特許第5720168号(P5720168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720168
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20150430BHJP
   H02M 7/21 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H02M7/12 Q
   H02M7/12 601B
   H02M7/21 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-231526(P2010-231526)
(22)【出願日】2010年10月14日
(65)【公開番号】特開2012-85489(P2012-85489A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】菅原 岳樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 正雄
【審査官】 中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−017087(JP,A)
【文献】 特開2010−073621(JP,A)
【文献】 特開平07−115774(JP,A)
【文献】 特開2001−045763(JP,A)
【文献】 特開2010−206941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/02−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流入力電圧を供給する交流電源と、
一端が前記交流電源の一端に接続された第1リアクトル、前記第1リアクトルの他端と前記交流電源の他端との間に、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが直列に接続された第1直列回路、前記第1スイッチング素子の両端に第1整流素子とコンデンサとが直列に接続された第2直列回路、及び前記第2スイッチング素子の両端に第2整流素子と前記コンデンサとが直列に接続された第3直列回路を有する第1PFC部と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子をオンオフ制御する制御回路とを有し、
前記制御回路は、PFCゲート制御回路とゲート駆動回路とからなり、
前記PFCゲート制御回路は、前記コンデンサの電圧に基づきゲート信号を生成し、
前記ゲート駆動回路は、前記交流電源の電圧波形の電圧を検出し、前記交流入力電圧が所定の電圧値以上のとき前記第1及び第2スイッチング素子を前記電圧波形の極性に同期させ且つ一方のスイッチング素子をオンさせ他方のスイッチング素子を前記ゲート信号に基づきオンまたはオフ動作させるとともに、前記交流入力電圧が所定の電圧値未満であるとき前記第1及び第2スイッチング素子をともに前記ゲート信号に基づきオンまたはオフ動作させることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記交流入力電圧が所定の電圧値未満であるとき前記第1及び第2スイッチング素子を少なくともON動作させることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記交流電源と前記コンデンサとの間に前記第1PFC部と並列に接続され且つ前記第1PFC部と同一構成の少なくとも1つ以上の第2PFC部を有し、
前記第1PFC部と前記第2PFC部とは、所定の位相差で動作することを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の特許文献1に記載されたスイッチング電源装置では、図7に示すように、ブリッジ形全波整流回路の帰還電流が流れる側の2個の整流素子をスイッチ素子104a,104bに置き換えている。このようなスイッチング電源装置は、ブリッジレスPFCと呼ばれ、制御回路106が、スイッチ素子104a,104bを適切に制御することにより、力率の改善及び変換効率・信頼性の向上を図っている。
【0003】
また、このスイッチング電源装置では、図8に示すように、交流入力電圧の上波側部(正電圧)と下波側部(負電圧)とを識別し、これに同期させてスイッチ素子104a,104bを動作させている。この場合、各々のスイッチ素子104a,104bにおけるスイッチングモード期間とON固定モード(同期整流モード)期間とを交流入力電圧の極性に応じて切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−115774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたスイッチング電源装置は、上記のような構成により、力率効率及び信頼性を向上することができる。
