特許第5720891号(P5720891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000002
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000003
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000004
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000005
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000006
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000007
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000008
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000009
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000010
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000011
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000012
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000013
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000014
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000015
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000016
  • 特許5720891-ステータ及びその製造方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720891
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】ステータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
   H02K1/18 D
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-166371(P2011-166371)
(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公開番号】特開2013-31311(P2013-31311A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】浅野 能成
(72)【発明者】
【氏名】片岡 義博
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−80476(JP,A)
【文献】 実開昭55−98142(JP,U)
【文献】 特開2002−188569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00−1/16
H02K 1/18−1/26
H02K 1/28−1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の容器内に収納される回転電機のステータであって、
電磁鋼板を所定形状に形成した複数のコアシートを回転軸方向に積層して成り、環状のヨークを有するステータコアと、
前記ヨークの内周と外周の間に設けられ、前記コアシートの該ヨークを構成する部分に設けられた貫通孔が複数の該コアシートにわたって回転軸方向に連通して成る空隙部と、
前記空隙部の外側に位置する前記ヨークの外周に設けられ、前記容器と前記ステータコアとを固定する溶接部と、を備え、
前記溶接部と対向する前記空隙部において、前記ヨークの周方向における前記貫通孔の一端側又は他端側に開口部が設けられており、
前記開口部が、一又は複数の前記コアシート毎に、前記貫通孔の一端側又は他端側に交互に配置されていることを特徴とするステータ。
【請求項2】
前記コアシートが、前記ヨークの周方向における前記貫通孔の両側にカシメを備えることを特徴とする、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記コアシートが、前記ヨークの径方向における前記貫通孔の外側にカシメを備えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記貫通孔が、積層された全ての前記コアシートにわたって連通しており、
前記空隙部が、熱媒体となる流体の流路として用いられることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のステータ。
【請求項5】
円筒形の容器内に収納される回転電機のステータの製造方法であって、
電磁鋼板を準備する工程と、
前記電磁鋼板を打ち抜いて、円弧状の外周を有するヨーク部を含むコアシートの周縁部を所定形状に形成するとともに、該ヨーク部の外周と内周の間に貫通孔を形成し、必要に応じて、該ヨーク部の周方向における該貫通孔の一端側又は他端側に開口部を形成する、コアシートの打抜き工程と、
前記打抜き工程により得られた各コアシートを回転軸方向に積層して、前記貫通孔が複数の前記コアシートにわたって回転軸方向に連通する空隙部を形成するとともに、該空隙部において、前記開口部を、一又は複数の前記コアシート毎に、前記ヨーク部の周方向における前記貫通孔の一端側又は他端側に交互に配置する、コアシートの積層工程と、
を有するステータコア形成工程と、
前記ステータコア形成工程により得られたステータコアと前記容器とを固定するために、前記空隙部の外側に位置する前記ステータコアの外周に対して溶接を行う溶接工程と、
を備えることを特徴とするステータの製造方法。
【請求項6】
前記打抜き工程において、
一のコアシートに対して複数の前記貫通孔を形成するとともに、一の貫通孔には、前記ヨーク部の周方向における該貫通孔の一端側に前記開口部を形成し、他の貫通孔には、前記ヨーク部の周方向における該貫通孔の他端側に前記開口部を形成することを特徴とする、請求項5に記載のステータの製造方法。
【請求項7】
前記積層工程において、
前記打抜き工程により打抜き形成された同一形状のコアシートを、既に積層されたコアシートに対して周方向に所定角度だけ相対的に回転させて積層することを特徴とする、請求項6に記載のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアルギャップ型回転電機に用いられるステータ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジアルギャップ型回転電機は、回転軸を中心として回転可能に配設されたロータと、このロータの径方向にギャップを隔てて配設されたステータとを備える回転電機である。ステータは、環状のヨークの内周から径方向に突出する複数のティースを有し、周方向に隣り合うティースの間にスロットが設けられたステータコアと、各スロット内にPET(polyethylene terephthalate)フィルム等の絶縁物を介して配置された巻線とを備えている。
【0003】
このラジアルギャップ型回転電機を、例えば、空気調和機に使用される冷媒用ロータリ圧縮機等に用いる場合、当該回転電機は円筒形の容器内(例えば、パイプなど)に収納される。このとき、ステータは容器の内側に固定されるが、その固定手段として溶接が行われる。溶接時に発生する熱がステータコアを通じて絶縁物まで伝達されると、ステータコアと巻線との間の絶縁が破壊され、放電や短絡が生じるおそれがある。これを回避するための技術が下記特許文献に開示されている。
【0004】
例えば、溶接部とスロットの間に空隙を設けたステータが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかるステータによれば、空隙内の空気が熱抵抗となり、溶接時に発生する熱がスロット内に配置された絶縁物に与える影響を低減できるという利点がある。しかしながら、この空隙を避けて溶接部からスロットまで伝達される熱も存在するため、改善の余地がある。
