(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記火力発電所がガス火力発電所である場合は、前記ボイラの損失量とする前記タービン室側から供給された熱量は、再熱器の温度調整を行う再熱器スプレー水熱量であることを特徴とする請求項1記載のボイラ室効率計算方法。
前記火力発電所が石油火力発電所である場合は、前記ボイラの損失量とする前記タービン室側から供給された熱量は、空気を予熱する蒸気式空気予熱器蒸気熱量、燃料油を温める蒸化器加熱用蒸気熱量、燃料油を噴霧するアトマイズ蒸気熱量、再熱器の温度調整を行う再熱器スプレー水熱量であることを特徴とする請求項1記載のボイラ室効率計算方法。
前記火力発電所が石炭火力発電所である場合は、前記ボイラの損失量とする前記タービン室側から供給された熱量は、スートブロアー蒸気熱量、排ガスの温度調整を行うガスガス熱交換器用蒸気熱量、再熱器の温度調整を行う再熱器スプレー水熱量であることを特徴とする請求項1記載のボイラ室効率計算方法。
ボイラで発生した蒸気をタービンに導き前記タービンに連結された発電機を駆動して発電を行う火力発電所の発電端効率を計算する発電端効率計算方法において、前記タービンからの出熱量を前記タービンへの入熱量で除算してタービン室効率を求め、請求項1乃至請求項4のボイラ室効率計算方法で計算したボイラ室効率に前記タービン室効率を乗じて、前記火力発電所の発電端効率を計算することを特徴とする発電端効率計算方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電所において効率良く火力発電プラントを運転させるためには、火力発電プラントの発電端効率を正確に把握しておくことが必要である。発電端効率ηpは、(1)式に示すように、タービン室効率ηtとボイラ室効率ηbとの積で求められる。
【0003】
ηp=ηt×ηb …(1)
また、タービン室効率ηt(%)は入出熱法により、(2)式に示すように、タービン出熱Qmをタービン入熱Qiで除算して求められる。
【0004】
ηt(%)=(Qm÷Qi)×100 …(2)
一方、ボイラ室効率ηb(%)は入出熱法あるいは損失法で計算される。入出熱法でのボイラ室効率ηb1(%)は、(3)式に示すように、ボイラ出熱Qoをボイラ入熱Qfで除算して求められ、損失法でのボイラ室効率ηb2(%)は、(4)式に示すように、ボイラ入熱Qfからボイラ損失Qrを減算した値(Qf−Qr)をボイラ入熱Qfで除算して求められる。
【0005】
ηb1(%)=(Qo÷Qf)×100…(3)
ηb2(%)={(Qf−Qr)÷Qf}×100
=
{1−(Qr÷Qf)}×100 …(4)
従って、発電端効率ηpを求める場合には、ボイラ室効率ηbが(3)式で示される入出熱法のボイラ室効率ηb1(%)である場合には、(5)式に示す入出熱法による発電端効率ηp1となり、ボイラ室効率ηbが(4)式で示される損失法のボイラ室効率ηb2(%)である場合には、(6)式に示す損失法による発電端効率ηp2となる。
【0006】
ηp1(%)=ηt(%)×ηb1(%)÷100 …(5)
ηp2(%)=ηt(%)×ηb2(%)÷100 …(6)
入出熱法による発電端効率ηp1と損失法による発電端効率ηp2とは、理論上、同じ値になるはずであるが、計測精度上の問題や入出熱法と損失法との基本的な熱量計算の考え方の違いにより必ずしも同じ値にならない。
【0007】
ボイラ室効率はJISにも記載があるように、損失法のほうが測定誤差は小さく精度が高い。また、石炭火力ではボイラ投入熱量の測定誤差が大きく入出熱法では精度が低下してしまう。そこで、現状では(6)式に示す発電端効率ηp2を求めることが多い。
【0008】
