【0012】
(窒素内包フラーレンの製造装置)
図1(a)は、本発明の実施例に係る窒素内包フラーレンの製造装置の断面図である。本発明の実施例に係る窒素内包フラーレンの製造装置は、高周波誘導により生成した窒素プラズマと昇華させたフラーレン分子との反応により窒素内包フラーレンを合成する製造装置である。
図1(a)に示す製造装置は、例えば、円筒状の真空容器1と、真空容器1に接続された真空ポンプ4と、真空容器1に窒素ガスを導入するガス導入管5と、窒素ガスを励起し窒素プラズマを生成する誘導コイル6、高周波電源10、マッチングボックス9からなる窒素プラズマ生成装置と、フラーレンを加熱し昇華させるフラーレン昇華オーブン3と、窒素プラズマ生成装置とフラーレン昇華オーブン3の間に配置され、昇華したフラーレン分子とプラズマ中の窒素イオンが反応した生成物を堆積させる円筒状の堆積基板2と、プラズマ生成装置と堆積基板14の間に配置され、プラズマ中の電子のエネルギーを制御するグリッド電極7と、堆積基板2とフラーレン昇華オーブン3の間に配置され、プラズマの空間電位を制御するエンドプレート電極8とから構成される。グリッド電極7、堆積基板2、エンドプレート電極8の電位は、それぞれ、グリッド電位制御電源11、堆積基板電位制御電源12、エンドプレート電位制御電源13により制御する。係る製造装置におけるグリッド電極より上部をプラズマ生成領域と呼び、グリッド電極より下部を合成プロセス領域と呼ぶ。真空容器1は、例えば、長さが約1mで直径が約10cmのガラス円筒とする。
本発明に係る窒素内包フラーレンの製造方法は、上記した窒素ガス圧力とフラーレンオーブン温度等のプロセス条件の最適化の他に、装置構造についても特徴を有する。堆積基板下部にエンドプレート電極を配置し、制御電圧を印加して、プラズマの空間電位Φ
sを固定する。さらに、プラズマ生成領域と堆積基板の間にグリッド電極を配置し、制御電圧を印加して、グリッド電極の電位を空間電位よりも負電位とする。これにより、電子をグリッド電極からプラズマに向かって加速し、加速された高エネルギー電子と窒素分子の衝突により窒素正イオンが生成される。堆積基板についても、バイアス電圧を印加して、堆積基板の電位を空間電位よりも負電位とする。これにより、窒素正イオンをプラズマから堆積基板に向かって加速し、高エネルギーの窒素正イオンを堆積基板上又は堆積基板近傍のフラーレン分子に衝突させることで内包フラーレンの収率を増加させる。
図1(a)に示す製造装置では、堆積基板2の下端部がエンドプレート電極8やフラーレン昇華オーブン3の位置よりも下に位置する構造として示されているが、本願発明に係る優れた効果を得るには、必ずしもこのような構造とする必要はない。エンドプレート電極8については、プラズマと接触する位置に配置すればよい。また、フラーレン昇華オーブンと堆積基板の位置関係については、オーブンから昇華するフラーレンを効率よく回収できる位置に配置すればよい。
図1(a)に示す本発明の実施例に係る製造装置では、真空容器は堆積基板の上部と下部に分かれたガラス製の円筒であり、堆積基板は金属製の円筒である。堆積物の回収時には,上下のガラス円筒と堆積基板を分解し,堆積基板を取り外し、堆積物を剥し落として回収する。
図9に示す従来の内包フラーレンの製造装置では、ガラス製の容器の中に堆積基板が挿入された構造であったが、堆積基板を水冷したり、バイアス電圧を印加するには、
図1(a)に示す本発明の実施例に係る製造装置の構造とするほうがより容易に実施可能である。水冷の温度は、5℃〜25℃程度とするのが好ましい。
【0013】
(窒素内包フラーレンの製造方法)
図1(a)に示す内包フラーレンの製造装置において、真空容器1の内部を拡散ポンプなどの真空ポンプで、約10
3Paの背景真空度に排気する。ガス導入管5から窒素ガスを導入し、N
2ガス圧力を、例えば、1〜100Paとする。プラズマ生成装置において、高周波電源10から誘導コイル6に周波数13.56MHzで100〜700Wの電力を供給しN
