特許第5720020号(P5720020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5720020防汚塗料組成物、防汚塗料組成物用共重合体、該組成物を用いて形成される防汚塗膜、該塗膜を表面に有する塗装物、及び該塗膜を形成する防汚処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5720020
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】防汚塗料組成物、防汚塗料組成物用共重合体、該組成物を用いて形成される防汚塗膜、該塗膜を表面に有する塗装物、及び該塗膜を形成する防汚処理方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 143/04 20060101AFI20150430BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20150430BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150430BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20150430BHJP
   C08F 230/08 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   C09D143/04
   C09D5/16
   C09D7/12
   C09D133/04
   C08F230/08
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-552241(P2014-552241)
(86)(22)【出願日】2014年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2014068737
【審査請求日】2014年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-154009(P2013-154009)
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227342
【氏名又は名称】日東化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】松木 崇
(72)【発明者】
【氏名】和久 英典
(72)【発明者】
【氏名】毛利 喜代美
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103044632(CN,A)
【文献】 特開平03−035065(JP,A)
【文献】 特開平04−261474(JP,A)
【文献】 特表2005−537335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
C08F 230/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基であり、R、R及びRのうち少なくとも2つが、炭素数8〜18であり、且つケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級であるアルキル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸トリアルキルシリルエステル単量体(a)の少なくとも1種と、前記単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)の少なくとも1種とを共重合して得られる共重合体(A)と防汚薬剤(B)を含有する防汚塗料組成物。
【請求項2】
前記単量体(a)のR、R及びRが、それぞれ同一又は異なって、炭素数8〜18であり、ケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級であるアルキル基である、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
更に、溶出調整剤を含む請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項4】
一般式(1):
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基であり、R、R及びRのうち少なくとも2つが、炭素数8〜18であり、且つケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級であるアルキル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸トリアルキルシリルエステル単量体(a)の少なくとも1種と、前記単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)の少なくとも1種とを共重合して得られる防汚塗料組成物用共重合体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の防汚塗料組成物を用いて被膜形成物の表面に防汚塗膜を形成する防汚処理法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の防汚塗料組成物を用いて形成される防汚塗膜。
【請求項7】
請求項6に記載の防汚塗膜を表面に有する塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物、防汚塗料組成物用共重合体、該組成物を用いて形成される防汚塗膜、該塗膜を表面に有する塗装物、及び該塗膜を形成する防汚処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フジツボ、セルプラ、ムラサキイガイ、フサコケムシ、ホヤ、アオノリ、アオサ、スライム等の水棲汚損生物が、船舶(特に船底部分)や漁網類、漁網付属具等の漁業具や発電所導水管等の水中構造物に付着することにより、それら船舶等の機能が害される、外観が損なわれる等の問題がある。
従来使用されていた有機錫含有共重合体の使用禁止以降、毒性が低く環境への負荷が少ないトリオルガノシリル基含有共重合体が開発され、防汚塗料組成物に使用されてきた。
【0003】
前記トリオルガノシリルエステル含有共重合体として、トリ(n−ブチル)シリルエステルやトリ(n−ヘキシル)シリルエステル(特許文献1)のような炭素数の少ない直鎖状のアルキル基からなるトリオルガノシリルエステル含有単量体を共重合してなる共重合体を用いた場合、塗料の貯蔵安定性が悪く、塗膜の加水分解速度も非常に早く、耐水性も悪いため、塗膜の溶解速度のコントロールが難しかった。そのため船底塗料組成物として実用化は困難であった。
【0004】
そこで、前記トリオルガノシリルエステル含有共重合体として、ジメチル(n−オクチル)シリルエステル(特許文献2、3)、ジメチル(n−デシル)シリルエステル(特許文献4)、ジメチル(n−オクタデシル)シリルエステル(特許文献5)、及びジイソプロピル(n−ドデシル)シリルエステル(特許文献6)等の長鎖アルキル基を分子内に一つ有するトリオルガノシリルエステル含有単量体を共重合してなる共重合体が提案されている。これらのトリオルガノシリルエステル含有共重合体を用いた防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜は、トリ(n−ブチル)シリルエステル又はトリ(n−ヘキシル)シリルエステル含有共重合体を用いたものと比べて、塗膜の加水分解速度が遅くなり耐水性も良くなった。しかし、それでもなお加水分解速度が速すぎ、長期間安定した塗膜溶解が得られない上に、海水中に長期間浸漬した後の塗膜は、クラック等の塗膜異常を引き起こすという問題があった。
【0005】
このように、ケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級であるアルキル基からなるトリオルガノシリルエステル含有共重合体を用いた防汚塗料組成物では、海水中で長期にわたりクラック等の塗膜異常を起こすことなく、適度な加水分解性を持続しつづける防汚塗料組成物はこれまでになかった。
【0006】