ここで、燃料を燃焼させるボイラのボイラ効率を損失法で算出し、ボイラからの蒸気で駆動される蒸気タービンのタービン効率をヒートバランス解析法で算出して、ボイラ効率とタービン効率とを乗算して火力発電プラントのプラント効率を精度良く算出するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1のものは、入出熱法と損失法との基本的な熱量計算の考え方の違いを是正するものではない。また、熱量計算の考え方違いによる入出熱法の発電端効率ηp1と損失法の発電端効率ηp2とが相違するのは石炭火力に限定だけでなく、ガス火力と石油火力にも当てはまる。それは以下の理由による。
【0011】
いま、蒸気式空気予熱器(SAH)などの蒸気使用機器で使用する蒸気の蒸気供給源がタービン室側にあり、蒸気を使用している箇所がボイラ室側だった場合を考える。入出熱法で考えると、入出熱法のボイラ出熱Qo1は(7)式で示される。
【0012】
Qo1=(QMS+QHR−QCR−QFW )−Qsah+Qsahd +Qmc …(7)
QMS:主蒸気熱量、QHR:高温再熱蒸気熱量、QCR:低温再熱蒸気熱量、QFW:給水熱量、Qsah:SAH蒸気熱量、Qsahd:SAHドレン熱量、Qmc:補給水熱量
すなわち、入出熱法ではボイラ出熱Qo1はタービン入熱Qiであり、蒸気式空気予熱器(SAH)の蒸気はタービン抽気から取っているので、タービン入熱Qi(ボイラ出熱Qo1)からSAH蒸気熱量Qsahを減算している。また、SAHドレン熱量Qsahd、補給水熱量Qmcは、タービン室に戻されるのでタービン入熱Qi(ボイラ出熱Qo1)に加算している。
【0013】
従って、入出熱法のボイラ室効率ηb1(%)は、(7)式のボイラ出熱Qo1を(3)式のボイラ出熱Qoに代入して(8)式で示される。
【0014】
ηb1(%)=[{(QMS+QHR−QCR−QFW )−Qsah+Qsahd+Qmc}÷Qf]×100 …(8)
このように、入出熱法では、蒸気使用機器で使用する蒸気の蒸気供給源がタービン室側にある場合、ボイラ出熱Qo1(タービン入熱Qi)からその分の熱量を減算している。
【0015】
一方、損失法で考えると、これらの熱量は熱量回収として扱われるので、損失法のボイラ室効率ηb2(%)は(9)式で示される。
【0016】
ηb2(%)=100−(L1+L2+…−L11…) …(9)
L1:乾き排ガス損失、L2:燃料中水素損失、〜L11:SAH熱量回収。
【0017】
このように、損失法では、蒸気使用機器で使用する蒸気の蒸気供給源がタービン室側にある場合、その熱量をボイラが回収したとしてボイラ出熱Qo2を増加させている。すなわち、損失法では、SAH蒸気がタービン室から供給されるならばボイラにとっては入熱だから損失ではなく逆に熱量の回収として扱っている。
【0018】
従って、発電端熱効率ηpを(1)式で求める場合、入出熱法だけで考えると、タービン室効率ηtやボイラ室効率ηbが計算の仕方によって変動しても、全体としての入出熱が保たれているので問題はない。
【0019】
例えば、SAH蒸気がタービン室から供給されている状態で、その蒸気量が増加(=SAH蒸気熱量が増加)した場合を考えると、SAH蒸気熱量の増加はタービン入熱Qiの減少を意味し、それはボイラ室のボイラ出熱Qoの減少をも意味する。発電機出力が一定(タービン出熱Qmが一定)であるとき、タービン入熱Qiの減少は、(2)式からタービン室効率ηtの上昇となって現れる。逆に燃料消費熱量が一定(ボイラ入熱Qfが一定)でボイラ出熱Qoが減少するため、(3)式からボイラ室効率ηb1が低下する。このように、入出熱法だけで考えると、これらの現象が起こっても発電端効率ηp1は一定となるから、その意味では問題ない。
【0020】
