特許第5720320号(P5720320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720320
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】電動車
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/02 20060101AFI20150430BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20150430BHJP
   B60L 7/00 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   B60L7/02
   A61G5/04 502
   B60L7/00 C
   A61G5/04 503
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-52990(P2011-52990)
(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公開番号】特開2012-191747(P2012-191747A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】中野 陽二
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−244340(JP,A)
【文献】 特開2001−025101(JP,A)
【文献】 特開2001−198163(JP,A)
【文献】 特開2000−166025(JP,A)
【文献】 特開平06−054414(JP,A)
【文献】 特開2003−324807(JP,A)
【文献】 特開平07−087621(JP,A)
【文献】 特開平04−255402(JP,A)
【文献】 特開平08−172704(JP,A)
【文献】 特開2002−027605(JP,A)
【文献】 特開2003−219511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 7/02
A61G 5/04
B60L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁ブレーキ(B)を備えたモータ(M)と、電磁ブレーキ(B)開放用の開放スイッチ(S)と、操縦者が機体(1)の走行、停止操作をするアクセル(A)と、これらを制御する制御装置(C)を備え、前記開放スイッチ(S)をON操作することで電磁ブレーキ(B)を非制動状態に開放させて機体(1)の手押し走行を可能とする電動車において、機体(1)停止中の電磁ブレーキ(B)制動状態時に開放スイッチ(S)をON操作した際にのみ電磁ブレーキ(B)を開放させるとともに、開放スイッチ(S)がON状態の間は電磁ブレーキ(B)の開放状態を保持するよう制御し、更に、モータ(M)駆動電流を検出可能の駆動電流検出手段(2)を設け、電磁ブレーキ(B)開放前に駆動電流検出手段(2)が所定電流値(I)以上の駆動電流を検出している際には、電磁ブレーキ(B)の制動状態を維持するよう制御してなる電動車。
【請求項2】
電磁ブレーキ(B)を備えたモータ(M)と、電磁ブレーキ(B)開放用の開放スイッチ(S)と、操縦者が機体(1)の走行、停止操作をするアクセル(A)と、これらを制御する制御装置(C)を備え、前記開放スイッチ(S)をON操作することで電磁ブレーキ(B)を非制動状態に開放させて機体(1)の手押し走行を可能とする電動車において、機体(1)停止中の電磁ブレーキ(B)制動状態時に開放スイッチ(S)をON操作した際にのみ電磁ブレーキ(B)を開放させるとともに、開放スイッチ(S)がON状態の間は電磁ブレーキ(B)の開放状態を保持するよう制御し、更に、手押し走行時のモータ(M)回転方向を検出し、通電回路(3)をモータ(M)回転方向と同方向に切替える前後進切替手段と、モータ(M)の回転を検出して発電制動力を減少させる発電制動力減少手段と、モータ(M)駆動電流を検出可能の駆動電流検出手段(2)と、モータ(M)あるいはモータ(M)の通電回路(3)の異常発生時にその異常を検知し電磁ブレーキBを制動状態にして走行を停止させる異常検知停止手段(4)を設け、電磁ブレーキ(B)開放前に異常検知停止手段(4)が作動している時、且つ、駆動電流検出手段(2)の検出している駆動電流が所定電流値(I)未満の際には、前記異常検知停止手段(4)に優先して、前後進切替手段、及び発電制動力減少手段を作動させない状態で電磁ブレーキ(B)の開放を許可するよう制御してなる電動車。
