特許第5720574号(P5720574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5720574-着色ポリイミド成形体及びその製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720574
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】着色ポリイミド成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20150430BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20150430BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C08L79/08 A
   C08J9/26 102
   C08J9/26CFG
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2011-535478(P2011-535478)
(86)(22)【出願日】2010年10月8日
(86)【国際出願番号】JP2010067760
(87)【国際公開番号】WO2011043467
(87)【国際公開日】20110414
【審査請求日】2013年8月16日
(31)【優先権主張番号】特願2009-235672(P2009-235672)
(32)【優先日】2009年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-235673(P2009-235673)
(32)【優先日】2009年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】大矢 修生
(72)【発明者】
【氏名】松尾 信
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−275423(JP,A)
【文献】 特開2004−304024(JP,A)
【文献】 特開昭63−006503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08J 5,9
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともテトラカルボン酸成分とジアミン成分とから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物、又はポリイミド溶液と着色前駆体とを含むポリイミド溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する工程を含
前記着色前駆体が、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体、及び/又はフェロセン化合物である、着色ポリイミド成形体の製造方法。
【請求項2】
前記テトラカルボン酸成分が、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記ジアミン成分が、パラフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、及びビス(アミノフェノキシ)ベンゼンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の着色ポリイミド成形体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミック酸溶液組成物又は前記ポリイミド溶液組成物が、懸濁液又は透明の均一溶液である、請求項1又は2に記載の着色ポリイミド成形体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリアミック酸溶液組成物を流延して得られるフィルムを、ポリアミック酸の貧溶媒に浸漬して多孔質ポリアミック酸フィルムを作製する工程、及び該多孔質ポリアミック酸フィルムを250℃以上で熱処理する工程を含み、前記着色ポリイミド成形体が着色ポリイミド多孔質膜である、請求項1〜のいずれかに記載の着色ポリイミド成形体の製造方法。
【請求項5】
前記貧溶媒が、水又は水を含有する混合溶媒である、請求項に記載の着色ポリイミド成形体の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理が、前記ポリアミック酸溶液組成物又はポリイミド溶液組成物を用いて成形した成形品を固定した状態で、大気中、280〜500℃で5〜60分間行う、請求項1〜のいずれかに記載の着色ポリイミド成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の方法により得られる着色ポリイミド成形体。
【請求項8】
両表面に緻密層がない均一な膜厚5〜100μmの膜であり、片面又は両面の表面に平均孔径が0.01〜5μmの孔を有し、該孔が一方の面から他の面に向かって非直線に連続する多孔質構造を有し、空孔率が15〜80%、ガーレー値が30〜1000秒/100ccである着色ポリイミド多孔質膜である、請求項に記載の着色ポリイミド成形体。
【請求項9】
2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通した構造を有する、請求項に記載の着色ポリイミド成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色ポリイミド成形体の製造方法、及びその方法により得られる着色ポリイミド成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリマー成形物を着色する場合、染料や顔料が用いられている。
例えば、特許文献1には、ポリアミック酸中に染料を混入した着色ポリイミド樹脂材料を用いて着色樹脂パターンを形成した後、熱処理することによって硬化させるに際し、着色ポリイミド樹脂材料中に予め芳香族ジアミンを加え、熱処理によって、その芳香族ジアミンを介して染料をポリイミド化した高分子マトリックスと結合させる着色樹脂パターンの色溶出防止方法が開示されている。
特許文献2には、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族直鎖を有する芳香族ジアミン、及びシロキサンジアミンから得られるポリイミド樹脂を主成分とする樹脂成分に対して、着色顔料が含有された電子部品被覆用着色ポリイミドフィルムが開示されている。
【0003】
顔料や染料には、それぞれ一長一短がある。例えば、顔料は耐熱性の点で有利な反面、樹脂の中へ均一に分散させることが困難である。染料は均一に分散(又は溶解)するという利点があるが、溶剤等の影響により樹脂中から溶出しやすいという問題がある。
【0004】
なお、ポリイミド多孔質膜は、電池用セパレータや電解コンデンサ用隔膜用、集塵、精密濾過、分離等に用いられており、種々の製造法が知られている。
例えば、特許文献3には、直径約0.01〜10μmの貫通穴を有するポリイミド多孔膜、及びポリアミック酸ワニスのキャストフィルムに多孔質フィルムを積層した後、貧溶媒に浸漬することを特徴とするポリイミド多孔質膜の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−119212号公報
【特許文献2】特開2004−304024号公報
【特許文献3】特開平11−310658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、着色したポリイミドフィルム等のポリイミド成形物は、カーボンブラック等の顔料とポリアミック酸溶液等のポリマー溶液とを混練し、成形後、溶媒等を除去、加熱してポリマーを析出させて製造されている。また、成形体が多孔質膜の場合は、多孔質膜の表面を着色することも行われている。
しかし、多孔質膜の表面を着色すると、制御した多孔質膜の特性を失う可能性がある。
また、カーボンブラック等の顔料は、ポリマー溶液との溶解性がなく、均一な混合・分散状態を得るためには、カーボンブラック等の顔料の表面を改質したり、十分な混練を行うための特殊な混練機が必要となり、実用上多大な労力を有する。さらに得られる成形体は、表面外観に優れた物が容易に得られる訳ではなく、材料の組み合わせ、成形条件、混練条件等に合わせて試行錯誤し、最適条件を決定する必要がある。
さらに、カーボンブラック等の顔料を使用すると生産ラインが汚れるために、専用の製造ラインを準備するか、又はラインを全て分解して十分に洗浄する必要があり、多大な労力と費用、また多量の洗浄溶媒等の洗浄剤が必要となる。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためにカーボンブラック等の顔料や染料を使用することなく、黒色系に着色したポリイミド成形体を製造する方法、及びその方法により得られる着色ポリイミド成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記(1)及び(2)に関する。
(1)少なくともテトラカルボン酸成分とジアミン成分とから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物、又はポリイミド溶液と着色前駆体とを含むポリイミド溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する工程を含前記着色前駆体が、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体、及び/又はフェロセン化合物である、着色ポリイミド成形体の製造方法。
(2)前記(1)に記載の方法により得られる着色ポリイミド成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、着色前駆体としてポリアミック酸溶液やポリイミド溶液との相溶性を有し、250℃以上に加熱して黒色系に着色する性質を有するものを用いるため、(1)特殊な混練機を用いることなく、ポリアミック酸溶液やポリイミド溶液に容易に均一に溶解させることができ、(2)容易に表面外観の優れる着色ポリイミド成形物を得ることができ、(3)製造後のライン洗浄を容易に行うことができる。
本発明の効果をより詳細に述べれば以下のとおりである。
本発明の着色ポリイミド成形体の製造方法は、熱イミド化工程においてポリアミック酸の存在の有無に関わらず自発的に熱分解、炭化して着色する着色前駆体を用いることから、ポリイミドやその添加物との組み合わせ、すなわち材料を設計する際の自由度が大きく、工業的に非常に有益である。
また、染料、顔料は熱イミド化工程や材料の使用環境下で熱分解により脱色するものがほとんどであるが、本発明で用いる着色前駆体は、室温、常態では透明、白色であっても、熱イミド化工程や高温使用環境下で熱分解して炭化物に変性することで着色することから、材料の長期高温化での使用においても脱色することなく初期の色相を維持することができるため、この着色前駆体を用いる本発明は工業的に非常に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ポリアクリロニトリル共重合体を空気雰囲気下で室温から5℃/分の速度で加熱した際における熱重量減少率の変化を示すグラフである(参考例1)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の着色ポリイミド成形体の製造方法は、
(1)少なくともテトラカルボン酸成分とジアミン成分とから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する工程を含むこと(第1発明)、及び