ところが、損失法の考え方では計算が成り立たないことになる。現在の損失法の計算だと、SAH蒸気熱量L11を熱量回収として扱うため、SAH蒸気の増加によって、ボイラ入熱Qfが増加することになる。従って、(4)式に示すように、損失法のボイラ室効率ηb2が上昇することになる。前述の入出熱法だけで考えたときの現象、つまりSAH蒸気の増加によってボイラ室効率ηb1が低下することの逆の結果になってしまう。損失法の発電端効率ηp2は大きめの値となってしまう。
【0021】
本発明の目的は、損失法で計算したボイラ室効率であってもタービン室効率と乗算して入出熱法と同一となる発電端効率を求めることができるボイラ室効率計算方法及び発電端効率算出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1の発明に係るボイラ室効率計算方法は、ボイラで発生した蒸気をタービンに導き前記タービンに連結された発電機を駆動して発電を行う火力発電所の
タービン室側からボイラ室側に供給される熱量も前記ボイラへの入熱として前記ボイラへの入熱量を求め、前記ボイラへの入熱量から損失量を減算してボイラ室効率を計算する損失法によるボイラ室効率計算方法において、前記タービン室側から見て前記タービン室側への入熱はプラスとして
前記ボイラへの入熱量であるとし、前記タービン室側からのボイラ室側への出熱はマイナスと
して前記ボイラの損失量とし、
前記タービン室側からのボイラ室側への出熱を前記ボイラへの入熱量から減算して前記ボイラ室効率を計算することを特徴とする。
【0023】
請求項2の発明に係るボイラ室効率計算方法は、請求項1の発明において、前記火力発電所がガス火力発電所である場合は、前記ボイラの損失量とする前記タービン室側から供給された熱量は、再熱器の温度調整を行う再熱器スプレー水熱量であることを特徴とする。
【0024】
請求項3の発明に係るボイラ室効率計算方法は、請求項1の発明において、前記火力発電所が石油火力発電所である場合は、前記ボイラの損失量とする前記タービン室側から供給された熱量は、空気を予熱する蒸気式空気予熱器蒸気熱量、燃料油を温める蒸化器加熱用蒸気熱量、燃料油を噴霧するアトマイズ蒸気熱量、再熱器の温度調整を行う再熱器スプレー水熱量であることを特徴とする。
【0025】
請求項4の発明に係るボイラ室効率計算方法は、請求項1の発明において、前記火力発電所が石炭火力発電所である場合は、前記ボイラの損失量とする前記タービン室側から供給された熱量は、スートブロアー蒸気熱量、排ガスの温度調整を行うガスガス熱交換器用蒸気熱量、再熱器の温度調整を行う再熱器スプレー水熱量であることを特徴とする。
【0026】
請求項5の発明に係る発電端効率計算方法は、ボイラで発生した蒸気をタービンに導き前記タービンに連結された発電機を駆動して発電を行う火力発電所の発電端効率を計算する発電端効率計算方法において、前記タービンからの出熱量を前記タービンへの入熱量で除算してタービン室効率を求め、請求項1乃至請求項4のボイラ室効率計算方法で計算したボイラ室効率に前記タービン室効率を乗じて、前記火力発電所の発電端効率を計算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1の発明によれば、損失法でボイラ室効率を求める場合に、タービン室側から見てタービン室側への入熱はプラスとし、タービン室側からのボイラ室側への出熱はマイナスとし、タービン室側からのボイラ室側への出熱はボイラの損失量としてボイラへの入熱量から減算してボイラ室効率を計算するので、入出熱法で計算したボイラ室効率と同等となる。これにより、入出熱法で計算したボイラ室効率との比較が容易に行える。
【0028】
請求項2の発明によれば、ガス火力発電所である場合は、タービン室側から供給される再熱器の温度調整を行う再熱器スプレー水熱量をボイラの損失量とするので、入出熱法で計算したガス火力発電所のボイラ室効率と同等のボイラ室効率を得ることができる。
