特許第5720063号(P5720063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5720063
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】幅調整機構付きショッピングカート
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/02 20060101AFI20150430BHJP
   B62B 5/04 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   B62B3/02 B
   B62B5/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-206067(P2014-206067)
(22)【出願日】2014年10月7日
【審査請求日】2014年12月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514103394
【氏名又は名称】有限会社ブレスレン・インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】山根 祐二
【審査官】 鹿角 剛二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−362372(JP,A)
【文献】 特開2007−8393(JP,A)
【文献】 独国特許発明第19542720(DE,C1)
【文献】 特開2004−225724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/02
B62B 5/04
F16M 11/04
B60R 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に複数の車輪が取り付けられていてその反対側の面を載置面としている基台部と、
前記基台部に取り付けられている把手部と、
被係止部を有していて前記載置面に対してスライド可能に取り付けられている第1板と、
前記載置面に対して前記第1板とは反対方向にスライド可能に取り付けられている第2板と、
前記被係止部を係止する少なくとも一つの係止部を有している係止手段と、
前記係止手段の係止を解除する係止解除手段と、を備えていて、
前記第1板と第2板とは、少なくとも一方はばねにより互いに近づく方向にスライドするように付勢されているとともに、一方をスライドさせると他方も同じ距離だけ反対方向に移動させられ、
通常の使用時には、前記第1板及び第2板の大きさが前記基台部と略同じ大きさとなるように重畳されていて、
拡張して使用する際には、前記第1板と第2板とを互いに反対方向にスライドさせ該第1板及び第2板の大きさが前記基台部よりも大きくなった位置で前記係止部が前記被係止部を係止し、
前記係止解除手段が前記係止部の前記被係止部に対する係止を解除すると、前記第1板及び第2板は前記ばねの付勢力により前記第1板及び第2板の大きさが前記基台部と略同じ大きさとなる位置に移動することを特徴とする幅調整機構付きショッピングカート。
【請求項2】
前記基台部には、前記第1板及び第2板のスライド方向とは直交する方向に対して折り畳み可能なように第3板がヒンジを介して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の幅調整機構付きショッピングカート。
【請求項3】
被係止部を有していて前記基台部の底面に取り付けられておりばねにより前記基台部から地面の方向に付勢されているブレーキ部材と、
前記ブレーキ部材の被係止部を係止する係止部を有していてブレーキ不使用時には前記ブレーキ部材を係止しているブレーキ係止機構と、
ブレーキ使用時には前記ブレーキ係止機構の係止を解除するブレーキ係止解除機構と、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の幅調整機構付きショッピングカート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショッピングカートやキャリングカートなどと呼ばれる、片手で操作するタイプのカートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショッピングカートやキャリングカートなどと呼ばれる片手で操作するタイプのカートが知られている。この種のカートは、買い物をする際に重い荷物を楽に持ち運ぶなどの目的に用いられるものであり、様々な形状のものが市販されている。
【0003】
