(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720113
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】固体脂の製造法
(51)【国際特許分類】
C11C 3/00 20060101AFI20150430BHJP
A23D 9/02 20060101ALI20150430BHJP
C11C 3/10 20060101ALI20150430BHJP
C11B 7/00 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
C11C3/00
A23D9/02
C11C3/10
C11B7/00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-99122(P2010-99122)
(22)【出願日】2010年4月22日
(65)【公開番号】特開2011-225778(P2011-225778A)
(43)【公開日】2011年11月10日
【審査請求日】2013年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】榊 晃生
【審査官】
井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−249614(JP,A)
【文献】
特開2008−194011(JP,A)
【文献】
特開2009−051973(JP,A)
【文献】
特開2002−012887(JP,A)
【文献】
特開2002−338992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00−15/00
C11C 1/00− 5/02
A23D 7/00− 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素価55以上のパーム系油脂を原料にして得られる、固体脂全体中のトリパルミチン酸グリセライド含量が45重量%以上、かつ、2位の構成脂肪酸がパルミチン酸であるグリセライドの含量が65重量%以上である固体脂。
【請求項2】
固体脂全体中のトリパルミチン酸グリセライド含量が60重量%以上である請求項1に記載の固体脂。
【請求項3】
ヨウ素価55以上のパーム系油脂を原料にし、エステル交換能を有した触媒下で油脂結晶を発生させながら10℃〜40℃でダイレクトエステル交換反応した後、液状油脂を分別除去することを特徴とする固体脂の製造方法。
【請求項4】
反応物中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、その後軟質部を分別除去することを特徴とする請求項3に記載の固体脂の製造方法。
【請求項5】
ダイレクトエステル交換後の油脂を0〜40℃で冷却結晶化し、その後乾式分別により軟質部を分別除去することを特徴とする請求項3又は4に記載の固体脂の製造方法。
【請求項6】
乾式分別温度が、0〜30℃である請求項5に記載の固体脂の製造方法。
【請求項7】
軟質部を乾式分別により分別除去して得た固体脂を、40〜60℃まで昇温した後、乾式分別により再び軟質部を除去することを特徴とする請求項5又は6に記載の固体脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体脂の製造法及び固体脂に関する。
【背景技術】
【0002】
パーム油は、酸化安定性が高く、価格競争力もあることから、年々生産量が増加している。そのため、パ−ム油を原料として、マーガリン、チョコレート、ホイップクリームなどの加工油脂食品やサラダ油などの液状油脂など様々な用途で利用されおり、今後更なる利用の拡大が予想される。そこで、パ−ム油を原料として液状油脂を作製する方法がいくつか提案されている(非特許文献1)。その際にろ別される固体脂は、構成脂肪酸としてパルミチン酸が多いものの、その殆どが1、3位に結合している。
【0003】
一方、2位にパルミチン酸を有するグリセライドは、母乳の油脂成分に多く含まれるOPO(2−パルミトイル−1,3−ジオレイルトリグリセライド)構造の原料や、マーガリンやチョコレートの原料に利用されるPPO(1,2−ジパルミトイル−3−ジオレイルトリグリセライド)構造の原料になり、例えばオレイン酸と、トリパルミチン酸グリセライド(PPP)のように2位にパルミチン酸を有するトリグリセライドとを1,3位特異的酵素などによって1,3位を特異的にエステル交換することで作製される。また、PPPを主とする油脂は、チョコレート油脂の原料やそのまま加工してマイクロカプセルの基材などにも利用されている。
【0004】
2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含む天然の油脂としては、ラードを挙げられるが、ラードは独特の獣臭が発現し、更に時間の経過と共に戻り臭が発生し、また宗教上の理由で使用が困難な場合があったり、といろいろな問題がある。そこで、植物油から2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含む油脂の開発が望まれている。
【0005】
自然界に豊富にあるオレイン酸やリノール酸を多く含んだ油脂を水素添加して得られるステアリン酸を有するグリセライドを含む油脂とは異なり、パルミトオレイン酸などの炭素数16の不飽和脂肪酸含量は自然界に極端に少ないため、天然原料を水素添加して2位にパルミチン酸を有するグリセリドを得ることは出来ない。
【0006】
2位にパルミチン酸を有するグリセライド得る方法として、パルミチン酸の含量が多いが、2位にパルミチン酸を有するグリセライドが少ないパーム油を化学的にランダムエステル交換することで、2位のパルミチン酸含量を増加させる方法がある(特許文献1)が、この方法はランダムエステル交換のみで行われており、得られる2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量も58%が限界であった。