現時点において、耐クラック性及び塗膜溶解量の安定性の観点から優れた物性を有する防汚塗膜を形成可能な防汚塗料組成物として、ケイ素原子に直接結合する炭素原子が第二級であるアルキル基(例:イソプロピル、s−ブチル)を有するシリルエステル(例:トリイソプロピルシリルエステル)含有共重合体を用いた防汚塗料組成物が知られている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,593,055号明細書
【特許文献2】特開平11−43642号公報
【特許文献3】特開昭63−118381号公報
【特許文献4】特開平9−286933号公報
【特許文献5】特開平3−31372号公報
【特許文献6】特開平7−18216号公報
【特許文献7】特開2005−82725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トリイソプロピルシリルエステル含有共重合体を用いた防汚塗料組成物を用いて形成した防汚塗膜は、総合的に優れた物性を有するものの、本発明者が塗膜物性のさらなる向上を目指して研究を行ったところ、上記防汚塗膜は、被塗膜形成物に曲げ変形が生じたときの防汚塗膜の剥がれにくさを示す耐屈曲性が必ずしも高くないことが分かった。
【0009】
また、防汚塗膜が船底に形成された場合、船舶の航行中に船底と海水との間に生じる摩擦力の大きさが、防汚塗膜の平滑性によって変化するので、防汚塗膜の平滑性が船舶の燃費に影響を与えるが、防汚塗膜の平滑性をどうすれば高めることができるかは分かっていない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、耐屈曲性及び平滑性に優れた防汚塗膜を形成可能な防汚塗料組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、一般式(1):
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基であり、R、R及びRのうち少なくとも2つが、炭素数8〜18であり、且つケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級であるアルキル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸トリアルキルシリルエステル単量体(a)の少なくとも1種と、単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)の少なくとも1種とを共重合して得られる共重合体(A)と防汚薬剤(B)を含有する防汚塗料組成物が提供される。
【0012】
上記一般式(1)のR〜Rとして、ケイ素原子に直接結合する炭素原子が第二級であるアルキル基を採用した場合に、耐クラック性及び塗膜溶解量の安定性の観点から優れた物性を有する防汚塗膜が形成可能であるというのが現在の当業者の技術常識となっている。
【0013】
このような状況において、本発明者は、防汚塗膜の耐屈曲性及び平滑性を向上させるために、従来の常識を一旦忘れて様々なアルキル基を試してみた。その結果、R、R及びRのうち少なくとも2つが炭素数8〜18であり且つケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級であるアルキル基である場合には、R、R及びRがケイ素原子に直接結合する炭素原子が第二級であるアルキル基である場合に比べて、防汚塗膜の耐屈曲性及び平滑性が著しく向上するという驚きの結果が得られた。このような結果が得られた要因は完全には明らかになっていないが、炭素数8〜18であり且つケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級であるという条件を満たす多くの種類のアルキル基で同様に優れた結果が得られていることから、R、R及びRのうち少なくとも2つがこのような特定の構成を有するアルキル基であることが、上記の優れた結果の要因であると結論付けた。また、耐屈曲性及び平滑性が向上した理由としては、上記の特定の構成を有するアルキル基が互いに絡まりやすいためであると推測している。
【0014】
さらに、本発明の防汚塗料組成物を用いて形成した防汚塗膜は、耐水性、塗膜溶解量の長期安定性、及び防汚性能の長期安定性においても優れた結果を示した。これらの物性に関しては、R、R及びRのうち少なくとも2つの炭素数が8以上であることが極めて重要であることが分かった。本発明者の実験によればR、R及びRのうちの少なくとも2つの炭素数が8よりも少ない場合には、形成される防汚塗膜の耐水性、塗膜溶解量の長期安定性、及び防汚性能の長期安定性がいずれも低下してしまうことが分かったからである。このような現象が生じる原因は完全には明らかになっていないが、R、R及びRのうち少なくとも2つの炭素数が8以上である場合には、一般式(1)のケイ素原子の周囲の疎水性が十分に高くなって加水分解が適度に抑制されるのに対し、R、R及びRのうちの少なくとも2つの炭素数が8よりも少ない場合には加水分解が十分に抑制されずに耐水性等が著しく低下するためであると推測している。
【0015】
以上のように、本発明によれば、耐水性、塗膜溶解量の長期安定性、及び防汚性能の長期安定性において優れた結果を示しつつ、且つ耐屈曲性及び平滑性においても優れた防汚塗膜を形成可能な防汚塗料組成物が得られる。そして、この防汚塗料組成物を用いて防汚塗膜を形成することによって、船舶の燃費向上の効果が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、上記防汚塗料組成物用共重合体、上記組成物を用いて形成される防汚塗膜、この防汚塗膜を表面に有する塗装物、及び上記防汚塗膜を形成する防汚処理方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細を説明する。
【0018】
<共重合体(A)>
本発明の共重合体(A)は、一般式(1):
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基であり、R、R及びRのうち少なくとも2つ以上が、炭素数8〜18であり、且つケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級であるアルキル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸トリアルキルシリルエステル単量体(a)と、前記単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)とを共重合して得られる共重合体である。
【0019】
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは、10,000〜100,000であり、特に好ましくは、20,000〜70,000である。Mwが10,000〜100,000の場合、塗膜が脆くならず、かつ、塗膜の溶解が適度であるため、所望の防汚効果を有効に発揮できる。前記Mwの値は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により求めた値(ポリスチレン換算値)とする。
【0020】
本発明の組成物中における共重合体(A)の含有量は、特に制限されないが、本発明の組成物の固形分中、通常2〜50質量%、好ましくは4〜25質量%である。共重合体Aの含有量が4質量%〜25質量%の場合、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性が得られ、長期間の安定した表面更新性が維持でき、所望の防汚効果を有効に発揮することができる。また、塗膜の優れたリコート性能を発揮することができる。
【0021】
単量体(a)
単量体(a)は、上記一般式(1)で表される。
【0022】