【0006】
しかしながら、従来のスイッチング電源装置は、スイッチング素子104a,104bの動作が安定せず、特に力率改善の効果が不十分であった。
【0007】
本発明の課題は、ブリッジレスPFC(力率改善回路)の構成を有し、力率が改善されたスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明は、交流入力電圧を供給する交流電源と、一端が前記交流電源の一端に接続された第1リアクトル、前記第1リアクトルの他端と前記交流電源の他端との間に、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが直列に接続された第1直列回路、前記第1スイッチング素子の両端に第1整流素子とコンデンサとが直列に接続された第2直列回路、及び前記第2スイッチング素子の両端に第2整流素子と前記コンデンサとが直列に接続された第3直列回路を有する第1PFC部と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子をオンオフ制御する制御回路とを有し、前記制御回路は、PFCゲート制御回路とゲート駆動回路とからなり、前記PFCゲート制御回路は、前記コンデンサの電圧に基づきゲート信号を生成し、前記ゲート駆動回路は、前記交流電源の電圧波形の電圧を検出し、前記交流入力電圧が所定の電圧値以上のとき前記第1及び第2スイッチング素子を前記電圧波形の極性に同期させ且つ一方のスイッチング素子をオンさせ他方のスイッチング素子を前記ゲート信号に基づきオンまたはオフ動作させるとともに、前記交流入力電圧が所定の電圧値未満であるとき前記第1及び第2スイッチング素子をともに前記ゲート信号に基づきオンまたはオフ動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入力電圧の上下波側部ともに、不感帯領域では、第1及び第2スイッチング素子を非同期整流スイッチングモードでスイッチングさせるので、ブリッジレスPFC(力率改善回路)の構成を有するスイッチング電源装置の力率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の構成図である。
図2図1に示すスイッチング電源装置に設けれるゲート駆動回路を示す構成図である。
図3図1に示すスイッチング電源装置における非同期整流スイッチングモード及び同期整流スイッチングモード時のデコーダの真理値表を示す図である。
図4図1に示すスイッチング電源装置における非同期整流スイッチングモード時及び同期整流スイッチングモード時の各部の動作を示す波形図である。
図5】実施例1のスイッチング電源装置のスイッチング動作と入力電流波形とを示す図である。
図6】本発明の実施例2に係るスイッチング電源装置の構成図である。
図7】従来のスイッチング電源装置の他の構成図である。
図8図7に示す電源装置における交流入力電圧及びスイッチング素子の動作モードを示す波形図である。
図9】従来のスイッチング電源装置のスイッチング動作と入力電流波形とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態のスイッチング電源装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、発明者らは、従来のスイッチング電源装置において力率が向上しない原因を調査した。図9に示す波形は、特許文献1に記載された従来のスイッチング電源装置の動作波形として、スイッチング素子104a,104bのスイッチング波形と入力電流波形とを示す。入力電流波形に歪みが現われており、このとき、スイッチング素子104a,104bがともにOFF状態にあり、所望の同期整流モードが行われていないことが判明した。
【0013】
交流入力電圧の上下波側部(極性)に同期させてスイッチング素子104a,104bを動作させる場合、上波側部と下波側部とを識別しなければならない。即ち、上波側部と下波側部とのそれぞれに対して、比較器及び基準電圧を用いて極性を識別しなければならない。しかしながら、交流入力電圧がゼロクロス近傍にある領域では、入力電圧値がどちらの基準電圧値に達しないため、上波側部と下波側部との切り替え期間周辺にはどちらの比較器にも反応しない不感帯領域(Dead band)が発生する。
【0014】
この不感帯領域でスイッチング動作を止めてしまうと、入力電流はスイッチング素子104a,104bのボディダイオードDa,Dbを通って流れるため、スイッチング動作させている場合に比べて導通損失が大きく、これによって、入力電流波形には上記の歪み(ゼロクロス歪み;Cross-over distortion)が発生し、力率が低下してしまっていた。
【0015】
