(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る実施形態を、ハイブリッド車両に具体化し図面を参照して以下に説明する。
図1は、本発明に係る電動モータ20、およびその電動モータ20を用いた車両用駆動装置1を適用したハイブリッド車両用駆動系の概略を示している。なお、
図2に示すように車両用駆動装置1はケース3と、ケース3に回転軸線回りに回転可能に軸承された出力軸26と、出力軸26に一体的に回転結合されたロータ21を有し、ロータ21と対向するステータ22がケース3に固定された電動モータ20とによって構成される。
【0020】
図1において、実線による矢印は、各装置間をつなぐ油圧配管を示しており、破線による矢印は、制御用の信号線を示している。また、
図1において電磁切替弁50、リリーフ弁30、電動オイルポンプ60、及びリザーバ72は本発明に係る電動モータ20と別体に記載されている。しかし実際には電磁切替弁50、リリーフ弁30、及び電動オイルポンプ60はクラッチ装置40とともに電動モータ20と一体化され、リザーバ72はケース3、及びフロントケース6内に形成されている。また本実施形態においては、車両用駆動装置1のエンジン側を前側とし、変速機側を後側とする。
【0021】
図2に示すようにケース3は外形を形成する外周壁部3cと、電動モータ20及びクラッチ装置40とトルクコンバータ2との間に形成された後側側壁部3aとを有している。また、ケース3は外周壁部3cが後側側壁部3aから自動変速装置5側に向って所定量延在され、トルクコンバータ2の一部を覆っている。そして延在されたケース3はトルクコンバータ2の残りの部分を覆う図略のケースとボルトによって固定され、自動変速装置5のケース(図示せず)を形成している。
【0022】
ケース3のエンジン10側にはケース3の蓋部であり前側側壁部3bを形成するフロントケース6が配置され、ケース3とフロントケース6とは、ボルトによって固定されている。ケース3を構成するフロントケース6の前側側壁部3bの中心部には入力軸41が軸承されるよう貫通孔6aが設けられている。そして貫通孔6aと入力軸41との間にはボールベアリング34が介在され、入力軸41を回転可能に軸承している。
【0023】
入力軸41は、図示しないフライホイール、及び回転振動を吸収するためのダンパを介してエンジン10の出力軸11(
図1参照)に回転連結されている。入力軸41はダンパとの固定部41aと、貫通孔6aに回転支持される連結部41bと、摩擦プレート42を係合する小径側係合部41dが外周部に形成された環状部41cと、を有している。
【0024】
図1に示したように、車両の駆動源としてのエンジン(EG)10と回転電機である電動モータ20とは、係脱可能な湿式多板クラッチであるクラッチ装置40を介して直列に接続されている。クラッチ装置40は、エンジン10と電動モータ20との間の接続を接離しトルク伝達を断続する。また、電動モータ20には、車両の自動変速装置5が直列に接続されており、自動変速装置5には、図示しない車両の駆動輪が図示しないディファレンシャル装置を介して接続されている。自動変速装置(T/M)5は、変速機(図示しない)、及びトルクコンバータ2からなり、トルクコンバータ2の出力が、変速機の入力軸に入力されている。
【0025】
図1、
図2に示すように電動モータ20とトルクコンバータ2とは出力軸26、及びトルクコンバータ2の入力軸であるセンタピース16を介して回転連結されている。
【0026】
トルクコンバータ2の入力軸であるセンタピース16は入力軸41と同一回転軸上に並んで配置され、トルクコンバータ2のフロントカバー14に連結されてフロントカバー14と一体回転される。そしてセンタピース16とともにフロントカバー14が回転されることにより、フロントカバー14と連結されるトルクコンバータ2内のポンプインペラ(図示せず)が回転される。これによりポンプインペラによって油流が発生し、発生した油流によって変速機の入力軸に連結されたタービンランナ(図示せず)が回転して変速機の入力軸に回転力が伝達される。出力軸26、センタピース16、及びフロントカバー14の回転軸は、変速機の入力軸と同一回転軸に配置されている。
【0027】
エンジン10は、炭化水素系の燃料により出力を発生させる通常の内燃機関である。ただしこれに限定されるものではなく、回転軸を駆動させる駆動源であればどのようなものでもよい。また電動モータ20は、車輪駆動用の同期モータであるが、これに限定されるものではない。さらに自動変速装置5は、通常の遊星歯車式自動変速機であるが、これに限定されるものではない。クラッチ装置40は、普段はエンジン10と電動モータ20との間を接続しているノーマルクローズタイプのクラッチ装置である。
【0028】
図1に示すように電磁切替弁50は3ポートを有する2ポジションの電磁弁であり、1つのポートは
図2に示す管路65a、65b、65c、65dによってクラッチ装置40の油圧室46に接続されている。また他の1つのポートは電動オイルポンプ60の吐出口に接続され、残る1つのポートはリザーバ72、つまりケース3及びフロントケース6内に接続されている。また電動オイルポンプ60の吐出口にはリリーフ弁30が接続されている。
【0029】
電磁切替弁50が、
図1に示した作動位置P1にある場合、電動オイルポンプ60の吐出口が油圧室46に接続されており、リザーバ72が電動オイルポンプ60の吸入口に接続されている。そして電動オイルポンプ60がリザーバ72内のオイルを吸引し電磁切替弁50を介して油圧室46へ油圧を供給しクラッチ装置40の接続を解除状態とする。この状態において電動オイルポンプ60から油圧室46に吐出されるオイルの圧力が過剰になったときは、電動オイルポンプ60の吐出口に接続されるリリーフ弁30が作動され、圧力を逃がすことによって油圧室46に適切な油圧のオイルが供給される。
【0030】
また、電磁切替弁50が、
図1に示した作動位置P2にある場合、油圧室46がリザーバ72と連通される。これにより油圧室46内の圧力が大気圧となるとともにオイル(油圧)がリザーバ72へと戻されクラッチ装置40が接続される。
