【実施例】
【0057】
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における評価方法は以下の通りである。
【0058】
[中空糸膜の透水性の測定方法]
血液浄化モジュールを使用し、膜の内外両側に37℃の純水を満たした。膜の内側に通じる血液浄化モジュール入り口から純水によって圧力をかけて、膜の内側と外側の圧力差、すなわち膜間圧力差を生じせしめ、1分間に膜を通じて膜外側に出てくる純水の量を測定した。4点の異なった膜間圧力差において、1分間の透水量を測定し、膜間圧力差と透水量の2次元座標にプロットして、それらの近似直線の傾きを数値として求めた。この数値に60をかけ、血液浄化モジュールの膜面積で割って中空糸膜の透水性を求めた(以下UFRと略記する。単位はmL/(m
2・hr・mmHg))。
【0059】
[中空糸膜の外圧に対する耐圧性の測定方法]
血液浄化モジュールを使用し、膜の内側(血液側)に37℃の純水を満たした。この血液浄化モジュールの血液側の総体積(純水の充填量に相当)をプライミングボリューム(単位mL)とする。血液浄化モジュールの透析液側には水を充填せず血液側のみに純水を充填した状態で透析液側に0.1MPaの空気加圧を実施し、10分間ホールドし中空糸膜の外圧による変形によって内側に充填した純水が排出される体積を測定する。この体積がプライミングボリュームの半分以下の時、耐圧性良好、半分を超えるとき耐圧性不良と判断する。
【0060】
[血液浄化モジュールの耐外圧性の試験評価]
血液浄化モジュールを使用し、膜の内側(血液側)に37℃の純水を満たした。この後、血液浄化モジュールの透析液側には水を充填せず血液側のみに純水を充填した状態で透析液側から0.2MPaの空気加圧を実施し、30分間ホールドし中空糸膜、中空糸膜接着部に外圧による変形を付与する。その後、血液浄化モジュールのリーク試験(水没下、エアー加圧による気泡試験)によって血液浄化モジュールのリーク損傷および血液浄化モジュール断面の拡大鏡検査により剥離の有無を確認する。
【0061】
[β2MGクリアランスの測定方法]
非特許文献1に示された性能評価基準に準じ実施する。膜面積1.5m
2(中空糸膜内径基準)の血液浄化モジュールに、総タンパク質濃度6.5±0.5g/dLに調整し、37℃に保温したACD加牛血漿を血液側流量200mL/minで1時間循環する。次いでヒトβ2MGを0.05〜0.1mg/Lの濃度になるように添加した総タンパク質濃度6.5±0.5g/dLに調整し、37℃に保温したACD加牛血漿を血液側流量200mL/minで血液側に流し、市販透析液を500mL/min、ろ過流量15mL/minで透析を実施する。このクリアランス評価はシングルパスで実施する。血液入口、出口、透析液出口中のβ2MG濃度を測定する。クリアランスは以下の式で計算する。
CL(β2MG)=200×[(200×CBi)−(185×CBo)]/(200×CBi)
ここで、CBi:血液入口部濃度、CBo:血液出口部濃度である。
【0062】
[逆濾過の測定方法]
逆濾過の測定は膜面積1.5m
2(中空糸膜内径基準)の血液浄化モジュールに、牛全血、ヘマトクリット30±3%、総タンパク質濃度6.5±0.5g/dLに調整し、37℃に保温したACD加牛全血液を用いて測定する。37℃に保温したACD加牛血漿を血液側流量200mL/minで血液側に流し、市販透析液を500mL/min、ろ過流量8mL/minで透析を実施する。ここで濾過流速を8mL/minと低くしたのは、通常の透析における低除水の場合を想定し、それでも逆濾過が起こらないかを確認するためである。逆濾過の発生の有無は血液出口側の圧力PBout(mmHg)と膠質浸透圧π(22mmHg)と透析液入り口側の圧力PDin(mmHg)を測定し、PBout−π(22)−PDinが正の値ならば逆濾過は起こらず、負の値ならば逆濾過が起こっていると判断される。
【0063】
[不溶成分含有量の測定・算出方法]
完成品としての中空糸膜10gを製造の際に使用した溶媒100mLで溶解した。この液を遠心分離により1500rpm、10分で不溶成分を分離し、上清を除去した。この操作を3回繰返し、残った不溶成分を蒸発乾固して重量を測定し、不溶成分の含有量を算出した。
【0064】
[親水性高分子含有量の測定・算出方法]
中空糸膜を重DMSOに溶解し、1H-NMRの測定を行って、疎水性高分子に含まれる水素原子(H1とする)由来のピークと、親水性高分子に含まれる水素原子(H2とする)由来のピークの面積比を求めた(この面積比をa1:a2とする)。疎水性高分子の繰返し単位の分子量をM1、繰返し単位中に含まれる上記a1の個数をn1、親水性高分子の繰返し単位の分子量をM2、繰返し単位中に含まれる上記a2の個数をn2として、次の式により親水性高分子の含有量を算出した。
