(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主鎖および/または側鎖にシアノ基を有する含フッ素エラストマー(A)と、アミド化合物及びヒドラジド化合物からなる群より選択される少なくとも1種である化合物(B)と、からなる硬化性組成物であって、
前記化合物(B)は、アゾ構造、ヒドラジン構造、及びイミン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有し、かつ分解によりNH3を発生するものであって、
前記含フッ素エラストマー(A)は、パーフルオロフッ素ゴムである
ことを特徴とする硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の硬化性組成物は、主鎖および/または側鎖にシアノ基を有する含フッ素エラストマー(A)と、アミド化合物及びヒドラジド化合物からなる群より選択される少なくとも1種である化合物(B)と、からなるものである。
【0022】
含フッ素エラストマー(A)は、主鎖および/または側鎖にシアノ基(−CN基)を有するものであればよく、特に限定されない。
【0023】
含フッ素エラストマー(A)は、上記化合物(B)が作用して、シアノ基が環化三量化によりトリアジン環を形成して架橋することができるものであるため、本発明の硬化性組成物を架橋して得られる成形品は、すぐれた圧縮永久歪みおよび耐熱性を有する。また、耐酸素ラジカル性及び耐オゾン性にも優れる。
【0024】
含フッ素エラストマー(A)としては、たとえば、パーフルオロフッ素ゴムおよび非パーフルオロフッ素ゴムがあげられる。含フッ素エラストマー(A)は、パーフルオロフッ素ゴムが好ましい。なお、パーフルオロフッ素ゴムとは、単量体に由来する重合単位のうち、90モル%以上がパーフルオロモノマーからなるものをいう。
【0025】
パーフルオロフッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕/シアノ基を有する単量体、で表される重合体が好ましい。TFE/PAVEの組成は、50〜90/10〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは、50〜80/20〜50モル%であり、さらに好ましくは、55〜75/25〜45モル%である。また、シアノ基を有する単量体に由来する重合単位は、良好な架橋特性および耐熱性の観点から、TFEに由来する重合単位とPAVEに由来する重合単位との合計に対して、0.1〜5モル%であることが好ましく、0.3〜3モル%であることがより好ましい。
【0026】
PAVEとしては、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕などがあげられる。これらのPAVEは、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0027】
シアノ基を有する単量体としては、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなシアノ基含有単量体や、下記一般式(3)〜(19)で表される単量体などがあげられる。
【0028】
シアノ基を有する単量体としては、たとえば、
一般式(3)〜(19):
CY
12=CY
1(CF
2)
n−CN (3)
(式中、Y
1は水素原子またはフッ素原子を表し、nは1〜8の整数を表す。)
CF
2=CFCF
2Rf
2−CN (4)
(式中、Rf
2は、−(OCF
2)
n−、又は、−(OCF(CF
3))
n−で表される2価の基であり、nは0〜5の整数である)
CF
2=CFCF
2(OCF(CF
3)CF
2)
m(OCH
2CF
2CF
2)
nOCH
2CF
2−CN (5)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数である)
CF
2=CFCF
2(OCH
2CF
2CF
2)
m(OCF(CF
3)CF
2)
nOCF(CF
3)−CN (6)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数である)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
mO(CF
2)
n−CN (7)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜8の整数である)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
m−CN (8)
(式中、mは1〜5の整数)
CF
2=CFOCF
2(CF(CF
3)OCF
2)
nCF(−CN)CF
3 (9)
(式中、nは1〜4の整数)
CF
2=CFO(CF
2)
nOCF(CF
3)−CN (10)
(式中、nは2〜5の整数)
CF
2=CFO(CF
2)
n−(C
6H
4)−CN (11)
(式中、nは1〜6の整数)
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
nOCF
2CF(CF
3)−CN (12)
(式中、nは1〜2の整数)
CH
2=CFCF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−CN (13)
(式中、nは0〜5の整数)、
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
