(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カチオン性ウレタン樹脂(B)が、脂環式多価イソシアネート化合物と、アミノ基を有するポリオール化合物と、アミノ基を持たないポリオール化合物との重付加反応生成物からなるウレタン樹脂中に含まれるアミノ基部分を四級化して形成される第四級アンモニウムカチオン型のカチオン性ウレタン樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のゲル複合シート。
前記親水性重合体(A)が、酸性基を有する水溶性または水易分散性の重合体であり、前記酸性基の少なくとも一部がアルカリ塩化されており、前記アルカリ塩化された酸性基が多価金属化合物によって架橋されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル複合シート。
更に前記工程(1)が、ポリイソシアネート化合物と、アミノ基を有するポリオール化合物と、アミノ基を有さないポリオール化合物とを反応させてウレタン樹脂を得る工程(1−1)と、前記工程(1−1)で得られたウレタン樹脂のアミノ基部分を四級化し、第四級アンモニウムカチオン型ウレタン樹脂(B)を得る工程(1−2)とを含むことを特徴とする、請求項7に記載のゲル複合シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<ゲル複合シート>
本発明のゲル複合シートは、プラスチックから実質的になる基材シートと、ヒドロゲル層と、プライマー層とを有するゲル複合シートであって、前記基材シートと前記ヒドロゲル層が、前記プライマー層を介して積層されており、前記ヒドロゲル層が、親水性重合体(A)と、水とを含み、前記プライマー層が、カチオン性ウレタン樹脂から実質的になることを特徴とする。また、本発明の1つの態様において、前記基材シートと前記ヒドロゲル層は、前記プライマー層を介して密着されていることが好ましい。
【0026】
なお、本明細書において、「実質的になる」とは、「特定の成分」が、特定の層の構造を構成している成分の「主成分」であることを意味する。例えば、プライマー層は、カチオン性ウレタン樹脂が前記プライマー層の構造をなす成分の主成分であるが、後述するように、前記成分には有効成分等のその他の成分を含んでいてもよい。
また、「主成分」とは、特定の層を構成している成分の全質量を100質量%としたとき、特定の成分の割合が70質量%以上であることを意味し、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
【0027】
[ヒドロゲル層]
本発明の1つの態様において、ヒドロゲル層を形成している材料(以下、「ゲル材料」と言うこともある)は、親水性重合体(A)と、水とを含有するものである。前記親水性重合体(A)は、酸性基を有する水溶性または水易分散性の重合体であることが好ましい。また、前記酸性基の少なくとも一部がアルカリ塩化されており、前記アルカリ塩化された酸性基が多価金属化合物によって架橋されていてもよい。本明細書において、「水溶性または水易分散性の重合体」とは、水に対する溶解度あるいは分散濃度が、2〜95%である重合体のことを意味する。
また、本発明の1つの態様において、ゲル複合シートのヒドロゲル層には、用途に合わせて、種々の有効成分(任意成分)を含有することができる。ヒドロゲル層に含有させることのできる任意成分については後述する。
【0028】
(親水性重合体(A))
本発明の1つの態様において、親水性重合体(A)は、酸性基を有する水溶性または水易分散性の重合体、またはそのアルカリ塩を架橋して得られるものであることが好ましい。また前記酸性基としては、カルボキシ基が好ましい。また、前記重合体のアルカリ塩としては、Na塩、K塩、Mg塩、およびCa塩等が挙げられる。このうち、Na塩、またはK塩が好ましい。
本発明の1つの態様において、前記親水性重合体(A)は、脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ塩類の水溶性又は水易分散性の重合体を、架橋剤で架橋して得られるものであることが好ましい。また、前記架橋剤としては、多価金属化合物が好ましい。
脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ塩類の重合体としては、例えば、炭素数2〜10の一価、若しくは二価のカルボン酸を構成単位として含む重合体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、またはそのアルカリ塩等を構成単位として含む重合体がより好ましい。
このような構成単位を含む重合体としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、およびそのアルカリ塩などが挙げられる。
すなわち、本発明の1つの態様においては、ヒドロゲル層に含まれる親水性重合体(A)は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、またはそのアルカリ塩と、水とを含むゲル材料を、多価金属化合物で架橋して得られるものである。
本発明の1つの態様において、親水性重合体(A)は、その構造中に酸性基、すなわちアニオン性の基を有するものである。ヒドロゲル層が、その構造中にアニオン性の基を有する親水性重合体(A)を特定量含むことにより、カチオン性のウレタン樹脂を含むプライマー層と強く結合して、ヒドロゲル層とプライマー層との密着性を向上させることができる。
本発明の1つの態様において、ヒドロゲル層中のアニオン濃度は、ゲル材料中の親水性重合体(A)の割合によってコントロールすることができる。すなわち、ヒドロゲル層中の親水性重合体(A)の割合は、ゲル材料の総質量に対して、1〜75質量%含まれることが好ましく、2〜30質量%含まれていることがより好ましく、3〜15質量%含まれていることが特に好ましい。
【0029】
また、ヒドロゲル層中の水分の割合は、ヒドロゲル層を構成するゲル材料の総質量に対して、25〜80質量%が好ましく、50〜75質量%がより好ましい。ヒドロゲル層中の水分の割合が25質量%未満では「ヒドロゲル層」としての機能、例えば、瑞々しさ、やわらかさ、付着力等が不十分となる場合がある。また、ヒドロゲル層中の水分の割合が、80質量%を超えると、ベタつき感が強くなり過ぎる傾向がある。
すなわち、ヒドロゲル層中の水分の割合が、ヒドロゲル層を構成するゲル材料の総質量に対して、25〜80質量%であれば、べたつき感が強くなりすぎず、ヒドロゲル層としての機能が十分であるため好ましい。
なお、本明細書において、ヒドロゲル層中の水分の割合は、後述するように、ゲル複合シートを密閉容器等に入れた状態での水分の質量の割合を指すものとする。
【0030】
(架橋剤)