【請求項3】
電磁ブレーキ(B)を備えたモータ(M)と、電磁ブレーキ(B)開放用の開放スイッチ(S)と、操縦者が機体(1)の走行、停止操作をするアクセル(A)と、これらを制御する制御装置(C)を備え、前記開放スイッチ(S)をON操作することで電磁ブレーキ(B)を非制動状態に開放させて機体(1)の手押し走行を可能とする電動車において、機体(1)停止中の電磁ブレーキ(B)制動状態時に開放スイッチ(S)をON操作した際にのみ電磁ブレーキ(B)を開放させるとともに、開放スイッチ(S)がON状態の間は電磁ブレーキ(B)の開放状態を保持するよう制御し、更に、走行中に電磁ブレーキ(B)開放スイッチ(S)がON状態になったことを操縦者に報知する報知手段(5)を設け、走行中での開放スイッチ(S)のON状態を無効にして走知状態を維持するとともに、走行中に開放スイッチ(S)がON状態の間は報知手段(5)を継続的に作動させるよう制御してなる電動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押しでの移動が可能な電動車に関するものであり、更に詳しくは、駆動用モータに備えた電磁ブレーキの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータの電磁ブレーキを開放させ、手押し移動可能な電動車が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−198163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータの電磁ブレーキを非制動状態に開放する開放スイッチを備えた電動車は、この開放スイッチやその回路がON状態で故障した場合に、意図せず電磁ブレーキが開放したり、走行状態から停止する際に電磁ブレーキが開放されたままの状態となって制動力が働かず、危険であるといった不都合があるものであった。本発明はこのような不都合を解消し、危険な状態にならない電動車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電磁ブレーキBを備えたモータMと、電磁ブレーキB開放用の開放スイッチSと、操縦者が機体1の走行、停止操作をするアクセルAと、これらを制御する制御装置Cを備え、前記開放スイッチSをON操作することで電磁ブレーキBを非制動状態に開放させて機体1の手押し走行を可能とする電動車において、機体1停止中の電磁ブレーキB制動状態時に開放スイッチSをON操作した際にのみ電磁ブレーキBを開放させるとともに、開放スイッチSがON状態の間は電磁ブレーキBの開放状態を保持するよう制御し、更に、モータM駆動電流を検出可能の駆動電流検出手段2を設け、電磁ブレーキB開放前に駆動電流検出手段2が所定電流値I以上の駆動電流を検出している際には、電磁ブレーキBの制動状態を維持するよう制御してなる電動車とする。
【0006】
【0007】
【0008】
又、手押し走行時のモータM回転方向を検出し、通電回路3をモータM回転方向と同方向に切替える前後進切替手段と、モータMの回転を検出して発電制動力を減少させる発電制動力減少手段と、モータM駆動電流を検出可能の駆動電流検出手段2と、モータMあるいはモータMの通電回路3の異常発生時にその異常を検知し電磁ブレーキBを制動状態にして走行を停止させる異常検知停止手段4を設け、電磁ブレーキB開放前に異常検知停止手段4が作動している時、且つ、駆動電流検出手段2の検出している駆動電流が所定電流値I未満の際には、前記異常検知停止手段4に優先して、前後進切替手段、及び発電制動力減少手段を作動させない状態で電磁ブレーキBの開放を許可するよう制御してなる電動車とする。
【0009】
又、走行中に電磁ブレーキB開放スイッチSがON状態になったことを操縦者に報知する報知手段5を設け、走行中での開放スイッチSのON状態を無効にして走行状態を維持するとともに、走行中に開放スイッチSがON状態の間は報知手段5を継続的に作動させるよう制御してなる電動車とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明は、機体1停止中の電磁ブレーキB制動状態時に開放スイッチSをON操作した際にのみ、すなわち開放スイッチSがOFF状態からON状態に変化した時にのみ、電磁ブレーキBを開放させるので、走行中に開放スイッチSがON状態で故障した場合であっても、通常の走行制御による走行状態を維持したまま走行することができ、故障状態のまま、例えば坂道で停止させようとしてアクセルAを戻した際にも電磁ブレーキBが作動して安全に停止させることができる。又、正常な走行状態から停止した後に開放スイッチSのON操作で一旦開放された電磁ブレーキBは開放スイッチSをON状態にしている間は開放状態を保持して容易に機体1の手押し移動を行わせることができる。
