(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール化合物(b)と、ポリイソシアネート(d)とを反応させて得られたポリウレタンプレポリマー(A)と、鎖延長剤(B)とを反応させて得られたポリウレタン樹脂を水系媒体中に分散させてなり、
前記ポリウレタンプレポリマー(A)の固形分量に対する、前記ポリウレタンプレポリマー(A)のカルボン酸基の含有量が2.0〜13.0重量%であり、
前記主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と前記酸性基含有ポリオール化合物(b)の合計水酸基当量数が130〜270であり、
前記主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)の数平均分子量が400〜3000であり、
前記酸性基含有ポリオール化合物(b)が、炭素数4〜12のジメチロールアルカン酸である
水性ポリウレタン樹脂分散体。
主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)は、炭素数5〜12の脂環式炭化水素基を有するものである、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と酸性基含有ポリオール化合物(b)との合計量100重量部に対して、(a)60〜95重量部及び(b)5〜40重量部である、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
前記ポリウレタンプレポリマー(A)の固形分量に対する、ポリウレタンプレポリマー(A)のカルボン酸基の含有量が2.0〜4.0重量%である、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
前記主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と前記酸性基含有ポリオール化合物(b)の合計水酸基当量数が160〜260である、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール化合物(b)と、(a)及び(b)以外のポリオール(c)と、ポリイソシアネート(d)とを反応させて得られたポリウレタンプレポリマー(A)と、鎖延長剤(B)とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が水系媒体中に分散させてなり、
前記ポリウレタンプレポリマー(A)の固形分量に対する、前記ポリウレタンプレポリマー(A)のカルボン酸基の含有量が2.0〜13.0重量%であり、
前記主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と前記酸性基含有ポリオール化合物(b)と前記(a)及び(b)以外のポリオール(c)の合計水酸基当量数が130〜270であり、
前記主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)の数平均分子量が400〜3000であり、
前記酸性基含有ポリオール化合物(b)が、炭素数4〜12のジメチロールアルカン酸である
水性ポリウレタン樹脂分散体。
主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)は、主鎖に炭素数5〜12の脂環式炭化水素基を有するものである、請求項6に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール化合物(b)と、(a)及び(b)以外のポリオール(c)との合計量100重量部に対して、(a)60〜95重量部、(b)5〜40重量部及び(c)0〜30重量部である、請求項6に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
前記ポリウレタンプレポリマー(A)の固形分量に対する、ポリウレタンプレポリマー(A)のカルボン酸基の含有量が2.0〜4.0重量%である、請求項6に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と前記酸性基含有ポリオール化合物(b)と前記(a)及び(b)以外のポリオール(c)の合計水酸基当量数が160〜260である、請求項6に水性ポリウレタン樹脂分散体。
主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール化合物(b)と、ポリイソシアネート(d)とを反応させてポリウレタンプレポリマー(A)を得る工程(α1)と、
前記ポリウレタンプレポリマー(A)の酸性基を中和する工程(β)と、
前記ポリウレタンプレポリマー(A)を水系媒体中に分散させる工程(γ)と、
前記ポリウレタンプレポリマー(A)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A)のイソシアナト基と反応性を有する鎖延長剤(B)とを反応させてポリウレタン樹脂を得る工程(δ)とを含む、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法。
主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール化合物(b)と、(a)及び(b)以外のポリオール(c)と、ポリイソシアネート(d)とを反応させてポリウレタンプレポリマー(A)を得る工程(α2)と、
前記ポリウレタンプレポリマー(A)の酸性基を中和する工程(β)と、
前記ポリウレタンプレポリマー(A)を水系媒体中に分散させる工程(γ)と、
前記ポリウレタンプレポリマー(A)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A)のイソシアナト基と反応性を有する鎖延長剤(B)とを反応させてポリウレタン樹脂を得る工程(δ)とを含む、請求項6に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a))
本発明で使用する主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)(以下、「ポリカーボネートポリオール(a)」ということもある。)は、数平均分子量が400〜4000であることが好ましい。前記数平均分子量が400未満であると、ソフトセグメントとしての性能に劣り、得られた水性ポリウレタン樹脂分散体を用いて塗膜を形成した場合に割れが発生し易い傾向がある。前記数平均分子量が4000を超えると、ポリカーボネートポリオール(a)とイソシアネート化合物(d)との反応性が低下し、ウレタンプレポリマーの製造工程に時間がかかったり、反応が充分に進行しない場合があり、ポリカーボネートポリオール(a)の粘度が高くなり、取り扱いが困難になる場合もある。ポリカーボネートポリオール(a)は、数平均分子量が400〜3000であることがより好ましい。
【0010】
本発明において、数平均分子量とは、以下の方法で測定したものである。
本発明のポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、いずれもJIS K 1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0011】
前記ポリカーボネートポリオール(a)は、主鎖に脂環式構造を有する。脂環構造を主鎖に有することによって、ポリカーボネートポリオール(a)を原料として用いた塗膜の弾性率が上昇し、優れた硬度を発現する。
【0012】