【0007】
高純度なPPPを得る方法として、パーム油を原料として溶剤を用いて繰り返し分別する方法(特許文献2)がある。しかし、パーム油自体には構成脂肪酸としてパルミチン酸が多く含まれているものの、PPPの形としては多く含まれないため、高純度のPPPを得るには溶剤を用いて繰り返し分別する必要があり、最終的に得られる収率も低く、また、溶剤を使用しているため溶剤を除去する必要があり生産性が悪い。また油脂中のPPP以外の油脂組成はPOPやPOOなど2位にパルミチン酸を含まないグリセライドが殆どであるため、油脂中の2位にパルミチン酸を有するグリセライドの含量は低い。
【0008】
別の方法としてグリセリンとパルミチン酸のエステル合成反応により合成する方法もあるが、この方法は高純度なPPPが得られるが純度の高い脂肪酸、グリセリンが必要であることや反応後に脂肪酸を除去する必要があるなど非常にコストがかかるといったデメリットがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61―209544号公報
【特許文献2】特開平9−75015号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Principles of palm olein fractionation, Lipid Technology, 19, pp.152-155(2007.7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、パーム系油脂から、2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含有し、中でもトリパルミチン酸グリセライド(PPP)を多く含む油脂を、安価で液状油脂と同時に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ヨウ素価55以上のパーム油脂を原料にしてダイレクトエステル交換反応を行ない、2位にパルミチン酸を有するグリセライドを増加させた後分別することで、2位にパルミチン酸を有するグリセライドを高含有する油脂を安価に得られることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の第一は、ヨウ素価55以上のパーム系油脂を原料にして得られる、固体脂全体中のトリパルミチン酸グリセライド含量が45重量%以上
、かつ、2位の構成脂肪酸がパルミチン酸であるグリセライドの含量が65重量%以上である固体脂に関する。好ましい実施態様は、固体脂全体中のトリパルミチン酸グリセライド含量が60重量%以上である上記記載の固体脂に関する
。本発明の第二は、ヨウ素価55以上のパーム系油脂を原料にし、
エステル交換能を有した触媒下で油脂結晶を発生させながら10℃〜40℃でダイレクトエステル交換反応した後、液状油脂を分別除去することを特徴とする固体脂の製造方法に関する。好ましい実施態様は、反応物中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、その後軟質部を分別除去することを特徴とする上記記載の固体脂の製造方法に関する。より好ましくは、ダイレクトエステル交換後の油脂を0〜40℃で冷却結晶化し、その後乾式分別により軟質部を分別除去することを特徴とする上記記載の固体脂の製造方法、更に好ましくは、乾式分別温度が、0〜30℃である上記記載の固体脂の製造方法、特に好ましくは、軟質部を乾式分別により分別除去して得た固体脂を、40〜60℃まで昇温した後、乾式分別により再び軟質部を除去することを特徴とする上記記載の
固体脂の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従えば、パーム系油脂から2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含有し、中でもトリパルミチン酸グリセライド(PPP)を多く含む油脂を安価に製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の固体脂は、パーム軟質油を原料にして、特定量のトリパルミチン酸グリセライドを含有することを特徴とする。なお、本発明におけるトリグリセライドの表記は以下の通りである。
SSS:トリ飽和脂肪酸グリセライド
PPP:トリパルミチン酸グリセライド
S2U:ジ飽和脂肪酸モノ不飽和脂肪酸グリセライド
【0016】
本発明の固体脂におけるトリパルミチン酸グリセライド含量は、45重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましい。トリパルミチン酸グリセライド含量が45重量%未満であると、該固体脂を原料として2位の構成脂肪酸がパルミチン酸である油脂組成物を効率的に作製できない。そして、該固体脂全体中には、2位の構成脂肪酸がパルミチン酸であるグリセライドを65重量%以上含有することが好ましい。65重量%未満であると、該固体脂を原料として2位の構成脂肪酸がパルミチン酸である油脂組成物を効率的に作製できない場合がある。
【0017】
本発明の固体脂の製造方法は、特に限定はないが、例えば以下のようにすれば、パーム系油脂から2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含有し、中でもPPPを多く含む油脂を容易に安価で作製することができる。
【0018】
使用する原料としてはパーム系油脂が主であり、パーム系油脂としてはパーム精製油、未精製のクルード油および一回以上の分別によって得られた分画油が例示される。また、パーム系油脂のヨウ素価は55以上であることが好ましい。ヨウ素価が55未満の場合は、同時に作製されるパーム系油脂由来液状油脂の量が少なくなりすぎる場合がある。
【0019】
本発明の固体脂の製造方法においては、原料油脂としてパーム系油脂以外の油脂をさらに用いても良い。但し、本発明の効果をより享受するためにはパーム系油脂以外の油脂の含有量は、原料油脂全体中50重量%以下である。
