(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2D画像データと3D画像データとが混在した画像データにおいて、その画像データが2D画像データから3D画像データに切り換わる切り換わり点を検出する切換点検出部と、
前記切換点検出部が検出した切り換わり点以後の所定の3D画像データにおける左眼用画像データと右眼用画像データとの間の視差量を導出する視差量導出部と、
前記視差量導出部が導出した視差量が所定値を超えているか否かを判定する視差量判定部と、
前記視差量判定部が、前記視差量導出部が導出した視差量が所定値を超えていると判定をした場合に、前記切換点検出部が検出した切り換わり点より前の所定の2D画像データを、視差量が前記切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換する画像変換部とを有し、
前記視差量判定部が前記視差量導出部の導出した視差量が所定値を超えていると判定をした3D画像データにおける画像領域に対応する画像領域を、前記切換点検出部が検出した切り換わり点の前の所定時間の2D画像データから特定する領域特定部をさらに備え、
前記画像変換部は、前記領域特定部が特定した2D画像データにおける画像領域に含まれる被写体画像データを、視差量が前記切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換することを特徴とする画像処理装置。
前記画像変換部は、前記切換点検出部が検出した切り換わり点から所定時間前までの2D画像データを、視差量が前記切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
2D画像データと3D画像データとが混在した画像データにおいて、その画像データが2D画像データから3D画像データに切り換わる切り換わり点を検出する切換点検出ステップと、
前記切換点検出ステップで検出された切り換わり点以後の所定の3D画像データにおける左眼用画像と右眼用画像との間の視差量を導出する視差量導出ステップと、
前記視差量導出ステップで導出された視差量が所定値を超えているか否かを判定する視差量判定ステップと、
前記視差量判定ステップにおいて、前記視差量導出ステップで導出された視差量が所定値を超えていると判定がなされた場合に、前記切換点検出ステップで検出された切り換わり点より前の所定の2D画像データを、視差量が前記切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換する画像変換ステップとからなり、
前記視差量判定ステップが前記視差量導出ステップの導出した視差量が所定値を超えていると判定をした3D画像データにおける画像領域に対応する画像領域を、前記切換点検出ステップが検出した切り換わり点の前の所定時間の2D画像データから特定する領域特定ステップをさらに備え、
前記画像変換ステップは、前記領域特定ステップが特定した2D画像データにおける画像領域に含まれる被写体画像データを、視差量が前記切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換することを特徴とする画像処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムによれば、2D画像データと3D画像データとが混在した画像データを出力する際に、2D画像データから3D画像データへの切り換わり点を検出し、切り換わり点より前の所定の2D画像データを視差が切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換することで、観察者を3D画像の観察に慣れさせ、その負担を減少させることができる。
以下に図面を参照しながら、本発明に係る画像処理装置及び画像処理方法の好適な実施形態を説明する。かかる実施形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
(画像処理装置1)
本実施形態の画像処理装置1は、2D画像データと3D画像データとが混在した画像データを出力することができ、この混在した画像データを出力する際に、2D画像データから3D画像データへの切り換わり点を検出し、切り換わり点より前の所定の2D画像データを視差が切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換することができる。以下、このような画像処理装置1について詳述する。
【0024】
図1は、画像処理装置1の概略的な内部構成を示すブロック図である。
図1では、処理信号が実線で、データの流れが破線で示されている。
【0025】
図1に示すように、画像処理装置1は、画像データ入力部101、一時記憶部102、画像変換部103、画像データ出力部104、操作部110、及び中央制御部200を含んで構成される。
【0026】
中央制御部200は、CPU(Central Processing Unit)、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)、及びワークエリアとしてのRAM(Random Access Memory)等を含む半導体集積回路により構成され、画像データの入出力処理、2D画像データから3D画像データへの切り替わり点の検出処理、3D画像の視差量の導出及び判定処理、及び2D画像データの3D画像データへの変換処理等を統括的に制御する。
【0027】
操作部110は、電源スイッチ、操作キー、十字キー、ジョイスティック等で構成され、ユーザの操作入力を受付ける。操作部110は、3D画像処理装置の本体に設けてもよいし、本体と赤外線通信等を行うリモコン等でもよい。
【0028】
画像データ入力部101には、例えばDVD、BD(Blu-ray Disc)、若しくはフラッシュメモリ等の各種記録媒体、デジタルテレビチューナ、又は外部の撮像装置(デジタルカメラ)等から、2D画像データ及び3D画像データが混在した画像データが入力される。