2ガスを励起し、N
+イオン、N
2+イオン、電子からなる窒素プラズマを生成する。
図1(a)には示されていないが、ラングミュアプローブ等を用い、プラズマ状態を観測する。フラーレン昇華オーブンはオーブン内部に煤状のフラーレンを入れ加熱し、フラーレン蒸気を噴射するする。加熱温度は、700〜850℃とするのが好ましい。
図1(b)は、窒素内包フラーレンの生成反応を説明するための図である。噴射したフラーレン蒸気を構成するフラーレン分子は、円筒状の堆積基板に付着し薄膜を形成する。その際、プラズマ中のN
2+イオンはフラーレン分子に衝突して2個のN原子またはN
+イオンになるとともに、フラーレンの構造を歪める効果もある。N原子またはN
+イオンはフラーレンが歪んで間隔の広がった六員環の間から内部に挿入され、窒素内包フラーレンが合成される。
図2は、窒素内包フラーレンの製造装置における堆積基板近傍のポテンシャル構造を示す図である。グリッド電極7の印加電圧V
gは、−200〜0Vの範囲で制御するのが好ましい。堆積基板2の印加電圧V
subは、−200〜0Vの範囲で制御するのが好ましい。エンドプレート8の印加電圧V
epは、−70〜70Vの範囲で制御するのが好ましい。
プラズマの空間電位Φ
sはエンドプレート電極の電圧V
epにより制御される。V
gはV
epに対し負の電位とするのが好ましい。すなわち、V
g<V
epとするのが好ましい。プラズマ生成領域中の電子はグリッド電極から合成プロセス領域のプラズマ中に向かって加速され、真空容器1内の窒素分子に対し衝突し、窒素原子イオン(N
+)又は窒素分子イオン(N
2+)が高い効率で生成される。V
gをV
epに対し負の方向に大きくし、電子のエネルギーを高くすると窒素分子イオンが生成される確率が高くなるとともに、有害な紫外線を発生する励起N
2ラジカルの生成を減少させる。紫外線はフラーレンをポリマー化し、溶解度を下げ、収率を悪化させるため、抑制することが望ましい。
さらに、V
subはV
epに対し負の電位とするのが好ましい。すなわち、V
sub<V
epとするのが好ましい。V
epをこのように制御すると、生成した窒素正イオンは、プラズマ中から堆積基板2に向かって加速され、フラーレン昇華オーブン3から昇華したフラーレン分子に衝突し、窒素内包フラーレンが高い効率で生成する。窒素分子イオンはフラーレンに衝突して、2個の窒素原子イオンになった後、フラーレンの六員環を通ってフラーレンに内包される。フラーレン蒸気は昇華円筒から放射状に出てくるので、円筒状の堆積基板上に堆積する。プラズマの空間電位をエンドプレート電位V
epにより固定することで、グリッド電極と堆積基板の近傍に形成されるシース電場がV
gとV
subにより高精度に制御できるので窒素内包フラーレンの合成反応を高い再現性で最適化することが可能になる。
また、今回N@C
60の合成が確認できたことから、本発明に係る製造方法を用いることにより、他のより大きなフラーレンについても窒素内包フラーレンの合成が可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0017】
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0018】
(実施例1)
(内包フラーレンの純度のV
gとP
N2に対する依存性)
図3(a)は、P
N2=5Paの場合の、純度(Purity)と溶解度(Solubility)のV
g依存性のグラフである。また、
図3(b)は、P
N2=25Paの場合の、純度と溶解度のV
g依存性のグラフである。窒素内包フラーレンの合成は、V
sub=−90V,V
ep=+30V,P
RF=500W,T(合成時間)=60min,T
ov(フラーレン昇華オーブン温度)=850℃,V