【0005】
その改善策の一つとして、空隙における周方向の一端に開口部を設けたステータが知られている(例えば、特許文献2参照)。かかるステータによれば、開口部を設けたことで伝熱経路の一部が遮断され、溶接部からスロットまで伝達される熱をさらに低減することができる。ところが、開口部を設けたことにより、溶接部が設けられる部分の機械的強度が不十分になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−236421号公報
【特許文献2】特開2011−55576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、溶接時の熱の影響を低減するとともに、溶接部が設けられる部分の機械的強度を確保することが可能なステータ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、円筒形の容器内に収納される回転電機のステータであって、電磁鋼板を所定形状に形成した複数のコアシートを回転軸方向に積層して成り、環状のヨークを有するステータコアと、前記ヨークの内周と外周の間に設けられ、前記コアシートの該ヨークを構成する部分に設けられた貫通孔が複数の該コアシートにわたって回転軸方向に連通して成る空隙部と、前記空隙部の外側に位置する前記ヨークの外周に設けられ、前記容器と前記ステータコアとを固定する溶接部と、を備え、前記溶接部と対向する前記空隙部において、前記ヨークの周方向における前記貫通孔の一端側又は他端側に開口部が設けられており、前記開口部が、一又は複数の前記コアシート毎に、前記貫通孔の一端側又は他端側に交互に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のステータは、前記コアシートが、前記ヨークの周方向における前記貫通孔の両側にカシメを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のステータは、前記コアシートが、前記ヨークの径方向における前記貫通孔の外側にカシメを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のステータは、前記貫通孔が、積層された全ての前記コアシートにわたって連通しており、前記空隙部が、熱媒体となる流体の流路として用いられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、円筒形の容器内に収納される回転電機のステータの製造方法であって、電磁鋼板を準備する工程と、前記電磁鋼板を打ち抜いて、円弧状の外周を有するヨーク部を含むコアシートの周縁部を所定形状に形成するとともに、該ヨーク部の外周と内周の間に貫通孔を形成し、必要に応じて、該ヨーク部の周方向における該貫通孔の一端側又は他端側に開口部を形成する、コアシートの打抜き工程と、前記打抜き工程により得られた各コアシートを回転軸方向に積層して、前記貫通孔が複数の前記コアシートにわたって回転軸方向に連通する空隙部を形成するとともに、該空隙部において、前記開口部を、一又は複数の前記コアシート毎に、前記ヨーク部の周方向における前記貫通孔の一端側又は他端側に交互に配置する、コアシートの積層工程と、を有するステータコア形成工程と、前記ステータコア形成工程により得られたステータコアと前記容器とを固定するために、前記空隙部の外側に位置する前記ステータコアの外周に対して溶接を行う溶接工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のステータの製造方法は、前記打抜き工程において、一のコアシートに対して複数の前記貫通孔を形成するとともに、一の貫通孔には、前記ヨーク部の周方向における該貫通孔の一端側に前記開口部を形成し、他の貫通孔には、前記ヨーク部の周方向における該貫通孔の他端側に前記開口部を形成することを特徴とする。
【0014】
本発明のステータの製造方法は、前記積層工程において、前記打抜き工程により打抜き形成された同一形状のコアシートを、既に積層されたコアシートに対して周方向に所定角度だけ相対的に回転させて積層することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るステータによれば、溶接部と対向する位置に空隙部が設けられているため、空隙部内の空気が熱抵抗となり、溶接時に発生する熱がスロット内に配置された絶縁物に与える影響が低減される。この空隙部を構成するコアシートの貫通孔には、ヨークの周方向における一端側又は他端側に開口部が設けられているため、開口部により伝熱経路の一部が遮断され、各コアシートにおける溶接部からスロットまで伝達される熱の低減効果をより高めることができる。また、この開口部が、一又は複数のコアシート毎に貫通孔の一端側又は他端側に交互に配置されているため、溶接部が設けられる部分にかかる力を空隙部の周方向の両側で一体的に受けることができる。このため、溶接部が設けられる部分の機械的強度を十分に確保することが可能となる。これと同時に、熱の伝達方向も空隙部の周方向の両側に分散されるため、溶接による磁気特性の劣化に偏りが生じるのを防止できるという相乗効果を得ることができる。
【0016】
本発明において、ヨークの周方向における貫通孔の両側にカシメを設ければ、開口部を貫通孔の一端側又は他端側に交互に配置して積層されたコアシート同士の空隙部付近における強度を高めることができる。具体的には、カシメを設けることによって積層されたコアシート同士が互いに剥がれ難くなり、周方向で開口部の配置が異なるコアシート同士を強度的に一体的なものとして取り扱うことができる。また、各コアシートを磁束密度が比較的低い部分においてかしめることができる。このため、磁束が流れる磁路を阻害することなく、溶接部が設けられる部分におけるヨークの機械的強度及びステータコア自体の機械的強度を高めることができる。
【0017】
本発明において、ヨークの径方向における貫通孔の外側にカシメを設ければ、カシメが設けられた部分に溶接部が設けられるため、これらに起因する磁気特性の劣化を最小限に抑えることができる。これにより、ステータコア全体としての磁気特性の劣化を効果的に低減することができる。また、溶接部が設けられる部分の機械的強度をさらに高めることができるとともに、ステータコア自体の機械的強度も同時に高めることができる。
【0018】
本発明において、貫通孔が積層された全てのコアシートにわたって連通しており、空隙部を熱媒体となる流体の流路として用いれば、ステータの発熱を効果的に抑制することができる。これにより、回転電機を大容量化することが可能となり、圧縮機の性能を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係るステータの製造方法によれば、上述したステータコア形成工程及び溶接工程を採用することで、溶接時の熱の影響を低減するとともに、溶接部が設けられる部分におけるヨークの機械的強度が十分に確保されたステータを製造することができる。これにより、ステータコアと巻線との間の絶縁を破壊することなく、且つ、ステータコアの磁気特性の劣化を最小限に抑えて、パイプなどの円筒形の容器内にステータを固定することが可能となる。
【0020】
また、前記打抜き工程において、一のコアシートに対して複数の貫通孔を形成するとともに、一の貫通孔には、一端側に開口部を形成し、他の貫通孔には、他端側に開口部を形成するように構成すれば、ステータコア形成工程の工数を大幅に低減することができる。具体的には、所定位置に貫通孔が形成された一体型コアシートを採用することにより、打抜き工程、積層工程を経て回転軸方向に積層された各コアシートを、ステータコアとして一体化するための工程が大幅に簡略化される。一体型ステータコアは、磁路となるヨークに分割部が形成されないため、磁気抵抗を低減できるという利点がある。
【0021】
さらに、前記積層工程において、打抜き工程により打抜き形成された同一形状のコアシートを、既に積層されたコアシートに対して周方向に所定角度だけ相対的に回転させて積層するように構成すれば、コアシートの打抜き工程を大幅に簡略化することができる。つまり、打抜き工程において、同一形状のコアシートを形成すればよいため、金型の位置決めや金型の選択などの工程を省略又は簡略化することができる。また、使用する金型の数を減らすことができるため、設備コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態に係るステータを備えた回転電機を示すI−I線(図2)に沿った平面断面図である。