親水性高分子の含有率(%)=((a2/n2)×M2×100)/((a1/n1)×M1+(a2/n2)×M2)
【0065】
[40%エタノール水溶液での抽出方法]
40%エタノール水溶液での抽出試験は以下の手順で行った。血液浄化モジュールの中空糸膜内側に400mLの純水を流してフラッシングを行った後、血液浄化モジュール内の純水を40容量%のエタノール水溶液で置換した。中空糸膜外側のモジュールケース内部にも40溶量%のエタノール水溶液で満たして封止した。続いて40℃の条件下、200mLの40容量%エタノールを150mL/minで1時間にわたって中空糸膜内側を循環させた後、循環した40容量%エタノール水溶液を回収し、そのPVP濃度を測定した。血液浄化モジュールの中空糸膜内側容積と血液浄化モジュール出入り口のヘッダー部分の体積、すなわちプライミングボリュームに200mLを加えた、抽出液総体積と抽出液中のPVP濃度から、抽出されたPVP総重量を算出し、さらに、血液浄化モジュールの膜面積(内径基準)から、被処理液接触側膜面積1m
2あたりのPVP抽出量を求めた。
【0066】
[PVP濃度の測定方法]
PVPの濃度測定は、K.Muellerの方法(K.Mueller,Pharm.Acta.Helv.,43,107(1968))によって行った。すなわち、検体にクエン酸とヨウ素溶液を加え、吸光度を測定し、濃度既知のPVPから求めた検量線により濃度を求めた。ここで、濃度測定の際には、エタノールによる発色の阻害を避けるため2倍以上に希釈する必要がある。具体的には、例えば2倍希釈で濃度測定を行う場合、検体を1.25mL、水1.25mL、0.2mol/Lクエン酸水溶液1.25mL、0.006規定ヨウ素水溶液0.5mLをよく混合し、10分間静置した後、470nmの吸光度を測定し、その測定値からPVP濃度を算出すればよい。
【0067】
[中空糸膜のC特性値の測定方法]
血液浄化モジュールを使用し、ヘマトクリット35%の牛血液を200mL/minの流量で中空糸膜の内側に灌流した。同時に、中空糸膜外側から20mL/minの流量で濾過を行った。灌流・濾過開始15分後の膜間圧力と濾過液量から、牛血液系での透水性(以下MFRと略記することがある。)を算出した。この値を(A)とし、灌流・濾過開始120分後、同様の操作により求めたMFRの値(B)とから、100(%)×(B)/(A)の計算によりC特性値を算出した。
【0068】
[クリアランスの測定方法]
ビタミンB12が20ppm、尿素が1000ppm、塩化ナトリウムが180ppm、リン酸一ナトリウム(無水)が40ppm、リン酸二ナトリウム(12水和物)が480ppmになるよう調製したキンダリー希釈液(35倍希釈)を使い、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールで測定した。血液側の流速は200±1mL/min、透析液側の流速は500±10mL/minとし、37℃で上記キンダリー溶液を流した。流し始めて1分後から3分間にわたって透析液側の液をサンプリングし、その間血液側(out)の液のサンプリングを1分間にわたって行った。それぞれの液について尿素の濃度を和光純薬工業株式会社製尿素窒素B−テストワコーを使用したウレアーゼ・インドフェノール法により測定した。また、ビタミンB12の濃度を360nmの吸光度から測定した。これらの測定値から中空糸膜の尿素クリアランス(CLun)、ビタミンB12クリアランス(CLvb)を算出した。
【0069】
[中空糸膜の内径、外径、膜厚の測定]
中空糸膜断面のサンプルは以下のようにして得ることができる。測定には中空形成材を洗浄、除去した後、中空糸膜を乾燥させた形態で観察することが好ましい。乾燥方法は問わないが、乾燥により著しく形態が変化する場合には中空形成材を洗浄、除去したのち、純水で完全に置換した後、湿潤状態で形態を観察することが好ましい。中空糸膜の内径、外径および膜厚は、中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられたφ3mmの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面でカミソリによりカットし、中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機Nikon-V-12Aを用いて中空糸膜断面の短径、長径を測定することにより得られる。中空糸膜断面1個につき2方向の短径、長径を測定し、それぞれの算術平均値を中空糸膜断面1個の内径および外径とし、膜厚は(外径−内径)/2で算出した。5断面について同様に測定を行い、平均値を内径、膜厚とした。
