(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
劇場空間の天井部に上壁部が固定された、内部に密閉空間を形成する筐体と、当該筐体の内部に設置された、冷却機構を備えたデジタルシネマ用プロジェクタとを備えてなり、 前記デジタルシネマ用プロジェクタを冷却する冷却風の給気路と排気路が、前記劇場空間と隔離された状態で、前記筐体の上壁を介して装置外部に延びるよう形成されており、
前記排気路は、前記デジタルシネマ用プロジェクタにおける排気用開口部に一端部が接続された排気用ダクトが、前記筐体の上壁に形成された上方開口部を介して、装置外部に導出されて形成されており、
前記筐体は、下面が開閉可能に構成され、内部に前記デジタルシネマ用プロジェクタを昇降可能に支持する昇降システムを備えており、
前記排気用ダクトが、前記デジタルシネマ用プロジェクタの昇降方向に伸縮自在なベローズにより構成されていることを特徴とするデジタルシネマ映画館用のプロジェクタ装置。
【背景技術】
【0002】
現在、映画産業にあっては、いわゆる「シネマコンプレックス」と呼ばれる複合型映画館のスクリーン数が増加する傾向にある。
近年においては、映画産業は、世界的にフィルムからデジタルへの大きな変革期を迎えており、映画のデジタル化が急速に進み、高精細な映像が提供されるようになってきている。
【0003】
シネマコンプレックスによるデジタルシネマにおいては、複数のデジタルシネマ用プロジェクタを用いて互いに異なるものの同時上映が可能であり、また、デジタルシネマ用プロジェクタの操作を一元的に管理することが可能である。すなわち、
図8に示す、映写フィルムによってビデオ情報(映画)を配給する劇場のように、上映室(劇場空間Sr)とは別に隔離して設置された映写室Prに、映写機80を操作する映写技師が待機して映写機80の状態やスクリーンSを確認しながら作業を行う必要がなく、シネマコンプレックスによるデジタルシネマにあっては、例えばLANなどのネットワークを利用して、各デジタルシネマ用プロジェクタに映像信号を送ることによりデジタルシネマが提供される。また、デジタルシネマにおいては、十分な広さ(作業用スペース)が確保された映写室を設置する必要がないので、狭小面積の劇場であっても、来場者にとっての快適性を損なうことなく、劇場空間を有効に利用することができる。
【0004】
一方、こうしたハードウェアの変化に伴い、劇場の構造自体も大きく様変わりを遂げることになり、デジタルシネマ用プロジェクタを上映室内に設置することが検討されている(例えば特許文献1参照)。
而して、一般に、デジタルシネマ用プロジェクタは、大型のスクリーンに映像を投影するべく、光源としては、例えば、高入力の輝度を高めたキセノンショートアーク型の放電ランプが使用されている。このため、放電ランプの冷却機構等も一体化されて設けられた構成とされており、デジタルシネマ用プロジェクタ自体が非常に大きなものとなる。従って、特許文献1のように、デジタルシネマ用プロジェクタを床面に設置したのでは、例えば観客席の後方側に機器設置用の十分な広さの空間が必要となる。
また、デジタルシネマ用プロジェクタにおいては、ランプ交換などのメンテナンス作業を例えば定期的に行うことが必要とされることから、デジタルシネマ用プロジェクタを上映室内に設置するにあたり、メンテンナンス性(作業性)などを考慮した空間設計が必要となると共に、放電ランプ等の冷却にかかる騒音や排気を考慮する必要がある。
【0005】
このような問題に対して、劇場空間の有効利用性を十分に活かすべく、例えば特許文献2および特許文献3には、プロジェクタを天井から吊り下げて支持するプロジェクタ用のリフトシステムが開示されている。このような構造によれば、劇場の空間において十分な広さの来場者用スペースを確保することができ、より快適な空間設計が可能になることが期待される。
しかしながら、デジタルシネマ用プロジェクタを単に天井から吊り下げて支持する構造では、劇場の美観を損なわせてしまうという問題がある。
また、デジタルシネマ用プロジェクタの冷却風の排気が劇場空間内に広がるため、デジタルシネマ用プロジェクタの近くの客席では当該排気による熱風で不快に感じるといった問題や、冷却機構の動作音などが劇場空間内に漏れ出てしまうため、来場者がデジタルシネマの高精細な映像による臨場感を十分に楽しむことができなくなり、快適性が著しく損なわれるといった問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のデジタルシネマ映画館用のプロジェクタ装置を利用した劇場空間の一例における構成の概略を示す図である。