【0029】
画像データ入力部101は、例えばHDMI(High-Definition Multimedia Interface)端子、USB(Universal Serial Bus)端子、IEEE 1394規格に準拠した各種入力端子等で構成される。
【0030】
画像データ入力部101に入力される画像データは、少なくとも2D画像データから3D画像データへの切り換わり点(以下、単に「切り換わり点」という。)が特定されるための、そのシーン(場面)が2D画像のシーンであるか3D画像のシーンであるかを示す情報である制御情報が含まれている。
【0031】
画像データ入力部101に入力された画像データは、一時記憶部102に送られ、その一時記憶部102内で一時的に記憶される。一時記憶部102は、例えばEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable PROM)、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、又はHDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体で構成される。
【0032】
一時記憶部102に一時記憶された画像データは、画像変換部103が、後述する切り換わり点より前の所定の2D画像データを視差が切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換する画像処理を行った場合はその処理を施した3D画像データとして、当該画像処理を行わなかった場合は一時記憶された2D画像データ又は3D画像データとして、画像データ出力部104により所定の復号処理を施されて出力される。
【0033】
画像データ出力部104は、画像データ入力部101と同様に、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)端子、USB(Universal Serial Bus)端子、IEEE 1394規格に準拠した各種出力端子等で構成される。
【0034】
上記中央制御部200はまた、2D画像データから3D画像データへの切り換わり点の検出を行う切換点検出部201、3D画像データの視差量を導出する視差量導出部202、導出された視差量が所定の大きさを上回るか否かを判定する視差量判定部203、画像中の被写体を特定する被写体特定部204、及び画像中の所定の領域を特定する領域特定部205として機能する。各部の機能について、以下に説明する。
【0035】
切換点検出部201は、一時記憶部102に一時記憶された画像データから、出力されることになる画像データが2D画像データから3D画像データへ切り換わる時点を切り換わり点として検出する。
【0036】
画像データは上述の通り、各シーンが2D画像のシーンであるか3D画像のシーンであるかを示す制御情報を有している。切換点検出部201は、この制御情報に基づき画像データが2D画像データから3D画像データへ切り換わる時点を切り換わり点として検出する。
【0037】
切換点検出部201はまた、画像データに上記制御情報がない場合、2D画像データ及び3D画像データ各々のデータ構造の相違から、2D画像データから3D画像データへ切り換わる切り換わり点を検出することもできる。
【0038】
視差量導出部202は、3D画像データにおける左眼用画像と右眼用画像との間の視差量を導出する。
【0039】
視差量導出部202による視差量の導出は既知の様々な手法を採用することができるが、例えば視差量導出部202は、左眼用画像のフレーム及び右眼用画像のフレームに対しパターンマッチングを実行し、両フレーム間における視差量を導出する。ここでフレームとは、左眼用画像データ及び右眼用画像データ各々の画像データを構成する時系列に並べられた静止画データをいう。
【0040】
視差量導出部202によるパターンマッチングに基づく視差量の導出について
図2を参照して説明する。
図2は、撮像装置1の視差量導出部202による左眼用画像及び右眼用画像の視差量の導出について説明するための概念図である。
【0041】
視差量導出部202は、左眼用画像のフレーム及び右眼用画像のフレームの2つのフレームのうち一方のフレームを所定の大きさの領域のブロックに分割する。
図2(a)では、1,920画素×1,080画素の左眼用画像のフレームL200を、240画素×135画素のブロックL201に計64分割している。
【0042】
視差量導出部202は、分割した画像のフレームの各ブロックに関し、他方の画像のフレームの中から同一の大きさで相関値の高いブロックを抽出する。
図2(b)では、
図2(a)のブロックL202(図中にハッチングで示したブロック)と同一の大きさで相関値の高いブロックとして、右眼用画像のフレームからR202が抽出されている。
【0043】
視差量導出部202は、分割した画像のフレームのブロックと、そのブロックに対応する他方の画像のフレームのブロックとの位置関係から両者の差分ベクトル(以下、「視差ベクトル」という。)を算出する。
図2では、左眼用画像L200中のブロックL202と、対応する右眼用画像中のブロックR202から、視差ベクトル203が算出されている。
【0044】
上記のようなパターンマッチングの手法としては、例えば、輝度値の差分をとるSAD(Sum of Absolute Difference)、差分を2乗して用いるSSD(Sum of Squared intensity Difference)や、各画素の輝度値から平均値を引いた分散値の類似度をとるNCC(Normalized Cross Correlation)等、既存の様々な手法を採用することが可能である。
【0045】
