粒子について、担持された香料の量および香料保持材の量を測定した。
【0059】
比較例の香料担持粒子を、先行技術文献(WO2008/072627)の例1〜3に従って調製し、調製された香料担持粒子について、担持された香料の量および香料保持材の量を同様に測定した。
【0060】
比較例の香料担持粒子は、下記のとおり調製した。
【0061】
比較例1(先行技術文献の例1)
予め調製したプルラン10重量%のプルラン水分散液に、コーヒーオイル2重量%を添加した。この混合液を、乳化機中で強攪拌(乳化機回転数2500rpm)し、香料分散液を調製した。他方、平均粒径250μmの炭酸カルシウム粒子100gを流動造粒乾燥機に入れ、75℃の温風を0.6m/秒の流速で吹き込みながら、速やかに上記香料分散液を間欠噴霧(噴霧1分後30分噴霧停止サイクルの繰り返し)し、合計10gの香料分散液を炭酸カルシウム粒子表面に噴霧し、乾燥した。その後、速やかに流動層内を室温まで冷却し、所望の香料ビーズを得た。
【0062】
比較例2(先行技術文献の例2)
平均粒径250μmの炭酸カルシウム粒子100gを流動造粒乾燥機に入れ、30℃の温風を1.0m/秒の流速で吹き込みながら、バニリンを添加したタバコ用香料1重量%とプルラン9重量%を含む香料混合水溶液を連続的に噴霧し、合計5gの混合水溶液を炭酸カルシウム粒子表面に噴霧し、乾燥した。その後、速やかに温風温度を室温まで下げ、0.4m/秒の流速で冷却し、所望の香料ビーズを得た。
【0063】
比較例3(先行技術文献の例3)
予め調製したプルラン10重量%のプルラン水分散液に、コーヒーオイル1重量%およびレシチン0.5重量%を添加した。この混合液を、乳化機中で強攪拌(乳化機回転数7500rpm、15分)し、香料分散液を調製した。他方、平均粒径250μm〜1.4mmの粉砕コーヒー豆粒子300gを転動流動造粒乾燥機(フロイント産業(株)製SFC−MINI)に入れ、底部回転目皿板を約500rpm、造粒防止用攪拌翼を約400rpmで回転させ、75℃の温風を0.6m/秒の流速で吹き込み、粉砕コーヒー豆粒子の流動層を形成した。この流動層へ、上記香料分散液を40℃に保温しながら、連続的に噴霧することにより、合計90gの香料分散液をコーヒー豆粒子表面に噴霧し、乾燥した。その後、速やかに温風温度を室温まで下げ、0.4m/秒の秒速で冷却し、所望の香料ビーズを得た。
【0064】
香料の量および香料保持材の量は、下記のとおり測定した。
【0065】
香料の測定:
香料担持粒子に、精製水・メタノール混液にて振とう抽出を行った。抽出液をガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)に供し、香料を測定した。
【0066】
香料保持材の測定:
香料担持粒子を秤量し(重量A)、粒子内水分の除去を目的として加熱乾燥した(乾燥後の重量B)。乾燥後の粒子に精製水を加え振とう抽出を行い、香料保持材を溶出した。抽出後の粒子をさらに加熱乾燥した(乾燥後の重量C)。重量Cと重量Aの差分を香料保持材量とした。
【0067】
測定結果を
図6に示す。
図6は、担持された香料の量および香料保持材の量を、香料担持粒子の総重量に対する割合(重量%)で示す。
図6は、本発明の香料担持粒子が、比較例の香料担持粒子よりも多量の香料を担持していることを示す。
【0068】
また、本発明の香料担持粒子は、比較例の香料担持粒子よりも短時間の処理で調製することが可能であった。
【0069】
<核粒子のBET比表面積と香料担持粒子の吸着能との関係>
核粒子としてケイ酸カルシウムの代わりに活性炭(クラレケミカル社製クラレコールGGS−H28/70;平均粒径:0.4mm;BET比表面積:1700m
2/g)を用いて、香気放出組成物として表1の香気放出組成物Dを用いて、実施例1の香料担持ケイ酸カルシウム粒子の調製方法と同様の手法に従って、香料担持活性炭粒子を調製した。
【0070】
具体的には、香料担持活性炭粒子を下記のとおり調製した。
【0071】
調製には、大川原製作所製円錐型リボン混合/乾燥機リボコーンRM−50−SRを用いた(
図7参照)。活性炭(クラレケミカル社製クラレコールGGS−H28/70;平均粒径:0.4mm;BET比表面積:1700m
2/g)15kgと5重量%プルラン水溶液6kgを上記混合/乾燥機に投入し、ジャケット内に200kPaの圧力下にある温度120℃のスチームを循環させ、混合/乾燥機内の圧力を12.3kPaに設定し、活性炭を攪拌した。5分間攪拌を行った後、液状の香気放出組成物D7.5kgをスプレーノズルから混合/乾燥機内に60分間掛けて噴霧した後、5分間さらに攪拌乾燥を行った。香料担持活性炭粒子を混合/混合/乾燥機から取り出し、速やかに連続流動造粒乾燥装置(大川原製作所製ミクスグラード0.5型)に入れ、3分間、活性炭粒子中の顕熱交換および除湿を行い、香料担持活性炭粒子製品を得た。
【0072】
調製された香料担持活性炭粒子30mgを用いて、下記のとおり
図3に示す構造のフィルタ付きシガレットを作製した。具体的には、フィルタ素材としてセルロースアセテート繊維トウを有するフィルタを備えた市販のフィルタ付きシガレット製品「ウィンストンライト」から、フィルタ素材であるセルロースアセテート繊維トウをピンセットで取り除いた後、その空洞部に、セルロースアセテート繊維トウ(長さ10mm;2.5Y/35000(すなわち、単繊度2.5デニール;フィラメント断面Y型;総繊度35000デニール))を充填し、調製された香料担持活性炭粒子30mg(シガレットロッドの軸方向の空間部64の長さ2mm)を充填し、最後にセルロースアセテート繊維トウ(長さ10mm;2.5Y/35000)を充填して、