【0029】
請求項3の発明によれば、石油火力発電所である場合は、タービン室側から供給される空気を予熱する蒸気式空気予熱器蒸気熱量、燃料油を温める蒸化器加熱用蒸気熱量、燃料油を噴霧するアトマイズ蒸気熱量、再熱器の温度調整を行う再熱器スプレー水熱量をボイラの損失量とするので、石油火力発電所の入出熱法で計算したボイラ室効率と同等のボイラ室効率を得ることができる。
【0030】
請求項4の発明によれば、石炭火力発電所である場合は、タービン室側から供給されるスートブロアー蒸気熱量、排ガスの温度調整を行うガスガス熱交換器用蒸気熱量、再熱器の温度調整を行う再熱器スプレー水熱量をボイラの損失量とするので、石炭火力発電所の入出熱法で計算したボイラ室効率と同等のボイラ室効率を得ることができる。
【0031】
請求項5の発明によれば、請求項1乃至請求項4のボイラ室効率計算方法で計算したボイラ室効率にタービン室効率を乗じて発電端効率を計算するので、発電端効率について、燃料種別によらず、横並びの発電端効率の評価が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明は、入出熱法によるボイラ室効率ηb1、損失法によるボイラ効率ηb2のいずれであっても、(1)式を用いて発電端効率ηpを計算し評価できるようにすることである。
【0034】
そのために、損失法の発電端効率ηp2を求める(6)式で計算した場合であっても、入出熱法の発電端効率ηp1を求める(5)式で計算した場合と同等の値が得られるように、損失法のボイラ室効率ηb2の計算の仕方を見直す。
【0035】
入出熱法のボイラ室効率ηb1では、例えば、蒸化器や蒸化式空気予熱器SAHの蒸気は、タービン抽気からとっているのでタービン入熱Qiから引いている。つまり、入出熱法のボイラ室効率ηb1の計算では、タービン入熱Qiとボイラ出熱Qoとが等しくなるようにしている。従って、入出熱法の発電端効率ηp1は、(2)式及び(3)式を(5)式に代入し、Qi=Qoとすると、(10)式で示される。
【0036】
ηp1=Qm÷Qf …(10)
一方、損失法のボイラ室効率ηb2では、これらのタービン抽気は、(9)式に示すように、ボイラ室側への熱回収として扱われるので、ボイラ室効率ηb2が高めに出てしまう。そのため、損失法のボイラ室効率ηb2の計算の仕方を見直すに当たっては、タービン抽気は熱回収ではなく熱損失とするのが妥当である。
【0037】
そこで、本発明では、タービン室側から見てタービン室側への入熱はプラスとし、タービン室側からのボイラ室側への出熱はマイナスとし、タービン室側からのボイラ室側への出熱はボイラの損失量としてボイラへの入熱量から減算してボイラ室効率を計算する。これを数式化すると、以下のようになる。
【0038】
ボイラ入熱Qf、ボイラ出熱Qo、ボイラ損失Qrとの関係は、(11)式で示される。
【0039】
Qo=Qf−Qr …(11)
また、前述したように、蒸気式空気予熱器(SAH)などの蒸気使用機器で使用する蒸気の蒸気供給源がタービン室側にあり、蒸気を使用している箇所がボイラ室側だった場合には、入出熱法のボイラ出熱Qo1は(7)式で示され、ボイラ出熱QoからSAH蒸気熱量Qsahが減算されてボイラ出熱Qo1が求められる。
【0040】
入出熱法でのボイラ室効率ηb1は、(3)式に示すように、ボイラ出熱Qoをボイラ入熱Qfで除算して求められる。ボイラ室側の蒸気式空気予熱器(SAH)で使用する蒸気の蒸気供給源がタービン室側にある場合、(3)式のボイラ出熱Qoに、ボイラ出熱QoからSAH蒸気熱量Qsahを減算したボイラ出熱Qo1(=Qo−Qsah)を代入し、さらに(11)式を代入すると(12)式が得られる。