本発明のゲル複合シートの1つの態様において、水溶性又は水易分散性の重合体の架橋に使用される架橋剤としての多価金属化合物としては、例えば、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、亜鉛化合物、カドミウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物錫化合物、鉄化合物、クロム化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物等などを挙げることができる。これらの中で人体に貼付することから、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物が好ましい。
アルミニウム化合物の具体的な例としては、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ジヒドロキシアウミニウムアミノアセテート等のような、アルミニウムの水酸化物、無機塩、有機塩あるいはキレート化合物等を含む広い範囲のアルミニウム化合物を挙げることができる。
カルシウム類化合物としては、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウムなどを挙げることができる。
さらにマグネシウム化合物としては、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイトなどを挙げることができる。また、これらの多価金属化合物は1種単独で用いてもよく、複数を用いても良い。これら多価金属化合物の内、アルミニウム化合物を用いることがより好ましく、水酸化アルミニウムの有機塩、例えば、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等が特に好ましい。
また、本発明の1つの態様において、ヒドロゲル層に含まれる架橋剤の割合は、ヒドロゲル層を構成するゲル材料の総質量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0031】
(pH調整剤)
本発明の1つの態様において、上記架橋剤による架橋反応は、ゲル材料のpHを調整することによって制御することが可能である。特に、分子内にOH基を含む有機酸またはその塩類を添加することによって、反応速度を速くすることが出来る。このような有機酸としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、サリチル酸等の一般にオキシ酸と呼ばれるものが好ましく、特に酒石酸が好ましい。
本発明の1つの態様において、ヒドロゲル層がpH調整剤を含む場合、その割合は、ヒドロゲル層を構成するゲル材料の総質量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
【0032】
本発明のゲル複合シートの1つの態様において、前記ヒドロゲル層の厚みは、触感やコストの観点から、0.1〜10mmであることが好ましく、0.5〜5mmであることがより好ましい。また、前記ヒドロゲル層の厚みは、プライマー層とヒドロゲル層の界面から、ヒドロゲル層の空気と接触する側の面までの厚みのことを意味する。前記厚みは、使用するスペーサーの厚みを変更することによって調整可能である。
【0033】
[基材シート]
本発明のゲル複合シートの1つの態様において、基材シートはプラスチックから実質的になるシートである。基材シートとして使用されるプラスチックフィルムとしては、熱可塑性樹脂からなるプラスチックフィルムであれば、本発明の効果を有する限り特に制限はないが、本質的に疎水性のプラスチックフィルムを用いることができる。なお、本明細書において、本質的に疎水性のプラスチックフィルムとは、水に対する接触角が90°以上のプラスチックフィルムを指すものとする。そのようなプラスチックフィルムの中でも、柔軟性、伸縮性を有すものが特に好ましい。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリブテン等のポリオレフィン系重合体;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及びこれらの水素添加物等のポリスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−エチレン共重合体等の塩化ビニリデン系重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸アルキルエステル共重合体等の塩化ビニル系(共)重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリウレタン;ポリアミド等が挙げられる。このうち、柔軟性やコストの観点から、ポリプロピレン、ポリウレタン、またはポリエチレンがより好ましい。上記フィルムは単層で用いられてもよく、二種以上の積層体として用いてもよい。
【0034】
上記基材シートとしてのプラスチックフィルムの厚みは、1μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは20〜100μmである。前記基材シートの厚みは、プライマー層を塗工する前の厚みを意味し、23℃、50%RHの条件で測定した値のことを指す。
また、プラスチックフィルムのプライマー層、およびヒドロゲル層を重ね合わせる側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理、薬品酸化処理、オゾン処理などにより、表面改質が施されていてもよい。このような方法でプラスチックフィルムの表面を改質することによって、結着力を高める効果を得ることができるため好ましい。
【0035】
[プライマー層]
本発明のゲル複合シートの1つの態様において、プライマー層は、カチオン性ウレタン樹脂からなることを特徴とする。カチオン性ウレタン樹脂とは、その構造中にカチオン基を有するウレタン樹脂のことを指す。本発明の1つの態様において、前記カチオン基は、第四級アンモニウム基であることが好ましい。すなわち、本発明の1つの態様において、前記カチオン性ウレタン樹脂は、第四級アンモニウムカチオン型のカチオン性ウレタン樹脂(B)であることが好ましい。
【0036】
(第四級アンモニウムカチオン型のカチオン性ウレタン樹脂(B))
本発明の1つの態様において、前記第四級アンモニウムカチオン型のカチオン性ウレタン樹脂(B)(以下、単に「ウレタン樹脂(B)」と言うこともある)は、ポリイソシアネート化合物と、アミノ基を有するポリオール化合物と、アミノ基を有さないポリオール化合物との反応によって得られたウレタン樹脂のアミノ基部分を、第四級化することによって得られたものである。
なお、上記「アミノ基を有するポリオール化合物」や「ウレタン樹脂」中に含まれる「アミノ基」は、本技術分野において、「第三アミノ基」や「三級アミノ基」と称されることもあるアミノ基であり、第三級アミンに炭化水素基を結合させて四級化するための一般的な反応により第四級アンモニウムカチオンとなすことができる、窒素原子含有構造単位のことを意味する。
