【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「異種無線システム動的利用による信頼性向上技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算手段は、前記複数のアクセスカテゴリのいずれかにおいて、前記検出された端末数が前回のパケット送信時の端末数から変動しているとき、前記検出された端末数の増加に伴って大きくなり、かつ、前記検出された端末数の減少に伴って小さくなるようにコンテンションウィンドを演算する第2の演算処理を前記複数のアクセスカテゴリの全てについて実行し、前記複数のアクセスカテゴリの全てにおいて、前記検出された端末数が前回のパケット送信時の端末数から変動していないとき、前記検出されたチャネル占有率に基づいて前記第1の演算処理を前記複数のアクセスカテゴリの全てについて実行する、請求項1に記載の無線装置。
前記通信手段は、前記第2の帯域から前記第1の帯域を減算した割当可能帯域がトラフィックの要求帯域よりも大きいとき、前記第1のコンテンションウィンドまたは前記第2のコンテンションウィンドを用いてパケットを送受信する通信処理を前記複数のアクセスカテゴリの全てについて実行する、請求項1または請求項2に記載の無線装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態による無線装置の概略図である。
図1を参照して、この発明の実施の形態による無線装置10は、アンテナ1と、通信手段2と、検出手段3と、制御手段4と、バッファ5〜8と、分類手段9と、アプリケーション11と、アドミッション制御手段12とを備える。
【0016】
通信手段2は、優先度が相互に異なるアクセスカテゴリAC
0〜AC
3に属するパケットを優先度に従ってそれぞれバッファ5〜8から取り出す。また、通信手段2は、各アクセスカテゴリAC
i(i=0,1,2,3)におけるコンテンションウィンドCW
iを制御手段4から受ける。そして、通信手段2は、コンテンションウィンドCW
iを用いて各アクセスカテゴリAC
iにおけるチャネルにアクセスし、バッファ5〜8から取り出したパケットをアンテナ1を介して送信する。
【0017】
また、通信手段2は、アンテナ1を介してパケットを受信し、その受信したパケットをアプリケーション11へ出力する。
【0018】
検出手段3は、通信手段2が送受信するパケットに基づいて、各アクセスカテゴリAC
iにおいてパケットを送受信する端末数N
iを検出する。パケットは、各アクセスカテゴリAC
iを示す記号、および送信元のアドレスを含むので、検出手段3は、通信手段2が送受信したパケットの各アクセスカテゴリAC
iを示す記号および送信元のアドレスを検出することによって、端末数N
iを検出できる。
【0019】
また、検出手段3は、通信手段2が単位時間当たりに送受信するパケットの個数を各アクセスカテゴリAC
iにおける使用帯域UB
iとして検出する。
【0020】
更に、検出手段3は、通信手段2が送受信するパケットに基づいて、各アクセスカテゴリAC
iにおける平均ペイロード長P
i、およびネットワーク全体の平均ペイロード長Pを検出する。
【0021】
更に、検出手段3は、通信手段2がチャネルにアクセスする時間を計測することによって、単位時間においてチャネルがビジーまたはセンシング状態である時間的な割合を示すチャネル占有率(ATR:Air Time Ratio)を検出する。この場合、チャネルにアクセスする時間は、各アクセスカテゴリAC
0〜AC
3によって異なる。従って、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3は、優先度が相互に異なるアクセスカテゴリである。
【0022】
そして、検出手段3は、端末数N
i、使用帯域UB
i、平均ペイロード長P
i、平均ペイロード長Pおよびチャネル占有率ATRを制御手段4へ出力する。
【0023】
制御手段4は、端末数N
i、使用帯域UB
i、平均ペイロード長P
i、平均ペイロード長Pおよびチャネル占有率ATRを検出手段3から受ける。そして、制御手段4は、端末数N
i、使用帯域UB
i、平均ペイロード長P
i、平均ペイロード長Pおよびチャネル占有率ATRに基づいて、後述する方法によって、各アクセスカテゴリAC
iにおける通信帯域を有効に活用し、かつ、優先度制御が正確に行われるように各アクセスカテゴリAC
iにおけるコンテンションウィンドCW
iを演算し、その演算したコンテンションウィンドCW
iを通信手段2へ出力する。
【0024】
また、制御手段4は、アドミッション制御手段12からの要求に応じて、各アクセスカテゴリAC
iにおける割当可能帯域RSVB
iを後述する方法によって演算し、その演算した割当可能帯域RSVB
iをアドミッション制御手段12へ出力する。
【0025】
バッファ5〜8は、それぞれ、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3に対応して設けられる。アクセスカテゴリAC
0は、例えば、バックグラウンドのアクセスカテゴリであり、アクセスカテゴリAC
1は、例えば、ベストエフォートのアクセスカテゴリであり、アクセスカテゴリAC
2は、例えば、動画のアクセスカテゴリであり、アクセスカテゴリAC
3は、例えば、音声のアクセスカテゴリである。そして、アクセスカテゴリAC
3が最も優先度が高く、アクセスカテゴリAC
2が2番目に優先度が高く、アクセスカテゴリAC
1が3番目に優先度が高く、アクセスカテゴリAC
0が最も優先度が低い。
【0026】
