特許第5720262号(P5720262)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720262
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】車輪用転がり軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/18 20060101AFI20150430BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20150430BHJP
   F16C 33/64 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   F16C19/18
   B60B35/02 L
   F16C33/64
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-9477(P2011-9477)
(22)【出願日】2011年1月20日
(65)【公開番号】特開2012-149721(P2012-149721A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 竜哉
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−162335(JP,A)
【文献】 特開2008−115949(JP,A)
【文献】 特開2004−108449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/18
B60B 35/02
F16C 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸の外周面に、軸方向に所定間隔を隔ててインナ側及びアウタ側の内輪軌道面が形成され、前記ハブ軸の外周に配設される外輪部材の内周面に、軸方向に所定間隔を隔ててインナ側及びアウタ側の外輪軌道面が形成され、前記インナ側及びアウタ側の内輪軌道面と、前記インナ側及びアウタ側の外輪軌道面との間にインナ側列及びアウタ側列の玉が転動可能に配列され、前記インナ側列の玉のピッチ円直径をD1とし、前記アウタ側列の玉のピッチ円直径をD2としたときに、「D1<D2」の関係となるように設定された車輪用転がり軸受装置であって、
前記玉は、インナ側列の玉の玉径よりもアウタ側列の玉の玉径の方が小さく設定され、インナ側列の玉よりもアウタ側列の玉の個数が多く配置されており、
前記インナ側の外輪軌道面と前記インナ側列の玉の接触角をなす作用線との交点と、前記インナ側の外輪軌道面のアウタ側端縁とのなす角度をθ1とし、前記アウタ側の外輪軌道面と前記アウタ側列の玉の接触角をなす作用線との交点と、前記アウタ側の外輪軌道面のインナ側端縁とのなす角度をθ2としたときに、「θ1<θ2」の関係となるように設定されていることを特徴とする車輪用転がり軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車輪用転がり軸受装置であって、
外輪部材は、鍛造によって形成され、
アウタ側軌道肩部とインナ側軌道肩部との間の境界アール面及び前記アウタ側軌道肩部の表面は、それぞれ鍛造肌の表面にショットブラスト処理が施された加工面をなしていることを特徴とする車輪用転がり軸受装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車輪用転がり軸受装置であって、
前記ハブ軸はアウタ側が大径部、インナ側が小径部の段軸状に形成されており、前記小径部の外周面には内輪体が嵌め込まれ、この内輪体の外周面にはインナ側列の玉が接する内輪軌道面が形成され、前記ハブ軸の小径部の端部から延出された筒部がかしめられてかしめ部を形成することにより、前記ハブ軸の小径部の段差面とかしめ部との間に内輪体が挟持されると共に、前記ハブ軸の回転軸上における仮想横断面において、前記内輪体のアウタ側端部は、インナ側列の玉のアウタ側寄り半円の円周とオーバーラップする位置関係にあることを特徴とする車輪用転がり軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車輪用転がり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪用転がり軸受装置(車輪用ハブユニットと呼ばれることもある)においては、車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸の外周面に、軸方向に所定間隔を隔ててインナ側及びアウタ側の内輪軌道面が形成される。一方、ハブ軸の外周に配設される外輪部材の内周面に、軸方向に所定間隔を隔ててインナ側及びアウタ側の外輪軌道面が形成される。そして、ハブ軸のインナ側及びアウタ側の内輪軌道面と、外輪部材のインナ側及びアウタ側の外輪軌道面との間にインナ側列及びアウタ側列の玉が転動可能に配列される。