すなわち本発明の1つの態様において、前記第四級アンモニウムカチオン型のカチオン性ウレタン樹脂(B)は、前述のポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物との反応によって得られたウレタン樹脂と、第四級化剤とを反応させることによって得ることができる。また、前記第四級化剤としては、硫酸ジアルキル、アルキルハライド等が挙げられ、硫酸ジメチルが特に好ましい。
第四級アンモニウムカチオン型のカチオン性ウレタン樹脂(B)を製造する方法については後述する。
【0037】
本発明のゲル複合シートの1つの態様において、プライマー層は、前記カチオン性ウレタン樹脂を含むエマルジョン(以下、ウレタンエマルジョンと言うこともある)を基材シート上に塗工することで形成することができる。ウレタンエマルジョンとは、分散媒中に前述のカチオン性ウレタン樹脂、好ましくはウレタン樹脂(B)が分散したもののことを指す。
本発明の1つの態様において、ウレタンエマルジョン中のカチオン性ウレタン樹脂の含有量(固形分濃度と言うこともある)は、ウレタンエマルジョンの総質量に対して、5〜70質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0038】
本発明の1つの態様において、カチオン性ウレタン樹脂を形成するための原料であるポリイソシアネート化合物としては、構造中に2個以上のNCO基を有するジイソシアネート、または構造中に3個以上のNCO基を有する多官能イソシアネートのことを指す。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数6〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15のアラルキル型ポリイソシアネートおよびこれらのポリイソシアネートの変性物、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。この中でも、炭素数6〜15の脂環式ポリイソシアネートは、得られるポリウレタン樹脂が柔軟性と強靭性に優れる点から好ましい。
【0039】
ポリイソシアネート化合物としての芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン等が挙げられる。
【0040】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0041】
脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。この中でもイソホロンジイソシアネート(IPDI)は、得られるポリウレタン樹脂の柔軟性と強靭性の点から特に好ましい。
【0042】
アラルキル型ポリイソシアネートの具体例としては、例えばm−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0043】
また本発明の1つの態様において、アミノ基を有するポリオール化合物としては、水酸基価が20〜1500mgKOH/gのアミノポリオールが好ましく、具体的には、炭素数3〜20のアミノポリオール化合物を用いることが出来る。
ここで「水酸基価」とは、ポリオール化合物1g中に含まれる水酸基をアセチル化するために必要な水酸化カリウムの量をmgで表したものである。
アミノ基を有する炭素数3〜20のポリオール化合物の具体例としては、ジヒドロキシエチルメチルアミン、ジヒドロキシエチルエチルアミン、ジヒドロキシエチルプロピルアミン、ジヒドロキシエチルブチルアミンなどを挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
また、アミノ基を有さないポリオール化合物としては、水酸基価が20〜1800mgKOH/gの低分子量ポリオール化合物、水酸基価が20〜1800mgKOH/gのポリオールオリゴマー化合物、及び水酸基価が20〜1800mgKOH/gの高分子量ポリオール化合物等を用いることが出来る。これらポリオール化合物は1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
アミノ基を有さない低分子量ポリオールおよびポリオールオリゴマー化合物としては、脂肪族ジオール、環状基を有するジオール等の2価アルコール、3価〜10価またはそれ以上の多価アルコール等が挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖のジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−もしくは2,3−ブタンジオールなどの分岐鎖を有するジオールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、環状基を有するジオールとしては、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、m−またはp−キシリレングリコール等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
3価〜10価またはそれ以上の多価アルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど糖類、蔗糖、メチルグルコシドなどの配糖体、およびこれらのアルキレンオキサイド付加物;並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。多価アルコールとして、上述の糖類、または配糖体のアルキレンオキサイド付加物を用いる場合、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、およびブチレンオキサイドからなる群より選択される少なくとも1つのアルキレンオキサイドであることが好ましい。
これらのうち好ましいものは脂肪族ジオールであり、さらに好ましいものは1,4−ブタンジオールおよびネオペンチルグリコールである。
【0046】
アミノ基を有さない高分子量ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール、およびこれら2種以上の混合物を用いることが出来る。これらのうち好ましいものは、前述の低分子量ポリオール(特に脂肪族ジオール)にエチレンオキシドやプロピレンオキシド等付加したものである。
【0047】
本発明の1つの態様において、ウレタン樹脂(B)の製造は、公知の方法で行うことができる。具体的には、原料物質としての化合物を全て一括して反応させる方法(ワンショット法)、およびこれらの反応成分の一部を予め反応させてイソシアネート基もしくは水酸基末端を有するウレタンプレポリマーを経由して多段反応させる方法(プレポリマー法)などが挙げられる。
【0048】