(2)ポリイミド溶液と着色前駆体とを含むポリイミド溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する工程を含むこと(第2発明)、を特徴とする。
また、第1発明において、前記着色ポリイミド成形体が着色ポリイミド多孔質膜である場合、本発明の着色ポリイミド多孔質膜の製造方法は、前記ポリアミック酸溶液組成物を流延して得られるフィルムを、ポリアミック酸の貧溶媒に浸漬して多孔質ポリアミック酸フィルムを作製する工程、及び該多孔質ポリアミック酸フィルムを250℃以上で熱処理する工程を含むことを特徴とする(第3発明)。
【0012】
<第1発明>
第1発明は、少なくともテトラカルボン酸成分とジアミン成分とから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
(ポリアミック酸)
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを重合して得られる。ポリアミック酸は、熱イミド化又は化学イミド化することにより閉環してポリイミドとすることができるポリイミド前駆体である。
【0014】
テトラカルボン酸成分としては、公知のテトラカルボン酸成分を用いることができ、テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等のビフェニルテトラカルボン酸二無水物;オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等が挙げられる。また、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸を用いることもできる。
【0015】
これらの中でも、特にビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物から選ばれる1種以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)がより好ましい。
上記のテトラカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
ジアミン成分としては特に制限はなく、公知のジアミン成分を用いることができる。例えば、(i)ベンゼン核1つのべンゼンジアミン、(ii)ベンゼン核2つのジアミン、(iii)ベンゼン核3つのジアミン、(iv)ベンゼン核4つのジアミン等が挙げられる。
(i)ベンゼン核1つのべンゼンジアミンとしては、1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン等が挙げられる。
(ii)ベンゼン核2つのアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド等が挙げられる。
【0017】
(iii)ベンゼン核3つのジアミンとしては、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン等が挙げられる。
【0018】
(iv)ベンゼン核4つのジアミンとしては、3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、芳香族ジアミンが好ましく、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、及びビス(アミノフェノキシ)ベンゼンから選ばれる1種以上がより好ましく、その好適例としては、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
上記のジアミン成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
ポリイミドのテトラカルボン酸成分とジアミン成分の組み合わせとしては、機械的特性、長期耐熱性、難燃性等の観点から、
(1)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物から選ばれる成分を主成分として含むテトラカルボン酸成分、好ましくはテトラカルボン酸成分100モル%中、70モル%以上、さらに80モル%以上、特に90モル%以上含むテトラカルボン酸成分と、
(2)パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、o−トリジン、m−トリジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン及び1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンから選ばれる成分を主成分として含むジアミン、好ましくはジアミン成分100モル%中、70モル%以上、さらに80モル%以上、特に90モル%以上含むジアミン成分とから得られるポリイミドが好ましい。
【0021】
好ましいポリイミドを構成する酸成分とジアミン成分とのより具体的な組合せとしては、
(1)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミン又はp−フェニレンジアミン及びジアミノジフェニルエーテル類(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテル)の組合せ、
(2)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物と、p−フェニレンジアミン又はp−フェニレンジアミン及びジアミノジフェニルエーテル類(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテル)の組合せ、
(3)ピロメリット酸二無水物と、p−フェニレンジアミン及びジアミノジフェニルエーテル類(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル又は3,4’−ジアミノジフェニルエーテル)の組合せ等が挙げられる。
これらの組合せにより得られるポリイミドは、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TABやCOFテープ、カバーシート、補強シート等の電子部品の素材として好適に用いられ、優れた機械的特性を有し、長期耐熱性を有し、耐加水分解性に優れ、熱分解開始温度が高く、難燃性に優れるために好ましい。
【0022】
(ポリアミック酸溶液の製造)
ポリアミック酸溶液は、有機極性溶媒の存在下でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させて得られる溶液であってもよく、ポリアミック酸を有機極性溶媒に溶解させて得られる溶液であってもよい。
前記溶媒としては特に制限はない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素等の有機極性溶媒等が挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等が好ましい。
ポリアミック酸の製造は、例えば、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを略等モルで重合することができる。その重合温度は、好ましくは約100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは0〜60℃、特に好ましくは20〜60℃の温度であり、その重合時間、好ましくは約0.2時間以上、より好ましくは0.3〜60時間である。
ポリアミック酸の製造時には、任意の分子量調整剤を添加することができる。
【0023】
ポリアミック酸の重合反応を行うに際して、溶液粘度は、使用する目的(塗工、流延等)や製造する目的に応じて適宜選択すればよい。ポリアミック酸溶液(ポリイミド前駆体溶液)は、作業性の観点から、30℃で測定した回転粘度が、約0.1〜5000ポイズ、好ましくは0.5〜2000ポイズ、より好ましくは1〜2000ポイズのものであることが好ましい。したがって、前記の重合反応は、生成するポリアミック酸が上記のような粘度を示す程度にまで実施することが好ましい。
ポリアミック酸の重合反応を行うに際して、溶媒中の全モノマーの濃度は、使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよく、例えばポリアミック酸溶液は、溶媒中の全モノマーの濃度が、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは6〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%であることが好ましい。
【0024】
ポリアミック酸は、アミック酸の一部がイミド化していても、本発明に影響を及ぼさない範囲であればそれを用いることができる。すなわち、ポリアミック酸は、部分的に熱イミド化又は化学イミド化されていてもよい。
ポリアミック酸を熱イミド化する場合は、必要に応じて、イミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子、有機微粒子等の微粒子等をポリアミック酸溶液に添加することができる。また、ポリアミック酸を化学イミド化する場合は、必要に応じて、化学イミド化剤、脱水剤、無機微粒子、有機微粒子等の微粒子等をポリアミック酸溶液に添加することができる。ポリアミック酸溶液に前記成分を配合しても、着色前駆体が析出しない条件で行うことが好ましい。
【0025】
イミド化触媒としては、置換又は非置換の含窒素複素環化合物、該含窒素複素環化合物のN−オキシド化合物、置換又は非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物又は芳香族複素環状化合物が挙げられる。より具体的には、1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−イミダゾール、5−メチルベンズイミダゾール等の低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のベンズイミダゾール、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジン等の置換ピリジン等を好適に使用することができる。
イミド化触媒の使用量は、ポリアミック酸のアミド酸単位に対して0.01〜2倍当量、特に0.02〜1倍当量程度であることが好ましい。イミド化触媒を使用することによって、得られるポリイミドフィルムの物性、特に伸びや端裂抵抗が向上するので好ましい。
【0026】
有機リン含有化合物としては、例えば、モノカプロイルリン酸エステル、モノオクチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノミリスチルリン酸エステル、モノセチルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのモノリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのモノリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのモノリン酸エステル、ジカプロイルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、ジカプリルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジミリスチルリン酸エステル、ジセチルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのジリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのジリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのジリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのジリン酸エステル等のリン酸エステルや、これらリン酸エステルのアミン塩が挙げられる。アミンとしてはアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0027】
