(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無線ネットワークに参入していない無線通信機器を前記無線ネットワークに参入させるために必要な情報を、異なる通信プロトコルを用いて広告する無線通信機器を備えることを特徴とする請求項3記載の通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による管理装置及び通信システムについて詳細に説明する。
【0021】
〔第1実施形態〕
〈通信システムの全体構成〉
図2は、本発明の第1実施形態による通信システムの全体構成を示す図である。
図2に示す通り、本実施形態の通信システム1は、無線デバイス11a〜11e(無線通信機器)、無線デバイス12a〜12e(無線通信機器)、コンバーチブル無線デバイス13a〜13c(無線通信機器)、バックボーンルータ(BBR)20a,20b、コーディネータ30(管理装置)、タイムサーバ40、及びゲートウェイ装置(GW)50を備えており、無線ネットワークN1,N2を介したTDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)方式による無線通信が可能である。
【0022】
図2に示す例では、無線デバイス11a〜11d、無線デバイス12a、コンバーチブル無線デバイス13a,13b、及びバックボーンルータ20aによって無線ネットワークN1が形成されており、無線デバイス11e、無線デバイス12b〜12e、コンバーチブル無線デバイス13c、及びバックボーンルータ20bによって無線ネットワークN2が形成されている。尚、無線ネットワークN1,N2を形成する無線デバイス及びコンバーチブル無線デバイスの数は任意である。
【0023】
無線デバイス11a〜11e、無線デバイス12a〜12e、及びコンバーチブル無線デバイス13a〜13cは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場に設置されるフィールド機器であり、TDMA方式による無線通信が可能である。ここで、無線デバイス11a〜11eは、ISA100.11aに準拠した無線通信が可能であり、無線デバイス12a〜12eは、WirelessHART(登録商標)に準拠した無線通信が可能である。また、コンバーチブル無線デバイス13a〜13cは、ISA100.11aに準拠した無線通信とWirelessHART(登録商標)に準拠した無線通信との双方が可能であるとする。
【0024】
尚、
図2では、理解を容易にするために、ISA100.11aに準拠した無線通信が可能な無線デバイス11a〜11eを白丸で図示し、WirelessHART(登録商標)に準拠した無線通信が可能な無線デバイス12a〜12eを黒丸で図示している。また、ISA100.11aに準拠した無線通信とWirelessHART(登録商標)に準拠した無線通信との双方が可能なコンバーチブル無線デバイス13a〜13cを左半分が白とされ右半分が黒とされた丸印(白黒丸)で図示している。
【0025】
バックボーンルータ20a,20bは、無線ネットワークN1,N2と、コーディネータ30、タイムサーバ40、及びゲートウェイ50が接続されるバックボーンネットワークN3とを接続し、無線ネットワークN1,N2とバックボーンネットワークN3との間で送受信されるデータの中継を行う装置である。これらバックボーンルータ20a,20bは、コンバーチブル無線デバイス13a〜13c同様に、ISA100.11aに準拠した無線通信とWirelessHART(登録商標)に準拠した無線通信との双方が可能である。このため、
図2では、理解を容易にするために、バックボーンルータ20a,20bを、左半分が白とされ右半分が黒とされた四角のブロック(白黒ブロック)で図示している。
【0026】
図2において、白丸で図示された無線デバイスは、白丸で図示された他の無線デバイス、白黒丸で図示されたコンバーチブル無線デバイス、又は白黒ボックスで図示されたバックボーンルータと無線通信が可能である。黒丸で図示された無線デバイスは、黒丸で図示された他の無線デバイス、白黒丸で図示されたコンバーチブル無線デバイス、又は白黒ボックスで図示されたバックボーンルータと無線通信が可能である。
【0027】
また、白黒丸で図示されたコンバーチブル無線デバイスは、白丸で図示された無線デバイス、黒丸で図示された無線デバイス、白黒丸で図示された他のコンバーチブル無線デバイス、及び白黒ボックスで図示されたバックボーンルータと無線通信が可能である。このように、複数の無線規格に準拠した無線通信が可能なコンバーチブル無線デバイス13a〜13c及びバックボーンルータ20a,20bを配置することで、互いに異なる無線規格に準拠した無線通信を行う無線デバイス11a〜11eと無線デバイス12a〜12eとが混在した無線ネットワークN1,N2が形成されている。
【0028】
コーディネータ30は、
図1中の管理装置Mに相当するものであり、無線ネットワークN1,N2の管理を行う。具体的に、コーディネータ30は、無線ネットワークN1,N2を介して行われる全ての無線通信を把握し、無線ネットワークN1,N2を形成する無線デバイスに対してリンクの割り当てを行うことによって、無線ネットワークN1,N2を介して行われる無線通信の通信経路、通信タイミング、及び通信相手等の管理を行う。ここで、リンクとは、TDMA方式による無線通信で用いられるチャネル及びタイムスロットを規定するとともに通信方向を特定したものである(
図1中のリンクNL参照)。
【0029】
また、コーディネータ30は、上記のリンクに対して、無線ネットワークN1,N2を介して行われる無線通信を特徴づける属性である通信プロパティを設定した拡張リンクの管理を行う(
図1中の拡張リンクEL参照)。ここで、通信プロパティは、リンクで特定される通信方向に加えて、無線通信で用いられる通信プロトコル、周波数帯域、アンテナ、変調方式、暗号アルゴリズム、及び暗号鍵を示す情報、無線通信における伝送速度を示す情報、並びに無線ネットワークに接続されるサブネットを示す情報の少なくとも1つを含めることができる(
図1中の通信プロパティCP参照)。
【0030】
本実施形態においては、
図2に示す通り、シングルホップ接続に加えてマルチホップ接続が可能である。ここで、シングルホップ接続とは、無線デバイス又はコンバーチブル無線デバイスとバックボーンルータとが直接接続される接続形態であり、マルチホップ接続とは、無線デバイス又はコンバーチブル無線デバイスが、他の無線デバイス又は他のコンバーチブル無線デバイスを介して無線中継装置に接続される接続形態である。コーディネータ30は、無線ネットワークN1,N2内の通信経路上において隣接する無線デバイス又はコンバーチブル無線デバイスの通信プロパティが揃うように通信プロパティの管理を行う。
【0031】