バッファ5〜8は、それぞれ、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3に属するパケットを分類手段9から受け、その受けたパケットを一時的に保存する。そして、バッファ5〜8は、通信手段2からの要求に応じて、その保存したパケットを通信手段2へ出力する。
【0027】
分類手段9は、アプリケーション11からパケットを受け、その受けたパケットをアクセスカテゴリAC
0〜AC
3に分類する。そして、分類手段9は、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3に属するパケットをそれぞれバッファ5〜8に格納する。
【0028】
アプリケーション11は、パケットを生成する。そして、アプリケーション11は、自己主導のアドミッション制御、またはアドミッション制御手段12主導のアドミッション制御に従ってパケットの送信が許可されると、その生成したパケットを分類手段9へ出力する。また、アプリケーション11は、通信手段2からパケットを受ける。
【0029】
なお、アプリケーション11主導のアドミッション制御およびアドミッション制御手段12主導のアドミッション制御については、後述する。
【0030】
アドミッション制御手段12は、MAC層に設けられ、後述する自己主導のアドミッション制御を行う。この場合、アドミッション制御手段12は、各アクセスカテゴリAC
iにおける割当可能帯域RSVB
iを制御手段4へ問合せ、割当可能帯域RSVB
iを制御手段4から受ける。
【0031】
[コンテンションウィンドの制御]
各アクセスカテゴリAC
iにおけるコンテンションウィンドCW
iを制御する方法について説明する。
【0032】
制御手段4は、総スループットの最大化とアクセスカテゴリAC
i間の優先度制御とを同時に行うように各アクセスカテゴリAC
iにおけるコンテンションウィンドCW
iを演算する。
【0033】
優先度制御は、各アクセスカテゴリAC
iにおいて決められた帯域割合F
iに基づいて行われる。
【0034】
帯域割合F
iは、固定値方式または変動値方式によって決定される。帯域割合F
iが固定値方式によって決定される場合、制御手段4は、各アクセスカテゴリAC
iにおける帯域割合F
iを予め保持している。
【0035】
例えば、アクセスカテゴリAC
1〜AC
3に属するパケットを送受信する場合、アクセスカテゴリAC
1における帯域割合F
1は、1/7と予め決定されており、アクセスカテゴリAC
2における帯域割合F
2は、2/7と予め決定されており、アクセスカテゴリAC
3における帯域割合F
3は、4/7と予め決定されている。
【0036】
このように、帯域割合F
1〜F
3は、アクセスカテゴリAC
1〜AC
3の優先度に応じて予め決定されている。即ち、帯域割合F
1〜F
3は、アクセスカテゴリAC
1、アクセスカテゴリAC
2、およびアクセスカテゴリAC
3の順で優先度が高くなるに従って、大きくなるように予め決定されている。
【0037】
帯域割合F
iが変動値方式によって決定される場合、制御手段4は、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3を帯域確保が可能なアクセスカテゴリRACと、帯域確保が不可能なアクセスカテゴリNACとに分類する。そして、制御手段4は、アプリケーションの開始時に次式に従って帯域割合F
iを演算する。
【0039】
制御手段4は、アクセスカテゴリRACに分類されたアクセスカテゴリAC
iにおける帯域割合F
iを演算する場合、アプリケーション11から要求帯域RBを受け、その受けた要求帯域RBと、ネットワーク全体の帯域Capacityとを式(1)の上段の式に代入して帯域割合F
iを演算する。なお、制御手段4は、ネットワーク全体の帯域Capacityを予め保持している。
【0040】
また、制御手段4は、アクセスカテゴリNACに分類されたアクセスカテゴリAC
iにおける帯域割合F
iを式(1)の下段の式によって演算する。即ち、制御手段4は、アクセスカテゴリRACに割り当てられていない残りの帯域を割り当てることによってアクセスカテゴリNACに分類されたアクセスカテゴリAC
iにおける帯域割合F
iを演算する。なお、FNAC
iは、アクセスカテゴリNAC内での帯域割合を表し、予め決定されている。従って、制御手段4は、FNAC
iを予め保持している。
【0041】
このように、制御手段4は、固定値方式または変動値方式を用いて各アクセスカテゴリAC
iにおける帯域割合F
iを決定する。
【0042】
制御手段4は、各アクセスカテゴリAC
iにおける帯域割合F
iを決定すると、その決定した帯域割合F
iと、各アクセスカテゴリAC
iにおける端末数N
iとを次式に代入してアクセスカテゴリAC
iの単一端末に関する相対チャネルアクセス頻度ρ
iを演算する。
【0044】
式(2)において、F
kは、各アクセスカテゴリAC
k(k=0,1,2,3)における帯域割合であり、N
kは、各アクセスカテゴリAC
kにおける端末数である。また、式(2)においては、端末当たりの最も狭い帯域(=端末当たりの最も少ないチャネルアクセス回数)に対するチャネルアクセス頻度を表すためにMIN(F
k/N
k)を分母に用いた。即ち、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3のうちで、端末当たりの最も少ないチャネルアクセス回数を基準値として各アクセスカテゴリAC
iにおける単一端末当たりのチャネルアクセス回数を表すためにMIN(F
k/N
k)を式(2)の分母に用いた。
【0045】
更に、式(2)におけるα
iは、チャネル使用状況によって制御されるパラメータである。