【0020】
前記パーム系油脂以外の油脂としては、食用であれば特に限定はないが、大豆油、ナタネ油、ひまわり油、オリーブ油、ごま油、キャノーラ油、やし油、パーム核油、シア油、サル脂、イリッぺ脂、カカオ脂、牛脂、豚脂、乳脂、これらの油脂の分別脂、硬化油、エステル交換油などが挙げられる。
【0021】
そして、ヨウ素価55以上のパーム系油脂を原料としたダイレクトエステル交換反応を、少なくとも反応中の油脂組成物中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になり、反応を停止させるまで行うことが好ましく、その後液状油脂を分別除去することを特徴とする。前記を満たせば、ダイレクトエステル交換反応はどれだけ行っても良いが、コストを考え、前記を満たせば直ぐに停止させることが好ましい。ここでダイレクトエステル交換反応とは、エステル交換能を有した触媒下で油脂結晶を発生させながらエステル交換を行う反応のことである。本発明のダイレクトエステル交換反応の方法はバッチ式、連続式を問わない。
【0022】
前記ダイレクトエステル交換反応に使用する触媒は特に限定せず、エステル交換能を有していれば化学触媒、酵素触媒など何を使用しても良い。化学触媒の中でもカリウムナトリウム合金は低温での活性が高いことから好ましく、ナトリウムメチラートは経済性や扱い易さからより好ましい。化学触媒の使用量は特に限定されず、通常のエステル交換で使用される量で良いが、反応効率と経済性から反応油脂100重量部に対して0.01重量部〜1重量部が好ましい。酵素触媒は、エステル交換能を有するリパーゼであれば特に限定されず、位置特異性が全くないランダムエステル交換酵素でも、1,3位特異性を有するエステル交換酵素でも良い。酵素触媒の使用量はエステル交換反応が進行する量で良く、特に限定されないが、反応効率と経済性から反応油脂100重量部に対して0.5重量部〜20重量部が好ましい。
【0023】
ダイレクトエステル交換反応の反応温度は、高融点グリセライドが結晶化する温度であれば特に限定されないが、反応開始時は効率良く反応を行なうために触媒活性が最も高くなる温度が好ましい。具体的にはナトリウムメチラートを使用する場合においては50℃〜120℃が好ましい。また、酵素触媒の場合においては50℃〜70℃が好ましい。最終的な温度は、一般的な高融点グリセライドの結晶化効率の観点から10℃〜40℃が好ましく、最終的な温度をダイレクトエステル交換温度とする。
【0024】
ダイレクトエステル交換反応において、攪拌はあっても無くても良いが、油脂に流動性を与えるためには1000rpm以下の速度で攪拌を行うことが好ましい。分別効率を考慮すると、攪拌速度は600rpm以下で攪拌することがより好ましい。
【0025】
ダイレクトエステル交換反応の停止は、反応が停止しさえすれば方法は問わず、化学触媒であれば水やクエン酸水の添加などが挙げられる。ダイレクトエステル交換反応を停止するタイミングは、液状油脂の収率の観点から反応中の油脂組成中のSSS含量が31重量%以下且つS2U含量が14重量%以下になるまで反応した後が好ましい。
【0026】
本発明の固体脂の製造方法における分別の方法は、溶剤分別、乾式分別問わないが、溶剤分別は溶剤の使用により設備費やランニングコストがかかるため、溶剤を使用しない乾式分別が好ましい。もし、溶剤を使用する場合は、ヘキサン、アセトンなどを用いることができる。乾式分別の分別温度は、ろ別する液状油脂の液状性を充分にするためには0〜30℃以下が好ましく、収率の観点も含めると0℃〜10℃がより好ましい。固体脂中の2位にパルミチン酸を有するグリセライドの含有量を高めるためには、一旦前記乾式分別を行った後、分別温度を上昇させて、40℃〜60℃で再度分別することが好ましく、2位にパルミチン酸を有するグリセライドの含有量と収率を考慮すると45℃〜55℃がより好ましい。
【0027】
本発明の固体脂は、クリーム、マーガリン、ショートニング、チョコレートなどの加工油脂製品の原料やそのままマイクロカプセルの基材などに利用することが出来る。また、OPO(2−パルミトイル−1,3−ジオレイルトリグリセライド)構造油脂の原料や、PPO(1,2−ジパルミトイル−3−ジオレイルトリグリセライド)構造油脂の原料などに利用することも出来る。
【0028】
なお、本発明において前記各トリグリセライド含量を測定する方法は、以下の通りである。
<液状油脂中の各トリグリセライド含量の測定>
本発明の各トリグリセライド含量は、HPLCを用いて、AOCS Official Method Ce 5c−93に準拠して測定し、各ピークのリテンションタイムおよびエリア比から算出した。以下に、分析の条件を記す。
溶離液 :アセトニトリル:アセトン(70:30、体積比)
流速 :0.9ml/分
カラム :ODS
カラム温度:36℃
検出器 :示差屈折計
【実施例】
【0029】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0030】
<液状油脂中の各トリグリセライド含量の測定>
本発明の各トリグリセライド含量は、HPLCを用いて、AOCS Ce5c−97に準拠して測定し、各ピークのリテンションタイムおよびエリア比から算出した。以下に、分析の条件を記す。
溶離液 :アセトニトリル:アセトン(70:30、体積比)
流速 :0.9ml/分
カラム :ODS
カラム温度:36℃
検出器 :示差屈折計
【0031】
<2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量の測定>