前記ポリカーボネートポリオール(a)は、上記で規定されている要件を満たしていれば特に限定されるものではないが、例えば、主鎖に脂環式構造を有するポリオールと炭酸エステル化合物とを反応させて得られるポリカーボネートポリオールや、主鎖に脂環式構造を有するポリオールと、このポリオール以外のポリオールと、炭酸エステル化合物とを反応させて得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。中でも、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体の分散性の観点から、主鎖に脂環式構造を有するポリオール化合物と、このポリオール以外のポリオールと炭酸エステル化合物とを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが好ましい。
前記主鎖に脂環式構造を有するポリオールとしては、特に制限されないが、例えば主鎖に炭素数5〜12の脂環式基を有するポリオール等が挙げられる。具体的には、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘプタンジオール、2,5‐ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4‐ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン等の主鎖に脂環式構造を有するジオール等が挙げられ、中でも、入手の容易さから1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0013】
更に、前記ポリカーボネートポリオール(a)の原料として、主鎖に脂環式構造を有するポリオール以外のポリオールを用いることもできる。そのようなポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の炭素数3〜12の脂肪族ジオール等、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0014】
前記炭酸エステル化合物としては、特に制限されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の脂肪族炭酸エステル化合物、ジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸エステル化合物、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステル化合物等が挙げられる。その他に、ポリカーボネートポリオールを生成することができるホスゲン等も使用できる。中でも、前記ポリカーボネートポリオールの製造のしやすさから、脂肪族炭酸エステル化合物が好ましく、ジメチルカーボネートが特に好ましい。
【0015】
前記ポリオール及び炭酸エステル化合物からポリカーボネートポリオールを製造する方法としては、例えば、反応器中に炭酸エステル化合物と、この炭酸エステル化合物のモル数に対して過剰のモル数のポリオールとを加え、温度160〜200℃、圧力50mmHg程度で5〜6時間反応させた後、更に数mmHg以下の圧力において200〜220℃で数時間反応させる方法が挙げられる。上記反応においては副生するアルコールを系外に抜き出しながら反応させることが好ましい。その際、炭酸エステル化合物が副生するアルコールと共沸することにより系外へ抜け出る場合には、過剰量の炭酸エステル化合物を加えてもよい。また、上記反応において、チタニウムテトラブトキシド等の触媒を使用してもよい。
【0016】
ポリカーボネートポリオール(a)の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、主鎖に脂環式構造を有するポリオールと炭酸エステル化合物をエステル交換反応させることによって製造する方法、主鎖に脂環式構造を有するポリオールとこれ以外のポリオールと炭酸エステル化合物とをエステル交換反応させることによって製造する方法、主鎖に脂環式構造を有するポリオール以外のポリオールと炭酸エステル化合物とをエステル交換反応させて得られたポリカーボネートポリオールと、主鎖に脂環式構造を有するポリオールとをエステル交換反応させることによって製造する方法、主鎖に脂環式構造を有するポリオールと炭酸エステル化合物とをエステル交換反応させて得られたポリカーボネートポリオールと、主鎖に脂環式構造を有するポリオール以外のポリオールとをエステル交換反応させることによって製造する方法、主鎖に脂環式構造を有するポリオールと炭酸エステル化合物とをエステル交換反応させて得られたポリカーボネートポリオールと、主鎖に脂環式構造を有するポリオール以外のポリオールと炭酸エステル化合物とをエステル交換反応させて得られたポリカーボネートポリオールの2つのポリカーボネートポリオールをエステル交換反応させることによって製造する方法などが挙げられる。
【0017】
(酸性基含有ポリオール化合物(b))
前記酸性基含有ポリオール化合物(b)は、一分子中に2個以上の水酸基と、1個以上の酸性基を含有するものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。特に前記酸性基含有ポリオール化合物(b)として、一分子中に2個の水酸基と1個のカルボキシ基を有する化合物を含有するものが好ましい。前記酸性基含有ポリオール化合物(b)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0018】
前記酸性基含有ポリオール化合物(b)としては、具体的には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸;N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸等が挙げられる。中でも入手の容易さの観点から、2個のメチロール基を含む炭素数4〜12のアルカン酸(ジメチルロールアルカン酸)が好ましく、ジメチロールアルカン酸の中でも、2,2−ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。
【0019】
((a)及び(b)以外のポリオール(c))
前記ポリオール(c)としては、例えば、高分子量ジオールや低分子量ジオールを用いることができる。
前記高分子量ジオールとしては、特に制限はないが、数平均分子量が400〜4000であり、例えばポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、アクリルジオール等を用いることができる。前記ポリカーボネートジオールとしては、特に制限されないが、具体的にはポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリへキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。前記ポリエステルジオールとしては、特に制限されないが、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリへキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール、1,6−へキサンジオールとダイマー酸の重縮合物等が挙げられる。前記ポリエーテルジオールとしては、特に制限されないが、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体やブロック共重合体等が挙げられる。更に、エーテル結合とエステル結合とを有するポリエーテルポリエステルポリオール等を用いてもよい。前記アクリルジオールとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーと、これと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸系モノマー及び/又はその他の不飽和モノマーを共重合させることによって得られる(メタ)アクリル系ジオール等が挙げられる。
【0020】