ここで、算出された視差ベクトルは、原則として水平方向にのみ生じるため、その方向は単純に正負の符号(+又は−)で表すことができる。ここでは、被写体画像が観察者から見てディスプレイ面に対し前方に飛び出しているように知覚される場合の視差ベクトルの方向を正(+)とし、被写体画像が観察者から見てディスプレイ面に対し後方に引き込んでいるように知覚される場合の視差ベクトルの方向を負(−)とする。
【0046】
以上のようにして、視差量導出部202は画像のフレームを格子状に分割した複数のブロックから視差ベクトルを算出する。さらに視差量導出部202は、左眼用画像データ及び右眼用画像データの空間周波数等にかかるデータから、各画像からオブジェクト(被写体画像)データを特定し、特定したオブジェクト毎の視差ベクトルを算出する。
【0047】
また、視差量導出部202は、左眼用画像データ及び右眼用画像データの空間周波数等からオブジェクトを特定し、特定したオブジェクトごとに直接パターンマッチングを実行して視差ベクトルを算出するようにしてもよい。
【0048】
視差量導出部202は、上記のようにして算出した視差ベクトルの大きさを、左眼用画像と右眼用画像との間の視差量として導出する。
【0049】
図1に戻り、視差量判定部203は、3D画像における右眼用画像と左眼用画像との間の視差量が所定の大きさを上回っているかどうかを判定する。
ここで先ず、
図3を参照して、ディスプレイ等の表示面に表示される左眼用画像中の被写体画像と右眼用画像中の被写体画像との間の視差と、その被写体画像の飛び出し又は引き込みの度合い等を説明する。
図3は左眼用画像中の被写体画像と右眼用画像中の被写体画像との間の視差と、その被写体画像の表示面に対する前方への飛び出し又は後方への引き込み等の関係を示す概念図である。
【0050】
図3において、画像データ出力部104から出力された、左眼用画像データ及び右眼用画像データを表示する外部ディスプレイ装置等の表示面をDP30、観察者の左眼をLE30、観察者の右眼をRE30、及び観察者と表示面DP30との間の距離をDとする。
【0051】
(前方へ飛び出しているように知覚される場合)
図3(a)において、表示面DP30上の左眼用画像中の被写体画像の位置をL
f、右眼用画像中の被写体画像の位置をR
fとすると、観察者が左眼LE30でL
f、右眼RE30でR
fを観察した場合、被写体画像はP
fの位置で結像する。これにより観察者からは被写体画像が表示面DP30に対して前方に飛び出しているかのように知覚されることになる。
【0052】
ここで、観察者の左眼LE30と右眼RE30の距離をE、像L
fとR
fの視差量をV
fとすると、表示面DP30から結像位置までの距離Z
fは以下の式(1)の通りとなる。
【0053】
(E+V
f)Z
f=D・V
f ・・・(1)
【0054】
ここで、観察者は被写体画像を表示面D30とは異なる位置P
fで知覚することになる。一方で、観察者の目のピントは表示面DP30にあっている。従って、この両者の乖離が大きいと、観察者の目に負担を与えたり、観察者に不快感を引き起こしたりするおそれがある。
【0055】
上記観察者の左眼LE30と右眼RE30の距離Eを一般的な人の瞳孔間隔である6.5cmとし、上記観察者から表示面DP30までの視聴距離Dを標準観視距離である表示面の長辺の3倍距離とした場合に、観察者の眼に負担をかけず、快適に3D画像として認識できる左眼用画像と右眼用画像との間の視差量として、例えば表示面の短辺(幅)の2.9%(視差角にして約1度)以下とすることが望ましい旨が報告されている(「人に優しい3D普及のための3DC安全ガイドライン」 3Dコンソーシアム安全ガイドライン部会発行 2010年4月20日改訂版)。
【0056】
そこで、視差量判定部203は、V
fが以下の式(2)で表される閾値VS
fを上回る場合に、前方への飛び出し方向の、すなわち正の方向の視差ベクトルの視差量が観察者の目に負担をかける可能性がある大きさになっていると判定する。
【0057】
VS
f=0.029×DW・・・(2)
【0058】
ここで、上記表示面の幅DWには、操作部110からユーザが所有しているTVディスプレイ等の外部モニタの幅の大きさが入力され、その大きさの値を採用する。また、操作部110から、事前にその値や閾値VS
fを調整することでさらに好みの値として変更することができるようにしてもよい。
【0059】
(表示面上にあるかのように知覚される場合)
図3(b)において、表示面DP30上の左眼用画像中の被写体の位置と、右眼用画像中の被写体の位置が同一となった場合、被写体画像は表示面D30上のP
cの位置で結像する。これにより観察者からは被写体画像が表示面DP30上にあるかのように知覚されることになる。
【0060】
(後方へ引き込んでいるかのように知覚される場合)
図3(c)において、表示面DP30上の左眼用画像中の被写体画像の位置をL
b、右眼用画像中の被写体画像の位置をR
bとすると、観察者が左眼LE30でL
b、右眼RE30でR
bを観察した場合、被写体はP
bの位置で結像する。これにより観察者からは被写体画像が表示面DP30に対して後方に引き込んでいるかのように知覚されることになる。
【0061】
ここで、観察者の左眼LE30と右眼RE30の距離をE、像L
bとR
bの視差量をV
bとすると、表示面DP30から結像位置までの距離Z
bは以下の式(3)の通りとなる。
【0062】
(E−V
b)Z
b=D・V
b ・・・(3)
【0063】
ここで、被写体画像が後方に引き込んでいるかのように知覚される場合においても、観察者が被写体画像を表示面D30とは異なる位置P
bで知覚することになるのは、前方に飛び出しているかのように知覚される場合と同様である。従って、前方に飛び出しているかのように知覚される場合と同様に、観察者の目に負担を与えたり、観察者に不快感を引き起こしたりするおそれがある。
【0064】
そこで、視差量判定部203は、V
bが以下の式(4)で表される閾値VS