【0011】
更に、モータM駆動電流を検出可能の駆動電流検出手段2を設け、電磁ブレーキB開放前に駆動電流検出手段2が所定電流値I以上の駆動電流を検出している際には、電磁ブレーキBの制動状態を維持するよう制御してあるので、モータMの通電回路3に駆動電流が流れており、その状態で電磁ブレーキBを開放するとモータMが回って意図しない発進や走行をしてしまう状態であっても電磁ブレーキBが開放されず安全である。
【0012】
【0013】
請求項に記載の発明は、手押し走行時のモータM回転方向を検出し、通電回路3をモータM回転方向と同方向に切替える前後進切替手段と、モータMの回転を検出して発電制動力を減少させる発電制動力減少手段と、モータM駆動電流を検出可能の駆動電流検出手段2と、モータMあるいはモータMの通電回路3の異常発生時にその異常を検知し電磁ブレーキBを制動状態にして走行を停止させる異常検知停止手段4を設け、電磁ブレーキB開放前に異常検知停止手段4が作動している時、且つ、駆動電流検出手段2の検出している駆動電流が所定電流値I未満の際には、前記異常検知停止手段4に優先して、前後進切替手段、及び発電制動力減少手段を作動させない状態で電磁ブレーキBの開放を許可するよう制御してあるので、異常検知停止手段4の作動した異常状態での停止中であっても、モータMの駆動電流が所定電流値(I)未満(電流値ゼロも含む)であれば、開放スイッチSのON操作により電磁ブレーキBを開放させることができる。これは、例えば踏切内で異常停止した場合であっても開放スイッチSをON操作すれば電磁ブレーキBが開放されて手押し可能となり、踏切の外の安全な場所へ待避することができるというものである。又、異常停止している場合、且つ、駆動電流が所定電流値I未満の場合は、電磁ブレーキBを開放させても前後進切替手段、及び発電制動力減少手段は作動しない状態であるため、機体1の手押し抵抗が大きい場合もあるが、手押しは可能な状態であり、緊急時の手押し走行が可能である。又、前後進切替手段、及び発電制動力減少手段を作動させないので、異常の可能性の有るこれらの手段を作動させることによる意図しない発進や走行をすることがなく安全である。
【0014】
請求項に記載の発明は、走行中に電磁ブレーキB開放スイッチSがON状態になったことを操縦者に報知する報知手段5を設け、走行中での開放スイッチSのON状態を無効にして走行状態を維持するとともに、走行中に開放スイッチSがON状態の間は報知手段5を継続的に作動させるよう制御してあるので、操縦者に対し、開放スイッチSやその回路に故障乃至異常が発生していることを確実に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】制御装置のブロック図。
図2】本発明の実施例を示す電動車の側面図。
図3】本発明の実施例を示す電動車の平面図。
図4】開放スイッチ部の背面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図例は本発明を電動車椅子に実施したものである。この電動車椅子は機体1の前部に前輪10と後部には後輪11を有し、後輪11を、運転シート12下側のバッテリカバー13で覆われたモータMによって連続駆動して走行することができる。このバッテリカバー13内にはモータMを駆動するバッテリ14や走行を制御する制御装置Cを備え、該モータMには電磁ブレーキBを設けてある。前輪10は、ステアリングポスト15上のハンドル16によって操向可能であり、操縦者が機体1後部の運転シート12に座り、前方のハンドル16を握って操向乃至操作を行うことができ、バッテリカバー13とハンドルポスト15との間には運転シート12に座る操縦者が足を置くためのステップ9が形成されている。
【0017】
ハンドル16の中央部には操作パネル17を設け、この操作パネル17にはバッテリ14の残量や各部の異常内容、走行状態等を表示するパネル18、車速を任意に設定可能の速度ダイヤル19、前後進切替スイッチ20、ホーンスイッチ21、左右のウインカースイッチ22等が設けてある。操作パネル17の右側方部には平面視L字形状のアクセルAを設け、ハンドル16と共にアクセルAを握ることによって走行することができる。23は電源スイッチであり、この電源スイッチ23を1段階回すと電源が入り、更にもう一段階回すことで前照灯24が点灯する。
【0018】