【0041】
ηb1=Qo÷Qf
=(Qo−Qsah)÷Qf
=(Qf−Qr−Qsah)÷Qf
=1−(Qr+Qsah)÷Qf …(12)
ここで、(12)式と損失法のボイラ室効率ηb2を示す(4)式とを対比すると、ボイラ損失QrについてはSAH蒸気熱量Qsahを加算し、熱回収ではなく熱損失とするのが妥当であることが分かる。こうした状況を見て損失法のボイラ室効率ηb2の損失の計上方法について、まずは、燃料別のボイラ出熱Qo(=タービン入熱Qi)を下記のように定める。
【0042】
火力発電所がガス火力発電所である場合は、ボイラ出熱Qo(ガス)は(13)式で示すように定める。
【0043】
Qo(ガス)=(QMS+QHR−QCR−QFW )−Qrhs+Qmc …(13)
QMS:主蒸気熱量、QHR:高温再熱蒸気熱量、QCR:低温再熱蒸気熱量、QFW:給水熱量、Qrhs:再熱器スプレー水熱量、Qmc:補給水熱量
図1は、本発明の実施形態に係るボイラ室効率計算方法をガス火力発電所に適用する場合のボイラ出熱Qo(ガス)の説明図である。ガス火力発電所のボイラ11は、火炉12でガス燃料を燃焼させ給水ポンプ13からの給水流量FWを蒸気にして、過熱器(SH)14から高圧タービン15に主蒸気流量MSとして供給する。高圧タービン15で仕事を終えた低温再熱蒸気流量CRはボイラ11の再熱器(RH)16に供給され、高温再熱蒸気流量HRとして中圧タービン17に導かれ、中圧タービン17で仕事を終えた蒸気は低圧タービン18に導かれる。そして、低圧タービン18で仕事を終えた蒸気は復水器19で水に戻され、給水ポンプ13によりボイラに供給される。なお、低圧タービン18には図示省略の発電機が連結されている。
【0044】
ここで、ボイラ11には燃料の熱量がボイラ入熱Qfとして入熱され、(11)式に示すように、ボイラ入熱Qfからボイラ損失Qrを減算した熱量がボイラ出熱Qoとなる。そして、ボイラ出熱Qo(ガス)がタービン入熱Qiと等しくなるように、ボイラ出熱Qo(ガス)の±を定める。つまり、タービン室側から見て、タービン室側への入熱は+とし、タービン室側からのボイラ室側への出熱は−とする。
【0045】
まず、ボイラ11からタービン室側には、主蒸気熱量QMS及び高温再蒸気熱量QHRが出熱され、タービン室側への入熱となるので、(13)式に示すように、主蒸気熱量QMS及び高温再蒸気熱量QHRは+とする。また、低温再熱蒸気熱量QCR及び給水熱量QFWは、タービン室側からボイラ室側に出熱されるので、(13)式に示すように、低温再熱蒸気熱量QCR及び給水熱量QFWは−とする。同様に、再熱器スプレー水熱量Qrhsはタービン室側からボイラ室側に出熱されるので−とし、補給水熱量Qmcはタービン室側に入熱されるので+とする。
【0046】
給水流量FWは、基本的に復水流量基準で計算した高圧ヒータ出口給水流量を使用する。高圧ヒータ出口給水流量を計算していない場合には、節炭器Eco入口給水オリフィスで計測した給水流量を使用する。
【0047】
主蒸気流量MSは、(給水流量FW+再熱器スプレー水流量rhs−ボイラ給水ポンプタービン(BFP)の高圧駆動蒸気量)とし、ボイラ室側で使用している蒸気流量(アトマイズ、SAH等)は計算しない。SHスプレー水流量は、その取り出し点が給水流量計測点より前であれば加算する。一方、取り出し点が後であれば計算しない。BFPの高圧駆動蒸気量に関しては、ある設備のみ計算する。最新鋭火力には無いところが多い。
【0048】
低温再熱蒸気流量CRは、(主蒸気流量MS−高圧タービンからの抽気による高圧ヒータドレン流量)とし、高圧タービン15からの抽気量を差し引く。このラインにBFPの低圧駆動蒸気の取り出しがある場合には差し引く。また、高温再熱蒸気流量HRは(低温再熱蒸気流量CR+RHスプレー水流量rhs)とする。