【0046】
制御手段4は、式(2)を用いて単一端末の相対チャネルアクセス頻度ρ
iを演算すると、その演算した相対チャネルアクセス頻度ρ
iと、アクセスカテゴリAC
i毎の端末数N
iとを次式に代入してバーチャル端末数VNを演算する。
【0048】
なお、式(3)において、mは、アクセスカテゴリAC
iの個数を表し、この発明の実施の形態においては、m=4である。
【0049】
このバーチャル端末数VNは、アクセスカテゴリAC
iの全てにおいて全てのチャネルにアクセスする端末の個数を表す。
【0050】
制御手段4は、式(3)を用いてバーチャル端末数VNを演算すると、その演算したバーチャル端末数VNと、単一パケットの送信に要する平均時間Tとを次式に代入してコンテンションウィンドCW
iの基準値CWrefを演算する。
【0052】
なお、式(4)において、σは、スロット長であり、予め決定されている。従って、制御手段4は、スロット長σを予め保持している。
【0053】
図2は、単一パケットの送信に要する時間の概念図である。
図2を参照して、平均時間Tは、データパケットおよびACKパケットの送信時間と、MACが定める時間AIFS,SIFSとの和である。なお、RTS/CTSハンドシェークが行われる場合、RTS,CTSの送信時間もTに含まれる。
【0054】
データフレームは、プリアンブル(Preamble)、MACヘッダ(MAC header),パケット(packet)およびFCSからなる。そして、プリアンブル(Preamble)は、固定レートで送信され、その他の部分は、任意のデータレートで送信される。適応レート制御を行うシステムにおいては、データレートは、リンク品質等に応じて決定されるレートである。
【0055】
一方、ACKフレームも、プリアンブル(Preamble)、およびACKボディー(Addr等およびFCS)からなる。そして、プリアンブル(Preamble)は、固定レートで送信され、ACKボディーは、任意のデータレートで送信される。
【0056】
プリアンブル(Preamble)等の伝送レートをTxPhyRateとし、データフレームの伝送レートをTxDataRateとし、ACKフレームの伝送レートをTxACKRateとすると、時間Tは、次式によって表される。
【0058】
なお、式(5)において、L
Hは、MAC headerの長さであり、Pは、packetの長さである。
【0059】
一般的には、TxPhyRate、TxACKRate、PrLength、L
H、FCSおよびACKは、固定の値を取る。従って、無線装置10は、データ長(P)とTxDataRateとをフレーム送受信時に監視することによって平均時間Tを容易に演算できる。
【0060】
制御手段4は、式(5)を用いて平均時間Tを演算し、その演算した平均時間Tと、バーチャル端末数VNとを式(4)に代入して基準値CWrefを演算する。
【0061】
そうすると、制御手段4は、基準値CWrefと、式(2)を用いて演算した相対チャネルアクセス頻度ρ
iとを次式に代入して各アクセスカテゴリAC
iにおけるコンテンションウィンドCW
iを演算する。
【0063】
なお、式(6)において、n
kは、各アクセスカテゴリAC
iにおける端末数である。
【0064】
ここで、式(2)におけるパラメータα
iについて説明する。全てのアクセスカテゴリAC
0〜AC
3において、送信するパケットが常に存在する場合、即ち、全てのアクセスカテゴリAC
0〜AC
3が飽和状態である場合、式(2)のα
iは、α
i=1に設定される。これによって、チャネルは、最も有効に利用されるとともに、アクセスカテゴリAC
i間の優先度制御が実現される。
【0065】
一方、任意のアクセスカテゴリAC
iが非飽和状態である場合(即ち、トラフィックの生成量が帯域割合F
i以下である場合)、チャネルは、最も有効に利用されない恐れがある。これは、他のアクセスカテゴリAC
jが飽和状態であっても、非飽和状態のアクセスカテゴリAC
iのために、割り当てた帯域の一部が空いてしまうからである。このような場合、非飽和状態のアクセスカテゴリAC
iに必要な帯域だけを与え、残りの帯域をその他のアクセスカテゴリAC
j(=飽和状態のアクセスカテゴリ)に使用させることによって、チャネルが最大限に有効利用される。
【0066】
そこで、この発明の実施の形態においては、式(2)におけるα
iを制御することによって、チャネルを最大限に有効に利用する。
【0067】
ここで、α
iの具体的な制御方法について説明する前に、各アクセスカテゴリAC
iに割り当てた帯域OB
iの演算方法について説明する。
【0068】
帯域OB
iは、チャネルキャパシティCapacityと、帯域割合F
iとを用いて次式によって演算される。
【0070】
式(7)において、Kは、K=(T/(2σ))
1/2を満たす定数である。
【0071】
制御手段4は、定数Kを予め保持している。そして、制御手段4は、検出手段3から受けた平均ペイロード長Pと、予め保持しているスロット長σおよび定数Kと、式(1)を用いて演算した帯域割合F
iと、式(5)を用いて演算した平均時間Tとを式(7)に代入して割当帯域OB
iを演算する。
【0072】
α
iの具体的な制御方法について説明する。制御手段4は、周期的またはパケットの送受信時にアクセスカテゴリAC
i毎の端末数N
iおよびチャネル占有率ATRに基づいて各アクセスカテゴリAC
iのα
iを決定する。
【0073】
制御手段4は、任意のアクセスカテゴリAC
iの端末数N
iがα
iの決定時に変動(上下)した場合、各アクセスカテゴリAC
iのα
iをα
i=1に設定する。これは、ネットワークの構成(端末数)の変動によってチャネル状態が変動するとみなし、コンテンションウィンドCW