この問題を解決するために、例えば、基準電圧値を低くして比較器の感度を上げる方法があるが、ノイズによる比較器の誤動作を生じやすくなり、スイッチング素子の動作が不安定になり、信頼性が低下する。
【0016】
実施例1のスイッチング電源装置は、入力電圧の上下波側部ともに、不感帯領域では、スイッチング素子を非同期整流スイッチングモードでスイッチングさせることを特徴とする。ここで、非同期整流スイッチングモードとは、交流入力電圧の上波側部又は下波側部の正負の極性に同期させないでスイッチング素子をスイッチングさせるという意味である。なお、同期整流スイッチングモードとは、交流入力電圧の上波側部又は下波側部の正負の極性に同期させてスイッチング素子をスイッチングさせるという意味である。
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の構成図である。図1に示すスイッチング電源装置は、シングルモード(単相)のブリッジレスPFC回路からなる。このPFC回路は、交流電源Vin、昇圧リアクトルL1,L2、MOSFETからなるスイッチング素子Q1,Q2、ダイオードD1,D2、コンデンサC1、制御回路10で構成されている。コンデンサC1の両端には負荷R1が接続される。なお、昇圧リアクトルL1,L2は、少なくとも一方が含まれれば良い。
【0018】
交流電源Vinの一端は昇圧リアクトルL1を介してダイオードD1のアノードとスイッチング素子Q1のドレインとに接続されている。交流電源Vinの他端は昇圧リアクトルL2を介してダイオードD2のアノードとスイッチング素子Q2のドレインとに接続されている。
【0019】
ダイオードD1のカソードとダイオードD2のカソードとはコンデンサC1の一端と負荷R1の一端とに接続されている。スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のソースとは、コンデンサC1の他端と負荷R1の他端とに接続されている。
【0020】
制御回路10は、交流入力電圧が所定の電圧値以上であるとき、スイッチング素子Q1,Q2を同期整流モードでスイッチングさせ、交流入力電圧が所定の電圧値未満であるとき、即ち、入力電圧の上下波側部ともに不感帯領域では、スイッチング素子Q1,Q2を非同期整流モードでスイッチングさせるもので、PFCゲート制御回路12、ゲート駆動回路14を有している。
【0021】
PFCゲート制御回路12は、ダイオードD1,D2のアノードとコンデンサC1の一端とに接続され、コンデンサC1の電圧に基づきゲート信号VinAを生成する。ゲート駆動回路14は、ダイオードD1,D2のアノードとスイッチング素子Q1,Q2のゲートとPFCゲート制御回路12とに接続され、ダイオードD1,D2のアノードからの交流入力電圧の極性判別信号とPFCゲート制御回路12からのゲート信号とに基づきスイッチング素子Q1,Q2を駆動するためのスイッチ素子ゲート信号Drv1,Drv2を生成して、スイッチング素子Q1,Q2のゲートに出力する。なお、PFCゲート制御回路12は、カレントトランス又はシャント抵抗を用いてスイッチング素子Q1,Q2のドレイン電流に基づきゲート信号VinAを生成しても良く、上記の電圧と電流とに基づきゲート信号VinAを生成しても良い。
【0022】
図2は、図1に示すスイッチング電源装置に設けれるゲート駆動回路を示す構成図である。図2に示すゲート駆動回路は、コンパレータCMP1,CMP2、デコーダ141、ドライバDr1,Dr2、基準電圧Vthを有している。なお、基準電圧は、各コンパレータに独立して設けても良い。
【0023】
コンパレータCMP1は、非反転入力端子に印加される分圧電圧(ダイオードD1のアノードの電圧(A点の電圧)を抵抗R4と抵抗R5とで分圧した電圧)が、反転入力端子に印加される基準電圧Vth未満であるときLレベルを、分圧電圧が基準電圧Vth以上であるときHレベルを出力Vsin1として出力する。
【0024】
コンパレータCMP2は、非反転入力端子に印加される分圧電圧(ダイオードD2のアノードの電圧(B点の電圧)を抵抗R6と抵抗R7とで分圧した電圧)が、反転入力端子に印加される基準電圧Vth未満であるときLレベルを、分圧電圧が基準電圧Vth以上であるときHレベルを出力Vsin2として出力する。
【0025】
デコーダ141は、コンパレータCMP1,CMP2からの出力Vsin1,Vsin2とPFCゲート制御回路12からのゲート信号GinAとに基づきスイッチ素子ゲート信号Drv1,Drv2を生成してドライバDrv1,Drv2を介してスイッチング素子Q1,Q2に出力する。
【0026】
図3は、図1に示すスイッチング電源装置における非同期整流スイッチングモード及び同期整流スイッチングモード時のデコーダ141の真理値表を示す図である。図3では、通常時において同期整流スイッチングモードとし、不感帯領域時において非同期整流スイッチングモードとし、同期整流スイッチングモード及び非同期整流スイッチングモード時における交流入力電圧極性判別信号であるVsin1,Vsin2とPFCゲート制御回路12からのゲート信号VinAとスイッチ素子ゲート信号Drv1,Drv2とのレベルを示している。スイッチ素子ゲート信号Drv1,Drv2がHレベルのとき、スイッチング素子はONする。