炭素数8〜18であり且つケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級(つまり、構造式が−CH−R)であるアルキル基としては、例えば、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基(ラウリル基)、n−トリデシル基、n−テトラデシル基(ミリスチル基)、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基(セチル基)、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基(ステアリル基)等が挙げられる。特に、本発明では、R、R及びRとして特定の基を選択することにより、塗膜異常を起こしにくく、かつ可塑性と耐水性に優れた防汚塗膜を形成できる。このような観点から、R、R及びRとしては、少なくとも2つが、それぞれ同一又は異なって、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基又はn−オクタデシルであることが好ましく、R、R及びRの全てが、それぞれ同一又は異なって、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ドデシル基、又はn−オクタデシル基であることがより好ましく、R、R及びRが、それぞれ同一で、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ドデシル基、又はn−オクタデシルであることが更に好ましい。なお、上記アルキル基は、ケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級であればよく、それ以外の炭素原子は、第一〜第四級の何れであってもよい。つまり、ケイ素原子に直接結合しない炭素原子においては分岐していてもよい。
【0023】
単量体(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)メチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)プロピルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)n−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)n−オクタデシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクチル)メチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクチル)プロピルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクチル)ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクチル)2−エチルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクチル)n−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクチル)n−オクタデシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−ドデシル)メチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−ドデシル)プロピルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−ドデシル)ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−ドデシル)2−エチルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−ドデシル)n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−ドデシル)n−オクタデシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクタデシル)メチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクタデシル)プロピルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクタデシル)ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクタデシル)2−エチルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクタデシル)n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクタデシル)n−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ(2−エチルヘキシル)シリル、(メタ)アクリル酸トリn−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ノニルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−デシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ウンデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−トリデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−テトラデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ペンタデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ヘキサデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ヘプタデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−オクタデシルシリル等が挙げられる。
【0024】
特に、塗膜異常を起こしにくく、且つ耐水性に優れた防汚塗膜を形成できる点で、(メタ)アクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)n−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)n−オクタデシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクチル)2−エチルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクチル)n−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクチル)n−オクタデシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−ドデシル)n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−ドデシル)2−エチルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−ドデシル)n−オクタデシルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクタデシル)n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸ジ(n−オクタデシル)2−エチルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ(2−エチルヘキシル)シリル、(メタ)アクリル酸トリn−ノニルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−デシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ウンデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−テトラデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ペンタデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ヘキサデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−ヘプタデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリn−オクタデシルシリル等のR1〜Rのすべてのアルキル基が炭素数8以上の(メタ)アクリル酸アルキルが好ましく、(メタ)アクリル酸トリn−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ(2−エチルヘキシル)シリル、(メタ)アクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸ジn−オクチル(2−エチルヘキシル)シリル、メタクリル酸トリ(n−ドデシル)シリル、(メタ)アクリル酸トリn−オクタデシルシリルがより好ましく、メタクリル酸トリ(2−エチルヘキシル)シリル、メタクリル酸トリ(n−オクチル)シリル、メタクリル酸トリ(n−ドデシル)シリル、メタクリル酸トリ(n−オクタデシル)シリルが更に好ましい。これらの(メタ)アクリル酸トリアルキルシリルエステル単量体(a)は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて使用される。