片手で操作するタイプのショッピングカートには、底面に二個の車輪を取り付けているタイプのものと、底面に四個の車輪を取り付けているタイプのものがある。このうち前者は、荷物を載せた状態でカートを移動する際に、カートを傾けて移動させなくてはならないが、後者はカートを傾けることなく移動させることができる。
【0004】
特許文献1には、底面に四個の車輪を取り付けているタイプのショッピングカートが記載されている。特許文献1に記載のショッピングカートは、図示されていない物品収納袋に物品を収納し、該物品収納袋を載置面10に載置して使用する(特許文献1の段落[0022],[0023]を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−124040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているようなショッピングカートは、重い荷物を運搬するのに便利ではあるが、底面の面積が大きい物品収納袋を使用する場合には、運搬が不安定になってしまうという欠点がある。そのような欠点を改善するためには、載置面10をより大きくすれば良いが、そのようにした場合には、物品収納袋が大きくないときにも場所をとってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、底面の面積が大きい物品や物品収納袋などを載せても安定して運搬することが可能であり、しかも、載せる荷物が大きくないときにも場所をとらないショッピングカートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の幅調整機構付きショッピングカートは、底面に複数の車輪が取り付けられていてその反対側の面を載置面としている基台部と、前記基台部に取り付けられている把手部と、被係止部を有していて前記載置面に対してスライド可能に取り付けられている第1板と、前記載置面に対して前記第1板とは反対方向にスライド可能に取り付けられている第2板と、前記被係止部を係止する少なくとも一つの係止部を有している係止手段と、前記係止手段の係止を解除する係止解除手段と、を備えていて、前記第1板と第2板とは、少なくとも一方はばねにより互いに近づく方向にスライドするように付勢されているとともに、一方をスライドさせると他方も同じ距離だけ反対方向に移動させられ、通常の使用時には、前記第1板及び第2板の大きさが前記基台部と略同じ大きさとなるように重畳されていて、拡張して使用する際には、前記第1板と第2板とを互いに反対方向にスライドさせ該第1板及び第2板の大きさが前記基台部よりも大きくなった位置で前記係止部が前記被係止部を係止し、前記係止解除手段が前記係止部の前記被係止部に対する係止を解除すると、前記第1板及び第2板は前記ばねの付勢力により前記第1板及び第2板の大きさが前記基台部と略同じ大きさとなる位置に移動する。
【0009】
また、本発明の幅調整機構付きショッピングカートは、前記基台部には、前記第1板及び第2板のスライド方向とは直交する方向に対して折り畳み可能なように第3板がヒンジを介して取り付けられているようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の幅調整機構付きショッピングカートは、被係止部を有していて前記基台部の底面に取り付けられておりばねにより前記基台部から地面の方向に付勢されているブレーキ部材と、前記ブレーキ部材の被係止部を係止する係止部を有していてブレーキ不使用時には前記ブレーキ部材を係止しているブレーキ係止機構と、ブレーキ使用時には前記ブレーキ係止機構の係止を解除するブレーキ係止解除機構と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基台面に互いに反対方向にスライド可能な第1板及び第2板を取り付けているので、底面の面積が大きい物品や物品収納袋を載置面に載せる場合には第1板及び第2板をスライドさせて載置面を広げて安定して運搬することが可能になるとともに、通常の使用時には、該第1板及び第2板が基台部と略同じ大きさとなるように重畳されているため余計な場所を取らないで済むという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートの全体斜視図である。
図2】本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートの載置面付近の拡大図である。
図3】本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートの載置面の幅調整機構を示した図であり、(a)は分解斜視図を、(b)は側面図を示している。
図4】本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートの幅調節を行うための係止機構を示した図であり、(a)は斜視図を、(b)は正面図を、(c),(d)は側面図を示している。
