【実施例】
【0032】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る自己撮影機能付スマートグラスは、スマートグラス1であって、魚眼レンズ2を備える魚眼カメラ3と、魚眼カメラ3をスマートグラス1に接続固定する伸縮可能なアーム4等の固定手段と、を備え、スマートグラス1を装着したユーザーの肩から上を真正面から撮影可能な位置に魚眼カメラ3を固定する。尚、図中の一点鎖線は魚眼カメラ3の光軸である。伸縮可能なアーム4は、アーム伸縮スイッチボタン5を押す度に、ボタン一つで伸縮できるようにすることが望ましい。又、伸縮可能なアーム4は、相手ユーザーを呼び出すとき、あるいは、相手ユーザーからの呼び出しに応答するときに自動的に伸び、テレビ電話を終了したときに自動的に縮むようにすることもでき、この場合には、アーム伸縮スイッチボタン5は不要となる。又、伸縮可能なアーム4はスマートグラス1のメガネフレームに収納できるようにすることが望ましい。尚、前方撮影用カメラ6は、ユーザーの前方のシーンを撮影できるカメラである。
【0033】
スマートグラス1の映像投影部については、液晶ディスプレイを用いるもの、プロジェクターを用いるもの、プリズムを用いるもの、コンタクトレンズを用いるもの等、様々な方式・形態が考えられるし、本発明の本質的部分ではないので、
図1及び
図2、
図5ないし
図11において点線で例示してある。尚、本発明は、テレビ電話等においてユーザーと相手ユーザーが向き合って視線を合わせることを念頭に置いているので、スマートグラス1は両眼ディスプレイを有するのが原則である。しかし、例外的に本発明を単眼ディスプレイのスマートグラスに適用する場合には、魚眼カメラ3は単眼ディスプレイを装着した右目又は左目の真正面からユーザーの肩から上を撮影できる位置に固定して、ユーザーは相手ユーザーと片眼で視線を合わせることができるようにしてもよい。
【0034】
魚眼カメラ3は、ユーザーの顔に近い位置、具体的には、スマートグラス1のテンプル(つる)の長さ程度離れた位置から、ユーザーの肩から上を撮影可能であるカメラを全て含むものとする。すなわち、テレビ電話等で通常要求される範囲を撮影できるものであれば良い。
【0035】
魚眼カメラ3等の自己撮影用カメラをスマートグラスに接続固定するアーム等の固定手段は、
図5ないし
図9に示すアーム7のように伸縮しないものにして、スマートグラス1に取付け及び取外し可能にしてもよい。又、その材質、スマートグラス1との接点等に制限は無い。但し、できるだけユーザーの視界を遮らないように、強度を保ちつつ、できるだけ細くしたり透明にしたりすることが望ましい。又、ウェアラブルデバイスに共通の要求として、軽量であることが望ましい。
【0036】
魚眼カメラ3は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の画像センサーを備え、その出力信号は、アーム等の固定手段内部を通るケーブルによってスマートグラス1の画像信号入力部に伝送される。
【0037】
又、魚眼カメラ3の出力信号を無線LANでスマートグラス1に伝送することもできる。この場合は、魚眼カメラ3をスマートグラス1に外付けにして、アプリケーションソフトをダウンロードして使用するようにできるので、スマートグラスの様々な機種に対応可能にすることができる。
【0038】
スマートグラス1を装着したユーザーの肩から上を真正面から撮影可能な位置に魚眼カメラ3を固定することによって、テレビ電話等において、ユーザーと相手ユーザーが互いの顔を見ながら向き合って視線を合わせて対話できるようになる。
【0039】
この際、前方撮影用カメラ6を用いてユーザーが見ているシーンを同時に撮影することも当然にできるので、相手ユーザーは、ユーザーがどのようなシーンを見てどのような表情をしているのかを同時に見ることもできるようになる。