図1は本発明の電動車椅子の入力手段及び制御手段の接続状態を示すブロック図であって、Cは中央演算装置としての制御装置(CPU)であり、制御装置Cは異常検知停止手段4、及び前後進切替手段、発電制動力減少手段を含み、電源スイッチ23を「入」操作することでバッテリ14の電流を制御及び駆動回路へ供給する構成である。25は速度指令信号発生器であって、具体的にはアクセルAの回動操作によってポテンショメータが回動し、その出力に応じた速度調整が可能である。走行停止時には、アクセルAから手を離すと弾発力によりニュートラル位置へ自動復帰され、速度指令信号器25から停止電圧が出力され、この指令に基づいて制御装置Cから徐々に駆動パルスを減少させ逆に制動パルスを増加させるスローストップ制御信号が出力され、電動車椅子は徐々に減速されると共に、停止指令電圧が出力されて一定時間後に電磁ブレーキBへの通電を断ち、モータ軸に制動力を付与し、電動車椅子を確実に停止させる。
【0019】
又、前後進切替スイッチ20を前進、又は後進へ切替えることで前進側リレースイッチ26又は後進側リレースイッチ27を介して前進側リレー28、又は後進側リレー29を接続し、モータMの回転方向を制御可能に構成してある。尚、これらの回路はリレー回路に限定するものではなく、トランジスタを用いた回路でも良い。30はメインリレースイッチであり、電源スイッチ23の「入」操作により励磁されてメインリレー31を接続し、駆動回路へバッテリ14電流を供給状態とする。
【0020】
32は駆動トランジスタであってトランジスタ駆動回路33にそのゲート側が接続されており、前述の速度指令信号発生器25の指令速度と後述のモータ回転センサ34で検出される実速度を制御装置Cへ入力して演算し、制御装置Cから出力される駆動パルスによって駆動制御され、モータMへ電流を供給し駆動する。35は制動トランジスタであって、同様にトランジスタ駆動回路33にそのゲートが接続されており、同じく制御装置Cから出力される制動パルスによって制御され、モータMに発電制動作用を与えるものである。又、両トランジスタ32及び35は直列に接続されており、その内部には逆バイアス時に作動するダイオード32a,35aが組込まれている。そして駆動トランジスタ32のドレン側は+24Vの電源側へ接続されており、制動トランジスタ35のソース側はアース側へ接続されている。モータ回転センサ34はモータ軸に取着のタコジェネで構成され、モータ軸周囲2ヶ所での回転パルス出力を検出することで、モータMの回転数と回転方向を検出可能に構成してある。Bは負作動の電磁ブレーキであって走行中は通電により制動を解除し、又、停止中はバネ力により復帰してモータ軸に制動力を加えるよう構成してある。36,37は電磁ブレーキB二段増幅用のトランジスタである。2は、モータMの駆動電流を検出する駆動電流検出手段、38はモータ温度センサ、39は制御回路温度センサ、40は外気温センサである。
【0021】
モータMの電磁ブレーキBを開放する開放スイッチSは運転シート12の背凭れの後側の操縦者が運転シート12に座った状態では操作困難な位置に設けてあり、手押し走行する場合には操縦者が機体1側方に立ち、片方の手で運転シート12の背凭れ後方から開放スイッチSを押しながら、もう片方の手でハンドル16を握って手押し走行を行うことができるものである。開放スイッチSをON操作することにより電源スイッチ23もON操作した時と同様の状態となり、制御装置C等の電源が確保された状態となるよう構成してもよく、又、例えば操作パネル17に設けた電源スイッチ23をONにした後でなければ開放スイッチSをON操作しても電磁ブレーキBが開放されないよう構成してもよい。
【0022】
次に本実施例の電動車椅子における手押し状態での制御について説明する。電源スイッチ23投入後、アクセルA操作を行った場合には通常の走行モードとなり、電源スイッチ23投入後、開放スイッチSをON操作すると手押しモードへ切替えられ、モータMの電磁ブレーキBが開放(非制動状態)される。開放スイッチSには、電磁ブレーキB開放用のリミットスイッチ41と電源投入用のリミットスイッチ42が設けてあり、図4に示すように開放スイッチSのプッシュロッド44をスプリング43の弾性力に抗して上方へ向け押し上げるとカム45も同様に上方へ押し上げられ、両リミットスイッチ41,42が作動して、制御装置C等の電源が投入されるとともに、モータMの電磁ブレーキBが開放されるよう構成してある。
【0023】