タイムサーバ40は、バックボーンネットワークN3に接続されたバックボーンルータ20a,20b、コーディネータ30、及びゲートウェイ50の時刻を同期させるために設けられるサーバである。ゲートウェイ50は、バックボーンネットワークN3と他のネットワーク(図示省略)とを接続するために設けられる。尚、ゲートウェイ50もコーディネータ30の管理対象であり、無線ネットワークN1,N2を形成する無線デバイスやバックボーンルータ等との間の通信経路等の通信リソースはコーディネータ30によって管理される。
【0032】
〈無線デバイス及びコンバーチブル無線デバイスの構成〉
図3は、本発明の第1実施形態における無線デバイスの要部構成を示すブロック図であって、(a)は無線デバイス11,12のブロック図であり、(b)はコンバーチブル無線デバイス13のブロック図である。尚、無線デバイス11a〜11e、無線デバイス12a〜12e、及びコンバーチブル無線デバイス13a〜13cの各々を区別する必要がない場合には、これらを無線デバイス11、無線デバイス12、及びコンバーチブル無線デバイス13という。
【0033】
図3(a)に示す通り、無線デバイス11,12は、無線通信インターフェイス部61及びプロトコル処理部62を備える。無線通信インターフェイス部61は、プロトコル処理部62で処理された信号を無線信号として送信するとともに、外部から送信されてきた無線信号を受信し、その受信信号をプロトコル処理部62に出力する。プロトコル処理部62は、予め定められた無線通信規格に応じたプロトコル処理を行う。具体的に、無線デバイス11に設けられるプロトコル処理部62は、ISA100.11aに応じたプロトコル処理を行い、無線デバイス12に設けられるプロトコル処理部62は、WirelessHART(登録商標)に応じたプロトコル処理を行う。
【0034】
図3(b)に示す通り、コンバーチブル無線デバイス13は、無線通信インターフェイス部61、プロトコル処理部62a,62b、拡張リンクプロトコル処理部63、及び拡張リンク処理部64を備える。無線通信インターフェイス部61及びプロトコル処理部62a,62bは、無線デバイス11,12に設けられる無線通信インターフェイス部61及びプロトコル処理部62とそれぞれ同様のものである。但し、プロトコル処理部62a,62bは互いに異なる通信プロトコルに応じたプロトコル処理を行う。
【0035】
例えば、プロトコル処理部62aは、ISA100.11aに応じたプロトコル処理を行い、プロトコル処理部62bは、WirelessHART(登録商標)に応じたプロトコル処理を行う。尚、
図3では、2つのプロトコル処理部62a,62bを図示しているが、プロトコル処理部は、コンバーチブル無線デバイス13で利用可能な通信プロトコルの数と同数だけ設けられる。
【0036】
拡張リンクプロトコル処理部63は、通信プロパティの送受信を行う。具体的に、拡張リンクプロトコル処理部63は、プロトコル処理部62a,62bから拡張リンクに含まれる通信プロパティを受信し、受信した通信プロパティに応じた属性の設定を行う。また、プロトコル処理部62a,62bから受信した拡張リンクを拡張リンク処理部64に出力する。拡張リンク処理部64は、プロトコル処理部62a,62bの処理によって得られるリンクと、拡張リンクプロトコル処理部63から得られる通信プロパティとに応じた処理を行う。例えば、無線通信で使用する通信プロトコルやアンテナを切り替える処理等を行う。
【0037】
〈コーディネータの構成〉
図4は、本発明の第1実施形態におけるコーディネータの要部構成を示すブロック図である。
図4に示す通り、コーディネータ30は、バックボーンインターフェイス部31、仮想インターフェイス部32a,32b、プロトコル処理部33a,33b、及び拡張リンク管理部34を備える。バックボーンインターフェイス部31は、仮想インターフェイス部32a,32bからの信号をバックボーンネットワークN3に送信するとともに、バックボーンネットワークN3から送信されてきた信号を受信し、その受信信号を仮想インターフェイス部32a,32bに出力する。
【0038】
仮想インターフェイス部32a,32bは、通信プロトコルの識別を行うものであり、バックボーンインターフェイス部31とプロトコル処理部33a,33bとの間に介在して設けられる。プロトコル処理部33a,33bは、予め定められた無線通信規格に応じたプロトコル処理を行う。具体的に、プロトコル処理部33aは、ISA100.11aに応じたプロトコル処理を行い、プロトコル処理部33bは、WirelessHART(登録商標)に応じたプロトコル処理を行う。尚、
図3では、2つのプロトコル処理部33a,33bを図示しているが、プロトコル処理部は、コーディネータ30で利用可能な通信プロトコルの数と同数だけ設けられる。
【0039】
拡張リンク管理部34は、テンプレートデータベースDB1(第1データベース)及び通信プロパティデータベースDB2(第2データベース)を備えており、これらのデータベースを参照しつつ拡張リンクの管理を行うとともに、無線ネットワークN1,N2を形成する無線デバイスやバックボーンルータ等に対する通信プロパティの設定を行う。テンプレートデータベースDB1は、無線ネットワークN1,N2を形成する無線デバイスやバックボーンルータ等に対して通信プロパティを設定する際に必要となる情報(テンプレート)が格納されるデータベースである。これに対し、通信プロパティデータベースDB2は、無線ネットワークN1,N2を形成する無線デバイスやバックボーンルータ等に対して現に設定している通信プロパティが格納されるデータベースである。
【0040】
図5は、本発明の第1実施形態において用いられるデータベースの一例を示す図であって、(a)はテンプレートデータベースDB1の一例を示す図であり、(b)は通信プロパティデータベースDB2の一例を示す図である。
図5(a)に示す通り、テンプレートデータベースDB1は、例えば以下に示す情報からなるテンプレートを格納している。
・機器識別子(Device Type ID)
・利用可能な通信プロトコル(Support protocols)
・無線通信に必要なタイムスロットの占有時間(Occupy Timeslot)
・通信プロトコルの切り替えに要する時間(Protocol Switching margin)
・同時に使用できる無線サブネット数(Number of subnets)
・無線通信インターフェイス部の仕様(Wireless I/F)
・無線通信インターフェイス部の数(Number of Wireless I/F)
・デフォルトの通信プロパティ(Default Property)
【0041】
また、
図5(b)に示す通り、通信プロパティデータベースDB2は、無線ネットワークN1,N2を形成する無線デバイスやバックボーンルータ毎に、例えば以下に示情報からなる通信プロパティを格納している。
・機器識別子(Owner Device ID)
・通信相手の機器識別子(Peer Device ID)
・通信方向(Direction)
・通信プロトコル(Protocol)
・タイムスロットの開始時刻(Timeslot Start)
・タイムスロットの間隔(Cycle)
・タイムスロットの周期(Duration)
・チャネル(Channel)
・通信プロパティのグループ識別子(Property Group)