【0027】
次に、図3及び図4を参照しながら、PFC回路の動作を説明する。まず、交流入力電圧が所定の電圧値以上、即ち、上記分圧電圧が基準電圧Vth以上となる通常時(不感帯領域以外)、例えば、時刻t1〜t2、t3〜t4におけるスイッチング素子Q1,Q2の動作を説明する。
【0028】
時刻t1〜t2では、交流入力電圧の+側(A点側)の電圧は、所定の電圧値以上となるので、コンパレータCMP1の出力Vsin1は、Hレベルとなる。交流入力電圧の−側(B点側)の電圧は所定の電圧値未満であるので、コンパレータCMP2の出力Vsin2は、Lレベルとなる。
【0029】
このとき、デコーダ141は、図3に示すように、スイッチ素子ゲート信号Drv2をゲート信号VinAのレベルに関係なくHレベルとし、スイッチ素子ゲート信号Drv1をゲート信号VinAのLレベル(又はHレベル)と同じLレベル(又はHレベル)にする。
【0030】
時刻t3〜t4では、交流入力電圧の−側(B点側)の電圧は、所定の電圧値以上となるので、コンパレータCMP2の出力Vsin2は、Hレベルとなる。交流入力電圧の+側(A点側)の電圧は所定の電圧値未満であるので、コンパレータCMP1の出力Vsin1は、Lレベルとなる。
【0031】
このとき、デコーダ141は、図3に示すように、スイッチ素子ゲート信号Drv1をゲート信号VinAのレベルに関係なくHレベルとし、スイッチ素子ゲート信号Drv2をゲート信号VinAのLレベル(又はHレベル)と同じLレベル(又はHレベル)にする。
【0032】
このように、通常時には、スイッチング素子Q1,Q2を同期整流スイッチングモードでスイッチングさせることができる。
【0033】
次に、交流入力電圧が所定の電圧値未満の非同期整流スイッチングモード時(不感帯領域時)、例えば、時刻t5〜t6、t7〜t8におけるスイッチング素子Q1,Q2の動作を説明する。
【0034】
時刻t5〜t6、t7〜t8では、交流入力電圧の+側(A点側)の電圧及び交流入力電圧の−側(B点側)の電圧は、所定の電圧値未満となるので、コンパレータCMP1,CMP2の出力Vsin1は、ともにLレベルとなる。
【0035】
このとき、デコーダ141は、図3に示すように、ゲート信号VinAがLレベルの場合には、スイッチ素子ゲート信号Drv1,Drv2をともにLレベルにし、ゲート信号VinAがHレベルの場合には、スイッチ素子ゲート信号Drv1,Drv2をともにHレベルにする。
【0036】
図5は、実施例1のスイッチング電源装置のスイッチング動作と入力電流波形とを示す図である。
【0037】
上記のように、入力電圧の上下波側部ともに、不感帯領域では、入力電圧の極性に関係なく、コンデンサC1の電圧に基づくゲート信号VinAに従い、スイッチング素子Q1,Q2を非同期整流スイッチングモードでスイッチングさせる。スイッチング素子Q1,Q2の動作を継続し、導通損失を低減することで、図5に示すように入力電流波形の歪みを抑制し、力率を改善することができる。また、スイッチング素子Q1,Q2の動作が不安定になることを抑制し、スイッチング電源装置の信頼性が向上する。
【0038】
なお、実施例1では、入力電圧の上下波側部ともに、不感帯領域では、スイッチング素子Q1,Q2を非同期整流スイッチングモードでスイッチングさせたが、例えば、図3に示すように、入力電圧の上下波側部ともに、不感帯領域(Vsin1とVsin2とがともにLレベル)では、PFCゲート制御回路12からのゲート信号VinAのレベルに関係なく、デコーダ141がスイッチ素子ゲート信号Drv1,Drv2をともにHレベルとすることで、スイッチング素子Q1,Q2を非同期整流ON固定モードでオン状態に保ったままにしてもよい。
【0039】
即ち、不感帯領域では、入力電流も非常に小さいため、ゲート信号のオンデューティは100%に近い状態まで広がっているため、オン状態と変わらない。これによっても、スイッチング素子Q1,Q2の動作を止めることなく、導通損失を低減することで力率を改善することができる。また、スイッチング素子Q1,Q2をスイッチングさせるためのドライブ損失を低減できる。
【実施例2】
【0040】
図6は、本発明の実施例2に係るスイッチング電源装置の構成図である。図6に示すスイッチング電源装置は、インターリーブモード(多相モード)のブリッジレスPFC回路からなる。このPFC回路は、交流電源Vin、昇圧リアクトルL11,L12,L21,L22、MOSFETからなるスイッチング素子Q11,Q12,Q21,Q22、ダイオードD11,D12,D21,D22、コンデンサC1、制御回路11で構成されている。コンデンサC1の両端には負荷R1が接続されている。なお、昇圧リアクトルL11,L21は、少なくとも一方が含まれていればよく、昇圧リアクトルL12,L22は、少なくとも一方が含まれていればよい。