図2】第一実施形態に係るステータを備えた回転電機を示すII−II線(図1)に沿った縦断面図である。
図3】第一実施形態に係るコアシート示す斜視図である。
図4】第一実施形態に係るステータの外周の一部に形成される各積層面を示す模式図である。
図5】第一実施形態に係るステータの外周に形成される各積層面の変形例を示す模式図である。
図6】第一実施形態に係る積層体を示す斜視図である。
図7】第二実施形態に係るコアシートを示す部分拡大図である。
図8】第三実施形態に係るステータ及びコアシートを示す平面図である。
図9】第三実施形態に係るステータの外周の一部に形成される各積層面を示す模式図である。
図10】第四実施形態に係るステータを示す平面図である。
図11】第四実施形態に係るコアシートを示す斜視図である。
図12】第四実施形態に係るステータの外周面に形成される各積層面及びその変形例を示す模式図である。
図13】第四実施形態に係る積層体を示す斜視図である。
図14】第一実施形態に係るコアシートの変形例を示す平面図である。
図15】第一実施形態に係るコアシートの他の変形例を示す平面図である。
図16】各実施形態に係るコアシートに形成される貫通孔の形状の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るステータの実施形態について図面を用いて説明する。本明細書において、同一の符号で示されている場合は同一の構成を示すものとする。また、各図面において、各構成を示す符号及び引出線を明瞭に表示するために、断面を示すハッチングを適宜省略している。
【0024】
図1及び図2に示すように、第一実施形態に係るステータ10は、円筒形の容器P(例えば、パイプなど)内に収納されるラジアルギャップ型の回転電機100を構成するものであり、回転軸1の軸心Oを中心として回転可能に配設されたロータ2の径方向にギャップを隔てて配設される。本実施形態に係るステータ10は、ステータコア11と、ステータコア11に設けられた空隙部12と、ステータコア11を容器Pに固定するための溶接部13とを備える。
【0025】
ステータコア11は、環状のヨーク111と、このヨーク111の内周から径方向に突出する複数のティース112とを有する。周方向に隣り合うティース112の間には、スロット113が設けられている。各スロット113には、電気絶縁性を有するフィルム状の絶縁物114を介して巻線115が配置される(全スロット113における図示は省略)。ティース112及びスロット113の数は、例えば、ロータ2の磁極数や回転電機100の用途等に応じて適宜設計変更が可能であり、その数が偶数であるか奇数であるかは不問である。本実施形態では、6個のティース112a〜112fが周方向に等間隔に並んで配設されており、スロット113も6箇所に設けられている。
【0026】
ステータコア11は、表面を絶縁処理された、厚さ0.3〜0.5mm程度の電磁鋼板を所定形状に形成した多数枚のコアシートS1図3参照)を回転軸方向に積層し、これらを一体化することにより形成される。積層されるコアシートS1の積厚(枚数)については特に限定されず、例えば、対向するロータ2の高さや容器Pの回転軸方向の寸法などに応じて適宜設計可能である。積層された各コアシートS1を一体化する方法として、例えば、溶接、カシメ、樹脂モールド、ワニス含侵などの方法が挙げられる。これらの方法を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0027】
ステータコア11は、環状のヨーク部Yと、このヨーク部Yの内周から径方向に突出する複数のティース部Tとが一体的に形成されたコアシートS1が所定の枚数だけ積層された、いわゆる一体型ステータコアである。よって、ステータコア11のヨーク111及びティース112は、積層された各コアシートS1のヨーク部Y及びティース部Tにより構成されている。なお、ステータコア11は、図3に示すコアシートS1のみにより構成されている必要はない。例えば、コアシートS1と同一の平面形状を有する(即ち、ヨーク部Y及びティース部Tの平面形状が同一の)他のコアシート(図示省略)を含んで構成されていてもよい。
【0028】
ステータコア11において、ヨーク111の外周には、曲面部(平面視円弧部)と平面部(平面視直線部)が形成されている(図1参照)。本実施形態では、概ね、各ティース112a〜112fの外側に曲面部が、各スロット113の外側に平面部がそれぞれ形成されており、この曲面部の一部が後述する溶接部13を介して容器Pの内面に固定される。また、図4に示すように、ヨーク111の外周における各曲面部には、複数のコアシートS1の外周が積層されて成る積層面A1〜A6が形成される。
【0029】
なお、図4では、12枚(第1層〜第12層)のコアシートS1の外周により形成される各積層面A1〜A6を例示しているが、図4に例示する各積層面A1〜A6は、ヨーク111の外周における回転軸方向の一部の領域を示すものであり、その形態は、例えば、ステータコア11が他のコアシートを含む場合、コアシートS1の積厚(枚数)、あるいは、後述する空隙部12の配置などに応じて異なる。後述する積層面B1〜B6、積層面C1〜C6、及び積層面Dについても同様である。
【0030】
空隙部12は、ヨーク111の内周と外周の間に設けられた空間である。図3に示すように、ステータコア11の一部を構成するコアシートS1には、ヨーク部Yの周方向に一端及び他端を有し、ヨーク部Yの一面から他面まで貫通する平面視三角形状の貫通孔Hが、ヨーク部Yの周方向に180度ずれた位置に2箇所設けられている。本実施形態では、この貫通孔Hが複数のコアシートS1にわたって回転軸方向に連通するように各コアシートS1が積層されることにより、空隙部12が形成されている。したがって、本実施形態では、略三角柱状の空間を成す空隙部12が、周方向に180度ずれた位置に2箇所設けられる。空隙部12の数については特に限定されず、例えば、ステータコア11の極数や後述する溶接部13の数などに応じて適宜選択される。
【0031】
空隙部12は、ヨーク111の周方向又は回転軸方向にバランスよく分散して配置するのが好ましい。本実施形態では、空隙部12は、図4に示すように、各積層面A1〜A6における回転軸方向の領域X1(第1層〜第4層)では積層面A3、A6の内側に、領域X2(第5層〜第8層)では積層面A2、A5の内側に、領域X3(第9層〜第12層)では積層面A1、A4の内側にそれぞれ配置されている。つまり、ある領域に設けられた空隙部12の周方向の位相は、回転軸方向に隣接する他の領域に設けられた他の空隙部12の周方向の位相に対して、周方向に相対的に60度ずれた位置に配置されている。空隙部12をこのように配置すれば、ステータコア11の機械的強度に偏りが生じるのを防止することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、空隙部12は、各積層面A1〜A6における回転軸方向のすべての領域(領域X1〜X3を含む)に必ずしも形成されている必要はない。例えば、図4における領域X1と領域X2の間や領域X2と領域X3の間に、空隙部12が設けられていない他の領域が存在していてもよい。言い換えれば、領域X1と領域X2の間や領域X2と領域X3の間に、貫通孔Hが設けられていない他のコアシートを所定の枚数だけ含んでいてもよい。この場合、ある領域に設けられた空隙部12の周方向の位相は、空隙部12が設けられていない領域を隔てて回転軸方向に隣接する他の領域に設けられた他の空隙部12の周方向の位相に対して、周方向に相対的に60度ずれた位置に配置されることになる。
【0033】
また、空隙部12は、ヨーク111において、磁束密度が比較的低く、磁路幅に余裕がある位置に形成するのが好ましい。空隙部12が磁気抵抗となり、磁路を阻害するのを回避するためである。例えば、本実施形態のコアシートS1ように、概ねティース部Tの外側であってヨーク部Yの外周(平面視円弧部)寄りに貫通孔Hを設け、当該貫通孔Hを平面視三角形状に(言い換えれば、空隙部12を略三角柱状に)構成すれば、磁路幅を一定に保つことができる点で望ましい。空隙部12の大きさや形状についても同様である。即ち、空隙部12は、その大きさや形状に関して特に限定されず、磁路を阻害しない範囲内及びステータコア11の機械的強度を確保できる範囲内において適宜設計変更することが可能である。