【0031】
電磁切替弁50、及び電動オイルポンプ60には、コントローラ(ECU)70が電気的に接続されている。コントローラ70は電動オイルポンプ60、及び電磁切替弁50を作動させて、クラッチ装置40に適正な油圧のオイルを供給し、クラッチ装置40を目標とする接続状態に制御している。
【0032】
コントローラ70は、エンジン10または電動モータ20の回転を制御し、車両を走行させている。さらに、コントローラ70は、自動変速装置5のシフトバルブを作動させる電磁ソレノイド(図示せず)と接続されており、エンジン10の回転速度、車両速度、シフト位置等に基づき、自動変速装置5の作動を制御している。
【0033】
クラッチ装置40は、出力軸26の大径側係合部26aに係合された複数のセパレートプレート43と、入力軸41の小径側係合部41dに係合された複数の摩擦プレート42と、出力軸26と一体的に形成されたシリンダ部材48と、該シリンダ部材48に回転軸線方向に摺動可能に嵌合され、複数のセパレートプレート43、及び摩擦プレート42を押圧する押圧部44aを備えたピストン部材44と、を有している。
【0034】
また、クラッチ装置40は、ピストン部材44とシリンダ部材48との間に縮設され、ピストン部材44を複数のセパレートプレート43、及び摩擦プレート42側に向かって付勢するコイルバネ45と、ピストン部材44とシリンダ材48との間に形成される油圧室46と、を有している。
【0035】
このようにクラッチ装置40が構成されることにより、電動オイルポンプ60を駆動させ、コントローラ70によって所定圧の油圧を電磁切替弁50、及び流入ポート61を介して油圧室46内に供給すると、油圧室46に供給された油圧は、ピストン部材44を付勢しコイルばね45のばね力に抗して出力軸側に向って移動させる。そして摩擦プレート42、及びセパレートプレート43からピストン部材44の押圧部44aが離間して摩擦プレート42とセパレートプレート43との間の係合が解除される。
【0036】
また、電磁切替弁50を駆動しP1側をP2側に切替える。これによって油圧室46内のオイルはリザーバ72であるケース3、及びフロントケース6の下部に、戻され、油圧室46内の圧力は低下する。これによりピストン部材44は入力軸方向に付勢しているコイルバネ45の付勢によって押動される。そしてピストン部材44の押圧部44aがセパレートプレート43を押圧してセパレートプレート43と摩擦プレート42とを係合させる。
【0037】
出力軸26は、
図2に示す回転軸方向の断面が逆S字状を呈し、半径方向外周側にエンジン10側に開口された外周開口部27が形成され、内周側に自動変速装置5側に開口された内周開口部32が形成されている。外周開口部27は小径側壁部27dと、大径側壁部27cと、段付きの各底壁部27e、27fとによって包囲され形成されている。なお外周開口部27はシリンダ部材48の一部を兼用している。具体的にはシリンダ部材48は外周開口部27と、固定部材54とによって構成されている。大径側壁部27cの入力軸側の先端部内周面の大径側係合部26aには前述した複数の円環状のセパレートプレート43が回転を規制され回転軸線方向に移動可能に係合されている。
【0038】
そして複数のセパレートプレート43と、入力軸41に係合された複数の摩擦プレート42とが交互に接離可能に配置されている。摩擦プレート42と、セパレートプレート43とが交互に配置された状態でセパレートプレート43が回転軸線方向入力軸側に向かって押付けられるとセパレートプレート43が軸方向に移動する。これによって各摩擦プレート42の両面に貼付された各摩擦板42aと各セパレートプレート43とが押付け合って係合し、入力軸41と出力軸26とが回転連結されて、エンジン10の出力軸11と自動変速装置5の入力軸とが一体回転する。
【0039】
出力軸26の半径方向内周側に形成される内周開口部32は、センタピース16と一体回転可能にスプライン結合されている。内周開口部32と外周開口部27の小径側壁部27dとによって囲まれ自動変速装置5側に開口される空間には、ケース3の後側側壁部3aから円環状の突部63が突設されている。そして小径側壁部27d内周面が突部63の外周面63bに嵌合され、突部63の内周面63aと内周開口部32の固定部との間にはボールベアリング64が介在され、突部63と内周開口部32とがスムーズに相対回転可能となっている。
【0040】
後側側壁部3a、及び突部63の内部には前述したように電磁切替弁50と油圧室46とを接続する管路65a、65b、65c、65dが連通して形成されている。管路65aが電磁切替弁50側の接続管路であり、管路65dが油圧室46側の接続管路である。そして管路65dは突部63の外周面63b全周に刻設された油路66と接続している。油路66は、外周開口部27の小径側壁部27dに貫設される流入ポート61を介して油圧室46に接続され油圧室46へのオイルの給排を許容している。
【0041】
回転軸線方向における油路66の両側には溝が刻設され、該溝内には例えば樹脂製の環状リング67、68が設けられ油路66からのオイルの漏洩を制御している。環状リング67、68部では内周開口部32の内部空間内のベアリング等に油路66のオイルの一部を潤滑油として供給するため、所定量のオイルの漏洩を許容する設計になっている。そして内周開口部32の内部空間内に供給されたオイル(潤滑油)が内部空間に充満するとオイルは内周開口部32のオイル孔35から流出し対向する環状部41cの壁面38に供給される。そして環状部41cが回転すると壁面38に供給されたオイルが遠心力によって摩擦プレート42、及びセパレートプレート43に供給されて摩擦プレート42、及びセパレートプレート43の潤滑及び冷却を行なう。さらに壁面38に供給されたオイルは遠心力によって飛散し、電動モータ20のロータ21、及びステータ22の冷却を行なう。そして各部を冷却したオイルは重力によって下方に落下し、リザーバ72であるケース3、及びフロントケース6の下方に貯留される。