【0070】
[中空糸膜の降伏強度、降伏伸度の測定方法]
東洋ボールドウイン製テンシロンUTMIIを用いて、引っ張り速度100mm/min、チャック間距離100mmで測定した。サンプルはn=5で測定し、平均値を用いた。
【0071】
[中空糸膜のグリセリン付着率の測定方法]
中空糸膜に対するグリセリン付着率は、以下のようにして測定した。得られた中空糸膜を約10,000本の束とし、長さ20cm程度に切り揃え、遠心脱液により中空糸膜内部の芯液を除去した後、完全に乾燥させ、重量Wを測定する。その後、中空糸膜束を40℃に加温した相当量の水に浸漬させ、十分に洗浄した後、120℃の乾熱オーブンで2時間乾燥させ、重量Pを測定する。次に下記式により中空糸膜に対するグリセリン付着率G(重量%)を計算した。
G(重量%)=(W−P)/W×100
【0072】
[中空糸膜縮みの測定方法]
中空糸膜を20.0cmに切り揃え、予め目盛を付した熱収縮が認められないことを確認したプラスチックケースに並べ、中空糸膜の両端は固定せず、庫内を80℃に予備加熱した乾燥機に投入し、そのまま20時間、継続して加熱した。取り出した中空糸膜を30分間、室温で冷却し、目盛を利用して中空糸膜の長さを実測した。
【0073】
[AFM観察(中空糸膜内表面の粗さの測定)]
評価する中空糸膜の内表面を露出させたものを試料とした。原子間力顕微鏡SPI3800にて形態観察をした。この時の観察モードはDFMモード、スキャナーはFS-20A、カンチレバーはDF-3、観測視野は3μm四方である。PV値は膜表面の凹凸を測定した際の基準点に対する全測定点の凹凸の最大値と最小値の差であり、Ra値は基準点に対する全測定点の凹凸の算術平均を表す。
【0074】
[接着部リーク率]
膜面積1.5m
2の中空糸膜モジュールを使用し、血液液側から0.15MPaの空気加圧を10秒間かけ、さらに10秒間ホールドし、その後の10秒間の圧力低下値(Pa)を読む。200Pa以下の場合、リーク発生なしと判定し、200Paを超える場合、リーク発生と判定する。
接着剤部リーク率はこの判定結果に基づいて以下の式によって求めた。なお、全組み立てモジュール数は10本とした。
接着部リーク率(%)=接着部リーク発生モジュール数/全組み立てモジュール数×100(%)
【0075】
本発明1について具体例を挙げて、以下に説明する。
【0076】
(実施例1)
PES(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)42.5重量%、PVP(BASF社製コリドンK-90)4.5重量%、TEG(三井化学社製)21.2重量%、及びNMP(三菱化学社製)31.8重量%を混合後、窒素封入して撹拌、再度窒素パージして撹拌を三回繰り返した後125℃に昇温して均一に溶解し、製膜溶液を焼結フィルターにより異物を除去し、芯液として流動パラフィンを用いチューブインオリフィスノズルより吐出し、紡糸管により外気と遮断した、30mmの空中走行部を通過した後、5℃の65重量%NMP/TEG(6/4)水溶液の第一凝固浴で凝固させ、次いで同じく5℃の65重量%NMP/TEG(6/4)水溶液の第二凝固浴に導き35%の延伸をかけた後、水洗浴間を延伸比0.3%で15段、65℃の温水中を経た後、87℃、60重量%のグリセリン浴に通過させ、次いでドライヤーで乾燥させるに際して延伸を付与することなく乾燥時引っ張らない緩和型方式で60℃の温風乾燥を実施し、紡糸速度60m/minで巻き上げ、内径200μm、膜厚17μmの中空糸膜を得た。
【0077】
得られた中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、中空糸膜内径基準で膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表1に示す。
【0078】
透水性は14mL/(m
2・hr・mmHg)と低透水性でありながら、β2ミクログロブリンのクリアランスは18mL/minと機能分類II型の高性能を示し、且つ耐圧性も良好、逆濾過も見られず安全で高性能な有用な中空糸膜および血液浄化モジュールが得られた。
【0079】
(実施例2)
紡糸速度を90m/minとし、芯液とポリマー溶液の吐出量を1.5倍にしたほかは実施例1と同じ処方で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表1に示す。
【0080】
透水性は18mL/(m
2・hr・mmHg)と低透水性でありながら、β2ミクログロブリンのクリアランスは21mL/minと機能分類の定めるII型の高性能を示し、且つ耐圧性も良好、逆濾過も見られず安全で高性能な有用な中空糸膜および血液浄化モジュールが得られた。