iを端末数N
iのみに基づいて決定するためである。
【0074】
一方、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3における端末数N
0〜N
3の少なくとも1つが変動していない場合、制御手段4は、チャネル占有率ATRに基づいてα
iを決定する。より具体的には、チャネル占有率ATRが基準値ATRminよりも小さい場合、制御手段4は、チャネルが有効に使用されていないと判断し、実際に使用している帯域UB
iが割り当てた帯域OB
iよりも小さいアクセスカテゴリAC
iに対して、“1”よりも小さい値からなるα
iを設定することによって、割り当てる帯域を減少させる。即ち、制御手段4は、α
i=MIN(UB
i/OB
i,1)によってα
iを決定する。この場合、帯域UB
iは、帯域OB
iよりも小さいので、α
iは、“1”よりも小さい値からなる。
【0075】
なお、基準値ATRminは、1つのアクセスカテゴリにおいて実際に使用されている帯域UB
iが1つのアクセスカテゴリに割り当てられた帯域OB
iよりも小さいことを示す基準値である。そして、基準値ATRminは、例えば、80%からなる。
【0076】
一方、チャネル占有率ATRが基準値ATRmax(ATRmax>ATRmin)よりも大きい場合、制御手段4は、UB
i<OB
iであるアクセスカテゴリAC
iに対してα
iの値を大きくする。即ち、制御手段4は、α
i=MIN(C×UB
i/OB
i,1)によってα
iを決定する。定数Cは、“1”よりも大きい定数である。α
iがα
i=MIN(C×UB
i/OB
i,1)によって決定されるのは、前回のα
iの設定時に非飽和状態であったアクセスカテゴリAC
iのトラフィック量が増加したことに対応して正しい優先度制御が行われるようにするためである。
【0077】
なお、ATRmaxは、実際に使用されている帯域UB
iを用いて送信可能なパケット数よりも多くのパケットが生成されていることを示す基準値であり、例えば、88%に設定される。
【0078】
[アドミッション制御]
1台の無線装置に割り当てられる帯域は、OB
i/N
iである。従って、端末数N
iの増加に伴って単一の無線装置の使用帯域が減少する。そこで、アクセスカテゴリAC
iが音声および動画のような品質要求が厳しいリアルタイムのトラフィックである場合、端末数N
iが増えると、全トラフィックが品質要求を満たせないことが予想される。
【0079】
そこで、この発明の実施の形態においては、端末数N
iを制御することによって、アプリケーションの品質を保証する。より具体的には、P長のデータパケットがI時間間隔で生成される場合、P/Iの帯域が要求される。従って、P/Iの帯域を要求するアプリケーションの品質要求を満たし、更に、同一アクセスカテゴリで既に通信中の他のアプリケーションの品質を劣化させないためには、割当可能帯域RSVB
iが要求帯域P/Iよりも大きい場合(RSVB
i>P/I)にのみ該当のアプリケーションを開始させる必要がある。
【0080】
制御手段4は、帯域割当F
iが固定値からなる場合、式(8)によって割当可能帯域RSVB
iを演算し、帯域割当F
iが変動値からなる場合、式(9)によって割当可能帯域RSVB
iを演算する。
【0083】
(I)MAC層主導のアドミッション制御
アドミッション制御がMAC層主導で行われる場合、アプリケーション11は、アクセスカテゴリAC
iの要求帯域P/Iを演算し、その演算した要求帯域P/Iをアドミッション制御手段12へ出力する。アドミッション制御手段12は、要求帯域P/Iをアプリケーション11から受けると、割当可能帯域RSVB
iの問合信号を制御手段4へ出力する。制御手段4は、問合信号に応じて、式(8)または式(9)を用いて割当可能帯域RSVB
iを演算し、その演算した割当可能帯域RSVB
iをアドミッション制御手段12へ出力する。
【0084】
アドミッション制御手段12は、割当可能帯域RSVB
iを制御手段4から受けると、RSVB
i>P/Iであるか否かを判定する。そして、アドミッション制御手段12は、RSVB
i>P/Iであると判定したとき、許可信号を生成してアプリケーション11へ出力する。一方、アドミッション制御手段12は、RSVB
i>P/Iでないと判定したとき、拒否信号を生成してアプリケーション11へ出力する。
【0085】
アプリケーション11は、許可信号をアドミッション制御手段12から受けると、アクセスカテゴリAC
iに属するパケットを生成して分類手段9へ出力する。
【0086】
一方、アプリケーション11は、拒否信号をアドミッション制御手段12から受けると、アクセスカテゴリAC
iに属するパケットの通信を停止するか、またはアドミッション制御が要求されないアクセスカテゴリNACで送信を開始する。
【0087】
(II)アプリケーション主導のアドミッション制御
アドミッション制御がアプリケーション主導で行われる場合、アプリケーション11は、割当可能帯域RSVB
iの問合信号をアドミッション制御手段12へ出力する。アドミッション制御手段12は、割当可能帯域RSVB
iの問合信号をアプリケーション11から受けると、上述した方法によって制御手段4から割当可能帯域RSVB
iを受ける。そして、アドミッション制御手段12は、その受けた割当可能帯域RSVB
iをアプリケーション11へ出力する。
【0088】
その後、アプリケーション11は、アドミッション制御手段12から割当可能帯域RSVB
iを受けると、アクセスカテゴリAC
iの要求帯域P/Iを演算し、RSVB
i>P/Iであるか否かを判定する。そして、アプリケーション11は、RSVB