【0034】
溶接部13は、ステータ10を容器Pに固定するためのものである。具体的には、ステータコア11のヨーク111の外周(更に詳しくは、各積層面A1〜A6の一部)が、溶接部13を介して容器Pの内面に固定される。本実施形態では、空隙部12よりも径方向の外側に位置するヨーク111の外周に溶接部13が設けられる。更に詳しくは、図4に示すように、溶接部13は、必ず空隙部12と径方向に対向する位置に、且つ、空隙部12の回転軸方向の高さの範囲内に設けられる。
【0035】
溶接部13は、容器Pの外面から内面まで貫通する溶接孔Wを通じて形成される。具体的には、容器Pの空隙部12と径方向に対向する部分に溶接孔Wが設けられており、この溶接孔Wに溶接棒(図示省略)が挿入される。溶接棒及びコアシートS1が一部溶融することにより溶接部13が形成される。溶接部13の形成方法として、例えば、アーク溶接、ティグ溶接などが挙げられる。また、溶接部13により溶接孔Wが完全に埋められるため、容器Pの密閉性が確保される。
【0036】
溶接部13は、空隙部12と同様に、ヨーク111の周方向又は回転軸方向にバランスよく分散して配置するのが好ましい。本実施形態では、溶接部13は、図4に示すように、各積層面A1〜A6における回転軸方向の領域X1(第1層〜第4層)では積層面A3、A6に、領域X2(第5層〜第8層)では積層面A2、A5に、領域X3(第9層〜第12層)では積層面A1、A4にそれぞれ配置されている。つまり、ある領域に設けられた溶接部13の周方向の位相は、回転軸方向に隣接する他の領域に設けられた他の溶接部13の周方向の位相に対して、周方向に相対的に60度ずれた位置に配置されている。溶接部13をこのように配置すれば、ステータコア11と容器Pとの固定強度に偏りが生じるのを防止するとともに、溶接部13を形成する際に発生する熱の影響によるステータコア11の磁気特性の劣化の影響を分散させることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、溶接部13は、各積層面A1〜A6における回転軸方向のすべての領域(領域X1〜X3を含む)に必ずしも形成されている必要はない。例えば、図4における領域X1と領域X2の間や領域X2と領域X3の間に、溶接部13が設けられていない他の領域が存在していてもよい。つまり、溶接部13の数について特に限定はなく、必要に応じて適宜調整すればよい。ステータ10と容器Pとの間に要求される固定強度は、例えば、回転電機100の大きさや用途等によって異なるからである。
【0038】
本実施形態のステータ10の主な特徴点は、以下に示す点にある。即ち、少なくとも溶接部13と対向する空隙部12において、ヨーク111の周方向における貫通孔Hの一端側又は他端側に開口部14が設けられており、この開口部14が、一又は複数のコアシートS1毎に貫通孔Hの一端側又は他端側に交互に配置されていることを特徴としている。以下、これを詳細に説明する。
【0039】
図3に示すように、開口部14は、コアシートS1のヨーク部Yの外周から貫通孔Hに連通する隙間である。この開口部14により貫通孔Hの一部が径方向に開口され、貫通孔Hの外側に位置するヨーク部Yの一部が周方向に離隔される。開口部14は、溶接時に発生する熱の伝熱経路を遮断するための熱抵抗となる。本実施形態では、コアシートS1において、一方(手前側)の貫通孔Hには、ヨーク111(ヨーク部Y)の周方向における貫通孔Hの一端側(ヨーク部Yの外周に向かって左側)に開口部14が設けられており、他方(奥側)の貫通孔Hには、ヨーク111の周方向における貫通孔Hの他端側(ヨーク部Yの外周に向かって右側)に開口部14が設けられている。
【0040】
開口部14の周方向の幅寸法について特に限定はないが、貫通孔Hの外側に位置するヨーク部Yの一部が周方向に離隔されてさえいれば、微小な幅でよい。開口部14では、電磁鋼板に比べて熱伝導率が大幅に低い空気が熱媒体となるためである。また、開口部14は、必ずしも径方向に一律の幅で形成されている必要はない。例えば、開口部14の周方向の幅が、ヨーク部Yの外周から貫通孔Hに向けて拡幅されていてもよいし、逆に、貫通孔Hからヨーク部Yの外周に向けて拡幅されていてもよい。
【0041】
本実施形態では、開口部14は、各積層面A1〜A6において、以下のように配置されている。図4に示すように、積層面A1、A4では、領域X3(第9層〜第12層)に開口部14が配置されている。このうち積層面A1における第9層と第11層、及び、積層面A4における第10層と第12層では、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの一端側に、積層面A1における第10層と第12層、及び、積層面A4における第9層と第11層では、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの他端側に、それぞれ開口部14が配置されている。
【0042】
積層面A2、A5では、領域X2(第5層〜第8層)に開口部14が配置されている。このうち積層面A2における第5層と第7層、及び、積層面A5における第6層と第8層では、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの一端側に、積層面A2における第6層と第8層、及び、積層面A5における第5層と第7層では、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの他端側に、それぞれ開口部14が配置されている。
【0043】
積層面A3、A6では、領域X1(第1層〜第4層)に開口部14が配置されている。このうち積層面A3における第1層と第3層、及び、積層面A6における第2層と第4層では、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの一端側に、積層面A3における第2層と第4層、及び、積層面A6における第1層と第3層では、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの他端側に、それぞれ開口部14が配置されている。
【0044】
このように、本実施形態では、コアシートS1の貫通孔Hに設けられた開口部14が、溶接部13と対向する空隙部12において、一枚のコアシートS1毎に、貫通孔Hの一端側又は他端側に交互に(即ち、ヨーク部Yの外周に向かって左右交互に)配置されている。なお、この開口部14は、溶接部13と対向する空隙部12において、複数枚のコアシートS1毎に、貫通孔Hの一端側又は他端側に交互に配置されていてもよい。例えば、図5に示す各積層面B1〜B6における開口部14の配置のように、二枚のコアシートS1毎であってもよく、三枚以上のコアシートS1毎であってもよい。あるいは、一枚毎の部分及び複数枚毎の部分をそれぞれ混在させて開口部14を配置してもよい。
【0045】
次に、本実施形態のステータ10において、開口部14を上述のように配置したことによる作用・機能及びその効果について説明する。
【0046】
上述のとおり、本実施形態のステータ10は、パイプなどの円筒形の容器P内に収納されるラジアルギャップ型の回転電機100を構成するものであり、ステータ10は溶接により容器Pに固定される。この溶接時に発生する熱がステータコア11を通じて絶縁物114まで伝達されると、ステータコア11と巻線115との間の絶縁が破壊され、放電や短絡が生じるおそれがある。本実施形態では、複数の溶接部13が、ヨーク111の外周(更に詳しくは、各積層面A1〜A6)に対して局所的に設けられる。したがって、各溶接部13を形成する際に発生する熱は、各溶接部13からヨーク111に対して局所的に伝達される。
【0047】
ここで、本実施形態のように、溶接部13が複数のコアシートS1にわたって形成される場合(図4図5参照)であっても、ヨーク111(各コアシートS1のヨーク部Y)に伝達される熱は、一のコアシートS1から回転軸方向に隣接する他のコアシートS1には伝わらず、一枚のコアシートS1を伝熱経路として、その範囲内を優先的に移動する。即ち、積層された各コアシートS1が、それぞれ別個独立した伝熱経路となる。ステータコア11を構成する各コアシートS1の積層間には不図示の絶縁被膜や微小な隙間が介在しており、これらが熱抵抗となるためである。