前記低分子量ジオールとしては特に制限はないが、数平均分子量が60以上400未満であり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の炭素数2〜9の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン等の炭素数6〜12の脂環式構造を有するジオールなどを挙げることができる。更に、前記低分子量ジオールとして、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの低分子量多価アルコールを用いてもよい。
前記ポリオール(c)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0021】
本発明においては、前記主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)との合計の水酸基当量数は70〜270である。 また、本発明において、前記主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)と(a)及び(b)以外のポリオール(c)との合計の水酸基当量数は70〜270である。前記水酸基当量数が、70未満であると実質的に水性ポリウレタン樹脂分散体を製造することが難しく、270を超えると得られた水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得た塗膜の硬度が低すぎるという問題がある。
前記水酸基当量数としては、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得られる塗膜の硬度の観点から、好ましくは130〜270、より好ましくは160〜260、特に好ましくは180〜260である。
【0022】
水酸基当量数は、以下の式(1)及び(2)で算出することができる。
各ポリオールの水酸基当量数=各ポリオールの分子量/各ポリオールの水酸基の数
・・・(1)
ポリオールの合計の水酸基当量数=M/ポリオールの合計モル数・・・(2)
上記式(2)において、Mは、[〔ポリカーボネートポリオール(a)の水酸基当量数×ポリカーボネートポリオール(a)のモル数〕+〔酸性基含有ポリオール化合物(b)の水酸基当量数×酸性基含有ポリオール化合物(b)のモル数〕+〔(a)及び(b)以外のポリオール(c)の水酸基当量数×(a)及び(b)以外のポリオール(c)のモル数〕]を示す。
【0023】
(ポリイソシアネート化合物(d))
本発明で使用できるポリイソシアネート化合物(d)としては、特に制限されないが、2個以上のイソシアナト基を有する炭素数6〜20(NCO基中の炭素を除く、以下同様)の芳香族ポリイソシアネート化合物、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート化合物、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0024】
芳香族ポリイソシアネート化合物として、具体的には、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0026】
脂環式ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−ジクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネーネート等が挙げられる。
【0027】
これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ポリイソシアネート化合物の1分子当たりのイソシアナト基は通常2個であるが、本発明におけるポリウレタン樹脂がゲル化をしない範囲で、トリフェニルメタントリイソシアネートのようなイソシアナト基を3個以上有するポリイソシアネートも使用することができる。
上記のポリイソシアネート化合物の中でも、反応性の制御と弾性率付与等の観点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)が好ましい。
【0028】
(ポリウレタンプレポリマー(A))
本発明で使用できるポリウレタンプレポリマー(A)は、少なくとも、前記主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)と、前記ポリイソシアネート化合物(d)とを反応させて得られるものである。前記ポリウレタンプレポリマー(A)は、前記主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)と、(a)及び(b)以外のポリオール(c)と、前記ポリイソシアネート化合物(d)とを反応させて得られるものであってもよい。
【0029】
前記ポリウレタンプレポリマー(A)を得る場合において、前記ポリカーボネートポリオール(a)と前記酸性基含有ポリオール化合物(b)と(a)及び(b)以外のポリオール(c)の全量を100重量部とした場合に、前記ポリカーボネートポリオール(a)の割合は好ましくは60〜95重量部、より好ましくは65〜90重量部、特に好ましくは75〜90重量部であり、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)の割合は好ましくは5〜40重量部、より好ましくは10〜30重量部、特に好ましくは10〜25重量部であり、前記(a)及び(b)以外のポリオール(c)の割合は好ましくは0〜30重量部、より好ましくは0〜10重量部、特に好ましくは0〜5重量部である。
前記ポリカーボネートポリオール(a)の割合が少なすぎると、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得た塗膜の硬度が低くなる傾向があり、多すぎると塗膜が硬くなりすぎる場合がある。
前記酸性基含有ポリオール化合物(b)の割合が少なすぎると、得られる水性ポリウレタン樹脂の水系媒体中への分散性が悪くなる傾向があり、多すぎると得られる水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得た塗膜の耐水性が悪くなる場合がある。
前記(a)及び(b)以外のポリオール(c)の割合が多すぎると、相対的に全ポリオール成分中の前記ポリカーボネートポリオール(a)の割合が少なくなりすぎたり、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)の割合が少なくなりすぎたりするため、塗膜の硬度が低くなったり、水性ポリウレタン樹脂の分散性が悪くなる場合がある。
【0030】
前記ポリカーボネートポリオール(a)と、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)とからなるポリオール成分、又は、前記ポリカーボネートポリオール(a)と、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)と、(a)及び(b)以外のポリオール(c)とからなるポリオール成分の全水酸基のモル数に対する、前記ポリイソシアネート化合物(d)のイソシアナト基のモル数の比は、1.01〜2.5が好ましい。前記ポリオール成分の水酸基のモル数が多すぎると、分子末端にイソシアナト基を有しないポリウレタンプレポリマー(A)が多くなり、鎖延長剤(B)と反応しない分子が多くなるため、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得られる塗膜の強度が低下するという問題がある。また、ポリオール成分の水酸基のモル数が少なすぎると、未反応の前記ポリイソシアネート化合物(d)が多量に反応系内に残り、前記鎖延長剤と反応したり、水と反応して分子伸長を起こすため、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得られる塗膜に凹凸が生じるという問題がある。ポリオール成分の全水酸基のモル数に対する、前記ポリイソシアネート化合物(d)のイソシアナト基のモル数の比は、好ましくは1.2〜2.2、特に好ましくは1.2〜2.0である。