図5】本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートのブレーキ機構の非ブレーキ状態を示した図である。
図6】本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートのブレーキ機構のブレーキ状態を示した図である。
図7】本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートの載置面の幅調整機構の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートの全体斜視図であり、図2は、その載置面付近の拡大図である。図3は、載置面の裏側を示した図であり、(a)は分解斜視図を、(b)は内部を側面から見た図を示している。図4は、幅調節を行う際の係止機構を示した図であり、(a)は図2と同じ角度から見た斜視図を、(b)は正面図を、(c),(d)は側面から見た図を示している。図5,6は、ブレーキ機構を示した図であり、(a)は非ブレーキ状態を、(b)はブレーキ状態を示している。図7は、載置面を構成する板部材を幅方向にスライドさせるためのスライド機構の変形例を示す図である。
【0014】
まず、図1を用いて、本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートの外観を説明する。本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートは、基台部1と、該基台部1の底面に取り付けられている複数の車輪2と、該基台部1の底面とは反対側である表面側に取り付けられている伸縮可能な把手部3と、を備えている。そして、基台部1の表面側には、凹部1aが形成されていて、凹部1aの中央部には軸1bが設けられている。また、基台部1の把手部3を取り付けている位置の近傍には、取付部1cが形成されているが、この取付部1cは図4にのみ示してある。更に、基台部1の表面側の縁には、ヒンジ部1dが形成されている。
【0015】
次に、図2,3を用いて、基台部1に取り付けられている板部材の説明をする。基台部1の表面側には、凹部1aを覆うようにして、二つの板部材4,5がそれぞれ幅方向にスライド可能に取り付けられている。このうち、板部材4は、載置部4aと、折曲部4bと、被係止部4cを有していて、載置部4aの略中央には長孔4dが形成されており、凹部1aの上に配置したときの凹部1a側の面にワイヤー取付軸4eを設けている。また、板部材5は、載置部5aと、折曲部5bを有していて、載置部5aの略中央には長孔5cと逃げ孔5dが形成されており、凹部1aの上に配置したときの凹部1a側の面にワイヤー取付軸5eとばね取付軸5fを設けている。そして、これらの二枚の板部材4,5は、それぞれの長孔4dと5cに軸1bを挿通させて、該軸1bをねじ止めすることで固定している。そのため、二つの板部材4,5をスライドさせるときは、軸1bがそれぞれの長孔4d,5cの両端と当接することで、その移動量が規制される。また、板部材4のワイヤー取付軸4eは、板部材5の逃げ孔5dに挿入されている。
【0016】
これらの板部材4,5をスライドさせる機構について説明する。図3は、本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートの載置面を幅方向にスライドさせるためのスライド機構を示した図であり、図3(a)は板部材4,5と基台部1の凹部1aの分解斜視図を、図3(b)は板部材4,5と基台部1の凹部1aの内部を側面から見た図を示している。基台部1の凹部1a内部には、二つのプーリー6,7と、ばね8が取り付けられている。そして、プーリー6を介してワイヤー9がその両端を二つの板部材4,5のワイヤー取付軸4e,5eに取り付けられており、プーリー7を介してワイヤー10がその両端を二つの板部材4,5のワイヤー取付軸4e,5eに取り付けられている。このようにワイヤー9,10により二つの板部材4,5は連結されているため、一方の板部材をスライドさせると他方の板部材も逆方向にスライドさせられる。また、板部材5はばね8により図3における右方向に常に付勢されている。そのため、板部材5とワイヤー10で連結されている板部材4は、図3における左方向に常に付勢されていることになる。なお、このばね8は、板部材4を図3における左方向に付勢するように取り付けても良い。また、板部材4,5にそれぞればねを取り付けて、板部材4を図3における左方向に、板部材5を図3における右方向に、それぞれ付勢するようにしても良い。
【0017】