このような車輪用転がり軸受装置において、インナ側列及びアウタ側列の玉のピッチ円直径をそれぞれ大きく設定し、これによってインナ側列及びアウタ側列の玉の個数を多くすることで高剛性化を図ることができる。
しかしながら、インナ側列及びアウタ側列の玉のピッチ円直径をそれぞれ大きく設定すると、これに対応して外輪部材が大径化し、重量が増加する。
また、外輪部材が大径化すると、車両の懸架装置のナックル、キャリア等の車体側部材の組付孔に対し、外輪部材の嵌合軸部の外径寸法が過大となって組付不能となる場合がある。
このようなことから、外輪部材の嵌合軸部の外径寸法を車体側部材の組付孔に嵌合可能な大きさに確保しながら、軽量化や高剛性化を図るために、インナ側列の玉のピッチ円直径よりもアウタ側列の玉のピッチ円直径を大きく設定し、これによって、インナ側列の玉の個数よりもアウタ側列の玉の個数を多くしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−108449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インナ側列の玉のピッチ円直径よりもアウタ側列の玉のピッチ円直径を大きく設定し、これによって、インナ側列の玉の個数よりもアウタ側列の玉の個数を多くすることで、軽量化や高剛性化に有効である。
しかしながら、アウタ側列の玉のピッチ円直径を大きく設定すると、アウタ側列の玉に対し軸受回転時の荷重が負荷される際に、アウタ側列の玉がアウタ側軌道肩部に乗り上げやすくなる。
そして、アウタ側列の玉がアウタ側軌道肩部に乗り上げるときに、アウタ側の外輪軌道面とアウタ側軌道肩部との境界エッジ部にエッジ応力が発生し、これによって軸受寿命が低下することが想定される。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、軽量化や高剛性化を図りながら、アウタ側軌道肩部に対するアウタ側列の玉の乗り上げを抑制することができる車輪用転がり軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係る車輪用転がり軸受装置は、車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸の外周面に、軸方向に所定間隔を隔ててインナ側及びアウタ側の内輪軌道面が形成され、前記ハブ軸の外周に配設される外輪部材の内周面に、軸方向に所定間隔を隔ててインナ側及びアウタ側の外輪軌道面が形成され、前記インナ側及びアウタ側の内輪軌道面と、前記インナ側及びアウタ側の外輪軌道面との間にインナ側列及びアウタ側列の玉が転動可能に配列され、前記インナ側列の玉のピッチ円直径をD1とし、前記アウタ側列の玉のピッチ円直径をD2としたときに、「D1<D2」の関係となるように設定された車輪用転がり軸受装置であって、
前記玉は、インナ側列の玉の玉径よりもアウタ側列の玉の玉径の方が小さく設定され、インナ側列の玉よりもアウタ側列の玉の個数が多く配置されており、前記インナ側の外輪軌道面と前記インナ側列の玉の接触角をなす作用線との交点と、前記インナ側の外輪軌道面のアウタ側端縁とのなす角度をθ1とし、前記アウタ側の外輪軌道面と前記アウタ側列の玉の接触角をなす作用線との交点と、前記アウタ側の外輪軌道面のインナ側端縁とのなす角度をθ2としたときに、「θ1<θ2」の関係となるように設定されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、インナ側列の玉のピッチ円直径D1よりもアウタ側列の玉のピッチ円直径D2を大きく設定することによって、車輪用転がり軸受装置の軽量化や高剛性化を良好に図ることが可能となる。
また、インナ側の外輪軌道面に対するインナ側列の玉の接触角をなす交点からインナ側軌道肩部の境界部までの軌道円弧の角度θ1よりもアウタ側の外輪軌道面に対するアウタ側列の玉の接触角をなす交点からアウタ側軌道肩部の境界部までの軌道円弧の角度θ2を大きく設定することによって、アウタ側軌道肩部に対するアウタ側列の玉の乗り上げを良好に抑制することができる。
【0008】
請求項2に係る車輪用転がり軸受装置は、請求項1に記載の車輪用転がり軸受装置であって、
外輪部材は、鍛造によって形成され、
