【実施例】
【0037】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
なお、実施例中の数値は以下のような方法で測定した値である。
【0038】
(厚み)
荷重15.3gf/cm
2の圧力を加えた時の値をシックネスゲージにて測定した。
(通気抵抗)
試料大きさφ75mm、有効濾過面積φ50.5mm、風速10cm/sの条件下で測定した。
(目付)
200mm×200mmの試料を使用し、80℃の恒温槽中に30分放置後、デシケータ(乾燥剤:シリカゲル)中で30分放置する。その後取り出し、感量10mgの化学天秤で測定して、m
2当りの重量に換算した。
(平均粒子径)
活性炭等の吸着剤粒子に関してはJIS K 1474記載の粒度分布測定法に従い測定実施し、熱可塑性樹脂に関してはコールター法により測定した粒径で平均粒径を算出した。
(トルエン吸着性能)
80ppmのトルエンガスを用いて線速16cm/sにおいて濾材の上下流の濃度をそれぞれガステック製検知管で測定し、上流側のガス濃度から下流側のガス濃度を減じた値を上流側のガス濃度で除した値の百分率で示した。測定は6cm×6cm角のサンプルで実施し、ガスの負荷開始から1分後の除去率のデータをトルエン吸着性能とした。
(抗菌性)
JIS L 1902 繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果 定量試験 菌液吸収法にて実施した。菌種は黄色ぶどう球菌とし、静菌活性値が2.2以上の場合に抗菌性ありと判定した。
(ダスト視認性)
試験サンプルの上流層側をダスト負荷面として、風速30cm/sにてJIS Z 8901記載のJIS15種粉体を供給濃度0.5g/m
3にて1分負荷した。粉塵負荷前後の上流層側の色調を比較し、差異のあるものを視認性良好、差異のないものを視認性不良とした。
(耐熱性)
試験サンプルを120℃のオーブンにて36時間放置した後、先述の方法にて抗菌性を評価し、抗菌性を維持しているものは耐熱性ありとした。
(プリーツ加工時の濾材間接着性)
レシプロ折式のプリーツ加工機(ホップテック株式会社製)にてプリーツ折り高さ20mm、折幅200mmm、折速度30山/分にてプリーツ加工を実施後、30山でカットしたプリーツブロックを100℃で3分間加熱し熱セット処理を実施した。常温まで冷却後、プリーツブロックを開いた際、濾材間が接着しているものを濾材間接着ありと、無いものを濾材間接着無しとした。
【0039】
[実施例1]
レーヨン繊維1.7dtex×5mmが24%、ポリプロピレン(芯)/ポリエチレン(鞘)の芯鞘繊維3dtex×10mmが39%、ポリビニルアルコール繊維1.1dtex×3mmが13%、ビニロン繊維2.2dtex×5mmが24%からなる目付16g/m
2、厚み0.15mmのシートを湿式抄紙法にて作成した。本シートを酸化銀が0.1g/m
2、ピグメントグリーン7が0.05g/m
2、アクリルバインダー(ガラス転移点60℃)2g/m
2となるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。全目付18.15g/m
2、厚み0.16mmであった。
次に、平均粒径200μm、JIS K 1474法によって測定したトルエン吸着能が470mg/gである粒状活性炭を60重量部、レーヨン繊維9dtex×8mmを10重量部、レーヨン繊維4.4dtex×4mmを6重量部、ポリビニルアルコール繊維1.1dtex×3mmを14重量部、ビニロン繊維2.2dtex×5mmを10重量部計量し、パルパーで水中に分散して湿式抄紙用原液を調製した。これを長網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後前記上流側カバー層を活性炭リッチ層側に積層した後、プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥して所望の空気清浄用濾材を得た。この濾材は抄紙スクリーン上で粒状活性炭とレーヨン(比重約1.5)、ポリビニルアルコール(比重約1.3)の比重差により、沈降速度の差異が生じ、その結果活性炭リッチ層と支持繊維リッチ層からなっている。この空気清浄用濾材は目付105g/m
2、厚み0.4mm、通気抵抗10Pa、トルエン吸着性能は75%であった。上流層側の色調は活性炭の透けがほとんど無く、鮮やかな緑色であった。
【0040】
[実施例2]
ポリプロピレン繊維2.2dtex×51mmをカードにかけウェッブを作製後、水流絡合法にてシート化し、目付40g/m
2、厚み0.5mmのスパンレース不織布を得た。本不織布を酸化銀が0.01g/m
2、ピグメントグリーン7が0.04g/m
2、アクリルバインダー(ガラス転移点60℃)10g/m
2となるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。全目付50.05g/m
2、厚み0.55mm、色調は鮮やかな緑色であった。
次に平均粒径400μm、JIS K 1474法によって測定したトルエン吸着能が35重量%であるヤシガラ系粒状活性炭を1kg、熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209(エチレンーアクリル酸共重合、平均粒径10μm、MI 9g/10min、融点105℃)を0.1kg秤量し、約10分間撹拌混合した。この混合粉粒体を前記上流側カバー層上に総量60g/m
2(活性炭55g/m
2相当)になるように散布し、更にスパンボンド法により作成したポリエステル長繊維不織布2.2dtex、目付20g/m
2、厚み0.18mm(東洋紡績株式会社製エクーレ(登録商標)6201A)を上から重ね合わせテフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.3mm、圧力100kPaに設定し120℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付130g/m