【0081】
(実施例3)
PES(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)44.5重量%、PVP(BASF社製コリドンK-90)5.5重量%、TEG(三井化学社製)20重量%、及びNMP(三菱化学社製)30重量%、溶解温度を130℃、第二凝固浴での延伸を55%、水洗浴での延伸を各浴0.35%、15段で計5.25%とした以外は実施例1と同じ処方で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表1に示す。
【0082】
透水性は18mL/(m
2・hr・mmHg)と低透水性でありながら、β2ミクログロブリンのクリアランスは24mL/minと機能分類の定めるII型の高性能を示し、且つ耐圧性も良好、逆濾過も見られず安全で高性能な有用な中空糸膜および血液浄化モジュールが得られた。
【0083】
(実施例4)
CTA(ダイセル化学製、LT105)24.3重量%、TEG(三井化学社製)22.71重量%、及びNMP(三菱化学社製)52.99重量%を混合後、窒素封入して撹拌、再度窒素パージして撹拌を三回繰り返した後125℃に昇温して均一に溶解し、製膜溶液を焼結フィルターにより異物を除去し、芯液として流動パラフィンを用いチューブインオリフィスノズルより吐出し、紡糸管により外気と遮断された、45mmの空中走行部を通過した後、12℃の30重量%NMP/TEG(7/3)水溶液からなる第一凝固浴で凝固させ、次いで同じく12℃の30重量%NMP/TEG(7/3)水溶液の第二凝固浴に導き10%の延伸をかけた後、水洗浴間を延伸比0.15%で15段、65℃の温水中を経た後、46重量%のグリセリン浴を通過させ、次いでドライヤーで乾燥させるに際して延伸を付与することなく乾燥時引っ張らない緩和型方式で65℃の温風乾燥を実施し、紡糸速度80m/minで巻き上げ、内径201μm、膜厚15.5μmの中空糸膜を得た。
【0084】
得られた中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表1に示す。
【0085】
透水性は14mL/(m
2・hr・mmHg)と低透水性でありながら、β2ミクログロブリンのクリアランスは14mL/minと機能分類の定めるII型の高性能を示し、且つ耐圧性も良好、逆濾過も見られず安全で高性能な有用な中空糸膜および血液浄化モジュールが得られた。
【0086】
(比較例1)
第二凝固浴での延伸を5%として引っ張らないようにした以外は実施例1と同じ処方で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表1に示す。
【0087】
透水性は13mL/(m
2・hr・mmHg)と低透水性であり、β2ミクログロブリンのクリアランスは9mL/minと機能分類の定めるI型の低いクリアランスしか示さなかった。また0.1MPaの外圧でつぶれ十分な耐圧性がない中空糸膜および血液浄化モジュールであった。
【0088】
(比較例2)
第二凝固浴での延伸を5%と引っ張らず、水洗浴での延伸を各浴0.1%、15段で計1.5%とした以外は実施例1と同じ処方で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表1に示す。
【0089】
透水性は12mL/(m
2・hr・mmHg)と低透水性であり、β2ミクログロブリンのクリアランスは6mL/minと機能分類の定めるI型の低いクリアランスしか示さなかった。また0.1MPaの外圧でつぶれ十分な耐圧性がない中空糸膜および血液浄化モジュールであった。
【0090】
(比較例3)
グリセリン浴を通過後、ドライヤーで乾燥させるに際して、走行安定化のために各段0.1%で計10段で延伸を1.0%付与しながら60℃の温風で乾燥した以外は実施例1と同じ処方で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表1に示す。
【0091】
透水性は14mL/(m
2・hr・mmHg)と低透水性であり、β2ミクログロブリンのクリアランスは9mL/minと機能分類の定めるI型の低いクリアランスしか示さなかった。また0.2MPaの外圧を付与した際に血液浄化モジュール10本でリークが発生し、血液浄化モジュール端面に剥離が発生する、不十分な接着強度の安全性が低い中空糸膜および血液浄化モジュールであった。
【0092】
(比較例4)