bを上回る場合に、後方への引き込み方向の、すなわち負の方向の視差ベクトルの視差が観察者の目に負担をかける可能性がある大きさになっていると判定する。
【0065】
VS
b=0.029×DW・・・(4)
【0066】
ここで、上記表示面の幅DWには、操作部110からユーザが所有しているTVディスプレイ等の外部モニタの幅の大きさが入力され、その大きさの値を採用するのは、上記前方に飛び出しているかのように知覚される場合と同様である。また、ユーザが操作部110を使用して、事前にその値や閾値VS
bを調整することでさらに好みの値として変更することができるようにしてもよく、その値を前方に飛び出しているかのように知覚される場合と異なる値に設定してもよい。
【0067】
また、表示面から後方に引き込んでいるかのように知覚される3D画像では、表示面上における水平方向の視差が5cmを超えないようにすることが望ましい旨が方向されている(「人に優しい3D普及のための3DC安全ガイドライン」 3Dコンソーシアム安全ガイドライン部会発行 2010年4月20日改訂版)。人の両眼は外側には開かないことから、両眼の瞳孔間隔以上に離れた被写体を左眼及び右眼でそれぞれ独立して観察することは、観察者の目により大きな負担をかけるおそれがあるためである。
【0068】
そこで、上記式(4)で導き出されるVS
bを5cmに設定しても良い。VS
bが5cm以上かどうかの判定及び、5cmとする設定は、予め設定又は入力されているDWの値から5cm相当のピクセル数を算出することで行われる。
【0069】
以上のようにして、視差量判定部203は、3D画像における左眼用画像と右眼用画像との間の視差量が、観察者の目に負担をかける可能性のある所定の大きさを上回るか否かの判定を行う。
【0070】
ここで、視差量判定部203は、切換点検出部201が2D画像データから3D画像データへの切り換わり点を検出した、その時点における3D画像データに関し導出された視差量の判定を行なう。または、切り替わり点から所定の時点まで(例えば、3秒後の時点)の3D画像データに関し導出された視差量の判定を継続することもできる。
【0071】
図1に戻り、画像変換部103は、導出された視差量が所定の大きさを上回っていると判定された場合に、切り換わり点より前の所定の2D画像データを視差量が切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換する処理を行う。画像変換部103によるこの処理について、以下に説明する。
【0072】
画像変換部103は、予め記録している複数の奥行き感を有する画像のモデル(以下、「基本奥行きモデル」という。)及び2D画像データの輝度信号の高域成分に基づいて、画像の飛び出し及び引き込みに関する奥行き推定データを生成し、その奥行き推定データに基づき2D画像データから左眼用画像データ及び右眼用画像データを生成して、2D画像データを3D画像データに変換する。
【0073】
基本奥行きモデルとして、
図4に例示した3モデルが中央制御部200のROM又は画像処理装置1の図示しない記録部に記録されている。
図4(a)に示した基本奥行きモデルaは、球面状の凹面による奥行きモデルである。
図4(b)に示した基本奥行きモデルbは、基本奥行きモデルaの上部を球面状ではなくアーチ型の円筒面に置き換えたもので、上部を円筒面とし下部を凹面としたモデルである。
図4(c)に示した基本奥行きモデルcは、上部を平面、下部をその平面から連続し、下に向かうほど手前側に向かう円筒面状をしたもので、上部を平面とし下部を円筒面としたモデルである。
【0074】
画像変換部103は、2D画像データの輝度信号の高域成分を算出する。そして、算出された値から上記3種類の基本奥行きモデルの合成比率を決定し、その合成比率から奥行き推定データを生成する。
【0075】
次に、画像変換部103は、この奥行き推定データをもとに元の2D画像データとは別の視点(左眼用又は右眼用)の2D画像データを生成する。すなわち奥行き推定データに基づいて、元の2D画像のテクスチャを左方向ないし右方向にシフトさせて配置していき、元の2D画像に対して視差をもった新たな2D画像を生成する。そして、この新たな2D画像に係る画像データを別の視点の2D画像データとする。
【0076】
この元の2D画像データ及び新たに生成された別の視点の2D画像データを、左眼用画像データないし右眼用画像データとすることで、2D画像データを3D画像に変換することができる。
【0077】
ここで、画像変換部103は、2D画像全体のテクスチャを奥行き推定データに基づいてシフトさせることもできるし、特定の被写体画像のテクスチャのみを奥行き推定データに基づいてシフトさせることもできる。
【0078】
画像変換部103は、上記の手法以外にも、単純に元の2D画像を右方向ないし左方向にシフトさせて別の視点の2D画像データを生成してもよい。上述した2D画像データの3D画像データへの変換の手法は例示であり、他の既知の手法等を採用することもできる。
【0079】
このとき、画像変換部103は、元の2D画像データをその時点における上記奥行き推定データに基づく視差量を有する3D画像にいきなり変換するのではなく、新たに生成された別の視点の2D画像データとの間の視差量が所定時間かけて奥行き推定データの視差量の大きさに到達するように、上記元の2D画像のテクスチャを左方向ないし右方向にシフトさせた配置を順次行っていく。
【0080】
以上のようにすることで、画像変換部103は、切換点検出部201が切り換わり点を検出してから所定時間だけ前の時点(例えば3秒前の時点)から切り替わり点の直前に至るまで、元の2D画像データと新たに生成された別の視点の2D画像データとの間の視差量が徐々に増加し、切り換わり点の直前で奥行き推定データに基づく視差を有する3D画像に到達するように順次変換していくことができる。
【0081】