m(CF
2)
n−CN (14)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数である)
CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)OCF(CF
3)−CN (15)
CH
2=CFCF
2OCH
2CF
2−CN (16)
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
mCF
2CF(CF
3)−CN (17)
(式中、mは0以上の整数である)
CF
2=CFOCF(CF
3)CF
2O(CF
2)
n−CN (18)
(式中、nは1以上の整数)
CF
2=CFOCF
2OCF
2CF(CF
3)OCF
2−CN (19)
で表される単量体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。シアノ基を有する単量体は、上記一般式(3)〜(19)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
中でも、一般式(7)又は(14)で表される単量体がより好ましく、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CNが更に好ましい。
【0030】
一般式(3)〜(19)で表される単量体はシアノ基を有するので、そのシアノ基が環化三量化反応してトリアジン架橋が進行する。
【0031】
シアノ基の導入方法としては、国際公開第00/05959号パンフレットに記載の方法も用いることができる。
【0032】
かかるパーフルオロフッ素ゴムの具体例としては、国際公開第97/24381号パンフレット、特公昭61−57324号公報、特公平4−81608号公報、特公平5−13961号公報などに記載されているフッ素ゴムなどがあげられる。
【0033】
非パーフルオロフッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、またはフルオロホスファゼン系フッ素ゴムなどがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
【0034】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムとは、ビニリデンフルオライドとビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体との合計量に対して、ビニリデンフルオライド45〜85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体55〜15モル%とからなり、さらにビニリデンフルオライド及びビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体の合計量に対して、シアノ基を有する単量体0.1〜5モル%を含有する含フッ素共重合体をいう。
好ましくは、ビニリデンフルオライド50〜80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体50〜20モル%とからなり、さらにビニリデンフルオライドとビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体の合計量に対して、シアノ基を有する単量体0.1〜5モル%を含有する含フッ素共重合体である。シアノ基を有する単量体の含有量は、含フッ素エラストマー(A)の架橋性を向上させる点から、0.2モル%以上が好ましく、0.3モル%以上がより好ましい。また、シアノ基を有する単量体の含有量は、高価である該単量体の使用量を減らす点から、2.0モル%以下が好ましく、1.0モル%以下がより好ましく、0.5モル%以下が更に好ましい。
【0035】
ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体としては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体があげられる。これらをそれぞれ単独で、または、任意に組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。
【0036】
具体的なゴムとしては、VdF−HFP系ゴム、VdF−HFP−TFE系ゴム、VdF−CTFE系ゴム、VdF−CTFE−TFE系ゴムなどがあげられる。
【0037】
テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムとは、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの合計量に対して、テトラフルオロエチレン45〜70モル%、プロピレン55〜30モル%からなり、さらにテトラフルオロエチレンとプロピレンの合計量に対して、シアノ基を有する単量体0.1〜5モル%含有する含フッ素共重合体をいう。シアノ基を有する単量体の含有量は、含フッ素エラストマー(A)の架橋性を向上させる点から、0.2モル%以上が好ましく、0.3モル%以上がより好ましい。また、シアノ基を有する単量体の含有量は、高価である該単量体の使用量を減らす点から、2.0モル%以下が好ましく、1.0モル%以下がより好ましく、0.5モル%以下が更に好ましい。
【0038】
また、含フッ素エラストマー(A)として、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントからなる熱可塑性フッ素ゴムを用いてもよく、前記フッ素ゴムと熱可塑性フッ素ゴムからなるゴム組成物を用いてもよい。
