特許第5720175号(P5720175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720175
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20150430BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-241585(P2010-241585)
(22)【出願日】2010年10月28日
(65)【公開番号】特開2012-95473(P2012-95473A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕加
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 祐二
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−077518(JP,A)
【文献】 特開2003−149779(JP,A)
【文献】 特開2006−093255(JP,A)
【文献】 特開平08−033346(JP,A)
【文献】 特開平05−217810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュールの主端子に対して、スナバコンデンサの前方側に設けられた接続端子を+極銅板,−極銅板と共にボルト締め接続したインバータ装置であって、
前記スナバコンデンサは嵌入突部を備え、
前記+極銅板と−極銅板のうち少なくとも一方に前記嵌入突部を係止する係止孔が穿設され、
前記半導体モジュールの主端子に対してスナバコンデンサの接続端子をボルト締め接続し、前記嵌入突部を前記係止孔に挿通することにより、前記スナバコンデンサを固定することを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記嵌入突部は、略円柱状に形成されスナバコンデンサの背面から立設し、一端がスナバコンデンサの背面に支持され、他端側はテーパ状に形成され、
前記+極銅板,−極銅板は、三段に折り曲げられた段差状に形成され、前記半導体モジュールの主端子に接続するためのボルト孔を有する基部と、この基部の一側端から直角に折り曲げられて前記基部に対して垂直方向に延在している中間部と、この中間部の一側端から直角に折り曲げられて前記基部に対して水平方向に延在している先端部と、を有し、
前記中間部に、スナバコンデンサの嵌入突部を係止する係止孔が形成され、
前記係止孔は、前記嵌入突部の直径と同一または僅かに大きい寸法に形成されたことを特徴とする請求項1記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記嵌入突部は、スナバコンデンサの底面から立設し、
前記+極銅板,−極銅板は、平板状に形成され、前記半導体モジュールの主端子と接続されるボルト孔が穿設された接続部と、この接続部の一側端から接続部の短手方向に延在する積層部と、を有し、前記接続部にスナバコンデンサの嵌入突部を係止する係止孔が形成され、
前記嵌入突部は、
一端がスナバコンデンサに支持され、円柱状に形成された脚部と、
その脚部の他端側に形成され、前記脚部よりも大きな直径の円盤状の係止片と、で形成され、
前記係止孔は、前記係止片よりも大きな直径の大径孔と、前記係止片よりも小さな直径で、かつ、前記脚部よりも大きな直径の小径孔と、が一部重なったダルマ状の孔で形成されたことを特徴とする請求項1記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置におけるスナバコンデンサの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6(斜視図),図7(側面図)は、従来の一般的なインバータ装置1aの一例を示す構成図である。図6図7に示すように、インバータ装置1aは、半導体モジュール(例えば、IGBT等)2を有し、この半導体モジュール2にスナバコンデンサ5が接続されている。前記スナバコンデンサ5は、接続端子5aによって+極銅板3,−極銅板4と共に、半導体モジュール2の主端子2aに接続されている。
【0003】
しかしながら、前記スナバコンデンサ5は、半導体モジュール2との固定箇所が接続端子5aのみであるため、振動が生じた場合、接続端子5aが破損する恐れがあった。
【0004】
すなわち、図8に示すように、スナバコンデンサ5は、接続端子5aが設けられた前面側は固定されているものの、接続端子5aが設けられていない背面側は固定されていない。そのため、振動が生じた場合、スナバコンデンサ5は前面側の接続端子5aを支点として背面側が振られることとなる。その結果、接続端子5aの折曲部5bに負担がかかり、接続端子5aが破損する恐れがあった。
