(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
種子タンク(85)に貯留した種子を圃場に播種する播種装置(82)を走行車体(2)の後部に昇降リンク装置(3)を介して設け、該種子タンク(85)の下部に放出筒(90)を連通し、該種子タンク(85)の下方で且つ放出筒(90)の上部の種子繰出し部(87)に種子を繰り出す繰出し回転体(88)を回転可能に設け、該繰出し回転体(88)から繰り出される種子を放出筒(90)内の繰出し通路(117)を経由して圃場に播種する播種作業機において、繰出し回転体(88)から種子が放出されることを防止するガイド部材(112)を繰出し回転体(88)に沿わせて設け、繰出し回転体(88)から種子が散乱して落下することを防止する飛散防止体(115)を、繰出し位置(R)の直前で且つガイド部材(112)の下方で且つ繰出し回転体(88)に接触する側に付勢して設けた播種作業機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1は、乗用四輪駆動走行形態の播種作業機を示し、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して播種装置82を昇降可能に装着し、該走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分を設ける。
【0014】
なお、本明細書では、播種作業機の前進方向に向って左右方向をそれぞれ左、右とし、前進方向を前、後進方向を後とする。
前記走行車体2には、機体の前部にミッションケース12を配置し、該ミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース(図示せず)を設け、該前輪ファイナルケースの操向方向を変更する前輪支持部から外向きに突出する車軸に左右の前輪10,10を取り付ける。そして、前記ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部を固着し、該メインフレーム15の後部側で且つ左右方向の中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点として左右の後輪ギアケース18,18をローリング自在に支持し、該左右の後輪ギアケース18,18から外向きに突出する車軸に左右の後輪11,11を取り付ける。
【0015】
原動機となるエンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が第一ベルト伝動装置21などを介して静油圧式変速装置(HST)とミッションケース12内のミッションに伝達される。ミッションケース12内のミッションに伝達された回転動力は、変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0016】
そして、走行車体2の走行動力は、一部が前輪ファイナルケース(図示せず)に伝達されて前記左右の前輪10,10を駆動すると共に、残りが前記後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右の後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、カウンタ軸26を介して走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、図示しない施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0017】
また、該植付クラッチケース25内の植付クラッチからドライブシャフト28を介して動力が後述する播種装置82の伝動ケース29内の直播用クラッチに伝達される。そして、これら植付クラッチと直播クラッチは共に一方向クラッチとしている。
【0018】
植付クラッチは、駆動側クラッチ体と従動側クラッチ体のクラッチ爪に傾斜面を備え、該傾斜面を滑らせて逆転伝動をさせない形態のクラッチである。直播用クラッチは、外周部に複数の伝動用ローラを備えるローラ型クラッチであり、一般的に市販されているものである。
【0019】