イソシアネート基末端を有するウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート化合物(以下、「ポリイソシアネート化合物(I)」と言うこともある)と、第四級アンモニウムカチオン型のカチオン性ウレタン樹脂における、第四級アンモニウムカチオン部分の前駆体となるアミノ基を有するポリオール化合物(以下、「ポリオール化合物(CD)」と言うこともある)と、アミノ基を有さないポリオール化合物(以下、「ポリオール化合物(P)」と言うこともある)とを重付加反応することによって形成される。
上記重付加反応の際のポリイソシアネート化合物(I)とポリオール化合物(CD)およびポリオール化合物(P)の水酸基当量比は、ポリイソシアネート化合物(I)1当量に対し、(CD)は通常0.01〜0.3当量、好ましくは0.05〜0.2当量、(P)は通常0.7〜0.99当量、好ましくは0.85〜0.95当量である。
このようにして、イソシアネート基末端を有するウレタンプレポリマーを形成した後、前記ウレタンプレポリマーとアルコール類とを反応させることにより、目的とするカチオン性ウレタン樹脂を得ることができる。前記ウレタンプレポリマーと反応させるアルコール類は、前述のポリオール化合物の他、メタノール、エタノール、プロパノール等の一価のアルコール類、またはこれらの混合物であってもよい。
【0049】
最終的に得られるウレタン樹脂(B)の数平均分子量は、通常3,000以上であり、好ましくは10,000〜1,000,000である。また、ウレタン樹脂(B)の末端基は、通常、水酸基もしくはアミノ基であり、イソシアネート基ではない。
【0050】
本発明の1つの態様において、プライマー層を形成するためのウレタンエマルジョンは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じてその他の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、水系エマルジョン、あるいは水溶性高分子化合物を混合してもよい。ウレタンエマルジョンに任意のエマルジョン、または水溶性高分子化合物を混合する場合、アニオン性のエマルジョンまたは水溶性高分子化合物は、カチオン性ウレタン樹脂を含むウレタンエマルジョンと混合した場合に、凝集などの芳しくない作用を示すため、使用できない。使用できる材料として、例えば、種々の分子量、またはけん化度を有するポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを挙げることができる。
ウレタンエマルジョン中の任意成分の割合は、ウレタンエマルジョンの総質量に対して、0.1〜50質量%が好ましく、1〜20質量%が好ましい。
【0051】
本発明のゲル複合シートの1つの態様において、ヒドロゲル層を形成するためのゲル材料には、必要に応じて、種々の化粧品の有効成分、生理活性成分が含まれていてもよい。それらは本質的には水溶性の成分・薬剤が好ましいが、微量であれば、すなわち、ゲル材料の総質量に対して、0.01〜10質量%の範囲であれば、非水溶性の成分・薬剤を含有させることも出来る。
また、本発明の1つの態様において、ヒドロゲル層中の任意成分の割合は、ゲル材料の総質量に対して、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0052】
水溶性の薬剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アスコルビン酸系美白剤として、L−アスコルビン酸(ビタミンC)が挙げられる。また、ビタミンC誘導体として、例えば、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル、dl−α−トコフェロール−2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステル等のアスコルビン酸無機塩エステル類;2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸等のアスコルビン酸−2−グリコシド等が挙げられる。
【0053】
上記水溶性薬剤としてのアスコルビン酸及びその誘導体は、塩として配合することが多く、このような塩としては、アルカリ金属塩(Na塩、K塩等)、アルカリ土類金属塩(Ca塩、Mg塩等)、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、アミノ酸塩等が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属塩である。
【0054】
また、トラネキサム酸、さらには、トラネキサム酸誘導体に対しても本発明を適用することができる。トラネキサム酸誘導体としては、例えば、トラネキサム酸の二量体[例えば、塩酸トランス−4−(トランスアミノメチルシクロへキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸]、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、トランス−4−アミノメチルシクロへキサンカルボン酸−4’−ヒドロキシフェニルエステル)等が挙げられる。
【0055】
また、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジン等のアミノ酸及びこれらのアルカリ金属塩と塩酸塩;アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸;ビタミンA及びその誘導体;ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体等のビタミンB類;ビタミンE類;ビタミンD類;ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類;ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、アルブチン、セファランチン、プラセンタエキス等の各種薬剤も水溶性薬剤として挙げることができる。
【0056】