【0042】
図5(a),(b)に示す情報はあくまでも一例であり、他の情報を用いても良い。例えば、無線デバイスが複数のアンテナを備える場合には、無線通信に用いるアンテナを特定する情報を用いても良い。尚、上記通信プロパティのグループ識別子は、複数の通信プロパティを関連づける目的で使用される識別子である。例えば、双方向通信で2つの通信プロパティが関連する場合、或いは通信経路に沿って通信プロパティを割り当てる場合等に使用される。このグループ識別子を用いて複数の通信プロパティを同じグループとして取り扱うことで、通信プロパティの管理を容易にすることができる。
【0043】
〈通信プロパティ設定時の動作〉
次に、上記構成における通信システムにおいて、通信プロパティが設定される際の動作について説明する。以下では、理解を容易にするために、コンバーチブル無線デバイス13aが、WirelessHART(登録商標)に準拠した無線通信を新たに開始するために、コーディネータ30に対して通信リソースの割り当て要求を行い、コーディネータ30がコンバーチブル無線デバイス13aに対して通信プロパティを割り当てる場合を例に挙げて説明する。尚、コンバーチブル無線デバイス13aは、初期状態において、無線デバイス11d及びバックボーンルータ20aとISA100.11aに準拠した無線通信が可能な状態にあるものとする。
【0044】
図6は、本発明の第1実施形態における通信プロパティ設定時の動作を示すフローチャートである。尚、
図6中に示すステップS0〜S2のうち、ステップS0,S2は、通信プロパティ設定時にコンバーチブル無線デバイス13aで行われる処理であり、ステップS1は、同通信プロパティ設定時にコーディネータ30で行われる処理である。
【0045】
まず、コンバーチブル無線デバイス13aからコーディネータ30に対し、WirelessHART(登録商標)に準拠した新たな無線通信を行うために必要な通信リソースの割り当て要求が送信される(ステップS0)。尚、この割り当て要求の送信処理は、ISA100.11aに応じたプロトコル処理を行うプロトコル処理部62a(
図3(b)参照)で行われる。コンバーチブル無線デバイス13aから送信された通信リソースの割り当て要求は、無線ネットワークN1、バックボーンルータ20a、及びバックボーンネットワークN3を順に介してコーディネータ30のバックボーンインターフェイス部31で受信される(ステップS11)。
【0046】
バックボーンインターフェイス部31で受信された通信リソースの割り当て要求は、仮想インターフェイス部32a,32bに出力され、通信リソースの割り当て要求の送信に用いられた通信プロトコルが識別されるとともに、その識別結果に応じたプロトコル処理がプロトコル処理部33a,33bで行われる(ステップS12)。ここでは、通信リソースの割り当て要求の送信に用いられた通信プロトコルがISA100.11aであると仮想インターフェイス部32aで識別され、ISA100.11aに応じたプロトコル処理がプロトコル処理部33aで行われる。このプロトコル処理で新たなリンクを割り当てる必要が生じた場合には、プロトコル処理部33aから拡張リンク管理部34に対してリンクの割り当て要求が出力される。
【0047】
リンクの割り当て要求が入力されると、拡張リンク管理部34は、テンプレートデータベースDB1を検索し、新たな無線通信で用いられる通信プロトコルに関する情報を取得する処理を行う(ステップS13)。具体的に、拡張リンク管理部34は、通信リソースの割り当て要求を行ったコンバーチブル無線デバイス13aの機器識別子と、新たな無線通信で用いられる通信プロトコルを示す情報とをキーとしてテンプレートデータベースDB1を検索し、無線通信に必要なタイムスロットの占有時間(Occupy Timeslot)や通信プロトコルの切り替えに要する時間(Protocol Switching margin)等の情報を取得する(
図5(a)参照)。
【0048】
通信プロトコルに関する情報を取得すると、拡張リンク管理部34は、通信プロパティデータベースDB2を検索し、コンバーチブル無線デバイス13aに設定済みのリンク及び通信プロパティを取得する処理を行う(ステップS14)。具体的に、拡張リンク管理部34は、通信リソースの割り当て要求を行ったコンバーチブル無線デバイス13aの機器識別子をキーとして通信プロパティデータベースDB2を検索して、上記のリンク及び通信プロパティを取得する。
【0049】
次いで、拡張リンク管理部34は、ステップS14の処理で取得した通信プロパティからコンバーチブル無線デバイス13aの通信相手(無線デバイス11d、コンバーチブル無線デバイス13b、及びバックボーンルータ20a)の機器識別子を取得する。そして、これらの機器識別子をキーとして通信プロパティデータベースDB2を再度検索し、コンバーチブル無線デバイス13aの通信相手に設定済みのリンク及び通信プロパティを取得する処理を行う(ステップS15)。かかる処理を行うのは、既存の通信に影響を及ぼすことなく、新たなリンク及び通信プロパティを割り当てるためである。
【0050】
以上の処理が終了すると、拡張リンク管理部34は、ステップS14,S15で取得したリンク及び通信プロパティから、
図7に示すチャネル、タイムスロット、及び通信プロパティの割り当て状況を示す通信リソースマップを作成する。
図7は、本発明の第1実施形態において作成される通信リソースマップの一例を示す図である。尚、
図7中の通信プロパティCP10は、ステップS14で取得された通信プロパティであり、通信プロパティCP11はステップS15で取得された通信プロパティである。
【0051】
続いて、拡張リンク管理部34は、ステップS13で取得した通信プロトコルに関する情報を勘案して割り当て可能なリンクを求め、新たな通信プロパティを設定した拡張リンクを作成する(ステップS16)。具体的に、拡張リンク管理部34は、ステップS13で取得した無線通信に必要なタイムスロットの占有時間(Occupy Timeslot)や通信プロトコルの切り替えに要する時間(Protocol Switching margin)等を示す情報を勘案して割り当て可能なチャネル及びタイムスロットを求める。そして、それらのチャネル及びタイムスロットに対し、WirelessHART(登録商標)に準拠した無線通信を可能とするための通信プロパティ(
図7中の通信プロパティCP12)を割り当てる。
【0052】
以上の処理が終了すると、拡張リンク管理部34で作成された拡張リンクは、プロトコル処理部33aに出力され、プロトコル処理部33aの処理によってバックボーンネットワークN3に送信される(ステップS17)。バックボーンネットワークN3に送信された拡張リンク割り当てメッセージは、バックボーンルータ20a及び無線ネットワークN1を順に介してコンバーチブル無線デバイス13aの無線通信インターフェイス部61で受信される(ステップS21)。
【0053】
無線通信インターフェイス部61で受信された拡張リンク割り当てメッセージはプロトコル処理部62aに出力され、拡張リンクに含まれるリンクの処理が行われる(ステップS22)。これに対し、拡張リンクに含まれる通信プロパティ(