【0040】
魚眼カメラ3等で撮影した画像の歪みを補正するためには、従来からある魚眼画像の射影変換技術を用いることができる。背景技術において記載したように変換式等は公知であるし、本発明の本質的部分ではないので、ここでは改めて説明しないこととする。
図3の左側に標準レンズで撮影した画像の説明図を、右側に魚眼レンズ(Circular Fisheye Lens 180°)で撮影した画像の説明図を示す。
図1及び
図2に示した魚眼カメラ3と同じ位置から、標準レンズ(画角50°)を備えるカメラでスマートグラス1を装着したユーザーを撮影すると、
図3の左側に示したような画像になり、顔の一部の画像しか得られない。これに対して、魚眼レンズ(画角180°)で同様に撮影すると、
図3の右側に示したような画像になり、歪みの補正をすることによって、ユーザーの肩から上を真正面から撮影した画像が得られる。
図4の左側に歪み補正前の画像を、右側に歪み補正・切出し・拡大処理をした後の画像を示す。
【0041】
尚、ユーザー間の画像データや音声データの送受信については、WebカメラとPC等を用いる従来のテレビ電話等と同様の技術を適用することができる。
【0042】
図5ないし
図9に示すように、本発明の実施形態に係る自己撮影機能付スマートグラスは、アーム7をスマートグラス1に取付け及び取外し可能にすることもできる。この場合、魚眼カメラ3とスマートグラス1との信号伝達は、有線ケーブル又は無線LANを用いて行う。
【0043】
まず、有線ケーブルを用いる場合、取付け及び取外し可能なアーム7は、魚眼カメラ3等とスマートグラス1を結ぶケーブルを内蔵し、各種コネクタによって、スマートグラス1に接続できるようにする。又、スマートグラス1のコネクタ差込口には蓋を設け、アーム7を取外している時にはコネクタ差込口を閉塞できるようにする。更に、アーム7が抜け落ちることを防止する目的ために、コネクタ取外しボタン8を押したときにだけ取外すことができるようにもできる。例えば、
図5に示す丸型コネクタ9を、丸型の蓋10を設ける丸型コネクタ差込口11に差し込むことによってスマートグラス1に接続できるようにする。又、
図6に示す平型コネクタ12を、平型の蓋13を設ける平型コネクタ差込口14に差し込むことによってスマートグラス1に接続できるようにする。又、
図7に示すUSBコネクタ15を、四角形の蓋16を設けるUSBコネクタ差込口17に差し込むことによってスマートグラス1に接続できるようにする。
【0044】
次に、無線LANを用いる場合、
図9に示すアーム7はスマートグラス1のフレームとの連接部18を備え、締付けネジ19で固定できるようにする。無線LANを用いる場合、アプリケーションソフトウェアをダウンロードすることによって魚眼カメラ3からの出力信号を受信できるようになるので、スマートグラス1の様々な機種に対応できる。この際、高速処理のためには歪み補正処理をソフトウェアではなくハードウェアに実装することが望ましく、スマートグラス1に実装できなければ魚眼カメラ3に実装するようにしてもよい。
連接部18や締付けネジ19は、スマートグラス1の対応機種毎に調整できるようにする。尚、
図9における連接部18等のデザインは一例に過ぎない。
これによって、テレビ電話等をするとき以外は、魚眼カメラ3及びアーム7を取外すことが可能になり、操作性及び機動性が向上する。
【0045】
図10及び
図11に示すように、本発明の実施形態に係る自己撮影機能付スマートグラスは、旋回式アーム20が、スマートグラス1との接合部にアーム旋回軸(その1)21を備え、魚眼カメラ3がアーム旋回軸(その1)21を中心に旋回できるようにすることもできる。
【0046】
旋回式アーム20は、スマートグラス1のテンプル前端付近にアーム旋回軸(その1)21で接合される。旋回式アーム20は、テレビ電話等をするとき以外は、スマートグラス1のテンプルに重ねるか、又は、はめ込むようにする。このとき、魚眼カメラ3が耳の後ろに位置するようになるので、ユーザーの頭部に不快感を与えないように設計する必要がある。