g=−120〜0Vの条件で行った。堆積基板上に形成された堆積物を回収し、トルエンを溶媒に用いて内包フラーレンを溶解・抽出し、純度と溶解度を評価した。その結果、P
N2=5Pa,25Paのいずれの場合も、V
gが負側に増加するほど純度が増加し、ピーク値に達した後、減少することがわかった。P
N2=5Paの時は、純度のピーク値がV
g=−40Vの時に0.024%で、P
N2=25Paの時は、純度のピーク値がV
g=−90Vの時に0.25%であった。このことから、窒素ガス圧力が高くなるほど、内包フラーレンの純度のピーク値が高くなることがわかった。純度の窒素ガス圧力依存性については、後ほど改めて、
図7を用いて詳細に述べる。V
g依存性に関しては、純度がピーク値に達するまでは、V
gが負側に大きく、V
gにより加速される電子エネルギーが高くなるほど純度は大きくなり、ピークに達した後にさらにV
gを負側に大きくすると、純度は小さくなることがわかった。
また、V
gを負側に大きくすると、励起窒素ラジカルの生成量が減少し、溶解度が増大するため、収率がさらに増大することもこの装置の特徴である。
【0019】
(プラズマ発光分光スペクトル(OES)強度のグリッド電位依存性、窒素分子の励起及び電離断面積のグリッド電位依存性)
図4は、プラズマ発光分光スペクトル(OES)強度のグリッド電位依存性、窒素分子の励起及び電離断面積のグリッド電位依存性のグラフである。
図4の左上のグラフは、プラズマの発光強度のV
g依存性のグラフである。評価した試料の合成条件は、V
sub=−90V,P
N2=25Pa,V
ep=+30V,P
RF=500W,T=60min,V
g=−120〜0Vであった。●で示すのは、窒素分子イオンN
2+に相当する曲線である。■で示すのは、窒素分子ラジカルN
2*に相当する曲線である。
図4の左下のグラフは、該当するイオンとラジカルに対応する波長を示すグラフである。V
gを負側に大きくすると、イオン化したN
2+が増加し、イオン化していないN
2*が減少することがわかる。電子ビーム方式により、窒素イオンが効率よく生成されること、V
gによりイオンの生成量が制御可能であることがわかる。
図5は、非特許文献2に記載された窒素プラズマ中の反応式の表である。窒素ガスを構成する窒素分子に対し電子を衝突させて窒素イオンを生成する際、電子のエネルギーを大きくしていくと、(1)式で示すように、電子エネルギーが6.17eV以上で窒素ラジカルが生成され、さらに高くしていくと(5)式で示すように15.58eV以上で窒素分子イオンが生成され、24.32eV以上で(6)式に示すように、窒素分子が窒素原子に解離し、さらにイオン化されることがわかる。
図4の右のグラフは、非特許文献2に開示されたグラフで、
図5の(1)〜(6)で示す反応が電子エネルギーの増加に伴い起きる確率の変化を示すデータである。電子エネルギーが高くなると15.58eVから窒素分子イオンの生成が開始され、電子エネルギーを高くすると急激に窒素分子イオンの生成量が増加するが、さらに電子エネルギーを高くすると、窒素分子イオンの増加がゆるやかになることがわかる。このことから、
図3において、V
gを負側に増加した時に純度がピーク値を持ち、その後再び減少する理由が、電子の衝突による窒素分子イオンの生成に関わっており、窒素分子イオン密度の増加により窒素内包フラーレンの生成確率も増加し、その純度が高くなるものと考えられる。一方、励起窒素ラジカルは、6.17eVから生成され、15eV程度までは生成確率が増加するが、さらに大きな電子エネルギーでは逆に生成確率が減少していく。従って、大きな電子エネルギーは窒素イオンを増加し、励起窒素ラジカルを減少させるため、高収率合成には極めて好都合である。また、窒素ガス圧力の増加により窒素内包フラーレンの純度が高くなる理由は、ガス圧力を高くしていくと、真空容器内の窒素分子の密度が増え、そのため、生成される窒素分子イオンの密度も高くなり、その結果、合成される窒素内包フラーレンの量も増えるためと考えられる。