図7中の通信プロパティCP12)は、プロトコル処理部62aで全てを処理できるとは限らないため、プロトコル処理部62aから拡張リンクプロトコル処理部63に出力されて処理される。具体的には、拡張リンクプロトコル処理部63において、拡張リンクに含まれる通信プロパティで規定される属性を設定する処理が行われる(ステップS23)。
【0054】
続いて、拡張リンクプロトコル処理部63から拡張リンク処理部64に対して拡張リンクに含まれる通信プロパティが出力される。すると、拡張リンク処理部64は、ステップS22で処理されたリンクとステップS23の処理後に得た通信プロパティとに基づいて、タイムスロット毎に通信プロトコルを切り替えることが可能になる(ステップS24)。
【0055】
以上説明した処理によって、コンバーチブル無線デバイス13aは、ISA100.11aに準拠した無線通信に加えて、WirelessHART(登録商標)に準拠した新たな無線通信が可能な状態になる。しかしながら、コンバーチブル無線デバイス13aが実施に無線通信を行うためには、コンバーチブル無線デバイス13aの通信相手(例えば、無線デバイス11dやコンバーチブル無線デバイス13b)に対する設定も必要になる。このため、コーディネータ30は、
図6に示すステップS13以降の処理と同様の処理を行ってコンバーチブル無線デバイス13aの通信相手に対する設定を行う。
【0056】
具体的に、コンバーチブル無線デバイス13aの通信相手であるコンバーチブル無線デバイス13bについては以下の処理が行われる。まず、コーディネータ30の拡張リンク管理部34が、
図6中のステップS13と同様に、テンプレートデータベースDB1を検索し、コンバーチブル無線デバイス13bについての通信プロトコルに関する情報を取得する処理を行う。次に、拡張リンク管理部34が、
図6中のステップS14と同様に、通信プロパティデータベースDB2を検索し、コンバーチブル無線デバイス13bに設定済みのリンク及び通信プロパティを取得する処理を行う。
【0057】
次いで、拡張リンク管理部34が、
図6中のステップS15と同様に、コンバーチブル無線デバイス13bの通信相手(無線デバイス12a及びコンバーチブル無線デバイス13a)の機器識別子を取得する。そして、通信プロパティデータベースDB2を再度検索し、コンバーチブル無線デバイス13bの通信相手に設定済みのリンク及び通信プロパティを取得する処理を行う。
【0058】
以上の処理が終了すると、拡張リンク管理部34が、
図6中のステップS16と同様に、
図7に示す通信リソースマップと同様のものを作成し、コンバーチブル無線デバイス13bについての通信プロトコルに関する情報を勘案して割り当て可能なリンクを求め、新たな通信プロパティを設定した拡張リンクを作成する。以上の処理によって作成された拡張リンクはコンバーチブルデバイス13bに送信され、
図6中のステップS17〜S24と同様に、拡張リンクをコンバーチブルデバイス13bに設定する処理が行われる。
【0059】
以降、コンバーチブル無線デバイス13aが、ISA100.11a及びWirelessHART(登録商標)に準拠した無線通信が可能な状態において、コーディネータ30に対して通信リソースの割り当て要求を行う場合、ISA100.11aの通信リソースの割り当て要求は、ISA100.11aに応じたプロトコル処理を行うプロトコル処理部62a(
図3(b)参照)で行い、WirelessHART(登録商標)の通信リソースの割り当て要求は、WirelessHART(登録商標)に応じたプロトコル処理を行うプロトコル処理部62b(
図3(b)参照)で行うことができる。
【0060】
コンバーチブル無線デバイス13aの通信相手が無線デバイス11dの場合においても、基本的にはコンバーチブル無線デバイス13bについて行われる処理と同様の処理が行われる。但し、
図6中のステップS13において、テンプレートデータベースDB1を検索して無線デバイス11dについての通信プロトコルに関する情報を取得すると、拡張リンク管理部34は、無線デバイス11dが1つの通信プロトコルのみが利用可能な通常の無線デバイスであると認識する。このため、拡張リンク管理部34は、
図6中のステップS16において、無線デバイス11dが通常の無線デバイスであることを勘案してリンクの割り当てを行う。尚、無線デバイス11dが通常の無線デバイスであるため、
図6中のステップS23の処理は省略される。
【0061】
〈無線ネットワークへの参加手続〉
図2に示す通り、本実施形態の通信システム1には、ISA100.11aに準拠した通信プロトコル(「通信プロトコルA」)を利用する無線デバイス11a〜11eと、WirelessHART(登録商標)に準拠した通信プロトコル(「通信プロトコルC」)を利用する無線デバイス12a〜12eとが混在した無線ネットワークN1,N2が形成されている。本実施形態では、無線デバイス11a〜11eに対する広告と無線デバイス12a〜12eに対する広告との双方が提供可能な広告ルータを設けて、無線デバイス11a〜11e及び無線デバイス12a〜12eの何れであっても無線ネットワークN1,N2への接続を可能としている。
【0062】
図8は、本発明の第1実施形態における無線ネットワークへの参加手続を説明するための図である。尚、
図8においては、説明を簡単にするために、
図2中の無線ネットワークN1、タイムサーバ40、及びゲートウェイ50の図示を省略している。また、
図8においては、
図2中の無線ネットワークN2を形成する無線デバイスのうち、無線デバイス11e、無線デバイス12b、コンバーチブル無線デバイス13cのみを図示している。
【0063】
ここで、無線デバイス11e及び無線デバイス12bは、無線ネットワークN2に接続(参加)しようとしている無線デバイスであり、コンバーチブル無線デバイス13cは、これら無線デバイス11e及び無線デバイス12bを無線ネットワークN2に接続させるための情報を広告として提供する広告ルータの機能を備えるとする。無線デバイス11eは「通信プロトコルA」を利用しており、無線デバイス12bは「通信プロトコルC」を利用しているため、コンバーチブル無線デバイス13cは、コーディネータ30によって設定された拡張リンクに従って、「通信プロトコルA」用の広告A1と「通信プロトコルC」用の広告A2とを提供する。
【0064】
図9は、本発明の第1実施形態における広告用の拡張リンクを説明するための図である。
図9中の通信プロパティCP13は、広告A1についての拡張リンクに設定された拡張プロパティであり、「通信プロトコルA」を示す情報が設定されている。これに対し、
図9中の通信プロパティCP14は、広告A2についての拡張リンクに設定された拡張プロパティであり、「通信プロトコルC」を示す情報が設定されている。
図9に示す例では、広告A1,A2は異なるチャネルを用いて交互に提供されることが分かる。
【0065】