ここで、画像変換部103が上述の変換処理を行う際に、被写体特定部204が特定した被写体画像、又は領域特定部205が特定した特定の画像領域に含まれる被写体画像についてのみ、視差量を徐々に増加させることができる。
図1の被写体特定部204及び領域特定部205それぞれの機能について、以下に説明する。
【0082】
被写体特定部204は、画像変換部103が3D画像に変換する2D画像中の被写体画像のなかから、視差量を徐々に増加させる被写体画像を特定する。
【0083】
この被写体特定部204は、まず、切換点検出部201が検出した切り換わり点の直前若しくは所定時間前の2D画像データ、及び切り換わり点若しくは所定時間後の3D画像データを比較し、双方に同じ被写体画像データがあった場合に2D画像データからその被写体画像データを特定する。
【0084】
この特定は、既知の被写体認識の技術に基づき実施される。例えば、既知の顔検出等の技術により2D画像データ中の被写体の顔画像データの特徴値、及び3D画像データ中の被写体の顔画像データの特徴値を算出し比較する。そして、それらの特徴値が所定の類似の範囲内にある場合には、切り換わり点の直前若しくは所定時間前の2D画像データ、及び切り換わり点若しくは所定時間後の3D画像データで同じ人物が被写体画像として存在するとして、2D画像データからその人物の画像データを特定する。
【0085】
そして、特定された被写体画像データに対応する3D画像データ中の被写体画像データが、視差量判定部203により所定の視差量を上回っていると判定さていた場合には、被写体特定部204は抽出された被写体画像データに係る被写体画像を、視差量を徐々に増加させる対象として特定する。
【0086】
画像変換部103は、この特定された被写体画像が所定時間かけて所定の視差量となるように、上述の2D画像データから3D画像データへの変換を実施する。
【0087】
2D画像データから3D画像データに切り換わってすぐのタイミングで、特定の被写体画像が過度に飛び出している、又は引き込んでいる画像として知覚されると、観察者の負担となる可能性がある。被写体特定部204が、上記の被写体の特定の処理をすることで、こういった可能性のある被写体画像と同じ被写体画像が2Dで表示されるはずの段階で、切り換わり点に向かって徐々に飛び出させていく、又は引き込ませていくことができ、観察者を慣れさせて、その負担を軽減することができる。
【0088】
領域特定部204は、画像変換部103が3D画像に変換する2D画像のなかから、視差量を徐々に増加させる被写体画像が含まれる画像領域を特定する。
【0089】
この領域特定部204は、まず切換点検出部201が検出した切り換わり点の直後又は所定時間分の3D画像データのなかから、視差量判定部203により所定の視差量を上回っていると判定された視差量を有する画像領域を特定する。
【0090】
そして、特定された領域と表示座標(位置)上で対応する領域を切り換わり点より前の所定時間分の2D画像データのなかから特定し、その領域に含まれる被写体画像を、視差量を徐々に増加させる対象として特定する。
【0091】
画像変換部103は、この2D画像内で特定された画像領域に含まれる被写体画像が所定時間かけて所定の視差量となるように、上述の2D画像データから3D画像データへの変換を実施する。
【0092】
2D画像データから3D画像データに切り換わってすぐのタイミングで、特定の領域の画像が過度に飛び出している、又は引き込んでいる画像として知覚されると、観察者の負担となる可能性がある。領域特定部205が、上記の領域特定の処理を行うことで、2D画像が表示さるはずの段階で、3D画像に切りかわったときにこういった可能性のある表示領域に対応する表示領域に含まれる被写体画像を、切り換わり点に向かって徐々に飛び出させていく、又は引き込ませていくことができ、観察者を慣れさせて、その負担を軽減することができる。
【0093】
(画像処理)
次に、本実施形態の画像処理装置1による、2D画像データと3D画像データとが混在した画像データを出力する際に、2D画像データから3D画像データへの切り換わり点を検出し、切り換わり点より前の所定の2D画像データを視差が切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換する画像処理について説明する。
【0094】
図5は、画像処理装置1が行う本発明の実施形態にかかる画像処理を説明するためのフローチャートである。
【0095】
操作部110の操作に応じて、各種記録媒体、デジタルテレビチューナ、又は撮像装置等から2D画像データと3D画像データとが混在した画像データが順次、画像データ入力部101に入力される(ステップS101)。
【0096】
画像データ入力部101に画像データが入力されると、一時記憶部102が順次、その画像データを一時記憶する(ステップS102)。
図6に一時記憶部102が一時記憶する画像データの概念図を示す。
【0097】
図6には、時点t1までは2D画像データD601、時点t1以降で時点t2までは3D画像データD602、時点t2以降で時点t3までは2D画像データD603、そして時点t3以降は3D画像データD604が、一時記憶部102に一時記憶されている様子を示す。このように、一時記憶部102には、2D画像データと3D画像データとが混在した画像が順次、一時記憶される。
【0098】
図5に戻り、ステップS102で画像データが一時記憶されると、切換点検出部201が、一時記憶されていく画像データが2D画像データから3D画像データに切り換わる時点を、切り換わり点として検出する(ステップS103)。
【0099】
切換点検出部201は、画像データの有する、各シーンが2D画像のシーンであるか3D画像のシーンであるかを示す制御情報から切り換わり点を検出する。又は、2D画像データと3D画像データのデータ構造の相違から切り換わり点を検出する。
【0100】