【0025】
前記単量体(a)は、例えば、以下の処法により得られる。
まず、入手容易なトリクロロシランに3当量のグリニャール試薬等を反応させ、反応終了後、反応液をクエンチし、生成したマグネシウム塩を除去することで得られるトリオルガノシランを、さらに塩素や塩化水素等で処理することにより、トリオルガノシリルクロリドを得る。その他の方法として、原料にテトラクロロシランを使用し、3当量のグリニャール試薬等を反応させることでもトリオルガノシリルクロリドを得ることができる。
次に、得られたトリオルガノシリルクロリドを塩基条件で(メタ)アクリル酸等と反応させ、常法に従って処理することにより単量体(a)を得ることができる。中間体のトリオルガノシラン、トリオルガノシリルクロリド及び単量体(a)は、必要に応じて減圧蒸留で精製して使用することができ、また、単量体(a)は貯蔵安定性確保のために、ハイドロキノンモノエチルエーテル(MEHQ)、ハイドロキノン(HQ)、3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール(TOPANOL)、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルハイドロキノン、フェノール、ベンゾキノン、1,2- ナフトキノン、クレゾール、カテコール、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、6-t-ブチル-m- クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、フェノチアジン、メチレンブルー、ジメチルジチオカルバミン酸銅塩、ジエチルジチオカルバミン酸銅塩、ジプロピルジチオカルバミン酸銅塩およびジブチルジチオカルバミン酸銅塩等の一般的な安定剤(重合禁止剤)を含有することができる。
【0026】
単量体(b)
単量体(b)は、前記単量体(a)以外の、単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体であり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコールモノメチル、(メタ)アクリル酸プロピレングリコールモノメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、及び(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族化合物;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸化合物が挙げられる。この中でも特に、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)クリル酸メチル、 (メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル及び(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルがより好ましい。前記例示の単量体(b)は、前記共重合体(A)のモノマー成分として単独又は2種以上で使用できる。
【0027】
前記単量体の混合物中における前記単量体(a)の含有量は20〜70質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましく、25〜45質量%がより好ましい。前記単量体(a)の含有量が20〜70質量%の場合、得られる防汚塗料組成物を用いて形成した塗膜が、安定した塗膜溶解性を示し、長期間、防汚性能を維持できる。
【0028】
共重合体(A)の合成
共重合体(A)は、例えば、下記単量体(a)及び下記単量体(b)を共重合させることにより得ることができる。
共重合体(A)は、単量体(a)と単量体(b)とのランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体のいずれの共重合体であってもよい。共重合体(A)は、例えば、重合開始剤1,1,3,3‐テトラメチルブチル パーオキシネオデカノエートの存在下、単量体(a)及び単量体(b)を重合させることにより得ることができる。
【0029】
重合方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられる。この中でも特に、簡便に、且つ、精度良く、共重合体(A)を得ることができる点で、溶液重合が好ましい。
前記重合反応においては、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシプロピル等のエステル系溶剤;イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。この中でも特に、芳香族炭化水素系溶剤が好ましく、キシレンがより好ましい。これら溶媒については、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
重合反応における反応温度は、通常70〜140℃であり、好ましくは80〜120℃である。重合反応における反応時間は、反応温度等に応じて適宜設定すればよく、通常4〜8時間程度である。重合反応は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0030】
本発明における防汚塗料組成物には、共重合体(A)のほかに、必要に応じて、防汚薬剤、溶出調整剤、可塑剤、他の樹脂等を配合することができる。これにより、より優れた防汚効果を発揮できる。
【0031】
<防汚薬剤>
防汚薬剤としては、海棲汚損生物に対して殺傷又は忌避作用を有する物質であればよく、特に限定されない。例えば無機薬剤及び有機薬剤が挙げられる。
無機薬剤としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン酸銅(一般名:ロダン銅)、キュプロニッケル、銅粉等が挙げられる。この中でも特に、亜酸化銅とロダン銅が好ましい。
有機薬剤としては、例えば、2−メルカプトピリジン−N−オキシド銅(一般名:銅ピリチオン)等の有機銅化合物、2−メルカプトピリジン−N−オキシド亜鉛(一般名:亜鉛ピリチオン)、ジンクエチレンビスジチオカーバメート(一般名:ジネブ)、ビス(ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛(一般名:ジラム)、ビス(ジメチルジチオカルバメート)エチレンビス(ジチオカーバメート)二亜鉛(一般名:ポリカーバメート)等の有機亜鉛化合物;ピリジン・トリフェニルボラン、4−イソプロピルピリジル−ジフェニルメチルボラン、4−フェニルピリジル−ジフェニルボラン、トリフェニルボロン−n−オクタデシルアミン、トリフェニル[3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン]ボロン等の有機ボロン化合物;2,4,6−トリクロロマレイミド、N−(2,6ジエチルフェニル)2,3−ジクロロマレイミド等のマレイミド系化合物;その他、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロン(一般名:シーナイン211)、3,4−ジクロロフェニル−N−N−ジメチルウレア(一般名:ジウロン)、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン(一般名:イルガロール1051)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(一般名:クロロタロニル)、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N',N'−ジメチル−N―p−トリルスルファミド(一般名:トリフルアニド)、N−ジクロロメチルチオ−N',N'−ジメチル−N−フェニルスルファミド(一般名:ジクロフルアニド)、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾ−ル(一般名:チアベンダゾール)、3−(ベンゾ〔b〕チエン−2−イル)−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン−4−オキシド(一般名:ベトキサジン)、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノー4−ブロモー5−トリフルオロメチル ピロール(一般名:ECONEA 028)等が挙げられる。