図4(a)は、本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートの幅調節を行う際の係止機構を示した斜視図であり、図4(b)はその正面図であり、図4(c),(d)はその側面図である。なお、図4(a)においては、各部材の位置関係を理解しやすくするため、図4(b)〜(d)では図示されている係止機構11のケース部分の図示を省略している。基台部1の表面側には、把手部3を取り付けている位置の近傍に、係止機構11が設けられている。この係止機構11は、係止部材12と係止解除ボタン13からなっている。係止部材12は、二つの係止部12a,12bと切欠き12cを有していて、取付部1cに回動可能に取り付けられている。そして、係止部12aは斜面12a−1と係止面12a−2とからなっていて、係止部12bは斜面12b−1と係止面12b−2とからなっている。
【0018】
係止部材12の切欠き12cを通して、係止解除ボタン13が取り付けられている。係止解除ボタン13は、頭部13aと、軸13bと、ばね13cとからなっている。そして、該軸13bにはばね13cが取り付けられていて、頭部13aを図4(c)における上方向に付勢しているとともに、係止部材12を図4(c)における時計方向に付勢している。そして、係止解除ボタン13の頭部13aが押圧されると、係止部材12は図4(c)における反時計方向に回動させられ、図4(d)に示された状態となる。そして、この図4(d)に示された状態から係止解除ボタン13の頭部13aの押圧が解かれると、係止部材12はばね13cの付勢力により図4(d)における時計方向に回動させられ、図4(c)に示された状態に戻る。
【0019】
基台部1の表面側には、ヒンジ部1dを介して板部材14が取り付けられている。この板部材14は、一方の面を載置部14aとしていて、他方の面を載置部14bとしており、ピン部材によりヒンジ部1dに対して回動可能に取り付けられている。
【0020】
基台部1の表面側には、係止機構11の近傍に、ブレーキ機構15が設けられている。このブレーキ機構15は、ブレーキ部材16と、ブレーキ係止部材17と、ブレーキ係止解除ボタン18とからなっている。ブレーキ部材16は、軸部16aの一方の先端部にゴム製の摩擦部16bを有しているとともに他方の先端部に被係止部16cを有していて、摩擦部16bが基台部1の底面側に、被係止部16cが基台部1の表面側に、それぞれ配置されるようにして基台部1を貫通して取り付けられている。そして、ブレーキ部材16は、軸部16aにばね16dが取り付けられていて、該ばね16dにより摩擦部16bが基台部1から離れる方向に付勢されている。
【0021】
ブレーキ係止部材17は、係止部17aと被押圧部17bとを有していて、ばね17cにより図5における左方向に付勢されている。ブレーキ係止解除ボタン18は、頭部18aと、押圧部18bと、ばね18cを有していて、ばね18cにより図5における上方向に付勢されている。
【0022】
次に、本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートの使用方法を説明する。本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートは、図示していない物品収納袋を載置して該物品収納袋内に物品を収納して運搬することも可能であるし、物品収納袋を使用せず物品を直接基台部1に載置して運搬することも可能である。なお、以下の説明では、板部材4,5が互いに遠ざかる方向にスライドすることを「開き方向にスライドする」と言い、互いに近付く方向にスライドすることを「閉じ方向にスライドする」と言う。また、板部材4,5が最も閉じ方向にスライドさせられている状態を「初期状態」と言い、板部材4,5が初期状態から開き方向にスライドして被係止部4cが係止部12aに係止されている状態を「第1の拡張状態」と言い、板部材4,5が第1の拡張状態から更に開き方向にスライドして被係止部4cが係止部12bに係止されている状態を「第2の拡張状態」と言う。
【0023】
運搬する物品の量が多くない場合には、基台部1の板部材4,5は、初期状態になっている。このとき、板部材4の被係止部4cは、図4(b)に示されている三つの位置のうち最も左側に位置している。
【0024】