【0048】
また、本実施形態では、空隙部12よりも径方向の外側に位置するヨーク111の外周に溶接部13が設けられるが、このとき、ヨーク111に伝達される熱は空隙部12を避けて移動する。より具体的に言えば、各コアシートS1の溶接部13が形成される部分からヨーク部Yの外周に沿って周方向に熱が移動する。空隙部12(貫通孔H)では空気が熱抵抗となるためである。しかしながら、本実施形態では、この熱の移動方向のいずれか一方に開口部14が配設されているため、開口部14において熱の移動が遮断され、各コアシートS1の溶接部13が形成される部分からの熱の移動方向が限定される。したがって、伝熱経路となる各コアシートS1において、溶接部13からスロット113まで伝達される熱が効果的に低減される。
【0049】
一方、開口部14を設けたことにより、各コアシートS1の溶接部13が設けられる部分(即ち、貫通孔Hよりも径方向の外側に位置するヨーク部Y)では、舌片状の鋼板片(以下、舌片部と示す)が、開口部14が設けられていない側で片持ち支持された状態にある。このため、溶接部13が設けられる当該ヨーク部Yの機械的強度が不十分になるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、開口部14が、一又は複数のコアシートS1毎に貫通孔Hの一端側又は他端側に交互に配置されているため、舌片部の先端部は、回転軸方向に隣接する他のコアシートS1のヨーク部Yにより挟持される。その結果として、舌片部は周方向の両側で支持された状態となり、ヨーク111の溶接部13が設けられる部分全体としての機械的強度が十分に確保される。
【0050】
このように、本実施形態のステータ10によれば、ヨーク111(ヨーク部Y)の周方向における貫通孔Hの一端側又は他端側に開口部14を設け、この開口部14を、上述のように配置することにより、以下のような効果を得ることができる。
【0051】
即ち、本実施形態に係るステータ10によれば、溶接部13と対向する位置に空隙部12が設けられているため、空隙部12内の空気が熱抵抗となり、溶接時に発生する熱がスロット113内に配置された絶縁物114に与える影響が低減される。この空隙部12を構成するコアシートS1の各貫通孔Hには、ヨーク111の周方向における各貫通孔Hの一端側又は他端側に開口部14が設けられているため、開口部14により伝熱経路の一部が遮断され、各コアシートS1における溶接部13からスロット113まで伝達される熱の低減効果をより高めることができる。
【0052】
また、開口部14が、一又は複数のコアシートS1毎に貫通孔Hの一端側又は他端側に交互に配置されているため、舌片部の先端部を、回転軸方向に隣接する他のコアシートS1のヨーク部Yにより挟持することができる。これにより、舌片部が周方向の両側で支持された状態となり、溶接部13が設けられる部分にかかる力を空隙部12の周方向の両側で一体的に受けることができる。よって、ヨーク111の溶接部13が設けられる部分全体としての機械的強度を十分に確保することが可能となる。これと同時に、熱の伝達方向が空隙部12の周方向の両側に分散されるため、溶接による磁気特性の劣化に偏りが生じるのを防止できるという相乗効果を得ることができる。
【0053】
さらに、上述のとおり、溶接部13からスロット113まで伝達される熱を大幅に低減することができるので、ヨーク111の径方向の寸法(厚み)を磁束量に応じて設計することが可能となる。これにより、ステータ10を必要最小限の大きさに抑えることができるため、回転電機100を小型化することができる。あるいは、ステータコア11のスロット113のスペースを拡大して巻線115の占積率を高めることができるため、回転電機100の高性能化を図ることができる。
【0054】
次に、本発明に係るステータの製造方法の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第一実施形態に係るステータ10の製造方法を一例に挙げて説明する。図1に示すように、ステータ10は、ヨーク111に分割部が形成されていない一体型のステータコア11を備えており、容器Pに溶接固定される。本実施形態に係るステータ10の製造方法は、ステータコア形成工程と、溶接工程とを含む。
【0055】
ステータコア形成工程では、表面を絶縁処理された、厚さ0.3〜0.5mm程度の電磁鋼板を準備する工程を経て、打抜き工程、積層工程が行われる。これらの各工程を経て、上述したステータコア11が形成される。
【0056】
初めに、準備された電磁鋼板を所定の形状に形成するための打抜き工程が行われる。当該打抜き工程では、一又は複数の打抜き用金型から成る切断手段を用いて電磁鋼板を打ち抜くことにより、図3に示すようなコアシートS1が打抜き形成される。本実施形態では、初めに、環状のヨーク部Yと、このヨーク部Yの内周から径方向に突出する複数(本実施形態では6個)のティース部Tが形成される。このとき、ヨーク部Yの外周は、概ね、各ティース部Tの外側が円弧状に、各スロット113の外側が直線状になるように形成される。こうして、コアシートS1の周縁部が形成される。次に、ヨーク部Yの所定位置に所定のタイミングで貫通孔H及び開口部14を形成することにより、コアシートS1が形成される。
【0057】
本実施形態では、平面視三角形状の貫通孔Hが、ティース部Tの外側に位置するヨーク部Yの外周寄りに打抜き形成される。また、貫通孔Hは、ヨーク部Yの周方向に180度ずれた位置に2箇所設けられる。このような位置関係を満たす限り、外側に貫通孔Hが設けられるティース部Tは任意である。本実施形態では、6個のティース部Tが設けられているため、外側に貫通孔Hが設けられたティース部Tは互いに対向している。
【0058】
こうして形成された貫通孔Hに対して、それぞれ開口部14が形成される。開口部14は、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの中心に対して異なる側に設けられる。具体的には、図3に示すように、一方(手前側)の貫通孔Hには、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの一端側(ヨーク部Yの外周に向かって左側)に、他方(奥側)の貫通孔Hには、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの他端側(ヨーク部Yの外周に向かって右側)に、それぞれ開口部14が設けられる。なお、開口部14は、必ずしも貫通孔Hの端部に設けられる必要はないが、本実施形態のように、開口部14を各貫通孔Hの周方向の端部に設ければ、溶接部13を形成可能な領域を広く確保することが可能となる点で好ましい。
【0059】
貫通孔H及び開口部14を形成する方法としては、例えば、可動切断手段を用いて所定のタイミングで、コアシートS1に対する打抜き位置を異ならせて打抜き形成する方法が挙げられる。可動切断手段は、事前の動作設定等により、コアシートS1に対する一又は複数の打抜き用金型の打抜き位置を相対的に移動させることが可能な切断手段である。かかる方法によれば、他の工程を要することなく、ヨーク部Yの所望の位置に貫通孔H及び開口部14を形成できるという利点がある。貫通孔H及び開口部14は、個別に異なるタイミングで形成してもよいし、両方を同時に形成してもよい。
【0060】
あるいは、コアシートS1に対する打抜き位置が一定の位置に固定された固定切断手段を用いて貫通孔H及び開口部14を形成してもよい。固定切断手段を用いれば、金型の位置決めや金型の選択などの工程を省略又は簡略化することができるとともに、貫通孔H及び開口部14を単動的に形成することができるため、切断手段の制御が容易であるという利点がある。固定切断手段を用いる場合も、可動切断手段を用いる場合と同様に、貫通孔H及び開口部14は、個別に異なるタイミングで形成してもよいし、両方を同時に形成してもよい。
【0061】
次に、上述した打抜き工程により得られた各コアシートS1を回転軸方向に積層する積層工程が行われる。本実施形態では、打抜き工程により打抜き形成された同一形状のコアシートS1を、既に積層されたコアシートS1に対して、周方向に所定角度だけ相対的に回転させて積層することにより、図6に示すような積層体L1が得られる。なお、この積層体L1は、ステータコア11の一部を示すものであり、積層体L1を構成するコアシートS1の枚数は、例えば、ロータ2の回転軸方向の厚み、及び回転電機100の用途等に応じて適宜決定される。