【0031】
前記ウレタンプレポリマー(A)を得る場合において、前記ポリカーボネートポリオール(a)と、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)と、必要に応じて(a)及び(b)以外のポリオール(c)とからなるポリオール成分と前記ポリイソシアネート化合物(d)との反応は、(a)(b)(c)を順不同で(d)と反応させても良く、2種以上を混合して(d)と反応させても良い。
【0032】
前記ポリカーボネートポリオール(a)と、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)と、必要に応じて前記(a)及び(b)以外のポリオール(c)と、前記ポリイソシアネート化合物(d)とを反応させる際には、触媒を用いることもできる。
前記触媒としては、特に制限はされないが、例えば、スズ(錫)系触媒(トリメチル錫ラウレート、ジブチル錫ジラウレート等)や鉛系触媒(オクチル酸鉛など)等の金属と有機及び無機酸の塩、並びに有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等)、ジアザビシクロウンデセン系触媒等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0033】
前記ポリオール成分と前記ポリイソシアネートとを反応させる際の反応温度としては、特に制限はされないが、40〜150℃が好ましい。反応温度が低すぎると、原料が溶解しない場合があり、得られたウレタンプレポリマー(A)の粘度が高くて充分に撹拌できない場合がある。反応温度が高すぎると、副反応が起こる等の不具合が発生する場合がある。反応温度として更に好ましくは60〜120℃である。
前記ポリカーボネートポリオール(a)と、前記酸性基含有ポリオール化合物(b)と、必要に応じて前記(a)及び(b)以外のポリオール(c)と、前記ポリイソシアネート化合物(d)との反応は、無溶媒でも有機溶媒を加えて行なっても良い。有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、酢酸エチル等が挙げられる。中でも、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルは、ポリウレタンプレポリマーを水に分散及び鎖伸長反応後に加熱減圧により除去できるので好ましい。また、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンは、得られた水性ポリウレタン樹脂分散体から塗膜を作製する際に造膜助剤として働くため好ましい。有機溶媒の添加量は、ポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール化合物(b)と、必要に応じて前記(a)及び(b)以外のポリオール(c)との全量に対して重量基準で、好ましくは0.1〜2.0倍であり、より好ましくは0.15〜0.7倍である。
【0034】
本発明において、ポリウレタンプレポリマー(A)のカルボン酸基の含有量は、2.0〜13.0重量%であり、好ましくは、2.0〜6.0重量%であり、より好ましくは2.0〜4.0重量%である。カルボン酸基数の含有量が2.0重量%未満である場合には、水系媒体への分散性が悪いため水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができない。また、カルボン酸基の含有量が13.0重量%を超える場合には、得られるポリウレタン樹脂の塗膜の耐水性が低下する。
なお、本発明において、「ポリウレタンプレポリマー(A)のカルボン酸基の含有量」とは、ポリウレタンプレポリマー(A)を製造するにあたって用いられる溶媒及び前記ポリウレタンプレポリマー(A)を水系媒体中に分散させるための中和剤を除いたいわゆる固形分中のカルボン酸基の含有量である。
具体的には、ポリウレタンプレポリマー(A)のカルボン酸(−COOH)基の含有量は、下記式(3)によって導き出すことができる。
〔ポリウレタンプレポリマー(A)のカルボン酸基の含有量〕=〔酸性基含有ポリオール化合物(b)のモル数〕×45.02/〔ポリカーボネートポリオール(a)、酸性基含有ポリオール化合物(b)、場合によってはポリオール(c)及びポリイソシアネート化合物(d)の合計の重量〕・・・(3)
【0035】
(鎖延長剤(B))
本発明における鎖延長剤(B)は、ポリウレタンプレポリマー(A)のイソシアナト基と反応性を有する。鎖延長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−ヘキサメチレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール化合物、ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類、水等が挙げられ、中でも好ましくは1級ジアミン化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
鎖延長剤(B)の添加量は、得られるウレタンプレポリマー中の鎖延長起点となるイソシアナト基の当量以下であることが好ましく、より好ましくはイソシアナト基の0.7〜0.99当量である。イソシアナト基の当量を超えて鎖延長剤(B)を添加した場合には、鎖延長されたウレタンポリマーの分子量が低下してしまい、得られた水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得た塗膜の強度が低下する。鎖延長剤(B)は、ポリウレタンプレポリマーの水への分散後に添加してもよく、分散中に添加してもよい。鎖延長は水によっても行うことができる。この場合は分散媒としての水が鎖延長剤を兼ねることになる。
【0037】
(ポリウレタン樹脂)
本発明のポリウレタン樹脂は、前記ポリウレタンプレポリマー(A)と前記鎖延長剤(B)を反応させて得ることができる。反応の温度は、例えば0〜80℃、好ましくは0〜60℃である。
【0038】
(水系媒体)
本発明においては、ポリウレタン樹脂は水系媒体中に分散されている。前記水系媒体としては、水や、水と親水性有機溶媒との混合媒体などが挙げられる。
前記水としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられる。中でも入手の容易さや塩の影響で粒子が不安定になること等を考慮して、イオン交換水を用いることが好ましい。
前記親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級1価アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;N−メチルモルホリン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性の親水性有機溶媒等が挙げられる。
前記水系媒体中の前記親水性有機溶媒の量としては、0〜20重量%が好ましい。
【0039】
(水性ポリウレタン樹脂分散体)
次に、水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法について説明する。