図3に示す構造のフィルタ付きシガレットを作製した。また、香料担持活性炭粒子の代わりに、香料を担持していない活性炭(クラレケミカル社製クラレコールGGS−H28/70)30mgをそのまま用いた以外は、上記と同様に、フィルタ付きシガレット(以下、対照シガレットという)を作製した。
【0073】
作製したフィルタ付きシガレットを吸煙し、主流煙中のアセトン吸着能を調べた。
【0074】
この実験では、シガレット主流煙中成分を捕捉するために、
図7に示す装置70を用いた。この装置70は、ケンブリッジフィルタ711(直径47mm)と、シガレットCIGを保持するタバコ主流煙流入ポート71aおよびタバコ主流煙流出ポート71bを備える粒状物質の捕捉器71を有する。さらに、装置70は、インピンジャー72を備える。インピンジャー72内には、タバコ主流煙中の気相成分を捕捉する薬液TAが収容される。本実験では、内部標準物質としてアネトール200ppmを含むメタノール10mLを薬液TAとして入れた。インピンジャー72は、捕捉薬液TAを冷温に維持するための冷媒RMを収容するデュアー瓶73内に収容されている。本実験では、ドライアイスとイソプロパノールの混合物を冷媒RMとして用い、実験中、捕捉薬液TAを−70℃以下の温度に維持した。粒状物質捕捉器71の流出ポート71bには、インピンジャー72内の薬液TA中に延びる導管74が接続されている。そして、自動喫煙器76の吸引ポート76aには、インピンジャー71内の、捕捉薬液TA上部の空間内に延びる導管75が接続されている。シガレットを着火し、自動喫煙器76を駆動すると、導管75を介する吸引によりインピンジャー72内が減圧され、それに伴い、タバコ主流煙は、捕捉器71内のケンブリッジフィルタ711を通過する。そのとき、タバコ主流煙中の粒状物質はケンブリッジフィルタ711で捕捉され、粒状物質が除去された主流煙が導管74を介して、インピンジャー72内の捕捉薬液TA内に導入され、バブリングが生じ、主流煙中の気相成分が捕捉薬液TAに捕捉される。
【0075】
本実験では、シガレットを捕捉器71にセットし、自動喫煙器76により、ISOの標準喫煙条件(1パフ:2秒間で35mLの吸煙、パフ間隔:58秒)で喫煙させた。喫煙終了後、インピンジャー72内の薬液を血清瓶に移し、その中に、粒状物質を捕捉したケンブリッジフィルタ711を入れ、250回/分で30分間振盪抽出した。この抽出液1mLをGC/MS分析用バイアルに入れ、以下の条件で主流煙中成分を分析した。
【0076】
主流煙中成分の分析条件:
・GC/MS:ヒューレット・パッカード製HP7890/5975
・カラム:DB−1701
・カラム流量:1.2mL/分
・昇温条件:60℃で5分間保持した後、5℃/分で160℃まで昇温し、10℃/分で250℃まで昇温し、30分間保持した。
【0077】
・インジェクション:スプリット比10:1;注入口220℃;流量12mL/分;総流量16.2mL/分
・MS条件:スキャンパラメータ33.0〜200.0;スレッショルド50;MSイオン源230℃;MS四重極150℃。
【0078】
同様の分析を、プレーンフィルタ付きシガレット(市販のフィルタ付きシガレット製品「ウィンストンライト」のシガレットロッドを有し、その一端にセルロースアセテート繊維トウ(長さ20mm;2.5Y/70000)からなるプレーンフィルタが接続されている;以下、基準シガレットという)および前記対照シガレットについても行った。
【0079】
香料担持活性炭粒子を含有するフィルタ付きシガレット、対照シガレットおよび基準シガレットの分析結果から、アセトンのピーク面積値をそれぞれ算出し、香料担持活性炭粒子を含有するフィルタ付きシガレットおよび対照シガレットについてのアセトンピーク面積値をそれぞれ基準シガレットについてのアセトンピーク面積値で除し、その値を100倍してアセトン低減率(%)を求め、そのアセトン低減率(%)を100%から減じてアセトン吸着率を算出した。
【0080】
その結果、対照シガレットについてのアセトン吸着率は、48%であり、香料担持活性炭粒子を含有するフィルタ付きシガレットについてのアセトン吸着率は、45%であった。この結果は、1700m
2/gのBET比表面積を有する活性炭を核粒子として用いて香料担持活性炭粒子をつくった場合、香料担持活性炭粒子が、核粒子の固有の吸着能の約94%に相当する吸着能を維持していることを示す。
【0081】
比表面積が1700m
2/gの活性炭(30mg)を、比表面積が700m
2/gおよび1000m
2/gの活性炭(30mg)に置き換えた以外は上記対照シガレットと同様の2種のフィルタ付きシガレットを作製した。これらシガレットについて上と同様にしてアセトン吸着率を調べたところ、前者のシガレットが23%であり、後者のシガレットが34%であった。
【0082】
以上の結果から、比表面積が700m
2/g以上の核粒子は、シガレット主流煙中の成分に対して高い吸着能を示すが、比表面積が700m
2/g未満の核粒子は、シガレット主流煙中の成分に対して低い吸着能を示すことがわかる。