【0062】
具体的には、各コアシートS1は、以下のようにして積層される。以下の説明では、第1層となるコアシートS1に形成された貫通孔Hの周方向の位置を基準位置として説明する。この基準位置は、例えば、打抜き工程における切断手段の動作設定(詳しくは、コアシートS1に対する打抜き位置の設定)、打抜き工程で形成されたコアシートS1を積層工程まで搬送する搬送手段(例えば、コンベヤ等)の搬送方向などにより決定される。
【0063】
初めに、図4に示す領域X1(第1層〜第4層)を構成する各コアシートS1が積層される。本実施形態では、第2層のコアシートS1は、第1層のコアシートS1に対して、周方向(時計回り又は反時計回り)に180度回転させて積層される。同様に、第3層のコアシートS1は、第2層のコアシートS1に対して、また、第4層のコアシートS1は、第3層のコアシートS1に対して、それぞれ周方向に180度回転させて積層される。言い換えれば、第1層及び第3層のコアシートS1は基準位置から周方向に0度、第2層及び第4層のコアシートS1は基準位置から周方向に180度回転させて積層される。
【0064】
次に、図4に示す領域X2(第5層〜第8層)を構成する各コアシートS1が積層される。本実施形態では、第5層のコアシートS1は、第4層のコアシートS1に対して、時計回りの周方向に60度回転させて積層される。続いて、第6層のコアシートS1は、第5層のコアシートS1に対して、時計回りの周方向に240度回転させて積層される。第7層のコアシートS1は、第6層のコアシートS1に対して、時計回りの周方向に60度回転させて積層される。第8層のコアシートS1は、第7層のコアシートS1に対して、時計回りの周方向に240度回転させて積層される。言い換えれば、第5層及び第7層のコアシートS1は基準位置から時計回りの周方向に60度、第6層及び第8層のコアシートS1は基準位置から時計回りの周方向に240度回転させて積層される。
【0065】
続いて、図4に示す領域X3(第9層〜第12層)を構成する各コアシートS1が積層される。本実施形態では、第9層のコアシートS1は、第8層のコアシートS1に対して、時計回りの周方向に120度回転させて積層される。続いて、第10層のコアシートS1は、第9層のコアシートS1に対して、時計回りの周方向に300度回転させて積層される。第11層のコアシートS1は、第10層のコアシートS1に対して、時計回りの周方向に120度回転させて積層される。第12層のコアシートS1は、第11層のコアシートS1に対して、時計回りの周方向に300度回転させて積層される。言い換えれば、第9層及び第11層のコアシートS1は基準位置から時計回りの周方向に120度、第10層及び第12層のコアシートS1は基準位置から時計回りの周方向に300度回転させて積層される。
【0066】
このように、本実施形態では、第n+1層(nは自然数)のコアシートS1は、第n層のコアシートS1に対して、周方向にスロットピッチθ(360度をスロット数で除した角度)の整数倍に相当する角度だけ相対的に回転させて積層される。本実施形態では、スロット数が6であるため、スロットピッチθは60度である。よって、第n+1層(nは自然数)のコアシートS1が、第n層のコアシートS1に対して、周方向に相対的に回転させられる角度は、60×z(zは整数)度となる。このような角度でコアシートS1を回転させるのは、コアシートS1の周方向における各ティース部Tの位相を同一に積層することができるからである。
【0067】
また、本実施形態では、積層体L1の回転軸方向の一部を構成する領域Xn(図示省略)においては、各コアシートS1が、既に積層されたコアシートS1に対して、それぞれ周方向に180度だけ相対的に回転させて積層され、且つ、領域Xnとは異なる他の領域Xn+1(図示省略)を構成する各コアシートS1は、領域Xnを構成する各コアシートS1に対して、周方向にスロットピッチθ又はスロットピッチθ+180度だけ相対的な位相をずらせて積層される。
【0068】
上述した積層工程を行うことにより、貫通孔Hが複数のコアシートS1にわたって回転軸方向に連通する空隙部12が形成されるとともに、この空隙部12において、開口部14が、一枚のコアシートS1毎に貫通孔Hの一端側又は他端側に交互に配置される。これと同時に、当該積層工程を経て得られる積層体L1図6参照)の外周の曲面部に形成される各積層面A1〜A6に配置される各開口部14は、図4に示すステータコア11の各積層面A1〜A6に配置された各開口部14と同一の位置関係となるように配置される。積層体L1における空隙部12の位置関係も同様である。
【0069】
なお、本実施形態の積層工程において、既に積層されたコアシートS1に対して、周方向に所定角度だけ相対的に回転させて積層するのは、複数枚のコアシートS1毎であってもよい。例えば、上述した積層工程を二枚のコアシートS1毎に対して行えば、当該積層工程を経て得られる積層体(図示省略)の外周の曲面部に形成される各積層面は、図5に示す各積層面B1〜B6と同一形態となる。
【0070】
そして、この積層体L1を構成する各コアシートS1を周知の方法(例えば、溶接、樹脂モールド、ワニス含浸等)により一体化することで、上述したステータコア11が形成される。さらに、このステータコア11の各スロット113に対して、電気絶縁性を有するフィルム状の絶縁物114を介して巻線115を配置する巻線工程が行わる。こうして、容器Pに固定するためのステータ10が準備される。
【0071】
次に、上述したステータコア形成工程により得られたステータコア11と容器Pとを固定するための溶接工程が行われる。本実施形態の溶接工程では、予め、容器Pの所定位置に事前準備として設けられた溶接孔W(図1及び図2参照)を通じて溶接が行われる。具体的には、ステータコア11を容器P内に収納したときに空隙部12と対向する部分に溶接孔Wが設けられる。この溶接孔Wに溶接棒(図示省略)を挿入して空隙部12の外側に位置するステータコア11の外周に対して溶接を行うことで、溶接棒及びコアシートS1が一部溶融し、溶接部13が形成される。こうして形成された溶接部13を介して、ステータコア11のヨーク111の外周(具体的には、各積層面A1〜A6の一部)が、容器Pの内面に固定されるのである。
【0072】
このように、本実施形態に係るステータ10の製造方法によれば、上述したステータコア形成工程及び溶接工程を採用することで、溶接時の熱の影響を低減するとともに、溶接部13が設けられる部分におけるヨーク111の機械的強度が十分に確保されたステータ10を製造することができる。これにより、ステータコア11と巻線115との間の絶縁を破壊することなく、且つ、ステータコア11の磁気特性の劣化を最小限に抑えて、パイプなどの円筒形の容器P内にステータ10を固定することが可能となる。
【0073】
また、本実施形態のように、所定位置に貫通孔Hが形成された一体型のコアシートS1を採用すれば、分割されたヨーク111を環状に一体化する工程を省くことができる。これにより、打抜き工程、積層工程を経て回転軸方向に積層された各コアシートS1を、ステータコア11として一体化するための工程(即ち、ステータコア形成工程)を大幅に簡略化することができる。一体型ステータコアは、磁路となるヨーク111に分割部が形成されないため、磁気抵抗を低減できるという利点がある。
【0074】
さらに、積層工程を、上述のように、打抜き工程により打抜き形成された同一形状のコアシートS1を、既に積層されたコアシートS1に対して周方向に所定角度だけ相対的に回転させて積層するように構成すれば、コアシートS1の打抜き工程を大幅に簡略化することができる。つまり、打抜き工程において、同一形状のコアシートS1を形成すればよいため、金型の位置決めや金型の選択などの工程を省略又は簡略化することができる。また、使用する金型の数を減らすことができるため、設備コストを低減することができる。
【0075】
以上、本発明の第一実施形態に係るステータ10及びその製造方法について説明したが、本発明に係るステータは、その他の形態で実施することができる。
【0076】
例えば、上述したステータコア11は、コアシートS1に替えて、図7に示すようなコアシートS2図7(a)参照)又はコアシートS3図7(b)参照)を用いて形成されていてもよい。コアシートS2、S3は、貫通孔H付近におけるヨーク部Yの所定位置にカシメ15が設けられていることを特徴としている。