その他、含有可能な水溶性成分は、通常、化粧品に用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、アシタバ抽出液、アセンヤク抽出液、アルテア抽出液、アルニカ抽出液、アロエエキス、アロエベラ抽出液、イチョウ抽出液、イラクサ抽出液、ウイキョウ抽出液、エイジツ抽出液、エンメイソウ抽出液、オウゴン抽出液、オウバク抽出液、オウレン抽出液、オトギリソウ抽出液、オランダカラシ抽出液、海藻抽出液、ガイヨウ抽出液、褐藻エキス、カミツレ抽出液、カラス麦抽出液、カワラヨモギ抽出液、クチナシ抽出液、クマザサ抽出液、クララ抽出液、クレマティス抽出液、ゲンノショウコウ抽出液、紅茶抽出液、ゴボウ抽出液、米ぬか抽出液、コンフリー抽出液、サボテンエキス、サルビア抽出液、サンザシ抽出液、ジオウ抽出液、シソエキス、シモツケ抽出液、シャクヤク抽出液、ジュウヤク抽出液、ショウキョウチンキエキス、ショウブ根抽出液、シラカバ抽出液、水溶性シコン抽出液、西洋キズタ抽出液、西洋鋸草抽出液、西洋ハッカ抽出液、西洋菩提樹抽出液、ゼニアオイ抽出液、センブリ抽出液、ソウハクヒ抽出液、大豆エキス、タイム抽出液、タチジャコウソウ抽出液、茶エキス、チョウジ抽出液、チンピ抽出液、トウガラシチンキ抽出液、トウキ抽出液、トウキンセンカ抽出液、トウヒ抽出液、ニンジン抽出液、ノバラ抽出液、パセリ抽出液、ハマメリス抽出液、バラエキス、ビワ抽出液、ブドウリーフ抽出液、ヘチマ抽出液、ベニバナ抽出液、ホオウ抽出液、ボタンピ抽出液、ホップ抽出液、マルメロエキス、マロニエ抽出液、マンネンロウ抽出液、メリッサ抽出液、メリロート抽出液、桃葉エキス、ヤグルマギク抽出液、ユキノシタ抽出液、ユーカリ抽出液、ユリ抽出液、ヨクイニン抽出液、ラベンダー抽出液、レモンエキス、ローズマリー抽出液、ローマカミツレ抽出液、ワレモコウ抽出液、キウイ抽出液、グレープフルーツ抽出液、ローヤルゼリーエキス等の抽出液、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のモノアルコールまたはポリオール等が挙げられる。
【0057】
本発明においては、通常外用組成物に配合され得る本質的に非水溶性の他の成分を、本発明の所期の効果を損なわない限りにおいて配合することができる。
それらは、例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類; マカデミアナッツ油、オリーブ柚、ラノリン、ヒマシ油等の油脂類;ホホバ油、カルナバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサン等のシリコーン類;カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール等の高級アルコール類;カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸等の高級脂肪酸;ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、ヘキサクロロフェン等の抗菌剤等である。
【0058】
また、ビタミンA及びその誘導体;ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類;ビタミンD類;ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類;ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ等の各種の有機溶媒で抽出した天然エキス;中和剤、酸化防止剤、色素、香料、界面活性剤等を適宜配合することができる。
【0059】
前記界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができ、非イオン系界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンセスキオレート、グリセリンモノステアレート、デカグリセリルモノラウレート、ヘキサグリセリンポリリシノレート、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4,2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(7,5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オイレルアミン、ポリオキシ(5)オレイルアミン、ポリオキシ(5)オレイン酸アミド、ポリオキシエチレン(2)モノラウレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油(硬化ヒマシ油)等が挙げられる。
【0060】
上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(6)オイレルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0061】
上記カチオン系界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
【0062】
上記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。上記以外のものとして、ラウロイルジエタノールアミドも使用可能である。
【0063】
本発明の1つの態様において、前記ヒドロゲル層は、親水性重合体(A)と水とを含むものである。
また、本発明の1つの態様において、前記ヒドロゲル層は、親水性重合体(A)と、水と、界面活性剤とを含み、前記ヒドロゲル層の総質量に対して、前記親水性重合体(A)の割合が、5〜30質量%であり、水の割合が50〜80質量%であり、前記界面活性剤が0.1〜5質量%であり、前記各成分の割合が100質量%を超えないものであることが好ましい。
また、本発明の1つの態様において、前記ヒドロゲル層は、親水性重合体(A)と、水と、界面活性剤と、ポリオールとを含み、前記ヒドロゲル層の総質量に対して、前記親水性重合体(A)の割合が、5〜30質量%であり、水の割合が50〜80質量%であり、前記界面活性剤が0.1〜5質量%であり、前記ポリオールの割合が、5〜30質量%であり、前記各成分の割合が100質量%を超えないものであることがより好ましい。
【0064】
<ゲル複合シートの製造方法>
本発明の1つの態様において、前述のゲル複合シートは、プラスチックフィルムからなる基材シート上に、カチオン性ウレタン樹脂を含有するエマルジョンを、固形分塗工量が0.1g/m
2以下となる範囲で塗工してプライマー層を形成する工程(1)と、前記工程(1)で得られたプライマー層上に、ヒドロゲル層を積層する工程(2)とを含むことを特徴とする。以下、本発明のゲル複合シートの製造方法について説明する。
【0065】
[工程(1)]
本発明のゲル複合シートの製造方法の1つの態様において、工程(1)は、プラスチックフィルムからなる基材シート上に、カチオン性ウレタン樹脂を含有するエマルジョンを、固形分塗工量が0.1g/m
2以下となる範囲で塗工してプライマー層を形成する工程である。
本発明の1つの態様において、前記カチオン性ウレタン樹脂は、第四級アンモニウムカチオン型のカチオン性ウレタン樹脂(B)であることが好ましい。
更に、前記工程(1)は、ポリイソシアネート化合物と、アミノ基を有するポリオール化合物と、アミノ基を有さないポリオール化合物とを反応させてウレタン樹脂を得る工程(1−1)と、前記工程(1−1)で得られたウレタン樹脂のアミノ基部分を四級化し、第四級アンモニウムカチオン型ウレタン樹脂(B)を得る工程(1−2)とを含むことが好ましい。
工程(1−1)においては、前述したとおり、ワンショット法、プレポリマー法等の公知の方法で行うことができる。