分析対象の油脂7.5gとエタノール22.5gを混合しノボザイム435(ノボザイムジャパン社製)を1.2g加えて30℃で4時間反応させ、反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(型番:シリカゲル60(0.063−0.200mm)カラムクロマトグラフィー用、メルク社製)によりトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドの各成分に分離し、そのうちモノグリセリド成分を回収した。そのモノグリセリド0.05gをイソオクタン5mlに溶解し、0.2mol/Lナトリウムメチラート/メタノール溶液1mlを加えて70℃で15分間反応させることによりメチルエステル化し、酢酸により反応液を中和した後に適量の水を加え、有機相をガスクロマトグラフ(型番:6890N、Agilent社製)によるリテンションタイム及びピークエリア面積により2位にパルミチン酸を有するグリセライド含有量を決定した。
【0032】
(実施例1) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ27重量%、11.6重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を反応停止した。その後、加熱して全ての結晶を溶解し、70℃の温水を5000重量部加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行なった後、白土を2重量部加えて20分間攪拌し、その後ろ過することで白土を除き、脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で降温し、10℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、固体脂全体中のSSS含量が59重量%、PPP含量が45重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が76重量%である固体脂を2250重量部(収率:45%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。
【0033】
【表1】
【0034】
(実施例2) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で8時間行った後、さらに25℃で約24時間該反応を行ってSSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ30重量%、9.4重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、固体脂全体中のSSS含量が64重量%、PPP含量が48重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が82重量%である固体脂を2300重量部(収率:46%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。
【0035】
(実施例3) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で8時間、27.5℃で2時間、25℃で12時間、22.5℃で約24時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ23重量%、10.6重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、固体脂全体中のSSS含量が59重量%、PPP含量が45重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が75重量%である固体脂を1950重量部(収率:39%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。
【0036】
(実施例4) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを10重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で8時間、27.5℃で2時間、25℃で2時間、22.5℃で5時間、18℃で約15時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ29重量%、3.8重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、固体脂全体中のSSS含量が64重量%、PPP含量が49重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が83重量%である固体脂を2250重量部(収率:45%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。
【0037】
(実施例5) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ27重量%、11.6重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を反応停止した。その後、加熱して全て結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、30℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、固体脂全体中のSSS含量が68重量%、PPP含量が52重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が70重量%である固体脂を2050重量部(収率:41%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。
【0038】
(実施例6)