図6では、2D画像データD601が3D画像データD602に切り換わる時点t1が切り換わり点P1として検出される。同様に、2D画像データD603が3D画像データ604に切り換わる時点t3が切り換わり点P2として検出される。
【0101】
なお、切換点検出部201が2D画像データから3D画像データへの切り換わり点を検出しなかった場合(ステップS103でNO)、画像処理装置1は以降の処理を実施しない。
【0102】
切換点検出部201が2D画像データから3D画像データへの切り換わり点を検出した場合(ステップS103でYES)、視差量導出部202は切り換わり点における、又は切り換わり点以降の所定の時間分の3D画像データにおける左眼用画像と右眼用画像との間の視差量を導出する(ステップS104)。なお、この視差量の導出は、上述の通りテンプレートマッチングを利用した手法等により行われる。
【0103】
図6では、視差量導出部202は、時点t1における又は時点t1から所定時間後までの間(例えば、5秒間)における3D画像データD602の視差量の導出を行なう。同様に、視差量導出部202は、t3における又はt3から所定時間後までの間における3D画像データD604の視差量の導出を行なう。
【0104】
図5のステップS104で、視差量導出部202が上記視差量の導出を行なうと、視差量判定部203が導出された視差量が所定の大きさを上回っているかどうかを判定する(ステップS105)。
【0105】
切り換わり点直後に、又は切り換わり点から所定時間以内に表示される3D画像中に、観察者に負担を与える可能性のある大きさの視差量を有する被写体画像が含まれていた場合、そのままその3D画像が表示されると、それまで2D画像を観察していて、3D画像の観察に目が慣れていない観察者に負担を与える可能性がある。
【0106】
図7に、表示される画像が2D画像から3D画像に切り換わる様子の模式図を示す。この
図7では観察者の左眼をLE30及び右眼をRE30としている。
【0107】
図7(a)は、時点t1まで2D画像であるD71が表示され、時点t1で3D画像として左眼用画像LD71及び右眼用画像RD71が表示される様子を模式的に示している。
【0108】
ここで観察者は、時点t1までは被写体画像G71を2D画像として、表示画像D71内に知覚している。ところが、時点t1で3D画像に切り換わり、左眼用画像LD71と右眼用画像RD71との間の視差に基づき、被写体画像TG71を表示面からZ
f701だけ飛び出して知覚している。
【0109】
この被写体画像TG71の飛び出しの大きさZ
f701に係る視差量が上述した閾値VS
fを上回っていた場合、まだ3D画像の知覚になれていない観察者の目に負担を掛ける可能性がある。
【0110】
このとき、視差量判定部203は、3D画像に切り換わる時点t1において、左眼用画像と右眼用画像との間に、所定の閾値VS
fを上回る、すなわち観察者に負担を与える可能性のある視差量がある旨の判定を行う。
【0111】
図7(b)は、時点t3まで2D画像であるD72が表示され、時点t3で3D画像として左眼用画像LD72及び右眼用画像RD72が表示され、そして時点t3から所定時間Δt後に、同じく3D画像として左眼用画像LD73及びRD73が表示される様子を模式的に示している。
【0112】
ここで、観察者は時点t3までは被写体画像G72を2D画像として、表示画像D72内に知覚している。そして、時点t3で3D画像に切り換わり、左眼用画像LD72と右眼用画像RD72との間の視差に基づき、被写体画像TG72を表示面からZ
f702だけ飛び出していると知覚している。
【0113】
この切り換わり点である時点t3では、被写体画像TG72の飛び出しの大きさZ
f702に係る視差量が上述した閾値VS
fを下回っている場合、視差量判定部203は、左眼用画像LD72と右眼用画像RD72との間に、観察者に負担を与える可能性のある視差量がある旨の判定は行わない。
【0114】
一方で、時点t3からΔt経過して表示されることになる左眼像画像LD73と右眼用画像RD73との間では、被写体画像TG73がZ
f702よりも大きなZ
f703だけ飛び出しているように知覚される。
【0115】
この被写体画像TG73の飛び出しの大きさZ
f703に係る視差量が上述した閾値VS
fを上回っていた場合、視差量判定部203は観察者に負担を与える可能性のある視差量がある旨の判定を行う。
【0116】
2D画像から3D画像に切り換わった時点では、観察者に負担を与える可能性がある視差量を有する画像が含まれていない場合でも、それまで2D画像を観察していた観察者が3D画像の知覚に慣れる前に、上述した閾値VS
fを上回る被写体画像が表示されると、観察者の目に負担を掛ける可能性があるからである。
【0117】
なお、視差量判定部203が、切り換わり点直後に、又は切り換わり点から所定時間以内に表示される3D画像中に、観察者に負担を与える可能性のある大きさの視差量を有する被写体画像が含まれている旨の判定をしなかった場合(S105でNO)、画像処理装置1は以降の処理を実施しない。
【0118】
図5に戻り、ステップS105で視差量判定部203が、左眼用画像と右眼用画像との間の視差量が所定の値を上回ると判定した場合(ステップS105でYES)、画像変換部103は一時記憶部に一時記憶された画像データにおける、切り換わり点から所定時間分だけ前の時点から、切り換わり点の時点までの2D画像データを、視差量が切り換わり点に向かって増加する3D画像に変換する(S106)。
【0119】
画像変換部103による2D画像を3D画像に変換する手法については、上述した通りである。以下に、画像変換部103が、2D画像全体を3D画像に変換する変換処理、被写体特定部204が特定した被写体画像に視差を設けて3D画像に変換する変換処理、及び領域特定部205が特定した領域に含まれる被写体画像に視差を設けて3D画像に変換する変換処理のそれぞれについて説明する。
【0120】
(2D画像全体を3D画像に変換する変換処理)
