特許第5720030号(P5720030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シーマコンサルタントの特許一覧 ▶ 有限会社シント商事の特許一覧

<>
  • 特許5720030-防草工法 図000002
  • 特許5720030-防草工法 図000003
  • 特許5720030-防草工法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720030
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】防草工法
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/00 20060101AFI20150430BHJP
   A01G 1/00 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   A01M21/00 Z
   A01G1/00 301C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2009-249406(P2009-249406)
(22)【出願日】2009年10月29日
(65)【公開番号】特開2011-92098(P2011-92098A)
(43)【公開日】2011年5月12日
【審査請求日】2012年10月25日
【審判番号】不服2013-22726(P2013-22726/J1)
【審判請求日】2013年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】500305380
【氏名又は名称】株式会社シーマコンサルタント
(73)【特許権者】
【識別番号】510233817
【氏名又は名称】有限会社シント商事
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】中島 観司
【合議体】
【審判長】 中川 真一
【審判官】 竹村 真一郎
【審判官】 住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−208608(JP,A)
【文献】 特開2006−241700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G1/00
A01M21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水を混ぜ合わせる混練工程と、前記混練工程で形成された混練物を地盤上に打設して連続した空隙を有する植栽層を形成する造成工程と、前記造成工程で形成された植栽層の表面に植栽穴を形成する造穴工程と、前記造穴工程で形成された植栽穴に地被植物の苗を植え込む定植工程と、を備え、前記植栽穴が前記植栽層の表面から前記地盤に至る深さであることを特徴とする防草工法。
【請求項2】
前記団粒化剤が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものであることを特徴とする請求項1記載の防草工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の中央分離帯、路側帯、公園あるいは庭園などに防草領域を形成する工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防草工法として、土地の表面を非透水性のシート材で覆ってしまう工法あるいは雑草が活着できない硬質層を地盤の上に形成する工法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。これらの工法が施工された土地は長期間に亘って雑草が生えることがなく、防草効果の点では優れているが、周囲の自然景観との調和がとれないことがあるので、自然との調和が求められる施工現場には不向きである。
【0003】
一方、雑草の生育を排除しながら、土地の景観を良好に保つ防草工法として、地被植物が生育可能な地被植物植栽シートを地面に敷設した後、この地被植物植栽シートに形成された切れ目の位置に地被植物の苗を植え込む工法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
特許文献3記載の防草工法は、雑草の生育を排除しながら、土地の表面を地被植物で覆われた状態とすることができるので、特許文献1,2記載の防草工法に比べ、周囲の自然景観との調和という観点では優れた工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−129405号公報
【特許文献2】特開2006−37437号公報
【特許文献3】登録実用新案第3029692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3記載の防草工法においては、土地の表面に敷設された織布シートの係止手段が設けられていないので、施工後、地被植物が土地に根付いて係止作用を発揮する前に、強い風が吹くと、捲れたり、飛ばされたりする可能性がある。また、大雨が降ったときに、織布シートが正規の位置からズレたり、流されたりする可能性もある。
【0007】
さらに、前記織布シートは合成樹脂(ポリプロピレン)で形成されているため、腐食したり、分解して土地と一体化したりすることなく残存し続けることとなり、土壌への悪影響も懸念される。また、前記織布シートは防草領域の平面形状に合致するように加工しなければならないので、防草領域が直線的形状に区画されていない場合は、前記織布シートの外周加工に多大な手間が必要となる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、施工が容易で、雑草排除作用に優れ、土壌への悪影響もなく、自然景観との調和も図ることができる防草工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る防草工法は、土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水を混ぜ合わせる混練工程と、前記混練工程で形成された混練物を地盤上に打設して連続した空隙を有する植栽層を形成する造成工程と、前記造成工程で形成された植栽層の表面に植栽穴を形成する造穴工程と、前記造穴工程で形成された植栽穴に地被植物の苗を植え込む定植工程と、を備え、前記植栽穴が前記植栽層の表面から前記地盤に至る深さであることを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、セメント系固化剤の作用によって固化した植栽層はアスファルト舗装程度に硬いので、その表面に雑草の種子が飛来しても活着し難く、地盤中に存在する雑草種子の発芽も地盤上に形成された硬質の植栽層によって遮られるので、雑草排除作用に優れている。
【0011】
また、前記造成工程で形成された直後で固化前の植栽層中では、団粒化剤に含まれるイオンの作用により土質材とセメント系固化剤の粒子とが立体的な団粒構造を形成する結果、連続した空隙が発生するため、固化後の植栽層は透水性と保水性とをバランス良く兼備し、通気性も良好となる。従って、植栽層に形成された植栽穴に植え込まれた地被植物の苗は順調に生育し、やがて植栽層の表面全体を覆った状態となるので、自然景観との調和も図ることができる。