ここにおいて、本発明の電動車椅子は、機体1停止中の電磁ブレーキB制動状態時に開放スイッチSをON操作した際にのみ電磁ブレーキBを開放させるので走行中に開放スイッチSがON状態で故障した際に、通常の走行状態を維持したまま走行することができる。例えば前記故障時(走行中に開放スイッチSがON状態で故障)に坂道で停止しようとしてアクセルAを戻すと、通常の走行制御によって電磁ブレーキBは制動状態となり確実に、安全に機体1を停止させることができるとともに、停止後の停止中にも電磁ブレーキBは開放されることはなく、再びアクセルA操作を行えば通常の走行を行うことができる。又、故障なく正常に停止した後には、開放スイッチSをON操作すると電磁ブレーキBが開放されて手押しによる走行ができるようになり、開放スイッチSがON状態の間は電磁ブレーキBは開放状態を保持しているので、手押し走行を継続でき、開放スイッチSから手を離す(OFF状態にする)と電磁ブレーキBが制動状態となり、坂道であっても機体1を確実に停止させることができる。
【0024】
又、本発明の電動車椅子は、モータM駆動電流を検出する駆動電流検出手段2を設け、電磁ブレーキB開放前に駆動電流検出手段2が所定電流値I以上の駆動電流を検出している際には、開放スイッチSをON操作しても電磁ブレーキBの制動状態を維持し開放しないよう制御してある。これは、モータMの通電回路に何らかの原因で所定電流値I以上の駆動電流が流れていて、この状態で電磁ブレーキBを開放させるとモータMが駆動され、意図しない発進や走行をしてしまうような状態時に開放スイッチSをON操作した場合であっても、電磁ブレーキBを開放しないよう構成したものであり、暴走等を防ぐことができる。
【0025】
又、手押し走行時のモータM回転方向を検出し、通電回路3をモータM回転方向と同方向に切替える前後進切替手段と、モータMの回転を検出して発電制動力を減少させる発電制動力減少手段を設け、これらを電磁ブレーキB開放後に作動させるよう制御してあるので、停止中の安全な状態で電磁ブレーキBが開放された後の手押し走行開始直後に、前後進切替手段と発電制動力減少手段が作動し、軽い力で容易に手押し走行を行わせることができる。本発明における前後進切替手段は、手押し走行開始時にモータMの回転方向を検出し、通電回路をモータM回転方向と同方向に切替えるべく前進側リレー28と後進側リレー29を切替えることによって、手押し開始時には若干重く感じるが手押し走行が可能な状態となり、又モータMの回転をモータ回転センサ34が手押しによるモータM回転を検出すると発電制動力減少手段が速やかに発電制動力を減少させて、違和感なしに軽い力で手押し走行が行えるものである。
【0026】
本発明の電動車椅子には、前述の駆動電流検出手段2と、モータMあるいはモータMの通電回路3に異常が発生している場合(走行を停止させなければならない故障や緊急事態発生時)には、その異常を検知しモータMの駆動をやめ、電磁ブレーキBを制動状態にして走行を停止させる異常検知停止手段4を設けてあり、電磁ブレーキB開放前に異常検知停止手段4が作動している時、且つ、駆動電流検出手段2の検出している駆動電流が所定電流値I未満の際には、異常検知停止手段4によって制動状態となっている電磁ブレーキBの制御に優先して、前後進切替手段、及び発電制動力減少手段を作動させない状態で、すなわち、停止時の通電回路3のままの状態で、電磁ブレーキBの開放を許可するよう制御してあるので、電磁ブレーキB開放前の状態で異常停止している場合であっても、駆動電流が所定電流値I未満の際には、電磁ブレーキBを開放させることができる。この時、前後進切替手段、及び発電制動力手段を作動させない状態で電磁ブレーキBの開放を許可するので、手押し走行の抵抗が大きく重い状態の場合があるが、踏切内で異常停止した場合等のどうしても手押し走行による脱出をしなければならない緊急事態の際には手押し走行が可能であり、又、前後進切替手段、及び発電制動力減少手段を作動させないので、異常の可能性のあるこれらの手段を作動させることによる意図しない発進や走行をすることがなく安全である。尚、手押し走行の抵抗が大きい状態とは、例えば前進側リレー28が図1に示す状態とは逆の接点へ切替わっている場合は、前進方向と後進方向どちらに手押ししても重い状態となる。又、例えば両リレー28,29が前進方向、又は後進方向に切替わっている場合には、その逆方向へ手押しした場合に重く、同方向へ手押しした場合には軽くなる。
【0027】
又、本発明の電動車椅子には、走行中に電磁ブレーキB開放スイッチSがON状態になったことを操縦者に報知する報知手段5を設け、走行中での開放スイッチSのON状態を無効にして走行状態を維持するとともに、走行中に開放スイッチSがON状態の間は報知手段5を継続的に作動させるよう制御してある。これにより、操縦者に対して開放スイッチSやその回路に故障乃至異常が発生していることを確実に報知し注意喚起することができるものである。
【符号の説明】
【0028】
1 機体
2 駆動電流検出手段
3 通電回路
4 異常検知停止手段
5 報知手段
A アクセル
B 電磁ブレーキ
C 制御装置
I 所定電流値
M モータ
S 開放スイッチ
図1
図2
図3
図4