この中でも特に、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、ピリジン・トリフェニルボラン、4−イソプロピルピリジル−ジフェニルメチルボラン、ベトキサジン、ジネブ、シーナイン211及びイルガロール1051が好ましく、銅ピリチオン、亜鉛ピリチオン、ピリジン・トリフェニルボラン及びベトキサジンがより好ましい。
防汚薬剤としては、亜酸化銅、ロダン銅、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、ピリジン・トリフェニルボラン、4−イソプロピルピリジル−ジフェニルメチルボラン、ベトキサジン、ジネブ、シーナイン211及びイルガロール1051、トリフルアニド、ジクロフルアニドが好ましく、亜酸化銅、銅ピリチオン、亜鉛ピリチオン及びシーナイン211がより好ましい。
これらの防汚薬剤は1種又は2種以上併用して使用できる。
【0032】
本発明の組成物中における防汚薬剤の含有量は、特に制限されないが、本発明の組成物の固形分中、通常0.1〜75質量%、好ましくは1〜60質量%である。防汚薬剤の含有量が0.1質量%未満の場合、十分な防汚効果が得られないおそれがある。防汚薬剤の含有量が75質量%を超える場合、形成される塗膜が脆弱であり、さらに、被塗膜形成物に対する接着性も弱く、防汚塗膜としての機能を十分に果たせない。
【0033】
<溶出調整剤>
溶出調整剤としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体およびこれらの金属塩、モノカルボン酸およびその塩または脂環式炭化水素樹脂等が挙げられる。
前記ロジンとしては、トール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等を例示できる。前記ロジン誘導体としては、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン化ロジン、ホルミル化ロジン、重合ロジン等を例示できる。ロジンの金属塩およびロジン誘導体の金属塩としては、金属化合物とロジンとの反応物を使用でき、ロジンの金属塩としては、例えば、ガムロジン亜鉛(又は銅)塩、ウッドロジン亜鉛(又は銅)塩、トール油ロジン亜鉛(又は銅)塩等が挙げられる。ロジン誘導体の金属塩としては、水添ロジン亜鉛(又は銅)塩、不均化ロジン亜鉛(又は銅)塩、マレイン化ロジン亜鉛(又は銅)塩、ホルミル化ロジン亜鉛(又は銅)塩、重合ロジン亜鉛(又は銅)塩、等が挙げられる。
前記モノカルボン酸としては、例えば、炭素数5〜30程度の脂肪酸、合成脂肪酸、ナフテン酸等が挙げられる。モノカルボン酸の塩としては、銅塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
前記脂環式炭化水素樹脂としては、市販品として、例えば、クイントン1500、1525L、1700(商品名、日本ゼオン社製)等が挙げられる。
特に、本発明の組成物は、溶出調整剤として、適度な溶出促進性を本発明の組成物に付与できる点で、ロジン、ロジン誘導体およびこれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましく、耐クラック性・耐水性の向上の点で、ロジンまたはロジン誘導体の銅塩または亜鉛塩を含有することが特に好ましく、ロジン誘導体の銅塩または亜鉛塩を含有することが更に好ましい。
本発明の組成物中における溶出調整剤の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して通常1〜400質量部、好ましくは5〜350質量部である。
【0034】
<他の樹脂>
本発明の防汚塗料組成物に他の樹脂を含有させることにより、本発明の効果を損なうことなく、コストダウンが可能であり、また、樹脂の持つ物性との相乗効果を得ることができる。
他の樹脂としては、例えば(メタ)アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ゴム樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。
本発明の組成物中における他の樹脂は、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性が損なわれない範囲で含有することができ、その含有量は、共重合体(A)100質量部に対して1〜300質量部、好ましくは10〜250質量部である。
【0035】
<その他の添加剤>
さらに、本発明の防汚塗料組成物には、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、タレ止め剤、分散剤、沈降防止剤、脱水剤、有機溶媒等を、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性が損なわれない範囲で添加することができる。
顔料としては、例えば、酸化亜鉛、ベンガラ、タルク、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
染料として、有機溶剤可溶の各種有機染料等が挙げられる。
消泡剤として、シリコーン樹脂系消泡剤、アクリル樹脂系消泡剤等が挙げられる。
タレ止め剤、分散剤または沈降防止剤として、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレン等が挙げられる。
脱水剤としては、例えば、合成ゼオライト系吸着剤、オルソエステル類、テトラエトキシシラン等のシリケート類やイソシアネート類等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機溶媒としては、例えば、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤等の通常、防汚塗料に配合されるものが挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
防汚塗料組成物の製造方法
本発明の防汚塗料組成物は、例えば、共重合体(A)及び防汚薬剤、溶出調整剤、可塑剤、他の樹脂等を含有する混合液を、分散機を用いて混合分散することにより製造できる。
前記混合液としては、共重合体(A)及び防汚薬剤、溶出調整剤、可塑剤、他の樹脂等の各種材料を溶媒に溶解または分散させたものであることが好ましい。前記溶媒としては、上記有機溶媒と同様のものを使用できる。
前記分散機としては、例えば、微粉砕機として使用できるものを好適に用いることができる。例えば、市販のホモミキサー、サンドミル、ビーズミル等を使用することができる。また、撹拌機を備えた容器に混合分散用のガラスビーズ等を加えたものを用い、前記混合液を混合分散してもよい。
【0037】
防汚処理方法、防汚塗膜、および塗装物
本発明の防汚処理方法は、上記防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形成する。本発明の防汚処理方法によれば、前記防汚塗膜が表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。また、塗膜を溶解させた後、上記組成物を上塗りすることにより、継続的に防汚効果を発揮することができる。
被塗膜形成物としては、例えば、船舶(特に船底)、漁業具、水中構造物等が挙げられる。漁業具としては、例えば、養殖用又は定置用の漁網、該漁網に使用される浮き子、ロープ等の漁網付属具等が挙げられる。水中構造物としては、例えば、発電所導水管、橋梁、港湾設備等が挙げられる。