【0047】
テレビ電話等をするときには、旋回式アーム20を、まず、アーム旋回軸(その1)21を中心に前方へ180°旋回させ、次に、アーム旋回軸(その2)22を中心にユーザーから見て左へ90°旋回させる。これによって、魚眼カメラ3をユーザーの真正面に固定できるようにする。
【0048】
図12に示すように、本発明の実施形態に係る自己撮影機能付スマートグラスは、魚眼カメラ3の光軸と、相手ユーザーの目を見ているユーザーの視線とを合わせることができるように、魚眼カメラ3の位置を固定し、又は、相手ユーザーの映像を表示する位置を固定する。これによって、ユーザーが相手ユーザーと向き合って視線を合わせながら、テレビ電話等ができるようになる。
【0049】
図12に示す矢印は、カメラの光軸及び相手ユーザーの目を見ているユーザーの視線23である。このとき、ユーザーが視認する相手ユーザーの映像24の中で、ユーザーの注視点である相手ユーザーの目は、ユーザーの眼球25の中心窩で結像している。そして、魚眼カメラ3で撮影したユーザーの映像の中で、相手ユーザーの注視点であるユーザーの目は、相手ユーザーの眼球の中心窩で結像している。これによって、ユーザーと相手ユーザーは、向き合って視線を合わせることができる。
【0050】
次に、本発明の実施形態に係る自己撮影機能付スマートグラスは、
図13に示すようなユーザーの前方の光景を撮影するための前方撮影用カメラ6と、魚眼カメラ3で撮影した画像に基づきユーザーの視線を検出する視線検出手段と、を備え、前方撮影用カメラ6で前記視線の方向をズームして撮影することができる。
図13には、ユーザー前方の光景の一例として三つの丘があり、左側の丘の上には家26が建ち、そして、右側の丘の上に人27が立っている。
【0051】
スマートグラス1に備えられる前方撮影用カメラ6でユーザーが注視している方向を撮影しようとする場合に、前方撮影用カメラ6が向いている方向が、ユーザーの注視している方向と一致するとは限らない。前方撮影用カメラ6は概ねユーザーの顔と同じ方向を向いているが、前方に広がるシーンの特定の部分を注視するときに、ユーザーは顔を向けずに眼球だけを動かす場合も多いからである。そこで、魚眼カメラ3で撮影した画像に基づきユーザーの視線を検出する視線検出手段によってユーザーの視線を検出し、前方撮影用カメラ6で前記視線の方向をズームして撮影できるようにする。
【0052】
例えば、
図14の左下に示すように、ユーザーの視線が左に向いて家26を注視している場合、
図14の左上に示すように、家26をズームして撮影できるようにする。又、
図14の右下に示すように、ユーザーの視線が右に向いて人27を注視している場合、
図14の右上に示すように、人27をズームして撮影することができるようにする。
【0053】
本発明では、自己撮影用の魚眼カメラ3とスマートグラス1との相対的な位置関係は一定であるためユーザーの視線を容易に検出することができ、更に、スマートグラス1と前方撮影用カメラ6との相対的な位置関係も一定であるため前方撮影用カメラ6で前記視線の方向をズームして撮影することができる。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係る自己撮影機能付スマートグラスは、魚眼カメラ3で撮影した画像、又は、前記画像の歪みを補正した後の画像から、スマートグラス1の領域を自動的に除去するスマートグラス領域除去手段と、スマートグラス1の領域を除去した後の欠損領域を自動的に補間する領域補間手段と、を備え、スマートグラス1を装着していない状態の前記ユーザーの顔の画像を生成することができる。
【0055】