アウタ側軌道肩部とインナ側軌道肩部との間の境界アール面及び前記アウタ側軌道肩部の表面は、それぞれ鍛造肌の表面にショットブラスト処理が施された加工面をなしていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、アウタ側軌道肩部とインナ側軌道肩部との間の境界アール面及びアウタ側軌道肩部の表面が、鍛造肌にショットブラスト処理を施した加工面をなすことによって、旋削加工する必要がない。
このため、境界アール面及びアウタ側軌道肩部の表面の旋削加工する分だけ鍛造素材の重量を軽減することが可能となると共に、ショットブラスト処理加工は、旋削加工と比べ、短時間で加工を行うことができるため、コスト低減に効果が大きい。
請求項3に係る車輪用転がり軸受装置は、請求項1又は請求項2に記載の車輪用転がり軸受装置であって、
前記ハブ軸はアウタ側が大径部、インナ側が小径部の段軸状に形成されており、前記小径部の外周面には内輪体が嵌め込まれ、この内輪体の外周面にはインナ側列の玉が接する内輪軌道面が形成され、前記ハブ軸の小径部の端部から延出された筒部がかしめられてかしめ部を形成することにより、前記ハブ軸の小径部の段差面とかしめ部との間に内輪体が挟持されると共に、前記ハブ軸の回転軸上における仮想横断面において、前記内輪体のアウタ側端部は、インナ側列の玉のアウタ側寄り半円の円周とオーバーラップする位置関係にあることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施例1に係る車輪用転がり軸受装置を示す縦断面図である。
図2】同じくハブ軸と外輪部材とインナ側列及びアウタ側列の玉との組み付け状態を拡大して示す縦断面図である。
図3】同じく外輪部材のインナ側の外輪軌道面とインナ側軌道肩部とを拡大して示す縦断面図である。
図4】同じく外輪部材のアウタ側の外輪軌道面とアウタ側軌道肩部とを拡大して示す縦断面図である。
図5】同じくアウタ側の外輪軌道面の端縁とアウタ側軌道肩部の端縁との境界部が面取加工されることなく接続された実施態様を示す説明図である。
図6】同じくアウタ側の外輪軌道面の端縁とアウタ側軌道肩部の端縁との境界部がC面取加工された実施態様を示す説明図である。
図7】同じくアウタ側の外輪軌道面の端縁とアウタ側軌道肩部の端縁との境界部がR面取加工された実施態様を示す説明図である。
図8】外輪部材を形成するために鍛造品を示す縦断面図である。
図9】同じく鍛造品の内部に形成された中間壁がポンチによって打ち抜かれた状態を示す縦断面図である。
図10】同じく鍛造品が旋削加工及び研磨加工されて外輪部材が形成された状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0012】
この発明の実施例1を図1図4にしたがって説明する。
図1に示すように、車輪用転がり軸受装置(車輪用ハブユニット)は、複列のアンギュラ玉軸受を構成するための内輪部材としてのハブ軸15を一体に有するハブホイール10と、外輪部材30と、複列をなすインナ側列及びアウタ側列の玉50、51と、インナ側及びアウタ側の保持器55、56とを備えてユニット化されている。
【0013】
図1に示すように、ハブホイール10は、ハブ軸15と、このハブ軸15の車アウタ側端部に同一中心線上に形成されたフランジ体11とを一体に有し、フランジ体11の車アウタ側面には、ブレーキロータを間に挟んで車輪(図示しない)の中心孔が嵌込まれる車輪用嵌合部13が形成されている。
また、フランジ体11には、車輪を締め付ける複数のハブボルト12が所定ピッチで圧入固定されている。
【0014】
図1に示すように、ハブ軸15の外周面には、軸方向に所定間隔を隔ててインナ側及びアウタ側の内輪軌道面20、25がそれぞれ形成されている。
この実施例1において、ハブ軸15は、フランジ体11側が大径で先端側が小径に形成された段軸状に形成されている。そして、ハブ軸15の大径部16の片側(フランジ体11側)に形成された大径肩部16aの外周面にアウタ側の内輪軌道面25が形成されている。また、ハブ軸15の小径部17の外周面には内輪体26が嵌め込まれ、この内輪体26の外周面にインナ側の内輪軌道面20が形成されている。
さらに、ハブ軸15の小径部17の端部から延出された筒部がかしめ具によって半径方向外方へかしめられてかしめ部18が形成されることによって、ハブ軸15の小径部17の段差面とかしめ部18との間に内輪体26が挟持されるようになっている。
【0015】
図1図2に示すように、外輪部材30の一端側(車幅方向インナ側)には、車両の懸架装置(図示しない)に支持されたナックル、キャリア等の車体側部材の組付孔に嵌合される嵌合軸部35が形成されている。また、外輪部材30の外周面の嵌合軸部35に隣接する部分には、車体側部材の取付面にボルトによって締結される車体側フランジ31が一体に形成されている。