防汚塗膜は、上記防汚塗料組成物を被塗膜形成物の表面(全体又は一部)に塗布することにより形成できる。
塗布方法としては、例えば、ハケ塗り法、スプレー法、ディッピング法、フローコート法、スピンコート法等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用して行ってもよい。
塗布後、乾燥させる。乾燥温度は、室温でよい。乾燥時間は、塗膜の厚み等に応じて適宜設定すればよい。
【0038】
上記防汚塗料組成物を用いて形成される本発明の防汚塗膜は、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性を発揮し、長期間の安定した表面更新性が維持でき、所望の防汚効果を有効に発揮することができる。また、塗膜の優れたリコート性能を発揮することができるという利点を有する。
防汚塗膜の厚みは、被塗膜形成物の種類、船舶の航行速度、海水温度等に応じて適宜設定すればよい。例えば、被塗膜形成物が船舶の船底の場合、防汚塗膜の厚みは通常50〜500μm、好ましくは100〜400μmである。防汚塗膜の、JIS B0601:2001で規定される十点平均高さRZJISは、70μm以下であることが好ましい。RZJISの下限は特に規定されないが、例えば40μmである。RZJISは、具体的には例えば、40、50、60、70μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。防汚塗膜の、JIS B0601:2001で規定される算術平均粗さRaは、60μm以下であることが好ましい。Raの下限は特に規定されないが、例えば30μmである。Raは、具体的には例えば、30、40、50、60μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。RzJIS及びRaの算出する際の、λsは25μm、λcは8mm、基準長さは8mmとする。
本発明の防汚塗膜は、適度な硬さを有する。すなわち、本発明の防汚塗膜は、コールドフロー等の塗膜異常を起こさない程度の硬さを有する。
本発明の塗装物は、前記防汚塗膜を表面に有する。本発明の塗装物は、前記防汚塗膜を表面の全体に有していてもよく、一部に有していてもよい。
本発明の塗装物は、海水中での適度な塗膜溶解速度と塗膜物性を改善することにより長期間の安定した表面更新性とリコート性に優れる塗膜を備えているため、上記船舶(特に船底)、漁業具、水中構造物等として好適に使用できる。
例えば、船舶の船底表面に上記防汚塗膜を形成した場合、前記防汚塗膜が表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。
しかも、前記防汚塗膜は、加水分解速度が好適に抑制されている。そのため、該船舶は、防汚性能を長期間維持でき、例えば、停泊中、艤装期間中等の静止状態においても、水棲汚損生物の付着・蓄積がほとんどなく、長期間、防汚効果を発揮できる。
また、長時間経過後においても、表面の防汚塗膜には、基本的にクラックやハガレが生じない。そのため、塗膜を完全に除去した後あらためて塗膜を形成する等の作業を行う必要がない。よって、上記防汚塗膜組成物を直接上塗りすることにより好適に防汚塗膜を形成できる。これにより、簡便にかつ低コストでの継続的な防汚性能の維持が可能になる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例等を示し本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各製造例、比較製造例、実施例及び比較例中の%は質量%を示す。粘度は、25℃での測定値であり、B形粘度計により求めた値である。重量平均分子量(Mw)は、GPCにより求めた値(ポリスチレン換算値)である。GPCの条件は下記の通りである。
装置・・・ 東ソー株式会社製 HLC-8220GPC
ガードカラム・・・TSKguardcolumn SuperHZ-L(東ソー株式会社製)
カラム・・・ TSKgel SuperHZM-M(東ソー株式会社製)2本直列接続
流量・・・ 0.35 mL/min
検出器・・・ RI
カラム恒温槽温度・・・ 40℃
展開溶媒・・・ THF(和光純薬工業社製;試薬特級)
標準サンプル・・・TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)
加熱残分は、JIS K5601−1−2(125℃、1時間加熱)により求めた値である。
粘度は、 JIS K7117−1(東機産業株式会社製BM形回転粘度計、25℃、湿度50%、回転数60rpm、ローターNo.2)により測定した。
また、表1、表2及び表3中の各成分の配合量の単位はgである。
【0040】
製造例1(単量体aの製造)
温度計、冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えたフラスコに、マグネシウム163g(6.7mol)とテトラヒドロフラン1940gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で2−エチルヘキシルクロリド1000g(6.7mol)を60〜75℃で4.5時間かけて滴下した。得られた反応液を75℃で3時間加熱撹拌し、2−エチルヘキシルマグネシウムクロリド溶液を収率98.5%で得た。この溶液に、トリクロロシラン273g(2.0mol)を40〜50℃で1.5時間かけて滴下した。その後、塩化銅(I)0.5g(0.0037mol)を加え、30〜40℃で5時間撹拌した。反応液に水500mLを滴下し、塩化マグネシウムを溶解した後、有機層を取り出した。有機層を120℃/1torrまで減圧濃縮して、738g(収率90%)のトリ(2−エチルヘキシル)シランを得た。
【0041】
次に温度計、撹拌装置を備えたフラスコに、トリ(2−エチルヘキシル)シラン602g(1.90mol)とトルエン1154gを仕込み、10〜15℃で2.5時間かけて塩素ガス135g(1.90mol)を吹き込んだ。反応液に窒素ガス10Lを吹き込み、溶存塩素と塩化水素を追い出した。その反応液を140℃/1torrまで減圧濃縮して、727g(収率95%)のトリ(2−エチルヘキシル)シリルクロリドを得た。
【0042】
温度計、冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えたフラスコに、トリ(2−エチルヘキシル)シリルクロリド300g(0.74mol)、トリエチルアミン85g(0.84mol)、安定剤(重合禁止剤)としてMEHQ(ハイドロキノンモノメチルエーテル)0.03g、及びヘキサン271gを仕込み、空気雰囲気下でメタクリル酸84g(0.98mol)、及びヘキサン14gを35〜45℃で1.5時間かけて滴下した。得られた反応液を40℃で3時間加熱撹拌した。反応液に水200mLを滴下し、有機層を取り出した。有機層を60℃/1torrまで減圧濃縮して、332g(収率99%)のメタクリル酸トリ(2−エチルヘキシル)シリル(MEHQ約100ppm含有)を得た。
【0043】
製造例2(単量体aの製造)
温度計、冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えたフラスコに、トリ(2−エチルヘキシル)シリルクロリド300g(0.74mol)、トリエチルアミン85g(0.84mol)、安定剤(重合禁止剤)としてBHT(3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン)0.03g、及びヘキサン271gを仕込み、空気雰囲気下でアクリル酸75g(1.04mol)、及びヘキサン14gを35〜45℃で1.5時間かけて滴下した。得られた反応液を40℃で3時間加熱撹拌した。反応液に水200mLを滴下し、有機層を取り出した。有機層を60℃/1torrまで減圧濃縮して、323g(収率99%)のアクリル酸トリ(2−エチルヘキシル)シリル(BHT約100ppm含有)を得た。
【0044】
製造例3(単量体aの製造)
2−エチルヘキシルクロリドの代わりにn−オクチルクロリドを用いて、製造例1と同様の操作で反応させたことにより、メタクリル酸トリ(n−オクチル)シリルを得た。
【0045】
製造例4(単量体aの製造)