これによって、テレビ電話等において、特に普段メガネをしないユーザーがスマートグラスを装着していない自分の顔を相手ユーザーに見せたいときに、自己撮影画像からスマートグラスを装着していない自分の顔を生成して、相手に見せることができるようになる。
【0056】
本発明では、魚眼カメラ3とスマートグラス1との相対的な位置関係は一定である。従って、スマートグラス1及び固定手段が写り込んでいる領域を容易に特定して除去することが可能である。次に、スマートグラス1を装着したときの、スマートグラス1とユーザーの顔との位置関係も概ね一定である。そこで、スマートグラス1の領域を除去した後の欠損領域については、例えば次の手順に従って補間することができる。
まず、スマートグラス1を装着しているときと外しているときのユーザーを前方撮影用カメラ6等で撮影する。そして、スマートグラス1を外しているときに撮影したユーザーの画像において、スマートグラス1によって遮蔽されることとなる領域を小領域に分割し、各小領域の色又はテクスチャ又はエッジ若しくは輪郭の連続性が最も類似している他の領域を予め特定しておく。
次に、テレビ電話等をするときに、スマートグラス1の領域を除去した後の欠損領域を、予め特定した領域に対応する位置にある領域の画素値やテクスチャをもって補間する。
【0057】
例えば、
図15の左に示すようなスマートグラスを装着したユーザーの画像から、スマートグラスの領域を除去して、除去した後の欠損領域を補間することによって、
図15の右に示すような画像を得ることができる。
【0058】
次に、本発明の実施形態に係る自己撮影機能付スマートグラスは、ユーザーの前方を撮影するための前方撮影用カメラ6と、前記前方撮影用カメラ6で撮影した画像から、自己撮影用の魚眼カメラ3及びアーム7が写り込んでいる領域を自動的に除去する領域除去手段と、前記領域を除去した後の欠損領域を自動的に補間する領域補間手段と、を備え、スマートグラス1を装着していない状態の前記ユーザーの前方画像を生成することができる。
【0059】
この場合も、自己撮影用の魚眼カメラ3とスマートグラス1との相対的な位置関係は一定であるので、魚眼カメラ3及びアーム7の領域を容易に除去することができる。又、領域を除去した後の欠損領域の補間については、従来からある線形補間や平滑化を用いることができるが、テクスチャを表現できないことや境界の不連続が生じることがあるので、前フレーム画像の中から欠損領域に対応する領域をもって補間することが望ましい。
【0060】
例えば、
図16の左に示すようなユーザーの前方を撮影した画像から、魚眼カメラ3及びアーム7が写り込んだ領域を除去して、除去した後の欠損領域を補間することによって、
図15の右に示すような画像を得ることができる。
【0061】
次に、本発明の実施形態に係る自己撮影機能付スマートグラスは、ステレオ画像撮影用魚眼カメラと、前記ステレオ画像撮影用カメラをスマートグラス1に接続固定するアーム等の固定手段と、を備え、前記ステレオ画像撮影用カメラを魚眼カメラ3と離れた位置に固定することによって、前記ユーザーのステレオ画像を撮影することができる。この場合、魚眼カメラ3はスマートグラス1を装着したユーザーを真正面から撮影可能な位置に固定されているので、新たに備えるステレオ画像撮影用魚眼カメラは、例えば、既にアームを備えているテンプルとは反対側のテンプルに固定する。これによって、左右二つの魚眼カメラで同時にユーザーを撮影することができるようになる。この際、一般的には、ステレオベース(左右のカメラの間隔)は人の目幅と同等の6〜7cm程度にする場合が多いが、本発明では、被写体であるユーザーまでの距離が近いので小さく設定することが望ましい。又、カメラの向きは平行撮影できるように固定することが望ましい。例えば、
図17に示すように、スマートグラス1に、右画像撮影用魚眼カメラ28を右画像撮影用アーム29で固定することによって、ユーザーのステレオ画像を撮影することができるようになる。