画像変換部103は、切り換わり点より前の所定時間分の2D画像全体を3D画像に変換する画像処理を行う。
図8に、この画像変換部103による変換の処理について説明する概念図を示す。
【0121】
図8は、時点t81から切り換わり点の直前である時点t84に至るまでの、変換前の2D画像、及びその2D画像を変換した3D画像の経過を模式的に示した図である。
図8(a)は変換前の2D画像を、
図8(b)は変換後の3D画像を示している。
【0122】
時点t81では、一時記憶部102に一時記憶された画像データである2D画像データが、そのまま2D画像D81として画像出力部104を介して外部のディスプレイ等に出力されている。
【0123】
次に、画像変換部103は、時点t81から1秒後の時点t82において、2D画像データを3D画像データに変換する。つまり、この変換を行わなければ2D画像D82として出力される画像データを、画像変換部103が3D画像データTD82として、視差を有する2つの画像に変換する。
【0124】
このとき左眼用画像中の被写体画像LG821と右眼用画像中の被写体画像RG821との間の視差量がV821、左眼用画像中の被写体画像LG822と右眼用画像中の被写体画像RG822との間の視差量がV822となるように変換が行われる。ここで、これらの視差量V821及びV822は、画像変換部103が生成した奥行き推定データに基づく視差量の1/3の大きさを持つように2D画像D82中の被写体画像G821及びG822に係るテクスチャを配置することで生成される。
【0125】
続いて、画像変換部103は、時点t82から1秒後の時点t83において、2D画像データを3D画像データに変換する。つまり、この変換を行わなければ2D画像D83として出力される画像データを、画像変換部103が3D画像データTD83として、視差を有する2つの画像に変換する。
【0126】
このとき左眼用画像中の被写体画像LG831と右眼用画像中の被写体画像RG831との間の視差量がV831、左眼用画像中の被写体画像LG832と右眼用画像中の被写体画像RG832との間の視差量がV832となるように変換が行われる。ここで、これらの視差量V831及びV832は、画像変換部103が生成した奥行き推定データに基づく視差の2/3の大きさを持つように2D画像D83中の被写体画像G831及びG832に係るテクスチャを配置することで生成される。
【0127】
そして、画像変換部103は、時点t83から1秒後の時点t4において、2D画像データを3D画像データに変換する。つまり、この変換を行わなければ2D画像D84として出力される画像データを、画像変換部103が3D画像データTD84として、視差を有する2つの画像に変換する。なお、この時点t4が切換点検出部201が検出した切り換わり点の直前に相当する。
【0128】
このとき左眼用画像中の被写体画像LG841と右眼用画像中の被写体画像RG841との間の視差量がV841、左眼用画像中の被写体画像LG842と右眼用画像中の被写体画像RG842との間の視差量がV822となるように変換が行われる。ここで、これらの視差量V841及びV842は、画像変換部103が生成した奥行き推定データに基づく大きさを持つように2D画像D84中の被写体画像G841及びG842に係るテクスチャを配置することで生成される。
【0129】
以上のように画像変換部103が、切り換わり点より前の所定の時間における2D画像全体を、各時点における奥行き推定データに基づく視差量に対する変換後の3D画像の視差量の割合が、切り換わり点に向かって徐々に増加するように2D画像から3D画像への変換を行う。
【0130】
これによって、表示される画像が2D画像から3D画像に切り換わってすぐのタイミングで、その3D画像に観察者から見て飛び出し過ぎているように知覚される画像又は引き込み過ぎているように知覚される画像が存在する場合に、事前に観察者の目を3D画像に慣らすことができ、その負担を大きく減少させることができる。
【0131】
なお、上記では、画像変換部103が、奥行き推定データに基づいて2D画像データを3D画像データに変換する場合について記載したが、画像変換部103は単純に元の2D画像を右方向ないし左方向にシフトさせて別の視点の画像を生成することで2D画像データを3D画像データに変換することもできる。
【0132】
この場合は、シフトさせる大きさを徐々に大きくしていくことで、切り換わり点までの各時点における視差量が切り換わり点に向かって増加するように変換を行う。
【0133】
(被写体を基準にした変換処理)
視差量判定部203が、所定の閾値以上の視差量を有すると判定した被写体画像が、切り換わり点より前の2D画像にも存在した場合、2D画像が表示されている段階で、その被写体画像を切り換わり点に向かって徐々に視差量が増えていく3D画像に変換すれば、観察者の目を慣れさせて負担を軽減することができる。
【0134】
そこで、被写体特定部204は、まず切り換わり点の直前若しくは所定時間分の2D画像データ、及び切り換わり点直後若しくは所定時間分の3D画像データを比較し、同じ被写体画像データが存在するかどうかを判断する。
【0135】
そして、同じ被写体画像データが存在した場合は、2D画像データの被写体画像データを、視差量を増加させる対象として特定する。
【0136】
そして、画像変換部103は、被写体特定部204が特定した被写体画像を2D画像データから3D画像データに変換する。
図9に、この画像変換部103による変換の処理について説明する概念図を示す。
【0137】
図9は、時点t91から切り換わり点の直前の時点t94に至るまでの、変換前の2D画像、及びその2D画像を変換した3D画像の経過を模式的に示した図である。
図9(a)は変換前の2D画像を、
図9(b)は変換後の3D画像を示している。
【0138】
時点t91では一時記憶部102に一時記憶された画像データである2D画像データがそのまま2D画像D91として画像データ出力部104を介して外部のディスプレイ等に出力されている。