i>P/Iであると判定したとき、アクセスカテゴリAC
iに属するパケットを生成して分類手段9へ出力する。
【0089】
一方、アプリケーション11は、RSVB
i>P/Iでないと判定したとき、アクセスカテゴリAC
iに属するパケットの通信を停止するか、またはアドミッション制御が要求されないアクセスカテゴリNACで送信を開始する。
【0090】
上述したMAC主導のアドミッション制御およびアプリケーション主導のアドミッション制御のいずれにおいても、アプリケーション11は、RSVB
i>P/Iであると判定されたとき、パケットを生成して分類手段9へ出力し、通信手段2は、制御手段4から受けたコンテンションウィンドCW
iを用いてチャネルにアクセスし、バッファ5〜8からパケットを取り出して送信する。即ち、通信手段2は、RSVB
i>P/Iであると判定されたとき、制御手段4から受けたコンテンションウィンドCW
iを用いてチャネルにアクセスし、バッファ5〜8からパケットを取り出して送信する。
【0091】
従って、通信手段2は、一般的には、割当可能帯域RSVB
iがトラフィックの要求帯域P/Iよりも大きいとき、コンテンションウィンドCW
iを用いてパケットを送受信する通信処理を複数のアクセスカテゴリの全てについて実行する。
【0092】
図3は、
図1に示す無線装置10における通信方法を説明するためのフローチャートである。
【0093】
図3を参照して、無線装置10における通信動作が開始されると、アクセスカテゴリAC
iの割当可能帯域RSVB
iおよび要求帯域P/Iが演算される(ステップS1)。
【0094】
そして、RSVB
i>P/Iであるか否かが判定される(ステップS2)。ステップS2において、RSVB
i>P/Iでないと判定されたとき、一連の動作は、終了する。
【0095】
一方、ステップS2において、RSVB
i>P/Iであると判定されたとき、無線装置10の制御手段4は、全てのアクセスカテゴリAC
0〜AC
3の全てのα
0〜α
3を決定する(ステップS3)。
【0096】
そして、制御手段4は、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3の帯域割合F
0〜F
3を上述した方法によって演算する。その後、制御手段4は、帯域割合F
0〜F
3、α
0〜α
3、および端末数N
0〜N
3を式(2)に代入して相対チャネルアクセス頻度ρ
0〜ρ
3を演算する。
【0097】
そうすると、制御手段4は、その演算した相対チャネルアクセス頻度ρ
0〜ρ
3、平均時間T、スロット長σ、および端末数n
kを式(6)に代入してアクセスカテゴリAC
0〜AC
3のコンテンションウィンドCW
0〜CW
3を演算する。即ち、制御手段4は、α
0〜α
3を用いてアクセスカテゴリAC
0〜AC
3のコンテンションウィンドCW
0〜CW
3を演算する。(ステップS4)。
【0098】
そして、制御手段4は、その演算したコンテンションウィンドCW
0〜CW
3を通信手段2へ出力し、通信手段2は、制御手段4から受けたコンテンションウィンドCW
0〜CW
3を用いてチャネルにアクセスし、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3に属するパケットをそれぞれバッファ5〜8から取り出して送信する(ステップS5)。これによって、一連の動作は、終了する。
【0099】
なお、ステップS1,S2は、上述したMAC層主導のアドミッション制御またはアプリケーション主導のアドミッション制御のいずれかによって実行される。
【0100】
また、
図3に示すフローチャートは、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3の全てについて定期的またはパケットの送信時に実行される。
【0101】
図4は、
図3に示すステップS3の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0102】
図4を参照して、
図3に示すステップS2において、RSVB
i>P/Iであると判定されると、制御手段4は、任意のアクセスカテゴリAC
iの端末数N
iに変動があるか否かを判定する(ステップS31)。
【0103】
ステップS31において、任意のアクセスカテゴリAC
iの端末数N
iに変動があると判定されたとき、制御手段4は、α
0=α
1=α
2=α
3=1を設定する(ステップS32)。
【0104】
一方、ステップS31において、任意のアクセスカテゴリAC
iの端末数N
iに変動がないと判定されたとき、制御手段4は、チャネル占有率ATRが基準値ATRminよりも小さいか否かを更に判定する(ステップS33)。
【0105】
ステップS33において、チャネル占有率ATRが基準値ATRminよりも小さいと判定されたとき、制御手段4は、α
i=MIN(UB
i/OB
i,1)によってα
0〜α
3を決定する(ステップS34)。
【0106】
一方、ステップS33において、チャネル占有率ATRが基準値ATRminよりも小さくないと判定されたとき、制御手段4は、チャネル占有率ATRが基準値ATRmax以上であるか否かを更に判定する(ステップS35)。
【0107】
ステップS35において、チャネル占有率ATRが基準値ATRmax以上であると判定されたとき、制御手段4は、α
i=MIN(C×UB
i/OB
i,1),C>1によってα
0〜α
3を決定する(ステップS36)。
【0108】
一方、ステップS35において、チャネル占有率ATRが基準値ATRmax以上でないと判定されたとき、制御手段4は、α
0〜α
3の値を変更せずに、前回に決定した値を維持する(ステップS37)。