本発明のデジタルシネマ映画館用のプロジェクタ装置(以下、単に「プロジェクタ装置」ともいう。)10は、デジタルシネマ用プロジェクタ(以下、「デジタルプロジェクタ」ともいう。)11が、密閉空間を形成する筐体20の内部に設置されて構成されている。そして、劇場空間Srにおいて、例えば、筐体20の上壁の外面がスクリーンSに対して観客席の後方の天井面Cに固定されて設置され、劇場空間Srと別室に設置された映像信号(画像信号+音声信号)を送信するプレーヤ(図示せず)に、適宜の信号ケーブル(例えばLANケーブルなど)によって接続されて用いられる。なお、プロジェクタ装置10は、筐体20の一部が天井内に埋め込まれた状態で固定されて設置されていてもよい。
【0016】
図2は、本発明のデジタルシネマ映画館用のプロジェクタ装置の一例における構成の概略を示す斜視図である。
図3は、
図2に示すプロジェクタ装置の、デジタルシネマ用プロジェクタを降下させた状態で示す、左側面方向から見た部分断面図である。
図2においては、筐体20の内側に設けられた構成部材を見やすくするために、便宜上、筺体本体21を透過した状態で示してあり、筺体本体21自体は二点鎖線で示してある。
このプロジェクタ装置10は、下面が開閉可能に構成された筐体20を備えている。筐体20は、上壁の略中央部に上方に開口する上方開口部28を有すると共に、底壁22の中央部に下方に開口する下方開口部23を有する箱型形状の筐体本体21と、この筐体本体21の下方開口部23を開閉する蓋体(カバー板)30とにより構成されている。
【0017】
筐体本体21は、例えば、一定の間隔をおいて互いに対向配置された2枚の板状の石膏ボード間の空間内(中空部)に例えばグラスウール(遮音材または吸音材)が充填されてなる遮音パネルによって壁が形成されて構成されている。
筐体本体21の正面壁には、映写用開口部26が形成されており、当該映写用開口部26が例えばガラス製の板状の窓部材27により気密に閉塞され、これにより映写窓25が形成されている。
【0018】
筐体本体21の下方開口部23は、開口形状が矩形状の貫通孔により構成されており、この貫通孔の下面側開口縁部には、蓋体30が受容されて装着される蓋体受容装着部24が形成されている。蓋体受容装着部24は、四角錐台状空間部とこれに連続する四角柱状空間部とを有する凹所により形成されている。
【0019】
蓋体30は、筐体本体21における蓋体受容装着部24に適合する全体が平板状の形状を有し、上面における外周縁部がテーパ状に形成されている。
蓋体30は、例えば、一定の間隔をおいて互いに対向配置された2枚の鉄板間の空間内(中空部)に例えばロックウール(遮音材または吸音材)が充填された遮音パネルにより構成されている。
【0020】
以上において、筐体本体21および蓋体30を構成する遮音パネルは、劇場空間Srに露出される外表面に吸音材が設けられた構成とされていることが好ましい。筺体本体21および蓋体30が吸音材によって覆われることで、場内の音波が筺体20に到達した際もこれを吸収して反響を抑制することができ、劇場空間Srの内部における不快な共鳴の発生を防止することができる。
また更に、劇場空間Srに露出される外表面の吸音材は、劇場空間Srの壁や天井面Cと同じ内装クロスで被覆されていることが好ましい。このように、劇場空間Srと同様のクロスで覆われることで、劇場空間Srと一体感が得られた美観を得ることができる。
ここに、筐体本体21における壁の厚さは、外表面の吸音材の層まで含めると、例えば200〜250mmであり、筐体本体21における蓋体30の厚さは、外表面の吸音材の層まで含めると、例えば70〜100mmである。
【0021】
蓋体30の上面における外周縁部、具体的には、テーパ面より内方側の平坦面部分には、矩形枠状の気密性緩衝部材35が蓋体30の周方向の全周にわたって延びるよう配設されている。そして、筐体本体21における蓋体受容装着部24の平坦面および蓋体30の上面によって、気密性緩衝部材35が弾性的に圧潰されることにより筺体20の気密構造が形成される。