外輪部材30の内周面には、ハブ軸15のインナ側の内輪軌道面20及びアウタ側の内輪軌道面25に対応するインナ側の外輪軌道面40とアウタ側の外輪軌道面45とが軸方向に所定間隔を保って形成されている。
【0016】
インナ側及びアウタ側の内輪軌道面20、25と、インナ側及びアウタ側の外輪軌道面40、45との間には、インナ側列及びアウタ側列の各複数個の玉50、51が、インナ側及びアウタ側の保持器55、56に保持された状態で転動可能に配列されている。
そして、前記したハブ軸15のかしめ部18によるかしめ力によって、インナ側列及びアウタ側列の玉50、51にそれぞれ所要とする予圧が付与されるようになっている。
【0017】
図2に示すように、インナ側列の玉50のピッチ円直径をD1とし、アウタ側列の玉51のピッチ円直径をD2としたときに、「D1<D2」の関係となるように設定されている。
すなわち、この実施例1において、外輪部材30の嵌合軸部35の外径寸法を車体側部材の組付孔に嵌合可能な大きさに確保しながら、車輪用転がり軸受装置の軽量化や高剛性化を図るために、インナ側列の玉50のピッチ円直径D1よりもアウタ側列の玉51のピッチ円直径D2が大きく設定されると共に、インナ側列の玉50の玉径よりもアウタ側列の玉51の玉径が小さく設定されている。これに伴って、インナ側列の玉50の個数よりもアウタ側列の玉51の個数が多くなっている。
【0018】
前記「D1<D2」の関係に基づき、アウタ側列の玉51をピッチ円直径D2で配列するために、ハブホイール10のハブ軸15の外周面に形成されるアウタ側の内輪軌道面25は、インナ側の内輪軌道面20よりも大径に形成されている。
そして、図1に示すように、ハブホイール10の車輪用嵌合部13の中心孔部からインナ側に向かう凹部10aがアウタ側の内輪軌道面25との間に所要とする肉厚を残してできるだけ大きくかつ深く形成され、これによって、ハブホイール10の軽量化、ひいては車輪用転がり軸受装置の軽量化が図られるようになっている。
【0019】
また、前記「D1<D2」の関係に基づき、アウタ側列の玉51をピッチ円直径D2で配列するために、外輪部材30の内周面に形成されるアウタ側の外輪軌道面45は、インナ側の外輪軌道面40よりも大径に形成されている。
さらに、図2に示すように、外輪部材30の内周面には、インナ側の外輪軌道面40とアウタ側の外輪軌道面45との間に位置する部分においてインナ側の外輪軌道面40の端縁に連続するインナ側軌道肩部41と、アウタ側の外輪軌道面45の端縁に連続するアウタ側軌道肩部46とがそれぞれ形成されている。
さらに、インナ側軌道肩部41は、軸線方向に平行する円筒状に形成され、アウタ側軌道肩部46は、インナ側軌道肩部41よりも大径で軸線方向に平行する円筒状に形成されている。そして、アウタ側軌道肩部46とインナ側軌道肩部41との間には境界アール面44が形成されている。
【0020】
図3に示すように、インナ側の外輪軌道面40に対するインナ側列の玉50の接触角α1をなす交点(接触角α1をなす作用線L1とインナ側の外輪軌道面40との交点)P1からインナ側軌道肩部41までの軌道円弧40aの角度をθ1とし、アウタ側の外輪軌道面45に対するアウタ側列の玉51の接触角α2をなす交点(接触角α2をなす作用線L2とアウタ側の外輪軌道面45との交点)P2からアウタ側軌道肩部46までの軌道円弧45aの角度をθ2としたときに、「θ1<θ2」の関係となるように設定されている。
言い換えると、インナ側の外輪軌道面40の研磨加工範囲(角度)よりもアウタ側の外輪軌道面45の研磨加工範囲(角度)が大きく設定されている。
なお、接触角α1は、軸受の回転中心軸に垂直な平面と、内輪体26と外輪部材30とによってインナ側列の玉50に伝えられる力の合力の作用線L1と、がなす角度である。
また、接触角α2は、軸受の回転中心軸に垂直な平面と、ハブ軸15(内輪部材)と外輪部材30とによってアウタ側列の玉51に伝えられる力の合力の作用線L2と、がなす角度である。
【0021】
また、この実施例1において、図3に示すように、インナ側の外輪軌道面(軌道円弧40a)40の端縁と、インナ側軌道肩部41の端縁との境界部には、円弧面40bと傾斜面40cとが連続して形成されている。
また、図4に示すように、アウタ側の外輪軌道面(軌道円弧45a)45の端縁と、アウタ側軌道肩部46の端縁との境界部には、円弧面45bと傾斜面45cとが連続して形成されている。
【0022】
この実施例1に係る車輪用転がり軸受装置は上述したように構成される。