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法は、主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール化合物(b)と、ポリイソシアネート(d)とを反応させてポリウレタンプレポリマー(A)を得る工程(α1)、又は、主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール化合物(b)と、(a)及び(b)以外のポリオール(c)と、ポリイソシアネート(d)とを反応させてポリウレタンプレポリマー(A)を得る工程(α2)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A)の酸性基を中和する工程(β)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A)を水系媒体中に分散させる工程(γ)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基と反応性を有する鎖延長剤(B)とを反応させて水性ポリウレタン樹脂を工程(δ)とを含む。
【0040】
ポリウレタンプレポリマー(A)を得る工程(α1)又は(α2)は、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、大気雰囲気下で行ってもよい。
【0041】
また、前記ポリウレタンプレポリマー(A)の酸性基を中和する工程(β)において使用できる中和剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類、アンモニア等が挙げられる。中でも、好ましくは有機アミン類を用いることができ、より好ましくは3級アミンを用いることができ、最も好ましくはトリエチルアミンを用いることができる。
ここで、ポリウレタンプレポリマー(A)の酸性基とは、カルボン酸基、スルホン酸基等をいう。
【0042】
前記ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる工程(γ)において、水系媒体中にポリウレタンプレポリマーを分散させる方法としては、特に限定されないが、例えば、ホモミキサーやホモジナイザー等によって攪拌されている水系媒体中に、ポリウレタンプレポリマー(A)又はポリウレタンプレポリマー(A)を含む溶液を添加する方法、またホモミキサーやホモジナイザー等によって攪拌されているポリウレタンプレポリマー中に水系媒体を添加する方法等がある。
【0043】
前記ポリウレタンプレポリマー(A)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基と反応性を有する鎖延長剤(B)とを反応させて水性ポリウレタン樹脂を得る工程(δ)において、反応は冷却下でゆっくりと行ってもよく、また場合によっては60℃以下の加熱条件下で反応を促進して行ってもよい。冷却下における反応時間は、0.5〜24時間程度であり、60℃以下の加熱条件下における反応時間は、0.1〜6時間程度である。
【0044】
本発明の製造方法において、前記ポリウレタンプレポリマー(A)の酸性基を中和する工程(β)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A)を水系媒体中に分散させる工程(γ)は同時に行っても良く、また、前記ポリウレタンプレポリマー(A)を水系媒体中に分散させる工程(γ)と、鎖延長剤(B)と反応させて水性ポリウレタン樹脂を得る工程(δ)は同時に行ってもよい。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の割合は、5〜60重量%が好ましく、より好ましくは20〜50重量%である。
【0045】
(塗料組成物)
本発明の塗料組成物は、前記水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する塗料組成物である。
本発明の塗料組成物には、前記水性ポリウレタン樹脂分散体以外にも、他の樹脂を添加することもできる。前記他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
また、前記他の樹脂は、一種以上の親水性基を有することが好ましい。前記親水性基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基等が挙げられる。
前記その他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0046】
また、前記ポリエステル樹脂及び前記アクリル樹脂が水酸基を有する場合には、樹脂中の一部又は全部の水酸基とポリイソシアネート化合物とをウレタン反応させることにより、これらの樹脂を伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性ポリエステル樹脂またはウレタン変性アクリル樹脂を併用してもよい。
【0047】
前記ポリエステル樹脂は、通常、酸成分とアルコ−ル成分とのエステル化反応またはエステル交換反応によって製造することができる。
【0048】
前記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を使用することができる。
【0049】
前記ポリエステル樹脂の水酸基価は、10〜300mgKOH/g程度が好ましく、50〜250mgKOH/g程度がより好ましく、80〜180mgKOH/g程度がさらに好ましい。前記ポリエステル樹脂の酸価は、1〜200mgKOH/g程度が好ましく、15〜100mgKOH/g程度がより好ましく、25〜60mgKOH/g程度がさらに好ましい。
前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、500〜50,000が好ましく、1,000〜30,000がより好ましく、1,500〜20,000がさらに好ましい。
【0050】
前記アクリル樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂が好ましい。前記水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有重合性不飽和モノマーおよび該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとを、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の既知の方法によって共重合させることにより製造できる。
【0051】
前記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基および重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0052】
前記水酸基含有アクリル樹脂は、カチオン性官能基を有することが好ましい。
カチオン性官能基を有する水酸基含有アクリル樹脂については、例えば、前記重合性不飽和モノマーの一種として、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等のカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマーを用いることにより製造できる。
【0053】
前記水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、1〜200mgKOH/g程度が好ましく、2〜100mgKOH/g程度がより好ましく、3〜60mgKOH/g程度がさらに好ましい。
また、水酸基含有アクリル樹脂がカルボキシル基等の酸基を有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂の酸価は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、1〜200mgKOH/g程度が好ましく、2〜150mgKOH/g程度がより好ましく、5〜100mgKOH/g程度がさらに好ましい。
前記水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、1,000〜200,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましく、さらに好ましくは3,000〜50,000の範囲内であることが好適である。