PES(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)26.0重量%、PVP(BASF社製コリドンK-90)5.5重量%、TEG(三井化学社製)27.4重量%、及びNMP(三菱化学社製)41.1重量%を混合後、窒素封入して撹拌、再度窒素パージして撹拌を三回繰り返した後125℃に昇温して均一に溶解し、製膜溶液を焼結フィルターにより異物を除去し、芯液として流動パラフィンを用いチューブインオリフィスノズルより吐出し、紡糸管により外気と遮断された、30mmの空中走行部を通過した後、5℃の30重量%NMP/TEG(6/4)水溶液中で凝固させ、次いで同じく5℃の30重量%NMP/TEG(6/4)水溶液の第二凝固に導き5%の延伸をしか付与せず、水洗浴間も延伸比0.1%と延伸を付与しないで15段、65℃の温水中を経た後、87℃、65重量%のグリセリン浴を通過させ、次いでドライヤーで乾燥させるに際して延伸を付与することなく乾燥時引っ張らない緩和型方式で60℃の温風乾燥を実施し、紡糸速度60m/minで巻き上げ、内径200μm、膜厚16μmの中空糸膜を得た。
【0093】
得られた中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表1に示す。
【0094】
透水性は62mL/(m
2・hr・mmHg)と高透水性の割には、β2ミクログロブリンのクリアランスは15mL/minと機能分類の定めるII型とはいえ振るわず、0.1MPaの外圧で潰れが発生するなど耐圧も不良な上、逆ろ過が発生するなど目的とする安全で高性能な有用な中空糸膜および血液浄化モジュールは得られなかった。
【0095】
【表1】
【0096】
本発明2について具体例を挙げて、以下に説明する。
【0097】
(実施例5)
PES(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)42.5重量%、PVP(BASF社製コリドンK-90)4.5重量%、TEG(三井化学社製)21.2重量%、及びNMP(三菱化学社製)31.8重量%を混合後、窒素封入して撹拌、再度窒素パージして撹拌を三回繰り返した後125℃に昇温して均一に溶解し、製膜溶液を焼結フィルターにより異物を除去し、芯液として流動パラフィンを用いチューブインオリフィスノズルより吐出し、紡糸管により外気と遮断した、25mmの空中走行部を通過した後、5℃の65重量%NMP/TEG(6/4)水溶液の第一凝固浴で凝固させ、次いで同じく5℃の65重量%NMP/TEG(6/4)水溶液の第二凝固浴に導き35%の延伸をかけた後、水洗浴間を延伸比0.3%で15段、65℃の温水中を経た後、87℃、60重量%のグリセリン浴に通過させ、次いでドライヤーで乾燥させるに際して延伸を付与することなく乾燥時引っ張らない緩和型方式で60℃の温風乾燥を実施し、紡糸速度60m/minでボビンにクロスワインドで巻き上げ、内径198μm、膜厚17μmの中空糸膜を得た。
【0098】
得られた中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、中空糸膜内径基準で膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表2、3に示す。
【0099】
(実施例6)
PES(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)41.5重量%、PVP(BASF社製コリドンK-90)3.5重量%、TEG(三井化学社製)22重量%、及びNMP(三菱化学社製)33重量%、溶解温度を120℃、第二凝固浴での延伸を30%、水洗浴での延伸を各浴0.25%、15段で計3.75%とした以外は実施例1と同じ処方で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表2、3に示す。
【0100】
(実施例7)
EPS(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)44.5重量%、PVP(BASF社製コリドンK-90)5.5重量%、TEG(三井化学社製)20重量%、及びNMP(三菱化学社製)30重量%、溶解温度を130℃、第二凝固浴での延伸を55%、水洗浴での延伸を各浴0.35%、15段で計5.25%とした以外は実施例1と同じ処方で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表2、3に示す。
【0101】
(実施例8)
製膜溶液の吐出量を増やすことにより、内径196μm、膜厚28μmの中空糸膜を得た以外は、実施例5と同じ処方で中空糸膜を作製し、同様にして血液浄化モジュールを得た。
【0102】
(比較例5)