【0049】
次に、火力発電所が石油火力発電所である場合は、ボイラ出熱Qo(油)は(14)式で示すように定める。
【0050】
Qo(油)=(QMS+QHR−QCR−QFW )−Qsah−Qev−Qba
−Qrhs+Qsahd+Qevd+Qmc …(14)
QMS:主蒸気熱量、QHR:高温再熱蒸気熱量、QCR:低温再熱蒸気熱量、QFW:給水熱量、Qsah:SAH蒸気熱量、Qev:蒸化器加熱用蒸気熱量、Qba:アトマイズ蒸気熱量、Qrhs:再熱器スプレー水熱量、Qsahd:SAHドレン熱量、Qevd:蒸化器ドレン熱量、Qmc:補給水熱量
図2は、本発明の実施形態に係るボイラ室効率計算方法を石油火力発電所に適用する場合のボイラ出熱Qo(油)の説明図である。
図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0051】
石油火力発電所の場合には、ガス火力発電所の場合に加え、蒸気式空気予熱器(SAH)に供給するSAH蒸気熱量Qsah、燃料の石油を温める蒸化器に供給する蒸化器加熱用蒸気熱量Qev、油バーナーに供給して石油を霧化させるアトマイズ蒸気熱量Qbaが追加される。これに伴い、SAHドレン熱量Qsahd、蒸化器ドレン熱量Qevdが発生する。
【0052】
まず、ボイラ11からタービン室側には、主蒸気熱量QMS及び高温再蒸気熱量QHRが出熱され、タービン室側への入熱となるので、(14)式に示すように、主蒸気熱量QMS及び高温再蒸気熱量QHRは+とする。また、低温再熱蒸気熱量QCR及び給水熱量QFWは、タービン室側からボイラ室側に出熱されるので、(14)式に示すように、低温再熱蒸気熱量QCR及び給水熱量QFWは−とする。
【0053】
また、アトマイズ蒸気熱量Qba、SAH蒸気熱量Qsah、蒸化器加熱用蒸気熱量Qev、再熱器スプレー水熱量Qrhsは、タービン室側からボイラ室側に出熱されるので、(14)式に示すように−とし、SAHドレン熱量Qsahd、蒸化器ドレン熱量Qevd、補給水熱量Qmcはタービン室側に入熱されるので+とする。
【0054】
次に、火力発電所が石炭火力発電所である場合は、ボイラ出熱Qo(石炭)は(15)式で示すように定める。
【0055】
Qo(石炭)=(QMS +QHR−QCR−QFW )−Qsb−Qggh
−Qrhs+Qgghd+Qmc …(15)
QMS:主蒸気熱量、QHR:高温再熱蒸気熱量、QCR:低温再熱蒸気熱量、QFW:給水熱量、Qsb:スートブロアー蒸気熱量、Qggh:GGH用蒸気熱量、Qrhs:再熱器スプレー水熱量、Qgghd:GGHドレン熱量、Qmc:補給水熱量
図3は、本発明の実施形態に係るボイラ室効率計算方法を石炭火力発電所に適用する場合のボイラ出熱Qo(石炭)の説明図である。
図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0056】
石炭火力発電所の場合には、ガス火力発電所の場合に加え、石炭灰を吹き飛ばすためのスートブロアー蒸気熱量Qsb、石炭排煙設備の電気集塵機EPの温度を調整するためのガスガス熱交換器(GGH)用蒸気熱量Qgghが追加される。これに伴いGGHドレン熱量Qgghdが発生する。
【0057】
まず、ボイラ11からタービン室側には、主蒸気熱量QMS及び高温再蒸気熱量QHRが出熱され、タービン室側への入熱となるので、(15)式に示すように、主蒸気熱量QMS及び高温再蒸気熱量QHRは+とする。また、低温再熱蒸気熱量QCR及び給水熱量QFWは、タービン室側からボイラ室側に出熱されるので、(15)式に示すように、低温再熱蒸気熱量QCR及び給水熱量QFWは−とする。
【0058】