【0005】
この問題を解決する手段として、スナバコンデンサ5に接続端子5a以外の固定手段を設ける方法が知られている。
【0006】
例えば、図9(斜視図),図10(平面図)に示すインバータ装置1bは、スナバコンデンサ5に底面から側面側に突出する固定用端子5cを設け、この固定用端子5cと−極銅板4とを接続するものである。
【0007】
このインバータ装置1bの場合、スナバコンデンサ5は、接続端子5aにより半導体モジュール2と接続されると共に、固定用端子5cにより−極銅板4に接続される。その結果、振動が発生しても、スナバコンデンサ5は接続端子5aを支点として背面側が振られることが抑制され、接続端子5aが破損することを抑制することが可能となる。
【0008】
また、図11(スナバコンデンサ斜視図),図12(インバータ装置断面図)に示すインバータ装置1cは、スナバコンデンサ5の上端部背面側に穿設孔5dを有する突出部5eを形成し、この突出部5eと板金(例えば、インバータ装置1bの筐体等に固定された板金)6とを接続する構成が用いられている。
【0009】
このインバータ装置1cの場合、スナバコンデンサ5は接続端子5aにより半導体モジュール2と接続されると共に、突出部5eにより板金6に接続される。その結果、振動が発生しても、スナバコンデンサ5は接続端子5aを支点として背面側が振られることが抑制され、接続端子5aが破損することを抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08−33346号公報(段落[0015]〜[0027],第1図)
【特許文献2】特開平05−217810号公報(段落[0011]〜0020),第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図9図10に示すインバータ装置1b、および図11図12に示すインバータ装置1cは、以下に示す問題点があった。
【0012】
すなわち、図9図10に示すインバータ装置1bは、図13に示すように、固定用端子5cを−極銅板4(または、+極銅板3)に接続しなければならないため、ネジ締めを行う箇所が増加してしまっていた。そのため、スナバコンデンサ5の取付作業が煩雑であり、迅速な作業が困難であった。
【0013】
また、図14に示すようにインバータ装置1bは、スナバコンデンサ5の固定用端子5cを−極銅板4(または、+極銅板3)に接続するため、−極銅板4を斜線部分だけ余計に広く設計しなければならなかった。その結果、−極銅板4の面積が増加し、インバータ装置1bのコストが増加する問題があった。
【0014】
一方、インバータ装置1cは、図15に示すように、突出部5eを板金6に接続しなければならないため、ネジ締めを行う箇所が増加してしまっていた。そのため、スナバコンデンサ5の取付作業が煩雑であり、迅速な作業が困難であった。
【0015】
以上示したようなことから、ネジ締め箇所を増加させることなく、スナバコンデンサの接続端子の破損を抑制するインバータ装置を提供することが主な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前記従来の問題に鑑み案出されたもので、その一態様は、半導体モジュールの主端子に対して、スナバコンデンサの前方側に設けられた接続端子を+極銅板,−極銅板と共に接続したインバータ装置であって、前記スナバコンデンサは嵌入突部を備え、前記+極銅板と−極銅板のうち少なくとも一方に、前記嵌入突部を係止する係止孔が穿設されたことを特徴とする。
【0017】
また、前記嵌入突部はスナバコンデンサの背面から立設し、前記+極銅板,−極銅板は、三段に折り曲げられた段差状に形成され、前記半導体モジュールの主端子に接続するためのボルト孔を有する基部と、この基部の一側端から直角に折り曲げられて前記基部に対して垂直方向に延在している中間部と、この中間部の一側端から直角に折り曲げられて前記基部に対して水平方向に延在している先端部と、を有し、前記中間部に、スナバコンデンサの嵌入突部を係止する係止孔が形成される構成としてもよい。
【0018】
さらに、前記嵌入突部は、スナバコンデンサの底面から立設し、前記+極銅板,−極銅板は、平板状に形成され、前記半導体モジュールの主端子と接続されるボルト孔が穿設された接続部と、この接続部の一側端から接続部の短手方向に延在する積層部と、を有し、前記接続部にスナバコンデンサの嵌入突部を係止する係止孔が形成される構成としてもよい。
【0019】
また、前記嵌入突部は円柱状に形成され、前記係止孔は、前記嵌入突部の直径と同一または僅かに大きい寸法に形成される構成としてもよい。
【0020】