【0039】
上記パーフルオロフッ素ゴム及び非パーフルオロフッ素ゴムは、常法により製造することができる。
【0040】
得られた重合反応混合物から重合生成物を単離する方法としては、酸処理により凝析する方法が、工程の簡略化の点から好ましい。または、重合混合物を酸処理し、その後凍結乾燥などの手段で重合生成物を単離してもよい。さらに超音波などによる凝析や機械力による凝析などの方法も採用できる。
【0041】
本発明の硬化性組成物は、アミド化合物及びヒドラジド化合物からなる群より選択される少なくとも1種である化合物(B)からなる硬化性組成物であって、前記化合物(B)は、アゾ構造、ヒドラジン構造、及びイミン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有し、かつ分解によりNH
3を発生するものである。化合物(B)としては、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0042】
化合物(B)は、アゾ構造(−N=N−)、ヒドラジン構造(−NH−NH−)、及びイミン構造(−N=C−)からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する。化合物(B)が上記構造を有し、かつ分解によりNH
3を発生するものであることによって、本発明の硬化性組成物から得られる成形品が、すぐれた圧縮永久歪みおよび耐熱性を有する。また、耐酸素ラジカル性及び耐オゾン性にも優れる。
【0043】
化合物(B)が存在することにより、含フッ素エラストマー中のシアノ基が環化三量化反応して、トリアジン架橋反応が進行する。
【0044】
化合物(B)は、分解温度が180〜300℃であることが好ましい。化合物(B)は、分解温度が180〜250℃であることがより好ましく、180〜210℃であることが更に好ましい。分解温度が上記範囲であることによって、より保存安定性及び耐スコーチ性に優れるものとなる。
【0045】
化合物(B)の分解温度は、熱重量分析(TG)にて、空気中、5℃/minで昇温した時の分解開始温度(1wt%重量減少温度)である。
【0046】
化合物(B)は、含フッ素エラストマー(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.2〜5重量部であることがより好ましく、0.2〜1重量部であることが更に好ましい。化合物(B)が、少なすぎると加硫密度が低くなり、充分な耐熱性、耐薬品性を発現しないおそれがあり、多すぎると常態物性(伸び、強度)を低下させるおそれがある。
【0047】
化合物(B)は、分解によりNH
3を発生するものである。化合物(B)は、分解によりNH
3以外のガスを発生するものであってよい。例えば、一酸化炭素を発生するものであってよいし、二酸化炭素を発生するものであってよいし、窒素を発生するものであってもよい。化合物(B)は、アンモニアガス並びにNH
3以外のガス発生量の合計が5〜500ml/gであることが好ましい。より好ましくは、5〜300ml/gである。また、化合物(B)は、アンモニアガスの発生量が5〜200ml/gであることが好ましい。より好ましくは、5〜100ml/gである。
ガス発生量は、化合物の分解温度にて、30分間加熱して測定した値である。
【0048】
上記化合物(B)としては、下記化学式で表される化合物等が例示される。
【0058】
上記の化合物(B)として例示した化合物の化学式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Acはアセチル基、Phはフェニル基を表す。
【0059】
化合物(B)としては、中でも、下記式(1):
【0060】
【化12】
で表されるアゾジカルボンアミド(ADCA)、及び、下記式(2):
【0061】
【化13】
で表されるヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)、からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記化合物(B)としては、ADCAがより好ましい。化合物(B)が上記ADCAであることによって、本発明の硬化性組成物は、保存安定性及び耐スコーチ性により優れる。ADCAは、尿素等の助剤との併用等により、分解温度を調節することも可能である。
【0062】
本発明の硬化性組成物は、架橋剤がなくとも架橋が進行するため、架橋剤を必要としない。架橋剤を使用せずにトリアジン架橋を行うことができるため、硬化性組成物を架橋して製造した成形品の着色を抑制することもできる。本発明の硬化性組成物は、必要に応じて架橋剤を併用してもよい。
【0063】
本発明の硬化性組成物において、とくに高純度かつ非汚染性が要求されない分野では、必要に応じて硬化性組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤などを配合することができる。
【0064】
本発明の硬化性組成物は、スコーチ時間(TS2)が2分以上であることが好ましい。より好ましくは3分以上である。更に、最適加硫時間(T90)が30分以下であることが好ましく、20分以下がより好ましい。TS2が短すぎると、成形品表面にシワが入ったり、歪みが生じる可能性がある。
スコーチ時間(TS2)は、ムービングダイレオメータ(アルファテクノロジーズ MDR2000)を用いて求めた200℃における加硫曲線において、最低粘度(ML)を2.0dNm上回るまでの時間で示している。