無線デバイス11eは、「通信プロトコルA」のみが利用可能であるため、コンバーチブル無線デバイス13cから提供される「通信プロトコルC」用の広告A2を受信することはできず、「通信プロトコルA」用の広告A1のみを受信する。これに対し、無線デバイス12bは、「通信プロトコルC」のみが利用可能であるため、コンバーチブル無線デバイス13cから提供される「通信プロトコルA」用の広告A1を受信することはできず、「通信プロトコルC」用の広告A2のみを受信する。
【0066】
ここで、コンバーチブル無線デバイス13cから提供される広告A1,A2には、無線デバイス11eからの参加要請J1,J2をそれぞれ送信するために用いるリンクを指定する情報が含まれている。このため、広告A1,A2を受信した無線デバイス11e及び無線デバイス11bは、受信した広告A1,A2に含まれる情報で指定されるリンクを用いてコンバーチブル無線デバイス13cに対して参加要請J1,J2をそれぞれ送信することになる。尚、参加要請J1,J2の送信に用いられるリンクは、コーディネータ30によって、広告A1,A2の提供に用いられる拡張リンクとは別個に設定される。
【0067】
尚、コンバーチブル無線デバイス13cから提供される広告A1,A2を限定することで、無線ネットワークN2に参加する無線デバイスを限定することも可能である。例えば、コンバーチブル無線デバイス13cから「通信プロトコルA」用の広告A1のみを提供すれば「通信プロトコルA」が利用可能な無線デバイスのみを参加させることができ、「通信プロトコルC」用の広告A2のみを提供すれば「通信プロトコルC」が利用可能な無線デバイスのみを参加させることができる。
【0068】
以上の通り、本実施形態では、TDMA方式による無線通信で用いられる従来のリンクに対して通信プロトコルを示す情報が加えられた拡張リンクをコーディネータ30で管理するとともに、拡張リンクに含まれる通信プロトコルを示す情報を、複数の通信プロトコルを利用可能なコンバーチブル無線デバイス13a〜13cに設定している。このため、通信相手との間で通信プロトコルが整合するように管理すれば、異なる通信プロトコルを利用する無線デバイスが無線ネットワークN1,N2に混在していても無線ネットワークN1,N2を介した無線通信が可能である。
【0069】
〔第2実施形態〕
図10は、本発明の第2実施形態による通信システムの要部構成を示す図である。
図10に示す通り、本実施形態の通信システム2は、無線デバイス11f,11g、コンバーチブル無線デバイス13d、バックボーンルータ20c、及びコーディネータ30を備えており、拡張リンクを用いてコンバーチブル無線デバイス13dが備えるアンテナAT1,AT2の切り替えが可能である。本実施形態では、コーディネータ30で用いられるテンプレートデータベースDB1及び通信プロパティデータベースDB2にアンテナAT1,AT2を特定する情報が含まれており、この情報を用いることによってアンテナAT1,AT2の切り替えを可能としている。
【0070】
無線デバイス11f,11g、コンバーチブル無線デバイス13d、バックボーンルータ20cは、
図2に示す無線デバイス11a〜11e、コンバーチブル無線デバイス13a〜13c、バックボーンルータ20a,20bとそれぞれ同様のものである。但し、コンバーチブル無線デバイス13dは、切り替えが可能であってゲインの異なる2本のアンテナAT1,AT2を備えている点がコンバーチブル無線デバイス13a〜13cとは相違する。尚、
図10では、アンテナAT1から送信される電波が届く範囲を電波到達範囲R1として図示し、アンテナAT2から送信される電波が届く範囲を電波到達範囲R2として図示している。アンテナAT1はアンテナAT2よりもゲインが小さいため、電波到達範囲R1は、電波到達範囲R2よりも狭い。
【0071】
コーディネータ30は、
図2に示すコーディネータ30と同様のものである。但し、
図2に示すコーディネータ30は、通信プロパティに通信プロトコルを含む拡張リンクを管理していたのに対し、
図10に示すコーディネータ30は、通信プロパティにアンテナAT1,AT2の何れか一方を特定する情報を含む拡張リンクを管理する点において相違する。
【0072】
このようなアンテナAT1,AT2を特定する情報が加えられた拡張リンクが管理されることによって、アンテナAT1,AT2の切り替えを行うことが可能になる。例えば、コンバーチブル無線デバイス13dが近隣に設置された無線デバイス11fと無線通信を行う場合にはゲインの小さいアンテナAT1を用い、コンバーチブル無線デバイス13dが離間した位置に設置された無線デバイス11gと無線通信を行う場合にはゲインの大きなアンテナAT2を用いるといった具合である。
【0073】
ここで、電波到達範囲R1内に設置された無線デバイス11fは、電波到達範囲R2内にも設置されていることになる。このため、コンバーチブル無線デバイス13dが広告ルータの機能を備える場合には、アンテナAT1から送信される広告とアンテナAT2から送信される広告との双方が無線デバイス11fで受信されることになる。すると、無線デバイス11fは、アンテナAT2から送信される広告によって無線ネットワークN4への参加要請を行う場合が考えられる。このような場合には、無線デバイス11fを無線ネットワークN4に参加させた後に、アンテナの切り替えを行ってアンテナAT1を用いて無線デバイス11fと無線通信を行ってリンクや通信プロパティの再設定を行えば良い。
【0074】
〔第3実施形態〕
図11は、本発明の第3実施形態による通信システムの要部構成を示す図である。
図11に示す通り、本実施形態の通信システム3は、無線デバイス11a〜11d、無線デバイス12f、コンバーチブル無線デバイス14、バックボーンルータ20a、コーディネータ30、タイムサーバ40、及びゲートウェイ50を備えており、拡張リンクを用いて複数の無線サブネットN11,N12を接続することが可能である。
【0075】
無線サブネットN11は、無線デバイス11a〜11d、コンバーチブル無線デバイス14、及びバックボーンルータ20aで形成される本来の無線ネットワークであり、無線サブネットN12は、無線デバイス12fに対するOTA(Over The Air)プロビジョニングを行うためにコンバーチブル無線デバイス14及び無線デバイス12fで形成される予備的な無線ネットワークである。ここで、プロビジョニングとは、無線デバイス12fが無線サブネットN11に参加するときに必要となる情報を予め設定する処理をいい、上記のOTAプロビジョニングとは、無線デバイス12fが参加しようとしている無線サブネットN11を経由してプロビジョニングを行う手法である。
【0076】
このように、本来のネットワークである無線サブネットN11とOTAプロビジョニング用の予備的な無線サブネットN12とを分離するのは、セキュリティを維持するためである。つまり、OTAプロビジョニングの段階では、無線デバイス12fの認証が行われておらず、無線サブネットN11で用いられている暗号鍵K11を無線デバイス12fに付与することはできない。このため、無線サブネットN11から分離された無線サブネットN12を設け、暗号鍵K11とは異なる暗号鍵K12を付与することでセキュリティを維持している。尚、