【0054】
前記ポリエーテル樹脂としては、エーテル結合を有する重合体または共重合体が挙げられ、例えばポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、ポリオキシブチレン系ポリエーテル、ビスフェノールA又はビスフェノールF等の芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等が挙げられる。
【0055】
前記ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノール化合物から製造された重合体が挙げられ、例えばビスフェノールA・ポリカーボネート等が挙げられる。
【0056】
前記ポリウレタン樹脂としては、アクリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の各種ポリオール成分とポリイソシアネート化合物との反応によって得られるウレタン結合を有する樹脂が挙げられる。
【0057】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等が挙げられる。ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFが挙げられる。
【0058】
前記アルキド樹脂としては、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等の多塩基酸と多価アルコールに、さらに油脂・油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られたアルキド樹脂が挙げられる。
【0059】
本発明の塗料組成物には、硬化剤を含有させることにより、前記塗料組成物を用いた塗膜又は複層塗膜の耐水性等を向上させることができる。
前記硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、カルボジイミド等を用いることできる。前記硬化剤は、一種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0060】
前記アミノ樹脂としては、例えば、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。前記アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。
【0061】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0062】
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、前述のポリイソシアネート化合物のポリイソシアネート基にブロック剤を付加することによって得られるものが挙げられ、ブロック剤としては、フェノール、クレゾール等のフェノール系、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール系等のブロック剤が挙げられる。
【0063】
前記メラミン樹脂としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン等のメチロールメラミン;これらのメチロールメラミンのアルキルエーテル化物又は縮合物;メチロールメラミンのアルキルエーテル化物の縮合物等をあげることができる。
【0064】
本発明の塗料組成物には、着色顔料や体質顔料、光輝性顔料を添加することができる。
前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等が挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を併用して使用できる。特に、着色顔料として、酸化チタンおよび/またはカーボンブラックを使用することが好ましい。
前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を併用して使用できる。特に、体質顔料として、硫酸バリウムおよび/またはタルクを使用することが好ましく、硫酸バリウムを使用することがより好ましい。
前記光輝性顔料は、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母等を使用することができる。
【0065】
本発明の塗料組成物には、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0066】
本発明の塗料組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法を用いることができる。一般的には、塗料組成物は、前記水性ポリウレタン樹脂分散体と上述した各種添加剤を混合し、水系媒体を添加し、塗装方法に応じた粘度に調製することにより製造される。
塗料組成物の被塗装材質としては、金属、プラスチック、無機等が挙げられる。
塗料組成物の塗装方法としては、ベル塗装、スプレー塗装、ロール塗装、シャワー塗装、浸漬塗装等が挙げられる。
【0067】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0068】
(主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)の製造)
1,6−ヘキサンジオール271.6重量部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール893.2重量部と、ジメチルカーボネート847.0重量部と、テトラ−n−ブトキシチタン0.15重量部とを攪拌機、温度計、及び分留管を備えた反応器内に入れて、95〜160℃で副生するメタノールと炭酸ジメチルを共沸させながら反応させた。メタノールの留出が殆どなくなった後、10mmHg以下に減圧して更に4時間反応させた。なお、反応は窒素雰囲気下で行った。反応終了後、反応液を冷却して、水酸基価が124.7(数平均分子量900)である室温で無色透明の液体を得た。
(水性ポリウレタン樹脂分散体の製造)
上記で調整した主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)518.0重量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸77.5重量部と、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)469.8重量部とを、窒素を導入しながら攪拌機及び加熱器を備えた反応装置内に入れた。その後60℃に加熱し、ジメチロールプロピオン酸が溶解したのを確認した。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)498.8重量部と、触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.4重量部とを加え、90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを製造した(ポリウレタンプレポリマー中のカルボン酸基含有量は2.38重量%であり、ポリオール成分の合計水酸基当量数は258であった)。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、4.00重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン58.0重量部を添加・混合し、強攪拌しながら水2452.3重量部の中に加えた。ついで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液217.3重量部を加え、鎖伸長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