運搬する物品の量が多い場合には、基台部1の板部材4,5の一方を開き方向にスライドさせる。このとき、板部材4,5の一方が開き方向にスライドさせられると、ワイヤー9又は10により他方も開き方向にスライドさせられ、載置面4a,5aの面積は広がっていく。板部材4,5が開き方向にスライドさせられていくと、板部材4の被係止部4cが係止部材12の係止部12aの斜面12a−1に当接し、ばね13cの付勢力に抗して係止部材12を押し上げていく。すなわち、係止部材12は、図4(c)の状態から反時計方向に回動させられていく。そして、更に板部材4,5が開き方向にスライドさせられると、板部材4の被係止部4cが斜面12a−1から外れ、ばね13cの付勢力により係止部材12は図4(c)における時計方向に回転させられる。このようにして板部材4の被係止部4cが係止部材12の係止部12aと係止部12bとの間に位置している状態で板部材4,5の開き方向へのスライドを停止させると、板部材5はばね8の付勢力により閉じ方向にスライド移動させられ、それに伴い板部材4も閉じ方向にスライド移動させられる。従って、板部材4の被係止部4cは、係止部12aの係止面12a−2に当接して係止される。この状態が第1の拡張状態である。このとき、板部材4の被係止部4cは、図4(b)に示されている三つの位置のうち中央に位置している。
【0025】
この第1の拡張状態から、更に板部材4,5を開き方向にスライドさせていくと、板部材4の被係止部4cが係止部材12の係止部12bの斜面12b−1に当接し、ばね13cの付勢力に抗して係止部材12を押し上げていく。すなわち、係止部材12は、図4(c)の状態から反時計方向に回動させられていく。そして、更に板部材4,5が開き方向にスライドさせられると、板部材4の被係止部4cが斜面12b−1から外れ、ばね13cの付勢力により係止部材12は図4(c)における時計方向に回転させられる。このようにして板部材4の被係止部4cが係止部材12の係止部12bよりも開き方向にスライド移動した位置で板部材4,5の開き方向へのスライドを停止させると、板部材5はばね8の付勢力により閉じ方向にスライド移動させられ、それに伴い板部材4も閉じ方向にスライド移動させられる。従って、板部材4の被係止部4cは、係止部12aの係止面12b−2に当接して係止される。この状態が第2の拡張状態である。このとき、板部材4の被係止部4cは、図4(b)に示されている三つの位置のうち最も右側に位置している。
【0026】
これらの第1又は第2の拡張状態から、初期状態に板部材4,5を戻すときには、係止解除ボタン13を押す。すると、係止解除ボタン13は、ばね13cの付勢力に抗して図4(c)の状態から下方向に移動し、係止部材12は図4(c)の状態から反時計方向に回動させられる。そして、係止部材12が図4(d)の状態になると、板部材4の被係止部4cは、係止部材12の係止部12a又は係止部12bによる係止と解除され、板部材4,5はばね8の付勢力によりそれぞれ閉じ方向にスライドしていく。そして、軸1bが長孔4a,5aの縁に当接して板部材4,5が最も閉じ方向にスライド移動した時点で停止し、初期状態となる。
【0027】
以上のように、本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートは、基台部1に対してスライド可能に板部材4,5を取り付けているので、底面の面積が大きい物品や物品収納袋などを載せても、載置面の幅を調節することで安定して運搬することが可能となっている。更に、本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートは、幅調節を行う際に、片方の板部材をスライドさせるだけで拡張することが可能であるとともに、拡張状態を解除するときは係止解除ボタンを押すだけで解除することが可能であるため、幅調整の操作が非常に容易に行うことが可能となっている。
【0028】
本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートは、板部材4,5をスライドさせる他に、板部材14を用いることでも載置面を拡大することが可能である。板部材14は、基台部1のヒンジ部1dに取り付けられていて、通常は板部材4,5の上に重畳するように配置されており、載置面14aの上に物品を載置可能になっている。基台部1の載置面を広げる必要がある場合には、板部材14をヒンジ部1dを中心に180度回動させることで、載置面14bの上に物品を載置可能になる。
【0029】
次に、図5,6を用いてブレーキ機構について説明する。本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートは片手で操作することができるが、斜面などでは、勝手に動かないように常に手で支えていなくてはならない。このような場合には、ブレーキ機構を使用することで、カート本体をその場に留めておくことができる。
【0030】
基台部1に取り付けられているブレーキ機構は、ブレーキ部材16と、ブレーキ係止部材17と、ブレーキ係止解除ボタン18とからなっている。このブレーキ部材16は、軸部16aの一方の端部に摩擦部16bが取り付けられているとともに他方の端部に被係止部16cが取り付けられていて、ばね16dによって地面Gの方向に付勢されている。また、ブレーキ係止部材17は、係止部17aと被押圧部17bを有していて、ばね17cにより係止部17aをブレーキ部材16の被係止部16cに押しつける方向に付勢されている。そして、ブレーキ係止解除ボタン18は、頭部18aと押圧部18bを有していて、ばね18cにより押圧部18bをブレーキ係止部材17の被押圧部17bから遠ざける方向に付勢されている。