図11中に示す暗号鍵K21は、コーディネータ30と無線デバイス11dとの通信に用いられる暗号鍵であり、暗号鍵K22は、コーディネータ30と無線デバイス12fとの通信に用いられる暗号鍵である。
【0077】
コンバーチブル無線デバイス14は、無線サブネットN11を介した無線通信と、無線サブネットN12を介した無線通信とが可能であり、無線サブネットN11,N12を接続するとともに、無線デバイス12fに対するOTAプロビジョニングを行うプロビジョニング対応ルータの機能を備える。
図12は、本発明の第3実施形態におけるコンバーチブル無線デバイスの要部構成を示すブロック図である。
【0078】
図3(b)に示すコンバーチブル無線デバイス13が、
図3(a)に示す無線デバイス11,12のプロトコル処理部62を拡張してプロトコル処理部62a,62bを加えた構成であるのに対し、コンバーチブル無線デバイス14は、
図12に示す通り、サブネット処理部65a,65bを加えた構成である。サブネット処理部65aは無線サブネットN11を介した無線通信を行うために必要な処理を行い、サブネット処理部65bは無線サブネットN12を介した無線通信を行うために必要な処理を行う。
【0079】
コーディネータ30は、通信プロパティにサブネットID(無線サブネットN11,N12の各々に一意に割り当てられている識別子)を含む拡張リンクを管理する。このようなサブネットIDを加えた拡張リンクを管理することによって、無線サブネットN11を介した無線通信と無線サブネットN12を介した無線通信とを切り替えることが可能になり、これにより無線サブネットN11,N12が接続される。
【0080】
ここで、コーディネータ30は、無線サブネットN11,N12でチャネルやタイムスロットが衝突(重複)しないように、拡張リンクの割り当てを行う必要がある。具体的には、無線サブネットN11,N12に割り当てた情報を通信プロパティデータベースDB2に登録し、コンバーチブル無線デバイス14のリンクに対して
図13に示す通り通信プロパティCP21,CP22,CP31〜CP33として管理する。
図13は、本発明の第3実施形態における無線サブネット接続用の拡張リンクを説明するための図である。このような管理を行うことにより、無線サブネットN11,N12でチャネルやタイムスロットの重複した割り当て(衝突)が生ずるのを防止することができる。
【0081】
〔第4実施形態〕
図14は、本発明の第4実施形態で用いられる通信プロパティデータベースの一例を示す図である。
図14に示す通り、本実施形態で用いられるプロパティデータベースDB2は、
図5(b)に示すプロパティデータベースDB2にMAC(Media Access Control:メディアアクセス制御)層を示す情報(MAC)を追加したものである。尚、MAC層を示す情報は、プロパティデータベースDB2のみならずテンプレートデータベースDB1にも追加されている。
【0082】
本実施形態では、MAC層を示す情報が追加されたテンプレートデータベースDB1及び通信プロパティデータベースDB2をコーディネータ30で管理することによって、コンバーチブル無線デバイスで用いられるMAC層の切り替えを可能としている。例えば、IEEE802.15.4に準拠したMAC層とIEEE802.15.4eに準拠したMAC層とをコンバーチブル無線デバイスに設け、コーディネータ30で管理するテンプレートデータベースDB1及び通信プロパティデータベースDB2にこれらの何れか一方を示す情報(
図14中に示す「15.4」又は「15.4e」)を格納することによって上記のMAC層の切り替えが可能である。
【0083】
〔第5実施形態〕
図15は、本発明の第5実施形態で用いられる通信プロパティデータベースの一例を示す図である。
図15に示す通り、本実施形態で用いられるプロパティデータベースDB2は、
図5(b)に示すプロパティデータベースDB2に周波数帯域を示す情報(Freq)を追加したものである。尚、第4実施形態と同様に、周波数帯域を示す情報は、プロパティデータベースDB2のみならずテンプレートデータベースDB1にも追加されている。
【0084】
本実施形態では、周波数帯域を示す情報が追加されたテンプレートデータベースDB1及び通信プロパティデータベースDB2をコーディネータ30で管理することによって、コンバーチブル無線デバイスが使用する周波数帯域の使い分けを可能としている。例えば、
図3(b)に示す無線通信インターフェイス部61(物理層)として、2.4GHz近辺の周波数帯域(IMSバンド:Industry Science Medical band)を用いるものと、1GHz近辺の周波数帯域(Sub 1GHz)を用いるものとをコンバーチブル無線デバイスに設ける。そして、コーディネータ30で管理するテンプレートデータベースDB1及び通信プロパティデータベースDB2にこれらの何れか一方を示す情報(
図14中に示す「2.4GHz」又は「915MHz」)を格納することによって、上記の周波数帯域の使い分けが可能である。
【0085】
〔第6実施形態〕
図16は、本発明の第6実施形態におけるコンバーチブル無線デバイスの要部構成を示すブロック図である。
図16に示す通り、本実施形態におけるコンバーチブル無線デバイス15は、
図3(b)に示すコンバーチブル無線デバイス13に対して伝送速度調整部66を追加した構成であり、コーディネータ30の管理の下で伝送速度の調整が可能である。尚、コンバーチブル無線デバイス15の伝送速度を示す情報は、テンプレートデータベースDB1及びプロパティデータベースDB2に格納されており、これらのデータベースに格納された情報に基づいてコーディネータ30がコンバーチブル無線デバイス15の伝送速度を調整する。
【0086】
伝送速度調整部66は、無線通信インターフェイス部61を介して行われる無線通信の通信品質を監視し、その監視結果を拡張リンク処理部64に出力する。例えば、伝送されるデータ量や頻度に基づいて帯域幅の不足が生じた否かを監視し、帯域幅の不足等が生じた場合には帯域幅が不足している旨を示す情報を拡張リンク処理部64に出力する。尚、拡張リンク処理部64は、伝送速度調整部66の監視結果に応じて、コーディネータ30に対して既存通信リソースの変更を要求する。
【0087】
図17は、本発明の第6実施形態において割り当てられる拡張リンクを説明するための図であって、(a)は初期状態における拡張リンクの割り当て状況を示す図であり、(b)は割り当てが変更された後の拡張リンクの割り当て状況を示す図である。まず、初期状態においては、同一の通信プロパティCP41が割り当てられた3つの拡張リンクと、通信プロパティCP42が割り当てられた1つの拡張リンクとが設定されているとする。尚、通信プロパティCP41が割り当てられている拡張リンクを用いて通信を行うコンバーチブル無線デバイスは、通信プロパティCP42が割り当てられている拡張リンクを用いて通信を行うコンバーチブル無線デバイスに比べて3倍の帯域幅を有する。
【0088】
いま、コンバーチブル無線デバイス15が、