したがって、車輪用転がり軸受装置のインナ側列の玉50のピッチ円直径D1よりもアウタ側列の玉51のピッチ円直径D2を大きく設定することによって、車輪用転がり軸受装置の軽量化や高剛性化を良好に図ることが可能となる。
また、インナ側の外輪軌道面40の軌道円弧40aの角度θ1よりも、アウタ側の外輪軌道面45の軌道円弧45aの角度θ2を大きく設定することによって、アウタ側軌道肩部46に対するアウタ側列の玉51の乗り上げを良好に抑制することができ、軸受寿命の低下を抑制して耐久性の向上を図ることができる。
【0023】
なお、前記実施例1においては、アウタ側の外輪軌道面(軌道円弧45a)45の端縁と、アウタ側軌道肩部46の端縁との境界部には、円弧面45bと傾斜面45cとが連続して形成される場合を例示したが、例えば、図5に示すように、アウタ側の外輪軌道面(軌道円弧45a)45の端縁と、アウタ側軌道肩部46の端縁との境界部が面取加工されることなく接続されてもこの発明を実施することができる。
また、図6に示すように、アウタ側の外輪軌道面(軌道円弧45a)45の端縁と、アウタ側軌道肩部46の端縁との境界部にC面取加工された面取面45dが形成される場合においてもこの発明を実施することができる。
また、図7に示すように、アウタ側の外輪軌道面(軌道円弧45a)45の端縁と、アウタ側軌道肩部46の端縁との境界部にR面取加工された面取面45eが形成される場合においてもこの発明を実施することができる。
【0024】
次に、外輪部材30が熱間鍛造品から形成される場合を図8図10にしたがって説明する。
先ず、図8に示すように、熱間鍛造によって外輪部材30に対応する鍛造品130を形成する。
この鍛造品130の外周側においては、外輪部材30の車体側フランジ31の組み付け面側、及び嵌合軸部35の外周面側に対応する部分にそれぞれ旋削取り代130aを形成する。
また、鍛造品130の内周側においては、外輪部材30の嵌合軸部35の内孔、インナ側の外輪軌道面40、インナ側軌道肩部41、アウタ側の外輪軌道面45及びアウタ側の内孔に対応する部分に旋削取り代130b、130cを形成すると共に、インナ側軌道肩部41の内周側に相当する部分に中間壁130dを形成する。
また、外輪部材30のアウタ側軌道肩部46及び境界アール面44に対応する部分には旋削取り代を設けることなく鍛造肌とする。
また、中間壁130dのアウタ側面は、外輪部材30のインナ側軌道肩部41の境界アール面44側の端縁に位置し、中間壁130dのアウタ側面とインナ側面との距離寸法(すなわち肉厚寸法)は、外輪部材30のインナ側軌道肩部41の軸方向の長さ寸法よりも大きく設定されている。例えば、外輪部材30のインナ側軌道肩部41の軸方向の長さ寸法は3mm程度あるいはそれ以上に設定される場合には、中間壁の肉厚寸法は5mm程度あるいはそれ以上に設定される。
【0025】
次に、前記した鍛造品130の中間壁130dは、図9に示すように、ポンチ等による孔明け加工によって打ち抜かれる。この際、打抜孔の孔径は外輪部材30のインナ側軌道肩部41の内径寸法よりも若干小さい。
その後、アウタ側軌道肩部46と境界アール面44の鍛造肌の表面がショットブラスト処理される。これによってアウタ側軌道肩部46と境界アール面44の鍛造肌の表面がショットブラスト処理が施された加工面をなす。
その後、図10に示すように、鍛造品130の各部の旋削取り代130a、130b、130cが旋削加工によって取り除かれ、インナ側の外輪軌道面40やアウタ側の外輪軌道面45等の研磨が必要な部分が研磨加工されて外輪部材30が製作される。
【0026】
前記したように、外輪部材30のアウタ側軌道肩部46及び境界アール面44の表面は、それぞれ鍛造肌の表面にショットブラスト処理が施された加工面をなすことによって、旋削加工する必要がない。
このため、アウタ側軌道肩部46及び境界アール面44の表面を旋削加工する分だけ鍛造素材の重量を軽減することが可能となると共に、ショットブラスト処理加工は、旋削加工と比べ、短時間で加工を行うことができるため、コスト低減に効果が大きい。
【0027】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。
【符号の説明】
【0028】
10 ハブホイール
15 ハブ軸
20 インナ側の内輪軌道面
25 アウタ側の内輪軌道面
30 外輪部材
40 インナ側の外輪軌道面
41 インナ側軌道肩部
44 境界アール面
45 アウタ側の外輪軌道面
46 アウタ側軌道肩部
50 インナ側列の玉
51 アウタ側列の玉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10