【0031】
図5に示す非ブレーキ状態においては、ブレーキ部材16は、ばね16dの付勢力により摩擦部16bが地面Gと接地しないように、その被係止部16cをブレーキ係止部材17の係止部17aに係止されている。この非ブレーキ状態からブレーキ状態に移行する場合には、ブレーキ係止解除ボタン18を押す。すると、ブレーキ係止解除ボタン18の押圧部18bがブレーキ係止部材17の被押圧部17bを押圧することで、ブレーキ係止部材17は図5における右方向に移動させられる。そのため、ブレーキ係止部材17の係止部17aによる係止が解除され、ブレーキ部材16はばね16dの付勢力により地面Gの方向に移動させられ、摩擦部16bが地面Gと接地したところで停止する。この状態が、図6に示されているブレーキ状態である。このブレーキ状態では、ばね16dの付勢力により摩擦部16dが地面Gに押し付けられているため、斜面などで把手部3から手を離しても、カートが勝手に動きだすことはない。
【0032】
図6のブレーキ状態を解除する場合には、ブレーキ部材16を図6における上方向に引き上げる。そして、ブレーキ部材16の被係止部16cがブレーキ係止部材17の係止部17aよりも上側にくると、ブレーキ益し部材17はばね17cの付勢力により図6における左側に移動させられ、ブレーキ係止部材17の係止部17aブレーキ部材16の被係止部16cを係止する。このようにして図5に示された非ブレーキ状態に戻る。
【0033】
本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートは、板部材4,5の一方をスライドさせると他方も逆方向にスライドさせられるようにするためにワイヤー9,10を用いて板部材同士を連結しているが、本発明はこのような機構以外にも公知の様々な機構を用いることが可能である。例えば、図3のように基台部1の凹部1a内部にプーリー6,7を配置してワイヤー9,10をかける代わりに、図7のように基台部1の凹部1a内部に歯車19を配置するとともに該歯車19に噛合するように板部材4,5にそれぞれ歯部4f,5gを形成し、板部材4,5の一方をスライドさせると他方も逆方向にスライドさせられるようにしてもよい。
【0034】
本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートは、初期状態,第1の拡張状態,第2の拡張状態の三段階に幅調整を行うことができる。しかし、本発明の幅調整は、三段階に限定されるものではない。必要に応じて二段階にしても良いし、四段階以上にしても良い。その場合には、係止部材12の係止部の数を必要に応じて増やしたり減らしたりすれば良い。
【0035】
本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートに備え付けられている複数の車輪2は、その全てが水平方向に回動し得るタイプである。しかし、本発明はこのように限定されず、水平方向に回動しない固定輪を用いても構わない。
【0036】
本発明に係る幅調整機構付きショッピングカートは、係止機構11とブレーキ機構15が共通のケース内に収納されて基台部1の把手部3を取り付けている位置の近傍に配置されている。しかし、係止機構11とブレーキ機構15は、共通のケース内に収納されている必要はなく、互いに別の場所に設けるようにしても構わない。また、係止機構11とブレーキ機構15は、いずれも、基台部1の把手部3を取り付けている位置の近傍ではなく、それ以外の場所に配置しても構わない。
【符号の説明】
【0037】
1 基台部
2 車輪
3 把手部
4,5,14 板部材
4c,16c 被係止部
6,7 プーリー
8 ばね
9,10 ワイヤー
11 係止機構
12 係止部材
12a,12b,17a 係止部
13 係止解除ボタン
15 ブレーキ機構
16 ブレーキ部材
17 ブレーキ係止部材
18 ブレーキ係止解除ボタン
【要約】
【課題】底面の面積が大きい荷物を載せても安定して運搬することが可能であり、しかも、載せる荷物が大きくないときにも場所をとらないショッピングカートを提供する。
【解決手段】ショッピングカートの基台部1に対してスライド可能に板部材4,5を取り付ける。板部材4,5は、互いに反対方向にスライド可能であり、通常の使用時には板部材4,5の載置面の大きさが基台部1と略同じとなっているが、拡張して使用する際には板部材4,5を互いに反対方向にスライドさせて板部材4,5の載置面の大きさが基台部1よりも大きくなった位置で係止する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7