前記エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。該座席31の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット32を配置し、該ボンネット32の上部に前記左右の前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びボンネット32の下端左右両側には、作業者が搭乗する水平状のフロアステップ35を配置する。
【0020】
前記昇降リンク装置3は平行リンク構成であり、1本の上部リンク40と左右一対の下部リンク41,41を備えている。該上部リンク40及び左右の下部リンク41,41は、基部側を前記メインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けると共に、先端部側に縦リンクフレーム43を連結している。そして、前記メインフレーム15に固着した支持部材(図示せず)と上部リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部の間に昇降油圧シリンダ46を設け、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上部リンク40が上下に回動し、播種装置82が略一定の姿勢のままで昇降する構成とする。
【0021】
前記播種装置82の下部には複数のフロート55…を設け、該フロート55…を圃場の泥水面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55…が泥水面を整地しつつ滑走し、その整地跡に播種装置82から種子が播種される。
【0022】
前記複数のフロート55…は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付け、直播作業時には該フロート55…の前部の上下動を上下動検出機構(図示せず)で検出し、該上下動検出機構の検出結果に合わせて前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて、前記播種装置82を昇降させることにより、種子の播種深さを常に一定に維持する構成としたものであり、種子が水面に播種されて流されてしまうことや泥中に播種されて発芽できなくなることを防止できるので、種子が無駄になることや種子が流されて別の場所で密生してしまうことがなく、収穫物が病害虫等により生育途中で枯れてしまうことが防止される。
【0023】
前記施肥装置5は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)60に貯留されている肥料(粉粒体)を走行車体2の左右方向に複数設けられた肥料繰出部(粉粒体繰出部)61…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を図示しない施肥ホース(粉粒体移送ホース)でフロート55の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで案内し、該施肥ガイドの前側に複数設けた播種用作溝器64で播種条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出する構成としている。
【0024】
モータで駆動されるブロア(図示せず)で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバを経由して施肥ホース内に吹き込み、施肥ホース内の肥料を植付部側の肥料吐出口へ強制的に移送するようになっている。
【0025】
また、前記フロート55…の前側には、整地用の左右一対の整地ロータ27a,27aと中央の整地ロータ27bを配置する。
図2に示すとおり、前記縦リンクフレーム43に着脱ヒッチ65を着脱自在に取り付け、該着脱ヒッチ65の基部側面に機体左右方向に伸びるロータフレーム76を設け、該ロータフレーム76に「く」の字型のリンクプレート67の中央部を回転自在に取り付ける。また、該リンクプレート67の上端部に上部リンクアーム68の一端部を回動自在に取り付け、リンクプレート67の下端部に下部リンクアーム69の一端部を回動自在に取り付ける。そして、該上部リンクアーム68の機体前後方向中央部には前記中央整地ロータ27aと一対の左右の整地ロータ27b,27bの昇降操作を行なうロータ昇降レバー81のジョイントアーム70と連結する連結ロッド71を設けることにより、ロータ昇降リンク66が構成される。該ロータ昇降リンク66は、小型の播種作業機の場合左右どちらかに一基設け、中型、大型の播種作業機の場合は左右夫々に設ける左右のロータ昇降リンク66,66とする。