【0042】
次に本発明に係る電動モータ20について
図2〜
図23に基づいて説明する。3相交流モータからなる電動モータ20は、出力軸26の外周開口部27の外周側に配置されている。電動モータ20は、出力軸26に回転連結される円筒状のロータ21と、ロータ21の半径方向外周に対向して配置され珪素鋼板(図示せず)を積層してなるステータ22と、ステータ22に巻回されるコイル142とを備えている。ステータ22はケース3の外周壁部3cの内周面に固定されている。ロータ21は、出力軸側端面から板部材24が半径方向内周側に延在されて出力軸26の底壁部27eの出力軸側側面にボルトによって固定されている。これにより電動モータ20はロータ21のみが出力軸26と一体回転される。またコイル142はコントローラ70と電気的に接続されており、コントローラ70は、各種状態を検出するいずれも図示しない各センサ(車速センサ、スロットル開度センサ、シフト位置センサ等)からの信号に基づいてコイル142への通電量、或いはコイル142の非通電を制御している。モータの結線方法は、Y結線である。なお、結線方法はY結線に限らず、その他の方法(例えばデルタ結線)であってもよい。
【0043】
次に
図3乃至
図23に基づき、ステータ22について説明する。尚、説明中において、
図3におけるステータ22の上下方向は実際のステータ22の搭載状態と一致する。しかし
図4における上下方向を分割コア104の上下方向としているが、実際のステータ22上におけるその向きとは無関係である。また、説明中において、
図5における上下方向を低圧端子ボックス143(本発明の支持部材に該当する)の上下方向とするが、実際のステータ22上におけるその向きとは無関係である。また、説明中において、
図5における左方(ステータ22の半径方向内方に該当する)を低圧端子ボックス143の後方とし、右方(ステータ22の半径方向外方に該当する)を低圧端子ボックス143の前方とするが、実際のステータ22上におけるその向きとは無関係である。さらに、説明中において、
図10における上下方向をバスリング105の上下方向とするが、実際のステータ22上におけるその向きとは無関係である。
【0044】
図3は、ステータ22の平面図を示している。ステータハウジング102の内周面には、複数(本実施形態においては30個)の分割コア104(本発明のコア組立体に該当する)が、所定間隔おきに配置されている。それぞれコイル142が巻回された分割コア104は、ステータハウジング102内に連続して円環状に並ぶことにより、コアユニット103を形成している。コアユニット103とバスリング105とにより有底箱状の複数の端子収容部106が形成され、それぞれの端子収容部106には絶縁用樹脂材料が充填されている。
【0045】
尚、
図3において、コアユニット103の内周側に対向するように、ロータ21が2点鎖線にて示されている。分割コア104に通電してコアユニット103に回転磁界を発生させることにより、ロータ21はステータ22に対して回転する。
【0046】
図4は、分割コア104から、後述する低圧端子ボックス143を取り去った状態を示している。分割コア104は、図示しない積層鋼板を内部に含んだボビン141を有している。ボビン141は合成樹脂材料により形成されており、内部の積層鋼板を絶縁している。分割コア104がステータハウジング102に保持されたときに、内周端に位置するボビン141の部位には、四方に突出した第1フランジ411が形成されている。
【0047】
第1フランジ411の上部には、一対の係止孔412が形成されている。各々の係止孔412は第1フランジ411を貫通しており、分割コア104がステータハウジング102に保持されたときの円周方向に、互いに所定距離だけ離れた位置に形成されている。
【0048】
また、分割コア104がステータハウジング102に保持されたときに、第1フランジ411に対して半径方向外方に対向するように、四方に突出した第2フランジ413が形成されている。第2フランジ413の上端部には、上方へと延びた一対のワイヤ係止部414が、円周方向に互いに所定距離だけ離れた位置に設けられている。それぞれのワイヤ係止部414の上端部には、円周方向に延びた保持スリット415が形成されている。
【0049】
また、第2フランジ413の上端には、一方のワイヤ係止部414の側方に位置するように、フック部416が形成されている。フック部416は、分割コア104の円周方向外方に屈曲した略L字状を呈している。
【0050】
さらに、分割コア104がステータハウジング102に保持されたときに、外周端に位置するボビン141の部位には、上方に突出した一対のリテーナ417が形成されている。リテーナ417は、円周方向に互いに所定距離だけ離れた位置に設けられており、ともに後述する低圧端子ボックス143に対し、ステータ22の半径方向で対向している。ステータ22の半径方向において、リテーナ417と第2フランジ413との間には、バスリング挿入部418が形成されている(
図8参照)。
【0051】
第1フランジ411と第2フランジ413との間には、エナメル線等により形成されたコイル142が巻回されている。巻回されたコイル142の高圧側端部421(本発明のコイルの他端部に該当する)は、フック部416に係合した後、反転して双方のワイヤ係止部414の保持スリット415内に挿入され、ワイヤ係止部414間に架設されている(
図4参照)。
【0052】
図5乃至
図7に示す低圧端子ボックス143は、これに限られるものではないが、芳香族ナイロンまたはポリフェニレンサルファイド樹脂により一体に形成されており、概ね容器形状を呈している。低圧端子ボックス143は、底板部431の後端上に後壁432を備えるとともに、底板部431の側端部には一対の側板433、434が立設されている(後壁432および側板433、434は、本発明の第2囲繞部に該当する)。
【0053】