【0109】
そして、ステップS32,S34,S36,S37のいずれかの後、一連の動作は、
図3に示すステップS4へ移行する。
【0110】
ステップS31においては、無線装置10が起動されたとき、任意のアクセスカテゴリAC
iの端末数N
iに変動があると判定される。従って、
図4に示すフローチャートが最初に実行される場合、通常、α
iは、“1”に設定される。また、ステップS31において、任意のアクセスカテゴリAC
iの端末数N
iに変動があると判定される限り、α
0〜α
3は、“1”に設定される。
【0111】
これは、上述したように、無線装置10を含むネットワークの構成(端末数)の変動によってチャネル状態が変動したとみなし、コンテンションウィンドCW
0〜CW
3を端末数のみによって決定するためである。
【0112】
ステップS31において、任意のアクセスカテゴリAC
iの端末数N
iに変動がないと判定されたとき、チャネル占有率ATRに基づいてα
0〜α
3が決定される。この場合、チャネル占有率ATRが基準値ATRminよりも小さいとき、α
0〜α
3は、α
i=MIN(UB
i/OB
i,1)によって決定される(ステップS34参照)。
【0113】
基準値ATRminは、上述したように、1つのアクセスカテゴリにおいて実際に使用されている帯域UB
iが1つのアクセスカテゴリに割り当てられた帯域OB
iよりも小さいことを示すので、ATR<ATRminが成立する場合、UB
i<OB
iである。従って、UB
i/OB
iは、“1”よりも小さくなり、α
i(i=0〜3)は、“1”よりも小さい値に設定される。その結果、式(2)により演算される相対チャネルアクセス頻度ρ
i(i=0〜3)は、前回の値よりも小さくなり、コンテンションウィンドCW
i(i=0〜3)は、前回の値よりも大きくなる。従って、アクセスカテゴリAC
i(i=0〜3)に属するパケットを送信するときにチャネルにアクセスする割合が減少する。そして、アクセスカテゴリAC
iに割り当てられた帯域OB
iのうち、実際に使用されていない帯域が他のアクセスカテゴリに割り当てられる。その結果、スループットを向上できる。
【0114】
ステップS34において決定されたα
0〜α
3を用いてコンテンションウィンドCW
0〜CW
3が演算される場合、コンテンションウィンドCW
0〜CW
3は、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3の端末数n
kが増加すれば大きくなり、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3の端末数n
kが減少すれば小さくなるように演算される(式(6)参照)。そして、パケットの衝突は、コンテンションウィンドCW
i(i=0〜3)が大きくなれば抑制され、コンテンションウィンドCW
i(i=0〜3)が小さくなれば増加する。従って、ステップS34において決定されたα
0〜α
3を用いてコンテンションウィンドCW
0〜CW
3を演算し、その演算したコンテンションウィンドCW
0〜CW
3を用いてパケットを送受信することは、無線装置の個数(端末数)の増加によるパケット衝突を抑制し、スループットを向上させることに相当する。
【0115】
また、ATRmaxは、上述したように、実際に使用されている帯域UB
iを用いて送信可能なパケット数よりも多くのパケットが生成されていることを示す基準値である。従って、ステップS35において、ATR≧ATRmaxであると判定されたとき、α
i=MIN(C×UB
i/OB
i,1),C>1によってα
0〜α
3の値を前回の値よりも大きくする(ステップS36参照)。その結果、コンテンションウィンドCW
0〜CW
3は、前回の値よりも小さくなり、生成されたより多くのパケットを送信可能になる。つまり、前回のα
0〜α
3の設定によって非飽和状態であったアクセスカテゴリAC
0〜AC
3のトラフィックの変動(一般的には、増加)に対応した正しい優先度制御が行われることになる。
【0116】
従って、ステップS36において決定されたα
0〜α
3を用いてコンテンションウィンドCW
0〜CW
3を演算し、その演算したコンテンションウィンドCW
0〜CW
3を用いてパケットを送受信することは、優先度制御を正確に行いながらスループットを向上させることに相当する。
【0117】
更に、ステップS35において、ATR≧ATRmaxでないと判定されたとき、即ち、ATRmin≦ATR<ATRmaxであるとき、α
0〜α
3は、変更されない(ステップS37参照)。この場合、チャネルが十分に有効利用されており、また、優先度制御も行なわれていると判定することにしたものである。
【0118】
図5は、
図3に示すステップS3の他の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0119】
図5に示すフローチャートは、
図4に示すフローチャートのステップS31,S32をステップS30に代えたものであり、その他は、
図4に示すフローチャートと同じである。
【0120】
図5を参照して、
図3に示すステップS2において、RSVB
i>P/Iであると判定されると、制御手段4は、α
0=α
1=α
2=α
3=1を設定する(ステップS30)。その後、上述したステップS33〜ステップS37が実行される。
【0121】
上述したように、
図4に示すステップS32は、ステップS31において、任意のアクセスカテゴリAC
iの端末数N
iに変動があると判定されたときに実行され、α
0=α
1=α
2=α
3=1に設定される。そして、無線装置10が起動されたとき、任意のアクセスカテゴリAC