2−エチルヘキシルクロリドの代わりにn−ドデシルクロリドを用いて、製造例1と同様の操作で反応させたことにより、メタクリル酸トリ(n−ドデシル)シリルを得た。
【0046】
製造例5(単量体aの製造)
2−エチルヘキシルクロリドの代わりにn−オクタデシルクロリドを用いて、製造例1と同様の操作で反応させたことにより、メタクリル酸トリ(n−オクタデシル)シリルを得た。
【0047】
製造例6(単量体aの製造)
温度計、冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えたフラスコに、マグネシウム114g(4.7mol)とテトラヒドロフラン1940gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で2−エチルヘキシルクロリド700g(4.7mol)を60〜75℃で3時間かけて滴下した。得られた反応液を75℃で3時間加熱撹拌し、2−エチルヘキシルマグネシウムクロリド溶液を収率98.5%で得た。この溶液に、メチルトリクロロシラン312g(2.1mol)を40〜50℃で1.5時間かけて滴下した。その後、塩化銅(I)0.5gを加え、30〜40℃で5時間撹拌した。反応液に水500mLを滴下し、塩化マグネシウムを溶解した後、有機層を取り出した。有機層を100℃/1torrまで減圧濃縮して、520g(収率92%)のジ(2−エチルヘキシル)メチルシランを得た。
【0048】
次に温度計、撹拌装置を備えたフラスコに、ジ(2−エチルヘキシル)メチルシラン514g(1.90mol)とトルエン1154gを仕込み、10〜15℃で2.5時間かけて塩素ガス135g(1.90mol)を吹き込んだ。反応液に窒素ガス10Lを吹き込み、溶存塩素と塩化水素を追い出した。その反応液を100℃/1torrまで減圧濃縮して、550g(収率95%)のジ(2−エチルヘキシル)メチルシリルクロリドを得た。
【0049】
温度計、冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えたフラスコに、ジ(2−エチルヘキシル)メチルシリルクロリド226g(0.74mol)、トリエチルアミン85g(0.84mol)、安定剤(重合禁止剤)としてHQ(ハイドロキノン)0.03g、及びヘキサン271gを仕込み、空気雰囲気下でメタクリル酸84g(0.98mol)、及びヘキサン14gを35〜45℃で1.5時間かけて滴下した。得られた反応液を40℃で3時間加熱撹拌した。反応液に水200mLを滴下し、有機層を取り出した。有機層を60℃/1torrまで減圧濃縮して、260g(収率99%)のメタクリル酸ジ(2−エチルヘキシル)メチルシリル(HQ約100ppm含有)を得た。
【0050】
比較製造例1
温度計、冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えたフラスコに、マグネシウム57g(2.4mol)とテトラヒドロフラン1940gを仕込み、窒素ガス雰囲気下でn−オクチルクロリド350g(2.4mol)を60〜75℃で1.5時間かけて滴下した。得られた反応液を75℃で3時間加熱撹拌し、n−オクチルマグネシウムクロリド溶液を収率98.5%で得た。この溶液に、ジメチルクロロシラン193g(2.0mol)を40〜50℃で1.5時間かけて滴下した。その後、塩化銅(I)0.5gを加え、30〜40℃で5時間撹拌した。反応液に水500mLを滴下し、塩化マグネシウムを溶解した後、有機層を取り出した。有機層を100℃/20torrまで減圧濃縮して、334g(収率95%)のジメチル(n−オクチル)シランを得た。
次に温度計、撹拌装置を備えたフラスコに、ジメチル(n−オクチル)シラン328g(1.90mol)とトルエン1154gを仕込み、10〜15℃で2.5時間かけて塩素ガス135g(1.90mol)を吹き込んだ。反応液に窒素ガス10Lを吹き込み、溶存塩素と塩化水素を追い出した。その反応液を100℃/20torrまで減圧濃縮して、373g(収率95%)のジメチル(n−オクチル)シリルクロリドを得た。
【0051】
温度計、冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えたフラスコに、ジメチル(n−オクチル)シリルクロリド153g(0.74mol)、トリエチルアミン85g(0.84mol)、安定剤(重合禁止剤)としてMEHQ(ハイドロキノンモノメチルエーテル)0.02g、及びヘキサン271gを仕込み、空気雰囲気下でメタクリル酸84g(0.98mol)、及びヘキサン14gを35〜45℃で1.5時間かけて滴下した。得られた反応液を40℃で3時間加熱撹拌した。反応液に水200mLを滴下し、有機層を取り出した。有機層を60℃/1torrまで減圧濃縮して、188g(収率99%)のメタクリル酸ジメチル(n−オクチル)シリル(MEHQ約100ppm含有)を得た。
【0052】
比較製造例2
n−オクチルクロリドの代わりにn−ドデシルクロリドを用いて、比較製造例1と同様の操作で反応させたことにより、メタクリル酸ジメチル(n−ドデシル)シリルを得た。
【0053】
比較製造例3
n−オクチルクロリドの代わりにn−オクタデシルクロリドを用いて、比較製造例1と同様の操作で反応させたことにより、メタクリル酸ジメチル(n−オクタデシル)シリルを得た。
【0054】
比較製造例4
2−エチルヘキシルクロリドの代わりにn−ヘキシルクロリドを用いて、製造例1と同様の操作で反応させたことにより、メタクリル酸トリ(n−ヘキシル)シリルを得た。
【0055】
比較製造例5
2−エチルヘキシルクロリドの代わりにn−ブチルクロリドを用いて、製造例1と同様の操作で反応させたことにより、メタクリル酸トリ(n−ブチル)シリルを得た。
【0056】
比較製造例6
2−エチルヘキシルクロリドの代わりにイソプロピルクロリドを用いて、製造例1と同様の操作で反応させたことにより、メタクリル酸トリイソプロピルシリルを得た。
【0057】
実施例1(共重合体溶液A−1の製造)
温度計、冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えたステンレス製の反応槽に、キシレン195gを仕込み、窒素ガスを導入しながら、85±5℃で攪拌しながら、メタクリル酸トリ(2−エチルヘキシル)シリル200g、メタクリル酸メチル150g、メタクリル酸2−メトキシエチル110g、アクリル酸n−ブチル40g、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート5g(初期添加)の混合液を2時間かけて滴下した。その後同温度で1時間攪拌を行った後、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート1g(後添加)を1時間毎に3回添加して重合反応を完結した後、キシレン305gを添加し溶解させることにより、共重合体溶液A−1を得た。
A−1の粘度、加熱残分、Mwを表1に示す。
【0058】
実施例2〜10及び比較例1〜7(共重合体溶液A−2〜10、B−1〜7の製造)
表1〜表2に示す単量体、重合開始剤及び溶剤を用いて、各反応温度条件下、実施例1と同様の操作で重合反応を行うことにより、共重合体溶液A−2〜10、B−1〜7を得た。
【0059】
試験例1(共重合体の乾燥膜の耐水性試験)
実施例1〜10及び比較例1〜7で得られた共重合体(A−1〜10、B−1〜7)の乾燥膜の試験片を35℃の天然海水中に6ヶ月間、浸漬した後、塗膜の状態を肉眼観察により確認した。
塗膜に変化がないものを◎、曇化したものを○、白化したものを△、膨潤したものを×とした。
結果を表1〜表2に示す。
表1〜表2から、本発明の実施例1〜10で得られた共重合体(A−1〜10)、ならびに比較例7で得られた共重合体(B−7)を用いて形成された乾燥膜は、耐水性に優れていることがわかる。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
製造例7(水添ロジン亜鉛塩のキシレン溶液の製造)
温度計、還流冷却器及び撹拌機を備えた1Lのフラスコに、ハイペールCH(水添ロジン:荒川化学(株)製)240gとキシレン240gをフラスコに入れ、更に、前記水添ロジン中の樹脂酸が全て亜鉛塩を形成するように酸化亜鉛120gを加え、70〜80℃で3時間還流脱水した。その後、冷却しろ過を行うことにより、水添ロジン亜鉛塩のキシレン溶液(濃褐色透明溶液、固形分約60%)を得た。
【0063】