【0041】
交流電源Vinの一端は昇圧リアクトルL11(L21)を介してダイオードD11(D21)のアノードとスイッチング素子Q11(Q21)のドレインとに接続されている。交流電源Vinの他端は昇圧リアクトルL12(L22)を介してダイオードD12(D22)のアノードとスイッチング素子Q12(Q22)のドレインとに接続されている。
【0042】
ダイオードD11(D21)のカソードとダイオードD12(D22)のカソードとはコンデンサC1の一端と負荷R1の一端とに接続されている。スイッチング素子Q11(Q21)のソースとスイッチング素子Q12(Q22)のソースとは、コンデンサC1の他端と負荷R1の他端とに接続されている。
【0043】
リアクトルL11,L12、スイッチング素子Q11,Q12、ダイオードD11,D12、及びコンデンサC1は、第1PFC部を構成する。リアクトルL21,L22、スイッチング素子Q21,Q22、ダイオードD21,D22、及びコンデンサC1は、第2PFC部を構成する。
【0044】
制御回路11は、第1PFC部と第2PFC部とを180°交互にオン/オフさせ、交流入力電圧が所定の電圧以上であるとき、スイッチング素子Q11(Q21),Q12(Q22)を同期整流モードでスイッチングさせ、交流入力電圧が所定の電圧値未満であるとき、即ち、入力電圧の上下波側部ともに不感帯領域では、スイッチング素子Q11(Q21),Q12(Q22)を非同期整流モードでスイッチングさせるもので、PFCゲート制御回路12a、ゲート駆動回路14aを有している。
【0045】
PFCゲート制御回路12aは、ダイオードD21,D22のアノードとコンデンサC1の一端とに接続され、コンデンサC1の電圧に基づき互いに位相が180°異なるゲート信号VinAとゲート信号VinBとを生成する。
【0046】
ゲート駆動回路14aは、ダイオードD21,D22のアノードとスイッチング素子Q11(Q21),Q12(Q22)のゲートとPFCゲート制御回路12aとに接続され、ダイオードD21,D22のアノードからの交流入力電圧の極性判別信号とPFCゲート制御回路12aからの2つのゲート信号VinA,VinBとに基づきスイッチング素子Q11(Q21),Q12(Q22)を駆動するための位相がA相(0°)のスイッチ素子ゲート信号と位相がB相(180°)のスイッチ素子ゲート信号とを生成して、スイッチング素子Q11(Q21),Q12(Q22)のゲートに出力する。
【0047】
なお、図3に示すデコーダの真理値表は、インターリーブモードのA相(0°)のスイッチ素子ゲート信号の場合を示している。インターリーブモードのB相(180°)のスイッチ素子ゲート信号の場合も、A相(0°)の場合のスイッチ素子ゲート信号と全く同様である。
【0048】
このように実施例2のインターリーブモードのPFC回路においても、実施例1のシングルモードのPFC回路の動作と同様な動作が180°交互に行われ、同様な効果が得られる。なお、インターリーブモードのPFC回路においても、スイッチング素子Q11,Q12,Q21,Q22を非同期整流ON固定モードでオン状態に保ったままにしてもよい。
【0049】
なお、本発明は、実施例1及び実施例2のスイッチング電源装置に限定されるものではない。例えば、不感帯領域においてスイッチング素子を同一の動作をさせる必要はなく、スイッチング動作及びON固定動作を組み合わせることができる。また、本発明のスイッチング電源装置は、電流連続モード(CCM)、電流不連続モード(DCM)及び臨界モード(CRM)のいずれのスイッチング電源装置にも適用できる。
【0050】
また、インターリーブモードのPFC回路として各相が360°/nの位相差で動作するn相(n≧2)のPFC回路に適用できる。また、制御回路は、交流入力電圧の極性信号を交流電源の両端から直接検出するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、シングルモード又はインターリーブモードのPFC回路、AC−DCコンバータ等のスイッチング電源装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
Vin 交流電源
L1,L2,L11,L12,L21,L22 リアクトル
R1 負荷
R4,R5,R6,R7 抵抗
C1 コンデンサ
D1,D2,D11,D12,D21,D22 ダイオード
Q1,Q2,Q11,Q12,Q21,Q22 スイッチング素子
CMP1,CMP2 コンパレータ
Dr1,Dr2 ドライバ
10,11 制御回路
12,12a PFCゲート制御回路
14,14a ゲート駆動回路
141 デコーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9