さらに、前記嵌入突部は、一端がスナバコンデンサに支持され、円柱状に形成された脚部と、その脚部の他端側に形成され、前記脚部よりも大きな直径の円盤状の係止片と、で形成され、前記係止孔は、前記係止片よりも大きな直径の大径孔と、前記係止片よりも小さな直径で、かつ、前記脚部よりも大きな直径の小径孔と、が一部重なったダルマ状の孔で形成される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ネジ締め箇所を増加させることなく、スナバコンデンサの接続端子の破損を抑制するインバータ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1におけるインバータ装置(1d)の側面図である。
図2】実施形態1におけるスナバコンデンサの斜視図である。
図3】実施形態1におけるインバータ装置(1d)の分解図である。
図4】実施形態2におけるスナバコンデンサの構成図である。
図5】実施形態2におけるインバータ装置(1e)の組立図である。
図6】従来の一般的なインバータ装置の一例(1a)を示す斜視図である。
図7】従来の一般的なインバータ装置の一例(1a)を示す側面図である。
図8】従来の一般的なインバータ装置の一例(1a)を示す拡大側面図である。
図9】従来の一般的なインバータ装置の他例(1b)を示す斜視図である。
図10】従来の一般的なインバータ装置の他例(1b)を示す平面図である。
図11】従来の一般的なスナバコンデンサを示す斜視図である。
図12】従来の一般的なインバータ装置の他例(1c)を示す断面図である。
図13】従来の一般的なインバータ装置の他例(1b)を示す平面図である。
図14】従来の一般的なインバータ装置の他例(1b)を示す平面図である。
図15】従来の一般的なインバータ装置の他例(1c)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のインバータ装置は、スナバコンデンサに嵌入突部を設け、この嵌入突部を+極銅板,−極銅板のうち少なくとも一方に穿設された係止孔に嵌め込むものである。これにより、スナバコンデンサは、接続端子と嵌入突部とで固定されることとなり、ネジの締付点数を増加させることなく、スナバコンデンサの接続端子を支点として背面側が振られることが抑制される。その結果、スナバコンデンサの接続端子の破損を抑制することが可能となる。
【0024】
[実施形態1]
図1は、本実施形態1におけるインバータ装置1dの側面図である。図1に示すように、本実施形態1におけるインバータ装置1dは、半導体モジュール(例えば、IGBT等)2と、前記半導体モジュール2に接続される+極銅板3,−極銅板4と、前記+極銅板3と−極銅板4との間に介挿される絶縁紙7と、前記+極銅板3,−極銅板4と共に半導体モジュール2に接続されるスナバコンデンサ5と、を備える。
【0025】
図3の分解図に示すように、前記半導体モジュール2は、+極と−極の主端子2a,2aを有し、前記主端子2a,2aには、+極銅板3,−極銅板4,スナバコンデンサ5を接続するためのボルト9,9等が螺入されるボルト孔が螺刻されている。
【0026】
前記スナバコンデンサ5は、半導体モジュール2のターンオフやターンオンの際の過電圧や急峻な電圧変化を低減するために、半導体モジュール2に接続されるものである。このスナバコンデンサ5は、通常、樹脂等から成るケースに覆われている。
【0027】
本実施形態1のスナバコンデンサ5には、スナバコンデンサ5の前面側下端部から突出し、半導体モジュール2の主端子2a,2aに接続される2つの接続端子5a,5aが設けられている。この接続端子5a,5aは平面視矩形状に形成され、その中央付近にボルト9,9を挿通するためのボルト孔5f,5fが穿設されている。
【0028】
また、図2に示すように、本実施形態1におけるスナバコンデンサ5には、背面に2つの嵌入突部(例えば、樹脂等から成る嵌入突部)8a,8aが立設している。該嵌入突部8a,8aは、一端がスナバコンデンサ5の背面に支持された略円柱状に形成されており、他端側はテーパ状に形成されている。
【0029】
前記+極銅板3は、三段に折り曲げられた段差状に形成され、前記半導体モジュール2の主端子2aに接続するためのボルト孔3dを有する基部3aと、この基部3aの一側端から直角に折り曲げられて前記基部3aに対して垂直方向に延在している中間部3bと、この中間部3bの一側端から直角に折り曲げられて前記基部3aに対して水平方向に延在している先端部3cと、を有している。
【0030】
前記+極銅板3の中間部3bには、前記嵌入突部8aが挿通される係止孔3e,3eが形成されている。この係止孔3e,3eの直径寸法は、前記嵌入突部8aの直径寸法と同一または僅かに大きく設計されている。
【0031】