【0026】
さらに、前記下部リンクアーム69の他端部には機体下方に向かうロータ支持フレーム73の上下方向中央部を回動自在に連結し、該ロータ支持フレーム73の上端には楕円形の接続アーム74の一端を回動自在に連結し、該延設アーム74の他端部を上リンク68の他端部に回動自在に連結する。
【0027】
そして、前記ロータ支持フレーム73の下端部で且つ左右の整地ロータ27a,27aのどちらか一方の側部、或いは両側部に伝動ボックス(図示せず)を設け、該伝動ボックスに左右いずれか一側の後輪伝動ケース18からの動力を伝達する、
図1に示す伝動軸78を配置する。
【0028】
また、前記フロート55…のうち、機体左右方向中央のフロート55の前方に配置される中央の整地ロータ27bは、機体左右両側に配置するフロート55…の前方に配置する左右の整地ロータ27a,27aよりも前方に配置し、チェーンやスプロケット等の伝動部材(図示せず)を収納した左右の伝動ケース56,56を介して中央の整地ロータ27bの駆動系に連結している。
【0029】
上記構成からなる整地ロータ昇降機構では、ロータ昇降レバー81を引っ張ると、上リンク68と下リンク69の各一端が、「く」字状部材67の回動中心軸であるロータフレーム76を中心に上動し、ロータ支持フレーム73と共に左右及び中央の整地ロータ27a,27a,27bが上昇するので、圃場の深浅や土質、作業時の天候等の様々な条件に合わせて左右及び中央の整地ロータ27a,27a,27bの上下位置を変更することができ、種子を播種する圃場面が適切に均されて播種された種子がその場で生育しやすくなる。
【0030】
そして、前記縦リンクフレーム43の下部に左右及び中央の整地ロータ27a,27a,27bと播種装置82の左右傾斜角度を測定する水平センサ81aを設けたローリング軸96を取り付け、該水平センサ81aから発信される信号を受けると正転又は逆転して前記ローリング軸96を回動中心として後述する播種装置82の作業姿勢を圃場面と平行状態または略平行状態で保持するローリング用モータ(図示せず)を設ける。
【0031】
上記構成により、播種作業機の左右で圃場の深さが異なる場合や、圃場の土質が柔らかく播種作業機の左右どちらか一方が沈む場合でも、播種装置82の作業姿勢を圃場面と平行状態または略平行状態で保持することができるため、圃場に真っ直ぐに種子が播種されるので、播種した種子が偏り収穫物が密生することが防止され、収穫物の生育が良好となる。
【0032】
次に、播種装置82について説明する。
図1及び
図5〜
図7に示すとおり、縦リンクフレーム43の後部に播種伝動ケース29を設け、該播種伝動ケース29の後端部に播種フレーム33を上下回動自在に取り付ける。そして、該播種フレーム33の上部に種子を送り出す空気を送出するブロア86を播種フレーム33に基部側を取り付けた左右のブロア支持アーム86a,86aの上端部に取り付ける。また、播種フレーム33の基部側に後上り傾斜姿勢の補助フレーム33aを上下回動自在に取り付け、該補助フレーム33aの後端部に機体左右方向に延びる側面視L字形状の播種支持フレーム83を取り付ける。
【0033】
そして、該播種支持フレーム83よりも機体後方で且つ上方に圃場に播種する籾等の種子を貯留する種子タンク85を設け、該種子タンク85の下部に種子を繰り出す種子繰出し部87を設け、該種子繰出し部87の前側を前記播種支持フレーム83の上部に載置する。さらに、該種子繰出し部87の内部にロール軸109を機体前側方向(
図5に示す、反時計回り方向)に向かって一方向に回転可能に取り付け、該ロール軸109に種子タンク85から放出される種子を受けて下方に繰り出す円形の繰出しロール88を軸着し、該繰出しロール88の外周部に種子を受けて貯留する複数の貯留溝88a…を等間隔に形成する。
【0034】
また、前記種子繰出し部87の下部に前記繰出しロール88で繰り出される種子をブロア86からの風で下方に放出させる放出筒90を下方に向けて取り付け、該放出筒90の下部に放出筒90内に前記ブロア86が発生させる風が通過する送風筒106を設け、前記ブロア86と送風筒106をダクト105で連結する。そして、前記排出筒90の内部に種子や風が通過する繰出し通路117を形成し、放出筒90の下端部にブロア86からの空気の流れで圃場に種子を打ち込んで播種する播種口91を取り付ける。前期放出筒90の機体前側部には、種子繰出し部87よりも機体前側に突出する突出部90aを形成する。