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ18重量%、13.5重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を反応停止した。その後、加熱して全て結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、30℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いて軟質部をろ別後、圧力を開放した状態で温度を45℃まで昇温し再び3MPaまで加圧を行なった後、再び温度を60℃まで上昇させた後、再度3MPaまで加圧して、固体脂全体中のSSS含量が95重量%、PPP含量が78重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が91重量%である固体脂を400重量部(収率:8%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。
【0039】
(実施例7)
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ18重量%、13.5重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を反応停止した。その後、加熱して全て結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、20℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いて軟質部をろ別後、圧力を開放した状態で温度を45℃まで昇温し、再び3MPaまで加圧を行なった後、再び温度を55℃まで上昇させた後、再度3MPaまで加圧して、固体脂全体中のSSS含量が80重量%、PPP含量が61重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が82重量%である固体脂を1000重量部(収率:20%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。
【0040】
(実施例8)
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ18重量%、13.5重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を反応停止した。その後、加熱して全て結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、20℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いて軟質部をろ別後、圧力を開放した状態で温度を45℃まで昇温し、再び3MPaまで加圧を行なった後、再び温度を50℃まで上昇させた後、再度3MPaまで加圧して、固体脂全体中のSSS含量が73重量%、PPP含量が56重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が84重量%である固体脂を1150重量部(収率:23%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。
【0041】
(実施例9)
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ27重量%、11.6重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を反応停止した。その後、加熱して全て結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、20℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いて軟質部をろ別後、圧力を開放した状態で温度を45℃まで昇温し、再び3MPaまで加圧を行なった後、再び温度を55℃まで上昇させた後、再度3MPaまで加圧して、固体脂全体中のSSS含量が83重量%、PPP含量が65重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が83重量%である固体脂を1500重量部(収率:32%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。
【0042】
(比較例1) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを10重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で8時間、27.5℃で2時間、25℃で2時間、22.5℃で5時間、18℃で約15時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ37重量%、3.4重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、固体脂全体中のSSS含量が44重量%、PPP含量が固体脂全体中33重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が36重量%である固体脂を4150重量部(収率:82%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。
【0043】
(比較例2) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後降温し、ダイレクトエステル交換反応を36℃で約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ13重量%、16.5重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、固体脂全体中のSSS含量が36重量%、PPP含量が27重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が47重量%である固体脂を1800重量部(収率:35%)得た。得られた固体脂について表1にまとめた。