また、工程(1−2)は、前記工程(1−1)で得られたウレタン樹脂の四級化する工程である。
【0066】
プラスチックフィルムからなる基材シート上にプライマー層を形成する方法としては、プライマー層を形成する主成分であるカチオン性ウレタンエマルジョンをバーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ミクログラビアコート法、エアナイフコート法などの従来既知のコート法が挙げられる。
【0067】
ウレタンエマルジョンの塗工量は、基本的に微量でかまわない。本発明の1つの態様においては、前記ウレタンエマルジョンを、固形分塗工量で、0.01g/m
2から5g/m
2の範囲で適宜設定することが可能である。一般的には0.03g/m
2から1.0g/m
2の塗工量の範囲であり、0.05g/m
2から0.5g/m
2が好ましい。固形分塗工量が0.01g/m
2未満というのは、実際には測定する手段にも問題があるが、実質的にはプライマー層を均一に形成することが困難であり、それによってプラスチックフィルムとヒドロゲル層の密着性が低下してしまう。また、5g/m
2を超えて塗工しても、塗工量の増加に見合った密着性の向上効果を期待できないので、省資源の観点からも5g/m
2までの塗工量とすることが好ましい。
【0068】
本発明のゲル複合シートにおいては、プライマー層は、低塗工量、すなわちプライマー層の厚みが非常に薄い場合でも十分にプラスチックフィルムとヒドロゲル層の密着性を向上させることができる。これはヒドロゲル層中に含まれるアニオンと、プライマー層中のカチオンとが電気的に引き合うことによって、ヒドロゲル層とプライマー層の密着性を向上できるためである。実際、プライマー層を塗工したプラスチックフィルム上にアニオンゲルを近づけていくと、ある距離からは引力が働くように二つの材料が密着していく様子が観察される。また、密着にかかる時間は極めて短い。
【0069】
このように、本発明のプライマー層は、非常に少ない塗工量で十分な密着効果を発現できるため、カチオン性ウレタンエマルジョンをプラスチックフィルムに塗布し、それをブレードで掻き落としてきわめて少ない塗工量で薄い塗工膜を形成させると、塗工直後から、プライマー層は自然に乾燥が進行し、通常塗工層を乾燥させるのに必要な高温の熱風処理などが全く不要となり、省エネルギーの観点からも非常に好ましい。本発明の1つの態様においては、塗工層を乾燥させるために通常必要とされる高温の熱風処理などを省略しても短時間で自然乾燥することが期待できる観点から、基材シート上に塗工するカチオン性ウレタンエマルジョンの固形分塗工量は、0.1g/m
2以下が好ましく、0.03〜0.1g/m
2であることがより好ましい。また、前述の通り基材シート上にカチオン性ウレタンエマルジョンを塗工した後、特に熱風乾燥等を行う必要はなく、常温で0.05〜2分間乾燥してプライマー層を形成することが好ましい。
【0070】
[工程(2)]
本発明のゲル複合シートの製造方法の1つの態様において、工程(2)は、前記工程(1)で得られたプライマー層上に、ヒドロゲル層を積層する工程である。具体的には、プライマー層を形成した基材シートの上に、スペーサーを2枚おいて塗工厚みを決定し、その後プライマー層上にゲル材料を置く。更に前記ゲル材料の上に10〜150μmの厚みを有する樹脂フィルムを重ねて、ローラーで加圧延伸することによって基材シートのプライマー層上に、シート状のヒドロゲル層を積層させて、密着させることが好ましい。
【0071】
また、本発明のゲル複合シートは、化粧用シート、または医療用シートとして好適に用いることができる。
すなわち、本発明の1つの態様は、前記ゲル複合シートの、化粧用シートとしての使用、もしくはその使用方法である。
また、本発明の1つの態様は、前記ゲル複合シートの、医療用シートとしての使用、もしくはその使用方法である。
本発明のゲル複合シートを、化粧用シート、もしくは医療用シートに使用する場合は、使用時までは容器に入れるかフィルム等の包装材で包装した包装体として非吸湿性の雰囲気下で保管されることが望ましい。
【0072】
本発明の1つの態様において、ゲル複合シートは、ヒドロゲル層面に剥離フィルムを貼付して保管されるのが一般的である。剥離フィルムは、ヒドロゲル層面を保護し、不必要な粘着性の発現を防止し、さらにヒドロゲル層から水分が蒸散するのを抑制する効果を持つ。一般的には、剥離フィルムは、通気性、透湿性がともに極めて小さい合成樹脂製の薄いフィルムで形成されており、使用する直前にヒドロゲル層面から剥がし、露出したヒドロゲル層面を肌に貼着して使用する。
すなわち、本発明の1つの態様は、前記ゲル複合シートと、剥離フィルムからなる皮膚貼付用シートであって、前記ゲル複合シートの前記ヒドロゲル層の上に、前記剥離フィルムが直接積層されていることを特徴とする。
【0073】
また、本発明のゲル複合シートのヒドロゲル層面が剥離フィルムで保護された状態の皮膚貼付用シートは、実際に使用に供されるまで、アルミパウチ等の非通気性で非透湿性の包装材によりシールされているか、水分の蒸発を防止する密閉容器に入れられていることが好ましい。これにより、本質的に外気との接触をなくした状態で輸送、保管することができる。ここで「アルミパウチ」とは、アルミ蒸着やアルミシートラミネートが施された樹脂フィルム製の袋のことを指す。
すなわち、本発明の1つの態様は、アルミパウチ等の非通気性および非透湿性を有する包装材で包装された、前記ゲル複合シートである。また、本発明の別の態様は、前記皮膚貼付用シートと、アルミパウチとを含む化粧用キットであって、前記アルミパウチ内に、前記皮膚貼付用シートが密封されていることを特徴とする。
【0074】
本発明のゲル複合シートを、化粧用シートとして使用する場合、ヒドロゲル層は、前記親水性重合体(A)と、美白剤等の水溶性薬剤と、水とを含むことが好ましく、前記ヒドロゲル層中の各成分の割合は、ヒドロゲル層を形成するゲル材料の総質量に対して、親水性重合体(A)が1〜20質量%、美白剤等の水溶性薬剤が0.005〜2質量%、水が50〜80質量%であることが好ましい。
【0075】
本発明のゲル複合シートを、化粧用シートとして使用する場合の使用方法の一例を以下に説明する。
本発明のゲル複合シートは、使用時にアルミパウチ等の包装材から取り出すことができる。ゲル複合シートは、使用に便利な形状に予め切断加工されていてもよく、使用時にはさみ等で切断して使用してもよい。また、本発明の剥離フィルムの全部または必要な一部分を剥がしてヒドロゲル層面を露出させた後、前記ヒドロゲル層が必要な肌部分に触れるようにゲル複合シートを貼付けする。肌に貼り付ける時間は、5分間〜12時間が好ましい。
このように本発明のゲル複合シートは、肌への水分補給、あるいは皮膚性状(例えば、しわ、たるみ、皮膚の色)を改善する目的で皮膚表面に貼付して使用する、化粧用シートとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、以下に示す具体例等によって限定されるものではない。各例において、「%」は「質量%」を意味する。