気密性緩衝部材35は、遮音性ないしは吸音性を有する弾性体により構成される。弾性体の材質として好ましいものはゴム材であり、具体的には、クロロプレンスポンジ、シリコーンスポンジ、フッ素ゴムスポンジ、ウレタンスポンジ、PVCスポンジなどのスポンジゴム、或いは、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)などソリッドゴムが挙げられる。
このように、筐体本体21における蓋体受容装着部24と蓋体30との対接面が単なる平坦面ではなく、いわば屈曲した平面により構成されていることにより、高い遮音性を得ることができる。
【0022】
蓋体30の上面には、デジタルプロジェクタ11を支持する架台40がエアシリンダ45を介して固定されて設けられている。この例における架台40は、平面矩形状のフレーム状の架台枠41を備えており、この架台枠41における前後方向に延びる一対のフレーム部分42,42の各々が、複数例えば一のフレーム部分42につき3つ(合計6つ)のエアシリンダ45により下方から支持されている。エアシリンダ45は、前後方向に互いに等間隔毎に離間した位置において、ピストンロッド46が円筒状のシリンダチューブ47に対して上下方向に摺動する姿勢で、シリンダチューブ47の上端が架台枠41の下面に固定され、ピストンロッド46の下端が蓋体30の上面に固定用金具36により固定されている(
図6参照)。
【0023】
デジタルプロジェクタ11は、架台40上において変位可能(位置調整可能)に支持されており、例えばベルト状の固定部材43によって固定されている。ここに、デジタルプロジェクタ11は、筐体20の各壁面より例えば300mm以上離間した位置に設置されており、これにより、デジタルプロジェクタ11の周囲に冷却風流通路が形成されている。このような構成とされていることにより、デジタルプロジェクタ11の過度の温度上昇を確実に防止することができてデジタルプロジェクタ11を正常に動作させることができる。
【0024】
デジタルプロジェクタ11は、
図4に示すように、外匣内に、例えば、キセノン放電ランプを備えた光源装置15と、いわゆる映像エンジン16と、電源装置17と、冷却機構とを備えている。12は投影レンズである。映像エンジンは、例えばカラーフィルタ、画像素子および適宜の光学レンズなどを備えている。冷却機構は、冷却風(
図4において白抜きの矢印で示す。)によりキセノン放電ランプおよびその他の構成部材を冷却するものであって、ランプ冷却用の給気用ファン18aおよびその他の構成部材の冷却用の給気用ファン18bと、排気用ファン19を備えている。
図4において、13は、デジタルプロジェクタ11の外匣における背面および両側面の各々に形成された開口(例えばスリット)よりなる冷却風導入用開口部である。また、14は、デジタルプロジェクタ11の外匣における上面に形成された排気用開口部である。
【0025】
キセノン放電ランプの具体的な構成例を示すと、例えば、定格消費電力が2〜6kWであり、キセノンガスの封入圧力(常温換算)は1MPa以上(例えば1〜2MPa)、管壁負荷は30W/cm
2以上(例えば30〜40W/cm
2)である。
【0026】
上記のプロジェクタ装置10においては、筺体20の内部に設けられた、デジタルプロジェクタ11を昇降可能に支持する昇降システムによって、当該デジタルプロジェクタ11を筐体本体21の内部から下方に降下可能に構成されている(
図1および
図2における斜線を付した矢印は、デジタルプロジェクタ11の昇降方向を示している。)。昇降システムとしては、従来のパンタグラフ方式の昇降システムによりデジタルプロジェクタ11を吊下支持するものや、以下において詳細に説明するようなワイヤにより吊下支持するものなどが挙げられる。
【0027】
この例における昇降システム50は、巻き上げ装置により構成されており、架台枠41の上面における4隅の位置に設けられた吊具51、および、固定部材43に設けられた、デジタルプロジェクタ11の略上面中央部に位置された吊具51の各々に、一端部が固定された複数本(この例では5本)のワイヤ55によって、デジタルプロジェクタ11を吊下支持している。吊具51は、例えばねじ込み式であって、蓋体30が水平となる姿勢が維持された状態で昇降されるようワイヤ55の長さが調整可能に構成されている。