図17(a)に示す通信プロパティCP42が割り当てられている拡張リンクを用いて通信を行っている場合を考える。かかる通信を行っている間、コンバーチブル無線デバイス15に設けられた伝送速度調整部66は、通信品質を常時監視している。例えば、伝送されるデータ量や頻度に基づいて、帯域幅の不足が生じたか否かを監視している。帯域幅の不足が生じた場合には、その旨を示す情報が拡張リンク処理部64に出力され、コンバーチブル無線デバイス15からコーディネータ30に対し、通信プロパティCP42に紐付けしたリンクの追加を要求する信号が送信される。尚、この要求は、通信リソースの新規の割り当てを要求するものではなく、既存の通信リソースの変更を要求するものである。
【0089】
コンバーチブル無線デバイス15からの要求を受信すると、コーディネータ30は、この要求を拡張リンク管理部34(
図4参照)で処理し、
図17(b)に示す通り、通信プロパティCP42が割り当てられる拡張リンクの数を追加する。このようにして変更された拡張リンクを示す情報は、コーディネータ30からコンバーチブル無線デバイス15へ送信され、拡張リンクプロトコル処理部63で処理される。この処理内容が拡張リンク処理部64に反映されると、更新された拡張リンク(通信プロパティCP42が割り当てられた2つの拡張リンク)を用いて通信が行われる。
【0090】
尚、以上の説明では、拡張リンクを追加して帯域幅を広げる例について説明したが、拡張リンクを開放して帯域幅を狭めることも可能である。また、帯域幅を増減させて伝送速度の調整を行う以外に変調方式の切り替えを行うことも可能である。変調方式の切り替えを行う場合には、テンプレートデータベースDB1及びプロパティデータベースDB2に変調方式を示す情報が格納される。更に、変調方式に応じて帯域幅が異なる場合には、変調方式毎の占有帯域幅を示す情報をテンプレートデータベースDB1に格納し、コーディネータ30の拡張リンク管理部34がこの情報を参照して処理を行えば良い。
【0091】
図18は、本発明の第6実施形態における変調方式の切り替えを説明するための図である。
図18に示す同一の通信プロパティCP41が割り当てられた3つの拡張リンクでは、例えばWi−Fi(登録商標)で規定される変調方式が用いられ、通信プロパティCP42が割り当てられた1つの拡張リンクでは、例えばIEEE802.15.4で規定される変調方式が用いられる。本実施形態では、このように異なる変調方式を切り替えることが可能である。
【0092】
尚、通信メディアによってはMTU値(Maximum Transmission Unit値:一度の転送で送信できるデータの最大値)が異なる場合がある。例えば、コンバーチブル無線デバイス15が通信経路上のルータデバイスとしてパケットを転送するものである場合に、データの送信元である無線デバイスで設定されたMTU値が、コンバーチブル無線デバイス15に設定されたMTU値よりも大きな場合である。このような場合には、伝送速度調整部66がパケットの大きさを検知し、検知したパケットの大きさに応じてMTU値を変更するのが望ましい。MTU値を変更する方法としては、コンバーチブル無線デバイス15が送信元の無線デバイスに対して直接パケットサイズが超過している旨を通知する方法や、コンバーチブル無線デバイス15がコーディネータ30に対してパケットサイズが超過している旨を通知し、コーディネータ30が送信元の無線デバイスに対してMTU値を設定する方法が挙げられる。
【0093】
〔第7実施形態〕
図19は、本発明の第7実施形態におけるコンバーチブル無線デバイスの要部構成を示すブロック図である。
図19に示す通り、本実施形態におけるコンバーチブル無線デバイス16は、
図3(b)に示すコンバーチブル無線デバイス13に対してプロトコル解析部67を追加するとともに、
図8に示すコンバーチブル無線デバイス13cと同様の広告ルータの機能を有する構成である。かかる構成のコンバーチブル無線デバイス16は、参加要請のあった無線デバイスで用いられる通信プロトコルの解析を可能とするものである。
【0094】
図8を用いて説明した通り、広告ルータの機能を備えるコンバーチブル無線デバイス13cは、ISA100.11aに準拠した通信プロトコル(「通信プロトコルA」)用の広告A1と、WirelessHART(登録商標)に準拠した通信プロトコル(「通信プロトコルC」)用の広告A2との提供が可能であった。通常、広告は、通信プロトコル毎にフレームフォーマットが異なるため、無線デバイスは自らが利用している通信プロトコルとは異なる通信プロトコル用の広告を受信することはできない。このため、コーディネータ30及びコンバーチブル無線デバイス13cは、無線デバイスが参加要請J1,J2を送信するために用いたリンクを参照すれば、無線デバイスが利用している通信プロトコルを把握することができた。
【0095】
しかしながら、異なる通信プロトコルであっても各々の広告に互換性がある場合(例えば、単にバージョンのみが異なる通信プロトコルである場合)には、無線デバイスは、自らが利用している通信プロトコル用の広告と、バージョンが異なる通信プロトコル用の広告との双方を受信することができる。このような無線デバイスは、何れの広告を用いても参加要請をすることができるため、参加要請を送信するために用いたリンクを参照しただけでは、無線デバイスが利用している通信プロトコルを把握することはできない。本実施形態では、このような場合であっても、プロトコル解析部67を備えるコンバーチブル無線デバイス16を用いて、参加要請のあった無線デバイスで用いられる通信プロトコルの解析を可能とするものである。
【0096】
図20は、本発明の第7実施形態におけるコンバーチブル無線デバイスの動作を示すフローチャートである。尚、
図20に示すフローチャートの処理は、コンバーチブル無線デバイス16にパケットが入力されることによって開始される。処理が開始されると、まずコンバーチブル無線デバイス16の無線通信インターフェイス部61でパケットの受信処理が行われる(ステップS31)。次に、受信処理が行われたパケットの送信に用いられた拡張リンクが参加要請リンク(参加要請の送受信に用いられる拡張リンク)であるか否かが拡張リンク処理部64で判断される(ステップS32)。
【0097】
参加要請リンクであると判断された場合(ステップS32の判断結果が「YES」の場合)には、パケットの送受信に用いられた通信プロトコルがプロトコル解析部67で解析され(ステップS33)、その通信プロトコルが「通信プロトコルA」であるか否かが判断される(ステップS34)。「通信プロトコルA」であるとプロトコル解析部67で判断された場合(ステップS34の判断結果が「YES」の場合)には、コンバーチブル無線デバイス16に受信されたパケットがプロトコル処理部62aで処理される(ステップS35)。
【0098】