側板433、434は、側板433、434間の幅がそれぞれ略同等である側壁433b、434b、及び側壁433d、434dを有している。また側板433、434は、側壁433bと側壁433dとの間、及び側壁434bと側壁434dとの間にそれぞれ側壁433b、434ba間、及び側壁433d、434d間の幅より若干拡幅されて立設された側壁433c、及び側壁434cを有している。低圧端子ボックス143は上方および前方(ステータ22上において後述するバスリング105が位置する側)が開口しており、平面視がほぼコの字状を呈している。低圧端子ボックス143は、ボビン141の上部に脱着可能に設けられている。
【0054】
各々の側板433、434の側壁433b、434bの前端部には、側壁433b、434b間の距離が拡大するように、段付部433a、434aが形成されている。また、一方は図略であるが双方の側壁433d、434dの後端部には、ボビン435が下方に突出している(
図5、
図6参照)。
【0055】
また、側壁433c、434cには上方に開口する保持溝433e、434eがそれぞれ形成されている。さらに、側壁433cと側壁433dとの間、及び側壁434cと側壁434dとの間からは、円周方向外方に向けて端子装着部437(本発明の装着部に該当する)がそれぞれ延びている。各々の端子装着部437は、互いに平行に延びるとともに下端において接続された一対の挟持壁437aにより形成されており、断面が略U字状に形成されている。対向する挟持壁437a間には、後述する中性点端子144が挿入可能なように形成されている。
【0056】
各々の端子装着部437の上端(本発明の端部側に該当する)からは
図7の断面図に示すような、温度センサであるサーミスタ(本発明の第1または第2センサに該当する)の導線を保持するための導線保持部438が上方に延在して形成されている。導線保持部438は円周方向の幅が長い壁438aと、壁438aと対向する円周方向の幅が壁438aより短い壁438bとを有している。壁438aはステータ22の内周側となる挟持壁437aの上端に形成され、壁438bはステータ22の外周側となる挟持壁437aの上端に形成されている。壁438aと壁438bとは各挟持壁437aの上端から各々離間する側に底板部431と平行に若干延在したのち上方に直角に屈曲して所定量だけ延在されている。そして上方に延在したのちそれぞれが接近する側に屈曲して爪部438c、438dが形成されている。爪部438cと爪部438dとの間の隙間は、保持部438によって保持しようとする導線の直径よりも若干狭く形成されており、一度保持部438に保持された導線が爪部438cと爪部438dとの間に邪魔をされ容易に導線保持部438から脱離しない様になっている。
【0057】
また、爪部438cと爪部438dとが対向する部分の上方部には爪部438cと爪部438dとの間を通って嵌入される導線がスムーズに通り抜けられる様に各々所定の大きさのテーパCが設けられている(
図7参照)。
【0058】
図8に示すように、低圧端子ボックス143が、コイル142が巻回されたボビン141の上部に取り付けられて分割コア104が完成する。
図9に示すように、低圧端子ボックス143をボビン141に取り付ける場合、双方のボビン435の後端部を、ボビン141の係止孔412にそれぞれ挿入する。それとともに、
図6に示す側板433、434の段付部433a、434aを、
図4に示す各々のワイヤ係止部414に対し円周方向外方から係合させ、低圧端子ボックス143を水平面内においてボビン141に対し位置決めする。
【0059】
その後、コイル142の低圧側端部422(本発明のコイルの一端部に該当する)を、側板433の側壁433cに設けた保持溝433eに挿入した後、側板434の側壁434cに設けた保持溝434eに係合させる。これにより、低圧側端部422は、側板433、434間に架設される(
図14参照)。
【0060】
すべての分割コア104を、ステータハウジング102の内周面に円環状に並ぶように取り付けた後、中性点端子144(本発明の第1端子に該当する)を低圧端子ボックス143に装着する(
図14参照)。
【0061】
中性点端子144は、導電性を有する金属により形成されている。中性点端子144は、
図14に示す平面視において、長手方向の中央に位置する中央突部441を中心に対称形状を呈している。中央突部441は、低圧端子ボックス143に取り付けた状態で半径方向外方に突出しており、中央接続片442が形成されている。また、中央突部441の両端部には直線状の挿入部443が形成され、各々の挿入部443には、半径方向外方に突出した端縁部444が形成されている。それぞれの端縁部444には、端部接続片445が形成されている。
【0062】
中性点端子144は、各々の挿入部443を、低圧端子ボックス143の挟持壁437a間に挿入することにより、隣り合った3個の低圧端子ボックス143に渡って取り付けられる。これにより、中央接続片442および一対の端部接続片445が、連続して並んだ3個の分割コア104の低圧端子ボックス143内にそれぞれ配置される。中央接続片442および端部接続片445は、側板433、434間に架設されたコイル142の低圧側端部422に対して、ヒュージング、かしめ、溶接等により固着され、各コイル142の低圧側端部422を互いに接続する。
【0063】
図10乃至
図13に示すように、バスリング105は、コアユニット103の半径方向外方において対向するように、円環状に形成されている。バスリング105は、ともに合成樹脂材料により環状に形成されたアウタクリップ151とインナクリップ152とを備えており、これらは半径方向に互いに嵌合している。アウタクリップ151およびインナクリップ152は、それぞれ複数のセグメントに分割されたものを接続して形成してもよい。
【0064】
アウタクリップ151の3か所からは、それぞれインバーターの高圧側の各相と接続される外部端子155u、155v、155wが延出している。外部端子155u、155v、155wは、バスリング105内において、後述する各相の電力供給端子154と接続されているが、電力供給端子154と一体に形成されていてもよい。