各ワイヤ55は、複数のガイドシーブ(みぞ車)54によって張架されて設けられており、他端部がそれぞれ共通のワイヤドラム52に固定されている。ワイヤドラム52は、回転軸が水平方向に延びる姿勢で配置されており、巻き取りモータ53によって回転駆動される。ワイヤドラム52および巻き取りモータ53が各ワイヤ55に共通のものであることにより、デジタルプロジェクタ11の昇降動作時において、デジタルプロジェクタ11を確実に適正な姿勢(水平)に維持することができる。
【0028】
而して、上記のプロジェクタ装置10においては、デジタルプロジェクタ11の外匣における上面に形成された排気用開口部14に、上下方向に延びる排気用ダクト70の一端部が接続され、
図1に示すように、当該排気用ダクト70の他端部が筐体本体21の上壁に形成された上方開口部28を介して筐体20外部に導出されて天井裏に配設された排気用ファン71に接続されている。これにより、装置外部に延びる排気路Epが劇場区間Srと隔離された状態で形成されており、デジタルプロジェクタ11の排気に係る熱風ないしは温風(
図1においては便宜上塗りつぶした矢印で示している。)が排気用ダクト70を介して装置外部に排出される。
そして、筐体本体21内部と天井裏空間とを連通させる開口が、筐体本体21の上壁および天井面に設けられて冷却風給気口29が形成され、これにより、天井裏に配設された冷却風供給用ファン75に接続された、装置外部に延びる給気路Spが、劇場空間Srと隔離された状態で形成されている。すなわち、
図5(a)を参照して説明すると、天井裏に配設された冷却風供給用ファン75からの冷却風(
図5(a)において白抜きの矢印で示す。)は、筐体本体21の上壁に形成された冷却風給気口29を介して、筐体20内部に供給され、デジタルプロジェクタ11の周囲に形成された冷却風流通路F(筺体20の内部空間)を流通する。その後、
図4におけるデジタルプロジェクタ11に設けられた給気用ファン18a、18bによって、デジタルプロジェクタ11の外匣における背面および両側面の各々に形成された冷却風導入用開口部13から導入され、放電ランプおよびその他の構成部材が冷却される。
【0029】
天井裏に配設された冷却風供給用ファン75および排気用ファン71は、例えば18m
3/分以上の流量で、冷却風を供給する機能および排気に係る熱風を排出する機能を有するものである。
排気用ダクト70は、例えばデジタルプロジェクタ11の昇降方向に伸縮自在なベローズにより構成されており、デジタルプロジェクタ11の昇降動作に伴って伸縮される。
【0030】
以下、上記のプロジェクタ装置10におけるデジタルプロジェクタ11の昇降動作について説明する。
このプロジェクタ装置10においては、
図5(a)にも示すように、デジタルプロジェクタ11は、通常、筐体20の内部に収容されて劇場空間Srと隔離されており、上述したように、動作時においては、放電ランプおよびその他の構成部材が冷却風によって冷却される。而して、ランプ交換などのメンテナンス作業を行う場合には、
図5(b)に示すように、デジタルプロジェクタ11が昇降システム50によって筐体20の内部から下方に降下される。すなわち、巻き取りモータ53が例えば逆転駆動されることによりワイヤドラム52が回転され、各ワイヤ55が同一の送り出し量で送り出されると共に排気用ダクト70が伸長されて蓋体30が水平となる姿勢が維持された状態で、デジタルプロジェクタ11が床面に対して所定の位置(例えば床面から80cm程度の位置)まで降下される。ここに、ワイヤ55の送り出し速度は、例えば7m/分以下の範囲内で適宜に設定することができ、一定であっても、変化させてもよい。例えば、デジタルプロジェクタ11が床面から所定の高さまで降下されたときに送り出し速度が床面に接近するに従って低下される(最終的には0m/分となる)よう巻き取りモータ53の動作を制御することができる。
なお、エアシリンダ45は、後述するように、デジタルプロジェクタ11が筺体20内部に収容された状態においては、圧縮空気が供給されて動作状態とされているが、デジタルプロジェクタ11を降下させる際には、圧縮空気の供給が停止されることにより、ピストンロッド46がシリンダチューブ47の下方位置に位置された状態とされる。
【0031】
一方、メンテナンス作業の終了後、デジタルプロジェクタ11を筐体本体21内に収容する場合には、巻き取りモータ53が例えば正転駆動されることによりワイヤドラム52が回転され、各ワイヤ55が同一の巻き上げ量で巻き取られると共に排気用ダクト70が短縮されて蓋体30が水平となる姿勢が維持された状態で、デジタルプロジェクタ11が上昇される。ここに、ワイヤ55の巻き取り速度は、例えば7m/分以下の範囲内で適宜に設定することができ、一定であっても、変化させてもよい。例えば、デジタルプロジェクタ11が床面から所定の高さまで上昇されたときに筺体本体21に接近するに従って巻き取り速度が低下される(最終的には0m/分となる)よう巻き取りモータ53の動作を制御することもできる。