前記−極銅板4は、前記+極銅板3と同様に、三段に折り曲げられた段差状に形成され、前記半導体モジュール2の主端子2aに接続するためのボルト孔4dを有する基部4aと、この基部4aの一側端から直角に折り曲げられて前記基部4aに対して垂直方向に延在している中間部4bと、この中間部4bの一側端から直角に折り曲げられて前記基部4aに対して水平方向に延在している先端部4cと、を有している。
【0032】
前記−極銅板4の中間部4bには、前記嵌入突部8aが挿通される逃がし孔4e,4eが穿設されている。この逃がし孔4e,4eの直径寸法は、前記嵌入突部8aの直径寸法よりも充分に大きく設計されている。
【0033】
前記絶縁紙7は、前記+極銅板3,−極銅板4と同様に、三段に折り曲げられた段差状に形成され、基部7aと、この基部7aの一側端から直角に折り曲げられて前記基部7aに対して垂直方向に延在している中間部7bと、前記中間部7bの一側端から直角に折り曲げられて前記基部7aに対して水平方向に延在している先端部7cと、を有している。
【0034】
前記絶縁紙7の中間部7bには、前記嵌入突部8aが挿通される逃がし孔7e,7eが穿設されている。この逃がし孔7e,7eの直径寸法は、前記嵌入突部8aの直径寸法よりも充分に大きく設計されている。
【0035】
本実施形態1のインバータ装置1dを組み立てる際には、図3に示すように、まず、−極銅板4,絶縁紙7,+極銅板3を下から順に重ね、それぞれの中間部4b,7b,3bの係止孔3e,逃がし孔4e,7eの位置を合わせる。なお、絶縁紙7を+極銅板3と−極銅板4との間に介挿することにより、+極銅板3と−極銅板4との絶縁が確保される。次に、その係止孔3e,逃がし孔4e,7eに、スナバコンデンサ5の嵌入突部8a,8aを挿通させる。この時、嵌入突部8aは係止孔3eに係止されることとなる。
【0036】
この状態で、スナバコンデンサ5の接続端子5a,5aのボルト孔5f,5fと、+極銅板3,−極銅板4のボルト孔3d,4dと、を半導体モジュール2の主端子2aのボルト孔の位置に合わせてボルト9,9等により締め付ける。これにより、スナバコンデンサ5,+極銅板3,−極銅板4が半導体モジュール2に固定される。
【0037】
このように、スナバコンデンサ5の嵌入突部8aを+極銅板3の係止孔3eに嵌入させることにより、スナバコンデンサ5は、接続端子5aにより主端子2aに接続されると共に、嵌入突部8aにより+極銅板3の係止孔3eに固定されることとなる。そのため、振動が発生しても、前記嵌入突部8aによって、スナバコンデンサ5が接続端子5aを支点として背面側が振られることが抑制される。その結果、振動発生時の前記接続端子5aの負荷は小さくなり、接続端子5aが破損することを抑制することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態1のインバータ装置1dは、スナバコンデンサ5の接続端子5aの破損防止のために別途ネジ止めを行うことが不要なため、従来のインバータ装置1b,1cと比較して、作業工数を削減することができ、施工性の向上を図ることが可能となる。また、ネジ止めを行うために、+極銅板3,−極銅板4の面積を広げる必要がない。
【0039】
さらに、前記嵌入突部8a,8aは、その他端側がテーパ状に形成されているため、係止孔3e,逃がし孔4e,7eに容易に挿通することができる。
【0040】
[実施形態2]
次に、本実施形態2におけるインバータ装置1eを、図4図5に基づいて説明する。なお、実施形態1と同様の部分については、同一または対応する符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0041】
図4(a)斜視図,(b)側面図は、本実施形態2におけるスナバコンデンサ5を示す構成図である。本実施形態2におけるスナバコンデンサ5は、図4に示すように、底面から2つの嵌入突部(例えば、樹脂等から成る嵌入突部)8b,8bが立設している。
【0042】
この嵌入突部8bは、縦断面略T字状に形成され、一端が前記スナバコンデンサ5の底面に支持された脚部8cと、この脚部8cの他端に形成された係止片8dと、で形成されている。前記脚部8cは略円柱状に形成され、前記係止片8dは前記脚部8cの直径よりも大きな直径の円盤状に形成されている。
【0043】
図5に示すように、本実施形態2における−極銅板4は平板状に形成されており、半導体モジュール2の主端子2a,2aと接続されるボルト孔4dが穿設された接続部4fと、この接続部4fの一側端から接続部4fの短手方向に延在する積層部4gと、で平面視略L字状に形成されている。
【0044】