【0065】
本発明の硬化性組成物の各成分を混合する手段としては、通常のエラストマー用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混合することにより調製することができる。この他、密閉式混合機を用いる方法によっても調製することができる。
【0066】
本発明は、上記硬化性組成物を一次加硫する工程、及び、一次加硫後に二次加硫する工程、からなる成形品の製造方法でもある。
【0067】
本発明の成形品の製造方法は、含フッ素エラストマー(A)、および、化合物(B)を混合して上記硬化性組成物を得る工程、を有するものであってもよい。
【0068】
硬化性組成物から成形品を得る方法としては、金型にて加熱圧縮する方法、加熱された金型に圧入する方法、押出機で押出し、押出後に一次加硫、最後に二次加硫の順で成形品を得ることができる。
【0069】
一次加硫条件としては、140〜230℃で5〜120分間おこなうことが好ましく、150〜220℃で5〜120分間おこなうことがより好ましく、170〜210℃で5〜60分間おこなうことが更に好ましい。加硫手段としては、公知の加硫手段を用いればよく、例えば、プレス架橋などをあげることができる。
【0070】
二次加硫条件としては、180〜320℃で2〜24時間おこなうことが好ましく、200〜320℃で2〜24時間おこなうことがより好ましく、200〜300℃で5〜20時間おこなうことが更に好ましい。加硫手段としては、公知の加硫手段を用いればよく、例えば、オーブン架橋などをあげることができる。
【0071】
上記硬化性組成物を架橋して、成形品を得ることができる。本発明は、上記硬化性組成物を架橋して得られる成形品でもある。本発明の硬化性組成物を架橋して得られる成形品は、トリアジン架橋により架橋するものであるため、すぐれた圧縮永久歪みおよび耐熱性を有する。また、耐酸素ラジカル性及び耐オゾン性にも優れる。
また、上記硬化性組成物が耐スコーチ性に優れるものであるため、硬化性組成物の保存期間が長い場合であっても、架橋して得られる成形品は圧縮永久歪みに優れるものとなる。
【0072】
本発明の成形品は、以下に示すような様々な分野の各種成形品として有用である。
【0073】
半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、フィールドエミッションディスプレイパネル、太陽電池基板等の半導体関連分野では、O(角)リング、パッキン、シール材、チューブ、ロール、コーティング、ライニング、ガスケット、ダイアフラム、ホース等があげられ、これらはCVD装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、排気装置、薬液配管、ガス配管に用いることができる。具体的には、ゲートバルブのOリング、シール材として、クォーツウィンドウのOリング、シール材として、チャンバーのOリング、シール材として、ゲートのOリング、シール材として、ベルジャーのOリング、シール材として、カップリングのOリング、シール材として、ポンプのOリング、シール材、ダイアフラムとして、半導体用ガス制御装置のOリング、シール材として、レジスト現像液、剥離液用のOリング、シール材として、ウェハー洗浄液用のホース、チューブとして、ウェハー搬送用のロールとして、レジスト現像液槽、剥離液槽のライニング、コーティングとして、ウェハー洗浄液槽のライニング、コーティングとしてまたはウェットエッチング槽のライニング、コーティングとして用いることができる。さらに、封止材・シーリング剤、光ファイバーの石英の被覆材、絶縁、防振、防水、防湿を目的とした電子部品、回路基盤のポッティング、コーティング、接着シール、磁気記憶装置用ガスケット、エポキシ等の封止材料の変性材、クリーンルーム・クリーン設備用シーラント等として用いられる。
【0074】
また、自動車分野、航空機分野、ロケット分野、船舶分野、プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野、現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野、分析・理化学機分野、食品プラント機器分野、原子力プラント機器分野、鉄板加工設備等の鉄鋼分野、一般工業分野、電気分野、燃料電池分野、電子部品分野、現場施工型の成形などの分野で広く用いることができる。
【実施例】
【0075】
つぎに本発明を実施例及び比較例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0076】
評価法
<標準加硫条件>
混練方法 :ロール練り
プレス加硫 :200℃で30分(実施例1)、又は、180℃で30分(比較例1)
オーブン加硫:290℃で18時間(200℃から昇温)
【0077】
<加硫特性>
1次プレス加硫時にムービングダイレオメータ(アルファテクノロジーズ MDR2000)機器を用い、加硫曲線を求め、最低粘度(ML)、最大トルクレベル(MH)、スコーチ時間(TS2)および最適加硫時間(T90)を求めた。また、成形品の歪み(スコーチ)の有無についても調べた。
なお、実施例1では、200℃における加硫曲線を求めて評価し、比較例1では、180℃における加硫曲線を求めて評価した。スコーチ時間は、加硫曲線において、MLを2.0dNm上回るまでの時間をスコーチ時間(TS2)とした。
【0078】
<スコーチの有無及び保存安定性の確認>