【0032】
そして、各ワイヤ55が所定の巻き取り量で巻き取られて蓋体30が筐体本体21における蓋体受容装着部24に気密性緩衝部材35を介して当接されて筺体本体21の下方開口部23が蓋体30によって塞がれた状態とされると(
図6(a))、巻き取りモータ53の駆動が停止される。このとき、蓋体30が筺体本体21の受容装着部24に収納される際の振動は気密性緩衝部材35によって低減される。巻き取りモータ53の駆動制御は、例えばリミットスイッチやセンサなどによる過巻き防止手段(図示せず)によって行うことができる。
【0033】
この状態において、各エアシリンダ45に対して圧縮空気((
図6(b)において塗りつぶした矢印で示す。)が供給されることにより、
図6(b)に示すように、ピストンロッド46がシリンダチューブ47に対して上方向に作動され(
図6(b)においてはピストンロッド46の移動方向を便宜上斜線を付した矢印で示している。)、気密性緩衝部材35を弾性的に圧潰しながら、蓋体30が上方に引き上げられる(
図6(b)においては蓋体30の移動方向を白抜きの矢印で示している。)。これにより、蓋体30の筐体本体21に対する押圧状態が保持されて筺体20の内部が気密に密閉された空間とされると共に、デジタルプロジェクタ11の投影レンズ12が筺体20の映写窓25に対する適正な位置に配置された状態とされる(
図1参照)。
【0034】
而して、上記構成のプロジェクタ装置10によれば、基本的には、デジタルプロジェクタ11および昇降システム50などの全ての構成要素が筐体20内に収容されているので、劇場空間Srの美観を損なうことなく、劇場空間Sr内に設置することができて劇場空間Srを有効に利用することができる。
しかも、筺体本体21と天井裏とが連通するよう形成された冷却風給気口29を介して装置外部に延びる給気路Sp、および、排気用ダクト70が筺体本体21の上方開口部28を介して装置外部に導出されることにより形成された排気路Epのいずれもが、劇場空間Srと隔離されているので、プロジェクタ装置10に供給される冷却風および排気に係る熱風ないしは温風(例えば40〜50℃)が劇場空間Sr内に排出されることを回避することができる。また、筺体20を構成する筺体本体21における壁および蓋体30が遮音パネルによって形成されて筺体20自体が遮音性および吸音性が高いものとして構成されているので、デジタルプロジェクタ11の冷却機構(ランプ冷却用の給気用ファン18aおよびその他の構成部材の冷却用の給気用ファン18b、並びに、排気用ファン19)の動作音などの騒音を、筺体20における壁を構成する遮音パネルによって遮蔽ないしは吸音することができる。従って、プロジェクタ装置10から劇場空間Sr内に発せられる騒音を可及的に小さく低減することができる。
このように、上記構成のプロジェクタ装置10によれば、デジタルプロジェクタ11からの排気や騒音に係る問題を解消することができてより快適な劇場空間Srを提供することができる。
【0035】
また、上記構成のプロジェクタ装置10によれば、次のような効果がさらに得られる。
【0036】
(1)メンテナンス作業を行うに際しては、デジタルプロジェクタ11をワイヤ55による昇降システム50によって降下させればよいので、劇場空間Srの天井付近の高所において作業を行う必要がなくなり、安全かつ確実に所期の作業を行うことができる。しかも、デジタルプロジェクタ11がワイヤ55によって吊下支持されていることにより、作業者は、デジタルプロジェクタ11の全周方向からアクセスすることができるので、メンテナンス作業を容易にかつ確実に行うことができて高い作業性を得ることができる。
さらに、ベローズにより構成された排気用ダクト70によって、排気用ダクト70がデジタルプロジェクタ11に接続された状態を維持することができるので、デジタルプロジェクタ11が降下された状態にあっても、デジタルプロジェクタ11に対する冷却風の供給、排気を行うことができて、メンテンナンス作業後のデジタルプロジェクタ11の動作確認を筺体20内に収容することなく行うことができる。