【0020】
(内包フラーレンの純度のP
N2とP
RFに対する依存性)
図6は、窒素内包フラーレンの収率と溶解度の高周波電力及び窒素ガス圧力に対する依存性を示すグラフである。評価した試料の合成条件は、V
g=−90V,V
sub=−90V,V
ep=+30V,T=60minであった。グラフからわかるように、最も高い純度が得られたのは、P
RF=500WでP
N2=25Paの時で、0.25%の純度が得られた。P
N2が小さい時、例えば、5Paの時は、P
N2が増加しても顕著な純度の増加は観察されなかったが、P
N2が大きい時、例えば、25Paの時は、P
RFを大きくすると純度が一様に増加することがわかった。また、P
RF=500Wの時は、P
N2が5Paの時に比べP
N2が25Paの時は、純度が一桁増加することがわかった。さらに、P
N2が25Paを越えると純度が減少することがわかった。これは、P
N2が高くなりすぎると、生成された窒素イオンが過剰な窒素分子に衝突してエネルギーを失うためと考えられる。
P
RFは500W以上になると、プラズマが不安定化し純度が減少するため、適切なP
RFが必要であることがわかった。
以上の結果から、窒素内包フラーレンの純度向上に好適なプロセスパラメータとしては、P
N2=15〜35Pa,T
ov=700〜1000℃とし、P
RF,V
g,V
sub,V
epについては、先に述べたように、P
RF=100〜700W,V
g=−200〜0V,V
sub=−200〜0V,V
ep=−70〜+70Vとすることで、高い純度の窒素内包フラーレンの合成が可能になることがわかった。さらに、製造条件を絞って、P
N2=15〜35Pa,P
RF=300〜600W,T
ov=700〜1000℃,V
g=−100〜−30V,V
sub=−100〜−30V,V
ep=0〜+50Vとすることで、より高純度の窒素内包フラーレンの合成が可能になり、係る範囲のプロセス条件を用いることにより、純度が0.1%以上の窒素内包フラーレンの合成が可能になることがわかった。
【0021】
(内包フラーレンの純度のV
subとP
N2に対する依存性)
図7は、窒素内包フラーレンの収率の堆積基板電圧及び窒素ガス圧力に対する依存性を示すグラフである。評価した試料の合成条件は、V
g=−90V,P
RF=500W,V
ep=+30V,T=60minであった。グラフからわかるように、最も高い純度が得られたのは、V
sub=−90VでP
N2=25Paの時で、0.25%の純度が得られた。V
subについても負の側に大きくなると窒素分子イオンを加速するエネルギーが大きくなるので内包フラーレンの純度は高くなる。窒素分子イオンがフラーレンに衝突して、窒素原子及び窒素原子イオンになり、また、フラーレンの六員環を広げるためのエネルギーが十分大きくなるためと考えられる。しかし、V
subが負の側に大きくなり過ぎると、純度は減少する傾向がある。加速エネルギーが大きすぎると、フラーレンに衝突した後、そのまま突き抜けたり、フラーレン分子を破壊し、そのため窒素フラーレンとして得られない確率が高くなるためと考えられる。窒素分子イオンとフラーレン分子が衝突して窒素内包フラーレンが生成するためのイオンの最適のエネルギーは、シミュレーションにより予測されており(非特許文献3)、80eV程度がよいと言われている。
図7に示したデータにおける最適基板電位はP
N2が25Paの時の−90Vであるが、プラズマ空間電位を測定すると50V程度になっており、窒素イオンは140eVの加速エネルギーを得ているが、この程度のガス圧力の場合は、窒素イオンが中性の窒素分子と衝突してエネルギーを失い、フラーレンと衝突する時は、80eV程度の加速エネルギーまで減少していると考えられる。このことは、例えば、ガス圧力が5Paと低い時は加速された窒素イオンがほとんど窒素分子と衝突せずにフラーレンと衝突すると考えられ、純度が最大となるのは、V