無機微粒子としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末等の無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末等の無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末等の無機炭化物粉末、及び微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末等の無機塩粉末が挙げられる。これらの無機微粒子を均一に分散させるために、公知の分散手段を適用することができる。
有機微粒子としては、溶媒に不要で250℃以上に加熱しても変質しない有機微粒子を挙げることができ、ポリイミド粒子、ポリアミド粒子、架橋性の粒子等を挙げることができる。
上記のイミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子、及び有機微粒子は、それぞれ単独で又は二種以上を組合せて使用することができる。
【0028】
化学イミド化剤としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、イソキノリン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、イミダール、ベンズイミダゾール等の複素環第3級アミン等が挙げられるが、複素環式第3級アミンが好ましく、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、イミダール、ベンズイミダゾールがより好ましい。
イミド化反応に伴い生成する水の脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、無水安息香酸、無水フタル酸等の芳香族酸無水物等が挙げられるが、脂肪族酸無水物が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
【0029】
(着色前駆体)
本発明において着色前駆体とは、250℃以上の熱処理により一部または全部が炭化して着色化物を生成する前駆体を意味する。
本発明で用いられる着色前駆体としては、ポリアミック酸溶液又はポリイミド溶液に均一に溶解し、250℃以上、好ましくは260℃以上、更に好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上の熱処理、好ましくは空気等の酸素存在下での250℃以上、好ましくは260℃以上、更に好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上の熱処理により熱分解し、炭化して着色化物を生成するものが好ましく、黒色系の着色化物を生成するものがより好ましく、炭素系着色前駆体がより好ましい。
着色前駆体は、加熱していくと一見炭素化物に見えるものになるが、組織的には炭素以外の異元素を含み、層構造、芳香族架橋構造、四面体炭素を含む無秩序構造のものを含む。
炭素系着色前駆体は特に制限されず、例えば、石油タール、石油ピッチ、石炭タール、石炭ピッチ等のタール又はピッチ、コークス、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体、フェロセン化合物(フェロセン及びフェロセン誘導体)等が挙げられる。これらの中では、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体及び/又はフェロセン化合物が好ましく、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体としてはポリアクリルニトリルが好ましい。
【0030】
フェロセン(C1010Fe)はジ−π−シクロペンタジエニル鉄であり、それ自身も加熱により炭化するが、ポリアミック酸の炭化を促進する効果もあると考えられる。フェロセンとしては、例えば、和光純薬工業株式会社の市販品を使用することができる。
本発明におけるフェロセン誘導体とは、ジ−π−シクロペンタジエニル鉄錯体をいい、シクロペンタジエニル環のペンダント基として種々の置換基が結合していているものが挙げられる。例えば、ビスインデニル鉄(II)(ジベンズフェロセン)、1,1’−ジアセチルフェロセン、1,2−ジアセチルフェロセン、1,1−ジフェロセニルエタン、ジメチルアミノエチルフェロセン、メチルアミノメチルフェロセン、フェロセニルアセトニトリル、フェロセニルカルボナール、フェロセンスルホン酸、1,2−ジフェロセニルエタン、ジフェロセニルメタン、フェニルフェロセン、フェロセンカルボキシアルデヒド、Ω−フェロセニル脂肪酸、フェニルシロクペンタフェロセン、1,1’−(1,3−シクロペンチレン)フェロセン、フェニルシロクペンチルフェロセン、ベンゾイルフェロセン、アセチルフェロセン等が挙げられる。また、アザフェロセンのような複素環式π錯体も使用することができる。
【0031】
(ポリアミック酸溶液組成物)
ポリアミック酸溶液組成物は、ポリアミック酸溶液に前記着色前駆体を均一に溶解してなる溶液組成物である。なお、ポリアミック酸溶液組成物は、懸濁液又は透明の均一溶液であることが好ましい。
ポリアミック酸溶液組成物は、ポリアミック酸溶液に、着色前駆体を添加して混合する方法、ポリアミック酸の重合前に予め着色前駆体を溶媒に添加して重合する方法、ポリアミック酸の重合中に着色前駆体を添加して重合する方法等により製造することができる。
ポリアミック酸溶液組成物に含まれる着色前駆体、特に炭素系着色前駆体の配合量は、目的とする着色量により適宜選択すればよく、得られるポリイミド100質量部に対して、着色前駆体を好ましくは1〜60質量部、より好ましく1〜40質量部、更に好ましくは2〜40質量部、更に好ましくは2〜30質量部、特に好ましくは3〜25質量部配合して行うことが好ましい。60質量部以上配合しても着色効果は得られるが、着色前駆体の種類によっては得られる着色ポリイミド成形体の膜特性、特に力学特性が低下する場合があるので好ましくない。
【0032】
<第2発明>
第2発明は、ポリイミド溶液と着色前駆体とを含むポリイミド溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する工程を含むことを特徴とする。
【0033】
(ポリイミド/ポリイミド溶液の製造)
第2発明で用いられるポリイミドとしては、成形温度で、溶媒に溶解するポリイミドを用いることができ、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを選択して組み合わせて、溶媒中で重合することにより溶媒に可溶なポリイミドを得ることができる。
ポリイミドを構成するテトラカルボン酸成分及びジミン成分は前記のとおりであり、テトラカルボン酸成分とジミン成分との好適な組み合わせも前記のとおりである。
【0034】
ポリイミドを重合するための溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素等の有機極性溶媒等が挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、フェノール、p−クロルフェノール、o−クロルフェノール、クレゾール等のフェノール類等が好ましい。
ポリイミドの製造は、例えば、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを略等モルで重合することができる。その重合温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは150〜250℃、更に好ましくは170〜230℃の温度であり、その重合時間、好ましくは約0.2時間以上、より好ましくは0.3〜60時間である。
ポリイミドの製造時には、任意の分子量調整剤を添加することができる。
【0035】
ポリイミドの重合反応を実施するに際して、溶液粘度は、使用する目的(塗工、流延等)や製造する目的に応じて適宜選択すればよい。ポリイミド溶液は、成形時の温度で測定した回転粘度が、作業性の観点から、約0.1〜5000ポイズ、好ましくは0.5〜2000ポイズ、より好ましくは1〜2000ポイズのものであることが好ましい。したがって、前記の重合反応は、生成するポリイミドが上記のような粘度を示す程度にまで実施することが好ましい。
ポリイミドの重合反応を行うに際して、溶媒中の全モノマーの濃度は、使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよく、例えばポリイミド溶液は、溶媒中の全モノマーの濃度が、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは6〜25質量%、更に好ましくは10〜20質量%であることが好ましい。
【0036】
(ポリイミド溶液組成物)
ポリイミド溶液組成物は、成形時の温度でポリイミド溶液に前記着色前駆体を均一に溶解してなる溶液組成物である。なお、ポリイミド溶液組成物は、懸濁液又は透明の均一溶液であることが好ましい。
ポリイミド溶液組成物は、ポリイミド溶液に、着色前駆体を添加して混合する方法、ポリイミドの重合前に予め着色前駆体を溶媒に添加して重合する方法、ポリイミドの重合中に着色前駆体を添加して重合する方法等により製造することができる。
ポリイミド溶液組成物に含まれる着色前駆体の配合量は、目的とする着色量により適宜選択すればよく、得られるポリイミド100質量部に対して、着色前駆体を好ましくは1〜60質量部、より好ましくは2〜40質量部、更に好ましくは2〜30質量部配合して行うことが好ましい。60質量部以上配合しても着色効果は得られるが、着色前駆体の種類によっては得られる着色ポリイミド成形体の膜特性、特に力学特性が低下する場合があるので好ましくない。
【0037】
ポリイミド溶液を熱イミド化する場合は、必要に応じて、イミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子、有機微粒子等の微粒子等を添加することができる。ポリイミド溶液に前記成分を配合しても、着色前駆体が析出しない条件で行うことが好ましい。
上記のイミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子、及び有機微粒子は、前記と同じであり、それぞれ単独で又は二種以上を組合せて使用することができる。
【0038】
<ポリアミック酸溶液組成物又はポリイミド溶液組成物の成形>
第1発明及び第2発明において、ポリアミック酸溶液組成物及びポリイミド溶液組成物の成形方法としては特に制限はなく、公知の方法を使用して、膜状、フィルム状、シート状、繊維状、管状等に成形することができる。より具体的には、以下の(i)〜(iii)の方法等が挙げられる。
(i)ポリアミック酸溶液組成物又はポリイミド溶液組成物を基板上に流延し、加熱乾燥又は減圧乾燥等により溶媒を揮発させた後、基板からフィルム又はシートを剥離する方法。