【実施例2】
【0069】
(水性ポリウレタン樹脂分散体の製造)
実施例1で製造した主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)180.8重量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸36.4重量部と、1,4−ブタンジオール6.4重量部と、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)195.0重量部とを、窒素を導入しながら攪拌機及び加熱器を備えた反応装置内に入れた。その後60℃に加熱し、ジメチロールプロピオン酸が溶解したのを確認した。更に、水素添加MDI244.0重量部と、触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.4重量部とを加え、90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを製造した(ポリウレタンプレポリマー中のカルボン酸基含有量は2.61重量%であり、ポリオール成分の合計水酸基当量数は206であった)。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、4.96重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン27.4重量部を添加・混合し、強攪拌しながら水1110.0重量部の中に加えた。ついで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液122.0重量部を加え、鎖伸長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
【実施例3】
【0070】
(水性ポリウレタン樹脂分散体の製造)
実施例1で製造した主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)180.0重量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸48.1重量部と、1,4−ブタンジオール8.9重量部と、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)223.8重量部とを、窒素を導入しながら攪拌機及び加熱器を備えた反応装置内に入れた。その後60℃に加熱し、ジメチロールプロピオン酸が溶解したのを確認した。更に、水素添加MDI296.3重量部と、触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.4重量部とを加え90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを製造した(ポリウレタンプレポリマー中のカルボン酸基含有量は3.03重量%であり、ポリオール成分の合計水酸基当量数は180であった)。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、5.20重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン36.1重量部を添加・混合し、強攪拌下しながら水1245.4重量部の中に加えた。ついで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液134.4重量部を加え、鎖伸長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
【実施例4】
【0071】
(水性ポリウレタン樹脂分散体の製造)
実施例1で製造した主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)180.0重量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸60.0重量部と、1,4−ブタンジオール8.9重量部と、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)223.8重量部とを、窒素を導入しながら攪拌機及び加熱器を備えた反応装置に入れた。その後60℃に加熱し、ジメチロールプロピオン酸が溶解したのを確認した。更に、水素添加MDI310.1重量部と、触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.4重量部と加え90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを製造した(ポリウレタンプレポリマー中のカルボン酸基含有量は3.60重量%であり、ポリオール成分の合計水酸基当量数は166であった)。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、4.70重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン45.2重量部を添加・混合し、強攪拌下しながら水1245.4重量部の中に加えた。ついで35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液144.6重量部を加え、鎖伸長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
【0072】
[比較例1]
(水性ポリウレタン樹脂分散体の製造)
実施例1で製造した主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)180.0重量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸26.8重量部と、1,4−ブタンジオール10.8重量部と、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)198.5重量部とを、窒素を導入しながら攪拌機及び加熱器を備えた反応装置内に入れた。その後60℃に加熱し、ジメチロールプロピオン酸が溶解したのを確認した。更に、水素添加MDI245.6重量部と、触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.4重量部とを加え90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを製造した(ポリウレタンプレポリマー中のカルボン酸基含有量は1.94重量%であり、ポリオール成分の合計水酸基当量数は209であった)。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、5.30重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン20.2重量部を添加・混合し、強攪拌しながら水1544.0重量部の中に加えたところ、ポリウレタンプレポリマーの水への分散は確認されず、攪拌槽底部にポリウレタンプレポリマーの塊が沈殿したままの状態となった。更に攪拌を連続して行ったが、分散は認められなかった。
【0073】
[比較例2]
(水性ポリウレタン樹脂分散体の製造)