第二凝固浴での延伸を5%として引っ張らないようにした以外は実施例5と同じ処方で内径198μm、膜厚16μmの中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表2、3に示す。
【0103】
透水性13mL/(m
2・hr・mmHg)と低透水性であり、β2ミクログロブリンのクリアランスは9mL/minと機能分類の定めるI型の低いクリアランスしか示さなかった。また0.1MPaの外圧でつぶれ十分な耐圧性がない中空糸膜および血液浄化モジュールであった。
【0104】
(比較例6)
第二凝固浴での延伸を5%と引っ張らず、水洗浴での延伸を各浴0.1%、15段で計1.5%とした以外は実施例5と同じ処方で内径201μm、膜厚15μmの中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表2、3に示す。
【0105】
透水性12mL/(m
2・hr・mmHg)と低透水性であり、β2ミクログロブリンのクリアランスは6mL/minと機能分類の定めるI型の低いクリアランスしか示さなかった。また0.1MPaの外圧でつぶれ十分な耐圧性がない中空糸膜および血液浄化モジュールであった。
【0106】
(比較例7)
水洗浴での延伸を各浴0.1%、15段で計1.5%とし、グリセリン浴を通過後、ドライヤーで乾燥させるに際して、走行安定化のために各段0.15%、計10段で延伸を1.5%付与しながら60℃の温風で乾燥した以外は比較例6と同じ処方で内径200μm、膜厚17μmの中空糸膜を作製した。同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表2、3に示す。
【0107】
透水性14mL/(m
2・hr・mmHg)と低透水性であり、β2ミクログロブリンのクリアランスは9mL/minと機能分類の定めるI型の低いクリアランスしか示さなかった。また0.2MPaの外圧を付与した際に血液浄化モジュール10本中2本でリークが発生し、血液浄化モジュール端面に剥離が発生する、不十分な接着強度の安全性が低い中空糸膜および血液浄化モジュールであった。
【0108】
(比較例8)
PES(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)26.0重量%、PVP(BASF社製コリドンK-90)5.5重量%、TEG(三井化学社製)27.4重量%、及びNMP(三菱化学社製)41.1重量%を混合後、窒素封入して撹拌、再度窒素パージして撹拌を三回繰り返した後80℃に昇温して均一に溶解し、製膜溶液を焼結フィルターにより異物を除去し、芯液として流動パラフィンを用いチューブインオリフィスノズルより吐出し、紡糸管により外気と遮断された、30mmの空中走行部を通過した後、5℃の30重量%NMP/TEG(6/4)水溶液中で凝固させ、次いで同じく5℃の30重量%NMP/TEG(6/4)水溶液の第二凝固に導き5%の延伸しか付与せず、水洗浴間も延伸比0.1%と延伸を付与しないで15段、65℃の温水中を経た後、87℃、65重量%のグリセリン浴を通過させ、次いでドライヤーで乾燥させるに際して延伸を付与することなく乾燥時引っ張らない緩和型方式で60℃の温風乾燥を実施し、紡糸速度60m/minで巻き上げ、内径199μm、膜厚15μmの中空糸膜を得た。
【0109】
得られた中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、定法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表2、3に示す。
【0110】
透水性62mL/(m
2・hr・mmHg)と高透水性の割には、β2ミクログロブリンのクリアランスは15mL/minと機能分類の定めるII型とはいえ振るわず、0.1MPaの外圧で潰れが発生するなど耐圧も不良な上、逆ろ過が発生するなど目的とする安全で高性能な有用な中空糸膜および血液浄化モジュールは得られなかった。
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
本発明3について具体例を挙げて、以下に説明する。
【0114】
(実施例9)