また、スートブロアー蒸気熱量Qsb、GGH用蒸気熱量Qggh、再熱器スプレー水熱量Qrhsは、タービン室側からボイラ室側に出熱されるので、(15)式に示すように−とし、GGHドレン熱量Qgghd、補給水熱量Qmcはタービン室側に入熱されるので+とする。
【0059】
次に、タービン室側からのボイラ室側への出熱、主蒸気熱量QMS及び高温再蒸気熱量QHR以外のタービン室側への入熱について説明する。タービン室側からのボイラ室側への出熱には、SAH蒸気熱量Qsah、蒸化器加熱用蒸気熱量Qev、アトマイズ蒸気熱量Qba、スートブロアー蒸気熱量Qsb、GGH用蒸気熱量Qggh、再熱器スプレー水熱量Qrhs等がある。また、主蒸気熱量QMS及び高温再蒸気熱量QHR以外のタービン室側への入熱には、補給水熱量Qmc、GGHドレン熱量Qgghd、SAHドレン熱量Qsahd、蒸化器ドレン熱量Qevd等がある。
【0060】
(1)SAH蒸気熱量Qsah
従来、タービン室からボイラ室にSAH蒸気を供給しているときは、「SAH蒸気熱量−SAHドレン熱量」をボイラ室への入熱として考えていたが、本発明では、この考え方を改める。
【0061】
実際のボイラの排熱を考えると、蒸気式空気予熱器(SAH)で予熱された空気は最終的に排ガスとなってボイラ系外に排出される。予熱器(AH)の出口の排ガスは一定の熱量を有しており、その熱量はボイラの損失となる。
【0062】
図4は予熱器(AH)の出口の排ガス熱量の説明図である。
図4に示すように、予熱器(AH)の出口の排ガス熱量は、燃料の燃焼による燃焼熱量だけでなく、ボイラに空気を送り込む押込通風機(FDF)での受熱量、蒸気式空気予熱器(SAH)による空気の予熱量、蒸化器による燃料の予熱量を含んでいる。
【0063】
従来は、ボイラ単体の効率をタービン室側と切り離して考えていたため、蒸気式空気予熱器(SAH)による空気の予熱量と蒸化器による燃料の予熱量とを外部からの入熱(受熱)と考えていたが、上述の理由から、本発明ではそれを損失として考える。
【0064】
蒸気式空気予熱器(SAH)の蒸気損失は、
図4の「SAHによる空気の予熱量」部分に相当する。そして、損失法のボイラ室効率ηb2の計算では、AH出口から排出される排ガス熱量を様々な損失として計算している。すなわち、乾き排ガス損失L1、燃料中水素分による損失L2、燃料中水分による損失L3、空気中の湿分損失L4、空気予熱器漏えい損失L5として計算している。
【0065】
図4から分かるように、SAH蒸気損失はL1〜L5までの損失にすでに含まれているため、新たに計算して損失として計上するのは、損失の二重計上になってしまう。よって、損失法のボイラ室効率ηb2としては損失に計上しなくてよいと考える。なお、押込通風機FDFによる空気の受熱はタービン室と無関係に発生する事象であるため、従来どおり「受熱」として扱っていく。
【0066】
(2)蒸化器加熱用蒸気熱量Qev
蒸化器蒸気の損失もSAH蒸気と同じ考え方が適用できる。SAHと同様、蒸化器による損失を個別に評価したいときに使用し、そうでないときは損失L1〜L5に含まれると考えて 蒸化器による蒸気損失としては損失法のボイラ室効率ηb2に計上しない。
【0067】
(3)アトマイズ蒸気熱量Qba
アトマイズ蒸気での損失は「アトマイズ蒸気がボイラの外へ捨てられることによる熱量」と考える。
図5はアトマイズ蒸気の熱量の説明図である。
図5に示すように、補給水をアトマイズ蒸気にする熱量が損失分L9(1)であり、(16)式で示される。
【0068】
L9(1)(%)=(N÷F×Hn)÷Hh …(16)
N:アトマイズ蒸気量(kg/h)、F:燃料流量(kg/h)、Hn:燃料発熱量(kJ/kg)、Hh:アトマイズ蒸気のエンタルピ(kJ/kg)
また、アトマイズ蒸気の熱量回収分L9(2)は、ボイラの外へ捨てられるアトマイズ蒸気熱量であり、(17)式で示される。
【0069】