(ii)上記(i)等の方法により得たフィルム又はシート状成形体を所定の長さ及び幅に切り、繋ぎ合わせてベルト又はチューブを得る方法。
(iii)円筒状金型の内面又は外面にポリアミック酸溶液組成物又はポリイミド溶液組成物を塗布し、溶媒を揮発させ、そのまま加熱するか、又は一旦剥離して、内径を規定するための別金型の外周にはめ込み、加熱して、無端ベルト又はチューブ状成形体を得る方法。
【0039】
<着色ポリイミド成形体の製造(1)(成形、熱処理)>
ポリアミック酸溶液組成物を用いる着色ポリイミド成形体の製造方法の具体例としては、以下の(1)及び(2)等を挙げることができる。
(1)ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状等に成形し、溶剤の一部又は全部を徐々に除去しながら、250℃以上、必要に応じて最高加熱温度350〜600℃に加熱処理して、イミド化と着色とを行う方法。
(2)ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状等に成形し、その成形物を着色前駆体が着色しない温度、好ましくは50〜210℃、より好ましくは60〜200℃に加熱して、溶剤の一部又は全部を徐々に除去して前乾燥し(フィルム状であれば、支持体から剥離できる自己支持性を有するまで前乾燥し)、その後、着色前駆体が着色する温度である250℃以上、必要に応じて最高加熱温度350℃〜600℃に加熱処理して、イミド化と着色とを行う方法。
【0040】
ポリアミック酸溶液組成物から熱イミド化によりフィルムを製造する一例を示すと、ポリアミック酸溶液組成物を適当な支持体(例えば、金属、セラミックプラスチック製のロール、または金属ベルト、あるいは金属薄膜テープが供給されつつあるロール、又はベルト)の表面上に流延して、約10〜2000μm、特に20〜1000μm程度の均一な厚さのポリアミック酸溶液を膜状態に形成する。次いで熱風、赤外線等の熱源を利用して50〜210℃、特に60〜200℃に加熱して、溶剤を徐々に除去すると同時にポリアミック酸の一部をイミド化することにより、支持体より剥がして自己支持性になるまで前乾燥を行い、該支持体より自己支持性フィルムを剥離する。
次いで、剥離した自己支持性フィルムを250℃以上の温度、好ましくは280〜600℃、より好ましくは310〜590℃、更に好ましくは320〜580℃、特に好ましくは350〜500℃で熱処理する。
熱処理時間はポリアミック酸を構成する酸成分とジアミン成分の組み合わせで、適宜選択すればよい。熱処理は、多段の条件で行うことができ、250℃以上の加熱では、ピンテンター、クリップ、枠等で、両端又は全周、長尺のフィルムでは長手方向に直角の方向の両端縁を固定して加熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、熱風炉、赤外線加熱炉等の公知の種々の装置を使用して行うことができる。加熱時間は、適宜選択して行うことができるが、好ましくは5〜120分間、より好ましくは5〜60分間である。この熱処理によりイミド化及び/又は着色が進行する。
上記の方法はポリイミド溶液組成物にも適用することができる。
【0041】
<着色ポリイミド成形体の製造(2)(成形、熱処理)>
ポリイミド溶液組成物を用いる着色ポリイミド成形体の製造方法の具体例としては、以下の(1)及び(2)等を挙げることができる。
(1)ポリイミド溶液組成物をフィルム状等に成形し、溶剤の一部又は全部を徐々に除去しながら、250℃以上、好ましくは最高加熱温度350〜600℃に加熱処理して、着色する方法。
(2)ポリイミド溶液組成物をフィルム状等に成形し、その成形物を着色前駆体が着色しない温度、好ましくは50〜210℃、より好ましくは60〜200℃に加熱して、溶剤の一部又は全部を徐々に除去することにより、自己支持性になるまで前乾燥して、その後着色前駆体が着色する温度である250℃以上、好ましくは最高加熱温度350℃〜600℃に加熱処理して、着色する方法。
【0042】
本発明の製造方法によれば、遮光性を制御した着色ポリイミド成形体を効率的に得ることができる。この着色ポリイミド成形体は、例えば、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TAB用テープ、COF用テープ、カーバフィルム、補強フィルム、駆動ベルト等のベルト、チューブ等の電子部品や電子機器類の素材、銅線等の金属成形体等の成形物の被覆物として好適に用いることができる。
【0043】
<第3発明>
第3発明の着色ポリイミド多孔質膜の製造方法は、ポリアミック酸溶液組成物を流延して得られるフィルムを、ポリアミック酸の貧溶媒に浸漬して多孔質ポリアミック酸フィルムを作製する工程、及び該多孔質ポリアミック酸フィルムを250℃以上で熱処理する工程を含むことを特徴とする。
第3発明に用いられるポリアミック酸溶液組成物は、第1発明に用いられるポリアミック酸溶液組成物と同様である。
【0044】
第3発明に用いられるポリアミック酸溶液においては、ポリアミック酸溶液の極限粘度数(30℃、濃度;0.5g/100mL、溶媒;NMP)は、本発明のポリイミド多孔質膜が製造できる粘度であればよい。本発明の方法では、前記極限粘度数が好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5〜5、更に好ましくは0.5〜7であるポリアミック酸を用いることが好ましい。
【0045】
第3発明に用いられるポリアミック酸溶液中に含まれるポリマー濃度は、貧溶媒と接触して析出し、ポリアミック酸多孔質体が得られる濃度であれば特に制限されないが、好ましくはポリアミック酸(固形分濃度)0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなる。ポリアミック酸の固形分濃度が0.3質量%未満だと多孔質ポリイミドフィルムを作製した際のフィルム強度が低下し、60質量%を超えると多孔質ポリイミド膜の物質透過性が低下する場合がある。第3発明に用いられるポリアミック酸溶液中のポリアミック酸の固形分濃度は、より好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは3〜30質量%、特に好ましくは5〜15質量%であり、有機極性溶媒の含有量は、より好ましくは60〜99質量%、更に好ましくは70〜97質量%、特に好ましくは85〜95質量%である。
【0046】
第3発明に用いられる着色前駆体としては、ポリアミック酸溶液に均一に溶解し、貧溶媒に実質的に溶解せず、250℃以上の熱処理、好ましくは空気等の酸素存在下での250℃以上の熱処理により熱分解し、炭化して着色化物を生成するものが好ましく、黒色系の着色化物を生成するものがより好ましく、炭素系着色前駆体がより好ましい。
第3発明に用いられる着色前駆体の好ましい具体例は、第1発明に用いられる着色前駆体の好ましい具体例と同様である。
【0047】
<ポリアミック酸溶液組成物のフィルムの作製>
本発明の多孔質ポリイミドの製造方法では、まず、前記で得られたポリアミック酸溶液と、前記の着色前駆体とを混合して、着色前駆体がポリアミック酸溶液に均一に溶解しているポリアミック酸溶液組成物を調製し、これを基板上に流延して、フィルムを作成する。
化学イミド化で行う場合には、ポリアミック酸溶液組成物に触媒と脱水剤とを混合すると同時に、これを基板上に流延して、フィルムを作成することができる。
【0048】
(流延)
流延方法は特に限定されず、例えば、Tダイ、コンマコーター、ブレード等を用いて、ポリアミック酸溶液組成物をガラス板やステンレス板等の基板上にフィルム状に流延することができる。また、連続可動式のベルト上に、ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に断続的又は連続的に流延して、連続的にフィルム個片又は長尺状フィルムを製造することができる。ベルトは、ポリアミック酸溶液組成物及び後述する貧溶媒に影響を受けないものであればよく、ステンレス等の金属製、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂製を用いることができる。また、フィルム状に成形したポリアミック酸溶液組成物をそのまま貧溶媒中に投入することもできる。また、必要に応じて得られたフィルム状物の片面又は両面を、水蒸気等を含むガス(空気、不活性ガス等)、ポリオレフィンやフッ素系ポリオレフィンの多孔質材料、貧溶媒と溶媒の混合溶液等と接触させてもよい。
【0049】
ポリアミック酸溶液組成物の溶液粘度(30℃)は、フィルム状に流延することができ、かつポリアミック酸が析出する粘度を適宜決定することができる。流延のし易さ及びフィルム強度の観点から、該溶液粘度(30℃)は、好ましくは10〜10000ポイズ(1〜1000Pa・s)、より好ましくは100〜3000ポイズ(10〜300Pa・s)、更に好ましくは200〜2000ポアズ(20〜200Pa・s)、特に好ましくは300〜2000ポイズ(30〜200Pa・s)である。なお、溶液粘度(30℃)は、実施例に記載の方法で測定される。
【0050】
<多孔質ポリアミック酸フィルムの作製>
多孔質ポリアミック酸フィルムは、ポリアミック酸溶液組成物を流延して得られた前記のフィルム(無延伸)を、ポリアミック酸の貧溶媒に浸漬等により接触させて多孔質化することにより得ることができる。ポリアミック酸溶液組成物中の良溶媒を貧溶媒で置換することにより、ポリアミック酸の相分離現象を起こし、必要に応じて洗浄及び/又は乾燥を行った後、多孔質ポリアミック酸フィルムを得ることができる。
得られた多孔質ポリアミック酸フィルムは、必要に応じて洗浄及び/又は乾燥を行った後、250℃以上で熱処理する熱イミド化により、着色とイミド化とを同時に行い、着色ポリイミド多孔質膜とすることができる。この着色ポリイミド多孔質膜は、黒色系から茶色系に着色していることが好ましい。
【0051】
ポリアミック酸溶液組成物を流延して得られたフィルム(無延伸)は、貧溶媒との接触前に、必要に応じて(i)フィルムの片面又は両面を水蒸気やアルコール等の有機蒸気含有のガス(例えば空気等)に接触させる(接触時間は、好ましくは5分以内、より好ましくは3分以内、更に好ましくは2分以内)、(ii)フィルムの片面又は両面に重合溶媒(貧溶媒を含んでもよい)を接触させる、(iii)フィルムの片面又は両面にポリオレフィン等の多孔フィルムを積層させる、ことができる。
ポリアミック酸溶液組成物を流延して得られたフィルムに積層することができる多孔フィルムとしては、以下の性質を有するものが好ましい。
(1)析出するポリアミック酸から容易に剥がれること。
(2)N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等のポリアミック酸溶媒及び水、アルコール等の析出溶媒が適切な速度で透過することができる程度の透過性を有し、これらの溶媒と適度な親和性をもち、0.1〜数μmの孔が十分な密度で分散している構造を有すること。
(3)少なくとも片面が、作製しようとしている多孔膜に求められる程度以上の平滑性を有していること。
(4)ポリアミック酸溶液が浸漬した際にしわを発生しない程度の剛性を有すること。
上記の多孔フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、テフロン(登録商標)等からなり、孔径0.1〜5μm、厚み10〜100μm多孔フィルムが好適に用いられる。
【0052】
(ポリアミック酸の貧溶媒)