iの端末数N
iに変動があると判定される。
【0122】
そこで、
図5に示すフローチャートにおいては、ステップS30において、α
0=α
1=α
2=α
3=1に設定し、チャネル占有率ATRに基づいてα
iを制御することにしたものである。
【0123】
図5に示すフローチャートに従ってα
iを決定しても、ATR<ATRminであるとき、上述したステップS34が実行され、ATR≧ATRmaxであるとき、上述したS36が実行される。従って、ATR<ATRminであるとき、無線装置の個数(端末数)の増加によるパケット衝突を抑制しながら、スループットが向上し、ATR≧ATRmaxであるとき、優先度制御を正確に行いながらスループットが向上する。
【0124】
図4または
図5に示すフローチャートは、アクセスカテゴリAC
0〜AC
3の全てについて実行されるので、アクセスカテゴリAC
i間において端末数N
iに偏りがあっても、優先度制御を正確に行いながらスループットを向上できる。
【0125】
図6は、この発明の実施の形態における無線ネットワークの概略図である。
図6の(a)を参照して、無線ネットワーク100は、アクセスポイント110と、端末装置121〜128とを備える。
【0126】
アクセスポイント110および端末装置121〜128の各々は、
図1に示す無線装置10からなる。そして、アクセスポイント110は、上述した無線装置10における通信方法によって端末装置121〜128との間でアクセスカテゴリAC
iに属するパケットを送受信する。
【0127】
このように、無線ネットワーク100は、集中型の無線ネットワークである。
【0128】
図6の(b)を参照して、無線ネットワーク200は、端末装置131〜138を備える。端末装置131〜138の各々は、
図1に示す無線装置10からなる。そして、端末装置131〜138は、上述した無線装置10における通信方法によってアクセスカテゴリAC
iに属するパケットを相互に送受信する。
【0129】
このように、無線ネットワーク200は、分散型の無線ネットワークである。
【0130】
従って、この発明の実施の形態による無線装置10は、集中型の無線ネットワーク100および分散型の無線ネットワーク200のいずれにも適用される。その結果、無線ネットワーク100,200において、アクセスカテゴリAC
iの優先度制御を正確に行いながら、スループットを向上できる。
【0131】
伝送レートを6Mbpsとし、アクセスカテゴリAC
1,AC
2,AC
3の優先度をそれぞれ1/7,2/7,4/7(固定値)とした場合における各システムパラメータとチャネルキャパシティ(式(7)の括弧内)と各アクセスカテゴリAC
iに割り当てられた帯域(OB
i)の理論的な計算結果を表1に示す。
【0133】
この発明の実施の形態による目的は、チャネルの有効効率を最大化することによって、ネットワークの総スループットを3.8Mbps(=チャネルキャパシティ)に設定し、各アクセスカテゴリAC
iが飽和状態である場合、アクセスカテゴリAC
1,AC
2,AC
3のスループットを各アクセスカテゴリAC
iにおける端末数に依存せずにそれぞれ0.544Mbps、1.09Mbps、および2.18Mbps(=割当帯域量)に設定するものである。
【0134】
次に、シミュレーションの結果について説明する。シミュレーションでは、1台のアクセスポイントと30台の端末装置とから構成されるアクセスネットワークを想定し、各端末装置がアクセスカテゴリAC
1,AC
2,AC
3のいずれかでフレームを送信する。ペイロード長、および伝送レート等のパラメータは、表1に示すとおりである。
【0135】
図7は、各アクセスカテゴリが飽和状態であるときの総スループットと各アクセスカテゴリにおける端末数との関係を示す図である。
【0136】
図7において、縦軸は、総スループットを表し、横軸は、各アクセスカテゴリAC
1,AC
2,AC
3における端末数を表す。また、曲線k1は、この発明の実施の形態による方式を用いたときの総スループットと各アクセスカテゴリにおける端末数との関係を示し、曲線k2は、従来のEDCA方式を用いたときの総スループットと各アクセスカテゴリにおける端末数との関係を示す。
【0137】
図7を参照して、この発明の実施の形態による方式を用いた場合、総スループットは、約4Mbpsであり、チャネルが有効に利用されていることが解る(曲線k1参照)。
【0138】
一方、従来のEDCA方式を用いたときの総スループットは、チャネルキャパシティ(=3.81Mbps)を大きく下回る。
【0139】
図8は、従来のEDCA方式を用いたときのアクセスカテゴリ毎のスループットを示す図である。また、
図9は、この発明の実施の形態による方式を用いたときのアクセスカテゴリ毎のスループットを示す図である。
【0140】
図8および
図9において、縦軸は、スループットを表し、横軸は、各アクセスカテゴリAC
1,AC
2,AC
3における端末数を表す。
【0141】
また、曲線k3は、従来のEDCA方式を用いたときのアクセスカテゴリAC
1のスループットを示し、曲線k4は、従来のEDCA方式を用いたときのアクセスカテゴリAC
2のスループットを示し、曲線k5は、従来のEDCA方式を用いたときのアクセスカテゴリAC
3のスループットを示す。
【0142】
更に、曲線k6は、この発明の実施の形態による方式を用いたときのアクセスカテゴリAC
1のスループットを示し、曲線k7は、この発明の実施の形態による方式を用いたときのアクセスカテゴリAC
2のスループットを示し、曲線k8は、この発明の実施の形態による方式を用いたときのアクセスカテゴリAC
3のスループットを示す。