【0065】
バスリング105は、各相のセグメントワイヤ153u、153v、153w(本発明の電力供給線に該当する)を、それぞれ複数個備えている。各々のセグメントワイヤ153u、153v、153wは、例えばエナメル線により円弧状に形成されている。また、バスリング105は、導電性を有する金属により形成され、セグメントワイヤ153u、153v、153wにかしめられた電力供給端子154(本発明の第2端子に該当する)を有している(
図11参照)。
【0066】
図12に示すように、インナクリップ152の外周面には、一対の環状のリブ521b、521cが形成されており、上面521a、底面521dとともに、セグメントワイヤ153u、153v、153wを、異相のもの同士が接触しないように、それぞれ絶縁しながら挟持している。
【0067】
図13に示すように、インナクリップ152と嵌合するアウタクリップ151は環状部511を備え、環状部511の内周面にも上面511a、リブ511b、511c、底面511dが形成されており、インナクリップ152とともに、セグメントワイヤ153u、153v、153wを保持している。
【0068】
同相のセグメントワイヤ153u、153v、153wの上方へ延びた端部同士は、電力供給端子154によりかしめられて接合されている(本発明の複数の電力供給線に該当する)。
【0069】
電力供給端子154は、セグメントワイヤ153u、153v、153wの端部にかしめられたかしめ部541と、かしめ部541からバスリング105の半径方向内方へと延びたコイル係合部542とを有している。コイル係合部542の先端は、上方へと延びた後に下降することにより、概ね逆U字状に形成されている(
図12参照)。
【0070】
インナクリップ152の上面521aからは、半径方向外方へ向けて、複数の保持フランジ522が円周上において均等間隔に突出している。各々の保持フランジ522には、各対応するセグメントワイヤ153u、153v、153wの端部の挿通を許容する台形状の切欠き522aが形成されている。また、保持フランジ522上には、一対の突起522bが形成されている。電力供給端子154のコイル係合部542は、突起522b間に保持される。
【0071】
一方、アウタクリップ151の上面511aからは、複数の囲繞部512(本発明の第1囲繞部に該当する)が上方に突出している(
図13参照)。囲繞部512は、アウタクリップ151の円周上において均等間隔に設けられている。囲繞部512はバスリング105の半径方向に延びる立壁部512aと、立壁部512aの両縁部から半径方向内方へと延びる一対の側壁512b(本発明の第1囲繞部の側壁に該当する)とにより形成されている。
【0072】
双方の側壁512bの端部は開放されており、囲繞部512の平面視は略コの字状を呈している。アウタクリップ151をインナクリップ152と嵌合させることにより、囲繞部512は、セグメントワイヤ153u、153v、153wにかしめられた各電力供給端子154を取り囲む(
図11参照)。セグメントワイヤ153u、153v、153wの端部のうち同相のものは、バスリング105の円周上において2個おきに囲繞部512内に突出することになる。
【0073】
複数の立壁部512aのうち、前述した外部端子155u、155v、155wが引き出される3つの立壁部512aには、端子孔513が貫通している。また、該3つの立壁部512aの内周面には、端子孔513の下方に位置するように、電力供給端子154のかしめ部541が保持される支持片514が突出している(
図13参照)。
【0074】
バスリング105を、ステータハウジング102に保持されたコアユニット103に取り付けるために、コアユニット103に対し上方から対向させる。バスリング105は、アウタクリップ151の環状部511を、各々の分割コア104のバスリング挿入部418内に配置する。また、バスリング105の囲繞部512の外周面が、円周方向において一対のリテーナ417間に配置されるように位置決めされる。このとき、囲繞部512の側壁512bの端部が、分割コア104のワイヤ係止部414を挟んで、低圧端子ボックス143の開口した側板433、434の端部と半径方向外方から対向する。
【0075】
これにより、各々の分割コア104の上方には、ワイヤ係止部414、低圧端子ボックス143および囲繞部512により、所定の容積を有する桶状の端子収容部106(
図14参照)が、分割コア104ごとに独立して形成される。端子収容部106内において、
図12、
図14に示す電力供給端子154のコイル係合部542は、ワイヤ係止部414間に架設されたコイル142の高圧側端部421に係合された後、ヒュージング、かしめ、溶接等により固着される。
【0076】
次に本発明に係るセンサブラケット160(本発明の取付部材に該当する)について主に
図15〜
図23を参照して詳細に説明する。センサブラケット160は
図2に示すケース3、及びフロントケース6内に貯留されたオイルの温度、及び隣り合う2個の分割コア104にそれぞれ巻回されたコイル142の温度を測定するためのサーミスタ161(本発明の第1センサに該当する)、サーミスタ166(本発明の第2センサに該当する)の測温部を油温測定点(本発明の所定の第1位置に該当する)、及びコイル温度測定点(本発明の所定の第2位置に該当する)に固定するための部材である。
【0077】
具体的には
図3に示すように、油温を測定する油温センサ162は、油温測定点である実際のステータ22の搭載状態における重力方向下方に配置される。ただし油温センサ162は
図3に示す位置に限らず、サーミスタ161の測温部がオイルに浸漬する位置であればどこでもよい。
【0078】
またコイル142の温度を測定するコイル温度センサ165は
図3において油温センサ162の取付け位置に対してステータ22の円周方向に略180度ずれた位置に配置される。しかしコイル温度センサ165の取付け位置も
図3に示した位置に限らず、適宜実施者によって最適な位置を選択すればよい。なお、