【0077】
<カチオン性ウレタン樹脂エマルジョンの調製>
1.カチオン性ウレタン樹脂エマルジョン「CUE1」
機械的撹拌機及び冷却器を取り付けたサーモスタットで制御する反応器に、6.0g(0.05モル)のN−ジメチルジエタノールアミン及び85.5g(0.95モル)の1,4−ブタンジオールを30mLのメチルエチルケトンに溶解した溶液として仕込む。この溶液を70℃まで加熱し、次いで228.7g(1.03モル、ジオール類に対してわずかに過剰モル量)のイソホロンジイソシアネートを添加し、約2時間撹拌する。この添加の間に、温度は溶媒の還流温度まで上昇する。
試料を定期的に採取し、この試料のIR吸収スペクトルをプロットして、イソシアナト基(−NCO)の吸収波長(2260cm
−1)の変化を測定する。反応の進行と共に、NCO吸収強度は弱くなっていき、反応開始後5時間後程度で、吸収強度がほぼ変化しなくなる。この後、反応混合物を放置して室温まで冷却し、次いで100mLのアセトンを添加して、反応液を希釈する。
次に、得られた混合物に10mlのエタノールを添加し、−NCO官能基、すなわち2260cm
−1における吸収が完全に消失するまで、周囲温度で撹拌を継続して残りのNCO官能基を不活性化する。
次に、上記の混合液に6.3g(0.05モル)のジメチル硫酸を滴下し、その後、有機溶媒を40℃の温度で真空下に蒸留して除去する。
有機相を除去した後、十分量の水を添加して、濃度約24%で、pHが7.0、粘度が約300mPa・sであるカチオン性ウレタン樹脂エマルジョン「CUE1」を調製した。
【0078】
2.カチオン性ウレタン樹脂エマルジョン「CUE2」
上記カチオン性ウレタン樹脂エマルジョン「CUE1」の調製方法において、6.0g(0.05モル)のN−メチルジエタノールアミン、85.5g(0.95モル)の1,4−ブタンジオールおよび6.3g(0.05モル)のジメチル硫酸のかわりに、それぞれ12.0g(0.10モル)のN−メチルジエタノールアミン、81.0g(0.90モル)の1,4−ブタンジオールおよび12.6g(0.10モル)のジメチル硫酸を用いた以外は同様に操作して、カチオン性ウレタン樹脂エマルジョン「CUE2」を調製した。濃度は約24%で、pHが7.0、粘度は約300mPa・sであった。
【0079】
<フィルムサンプルの調製>
1.「フィルムサンプル1」
大倉工業(株)製、NES85ポリウレタンフィルム(膜厚25μm、ポリエチレン35μmのキャリアフィルム付)25cm×18cm、ぬれ指数によるフィルムの表面張力は43dyn/cm)に、前記カチオン性ウレタン樹脂エマルジョン「CUE1」を少量のせ、それを厚み2mmのアクリル製のブレードでフィルム面に塗布しつつ延展してプライマー層を設けたフィルムサンプル1を調製した。フィルムサンプル1のプライマー層を設ける前後の質量変化が3mgであり、プライマー層の塗工量は0.07g/m
2であった。
【0080】
2.「フィルムサンプル2」
大倉工業(株)製、シルクロンNES85ポリウレタンフィルム(膜厚25μm、ポリエチレン35μmのキャリアフィルム付)に、前記カチオン性ウレタン樹脂エマルジョン「CUE1」を少量のせ、それを直径10mmのステンレス製の丸棒でフィルム面に塗布しつつ延展してプライマー層を設けたフィルムサンプル2を調製した。フィルムサンプル2のプライマー層を設ける前後の質量変化が23mgであり、プライマー層の塗工量は0.5g/m
2であった。
【0081】
3.「フィルムサンプル3」
大倉工業(株)製、シルクロンNES85ポリウレタンフィルム(膜厚25μm、ポリエチレン35μmのキャリアフィルム付)に2番の塗工バーを用い、前記カチオン性ウレタン樹脂エマルジョン「CUE2」を塗工してプライマー層を設けたフィルムサンプル3を調製した。フィルムサンプル3のプライマー層を設ける前後の質量変化が45mgであり、プライマー層の塗工量は1g/m
2であった。
【0082】
4.「フィルムサンプル4」
林一二(株)製、ハイシボフィルム(ポリプロピレンフィルム、膜厚70μm、25cm×18cm、ぬれ指数によるフィルムの表面張力は42dyn/cm)に、前記カチオン性ウレタン樹脂エマルジョン「CUE2」を少量のせ、それを厚み2mmのアクリル製のブレードでフィルム面に塗布しつつ延展してプライマー層を設けたフィルムサンプル4を調製した。フィルムサンプル4のプライマー層を設ける前後の質量変化が4mgであり、プライマー層の塗工量は0.08g/m
2であった。
【0083】
5.「フィルムサンプル5」
OJK(株)製、CPPフィルムA(膜厚30μm、25cm×18cm、ぬれ指数によるフィルムの表面張力は23dyn/cmであったので、事前にコロナ処理をした。)に、カチオン性ウレタン樹脂エマルジョン「CUE1」をのせ、直径10mmのステンレス製の丸棒を用いてフィルム面に塗布しつつ延展してプライマー層を設けたフィルムサンプル5を調製した。フィルムサンプル5のプライマー層を設ける前後の質量変化が9mgであり、プライマー層の塗工量は0.2g/m
2であった。
【0084】
<ヒドロゲル塗工液の調製>
表1に示す組成のヒドロゲル層形成用のヒドロゲル塗工液を調製した。
【0085】
【表1】
【0086】
<ゲル複合シートの作成>
1.ゲル複合シートA
前記フィルムサンプル1上に、厚み1mmのスペーサー2枚を置いて塗工厚を限定した状態で上記表1の組成の高粘度のヒドロゲル塗工液を置き、さらに該ヒドロゲル塗工液上に厚み40μmのエンボス加工したポリプロピレンフィルムを置いた後、ヒドロゲル塗工液をフィルムサンプル1とポリプロピレンフィルムで挟んだ状態でローラーにより加圧延展して厚み約1mmのシート状のヒドロゲル層を形成した。その後、アルミパウチに入れて1日保管することによりヒドロゲル層の架橋反応を進行させて、プライマー層を設けたフィルムサンプル1上にヒドロゲル層を形成した複合シート構造のゲル複合シートAを調製した。
【0087】
2.ゲル複合シートB
前記フィルムサンプル2上に、厚み1mmのスペーサー2枚を置いて塗工厚を限定した状態で上記表1の組成の高粘度のヒドロゲル塗工液を置き、さらに該ヒドロゲル塗工液上に厚み40μmのエンボス加工したポリプロピレンフィルムを置いた後、ヒドロゲル塗工液をフィルムサンプル2とポリプロピレンフィルムで挟んだ状態でローラーにより加圧延展して厚み約1mmのシート状のヒドロゲル層を形成した。その後、アルミパウチに入れて1日保管することによりヒドロゲル層の架橋反応を進行させて、プライマー層を設けたフィルムサンプル2上にヒドロゲル層を形成した複合シート構造のゲル複合シートBを調製した。
【0088】
3.ゲル複合シートC