【0139】
次に時点t91から1秒後の時点t92において、被写体特定部204は2D画像D92のなかの被写体画像G921を、視差量を増加させる被写体画像として特定している。そして画像変換部103は、被写体画像G921を、視差量を有する被写体画像LG921とRG921とをそれぞれ左眼用画像データ及び右眼用画像データに有する3D画像TD92に変換する。
【0140】
このとき被写体画像LG921と被写体画像RG921との間の視差量V921は、画像変換部103が生成した奥行き推定データに基づく視差量の1/3の大きさを持つように2D画像D92中の被写体画像G921に係るテクスチャを配置することで生成される。
【0141】
次に時点t92から1秒後の時点t93において、被写体特定部204は2D画像D92のなかの被写体画像G921と同じ被写体の画像である、2D画像D93のなかの被写体画像G931を、視差量を増加させる基準とする被写体画像として特定している。このとき画像変換部103は、被写体画像G931を、視差量を有する被写体画像LG931とRG931とを左眼用画像データ及び右眼用画像データに有する3D画像TD93に変換する。
【0142】
このとき被写体画像LG931と被写体画像RG931との間の視差量V931は、画像変換部103が生成した奥行き推定データに基づく視差量の2/3の大きさを持つように2D画像D93中の被写体画像G931に係るテクスチャを配置することで生成される。
【0143】
そして、時点t83から1秒後の時点t84において、被写体特定部204は2D画像D92のなかの被写体画像G921と同じ被写体の画像である、2D画像D94のなかの被写体画像G941を、視差量を増加させる基準とする被写体画像として特定している。このとき画像変換部103は、被写体画像G941を、視差量を有する被写体画像LG941とRG941とを左眼用画像データ及び右眼用画像データに有する3D画像に変換する。なお、この時点t4が切換点検出部201が検出した切り換わり点の直前に相当する。
【0144】
このとき被写体画像LG941と被写体画像RG941との間の視差量V941は、画像変換部103が生成した奥行き推定データに基づく大きさを持つように2D画像D94中の被写体画像G941に係るテクスチャを配置することで生成される。
【0145】
以上の通り、被写体特定部204によれば、所定の閾値よりも大きい視差量を有すると判定された被写体画像が、切り換わり点より前の所定時間内の2D画像にも存在した場合、2D画像が表示されている段階で、その被写体画像を、各時点における奥行き推定データに基づく視差量に対する変換後の3D画像の視差量の割合が、切り換わり点に向かって徐々に増加するように2D画像から3D画像への変換することができる。
【0146】
これによって、表示される画像が2D画像から3D画像に切り換わってすぐのタイミングで、その3D画像に観察者から見て飛び出し過ぎているように知覚される被写体画像又は引き込み過ぎているように知覚される被写体画像が存在する場合に、事前にその被写体に対する観察者の目を3D画像に慣らすことができ、その負担を大きく減少させることができる。
【0147】
(領域を基準にした変換処理)
視差量判定部203が、所定の閾値以上の視差量を有すると判定した被写体画像が含まれる3D画像内の領域に対応する2D画像内の領域に含まれる被写体画像を、2D画像が表示されている段階で、切り換わり点に向かって徐々に視差量が増えていく3D画像に変換すれば、観察者の目を慣れさせて負担を軽減することができる。
【0148】
そこで、領域特定部205は、まず視差量判定部203により所定の視差量を上回っていると判定された視差量を有する被写体画像を含む領域を3D画像から特定し、その領域に対応する2D画像内の領域を特定する。
【0149】
そして、画像変換部103は、その特定された領域内に含まれる被写体画像の視差量が増加していくように2D画像データの3D画像データへの変換を行う。
【0150】
この被写体画像自体の変換については、上述の被写体特定204が特定した被写体画像の2D画像から3D画像への変換と同様にして行う。
【0151】
領域特定部205によれば、所定の閾値以上の視差量を有すると判定した被写体画像が含まれる領域に対応する2D画像内の領域に含まれる被写体画像を、2D画像が表示されている段階で、徐々に視差量が増えていく3D画像に変換することができる。従って、観察者の目を慣れさせて負担を軽減することができる。
【0152】
これによって、表示される画像が2D画像から3D画像に切り換わってすぐのタイミングで、その3D画像に観察者から見て飛び出し過ぎているように知覚される画像領域(表示領域)に対して、事前にその画像領域に対する観察者の目を3D画像に慣らすことができ、その負担を大きく減少させることができる。
【0153】
図5に戻り、上記のようにして画像変換部103が元の2D画像データを3D画像データに変換すると、変換された3D画像データに係る左眼用画像データ及び右眼用画像データがそれぞれ画像データ出力部104から外部のディスプレイ装置等に出力される(ステップS107)。
【0154】
以上のように、本実施形態の画像処理装置1によれば、2D画像データと3D画像データとが混在した画像データを出力する際に、2D画像データから3D画像データへの切り換わり点を検出し、切り換わり点より前の所定の2D画像データを視差が切り換わり点に向かって増加する3D画像データに変換することができる。
【0155】
これにより、2D画像データが3D画像データに切り換わってすぐのタイミングで、観察者に負担を与える可能性がある被写体画像が表示されるような場合に、画像処理をしなければ2D画像が表示される段階で、前もって徐々に視差が増加する3D画像を表示することができ、観察者の目を慣れさせることでその負担を大きく減少させることができる。