【0012】
さらに、土質材、セメント系固化剤、団粒化剤及び水を混ぜ合わせた混練物を地盤上に打設して形成した植栽層に開設した植栽穴に地被植物の苗を植え込むだけで防草領域を形成することができるので、施工が容易である。また、固化後の植栽層から有害物質が溶出することがなく、自然に腐食・分解しない合成樹脂製のシートやマットなども使用しないので、土壌への悪影響もない。
【0013】
ここで、前記植穴は、前記植栽層の表面から前記地盤に至る深さであることにより、植栽穴に植え込まれた地被植物の苗の根が直接、地盤に向かって生長できるので、活着が早まり、地盤中の養分の吸収が可能となり、生育状況も良好となる。
【0014】
一方、前記団粒化剤は、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものであることが望ましい。このような団粒化剤を使用すれば、植栽層中に強固な団粒構造が形成されるので、透水性と保水性とをバランス良く兼備し、通気性も良好であって、強度と耐久性に優れた植栽層を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、施工が容易で、雑草排除作用に優れ、土壌への悪影響もなく、自然景観との調和も図ることができる防草工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態である防草工法を構成する混練工程を示す図である。
図2】本発明の実施形態である防草工法を構成する造成工程を示す図である。
図3】本発明の実施形態である防草工法を構成する造穴工程、定植工程及びその後の状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、土質材10及びセメント系固化剤11をミキサ12に投入して、十分に撹拌、混合する。ミキサ12はモータ13などを動力源とする撹拌混合機能を有するものを用いることができる。土質材10としては、真砂土、シラス、焼却灰あるいは防草領域の施工現場から採取した土砂などを使用することができる。なお、土質材10の代わりに、若しくは土質材10と併せて、瓦の廃材、ガラスの廃材あるいは溶融スラグの粉砕物を使用することもできる。
【0018】
土質材10とセメント系固化剤11とが均一に混合されたら、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含む団粒化剤14及び水を添加し、さらに撹拌、混練することによって混練物15を形成する(混練工程)。なお、撹拌混合手段は限定しないので、前述したミキサ12の代わりにバックホウを用いて混合することもできる。
【0019】
本実施形態において、混練物15を構成する各成分の混合比率は次の通りであるが、これに限定するものではない。
土質材10:1000kg〜1500kg
セメント系固化剤11:100kg〜200kg
団粒化剤14:1リットル〜10リットル
水:適量(混練物15の流動性や固さなどを確認しながら添加量を調整する。)
【0020】
図1に示す混練工程で得られた混練物15を、図2に示すように、防草領域である地盤16上に打設して植栽層17を形成する(造成工程)。この後、植栽層17が固化する前に、図3(a)に示すように、植栽層17の表面に複数の植栽穴18を形成する(造穴工程)。この場合、植穴18の深さは、植栽層17の表面17aから少なくとも地盤16の上面16aに至る深さとすることが望ましい。植栽穴18の間隔は限定しないので、施工条件に応じて任意に設定することができる。

【0021】
次に、前記造穴工程の完了後、15時間程度養生することにより、植栽層17が十分に固化したら、図3(b)に示すように、造穴工程で形成されたそれぞれの植栽穴18に地被植物の苗19を植え込む(定植工程)。本実施形態では、苗19として、地被植物の一つである芝生のポット苗を使用しているが、これに限定するものではないので、イワダレソウなどの他の地被植物の苗を使用することができる。
【0022】
ポット式の苗19の植え込み完了後、日数が経過すると、図3(c)に示すように、活着した芝生の苗19から植栽層17及び地盤16に向かって根R1が生長していくとともに、植栽層17の表面17aに沿ってランナR2が生長していく。苗19の芝生が植栽層17に活着して生育していく過程において、植栽層17の表面17aに雑草種子P1が飛来しても植栽層17が硬質であるので活着することができず、硬質の植栽層17によって地盤16中に存在する雑草種子P2の発芽も遮られるので、優れた雑草排除作用が得られる。
【0023】
この後、日数が経過すると、芝生の苗19の根R1及びランナR2の生長とともに苗19自体も順調に生育していき、やがて図3(d)に示すように、植栽層17の表面17a全体が芝生20で覆われた状態となる。図3(d)の状態となった後は芝生20によって雑草の生育が阻止されるので、長期間に亘って防草効果を維持することができる。
【0024】
本実施形態において、前述した造成工程で形成された直後で固化前の植栽層17中では、団粒化剤14に含まれるイオンの作用により土質材10とセメント系固化剤11の粒子とが立体的な団粒構造を形成する結果、連続した空隙が発生するため、固化後の植栽層17は透水性と保水性とをバランス良く兼備し、通気性も良好となる。従って、植栽層17に形成された植栽穴18に植え込まれた地被植物の苗19は順調に生育し、植栽層17の表面17a全体を覆った状態となるので、自然景観との調和も図ることができる。
【0025】
さらに、土質材10、セメント系固化剤11、団粒化剤14及び水を混ぜ合わせた混練物15を地盤16上に打設して形成した植栽層17に開設した植栽穴18に地被植物の苗19を植え込むだけで防草領域を形成することができるので、施工が容易である。また、固化後の植栽層17から有害物質が溶出することがなく、自然に腐食・分解しない合成樹脂製のシートやマットなども使用しないので、土壌への悪影響もない。
【0026】
また、植込穴18の深さを、育成層17の表面17aから地盤16の上面16aに至る深さとしたことにより、植栽穴18に植え込まれた地被植物の苗19の根R1が直接、地盤16に向かって生長できるので、活着が早まり、地盤16中の養分の吸収が可能となり、生育状況も良好となる。
【0027】
さらに、団粒化剤14として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものを使用したことにより、植栽層17中に強固な団粒構造が形成されるので、透水性と保水性とをバランス良く兼備し、通気性も良好であり、強度と耐久性に優れた植栽層17を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の防草工法は、道路の中央分離帯、路側帯、公園あるいは庭園などに防草領域を形成する際に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 土質材
11 セメント系固化剤
12 ミキサ
13 モータ
14 団粒化剤
15 混練物
16 地盤
16a 上面
17 植栽層
17a 表面
18 植栽穴
19 苗
20 芝生
P1,P2 雑草種子
R1 根
R2 ランナ
図1
図2
図3