図15は油温センサ162が端子収容部106に固定された状態を示す斜視図であり、
図16はコイル温度センサ165が端子収容部106に固定された状態を示す斜視図である。
【0079】
センサブラケット160は、これに限られるものではないが、芳香族ナイロンまたはポリフェニレンサルファイド樹脂により形成されている。センサブラケット160は、オイル温度測定用のサーミスタ161を保持するための第1保持部160aと、第1保持部160aと直交するコイル温度測定用のサーミスタ166を保持するための第2保持部160bと、センサブラケット160を端子収容部106の外側から端子収容部106の一部に係合して固定するための第1係合部167と、第2係合部168とを有している。具体的には第1係合部167は低圧端子ボックス143の側板434(本発明の側壁に該当)に外側から係合するとともに低圧端子装着部437および導線保持部438と係合する。また第2係合部168は高圧端子囲繞部512の側壁512bに外側から係合する。
【0080】
第1保持部160aは、本実施形態における取付け状態においてステータ22の半径方向外方に延在している。
図21に示すように第1保持部160aは延在する方向と直交する断面が略U字形状を呈する。
図15および
図16に示すように、第1保持部160aの略中間まで延在する収容部169にはU字断面の開口を閉塞するL字状の蓋部材171が設けられている。収容部169の略U字断面における側壁169aには第1保持部160aに収容されたサーミスタ161の導線を引き出すための切欠き孔172が設けられている。
図20に示すように側壁169bには第2保持部160bに収容されたサーミスタ166の導線166aを引き出すための切欠き孔173が設けられている。
【0081】
図15および
図16に示すように、収容部169の端面169fから第1保持部160aの先端部まで延びる露出部174が開口形成されている。露出部174はサーミスタ161が第1保持部160aに収容されたとき、サーミスタ161の先端の測温部161bの露出を許容する。露出部174の先端部は露出部174の両側壁169c、169dの高さが低い段壁169m、169nを有する。段壁169m、169nの端部は先端壁169eによって閉塞されている。
【0082】
また露出部174のU字溝の側壁169cから底面である曲率部にかけてオイルがサーミスタ161に触れやすくなるように矩形の窓169gが本実施形態においては3箇所開口されている。このようにしてサーミスタ161の測温部161bが油温測定点に位置している。
【0083】
図18に示すように第2保持部160bは内周孔175を有した円筒形状に形成され円筒中心が本実施形態の取付け状態においてはロータ21の回転軸と略平行に延在している。第2保持部160bが第1保持部160aに接続される部分からセンサブラケット160の先端部に向かって接続強度を補強するための板状リブ176が延びている。
図16に示すように第2保持部160bの端面からは第2保持部160b内の内周孔175に保持されるサーミスタ166の測温部166bが所定量だけ露出してコイル温度測定点に位置している。
【0084】
図18におけるセンサブラケット160の下面視において第1保持部160aと第2保持部160bの交差部の右側には第1係合部167が設けられている。第1係合部167は
図18の下面視において第2保持部160bの円筒外周からの接線であり、かつ側壁169bと直交して右方に延在する第1壁177と、第1壁177と所定の角度を有し、第1壁177よりもコアユニット103の内周側に配置される第2壁178と、第1壁177と第2壁178とを接続し取付け状態において低圧端子ボックス143の側壁434cと平行に形成された第3壁179とを有している。そして第1壁177、第2壁178、及び第3壁179によって囲繞された台形形状からステータ22円周方向外方に開口するよう切り取られて形成された矩形の開口部180を有している。また開口部180と第2壁178との間には第1係合壁181が形成されている。第1係合壁181のステータ22内周側面には係合爪185が形成されている。係合爪185は
図18において手前側に平面部185aが形成されている。そしてセンサブラケット160を
図23に示すように低圧端子ボックス143に取付けたとき、第1係合壁181が導線保持部438の壁438aと、壁438bとの間、及び端子装着部437の挟持壁437aと、挟持壁437aとの間に係入され、係合爪185が壁438aの爪部438cと係合することによってセンサブラケット160の抜け止めになっている。
【0085】
また
図18に示すように、第2壁178、及び第3壁179との間にそれぞれ第2係合壁182、第3係合壁183が形成されるよう平面視がL字形状のL字溝184が所定深さで刻設されている。そしてセンサブラケット160を
図22に示すように低圧端子ボックス143に取付けたとき、低圧端子ボックス143の側壁434cと、端子装着部437の挟持壁437aとによって形成される屈曲部439(
図5参照)がL字溝184に係合してセンサブラケット160の位置決めを行なっている。
【0086】
第2係合部168は
図17の平面視においてセンサブラケット160の露出部174の左側に設けられている。第2係合部168は、
図21に示すように露出部174の側壁169d上端から側壁169dと直交し側壁169dから離間する方向に延在された後、側壁169dと平行になるよう垂下された係合壁168aを有する。側壁169dと係合壁168aとの間の隙間は囲繞部512の側壁512bの厚さよりも若干広く形成され、側壁512bが、第2係合部168を形成する露出部174の側壁169dと係合壁168aとの間に係合してセンサブラケット160が位置決めされる。
【0087】
このようにセンサブラケット160が形成されるので、油温センサ162、及びコイル温度センサ165は隣接する端子収容部106の間で各サーミスタ161、166の測温部161b、166bが油温測定点(第1位置)またはコイル温度測定点(第2位置)に位置するように端子収容部106の外側の一部に、簡易、且つ堅固に固定され精度よく位置決めがされる。これにより精度よく油温、及びコイル温度の測定ができる。