【0035】
なお、該ブロア86にダイヤルやスイッチを取り付け、送風量を作業者が圃場状態や天候、種子の状態等の作業条件に応じて任意に変更できる構成としてもよい。
さらに、前記繰出しロール88の下方で且つ放出筒90の内側上部に、播種口91から種子が圃場に播種される際に跳ね上がる泥水が上方に移動するのを防止する泥除け板110を後上り傾斜姿勢で設け、該泥除け板110の前側端部を排出筒90の前記繰出しロール88の回転方向下手側の繰出し位置R近傍の下方に配置する。そして、前記繰出しロール88の繰出し位置Rよりも回転方向下手側で貯留溝88a…から落下した種子を受けて繰出し位置Rに移動させると共に種子の機体左右方向への移動を規制して泥除け板110と放出筒90との間に落下することを防止する左右の突起体111a,111bを該泥除け板110の上側に後上り傾斜姿勢で取り付ける。該左右の突起体111a,11bの終端部は、
図5及び
図6で示すとおり、該繰出しロール88の外周縁部に接触する直前位置まで近接させる。
【0036】
また、前記種子繰出し部87の機体前側に繰出し位置Rよりも回転方向上手側で繰出しロール88から種子が放出されることを防止するガイドカバー112を設け、該ガイドカバー112を繰出しロール88が種子繰出し部87から種子を受け終える箇所から繰出し位置の直前箇所までを覆う繰出しロール88の円弧形状に沿う形状に形成する。該ガイドカバー112は、ポリ塩化ビニル(PVC)やアクリル、ゴム等の弾性を有する軟質材で構成する。
【0037】
そして、前記ガイドカバー112に、上下方向に亘って複数のスリット114…を開口し、該スリット114…の内側にガイドカバー112の撓みを抑える支持線113…を撓ませずに取り付ける。該支持線113…は、ピアノ線等の丈夫で且つ弾性の高い非金属、或いはワイヤー等の柔軟性を有する金属のどちらで構成してもよい。
【0038】
さらに、前記放出筒90に形成した突出部90aの内側に繰出し位置Rよりも搬送方向上手側で繰出しロール88に接触して繰り出される種子が拡散した状態で放出筒90に落下することを防止する飛散防止板115を上下方向に回動自在に設け、該飛散防止板115を常時上方に張圧するスプリング116を伸縮自在に取り付けることにより、播種装置82が構成される。
【0039】
なお、上記飛散防止板115は、ナイロン等で形成する複数の毛状体からなるブラシに置き換えて構成しても、同様の効果を発揮できる。
上記構成により、繰出し通路117を落下して播種口91に落下した種子をブロア86の風により圃場に打ち込んで播種することにより、種子の播種深度が適切に確保されるので、種子が浮力により泥水面に浮かび上がり、水流や風で播種位置から流されてしまうことを防止できるので、種子が適切な位置に播種されて収穫物の生育が順調となる。
【0040】
また、ブロア86の風は常時圃場に向けて吹き付けているので、播種位置周辺の塵芥を除去することができ、播種された種子が覆われて生育しなくなることが防止され、収穫物の収量が維持される、或いは増加する。
【0041】
そして、放出筒90の機体後側の内側から繰出しロール88の繰出し位置Rの下方近傍に亘って泥除け板110を設けたことにより、種子を播種した際、落下の衝撃やブロア86の送風により跳ね上がる泥水を泥除け板110で受け止めることができるので、繰出しロール88や放出筒90の内部に泥が付着することを防止でき、繰出しロール88の貯留溝88a…に泥が詰まって種子タンク85から供給される種子が保持されなくなり、播種作業が停滞することや種子が所定量、即ち貯留溝88aの容量以上の数の種子が圃場に一度に落下することが防止されるので、常に適切な量の種子が圃場に播種され、無駄な種子の量が減少すると共に、収穫物が成長して密植状態となり病害虫や風害により収穫量が減少することを防止できる。
【0042】
加えて、手の届きにくい位置に設けている繰出しロール88に付着した泥や泥に混入していた夾雑物を取り除く作業を頻繁に行わなくてもよいため、メンテナンス性が向上する。
【0043】
さらに、繰出しロール88の繰出し位置Rよりも回転方向下手側で貯留溝88a…から落下した種子を受けて繰出し位置Rに移動させる左右の突起体111a,111bを泥除け板110の上部に設けたことにより、種子を繰出し位置Rから繰出し通路117に落下させることができるので、種子の播種位置にバラつきが生じにくく、収穫物が条ごとに整列して植生し、収穫時に効率のよい収穫作業を行える。