ポリアミック酸の貧溶媒としては、ポリアミック酸の重合に用いられる重合溶媒と混和するものを用いることができる。例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ヘキシルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、t−ブチルアルコール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の有機溶媒が挙げられる。
これらの中でも、安全性及び得られる多孔質フィルムの均質性の観点から、水単独、又は、水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の1〜3の脂肪族アルコール、炭素数3〜6のケトン等の貧溶媒との混合溶媒が好ましい。
貧溶媒は、必要に応じてポリアミック酸の重合に用いた重合溶媒との混合溶媒を用いることができる。
【0053】
貧溶媒として水と前記有機溶媒との混合溶媒を使用する場合は、該混合溶媒中の水の含有量は、好ましくは5質量%以上100質量%未満、より好ましくは20質量%以上100質量%未満、更に好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは45〜90質量%である。該混合溶媒中の有機溶媒(貧溶媒)の含有量は、好ましくは0質量%を超え95質量%以下、より好ましくは0質量%を超え80質量%以下、更に好ましくは3〜60質量%、特に好ましくは5〜30質量%である。
貧溶媒の温度は、通常−30〜70℃、好ましくは0〜60℃、更に好ましくは10〜50℃である。
【0054】
(多孔質ポリアミック酸フィルム)
得られる多孔質ポリアミック酸フィルムは、用いるポリアミック酸の種類、ポリアミック酸溶液の固形分濃度、ポリアミック酸溶液組成物の溶液粘度、有機溶媒、凝固条件(温度、貧溶媒の種類等)等を適宜選択することにより、膜厚、空孔率、平均孔径等を適宜調整することができる。
本発明の製造方法によれば、種々の形態の多孔質ポリアミック酸フィルムを得ることができる。例えば、代表的な形態として、次の(1)〜(4)の形態の多孔質ポリアミック酸フィルムが挙げられる。
形態(1):両表面に緻密な表層がなく、膜内部にボイド(大きな空孔)も実質的に存在しない均質な多孔質フィルム。
形態(2):2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質フィルムであって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通している、いわゆるハニカムサンドウィッチ構造を有する多孔質フィルム。
形態(2)のフィルムを作製する場合は、ポリアミック酸溶液組成物中に、予め極性基を有する有機化合物を、ポリアミック酸100質量部に対して、1〜150質量部、好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜70質量部含有させておく必要がある。極性基を有する有機化合物としては、安息香酸、フタル酸等のカルボン酸基を有する有機化合物が好ましい。
形態(3):片面又は両表面に緻密な表層を有し、膜内部にボイド(大きな空孔)も実質的に存在しない対称又は非対称な多孔質フィルム。
形態(4):片面又は両表面に緻密な表層を有し、膜内部にボイド(大きな空孔)が多数存在する対称又は非対称な多孔質フィルム。
形態(1)及び(2)の多孔質ポリアミック酸フィルムを用いた着色ポリイミド多孔質膜の作製については、後術する。
【0055】
<多孔質ポリアミック酸フィルムの熱処理>
本発明の着色ポリイミド多孔質膜は、前記の多孔質ポリアミック酸フィルムを250℃以上で熱処理することにより得ることができる。
熱処理においては、熱収縮によりフィルムの平滑性が損なわれる等の悪影響を抑制するため、例えば、多孔質ポリアミック酸フィルムの端部の一部又は全部、好ましくは両端部又は全端部(全周)を、ピン、チャック又はピンチロール等を用いて支持体に固定し、大気中で加熱することにより行うことができる。加熱温度は、好ましくは280〜500℃、より好ましくは300〜480℃、更に好ましくは330〜450℃である。加熱時間は、適宜選択して行うことができるが、好ましくは5〜120分間、より好ましくは5〜60分間である。この熱処理によりイミド化及び/又は着色が進行する。
イミド化反応に伴い生成する水は、加熱気流と共に反応系外に取り除くことができる。
得られる着色ポリイミド多孔質膜を構成するポリイミドは、IR測定法によるイミド化率が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の耐熱性ポリマーである。
【0056】
なお、この熱処理前に、化学的イミド化処理を行っておくこともできる。
化学イミド化は、反応速度、粘度上昇の抑制、分子量制御等の観点から、触媒及び脱水剤の存在下で、通常20〜200℃、好ましくは25〜150℃、より好ましくは30〜100℃で行うことができる。
触媒としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、イソキノリン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、イミダール、ベンズイミダゾール等の複素環第3級アミン等が挙げられるが、複素環式第3級アミンが好ましく、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、イミダール、ベンズイミダゾールがより好ましい。
脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、無水安息香酸、無水フタル酸等の芳香族酸無水物等が挙げられるが、脂肪族酸無水物が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
【0057】
本発明の製造方法によれば、前記の多孔質ポリアミック酸フィルムを用いることにより、以下に示す2つの代表的な形態の着色ポリイミド多孔質膜を作製することができる。
<形態(A)着色ポリイミド多孔質膜の作製>
前記形態(1)の多孔質ポリアミック酸フィルム(無延伸)に、(i)該フィルムの片面又は両面に重合溶媒(貧溶媒を含んでもよい)等の保護溶媒をコーティングする、さらに必要に応じて放置する、又は(ii)該フィルムの片面又は両面にポリオレフィン等の多孔フィルムを積層する。その後、得られた積層体をポリアミック酸の貧溶媒に浸漬等により接触させて多孔質化する。多孔質ポリアミック酸フィルム中の良溶媒を貧溶媒で置換することにより、ポリアミック酸の相分離現象を起こし、必要に応じて洗浄及び/又は乾燥を行った後、多孔質ポリアミック酸フィルムを得ることができる。
得られた多孔質ポリアミック酸フィルムは、250℃で熱処理され、着色ポリイミド多孔質膜〔形態(A)〕とすることができる。
形態(A)の着色ポリイミド多孔質膜は、両表面に緻密な表層がなく、膜内部にボイド(大きな空孔)も実質的に存在しない均質な多孔質膜である。この多孔質膜の膜厚は好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜80μmであり、片面又は両面の表面に平均孔径が好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.02〜2μm、更に好ましくは0.03〜1μmの孔を有し、該孔が一方の面から他の面に向かって非直線に連続する多孔質構造を有し、空孔率が好ましくは15〜80%、より好ましくは20〜70%、更に好ましくは25〜60%であり、ガーレー値(透気度)が好ましくは30〜1000秒/100cc、より好ましくは30〜1000秒/100cc、更に好ましくは30〜120秒/100ccであるものが望ましい。
【0058】
<形態(B)着色ポリイミド多孔質膜の作製>
前記形態(2)の多孔質ポリアミック酸フィルム(無延伸)を(i)大気中に放置するか、又はポリアミック酸溶液組成物を流延して得られた前記のフィルム(無延伸)に、(ii)該フィルムの片面又は両面に重合溶媒(貧溶媒を含んでもよい)等の保護溶媒をコーティングする、又は(iii)該フィルムの片面又は両面にポリオレフィン等の多孔フィルムを積層する。その後、得られた積層体を、ポリアミック酸の貧溶媒に浸漬等により接触させて多孔質化することにより得ることができる。ポリアミック酸溶液組成物中の良溶媒を貧溶媒で置換することにより、ポリアミック酸の相分離現象を起こし、必要に応じて洗浄及び/又は乾燥を行った後、多孔質ポリアミック酸フィルムを得ることができる。
得られた多孔質ポリアミック酸フィルムは、250℃で熱処理され、着色ポリイミド多孔質膜〔形態(B)〕とすることができる。
【0059】
形態(B)の着色ポリイミド多孔質膜は、2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質ポリイミド膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通している、いわゆるハニカムサンドウィッチ構造を有する多孔質膜である。この多孔質膜の表面層及びマクロボイド層の隔壁はそれぞれ厚さが好ましくは0.1〜15μm、より好ましくは1〜12μm、更に好ましくは2〜10μmであり、総膜厚は好ましくは5〜500μm、より好ましくは10〜300μm、更に好ましくは20〜100μmであり、マクロボイドの膜平面方向の平均孔径は好ましくは10〜150μm、より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜80μmであり、細孔の平均孔径は好ましくは0.01〜5μmであり、より好ましくは0.01〜3μm、更に好ましくは0.02〜2μmであり、空孔率が好ましくは70〜95%、より好ましくは71〜90%、更に好ましくは72〜85%であり、ガーレー値(透気度)が好ましくは100秒以下/100cc、より好ましくは80秒以下/100cc、更に好ましくは50秒以下/100ccであるものが望ましい。
【0060】
また、着色ポリイミド多孔質膜を膜平面方向に対して垂直に切断した断面において、膜平面方向の平均孔径が10μm以上のマクロボイドの膜平面方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲に入るマクロボイドの数は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは73〜100%である。
更に、250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚変化率は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは0〜1%である。また、ASTM D1204に準拠した200℃、2時間での膜平面方向における寸法安定性は、好ましくは±1%以内である。
なお、膜厚、平均孔径、空孔率、ガーレー値は、実施例に記載の方法で測定される。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、ポリアミック酸溶液組成物の溶液粘度の測定、並びに着色ポリイミド成形体(フィルム)及びポリイミド多孔質膜の評価は、以下の方法により行った。
I−1.ポリアミック酸溶液組成物の溶液粘度の測定
ポリアミック酸溶液組成物を密閉容器に入れ、30℃の恒温槽に10時間保持して得られたポリアミック酸溶液を測定溶液として、E型粘度計(東京計器株式会社製、高粘度用(EHD型)円錐平板型回転式、コーンローター:1°34’)を用いて、温度30±0.1℃の条件で溶液粘度を測定した。測定は3回行い、平均値を採用した。測定点に5%以上のばらつきがあった場合は、さらに2回の測定を行い、5点の平均値を採用した。
【0062】