【0077】
図7(a)に示すように、コアシートS2は、ヨーク111(ヨーク部Y)の周方向における貫通孔Hの両側にカシメ15が設けられていることを特徴としている。コアシートS2において、カシメ15は、貫通孔H付近であって、且つ、ヨーク部Yの外周寄りに設けるのが好ましい。カシメ15を設けることに起因するコアシートS2の磁気特性の劣化の影響を低減し、磁路を阻害するのを回避するためである。
【0078】
かかるコアシートS2を用いれば、開口部14を貫通孔Hの一端側又は他端側に交互に配置して積層されたコアシートS2同士の空隙部12付近における強度を高めることができる。具体的には、カシメ15を設けることによって積層されたコアシートS2同士が互いに剥がれ難くなり、周方向で開口部14の配置が異なるコアシートS2同士を強度的に一体的なものとして取り扱うことができる。また、各コアシートS2を磁束密度が比較的低い部分においてかしめることができる。このため、磁束が流れる磁路を阻害することなく、溶接部13が設けられる部分におけるヨーク111の機械的強度及びステータコア自体の機械的強度を高めることができる。
【0079】
また、図7(b)に示すように、コアシートS3は、ヨーク111(ヨーク部Y)の径方向における貫通孔Hの外側にカシメ15が設けられていることを特徴としている。コアシートS3において、カシメ15は、舌片部の範囲内の任意の位置に設けることができるが、磁気特性の劣化を考慮すれば、溶接部13が形成される位置(言い換えれば、容器Pに設けられた溶接孔Wと対向する位置)と一致させて設けるのが好ましい。
【0080】
かかるコアシートS3を用いれば、カシメ15が設けられた部分に溶接部13が設けられるため、これらに起因する磁気特性の劣化を最小限に抑えることができる。これにより、ステータコア全体としての磁気特性の劣化を効果的に低減することができる。また、溶接部13が設けられる部分の機械的強度をさらに高めることができるとともに、ステータコア自体の機械的強度も同時に高めることができる。
【0081】
あるいは、上述したコアシートS2、S3それぞれの特徴点を組み合わせた不図示のコアシートを用いてもよい。つまり、カシメ15は、ヨーク111(ヨーク部Y)の周方向における貫通孔Hの両側及びヨーク111(ヨーク部Y)の径方向における貫通孔Hの外側の両方に設けられていてもよい。この場合、各位置にカシメ15を設けることにより得られる上述のような効果を互いに阻害することなく得ることができる。
【0082】
なお、上述したコアシートS2、S3を用いてステータコアを形成する場合、上述したステータコア形成工程において、打抜き工程と積層工程との間に、カシメ15を形成する工程を設けることにより、上述したステータ10の製造方法と同様の製造方法で本発明のステータに用いるステータコアを形成することができる。
【0083】
また、第三実施形態として図8及び図9に示すステータ30のような形態で実施してもよい。ステータ30は、ステータコア31を構成する各コアシートS4に設けられた貫通孔Hが、積層された全てのコアシートS4にわたって連通しており、空隙部12が、熱媒体となる流体の流路として用いられることを特徴としている。
【0084】
図8に示すように、ステータコア31を構成する各コアシートS4は、上述したコアシートS1では貫通孔Hが設けられていなかった他のティース部Tの外側にも貫通孔Hが設けられている。即ち、コアシートS4においては、ティース部Tと同数(本実施形態では6個)の貫通孔Hが、各ティース部Tの外側において周方向に等ピッチ(スロットピッチθ)で設けられている。また、これらの貫通孔Hのうち、周方向に互いに180度ずれた位置に配置された二の貫通孔Hには、ヨーク部Yの周方向にける貫通孔Hの一端側又は他端側にそれぞれ開口部14が形成されている。つまり、コアシートS4における開口部14の配置は、上述したコアシートS1における開口部14の配置と同一の位置関係にある。
【0085】
ステータコア31は、多数枚のコアシートS4を上述した打抜き工程により形成し、各コアシートS4を上述した積層工程により回転軸方向に積層することで形成することができる。こうして形成されたステータコア31のヨーク311の外周には、図9に示すような積層面C1〜C6が形成される。このとき、積層面C1〜C6における開口部14の配置は、図4に示す積層面A1〜A6における開口部14の配置と同一の位置関係になる。
【0086】
本実施形態のステータ30と、上述したステータ10との相違点は以下の点にある。即ち、本実施形態では、各積層面C1〜C6において開口部14が配置されていない各領域のヨーク311にも空隙部12が設けられている。言い換えれば、各積層面C1〜C6における回転軸方向のすべての領域(領域X1〜X3を含む)に空隙部12が形成されている。したがって、本実施形態では、ステータコア31のヨーク311において、空隙部12が回転軸方向の一端から他端まで貫通している。
【0087】
これは、積層工程において、第n+1層のコアシートS4を、第n層のコアシートS4に対して、周方向にスロットピッチθの整数倍に相当する角度だけ相対的に回転させて積層したとしても、第n+1層及び第n層それぞれのコアシートS4において、各貫通孔Hの位置が周方向に同じ位相で配置されるからである。領域Xn+1を構成する各コアシートS4を、領域Xnを構成する各コアシートS4に対して、周方向にスロットピッチθ又はスロットピッチθ+180度だけ相対的な位相をずらせて積層した場合についても同様である。
【0088】
本実施形態のように、ステータ30が容器Pに溶接固定される回転電機は、後述する圧縮機構とともに容器P内に密閉して一体的に収納される、いわゆる全密閉型の圧縮機に採用されることが多い。本実施形態のステータ30は、例えば、空気調和機に使用される冷媒用ロータリ圧縮機等に用いる回転電機に適している。冷媒用ロータリ圧縮機は、容積圧縮機の一種であり、シリンダと、このシリンダ内に配置されたピストンとを有する圧縮機構を備えている。圧縮機構は、ピストンを動作させることによりアキュムレーターから供給される冷媒をシリンダ内に吸入し、吸入された冷媒を圧縮する。このピストン(圧縮機構が他の形態である場合は、ピストンに相当する構成)を動作させるための動力源として回転電機が使用される。
【0089】
本実施形態のステータ30によれば、空隙部12を熱媒体となる流体(冷媒)の流路として利用することにより、ステータ30の発熱を効果的に抑制することができる。これにより、回転電機を大容量化することが可能となり、圧縮機の性能を向上させることができる。
【0090】
なお、本実施形態において、ヨーク311の外周(各積層面C1〜C6)に開口部14が配置される部分は、必ずしも溶接部13が形成される箇所のみである必要はない。例えば、図9に示す各積層面C1〜C6における回転軸方向の全領域(領域X1〜X3を含む)にわたって、開口部14が、一又は複数枚のコアシート毎に、貫通孔Hの一端側又は他端側に交互に配置されていてもよい。この場合、コアシートS4を、一端側に開口部14が設けられた貫通孔Hと、他端側に開口部14が設けられた貫通孔Hとが、周方向に交互に配置されるように加工し、これを周方向(時計回り又は反時計回り)にスロットピッチθずつ回転させながら、あるいは揺動させながら積層すればよい。
【0091】
また、上述した各実施形態のステータ10〜30を構成するステータコア11〜31は、いずれも一体型ステータコアであるが、本発明のステータを構成するステータコアとして、いわゆる分割型ステータコアを採用してもよい。例えば、第四実施形態として図10に示すステータ40は、互いに隣り合うティース412間におけるヨーク411の内周から径方向に形成された複数の分割部414において、ヨーク411が複数(本実施形態では6個)の分割コア41Dに分割された、分割型のステータコア41を備える。分割型ステータコアは、製造時においてコア取りが良く歩留まりが高いという利点がある。
【0092】