L9(2)(%)=(N÷F×cw×Hn)÷Tg …(17)
cw:蒸気の比熱(kJ/kgK)、Tg:AH出口の排ガス温度
ここで、350MWクラスのボイラにおけるアトマイズ蒸気温度は約200℃、AH出口排ガス温度は約140℃であるので、その温度差分による熱量差(回収分)については回収され、トータルのアトマイズ蒸気損失は「損失分L9(1)−回収分L9(2)」となる。なお、回収熱量は損失熱量に対して微少であるため、考慮しなくてもよい。
【0070】
(4)スートブロアー蒸気熱量Qsb
スートブロア蒸気に関しても、アトマイズ蒸気と同じ考え方となる。
【0071】
(5)GGH用蒸気熱量Qggh
ガスガス熱交換器(GGH)で使用する蒸気熱量は、ボイラ室効率に直接的に影響を与える熱量ではないが、本発明の考え方では、蒸気供給源がボイラでもタービンでも損失法のボイラ室効率ηb2の損失として計算する。
【0072】
(6)再熱器スプレー水熱量Qrhs
再熱器スプレーは、タービン室の出熱であり、流量の増加はタービン室への入熱低下となる。タービン室入熱とボイラ室入熱は等しいと考えるため、−Qrhsとしてボイラ出熱に計上すると共に、損失法のボイラ室効率ηb2でも「損失」として計上する。
【0073】
(7)補給水熱量Qmc
補給水はタービン室の入熱であり、流量の増加はタービン室への入熱増加となる。タービン室入熱とボイラ室入熱は等しいと考えるため、+Qmcとしてボイラ出熱に計上すると共に、損失法のボイラ室効率ηb2でも「回収」として計上する。
【0074】
(8)GGHドレン熱量Qgghd、SAHドレン熱量Qsahd、蒸化器ドレン熱量Qevd
SAHドレン、蒸化器ドレン、GGHドレンの熱量については、タービン室の入熱であり、それらの熱量はボイラ出熱に計上すると共に、損失法のボイラ室効率ηb2でも「回収」として計上する。
【0075】
次に、以上述べた内容を集約して、最終的な燃料別「損失法のボイラ室効率ηb2」の計算式を示す。ガス火力発電所の場合の損失法のボイラ室効率ηb2を(18)式に、石油火力発電所の場合の損失法のボイラ室効率ηb2を(19)式に、石炭火力発電所の場合の損失法のボイラ室効率ηb2を(20)式に示す。
【0076】
(a)ガス火力発電所
ηb2=100−(L1+L2+L3+L4+L5+L6+L7+L8
−L16+L18−L19) …(18)
(b)石油火力発電所
ηb2=100−(L1+L2+L3+L4+L5+L6+L7+L8
+L9+L11+L12−L16+L18−L19) …(19)
(c)石炭火力発電所
ηb2=100−(L1+L2+L3+L4+L5+L6+L7+L8+L10+L13
+L14+L15−L16−L17+L18−L19+L20) …(20)
L1:乾き排ガス損失、L2:燃料中水素分損失、L3:燃料中水分損失、L4:空気中湿分損失、L5:空気予熱器漏えい損失、L6:CO損失、L7:放射・伝熱損失、L8:配管損失、L9:アトマイズ蒸気損失、L10:GGH蒸気損失、L11:SAH蒸気損失、L12:蒸化器蒸気損失、L13:灰中未燃損失、L14:フライアッシュ持ち出し顕熱損失、L15:クリンカホッパ放射熱損失、L16:FDF動力回収、L17:PAF動力回収、L18:RHスプレー水損失、L19:補給水熱量回収、L20:スートブロア蒸気損失
このように、損失法でボイラ室効率を求める場合に、タービン室側から見てタービン室側への入熱はプラスとし、タービン室側からのボイラ室側への出熱はマイナスとしてボイラ室効率を計算するので、入出熱法で計算したボイラ室効率と同等となる。これにより、入出熱法で計算したボイラ室効率との比較が容易に行える。また、入出熱法によるボイラ室効率ηb1、損失法によるボイラ効率ηb2のいずれであっても、(1)式を用いて発電端効率ηpを計算し評価できる。