製造例8(ガムロジン亜鉛塩のキシレン溶液の製造)
温度計、還流冷却器及び撹拌機を備えた1Lのフラスコに、ガムロジン240gとキシレン240gを入れ、更に、前記ガムロジン中の樹脂酸が全て亜鉛塩を形成するように酸化亜鉛120gを加え、70〜80℃で3時間還流脱水した。その後、冷却し濾過を行うことにより、ガムロジン亜鉛塩のキシレン溶液(濃褐色透明溶液、固形分約60%)を得た。
【0064】
実施例11〜21及び比較例8〜14(塗料組成物の製造)
表3に示す成分を表3に示す割合(質量%)で配合し、直径1.5〜2.5mmのガラスビーズと混合分散することにより塗料組成物を製造した。
【0065】
【表3】
【0066】
商品名「NC−301」:亜酸化銅(日清ケムコ(株)製)、平均粒径3μm
商品名「カッパーオマジン」:銅ピリチオン(アーチケミカル(株)製)
商品名「ジンクオマジン」:亜鉛ピリチオン(アーチケミカル(株)製)
商品名「シーナイン211」:4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(ローム&ハース社)固形分30質量%
商品名「TODA COLOR EP−13D」:ベンガラ(戸田ピグメント(株)製)
商品名「クラウンタルク3S」:タルク(松村産業(株)製)
商品名「酸化亜鉛2種」:酸化亜鉛(正同化学(株)製)
商品名「FR−41」:酸化チタン(古河機械金属(株)製)
商品名「スカーレットTR」:赤色有機顔料(山陽色素(株)製)
テトラエトキシシラン:キシダ化学(株)製、特級試薬
商品名「ディスパロンA603−20X」:脂肪酸アマイド系揺変剤(楠本化成(株)製)
キシレン:1級試薬(キシダ化学(株)製)
【0067】
試験例2(耐屈曲性試験)
実施例11〜21及び比較例8〜14で得られた塗料組成物を、ブラスト仕上げをしたブリキ板(75×150×2mm)に、乾燥塗膜としての厚みが約100μmとなるよう塗布し40℃で1日間乾燥させた後、90度に折り曲げ塗膜の状態を肉眼観察により確認した。
評価は以下の方法で行った。
◎:殆どクラックが生じなかったもの
○:微細なクラックが生じたもの
△:大きなクラックが生じたもの
×:塗膜の一部が容易に剥離したもの
結果を表4に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
表4から、本発明の塗料組成物(実施例11〜21)を用いて形成された塗膜は、可塑性に優れ、柔軟性が高く、ほとんどクラックが生じないことがわかる。その効果により、クラックを生じずに長期間防汚性能を維持することができる。
一方、比較例8〜14の塗料組成物を用いて形成された塗膜は、柔軟性が低く、塗膜にクラックやハガレが見られた。すなわち長期間、防汚性能を発揮できない。
【0070】
試験例3(ロータリー試験)
水槽の中央に直径515mm及び高さ440mmの回転ドラムを取付け、これをモーターで回転できるようにした。また、海水の温度を一定に保つための冷却装置、及び海水のpHを一定に保つためのpH自動コントローラーを取付けた。
試験板を下記の方法に従って2つ作製した。
まず、チタン板(71×100×0.5mm)上に、防錆塗料(エポキシビニル系A/C)を乾燥後の厚みが約100μmとなるよう塗布し乾燥させることにより防錆塗膜を形成した。その後、実施例11〜21及び比較例8〜14で得られた塗料組成物を、それぞれ前記防錆塗膜の上に、乾燥後の厚みが約300μmとなるよう塗布した。得られた塗布物を40℃で3日間乾燥させることにより、厚みが約300μmの乾燥塗膜を有する試験板を作製した。
作製した試験板のうちの一枚を上記装置の回転装置の回転ドラムに海水と接触するように固定して、20ノットの速度で回転ドラムを回転させた。その間、海水の温度を25℃、pHを8.0〜8.2に保ち、一週間毎に海水を入れ換えた。
各試験板の初期と試験開始後3ヶ月毎の残存膜厚を(株)キーエンス製の形状測定レーザーマイクロスコープVK−X100で測定し、その差から溶解した塗膜厚を計算することにより1ヶ月あたりの塗膜溶解量(μm/月)を得た。なお、前記測定は24ヶ月間行われ、前記塗膜溶解量を12ヶ月経過ごとに算出した。
また、ロータリー試験終了後(24ヶ月後)の試験板を乾燥後、各塗膜表面を肉眼観察し、塗膜の状態を評価した。
評価は以下の方法で行った。
◎:全く異常のない場合
○:僅かにヘアークラックが見られるもの
△:塗膜全面にヘアークラックが見られるもの
×:クラック、ブリスター又はハガレなどの塗膜に異常が見られるもの
【0071】
結果を表5に示す。
【0072】
【表5】
【0073】
表5から、本発明の塗料組成物(実施例11〜21)と比較例14の塗料組成物を用いて形成された塗膜は、海水中での溶解量が、1ヶ月当たり1〜5μm程度(年平均)であることがわかる。更に、本発明の塗料組成物を用いて形成された塗膜は、可塑性と耐水性に優れクラックやヘアークラック等を生じないため、長期間防汚性能を維持することができる。
一方、比較例8〜13の塗料組成物を用いて形成された塗膜は、長期間経過するとクラックやハガレなどの塗膜に異常が見られる。すなわち長期間、防汚性能を発揮できない。
【0074】
試験例4(防汚試験)
実施例11〜21及び比較例8〜14で得られた塗料組成物を、硬質塩ビ板(100×200×2mm)の両面に乾燥塗膜としての厚みが約200μmとなるよう塗布した。得られた塗布物を室温(25℃)で3日間乾燥させることにより、厚みが約200μmの乾燥塗膜を有する試験板を作製した。この試験板を三重県尾鷲市の海面下1.5mに浸漬して付着物による試験板の汚損を24ヶ月観察した。
評価は、塗膜表面の状態を目視観察することにより行い、以下の基準で判断した。
◎:貝類や藻類などの汚損生物の付着がなく、かつ、スライムも殆どなし。
○:貝類や藻類などの汚損生物の付着がなく、かつ、スライムが薄く(塗膜面が見える程度)付着しているものの刷毛で軽く拭いて取れるレベル。
△:貝類や藻類などの汚損生物の付着はないが、塗膜面が見えない程スライムが厚く付着しており、刷毛で強く拭いても取れないレベル。
×:貝類や藻類などの汚損生物が付着しているレベル。
【0075】
結果を表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
表6から、本発明の塗料組成物(実施例11〜21)と比較例14の塗料組成物を用いて形成された塗膜には、貝類や藻類などの汚損生物の付着がなく、かつスライムの付着も殆どないことがわかる。
一方、比較例8〜13の塗料組成物を用いて形成された塗膜には、24ヶ月間浸漬後、スライムや貝類や藻類などの汚損生物が付着していることがわかる。
【0078】
試験例5(塗膜の線粗さ)
試験例3で用意した実施例11〜21及び比較例8〜14で得られた塗料組成物の乾燥塗膜表面の線粗さを、(株)キーエンス製の形状測定レーザーマイクロスコープVK−X100を用いて計測し、JIS B0601:2001で規定される十点平均粗さRZJIS及び算術平均粗さRaを算出した。RZJIS及びRaの算出する際の、λsは25μm、λcは8mm、基準長さは8mmとした。
【0079】
結果を表7〜表8に示す。
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
表7〜表8から、本発明の塗料組成物(実施例11〜21)を用いて形成された塗膜は、RZJISが49〜64μmで、Raが34〜52μmであるのに対し、比較例8〜14の塗料組成物を用いて形成された塗膜は、RZJISが85〜105μmで、Raが62〜80μmである。それらの値から、本発明の塗料組成物(実施例11〜21)の方が、塗膜表面が平滑であることがわかる。
【要約】
耐屈曲性及び平滑性に優れた防汚塗膜を形成可能な防汚塗料組成物を提供する。
本発明によれば、一般式(1):
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基であり、R、R及びRのうち少なくとも2つが、炭素数8〜18であり、且つケイ素原子に直接結合する炭素原子が第一級であるアルキル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸トリアルキルシリルエステル単量体(a)の少なくとも1種と、単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)の少なくとも1種とを共重合して得られる共重合体(A)と防汚薬剤(B)を含有する防汚塗料組成物が提供される。