PES(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)42.5重量%、PVP(BASF社製コリドンK-90)4.5重量%、TEG(三井化学社製)21.2重量%、及びNMP(三菱化学社製)31.8重量%を混合した後、窒素封入して撹拌、再度窒素パージして撹拌を三回繰り返し、125℃に昇温して均一に溶解した。製膜溶液を焼結フィルターにより異物を除去し、芯液として流動パラフィンを用い、チューブインオリフィスノズルより吐出し、紡糸管により外気と遮断した、30mmの空中走行部を通過した後、5℃の65重量%NMP/TEG(6/4)水溶液の第一凝固浴で凝固させ、次いで同じく5℃の65重量%NMP/TEG(6/4)水溶液の第二凝固浴に導き、そこで35%の延伸をかけた。その後、水洗浴間を延伸比0.3%で15段(延伸の合計4.5%)、65℃の温水中を経た後、87℃、60重量%のグリセリン浴に通過させ、次いでドライヤーで乾燥させるに際して延伸を付与することなく乾燥時引っ張らない緩和型方式で40℃の温風乾燥を実施し、紡糸速度60m/minで巻き上げ、内径200μm、膜厚17μmの中空糸膜を得た。
【0115】
得られた中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施し、中空糸膜内径基準で膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表4に示す。
【0116】
(実施例10)
紡糸速度を90m/minとして芯液とポリマー溶液の吐出量を1.5倍にした以外は、実施例9と同じ方法で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施し、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表4に示す。
【0117】
(実施例11)
製膜溶液の成分をPES(住化ケムテックス社製、スミカエクセル4800P)44.5重量%、PVP(BASF社製コリドンK-90)5.5重量%、TEG(三井化学社製)20重量%、及びNMP(三菱化学社製)30重量%とし、溶解温度を130℃とし、第二凝固浴での延伸を55%とし、水洗浴での延伸を各浴0.35%とし、15段で合計5.25%とした以外は、実施例9と同じ方法で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表4に示す。
【0118】
(実施例12)
製膜溶液の成分をPVP(BASF社製コリドンK-90)4.7重量%とし、87℃、56重量%のグリセリン浴に通過させた以外は、実施例9と同じ方法で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表4に示す。
【0119】
(実施例13)
第二凝固浴での延伸を15%にした以外は、実施例9と同じ方法で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表4に示す。
【0120】
(実施例14)
水洗浴での延伸を各浴0.17%、15段で合計2.55%とした以外は、実施例9と同じ方法で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表4に示す。
【0121】
(実施例15)
ドライヤーで乾燥させるに際して、引っ張らない緩和型方式で30℃の温風乾燥を実施した以外は、実施例9と同じ方法で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表4に示す。
【0122】
(比較例9)
第二凝固浴での延伸を5%とした以外は、実施例9と同じ方法で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表5に示す。
【0123】
(比較例10)
第二凝固浴での延伸を5%とし、水洗浴での延伸を各浴0.1%、15段で合計1.5%とした以外は、実施例9と同じ方法で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表5に示す。
【0124】
(比較例11)
ドライヤーで乾燥させるに際して、走行安定化のために各段0.1%、15段で延伸を合計1.5%付与した以外は、実施例9と同じ方法で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表5に示す。
【0125】
(比較例4)
ドライヤーで乾燥させるに際して、60℃の温風で乾燥した以外は、実施例9と同じ方法で中空糸膜を作製し、同じく中空糸膜チーズを70℃の乾燥機中で20時間、安定化処理を施した後、常法によってモジュール化を実施、膜面積1.5m
2の血液浄化モジュールを得た。その評価結果を表5に示す。
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
表4及び5から明らかなように、実施例9〜15の中空糸膜は、高い透水性保持率を有しながら、耐外圧性が良好で、かつ接着部リークが見られず、安全で生産性の高いものである。これに対して、比較例9〜12の中空糸膜は、透水性保持率、耐外圧性、接着部リークのいずれかにおいて問題があった。