【0037】
(2)エアシリンダ45の作動によって、蓋体30が気密性緩衝部材35を介して筺体本体21に対して押圧された状態が保持されて筺体20の気密構造が形成されることにより、筺体20は一層高い遮音性および吸音性を有するものとなる。従って、例えばデジタルプロジェクタ11の自重の影響などによって、筺体20の気密性が低下することがなく、デジタルプロジェクタ11から発せられる例えば冷却機構の動作音などが劇場空間Srに漏れることを確実に防止することができる。
また、筺体20内におけるデジタルプロジェクタ11の上下方向の位置をエアシリンダ45を作動させることによって微調整することができるので、デジタルプロジェクタ11の昇降動作によって、あるいは、デジタルプロジェクタ11の自重によって、デジタルプロジェクタ11の投影レンズ12の位置の、筺体20における映写窓25の位置に対する位置ずれが生ずることを回避することができ、光学系を再調整するなどの作業が不要となる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明のプロジェクタ装置においてはデジタルプロジェクタ11の昇降動作時において、デジタルプロジェクタ11の、筐体本体21に対する位置ないしは姿勢を規制する位置規制手段を備えた構成とすることができる。
【0039】
この例においては、
図7に示すように、架台枠41に設けられた上下方向に延びる案内ロッド61と、案内ロッド61を案内する一対の案内ローラ62とにより構成された位置規制手段を備えた構成とされている。
案内ロッド61は、上端部が上方に向かうに従って小径となる尖頭状(円錐状)に形成されており、例えば、架台枠41の上面における対角の位置の2箇所に設けられている。
一対の案内ローラ62は、上下方向に延びる円柱状の案内ロッド移動路を挟んだ位置において、回転軸が水平方向に延びる姿勢で筐体本体21に対して固定されて設けられている。各々の案内ローラ62は、ローラ基体63の周面にガイド溝64が形成されてなるものであって、一対の案内ローラ62のガイド溝64によってロッド案内用空間Rが形成されている。そして、ロッド案内用空間Rが、平面視にて、案内ロッド61の外周輪郭形状と適合する形状となるよう各々の案内ローラ62の回転軸が互いに上下方向に変位した状態で位置されている。
【0040】
このような構成によれば、デジタルプロジェクタ11の昇降動作時において、各々の案内ロッド61が、対応する一対の案内ローラ62によって形成されるロッド案内用空間R内に挿入されて案内ロッド61が案内ローラ62によって案内される。これにより、デジタルプロジェクタ11の、筐体本体21に対する位置ないしは姿勢が規制される。従って、デジタルプロジェクタ11の昇降動作時に多少の揺れが加わっても、ワイヤ55が撓んだり、蓋体30の水平性が著しく崩れたりすることがなく、デジタルプロジェクタ11の昇降動作を安全にかつ確実に行うことができる。
【0041】
位置規制手段は、デジタルプロジェクタの昇降動作時に、蓋体の筺体に対する位置を規制することのできるものであれば、案内ロッドと案内ローラとによるものに限定されない。
【0042】
また、本発明においては、筺体は下面が開閉可能に構成されていれば、筺体本体の開口部を蓋体により開閉する構成のものに限定されない。
さらにまた、デジタルプロジェクタを吊下支持するワイヤの本数、ワイヤの固定位置、エアシリンダの数およびその他の具体的な構成は、適宜変更することができる。
さらにまた、蓋体の表面上に2つの気密性緩衝部材を所定の間隔をあけて互いに平行に延びるよう配設して、二重シール構造を形成するよう構成されていてもよい。また、気密性緩衝部材が、筺体本体に設けられた構成とされていてもよい。
【課題】劇場空間の美観を損なうことなく、劇場空間を有効に利用することができ、しかも、デジタルシネマ用プロジェクタからの排気や騒音に係る問題を解消することができてより快適な劇場空間を提供することのできるデジタルシネマ映画館用のプロジェクタ装置を提供すること。
【解決手段】このプロジェクタ装置は、劇場空間の天井部に上壁部が固定された、内部に密閉空間を形成する筐体と、筐体の内部に設置された、冷却機構を備えたデジタルシネマ用プロジェクタとを備えてなり、デジタルシネマ用プロジェクタを冷却する冷却風の給気路と排気路が、劇場空間と隔離された状態で、筐体の上壁を介して装置外部に延びるよう形成された構成とされている。