【0044】
また、左右の突起体111a,111bが泥除け板110上の種子の左右方向への移動を規制することにより、泥除け板110に載った種子が泥除け板110放出筒90の内壁の間に挟まって損傷することを防止できるので、傷付いた種子が播種されることが防止され、収穫量が維持される。
【0045】
そして、泥除け板110上に載った種子が繰出し回転ロール88の回転を妨げすることを防止できるので、播種のタイミングが狂うことが防止されて種子が生育に適切な位置で播種されると共に、繰出しロール88が種子との接触の摩擦等で傷付くことを防止でき、傷付いた種子が播種されることが防止され、収穫量が維持される。
【0046】
さらに、種子繰出し部87で種子を受け終える位置から繰出し位置Rの直前まで繰出しロール88に接触するガイドカバー112を設けたことにより、繰出し位置Rよりも手前で種子が落下することを防止できるので、種子の播種位置にバラつきが生じにくく、収穫物が条ごとに整列して植生し、収穫時に効率のよい収穫作業を行える。
【0047】
また、ガイドカバー112を軟質材で構成すると共に、ガイドカバー112に複数のスリット114…を形成したことにより、ガイドカバー112は種子と接触しても撓んで変形するので、種子が摩擦で傷付くことを防止でき、傷付いた種子が播種されることが防止されて収穫量が維持される。
【0048】
また、肥料や酸素供給剤、鳥害防止の金属粉等でコーティングした種子を用いる場合でも、ガイドカバー112が撓んで変形し易いことにより、接触時の摩擦でコーティング剤が種子から剥離し難くなるので、播種された種子が生育し易くなり、収穫量が増加する。
【0049】
そして、複数のスリット114内にガイドカバー112の撓みを抑える複数の支持線113…を設けたことにより、ガイドカバー112に種子が接触して撓んでも、種子が繰出し位置Rから繰り出されると同時にガイドカバー112を元の形状に戻す力がかかるため、ガイドカバー112と繰出しロール88との間に大きな隙間が生じて種子が繰出し位置Rよりも手前で落下することを防止でき、種子が生育に適切な位置で播種される。
【0050】
さらに、放出筒90に形成した突出部90aの内側に、繰出し位置Rの直前位置で繰出しロール88に接触する飛散防止板115を設けたことにより、飛散防止板115が繰出しロール88から放出される種子の遠心力を打ち消しながら繰出し通路117に落下させるので、常に適切な量の種子が圃場に播種されるため、無駄な種子の量が減少すると共に、密植状態となり病害虫や風害により収穫量が減少することを防止できる。
【0051】
また、飛散防止板115を回動自在に構成し、飛散防止板115を常時上方向に張圧するスプリング116を設けたことにより、種子を貯留した貯留溝88aが通過するときのみ飛散防止板115が繰出しロール88から離間するとともに、種子が排出されると飛散防止板115が再度繰出しロール88に接触する構造となる。
【0052】
前記播種装置82の下方には、土壌面に接地して滑走する前記フロート55…が播種フレーム33の下方に夫々吊持させて配置され、前記フロート55…の両側には左右一対の播種用作溝器64,64を設ける。そして、該左右の播種用作溝器64,64よりも機体後方には、左右の播種用作溝器64,64で形成した圃場の溝を埋める左右一対の覆土板59,59を設け、該左右一対の覆土板59,59で圃場の溝内に打ち込まれた種子を圃場の土で被覆することができるので、種子が浮力で泥水面に浮かび上がることが防止され、種子が適切な位置に播種されて収穫物の生育が順調となる。
【0053】
本実施例の種子繰出部87の繰出ロール88には、
図3(a)に示すとおり繰出ロール88の回転軸に平行する方向に伸びた貯留溝88aを繰出ロール外周の円周方向に均等に4個設けることで、繰出ロール88の一回転で4回の種子の点播ができる。また、貯留溝88aは、
図5で示すとおり8個に形成してもよく、他にも6個、12個と、播種装置82を搭載する播種作業機の大きさや播種装置82が想定する作業規模に適合する数の貯留溝88aを形成してもよい。また、貯留溝88aの数の異なる繰出しロール88を、作業者が作業形態に合わせて変更可能とすると、作業条件に合わせて種子の播種量を変更できるので、多様な作業条件に対応できる播種装置となる。
【0054】
またこの繰出ロール88に
図3(b)と、
図3(b)のA−A線断面図であるC(c)と、