【0143】
図8を参照して、従来のEDCA方式を用いた場合、任意のアクセスカテゴリAC
iが得るスループットは、そのアクセスカテゴリAC
iと他のアクセスカテゴリAC
j(i≠j)の端末数に大きく依存し、端末装置の台数が多いアクセスカテゴリがその優先順位に関係無く、高いスループットを得る傾向がある。
【0144】
図9を参照して、この発明の実施の形態による方式を用いた場合、各アクセスカテゴリAC
1,AC
2,AC
3の端末数に依存せずに、優先度の設定通りの帯域がそれぞれのアクセスカテゴリAC
1,AC
2,AC
3に割り当てられていることが解る。そして、アクセスカテゴリAC
1,AC
2,AC
3のスループットは、それぞれ約0.5Mbps,1.1Mbps,2.2Mbpsであり(曲線k3〜k5参照)、理論計算通りである。
【0145】
次に任意のアクセスカテゴリが非飽和状態である場合について説明する。具体的には、アクセスカテゴリAC
1,AC
2,AC
3における端末数をそれぞれ3,3,24に固定し、アクセスカテゴリAC
1とアクセスカテゴリAC
2における単一端末のデータ生成レートをそれぞれ1Mbps,216kbpsとした。
【0146】
これらのアクセスカテゴリAC
1,AC
2でそれぞれ3台の端末が存在するため、アクセスカテゴリAC
1の総データ生成レートは、3Mbpsであり、MACで割り当てられた帯域(=0.5Mbps)を大きく上回る。
【0147】
一方、アクセスカテゴリAC
2の総データ生成レートは、648kbpsであり、MACで割り当てられた帯域(=1.1Mbps)を下回る。
【0148】
図10は、任意のアクセスカテゴリが非飽和状態であるときの総スループットを示す図である。
【0149】
図10において、縦軸は、総スループットを表し、横軸は、アクセスカテゴリAC
3におけるトラフィック生成レートを表す。また、曲線k9は、この発明の実施の形態による方式を用いたときの総スループットを示し、曲線k10は、従来のEDCA方式を用いたときの総スループットを示す。
【0150】
図10を参照して、従来のEDCA方式を用いた場合、総スループットは、アクセスカテゴリAC
3におけるトラフィック生成レートの減少に伴って向上するが、全体的に、この発明の実施の形態による方式を用いた場合よりも低い(曲線k10参照)。
【0151】
一方、この発明の実施の形態による方式を用いた場合、総スループットは、アクセスカテゴリAC
3におけるトラフィック生成レートに依存せずに、ネットワーク全体のスループットを最大化(即ち、チャネルキャパシティ3.81Mbpsに一致)させる(曲線k9参照)。
【0152】
図11は、この発明の実施の形態による方式を適用した場合の各アクセスカテゴリAC
1,AC
2,AC
3のスループット、データ生成レートおよび帯域割当量を示す図である。
【0153】
図11において、縦軸は、スループットを表し、横軸は、アクセスカテゴリAC
3におけるトラフィック生成レートを表す。
【0154】
図11を参照して、アクセスカテゴリの飽和状況が異なる2つの領域に分けることができる。左側は、アクセスカテゴリAC
2が非飽和状態RB
2<OB
2(AC
1およびAC
3は、飽和状態RB>OB)の領域であり、右側は、アクセスカテゴリAC
2およびアクセスカテゴリAC
3が非飽和状態の場合である。
【0155】
図11の左領域では、アクセスカテゴリAC
2に割り当てられた帯域(OB
2)の未使用分がアクセスカテゴリAC
1およびアクセスカテゴリAC
3で使用される。また、右領域では、アクセスカテゴリAC
2およびアクセスカテゴリAC
3に割り当てられた帯域(OB
2,OB
3)の未使用帯域がアクセスカテゴリAC
1で使用される。その結果、総スループットが
図10に示すように常に高い値になることが解った。
【0156】
上述したように、各アクセスカテゴリAC
iにおけるチャネル占有率ATRが基準値ATRminよりも小さいとき、端末数N
iを反映してα
iを“1”よりも小さい値に設定することによって、端末数N
iの増加によるパケット衝突を抑制しながらスループットを向上し、チャネル占有率ATRが基準値ATRmax以上であるとき、端末数N
iを反映してα
iを大きくすることによって、非飽和状態であったアクセスカテゴリAC
iの増加に対応して正しい優先度制御を行いながらスループットを向上する。
【0157】
従って、アクセスカテゴリAC
i間における端末数の偏りがある場合も、スループットの低下を抑制して優先度制御を正確に行なうことができる。
【0158】
上記においては、ATRminは、80%であると説明した、この発明の実施の形態においては、これに限らず、ATRminは、80%以外の値であってもよい。
【0159】
また、上記においては、ATRmaxは、88%であると説明した、この発明の実施の形態においては、これに限らず、ATRmaxは、88%以外の値であってもよい。
【0160】
更に、上記においては、優先度が異なるアクセスカテゴリとして、バックグラウンド、ベストエフォート、動画および音声を説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、優先度が異なるアクセスカテゴリであれば、どのようなアクセスカテゴリであってもよい。
【0161】
更に、
図4または
図5に示すステップS33〜S37および
図3に示すステップS4は、「第1の演算処理」を構成し、
図4に示すステップS31,S32および
図3に示すステップS4は、「第2の演算処理」を構成する。
【0162】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。