また、+極銅板3も−極銅板4と同様に平板状に形成されており、半導体モジュール2の主端子2aと接続されるボルト孔3dが穿設された接続部3fと、この接続部3fの一側端から接続部3fの短手方向に延在する積層部3gと、で形成される。ただし、積層部3gは、−極銅板4の積層部4gとは逆方向に延在し、平面視略L字状を裏返した形状に形成されている。
【0045】
前記+極銅板3,−極銅板4の接続部3f,4fには、それぞれスナバコンデンサ5の嵌入突部8b,8bが係止される係止孔10が形成されている。この係止孔10は、前記嵌入突部8bの係止片8dよりも大きな直径の大径孔と、前記嵌入突部8bの係止片8dよりも小さな直径でかつ前記脚部8cよりも大きな直径の小径孔と、が一部重なったダルマ状に形成されている。
【0046】
本実施形態2のインバータ装置1eを組み立てる際には、+極銅板3,絶縁紙7,−極銅板4を下から順に重ね、+極銅板3と−極銅板4のボルト孔3d,4dを半導体モジュール2の主端子2aのボルト孔の位置に合わせる。この時、+極銅板3の積層部3gと−極銅板の積層部4gとの間に矩形の絶縁紙7を介挿することにより、+極銅板3と−極銅板4の絶縁が確保される。
【0047】
次に、(1)の矢印に示すように、+極銅板3,−極銅板4の係止孔10,10の大径孔にスナバコンデンサ5の嵌入突部8bを係止片8dが通り抜けるまで挿通する。その状態で、(2)の矢印に示すように、スナバコンデンサ5を半導体モジュール2側にずらして、前記嵌入突部8bを係止孔10の小径孔側にずらす。これにより、嵌入突部8bの係止片8dが、係止孔10の小径孔に係止することとなる。
【0048】
その状態で、スナバコンデンサ5のボルト孔5f,5f,+極銅板3のボルト孔3d,−極銅板4のボルト孔4dを、半導体モジュール2の主端子2a,2aの位置に合わせてボルト等により締付ける。これにより、スナバコンデンサ5,+極銅板3,−極銅板4が半導体モジュール2に接続される。
【0049】
このように、スナバコンデンサ5の嵌入突部8bを+極銅板3,−極銅板4の係止孔10に係止させることにより、スナバコンデンサ5は接続端子5aにより主端子2aに接続される共に、嵌入突部8により+極銅板3,−極銅板4の係止孔10に固定されることとなる。そのため、振動が発生しても、前記嵌入突部8bにより、スナバコンデンサ5が接続端子5aを支点として背面側が振られることが抑制される。その結果、振動発生時の前記接続端子5aの負荷は小さくなり、接続端子5aが破損することを抑制することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態2のインバータ装置1eは、スナバコンデンサ5の接続端子5aの破損防止のために別途ネジ止めを行うことが不要なため、従来のインバータ装置1b,1cと比較して、作業工数を削減することができ、施工性の向上を図ることが可能となる。また、別途ネジ止めを行うことが不要なため、+極銅板3,−極銅板4の面積を小さくすることができ、低コスト化を図ることが可能となる。
【0051】
さらに、本実施形態2のインバータ装置1eは、スナバコンデンサ5を固定するために、+極銅板3,−極銅板4に、中間部3b,4bを設ける必要がない。すなわち、+極銅板3,−極銅板4は平板状に形成されているため、インバータ装置1eの省スペース化を図ることが可能となる。
【0052】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0053】
例えば、実施形態1,2では、2つの嵌入突部8a(または、8b)が設けられているが、振動発生時にスナバコンデンサ5の背面側の振動を抑制できれば1つでも良く、逆に2つ以上の複数でもよい。さらに、嵌入突部を設ける位置は、実施形態1でスナバコンデンサの背面,実施形態2でスナバコンデンサの底面であれば良く、詳細な位置は適宜設計して良い。
【0054】
なお、本実施形態1,2では、スナバコンデンサ5の接続端子5aは、スナバコンデンサ5の前面側下端部から突出させたが、従来のインバータ装置1a〜1cのように、スナバコンデンサ5の底面前方側から突出させてもよい。また、前記接続端子5aは、平面視矩形状以外の形状でもよい。
【0055】
また、実施形態1では、+極銅板3に係止孔3eを穿設したが、+極銅板3と−極銅板4とのうち少なくとも一方に係止孔3eが形成されていればよい。
【符号の説明】
【0056】
1a〜1e…インバータ装置
2…半導体モジュール
2a…主端子
3…+極銅板
4…−極銅板
5…スナバコンデンサ
5a…接続端子
8a,8b…嵌入突部
3e,10…係止孔
3a,4a,7a…基部
3b,4b,7b…中間部
3c,4c,7c…先端部
3f,4f…接続部
3g,4g…積層部
8c…脚部
8d…係止片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15