【0088】
また、前述したように油温を測定する油温センサ162は、油温測定点(第1位置)である実際のステータ22の搭載状態において重力方向下方に配置される(
図3参照)。そして本実施形態においては油温センサ162のサーミスタ161の導線161aはセンサブラケット160の切欠き孔172から引き出され
図3においてステータ22の円周方向左方に向かって配策される。このとき導線161aは
図7の2点鎖線に示す状態で油温センサ162の左に隣接する端子収容部106の一対の導線保持部438に保持され、ステータ22の略中心高さからステータ22の半径方向外方に引き出されている。
【0089】
また、コイル142の温度を測定するコイル温度センサ165は
図3においてコイル温測定点である油温センサ162の取付け位置に対してステータ22の円周方向に略180度ずれた位置に配置される。そして本実施形態においてはコイル温度センサ165のサーミスタ166の導線166aはセンサブラケット160の切欠き孔173から引き出され
図3においてステータ22の円周方向左方に向かって配策される。このとき導線166aはコイル温度センサ165が固定された端子収容部106の一対の導線保持部438のうち
図3において左方の導線保持部438に保持され、その後、左に隣接する端子収容部106の一対の導線保持部438に連続的に保持され、ステータ22の略中心高さからステータ22の半径方向外方に引き出されている。
【0090】
このように油温センサ162、及びコイル温度センサ165の各導線161a、166aがステータ22の略中心高さという同じ位置からステータ22の半径方向外方に引き出され図略の1つのコネクタに接続される。これにより、コネクタの数は油温センサ162とコイル温度センサ165とを別々に配策したときと比較して少なくでき低コストに対応できる。
【0091】
そして、コイル142の高圧側端部421と電力供給端子154との接続部、および低圧側端部422と中性点端子144との接続部を収容した状態で、端子収容部106内にポッティング材としての絶縁用樹脂材料を充填する。そして充填された絶縁用樹脂材料が硬化することにより、ボビン141、低圧端子ボックス143、各温度センサ162、165、及びバスリング105が固着して、ステータ22が完成する。
【0092】
次に、電動モータ20、および電動モータ20が用いられる車両用駆動装置1の作動について説明する。本実施形態の車両において、電動モータ20、および車両用駆動装置1が作動する場合として、まずクラッチ装置40の油圧室46の油圧が抜かれてクラッチ装置40が係合され、エンジン10と車両用駆動装置1の電動モータ20が同時に作動する場合がある。またクラッチ装置40の油圧室46に油圧が供給されてクラッチ装置40の係合が解除されエンジン10を切り離して電動モータ20が単独で駆動源として車両を駆動する場合がある。いずれの場合にも、電動モータ20、および車両用駆動装置1の作用は同じであるので、同時に説明する。
【0093】
コントローラ70から車両用駆動装置1の電動モータ20の駆動指令が出されるとバッテリ(図示せず)からステータ22の外部端子155u、155v、155wへ電流が流れる。外部端子155u、155v、155wから、セグメントワイヤ153u、153v、153wを介して各相のコイル142に電力を加えることにより、回転磁界を発生させることができ、これによってロータ21が回転され電動モータ20は駆動モータとして機能する。そしてトルクコンバータ2にて所定のトルク比にて増大された上で自動変速装置5の入力軸に伝達されて車両が走行する。
【0094】
このとき大電流を流す電動モータ20が連続的に駆動されると、ステータ22のコイル142が発熱する。そして本実施形態においては発熱したステータ22のコイル142を冷却するために冷却用のオイルをステータ22のコイル142に飛散させて冷却している。冷却用のオイルは実際の搭載状態においてケース3、およびフロントケース6内でステータ22の下方(リザーバ72に相当)に貯留されており、ステータ22の下方が所定量だけ浸漬している。このときステータ22に固定された油温センサ162の測温部162bは貯留されたオイルに確実に浸漬するよう構成されている。
【0095】
オイルは電動オイルポンプ60の駆動によってクラッチ装置40の油圧室46内に供給されたり、内周開口部32の連結部32aのオイル孔35から流出して入力軸41の環状部41cに付着したりする。環状部41cに付着したオイルは環状部41cに作用する遠心力によってクラッチ装置40の摩擦プレート42、及びセパレートプレート43と、電動モータ20のロータ21、及びステータ22とに飛散してそれぞれを冷却し、やがてステータ22の下方に落下してケース3、及びフロントケース6内に再び貯留され、ここでも浸漬するステータ22を冷却している。このようにオイルは各部を冷却する冷却機能を有するので冷却される部位に異常発熱があるとオイルの温度も上昇する虞れがある。そして、例えば一部がオイルに浸漬しているステータ22のコイルの温度が上昇することによってオイル温度が所定値を越えて上昇すると冷却性能が大きく低下し、各部、特にステータ22の冷却性能に大きな影響を及ぼす。
【0096】
このような事態に備え本発明においてはステータ22の所定の位置にブラケット160によって保持された温度センサであるサーミスタ161により常に同じ位置でオイルの油温測定ができる。これにより油温の温度上昇を確実に且つ精度よく検出でき、異常を検出したときにはシステムを停止する等の処置を素早くとることができるので信頼性が向上する。
【0097】
またステータ22が有するコイル142自体の温度をブラケット160によって保持された温度センサであるサーミスタ166により常に同じ位置で測定できるので、こちらも温度上昇を確実に且つ精度よく検出でき、異常を検出したときにはシステムを停止する等の処置を素早くとることができるので信頼性が向上する。