subが−30Vの時で、空間電位の50Vとの差が80Vとなり、窒素イオンは80eVに加速され、シミュレーション結果と良い一致を示すことでもわかる。従って、高い純度で窒素内包フラーレンを得るには、窒素ガス圧力の値に応じてV
subを適切に制御する必要がある。
【0022】
(内包フラーレンの純度のオーブン温度に対する依存性)
図8は、窒素内包フラーレンの純度のフラーレン昇華オーブン温度T
ovに対する依存性を示すグラフである。従来フラーレンは400℃程度から昇華を始めるため、フラーレンを昇華させる装置では、従来550℃〜600℃の温度でフラーレンの加熱を行っていた。ところが、フラーレンの昇華温度を700℃以上にして合成を行ったところ、合成純度が急激に増加した。
図8のグラフで●が合成純度であるが、オーブン温度が700℃以上で合成純度が桁違いに大きくなっていることがわかる。■は昇華速度で、例えば600℃でも十分フラーレンが昇華していることがわかる。昇華量は600℃と850℃を比較して、2倍にもなっていないのに対し、合成純度は、700℃を境に急激に増えている。このことから窒素内包フラーレンの合成には、フラーレン昇華オーブンの温度は700℃以上にする必要があることが、本発明に係る実験により初めてわかった。その理由はまだ明確にわかってはいないが、700℃未満では、フラーレンは昇華するものの、クラスター状になって昇華しており、窒素イオンが衝突しても外側のフラーレン分子のみにイオンが衝突するので合成純度が低く、700℃以上では、フラーレン分子が分離して昇華することで内包フラーレンが形成されやすくなると推定される。
【0023】
(フラーレン昇華オーブンの改良による窒素内包フラーレン純度の向上)
図8では、850℃まで合成純度が一様に増加しているが、さらに温度を高くし、850℃〜1000℃の温度領域になると、フラーレンの昇華量が多くなりすぎ、窒素イオンが内包せずに堆積する空のフラーレンが多くなり過ぎて純度が低くなることも予測される。これは、この範囲の温度領域では、フラーレンが突沸などにより、フラーレン分子同士がくっついたクラスター状の分子として噴出するためである。クラスター状のフラーレン分子に窒素イオンが衝突しても、内包フラーレンが形成されるのはクラスター表面の一部のフラーレン分子に限定されるため、内包フラーレンの純度が低下するということである。そこで、フラーレンがクラスター状態で昇華するのを防止するため、
図9(a)に示すフラーレン昇華オーブンを用いた窒素内包フラーレンの合成実験を行った。昇華オーブンは、
図9(a)に示すように、フラーレンの内部に高密度金属メッシュが置かれており、フラーレンはこの高密度金属メッシュを通過して昇華し、真空容器中に噴出するようになっている。高密度金属メッシュにより突沸が抑制され、しかもメッシュは高温になっているため、クラスター状のフラーレンは分解されて、より小さなクラスターや分子になるため、窒素内包フラーレンの合成純度が向上する。
金属メッシュの材質は、熱伝導度の高い金属材料を用いるのが好ましい。例えば、銅を用いるのが好ましい。メッシュサイズは、例えば、40〜200メッシュ/センチとするのが好ましい。金属メッシュの温度は、オーブン内に入れているので、内包フラーレンの合成プロセス中は、オーブンと同じ温度になる。
図9(b)は、高密度メッシュを備えたフラーレン昇華オーブンを用い昇華温度を700〜1000℃として窒素内包フラーレンの合成を行った場合の窒素内包フラーレンの合成純度のグラフである。温度が高いほど純度が増加すること、合成純度が0.5%以上になっていることがわかる。これは窒素内包フラーレンの合成純度としては、従来の方法による合成純度と比較して桁違いに大きな値である。高密度金属メッシュを用いることで、昇華温度が850℃を越えても、フラーレンが突沸せずにクラスターフラーレンの昇華を抑制することで、窒素内包フラーレンの合成純度を向上可能なことがわかった。