(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720903
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】バレル研磨用無機質メディア
(51)【国際特許分類】
B24B 31/14 20060101AFI20150430BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20150430BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
B24B31/14
B24D3/00 330B
C09K3/14 560
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-549845(P2012-549845)
(86)(22)【出願日】2011年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2011079621
(87)【国際公開番号】WO2012086679
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2010-287487(P2010-287487)
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】内藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 琢也
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭48−035595(JP,B1)
【文献】
特開平09−268050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 31/14
B24D 3/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体であるバレル研磨用無機質メディアであって、
60〜80重量%の酸化アルミニウムと、10〜30重量%の二酸化珪素と、4〜8重量%の酸化ジルコニウムと、1〜3重量%の酸化カルシウムとを少なくとも含むことを特徴とするバレル研磨用無機質メディア。
【請求項2】
上記焼結体は、粘土質微粒子と研磨材粒子とを含む混合材料を焼結させた焼結体である請求項1記載のバレル研磨用無機質メディア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被研磨物品のバリ取り、R付け、平滑化、光沢出し等のために行われるバレル研磨に用いられるバレル研磨用無機質メディアに関する。
【背景技術】
【0002】
バレル研磨用のメディア(「研磨石」とも呼ばれている)は、研磨目的に合わせて数ミリから数十ミリの球形、円柱形、三角錐形、三角柱形等の任意形状に成形した研磨力を有する小粒体である。このバレル研磨用メディアは、一般的に、主として研磨力を担う研磨材と、この研磨材を内在して研磨石を実質的に構成する結合材とにより構成されている。
【0003】
無機質メディアは、アルミナ等の砥粒とボーキサイト等の無機質結合材との混合材料を焼結して形成されるものであって、安価であるとともに研磨力が大きいので、バリ取りやR付け等の粗仕上げ研磨に使用されることが多い(特許文献1,2参照)。
【0004】
ところで、バレル研磨は、被研磨物品、研磨用メディア及び研磨水からなるマスを研磨槽内に入れ、研磨層を自転、公転、若しくは振動させること、又は底部の回転盤を回転させることでマスを流動させることにより行われる。すなわち、このマスの流動の結果生じる被研磨物品とメディアとの摩擦力により被研磨物品のバリ取り、R付け、平滑化、光沢出し等を行う。このようなバレル研磨は、複雑な形状の物品を一度に大量処理できるため従来から広く物品の製造工程に採用されている。しかし、研磨することにより生じるスラッジは、産業廃棄物として処理するため、環境負荷への影響も大きく、コストも高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−146749号公報
【特許文献2】特公昭44−23873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、粗仕上げ研磨を可能とするとともに耐磨耗性能に優れたバレル研磨用無機質メディアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明に係るバレル研磨用無機質メディアは、焼結体であるバレル研磨用無機質メディアであって、60〜80重量%の酸化アルミニウムと、10〜30重量%の二酸化珪素と、4〜8重量%の酸化ジルコニウムと、1〜3重量%の酸化カルシウムとを少なくとも含むことを特徴としている。
このように構成された本発明においては、焼結体であるバレル研磨用無機質メディアが、60〜80重量%の酸化アルミニウムを主成分として含み且つ4〜8重量%の酸化ジルコニウムを成分として含むので、粗仕上げ研磨を可能としながら耐磨耗性能の向上を実現することが出来る。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、焼結体は、粘土質微粒子と研磨材粒子とを含む混合材料を焼結させた焼結体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、粗仕上げ研磨を可能としながら耐磨耗性能の向上を実現し、これにより、産業廃棄物低減によるコスト削減及び環境負荷低減を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態によるバレル研磨用無機質メディアの例を示す斜視図である。
【
図2】本発明が適用されたバレル研磨用無機質メディアと、比較例のメディアとの損耗率の実験結果を示す図である。
【
図3】本発明が適用されたバレル研磨用無機質メディアと、比較例のメディアとの研磨量の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態によるバレル研磨用無機質メディアについて説明する。
図1は、本発明の実施形態によるバレル研磨用無機質メディアの例を示す斜視図である。
本実施形態によるバレル研磨用無機質メディアは、研磨目的に合わせて数ミリから数十ミリの球形、円柱形、三角錐形、三角柱形等の任意形状に成形される。
図1(a)〜(d)に、その形状の例を示す。
図1(a)は、三角柱形、
図1(b)は、三角柱の中間部を斜めに切断して得られる形状、
図1(c)は、球形、
図1(d)は、円柱形である。
【0012】
本発明の実施形態による研磨用無機質メディア(以下、単に「メディア」又は「本発明のメディア」ともいう。)は、粘土質微粒子と研磨材粒子との混合材料が、60〜80重量%(研磨用無機質メディアの重量に対する重量比)の酸化アルミニウム(Al
2O
3)と、10〜30重量%の二酸化珪素(SiO