スコーチの有無は、気温23℃、湿度45〜55%の環境下で10日間保存し、硬化特性を測定した。保存前よりTS2が20%以上早くなり、MLの上昇が確認された場合をスコーチ有りとした。
【0079】
<分解温度>
熱重量分析(TG)にて、空気中5℃/minで昇温した時の分解開始温度(1wt%重量減少温度)を分解温度とした。
【0080】
製造例1
着火源をもたない内容積6リットルのステンレススチール製オートクレーブに、純水2.3リットルおよび乳化剤として、下記式:
【0081】
【化14】
で表される化合物23g、pH調整剤として炭酸アンモニウム0.2gを仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換し脱気したのち、600rpmで撹拌しながら、50℃に昇温し、内圧が0.8MPaになるようにテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)をTFE/PMVE=24/76(モル比)で仕込んだ。ついで、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN(CNVE) 0.8gを窒素圧にて圧入した。過硫酸アンモニウム(APS)の1.2g/mLの濃度の水溶液10mLを窒素圧で圧入して反応を開始した。
【0082】
重合の進行により内圧が、0.7MPaまで降下した時点でTFEを12gおよびPMVE 13gをそれぞれ自圧にて圧入した。以後、反応の進行にともない同様にTFE、PMVEを圧入し、0.7〜0.9MPaのあいだで、昇圧、降圧を繰り返すと共に、TFEとPMVEの追加量が80gごとにCNVE 1.5gを窒素圧で圧入した。
【0083】
TFEおよびPMVEの合計仕込み量が、680gになった時点で、オートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度22重量%の水性分散体3110gを得た。
【0084】
この水性分散体3110gを水3730gで希釈し、4.8重量%硝酸水溶液3450g中に、撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後30分間撹拌した後、凝析物をろ別し、得られたポリマーを水洗したのち、真空乾燥させ、680gの含フッ素エラストマー(A)を得た。
【0085】
19F−NMR分析の結果、この重合体のモノマー単位組成は、TFE/PMVE/CNVE=59.3/39.9/0.8(モル%)であった。赤外分光分析により測定したところ、カルボキシル基の特性吸収が1774.9cm
−1、1808.6cm
−1付近に、OH基の特性吸収が、3557.5cm
−1および3095.2cm
−1付近に認められた。
【0086】
実施例1
製造例1で得られた末端にシアノ基を含有する含フッ素エラストマー(A)と、ポリテトラフルオロエチレン(商品名:L−5F、ダイキン工業株式会社製)と、アゾジカルボンアミド〔ADCA〕(商品名:セルマイクC−2、三協化成株式会社製、分解温度:200〜210℃)とを重量比100:20:0.3で混合し、オープンロールにて混練して、硬化性組成物を調製した。
【0087】
このエラストマー組成物を200℃、T90相当時間でプレス架橋(一次架橋)し、ついで290℃、18時間オーブン架橋(二次架橋)してOリング(AS−568A−214)を作製した。また硬化性組成物についてJSR型キュラストメータII型(日合商事株式会社製)により、200℃で加硫曲線を求め、最低粘度(ML)、加硫度(MH)、スコーチ時間(TS2)、誘導時間(T10)および最適加硫時間(T90)を求めた。また、スコーチの有無についても確認した。結果を表1に示す。
【0088】
実施例2
実施例1で調整した硬化性組成物を気温25℃湿度50〜60%で30日間保管したこと以外は実施例1と同様にして、各種評価を行った。
【0089】
比較例1
ADCAの代わりに、尿素(分解温度:133℃)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で硬化性組成物を調製した。プレス架橋(一次架橋)の温度を180℃で行ったこと以外は、実施例1と同じ方法で架橋して、Oリング(AS−568A−214)を作製した。また硬化性組成物について、180℃で加硫曲線を求めたこと以外は実施例1と同様にして、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
比較例2
比較例1で調整した硬化性組成物を気温25℃、湿度50〜60%で30日間保管したこと以外は実施例1と同様にして、各種評価を行った。
【0091】
比較例3
ADCAの代わりに、Si
3N
4を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で硬化性組成物を調製した。プレス架橋(一次架橋)の温度を180℃で行ったこと以外は、実施例1と同じ方法で架橋して、Oリング(AS−568A−214)を作製した。また硬化性組成物について、180℃で加硫曲線を求めたこと以外は実施例1と同様にして、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
比較例4
比較例3で調整した硬化性組成物を気温25℃湿度50〜60%で30日間保管したこと以外は実施例1と同様にして、各種評価を行った。
【0093】
【表1】
【0094】
表1の結果から、実施例1に係る硬化性組成物は、MLが低く、TS2が長いので、保存安定性及び耐スコーチ性に優れていることがわかる。