上記で製造した主鎖に脂環式構造を有するポリカーボネートポリオール(a)247.0重量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸24.0重量部と、1,4−ブタンジオール6.0重量部と、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)110.0重量部とを、窒素を導入しながら、攪拌機及び加熱器を備えた反応装置内に入れた。その後60℃に加熱し、ジメチロールプロピオン酸が溶解したのを確認した。更に、IPDI(イソホロンジイソシアネート)140.0重量部を加え75〜83℃で加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを製造した(ポリウレタンプレポリマー中のカルボン酸基含有量は1.93重量%であり、ポリオール成分の合計水酸基当量数は266であった)。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、1.80重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン18.0重量部を添加・混合し、強攪拌しながらジエチレントリアミン5.0重量部を水680.0重量部に溶解させた水溶液を加えたところ、プレポリマーの水への分散は確認されず、ゲル化が進行したため水分散体を得ることができなかった。
【0074】
[比較例3]
(水性ポリウレタン樹脂分散体の製造)
水酸基価112.2の「ETERNACOLL UH−100」(宇部興産(株)製、1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを原料とした数平均分子量1000のポリカーボネートジオール)80.3重量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸12.1重量部と、1,4−ブタンジオール1.0重量部と、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)73.8重量部とを、窒素を導入しながら、攪拌機及び加熱器を備えた反応装置内に入れた。その後60℃に加熱し、ジメチロールプロピオン酸が溶解したのを確認した。更に、水素添加MDI80.8重量部と、触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.2重量部とを加え90℃まで加熱し、6時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを製造した(ポリウレタンプレポリマー中のカルボン酸基含有量は2.33重量%であり、ポリオール成分の合計水酸基当量数は257であった)。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、4.30重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン9.1部を添加・混合し、強攪拌下しながら水384.8重量部の中に加えた。更に、35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液38.5重量部を加えて鎖伸長反応を行い、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
【0075】
[比較例4]
(水性ポリウレタン樹脂分散体の製造)
水酸基価124.7の「ETERNACOLLUM−90(1/3)」(宇部興産(株)製、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールとジメチルカーボネートとを原料とした数平均分子量900のポリカーボネートジオール)80.1重量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸9.7重量部と、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)68.9重量部とを、窒素を導入しながら攪拌機及び加熱器を備えた反応装置に入れた。その後60℃に加熱し、ジメチロールプロピオン酸が溶解したのを確認した。更に、水素添加MDI70.9重量部と、触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.2重量部とを加え、90℃まで加熱し、6時間かけてウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを製造した(ポリウレタンプレポリマー中のカルボン酸基含有量は2.02重量%であり、ポリオール成分の水酸基当量数は278であった)。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、4.00重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン7.2重量部を添加・混合し、強攪拌しながら水338.8重量部の中に加えた。更に、35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液30.7重量部を加えて鎖伸長反応を行い水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
【0076】
(分散性の評価)
前記実施例1〜3、比較例1〜4について、水系媒体中へのポリウレタン樹脂の分散性を評価した。評価方法及び評価基準は、下記のとおりである。
○:良好な分散体を得た
△:一部分散不良が観られる
×:全く分散しない
【0077】
(硬さの評価)
前記実施例1〜3及び比較例3〜4について、硬さ評価を、下記の鉛筆硬度及び弾性率の測定により行った。なお、比較例1及び比較例2は、水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができなかったため、試料が作製できず、下記の鉛筆硬度及び弾性率の測定を行うことができなかった。
1)鉛筆硬度試験
[試料の作成]
前記実施例1〜3、比較例3,4の各水性ポリウレタン樹脂分散体をガラス板上に約0.4mmの厚さに均一に塗布した。次いで、室温にて16時間放置後、120℃にて3時間、更に140℃にて2時間乾燥した。
[鉛筆硬度の測定]
上記で得られたガラス板とポリウレタン樹脂塗膜との積層体において、前記ポリウレタン樹脂塗膜の鉛筆硬度を前記実施例1〜3、比較例3,4についてJIS K 5600−5−4に準拠した方法で測定した。
2)弾性率測定
[試料の作成]
前記実施例1〜3、比較例3,4の各水性ポリウレタン樹脂分散体をガラス板上に約0.4mmの厚さに均一に塗布した。次いで、室温にて16時間放置後、120℃にて3時間、更に140℃にて2時間乾燥した後、得られたポリウレタン樹脂フィルムをガラス板より剥離して以下の評価に供した。
[弾性率の測定]
JIS K 7113に準じた方法で上記ポリウレタンフィルムの弾性率を測定した。
【0078】
【実施例5】
【0079】
(塗料組成物の製造)
ジメチルエタノールアミンでカルボン酸/アミンのモル比が1.0となるように中和された水分散性ポリエステルポリオール(ニュープレックス社製「SETAL6306」、樹脂分濃度60質量%、水酸基価89mgKOH/樹脂g、酸価42mgKOH/樹脂g)を280g、ルチル型二酸化チタン600g、硫酸バリウム15g、イオン交換水280gをペイントシェーカーで30分間分散させて顔料分散ペーストを調製した。
得られた顔料分散ペーストに、実施例1で得た水性ポリウレタン樹脂分散体430g、ジメチルエタノールアミンでカルボン酸/アミンのモル比が1.0となるように中和された水分散性ポリエステルポリオール(ニュープレックス社製「SETAL6306」)115g、イオン交換水115g、アクリルポリオール(アクゾノーベル株式会社製「Setalux 1767VV−65」、数平均分子量=2500、水酸基価=150mgKOH/g(樹脂分に対して)、Tg=9.0℃)330g、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂(三井化学社製「ユーパン2028」)330gを添加し、均一に分散させて塗料組成物を得た。
得られた塗料組成物を電着塗装鋼板に膜厚25μmに塗布し、140℃で30分加熱したところ、弾性率が向上し、硬度に優れた良好な塗膜が得られた。