I−2.極限粘度数の測定方法
極限粘度数は、固有粘度と同義であり、重合体の無限希釈における還元粘度(重合体の質量濃度cに対する相対粘度の増加分ηrの比ηr/c)又はインヘレント粘度(相対粘度の自然対数の、重合体の質量濃度cに対する比)の極限値である。
下記のマーク−ホーウインク式(Mark-Houwink equation:ポリマーの固有粘度の分子量依存性を記述する式。)を用いることにより、極限粘度数から分子量を求めることができる。
[η]=K×Mra
(式中、Mrは通常、分子量の1つ。aはポリマーと溶媒の種類で一義的に決まる定数である。)
【0063】
本発明では、ポリアミック酸が大気中で不安定な物質であること、GPC等の手段で分子量を求めることが困難であることから、分子量の指標として極限粘度数を用いる。
極限粘度数の測定は、厳密にはθ溶媒を用いてθ状態の希薄溶液を用いて行うべきであるだが、測定対象であるポリアミック酸は溶媒分子との相互作用が大きくθ溶媒を作製することが困難である。ポリアミック酸の場合は極限粘度数の測定に良溶媒を用いてもマーク−ホーウインク式で分子量を算出できるという研究報告例があることから、本発明では、希釈溶媒としてN−メチル−2ピロリドン(以下、NMPという)を用いて、以下の手順で測定した。
(1)溶液濃度cが0.1,0.075,0.05,0.025,0.010〔g/dL〕になるように、測定対象のポリアミック酸のNMP溶液を調製した。溶液は、嫌気雰囲気中で1週間の間連続して攪拌操作を施した。
(2)ウベローデ型希釈粘度計を用いて30℃の恒温槽中で、NMPの流下時間を測定した。続けて、前記(1)で作製した溶液についても各々流下時間を測定した。いずれの測定も3回行い、平均値を採用した。測定時間のばらつきが3%以上であった場合は、更に2回の追加測定を行い、小さい値から3点の平均値を取り、採用値とした。
前記測定値から比粘度ηspを算出し、y軸をηsp/c、x軸をcにしたグラフを作成した(Hugginsプロット)。プロット点をグラフソフトで直線回帰分析を行い回帰直線の切片から極限粘度数を求めた。回帰直線のR2が0.900以下であった場合は、再度溶液を作製し、再測定を行った。
【0064】
II.着色ポリイミド成形体(フィルム)及びポリイミド多孔質膜の評価
(1)膜厚
多孔質膜の膜厚の測定は、接触式厚み計を用いて行った。
(2)空孔率
所定の大きさに切取った多孔質膜の膜厚及び質量を測定し、目付質量から空孔率を次式によって求める。
空孔率=S×d×D/w×100
上式中、Sは多孔質膜の面積、dは膜厚、wは測定した質量、Dはポリイミドの密度をそれぞれ表す。ポリイミドの密度は1.34g/cm3とする。
(3)ガーレー値(透気度)
ガーレー値(0.879g/m2の圧力下で100ccの空気が多孔質膜を透過するのに要する秒数)の測定は、JIS P8117に準拠して行った。
【0065】
(4)平均孔径及び最大孔径
多孔質膜表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積の平均値から次式(式中、Saは孔面積の平均値である)に従って孔形状が真円であるとした際の平均孔径を計算より求めた。
平均孔径=2×(Sa/π)1/2
また、該孔面積から孔形状が真円であるとした際の直径を計算し、その最大値を最大孔径とした。
(5)ガラス転移温度
固体粘弾性アナライザーを用いて、引張モード、周波数10Hz、ひずみ2%、窒素ガス雰囲気、の条件で動的粘弾性測定を行い、その温度分散プロファイルにおいて損失正接が極大値を示す温度をガラス転移温度とした。
(6)寸法安定性
ASTM D1204に準拠し、200℃、2時間の条件での膜平面方向における寸法安定性を測定した。
(7)圧縮応力負荷後の膜厚変化率
測定する膜を3cm角の正方形に切り出し、格子状に9点にマジックで目印を付け接触式の厚み計で膜厚みを測定する。次に、平行度±10μm未満、温度分布±1℃の圧縮盤である高精度ホットプレスを用いて、測定対象膜を250℃、15分、0.5MPaの条件で圧縮する。続いて、膜を室温のSUS板の上に30分間静置した後に、接触式の膜厚み計で目印部分の膜厚みを測定する。9点での圧縮前後の膜厚変化率(%)を次式によって求めた。9点の平均値を膜厚み変化率とした。
膜厚変化率(%)=〔1−[(圧縮後の膜厚み)/(圧縮前の膜厚み)]〕×100
【0066】
(8)全光線透過率(%)及び濁度(ヘイズ)
JIS K7361、7136及び7105、並びにASTM D1003に準拠したヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、商品名:NDH5000)を用いて、膜の全光線透過率、濁度(ヘイズ)を測定した。
(9)色相
着色ポリイミド成形体(フィルム)の色相を、分光測色計(株式会社カラーテクノシステム社製、商品名:カラーロボIII)を用いて、測定物平面に対して透過の条件で測定した。測定に際しては減光フィルターを介して測定を行った。
また、ポリイミド多孔質膜の色相を、分光測色計(株式会社カラーテクノシステム社製、商品名:カラーロボIII)を用いて、測定物平面に対する投光角度45度の条件で測定した。測定するフィルムは白色体の上に静置して測定を行った。
結果は、L***表色系(ここで、L*は明度、a*は赤−緑方向の色度、b*は黄−青方向の色度を示す。)で各指数を数値化した。
【0067】
参考例1
ポリアクリロニトリル共重合体(三井化学株式会社製、商品名:バレックス2090S、以下「PAN」ともいう)のペレットを空気雰囲気下で室温から5℃/分の速度で加熱した際の熱重量減少率を測定した。結果を図1に示す。その結果、250℃付近から微小の重量減少が観察され、280℃では約0.2%、290℃では約0.5%、300℃では約2%、330℃では約8%の重量減少が発生することがわかった。これらの重量減少は、ポリアクリロニトリル分子中の切断及び架橋反応が同時に進行する形で炭素化が進んだことによるものであると考えられる。
以上の結果から、PANが本発明における着色前駆体として好ましく用いることができること、並びに本発明においてPANを着色前駆体として用いる場合には、250℃以上、好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上の熱処理を施すことが好ましいことがわかる。
【0068】
調製例101(ポリアミック酸溶液組成物A1の調製)
500mlのセパラブルフラスコに、N−メチルピロリドン(NMP)を溶媒とし、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を、ジアミン成分として4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)をモル比が1、ポリマー濃度が6質量%になる量を測り取って投入し、30℃で28時間重合反応させて、ポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の固形分濃度は6質量%、極限粘度数は3.5であった。
得られたポリアミック酸100質量部に対してPAN(三井化学株式会社製、商品名:バレックス2090S)5質量部を投入した。その後、撹拌翼、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌を開始した。20時間後、ポリアミック酸100質量部に対して、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸(BPDA)0.5質量部をフラスコ内に添加し、攪拌操作を継続した。40時間後に攪拌を終了し、フラスコ内のドープを加圧ろ過器(アドバンテック東洋株式会社製、粘調液用濾紙No.60使用)でろ過して、ポリアミック酸溶液組成物A1を得た。溶液は粘調な懸濁液体で、溶液粘度は410ポイズ(30℃)であった。
【0069】
調製例102(ポリアミック酸溶液組成物B1の調製)
PANを添加しなかった以外は調製例101と同様の操作を行い、ポリアミック酸溶液組成物B1を得た。溶液は粘調な液体で溶液粘度は400ポイズ(30℃)あった。
【0070】
調製例201(ポリアミック酸溶液組成物A2の調製)
500mlのセパラブルフラスコに、N−メチルピロリドン(NMP)を溶媒とし、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を、ジアミン成分として4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)をモル比が1、ポリマー濃度が6質量%になる量を測り取って投入し、30℃で28時間重合反応させて、ポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の極限粘度数は3.8であり、固形分濃度は6質量%であった。
得られたポリアミック酸100質量部に対してPAN(三井化学株式会社製、商品名:バレックス2090S)5質量部を投入した。その後、撹拌翼、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌を開始した。20時間後、ポリアミック酸100質量部に対して、安息香酸30質量部、及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸1質量部をフラスコ内に添加し、攪拌操作を継続した。40時間後に攪拌を終了し、フラスコ内のドープを加圧ろ過器(アドバンテック東洋株式会社製、粘調液用濾紙No.60使用)でろ過して、ポリアミック酸溶液組成物A2を得た。溶液は粘調な懸濁液体で、溶液粘度は430ポイズ(30℃)であった。結果を表1に示す。
【0071】
調製例202〜204(ポリアミック酸溶液組成物B2、C2、D2の調製)
表1に示すように、PANの添加量を変化させた以外は調製例201と同様の操作を行い、ポリアミック酸溶液組成物B2、C2、D2を得た。溶液は粘調な懸濁液体であった。
【0072】
調製例205(ポリアミック酸溶液組成物E2の調製)
調製例201において、ポリアミック酸100質量部に対して、フェロセン(和光純薬工業株式会社製)5質量部、安息香酸30質量部、及び3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸1質量部を添加した以外は、調製例201と同様の操作を行い、ポリアミック酸溶液組成物E2を得た。溶液は粘調な液体で、溶液粘度は460ポイズ(30℃)であった。
【0073】
調製例206(ポリアミック酸溶液組成物F2の調製)
PANを添加しなかった以外は調製例201と同様の操作を行い、ポリアミック酸溶液組成物F2を得た。溶液は粘調な液体で、溶液粘度は390ポイズ(30℃)であった。
【0074】
調製例207((ポリアミック酸溶液組成物G2の調製)
安息香酸を添加しなかった以外は調製例203と同様の操作を行い、ポリアミック酸溶液組成物G2を得た。溶液は粘調な液体で、溶液粘度は450ポイズ(30℃)であった。
【0075】
調製例208((ポリアミック酸溶液組成物H2の調製)
PANを添加しなかった以外は調製例207と同様の操作を行い、ポリアミック酸溶液組成物H2を得た。溶液は粘調な液体で、溶液粘度は425ポイズ(30℃)であった。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例101(ポリイミドフィルムの作製)