これに対し、パケットの送受信に用いられた通信プロトコルが「通信プロトコルA」ではないと判断された場合(ステップS34の判断結果が「NO」の場合)には、プロトコル解析部67において、その通信プロトコルが「通信プロトコルC」であるか否かが判断される(ステップS36)。「通信プロトコルC」であるとプロトコル解析部67で判断された場合(ステップS36の判断結果が「YES」の場合)には、コンバーチブル無線デバイス16に受信されたパケットがプロトコル処理部62bで処理される(ステップS37)。尚、パケットの送受信に用いられた通信プロトコルが「通信プロトコルC」ではないと判断された場合(ステップS36の判断結果が「NO」の場合)には、プロトコル解析部67において、エラー処理又はパケットを破棄する処理が行われる(ステップS38)。
【0099】
他方、ステップS32において、参加要請リンクではないと判断された場合(ステップS32の判断結果が「NO」の場合)には、拡張リンク処理部64において、パケットの送信に用いられた拡張リンクに設定された通信プロパティで指定されている通信プロトコルが取得され、この通信プロトコルが「通信プロトコルA」であるか否かが判断される(ステップS39)。「通信プロトコルA」であると判断された場合(ステップS39の判断結果が「YES」の場合)には、コンバーチブル無線デバイス16に受信されたパケットがプロトコル処理部62aで処理される(ステップS35)。
【0100】
これに対し、「通信プロトコルA」ではないと判断された場合(ステップS39の判断結果が「NO」の場合)には、拡張リンク処理部64において、通信プロトコルが「通信プロトコルC」であるか否かが判断される(ステップS40)。「通信プロトコルC」であると判断された場合(ステップS40の判断結果が「YES」の場合)には、コンバーチブル無線デバイス16に受信されたパケットがプロトコル処理部62bで処理される(ステップS37)。尚、ステップS40において「通信プロトコルC」ではないと判断された場合(判断結果が「NO」の場合)には、プロトコル解析部67において、エラー処理又はパケットを破棄する処理が行われる(ステップS38)。
【0101】
以上の通り、本実施形態では、プロトコル解析部67を備えるコンバーチブル無線デバイス16を用いているため、異なる通信プロトコルではあるが、各々の広告に互換性がある通信プロトコルを用いてコンバーチブル無線デバイス16が広告を提供したとしても、参加要請のあった無線デバイスで用いられる通信プロトコルを解析することができる。これにより、参加要請のあった無線デバイスから送信されるパケットを適切に処理することができ、通信プロトコルのバージョンの相違に起因して生ずる不具合の発生を防止することができる。
【0102】
〔第8実施形態〕
図21は、本発明の第8実施形態で用いられる通信プロパティデータベースの一例を示す図である。
図21に示す通り、本実施形態で用いられるプロパティデータベースDB2は、
図5(b)に示すプロパティデータベースDB2に暗号鍵を示す情報(DL Key)を追加したものである。尚、上記の暗号鍵は、OSI参照モデルのデータリンク層(Data Link Layer)で用いられる暗号鍵である。
【0103】
図21に示す例では、
図2中のコンバーチブル無線デバイス13cと、バックボーンルータ20b、無線デバイス11e、及び無線デバイス12bとの間の通信に用いられる暗号鍵のみを図示している。具体的に、コンバーチブル無線デバイス13cとバックボーンルータ20b及び無線デバイス11eとの間の通信には「Key A」が用いられ、コンバーチブル無線デバイス13cと無線デバイス12bとの間の通信には「Key B」が用いられている。
【0104】
このように、本実施形態では、同時に使用可能な暗号鍵の数が追加されたテンプレートデータベースDB1及び暗号鍵が設定された通信プロパティデータベースDB2をコーディネータ30で管理することによって、リンク毎の暗号鍵の切り替えを可能としている。これにより、同一の無線サブネット内であっても、無線通信を行う二者間を単位として異なる暗号鍵を用いることができる。尚、ここでは、テンプレートデータベースDB1及び通信プロパティデータベースDB2に暗号鍵の数と暗号鍵がそれぞれ追加される例について説明したが、それらに加えて更に無線デバイスがサポートしている暗号アルゴリズムと実際に使用している暗号アルゴリズムをそれぞれ追加しても良い。
【0105】
ここで、前述した第3実施形態では、
図11を用いて説明した通り、セキュリティを維持するために、本来のネットワークである無線サブネットN11とOTAプロビジョニング用の予備的な無線サブネットN12と分離し、これらをコンバーチブル無線デバイス14で接続していた。しかしながら、本実施形態では、上述した通り、同一の無線サブネットに属する通信相手毎に異なる暗号鍵を設定することが可能であるため、予備的な無線サブネットN12を用いることなくOTAプロビジョニングを実現することができる。
【0106】
図22は、本発明の第8実施形態を応用した通信システムを示す図である。尚、
図22においては、
図11に示したブロックと同じブロックについては同一の符号を付してある。
図22に示す通信システム4は、
図11に示す通信システム3のコンバーチブル無線デバイス14に代えてコンバーチブル無線デバイス17を設け、無線サブネットN11内で行われる通信に2つの暗号鍵K11,K12を用いている。
【0107】
ここで、暗号鍵K11は、無線サブネットN11を形成する無線デバイス11a〜11d、コンバーチブル無線デバイス17、及びバックボーンルータ20aの間で行われる通信に用いられ、暗号鍵K12は、コンバーチブル無線デバイス17とOTAプロビジョニングが行われる無線デバイス12fとの間で行われる通信に用いられる。このように、無線サブネットN11内で2つの暗号鍵K11,K12を用いることにより、予備的な無線サブネットN12を用いることなく、セキュリティを維持しつつOTAプロビジョニングを実現することができる。
【0108】
以上、本発明の実施形態による管理装置及び通信システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、既存の通信プロトコルの処理を行うプロトコル処理部と、既存の通信プロトコル上で拡張リンクの設定を行う拡張リンクプロトコル処理部とがコンバーチブル無線デバイスに設けられている例について説明した。しかしながら、拡張リンクに対する属性を設定する専用の処理部を用意し、これらを切り替えるようにしてもよい。また、上記実施形態では、ISA100.11aとWirelessHART(登録商標)とに準拠した無線通信を行う通信システムを例に挙げて説明したが、本発明はこれらの無線通信規格に制限されることなく、任意の無線通信規格に適用することができる。
【0109】
また、上記実施形態では、バックボーンルータ20a〜20c、コーディネータ30、タイムサーバ40、及びゲートウェイ50がそれぞれ別々の装置として実現されている例について説明した。しかしながら、これらのうちの任意の2つ以上の装置を1つの装置として実現することも可能である。更に、上記実施形態では、無線デバイス11a〜11e、無線デバイス12a〜12e、及びコンバーチブル無線デバイス13a〜13c等がフィールド機器である場合を例に挙げて説明したが、これらはフィールド機器に限定されるものではない。