図3(b)の矢印B方向から見た図である
図3(d)で示すとおり、外周に均等に4カ所に切込88b…を設け、該切込88b…の一部に入り込む筒状防護体89を繰出ロール88に蓋をするように差し込む構成とすると、繰出しロール88を筒状防護体89で保護することができるとともに貯留溝88a…の開放状態を維持することができるので、繰出しロール88や貯留溝88a…の損傷が防止される。
【0055】
前記切込88b…の数は、繰出しロール88の貯留溝88a…と同数形成すると、種子の繰り出しに干渉することがなく、播種効率が向上する。
また
図4(a)及び
図4(b)に示す
図4(a)のA−A線断面図に示すとおり、繰出ロール88’の回転軸に平行する方向に伸びた溝88’aを繰出ロール88’外周の円周方向に均等に8個設けることで、繰出ロール88’の一回転で8回の種子の繰り出しができ、播種能率が向上する。
【0056】
またこの繰出ロール88’に
図4(b)と
図4(a)の矢印B方向から見た図である
図4(c)に示すとおり、繰出ロール88’の外周に均等に8カ所に切り込み88’bを設け、該切り込み88’bに入り込む
図3(b)に示す筒体89’を差し込むことで円筒体が得られ、溝88’aの損傷を防止する。8カ所の溝88’aを繰出ロール88’の外周部に設けた場合は、点播というより条播に近い播種ができる。
【0057】
図7〜
図9で示すとおり、播種装置82は溝切り装置95を取付可能な構成とする。
該溝切り装置95は伝動ケース29(
図1参照)に支持された横幅方向に伸びる播種フレーム33に端部を支持固定された基盤97上にロッド98の一端を回動可能に取り付け、該取付ロッド98の他端部側に底面側が鋭角状になった溝切り板99を固定して取り付ける。
【0058】
該溝切り板99は縦断面がM字状に折れ曲がった板で構成するものであり、中央部底面側を鋭角状に折り曲げている。また、前記溝切り板99の上面側の両方の傾斜面に端部がそれぞれ支持された板材100を配置し、該板材100の下面に取付ロッド98の先端部が固定されている。
【0059】
基盤97に一端が回動自在に取り付けられ、他端が前記取付ロッド98の中間部の下面に設けたピン98aに係止された第1のアーム103を設ける。また、板材100の上面に端部が固定された左右一対のL字状折れ曲がりロッド101,101を設け、該左右のロッド101,101の先端部同士に第2のアーム102を掛け渡している。
【0060】
前記溝切り板99が
図7の一点鎖線で示す収納位置Cにある時、第2のアーム102を播種装置82の適宜の部材に係止させておくと、溝切り装置95を上げたまま保持できる。このとき、第1のアーム103の先端にはL字状の孔103aを形成すると共に、該孔103a内を摺動するピン98aを取付ロッド98に設けているので、
図7の溝切り板99を圃場面に下げた実線で示す下作用位置Aのピン98aの位置と溝切り板99を圃場面から上昇させた収納位置Cのピン98aの位置が第1アーム103の先端のL字状孔103aのそれぞれ反対側の先端部に移動すると、前記取付ロッド98をそれぞれの位置で保持することができる。
【0061】
また、
図10及び
図11で示すように前記第1アーム103とピン98aを取り除いて、前記基盤97と取付ロッド98との間にシリンダ118を設け、前記フロート55…に設けた硬軟センサ119が検出した圃場の硬軟に合わせて制御装置120から信号を発し、該シリンダ118を伸縮させて溝切り装置95をさせる構成とする。
【0062】
圃場面が硬いと判断されると溝切り装置95を下作用位置Aに降下させ、軟らかいと判断されると溝切り装置95を上作用位置Bに上昇させる制御を行なうことで、溝切り装置95が土中に深く入り込んで泥土を巻き上げてしまい、苗の植付を泥土が妨げることを防止できるとともに、溝切り装置95が圃場面に接触しない、或いは接触位置が浅過ぎて溝が形成されないことを防止できる。
【0063】
さらに、前記フロート55…に水深センサ(図示省略)を設け、水深が深いと判断すると溝切り装置95を下作用位置Aから上方に上昇させることにより、溝切り装置95が圃場面に湛えられた泥水を押し、播種した種子を押し流してしまうことが防止される。
【0064】
また、昇降油圧シリンダ46で昇降リンク装置3を上昇する場合には、シリンダ118を伸ばして溝切り装置95を収納位置Cまで上昇させることにより、走行車体2を後進させる場合に溝切り装置95が圃場面に突き刺さることを防止できる。