前記フィルムサンプル4上に、厚み1mmのスペーサー2枚を置いて塗工厚を限定した状態で上記表1の組成の高粘度のヒドロゲル塗工液を置き、さらに該ヒドロゲル塗工液上に厚み40μmのエンボス加工したポリプロピレンフィルムを置いた後、ヒドロゲル塗工液をフィルムサンプル4とポリプロピレンフィルムで挟んだ状態でローラーで加圧延展して厚み約1mmのシート状のヒドロゲル層を形成した。その後、アルミパウチに入れて1日保管することによりヒドロゲル層の架橋反応を進行させて、プライマー層を設けたフィルムサンプル4上にヒドロゲル層を形成した複合シート構造のゲル複合シートCを調製した。
【0089】
<密着性試験>
密着性試験1
表1の組成を有する高粘度のヒドロゲル塗工液を、厚み2mmのスペーサー2枚を置いて塗工厚を限定したポリプロピレン製の不織布上に置き、その上に厚み40μmのエンボス加工したポリプロピレンフィルムを置き、ヒドロゲル塗工液を不織布とエンボス加工したポリプロピレンフィルムで挟んだ状態でローラーで延展してシート状のヒドロゲル層が形成されている不織布シートを作成した。その後、この不織布シートをアルミパウチに入れて1日保管することにより架橋反応を進行させてシート状ヒドロゲル層が形成されている不織布シートからなる試験用ヒドロゲル層を作成した。
【0090】
次に、前記フィルムサンプル1〜5を用意し、それぞれのプライマー層形成面に、上記試験用ヒドロゲル層からエンボスフィルムを剥がして露出させたヒドロゲル層面を軽く接触させた。ヒドロゲル層面はプライマー層を有するフィルムサンプル1〜5のそれぞれの面に吸引されるように吸い付き、瞬時にして強固に密着した。このように密着した状態から、試験用ヒドロゲル層の不織布端縁を摘んでそのヒドロゲル層をフィルムサンプル1〜5のそれぞれの面から引き剥がそうとすると、いずれの場合もゲル層の破壊が起きてしまい、ヒドロゲル層をフィルムサンプル1〜5のプライマー層を有する面から剥がすことはできなかった。
【0091】
密着性試験2
前記ゲル複合シートサンプルA、B、Cを用意し、各ゲル複合シートサンプルA、B、Cのヒドロゲル層の一端縁を摘んでヒドロゲル層をプライマー層を有するフィルムサンプル面から引き剥がそうとしたが、摘んだヒドロゲル層の端縁部が千切れてしまい、ヒドロゲル層をプライマー層を設けたフィルム面から剥がすことはできなかった。
【0092】
密着性試験3(比較試験例)
大倉工業(株)製、NES85ポリウレタンフィルム(膜厚25μm、ポリエチレン35μmのキャリアフィルム付、ぬれ指数によるフィルムの表面張力は43dyn/cm)に、前記密着性試験1で作成して使用しているものと同様に作成した試験用ヒドロゲル層からエンボスフィルムを剥がし、露出させたヒドロゲル層面を接触させた。接触後、不織布ごとヒドロゲル層を引き剥がす操作をすると、ヒドロゲル層は不織布と一体で上記ポリウレタンフィルム面からほとんど抵抗なく剥がれた。
【0093】
密着性試験4(比較試験例)
OJK(株)製、CPPフィルムA(膜厚30μm、25cm×18cm、ぬれ指数によるフィルムの表面張力は23dyn/cmであったので、事前にコロナ処理をした)に、前記密着性試験1で作成して使用しているものと同様に作成した試験用ヒドロゲル層からエンボスフィルムを剥がし、露出させたヒドロゲル層面を接触させた。接触後、不織布ごとヒドロゲル層を引き剥がす操作をすると、ヒドロゲル層は不織布と一体でCPPフィルムA面からほとんど抵抗なく剥がれた。
【0094】
密着性試験5(比較試験例)
まず、大倉工業(株)製、NES85ポリウレタンフィルム(膜厚25μm、ポリエチレン35μmのキャリアフィルム付、ぬれ指数によるフィルムの表面張力は43dyn/cm)に、PVA(ポリビニルアルコール:クラレ製、PVA−117K)の10%水溶液を、8番バーを用いて乾燥後の塗工量が1g/m
2となるように塗工し、乾燥させ、PVAアンカーコートフィルムを製造した。これに、前記密着性試験1で作成して使用しているものと同じ試験用ヒドロゲル層からエンボスフィルムを剥がし、露出させたヒドロゲル層面を接触させた。接触後、不織布ごとヒドロゲル層を引き剥がす操作をすると、不織布と一体のヒドロゲル層はポリウレタンフィルム面からやや抵抗を受けながらも容易に剥がれた。
【0095】
密着性試験6(比較試験例)
まず、大倉工業(株)製、NES85ポリウレタンフィルム(膜厚25μm、ポリエチレン35μmのキャリアフィルム付、ぬれ指数によるフィルムの表面張力は43dyn/cm)に、PVA(ポリビニルアルコール:クラレ製、PVA−117K)水溶液を、8番バーを用いて乾燥後の塗工量が1g/m
2となるように塗工し、乾燥させ、PVAアンカーコートフィルムを製造した。このフィルムに、厚み1mmのスペーサー2枚を置いて塗工厚を限定した状態で、前記表1の組成の高粘度のヒドロゲル塗工液を置き、その上に厚み40μmのエンボス加工したポリプロピレンフィルムを置き、ヒドロゲル塗工液をPVAアンカーコートフィルムとポリプロピレンフィルムで挟むようにローラーで加圧延展してヒドロゲル塗工シートとした。その後、アルミパウチに入れて1日保管することにより架橋反応を進行させてヒドロゲル層を有するヒドロゲルフィルムサンプルを調製した。このヒドロゲルフィルムサンプルのヒドロゲル層の一端縁を摘んでPVAアンカーコートフィルム面から引き剥がす操作をすると、多少の抵抗はあるが、ヒドロゲル層はPVAアンカーコートフィルム面から剥がれてしまった。
【0096】
<密着性試験のまとめ>
密着性試験1から明らかなように、本発明のカチオン性ウレタン樹脂エマルジョンにより形成されているプライマー層を有する基材フィルムのプライマー層形成面は、ヒドロゲル層に対して非常に強い密着性を示す。また、密着性試験2から明らかなように、本発明のカチオン性ウレタンエマルジョンを塗布してプライマー層を形成したフィルムにヒドロゲル層を重ね合わせて密着させたゲル複合シートからはヒドロゲル層を剥がすのは容易ではなかった。
【0097】
一方、密着性試験3として示すように、アンカーコート層を設けていないフィルムはヒドロゲルに対する特別な密着性は示さなかった。また、密着性試験4として示すように、コロナ処理によって基材シート面に親水性を増加させる処理をした場合も基材シート面とヒドロゲル層との密着性の改善効果は僅かであり、また、密着性試験5,6として示すように、一般的に用いられる親水性アンカーコート層を塗布した基材フィルムでも密着性の改善効果は僅かであった。これらの各密着性試験の結果から、本発明のゲル複合シートが疎水性の基材シート面にカチオン性ウレタン樹脂からなるプライマー層を有することにより、前記プライマー層上に形成されるヒドロゲル層と優れた密着性を示す効果を奏することは明らかである。
本発明は、プラスチックから実質的になる基材シートと、ヒドロゲル層と、プライマー層とを有するゲル複合シートであって、前記基材シートと前記ヒドロゲル層が、前記プライマー層を介して積層されており、前記ヒドロゲル層が、親水性重合体(A)と、水とを含み、前記プライマー層が、カチオン性ウレタン樹脂から実質的になることを特徴とする、ゲル複合シートに関する。本発明によれば、プラスチックフィルム面にヒドロゲル層が十分な接着力で密着しているため、幅広い分野に応用可能なゲル複合シートを提供することができる。