室温下、卓上自動コーターを用いて、表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角の基板上に、調製例101で得られたポリアミック酸溶液組成物A1を厚さ約300μmで、均一に流延塗布した。その後、熱風炉中に基板全体を入れ、平均10℃/分の昇温速度で360℃まで加熱し、そのまま5分間保持した後、徐々に冷却した。基板を熱風炉から取り出し、基板に張り付いたフィルムの四辺の周囲にカッターナイフで切り欠きを入れ、その後純水中に基板ごと24時間浸漬した。基板上から自然剥離したポリイミドフィルムを温度100℃で乾燥させ、膜厚みが20μmのポリイミドフィルムを得た。このフィルムはこげ茶色を呈していた。ポリイミドフィルムの全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表2に示す。
【0078】
比較例101(ポリイミドフィルムの作製)
調製例102で得られたポリアミック酸溶液組成物B1を用いた以外は実施例101と同様の操作を行い、ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムは濃い黄色で透明であり、厚みは21μmであった。ポリイミドフィルムの全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
表2から、実施例101では、着色化が適切に行われ、光透過性が効果的に抑制されたことが分かる。
【0081】
実施例201
室温下、卓上自動コーターを用いて、表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角の基板上に、調製例201で得られたポリアミック酸溶液組成物A2を厚さ約120μmで、均一に流延塗布した。その後、90秒間、温度23℃、湿度40%の大気中に放置し、その後、ポリアミック酸の貧溶媒(水80質量%、NMP20質量%)、室温中に基板全体を浸漬した。浸漬後、8分間放置し、基板上にポリアミック酸膜を析出させた。その後、基板を浴中から取り出し、基板上に析出したポリアミック酸膜を剥離した後に、純水中に3分間浸漬し、温度23℃、湿度40%の大気中で乾燥させてポリアミック酸膜を得た。なお、このポリアミック酸膜の一部をサンプリングして色相測定を行った。ポリアミック酸膜の色相の測定結果を表3に示す。
【0082】
ポリアミック酸膜を10cm角のピンテンターに張りつけて熱風炉内にセットした。約10℃/分の昇温速度で360℃まで加熱し、そのまま10分間保持する温度プロファイルで熱処理を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。
得られたポリイミド多孔質膜は、膜厚が32μm、空孔率が79%、ガーレー値が22秒/100ccであった。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面には連通する孔を多数有する多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.19μm、最大孔径が10μm以下であった。また、ポリイミド多孔質膜の断面には複数のマクロボイドが存在し、膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドが多数確認でき、横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲に入るボイドの数は75%以上であった。すなわち、得られた多孔質膜は、2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通した構造を有することが分かった。
ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度は約290℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚変化率は、1%以下であった。ポリイミド多孔質膜の全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0083】
実施例202〜205
調製例202〜205で得られたポリアミック酸溶液組成物B2〜E2を用いた以外は実施例201と同様の操作を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。得られたポリイミド多孔質膜の膜厚、空孔率、及びガーレー値を表3に示す。膜はいずれもこげ茶〜黒色で不透明であった。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面には連通する孔を多数有する多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.15〜0.20μmの範囲であり、最大孔径が10μm以下であった。また、ポリイミド多孔質膜の断面には複数のマクロボイドが存在し、前記(L/d)が0.5〜3の範囲に入るボイドの数は75%以上であった。すなわち、得られた多孔質膜は、2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通した構造を有することが分かった。また、すべてのポリイミド多孔質膜について、寸法安定性は200℃で1%以内であり、前記圧縮応力負荷後の膜厚変化率は1%以下であった。ポリイミド多孔質膜の全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0084】
実施例206
室温下、卓上自動コーターを用いて、表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角の基板上に、調製例207で得られたポリアミック酸溶液組成物G2を厚さ約250μmで、均一に流延塗布した。基板上に塗布したポリアミック酸溶液の上に、ポリアミック酸溶液液面に対して100μmの間隔を持つドクターナイフを用いて、保護溶媒層としてNMPを均一に塗布し1分間静置した。その後、90秒間、温度23℃、湿度40%の大気中に放置し、ポリアミック酸の貧溶媒(メタノール90質量%、水5質量%、NMP5質量%)、室温中に基板全体を浸漬した。浸漬後、10分間放置し、基板上にポリアミック酸膜を析出させた。その後、基板を浴中から取り出し、基板上に析出したポリアミック酸膜を剥離した後に、純水中に3分間浸漬し、温度23℃、湿度40%の大気中で乾燥させてポリアミック酸膜を得た。このポリアミック酸膜の一部をサンプリングして色相測定を行った。ポリアミック酸膜の色相の測定結果を表3に示す。
【0085】
ポリアミック酸膜を10cm角のピンテンターに張りつけて熱風炉内にセットした。約10℃/分の昇温速度で360℃まで加熱し、そのまま10分間保持する温度プロファイルで熱処理を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。
得られたポリイミド多孔質膜はこげ茶〜黒色で不透明であり、膜厚が29μm、空孔率が48%、ガーレー値が78秒/100ccであった。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、両表面共に、ポリイミドがネットワーク上に連なったような多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.17μm、最大孔径が1.6μmであった。また、ポリイミド多孔質膜の断面は、ポリイミドと空間とが共連続的に均質に連なった多孔質構造であり、膜横方向の長さが1μm以上のボイドは観察されなかった。すなわち、得られた膜は両表面に緻密層がない均一な膜であり、片面又は両面の表面に平均孔径が0.01〜5μmの孔を有し、該孔が一方の面から他の面に向かって非直線に連続する多孔質構造を有していることを確認した。
ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度は約280℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚変化率は、1%以下であった。ポリイミド多孔質膜の全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0086】
実施例207
室温下、卓上自動コーターを用いて、表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角の基板上に、調製例202で得られたポリアミック酸溶液組成物B2を厚さ約120μmで、均一に流延塗布した。その後、90秒間、温度23℃、湿度40%の大気中に放置し、その後、ポリアミック酸の貧溶媒(水80質量%、NMP20質量%)、室温中に基板全体を浸漬した。浸漬後、8分間放置し、基板上にポリアミック酸膜を析出させた。その後、基板を浴中から取り出し、基板上に析出したポリアミック酸膜を剥離した後に、純水中に3分間浸漬し、温度23℃、湿度40%の大気中で乾燥させてポリアミック酸膜を得た。なお、このポリアミック酸膜の一部をサンプリングして色相測定を行った。ポリアミック酸膜の色相の測定結果を表3に示す。
【0087】
ポリアミック酸膜を10cm角のピンテンターに張りつけて熱風炉内にセットした。約10℃/分の昇温速度で280℃まで加熱し、そのまま10分間保持する温度プロファイルで熱処理を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。
得られたポリイミド多孔質膜は、膜厚が33μm、空孔率が80%、ガーレー値が56秒/100ccであった。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面には連通する孔を多数有する多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.16μm、最大孔径が10μm以下であった。また、ポリイミド多孔質膜の断面には複数のマクロボイドが存在し、膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドが多数確認でき、横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲に入るボイドの数は75%以上であった。すなわち、得られた多孔質膜は、2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通した構造を有することが分かった。
ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度は約275℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚変化率は、1%以下であった。ポリイミド多孔質膜の全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0088】
実施例208
熱処理の最高温度を300℃にした以外は実施例207と同様の操作を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。得られたポリイミド多孔質膜は、膜厚が33μm、空孔率が79%、ガーレー値が41秒/100ccであった。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面には連通する孔を多数有する多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.17μm、最大孔径が10μm以下であった。また、ポリイミド多孔質膜の断面には複数のマクロボイドが存在し、膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドが多数確認でき、横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲に入るボイドの数は75%以上であった。すなわち、得られた多孔質膜は、2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通した構造を有することが分かった。
ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度は約280℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚変化率は、1%以下であった。ポリイミド多孔質膜の全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0089】
実施例209
熱処理の最高温度を400℃にした以外は実施例207と同様の操作を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。得られたポリイミド多孔質膜は、膜厚が31μm、空孔率が76%、ガーレー値が31秒/100ccであった。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面には連通する孔を多数有する多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.18μm、最大孔径が10μm以下であった。また、ポリイミド多孔質膜の断面には複数のマクロボイドが存在し、膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドが多数確認でき、横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲に入るボイドの数は75%以上であった。すなわち、得られた多孔質膜は、2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通した構造を有することが分かった。
ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度は約290℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚変化率は、1%以下であった。ポリイミド多孔質膜の全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0090】
実施例210
用いた溶液を調製例203で得られたポリアミック酸溶液組成物C2に変更した以外は実施例207と同様の操作を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。得られたポリイミド多孔質膜は、膜厚が34μm、空孔率が81%、ガーレー値が53秒/100ccであった。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面には連通する孔を多数有する多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.16μm、最大孔径が10μm以下であった。また、ポリイミド多孔質膜の断面には複数のマクロボイドが存在し、膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドが多数確認でき、横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲に入るボイドの数は75%以上であった。すなわち、得られた多孔質膜は、2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通した構造を有することが分かった。
ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度は約275℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚変化率は、1%以下であった。ポリイミド多孔質膜の全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0091】
実施例211
用いた溶液を調製例203で得られたポリアミック酸溶液組成物C2に変更した以外は実施例208と同様の操作を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。得られたポリイミド多孔質膜は、膜厚が32μm、空孔率が80%、ガーレー値が38秒/100ccであった。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面には連通する孔を多数有する多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.17μm、最大孔径が10μm以下であった。また、ポリイミド多孔質膜の断面には複数のマクロボイドが存在し、膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドが多数確認でき、横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲に入るボイドの数は75%以上であった。すなわち、得られた多孔質膜は、2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通した構造を有することが分かった。
ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度は約285℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚変化率は、1%以下であった。ポリイミド多孔質膜の全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0092】
実施例212
用いた溶液を調製例203で得られたポリアミック酸溶液組成物C2に変更した以外は実施例209と同様の操作を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。得られたポリイミド多孔質膜は、膜厚が31μm、空孔率が78%、ガーレー値が28秒/100ccであった。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面には連通する孔を多数有する多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.18μm、最大孔径が10μm以下であった。また、ポリイミド多孔質膜の断面には複数のマクロボイドが存在し、膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドが多数確認でき、横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲に入るボイドの数は75%以上であった。すなわち、得られた多孔質膜は、2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通した構造を有することが分かった。
ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度は約290℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚変化率は、1%以下であった。ポリイミド多孔質膜の全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0093】
比較例201
調製例206で得られたポリアミック酸溶液組成物F2を用いた以外は実施例201と同様の操作を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。得られた膜は薄い黄色で不透明であった。得られたポリイミド多孔質膜の膜厚、空孔率、及びガーレー値を表3に示す。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面には連通する孔を多数有する多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.18μm、最大孔径が10μm以下であった。また、ポリイミド多孔質膜の断面には複数のマクロボイドが存在し、横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比がL/d=0.5〜3の範囲に入るボイドの数は75%以上であった。すなわち、得られた多孔質膜は、2つの表面層とそれに挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質膜であって、該マクロボイド層は、該表面層と該表面層に結合した隔壁とに囲まれた複数のマクロボイドと複数の細孔を有し、該細孔及び該マクロボイドが互いに連通した構造を有することが分かった。また、ポリイミド多孔質膜の寸法安定性は200℃で1%以内であり、前記圧縮応力負荷後の膜厚変化率は1%以下であった。全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0094】
比較例202
調製例208で得られたポリアミック酸溶液組成物Hを用いた以外は実施例206と同様の操作を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。得られた膜は薄い黄色で不透明であり、膜厚が30μm、空孔率が48%、ガーレー値が69秒/100ccであった。
ポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、両表面共に、ポリイミドがネットワーク上に連なったような多孔質構造であり、表面の平均孔径は0.17μm、最大孔径が1.7μmであった。また、ポリイミド多孔質膜の断面は、ポリイミドと空間とが共連続的に均質に連なった多孔質構造であり、膜横方向の長さが1μm以上のボイドは観察されなかった。すなわち、得られた膜は両表面に緻密層がない均一な膜であり、片面又は両面の表面に平均孔径が0.01〜5μmの孔を有し、該孔が一方の面から他の面に向かって非直線に連続する多孔質構造を有していることを確認した。
ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度は約285℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚変化率は、1%以下であった。ポリイミド多孔質膜の全光線透過率、濁度、及び色相等の測定結果を表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
表3から、実施例201〜212では、熱イミド化処理を施す前のポリアミック酸は着色されていないが、熱イミド化処理により着色化が適切に行われ、光透過性が効果的に抑制されたことが分かる。また、比較例201、202も併せ考えると、多孔質膜の構造や機能は損なわれること無く着色されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の着色ポリイミド成形体は、例えば、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TAB用テープ、COF用テープ、カーバフィルム、補強フィルム、駆動ベルト等のベルト、チューブ等の電子部品や電子機器類の素材、銅線等の金属成形体等の成形物の被覆物として好適に用いることができる。また、本発明の着色ポリイミド多孔質膜は、耐熱性、遮光性、帯電防止性、熱伝導性等が求められる各種分野、例えば多層基板用の層間絶縁膜、液晶配向膜、カラーフィルター保護膜、光導波路、光学補償膜等に好適に利用することができる。
図1