2、厚み0.6mm、通気抵抗8Pa、トルエン吸着性能は82%であった。上流層側の色調は活性炭の透けがほとんど無く、鮮やかな緑色であった。
【0041】
[実施例3]
5.5dtexのポリエステル繊維からなる25g/m
2、厚み0.2mmのスパンボンド法不織布を酸化銀が0.01g/m
2、ピグメントグリーン7が0.05g/m
2、アクリルバインダー(ガラス転移点60℃)10g/m
2となるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。全目付35.05g/m
2、厚み0.2mm、色調は鮮やかな緑色であった。
次に平均粒径400μm、JIS K 1474法によって測定したトルエン吸着能が35重量%であるヤシガラ系粒状活性炭にスルファニル酸10重量%を添着しスルファニル酸添着炭を得た。本スルファニル酸添着炭1kgと、熱可塑性粉末樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(平均粒径200μm、MI 12g/10min、融点97℃)を0.3kg秤量し、約10分間撹拌混合した。この混合粉粒体を前記上流側カバー層上に総量100g/m
2(活性炭77g/m
2相当)になるように散布し、更にスパンボンド法により作成したポリエステル長繊維不織布2.2dtex、目付20g/m
2、厚み0.18mm(東洋紡績株式会社製エクーレ(登録商標)6201A)を上から重ね合わせテフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.2mm、圧力100kPaに設定し140℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付155g/m
2、厚み0.5mm、通気抵抗7Pa、トルエン吸着性能は80%であった。上流層側の色調は活性炭の透けがほとんど無く、鮮やかな緑色であった。
【0042】
[比較例1]
実施例1の湿式抄紙法シートに薬品添着を行わない以外は、実施例1と同様に活性炭層と貼り合わせ空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付103g/m
2、厚み0.5mm、通気抵抗9.5Pa、トルエン吸着性能は74%であった。色調は上流層から活性炭色が透けており、グレー色であった。
【0043】
[比較例2]
実施例2のスパンレース不織布に薬品添着を行わない以外は、実施例2と同様に活性炭層と貼り合わせ空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付120g/m
2、厚み0.6mm、通気抵抗8Pa、トルエン吸着性能は84%であった。色調は上流層から活性炭色が透けており、グレー色であった。
【0044】
[比較例3]
レーヨン繊維1.7dtex×5mmが24%、ポリプロピレン(芯)/ポリエチレン(鞘)の芯鞘繊維3dtex×10mmが39%、ポリビニルアルコール繊維1.1dtex×3mmが13%、ビニロン繊維2.2dtex×5mmが24%からなる目付16g/m
2、厚み0.15mmのシートを湿式抄紙法にて作成した。本シートをピグメントグリーン7が0.05g/m
2、エチレン−酢酸ビニル共重合体バインダー(ガラス転移点3℃)2g/m
2となるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。全目付18.05g/m
2、厚み0.16mm、色調は鮮やかな緑色であった。
次に、実施例1と同様に湿式抄紙法による活性炭層と上流側カバー層を貼り合わせ空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付105g/m
2、厚み0.4mm、通気抵抗9.5Pa、トルエン吸着性能は74%であった。上流層側の色調は活性炭の透けがほとんど無く、鮮やかな緑色であった。
【0045】
[比較例4]
ポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)の芯鞘繊維3.3dtex×51mmを50重量%と、ポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)の芯鞘繊維2.8dtex×51mmを50重量%とを混繊し、カードにかけウェッブを作製後、サーマルボンド法にてシート化し、目付27g/m
2、厚み0.5mmのサーマルボンド不織布を得た。本不織布を酸化銀が0.01g/m
2、ピグメントグリーン7が0.04g/m
2、アクリルバインダー(ガラス転移点60℃)10g/m
2となるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。全目付37.04g/m
2、厚み0.55mm、色調は鮮やかな緑色であった。
次に実施例2と同様に乾式シート化法にて得られたサーマルボンド不織布と活性炭層を貼り合わせ空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付117g/m
2、厚み0.6mm、通気抵抗7Pa、トルエン吸着性能は80%であった。上流層側の色調は活性炭の透けがほとんど無く、鮮やかな緑色であった。
【0046】
以上、実施例および比較例にて得られた空気清浄用濾材についてダスト視認性、抗菌性、加熱時の性能低下性、プリーツ加工時の濾材接着性の評価を実施した。実施した結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1〜3では上流層からの活性炭透けが少ないためにダスト視認性が良好で、抗菌性を有している。さらに加熱時の性能劣化も無く、プリーツ加工時の濾材間の接着も無いために非常に耐久性、加工性に優れた濾材であることがわかる。一方、比較例1、2ではダストの視認性に劣り、抗菌性を有していない。また、比較例3では酸化銀を含んでいないため、抗菌性が不十分であり、比較例4ではサーマルボンド不織布であるために抗菌性が発現していない。