分割コア41Dは、図11に示す各コアシートS5〜S7を適宜組み合わせて所定の積層順に積層することにより形成されている。本実施形態では、各コアシートS5〜S7のティース部Tの径方向の外側に位置するヨーク部Yに貫通孔Hが設けられている。したがって、各分割コア41Dには、ティース412の径方向の外側に位置するヨーク411に空隙部12が設けられる。また、本実施形態では、空隙部12は、分割コア41Dのヨーク411の回転軸方向の一端から他端まで貫通しているが、回転軸方向の一部を構成する領域にのみ空隙部12が設けられていてもよい。この場合、各コアシートS5〜S7と平面形状が同一であって貫通孔Hが設けられていない不図示のコアシートを用いればよい。
【0093】
また、分割コア41Dは、ヨーク411の外周における曲面部に形成される積層面Dの形態を、例えば、回転電機のサイズ、用途等に応じて、図12に示すような形態から適宜選択して設計することができる。つまり、図12(a)に示す積層面Daのように、回転軸方向の全領域にわたって、開口部14が、一枚のコアシート毎に、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの一端側又は他端側に交互に配置されていてもよいし、図12(b)に示す積層面Dbのように、これが複数枚(二枚)のコアシート毎であってもよい。あるいは、図12(c)に示す積層面Dcのように、開口部14が配置されていない領域が含まれていてもよい。積層面Dcの回転軸方向における、開口部14が配置されていない領域の配置は、積層するコアシートの選択及び積層順により調整される。
【0094】
本実施形態のステータ40を構成するステータコア41は、上述した製造方法を利用して、以下のように製造することができる。即ち、打抜き工程により、図11に示す各コアシートS5〜S7を形成する。具体的には、ティース部Tと、周方向の両端に分割部414が形成されたヨーク部Yとから成るT字状の周縁部を形成し、ヨーク部Yの所定位置に貫通孔Hを形成することでコアシートS7が形成される。そして、このコアシートS7に対して、ヨーク部Yの周方向における貫通孔Hの一端側又は他端側に開口部14を形成することで、コアシートS5、S6が形成される。
【0095】
ここで、開口部14を形成する方法としては、例えば、可動切断手段を用いて所定のタイミングで、コアシートS7に対する打抜き位置を異ならせて打抜き形成する方法が挙げられる。かかる方法によれば、他の工程を要することなく三種類のコアシートS5〜S7を所望の順に形成できるという利点がある。あるいは、固定切断手段を用いて所定のタイミングで、コアシートS7に対して一定の打抜き位置で打抜き形成し、これらを交互に裏返すようにしてもよい(ただし、カシメを設ける場合を除く)。かかる方法によれば、コアシートS5とコアシートS6の対称性を利用して、一のコアシートを実質的に二種類のコアシートとして利用することができるため、切断手段の制御を簡略化できるという利点がある。
【0096】
次に、積層工程により、各コアシートS5〜S7を所望の順に積層することによって、図13に示すような積層体L2が得られる。各コアシートS5〜S7の積層順については、積層体L2のヨーク411の外周に形成される積層面Dの形態(即ち、積層面Dにおける開口部14の配置)に応じて決定される(図12参照)。この積層体L2を構成する各コアシートS5〜S7の積層間を、例えば、溶接、ワニス含浸等により一体化することで、分割コア41が形成される。
【0097】
このようにして形成された複数の分割コア41Dを、ヨーク411の周方向の両端に設けられた分割部414をそれぞれ対向させて円周状に配置し、これらを周知の接合方法(例えば、カシメ、溶接など)により接合して一体化することにより、ステータコア41を製造することができる。本実施形態のステータ40のように、分割型のステータコア41を採用すれば、上述した各実施形態に係るステータ10〜30と同様の効果を得ることができるとともに、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0098】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【0099】
例えば、本発明において、コアシートに貫通孔Hを設ける位置は、上述した各コアシートS1〜S7のように、必ずしもティース部Tの外側に位置するヨーク部Yの外周寄りである必要はない。具体的には、上述したコアシートS1の変形例として図14に示すコアシートS8のように、スロット113の外側に位置するヨーク部Yの外周寄りに貫通孔Hが設けられていてもよい。この場合、スロット113の外側に位置するヨーク部Yの外周を平面視円弧部とし、且つ、このヨーク部Yの外周に沿って径方向に所定幅を有する円弧状又は四角形状に貫通孔Hを形成するのが好ましい。これにより、貫通孔Hが磁束の流れを著しく阻害することなく、ヨーク部Yにおいて一定の磁路幅を確保することができる。
【0100】
また、図15に示すコアシートS9のように、ティース部Tの数は奇数(本実施形態では9個)であってもよい。本実施形態では、貫通孔Hが周方向に等ピッチで(言い換えれば、周方向に隣り合う貫通孔Hに対して、周方向に120度ずつずれた位置に)3箇所形成されている。また、各貫通孔Hに設けられた開口部14は、全て、貫通孔Hの一端側又は他端側のいずれか一方の同じ側に設けられている。
【0101】
このコアシートS9により構成されるステータコアを形成する方法としては、例えば、上述した可動切断手段により、開口部14を形成する金型の貫通孔Hに対する打抜き位置を、一枚又は複数枚毎に交互に異ならせて打抜き形成された多数枚のコアシートS9を順に積層する方法が挙げられる。あるいは、上述した固定切断手段を用いて形成された同一形状のコアシートS9を、一枚又は複数枚毎に交互に裏返しながら積層するようにしてもよい。
【0102】
なお、かかるステータコアの形成方法は、例えば、上述したコアシートS1、S4において、各貫通孔Hに設けられた開口部14が、貫通孔Hの一端側又は他端側のいずれか一方の同じ側に設けられている場合にも採用することができる。即ち、コアシートに設けられたティース部Tの数が偶数である場合であっても、当該ステータコアの形成方法を採用することができる。
【0103】
このようなコアシートS8、S9等を用いた場合であっても、上述した各実施形態のステータ10〜40と同様の効果を得ることができると同時に、本願発明における課題を解決することが可能である。また、各実施形態の特徴点を適宜組み合わせた形態で実施することもできる。
【0104】
さらに、本発明において、コアシートに設けられる貫通孔Hの平面形状は、図16に示すような形態であってもよい。例えば、図16(a)に示す貫通孔H1のように、各辺が径方向の外側に円弧状に湾曲した略三角形状に形成されていてもよい。この場合、円弧状に湾曲した辺の曲率半径は、舌片部の先端部と接触しないように設定される。言い換えれば、舌片部の先端部と接触しない限り、特に限定されない。これにより、熱抵抗としての機能を保持しつつ、より広い磁路幅を確保するとともに、磁束の流れに沿った磁路を形成することができる。
【0105】
あるいは、図16(b)に示す貫通孔H2のように、周方向の開口部14が設けられた側とは反対側に、ヨーク部Yの周方向に延びる切欠き部16を有する形状であってもよい。切欠き部16は、磁路に影響がない程度の微小幅のものであればよい。これにより、熱抵抗が長くなり、より熱の伝達を低減させることができる。この場合、舌片部が周方向に長くなるため、一枚のコアシートとして考慮すれば、片持ち支持された舌片部の機械的強度は低下する。しかしながら、本発明では、上述のとおり舌片部の先端部が、回転軸方向に隣接する他のコアシートのヨーク部Yにより挟持されるため、複数枚のコアシートの積層体としては、十分な機械的強度が確保される。
【0106】
なお、上述した本発明の各実施形態に係るステータは、いずれも一のティースに一の相の巻線が巻回される集中巻きステータを例示して説明しているが、本発明に係るステータは、一のスロットに複数の相の巻線が配置される分布巻きステータであってもよい。
【符号の説明】
【0107】
1:回転軸
2:ロータ
10、20、30、40:ステータ
11、21、31、41:ステータコア
12:空隙部
13:溶接部
14:開口部
15:カシメ
16:切欠き部
100:回転電機
111、311、411:ヨーク
112a〜112f、312a〜312f、412:ティース
113、413:スロット
414:分割部
1〜S9:コアシート
Y:ヨーク部
T:ティース部
P:容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16