【0098】
なお、本実施形態においてはステータ22に油温センサ162、及びコイル温度センサ165を設けたが、いずれか一方だけでもよい。これによっても相応の効果が得られる。
【0099】
また、本実施形態においては、センサブラケット160の第1係合部167を低圧端子ボックス143の側壁434に外側から係合するとともに、低圧側端子を保持する低圧端子装着部437および導線保持部438と係合した。また第2係合部を高圧端子囲繞部512の側壁512bに係合してセンサブラケット160を固定した。しかしこの態様に限らず、センサブラケット160は、隣接する端子収容部106の間に配置され、且つ端子収容部106の外側で端子収容部106の一部に固定され、サーミスタ161、166の測温部161b、166bが油温測定点(第1位置)またはコイル温度測定点(第2位置)に位置していれば、端子収容部106のどの部分に係合されていてもよい。これによっても同様の効果が得られる。
【0100】
また、本実施形態においては、センサブラケット160の第1係合部167及び第2係合部168を端子収容部106に係合して各温度センサ162、165を固定した。しかしこれに限らず第1係合部のみ、または第2係合部のみによって端子収容部106に係合し、各温度センサ162、165を固定してもよい。これによっても相応の効果が期待できる。さらに、第1係合部167及び第2係合部168を端子収容部106に係合するのではなく接着によって固定してもよい。
【0101】
さらに、本実施形態においては、センサブラケット160が第1保持部160aと第2保持部160bとを有しているが、これに限らず、温度を測定する部位に応じて第1保持部160aおよび第2保持部160bのうち少なくとも一方のみを有していてもよい。これによっても同様の効果が得られる。
【0102】
上述の説明から明らかなように、本実施形態によれば、電動モータ20が有するセンサブラケット160(取付部材)には、ケース3、及びフロントケース6内に貯留されたオイルの温度を油温測定点(第1位置)で測定する温度センサであるサーミスタ161(第1センサ)を保持する第1保持部160aが形成されている。またコイルの温度をコイル温度測定点で測定する温度センサであるサーミスタ166(第2センサ)を保持する第2保持部160bが形成されている。そしてサーミスタ161、166が、ケース3に固定されたステータ22を構成する隣接した端子収容部106の間で油温測定点、及びコイル温度測定点に位置するように、センサブラケット160が端子収容部106の外側で端子収容部106の一部に固定されている。このように電動モータ20は外部でサーミスタ161、166を取付けられたセンサブラケット160を端子収容部106の一部に簡易に固定するだけで、サーミスタ161、166の測温部を油温測定点またはコイル温度測定点に安定した状態で正確に位置させることができる。さらに、端子収容部106に充填されたモールドにサーミスタ161、166(温度センサ)を固定するための固定部を形成する必要がないので、サーミスタ161、166(温度センサ)の取付けを作業性よく、短時間かつ低コストで行うことができる。
【0103】
また、本実施形態によれば、電動モータ20のセンサブラケット160は、低圧端子ボックス143(支持部材)の側壁434に外側から係合するとともに、低圧側端子を保持する低圧端子装着部437(装着部)および該低圧端子装着部437より端部側に形成され温度センサであるサーミスタ161、166の導線を保持する導線保持部438と第1係合部167で係合することにより、コア組立体である分割コア104に取り付けられた低圧端子ボックス143に固定される。これによりサーミスタ161、166を分割コア104に巻回されたコイル142のコイル温度測定点に正確に位置させることができる。さらに、サーミスタ161、166の導線を保持するために形成された導線保持部438を利用してセンサブラケット160を低コストで固定することができる。
【0104】
また本実施形態によれば、電動モータ20のセンサブラケット160は、バスリング105の高圧端子囲繞部512の側壁512bに第2係合部168で外側から係合するので、端子収容部106に堅固に固定され、サーミスタ161、166(温度センサ)を油温測定点、及びコイル温度測定点に一層安定した状態で正確に位置させることができる。
【0105】
さらに、本実施形態においては、車両は出力軸26と同軸にケース3、及びフロントケース6に回転可能に軸承されエンジン10に回転連結された入力軸41と、入力軸41と出力軸26とを係脱可能に連結するクラッチ装置40とを備えたハイブリッド車両である。これによりに本発明に係る電動モータ20を用いた車両用駆動装置1はケース3、及びフロントケース6内に貯留されたオイルの温度および高出力が必要な電動モータ20のコアユニット103のコイル142の温度のうち少なくとも一方を安定した状態で正確に測定することができる。
【0106】
なお、端子収容部106内に、コイル142の高圧側端部421と電力供給端子154との接続部、およびコイル142の低圧側端部422と中性点端子144との接続部のうちのどちらかのみを収容した状態で、絶縁用樹脂材料を充填してもよい。
【0107】
また、各分割コア104毎にそれぞれ複数の端子収容部106を形成し、コイル142の高圧側端部421と電力供給端子154との接続部、およびコイル142の低圧側端部422と中性点端子144との接続部を、それぞれ別個の端子収容部内に収容した状態で、それぞれの端子収容部にセンサブラケット160の各係合部167、168を外側から係合させてセンサブラケット160を固定してもよい。
【0108】
また、本実施形態における変速機は、一般的に変速機として用いられる遊星歯車変速機以外にも、無段変速機や、一般的に手動変速機で採用される同期噛合式歯車変速機であってもよい。
【0109】
さらに、本発明はハイブリッド車用に限らず、電動モータ20を備えた電気自動車に適用してもよい。