2)と、4〜8重量%の酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、1〜3重量%の酸化カルシウム(CaO)とを少なくとも含むように調整し、このような組成を有する混合材料を焼結させたものである。このような組成の混合材料を焼結させることにより得られたメディアは、60〜80重量%の酸化アルミニウム(Al
2O
3)と、10〜30重量%の二酸化珪素(SiO
2)と、4〜8重量%の酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、1〜3重量%の酸化カルシウム(CaO)とを含む。以下の実施例で示すように、従来のメディアに比べて、研磨力を維持した状態で損耗率を大幅に改善できる。
ここで、粘土質微粒子とは、集まって粘土状となり得る微粒子である。例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化珪素、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が混ざっている状態を意味する。また、研磨材粒子は、少なくとも酸化アルミニウムを含む粒子であれば良い。
【0013】
次に、本発明に係る実施例1〜3のメディアを、本発明と比較するための比較例1,2のメディアとともに説明する。比較例1は、従来から広く粗仕上げ加工に用いられているメディアの組成の一例である。比較例2は、光沢仕上げに使用される酸化アルミニウム主体の結合材に研磨材粒子を混合して研磨力を粗仕上げ加工できるように配合した例である。実施例1〜3と、比較例1,2の各成分の割合は、表1のとおりである。
【0015】
実施例1〜3のメディアと、比較例1〜2のメディアとは、例えば次に説明するような従来と同様の方法により得られる。尚、製造方法はこれに限られるものではなく、研磨の目的に合わせて決められるメディアの形状に応じて適宜従来から慣用的に行われている方法を選択して製造してもよい。
【0016】
まず、表1の各配合率となるように、各原料を混合し、約15%の水を加えたスラリーとして混練し、得られたスラリーを押出成形機に投入して1辺が約15mm程度の三角柱状に成形し、それを長さ(三角柱の高さ)約15mm程度となるように切断し、乾燥させてメディアグリーン体を得る。
【0017】
次に、得られたメディアグリーン体を耐熱容器に入れ、温度管理された焼成炉内において温度1300〜1500℃で約2時間焼成することにより各メディアを得る。この場合、焼結温度が1300℃より低ければメディアの強度が低下し、焼成温度が1500℃より高ければメディアの形状を保つことができない。また、温度1300〜1500℃の範囲内での好適な焼成温度(例えば、約1400℃)はメディアの組成により調節する必要があるから、初めての成分や形状のメディアを焼成しようとする場合には、事前に試料を作成しその焼成試験を行って好適な焼成温度を調べておく必要があることはいうまでもない。
【0018】
得られたメディア12リットルを新東工業(株)製のバレル研磨装置(パワーロールフローEVFX−1)に、水10リットル、コンパウンド7ミリリットルとともに入れた。被加工物としては、直径22mmで長さ15mmの円柱状の炭素鋼(S45C JIS規格)(C:0.42〜0.48%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.60〜0.90%、P:0.03%以下、S:0.035%以下)製の試験片を混入し、1時間の研磨テストを実施した。
図2に、研磨石の重量減少の割合を計測して求めた損耗率の結果を示す。
図3に、試験片の重量減少量を計測して求めた研磨量(研磨力を示すものとして)の結果を示す。
図2及び
図3中において、E1,E2,E3は、それぞれ実施例1,2,3の結果を示し、CE1,CE2は、比較例1,2の結果を示す。
図2中の縦軸は、損耗率(%)を示し、
図3中の縦軸は、研磨量(mg)を示す。
【0019】
図2の結果より損耗率は、比較例1(従来広く用いられた例)が8.62%であるのに対し、比較例2(酸化アルミニウム主体の組成の例)が5.20%であり、比較例1よりは改善(比較例1の60%程度)されていることが示される。実施例1では、酸化ジルコニウム成分を配合することにより、損耗率を3.34%とすることができ、比較例1,2に比べて大幅に改善(比較例1の39%程度、比較例2の64%程度)されたことが示されている。実施例2,3の場合にも、実施例1と略同様の結果が得られた。
【0020】
また、
図3の結果より、比較例1が研磨量207mgであり、比較例2が研磨量191.5mgであるのに対して、実施例1が162.5mgとなっており、損耗率の減少とともに研磨力が減少している。一般に、損耗率と研磨力(研磨量)は比例の関係にあるといわれているが、メディアの損耗率1%に対する研磨量を比較すると、比較例1では24.0であり、比較例2では36.8であるのに対し、実施例1では48.7となっており、実施例1の研磨効率が非常に大きいことが確認できた。実施例2,3の場合にも、実施例1と略同様の結果が得られており、該実施例の研磨効率が非常に大きいことが確認できた。
【0021】
以上のように、実施例1〜3のメディアは、粗仕上げ研磨を可能としながら耐磨耗性能の向上を実現している。従来(比較例1)のメディアと比べて、損耗率が約40%となるため、2倍以上の寿命となり、且つ、スラッジの発生量も減少し、産業廃棄物の発生量が大幅に削減でき、環境負荷の低減に寄与できる。
【0022】
本発明者達は、じん性(靭性)の低い酸化アルミニウムに、じん性の高い酸化ジルコニウムを添加することにより耐摩耗性が向上することを見出し、この知見に基づいて、酸化アルミニウムをメディアの主成分とするとともに酸化ジルコニウム成分を適正に添加した配合とすることにより、粗仕上げ研磨を可能としながら耐磨耗性能の向上を実現する範囲を得ることが出来た。
【0023】
本発明を適用したバレル研磨用無機質メディアは、粘土質微粒子と研磨材粒子との混合材料を焼結させ、上述のような成分状態とされた酸化アルミニウムと、二酸化珪素と、酸化ジルコニウムと、酸化カルシウムとを含むことにより、粗仕上げ研磨を可能としながら耐磨耗性能の向上を実現し、これにより、産業廃棄物低減によるコスト削減及び環境負荷低減を実現する。
【0024】
尚、上述したメディアは、三角柱形の形状のものに限られるものではなく、球形、円柱形や、円柱の断面を楕円形状とした形状、三角錐形を含む各種角錐形、三角柱形を含む各種角柱形等であってもよい。また、円柱や角柱をその軸(ここで軸とは、例えば円形や三角形である断面に直交する方向を意味するものとする)に直交する平面に対して所定の角度を有する平面で切断したような形状であってもよい。さらに、略三角柱形状の側面が内側に窪み、該略三角柱形状の三角形を構成する各頂角部分が円弧形状である(例えば特開2003−231053号公報参照)形状であってもよく、さらにまた、これらの形状をその軸に直交する平面に対して所定の角度を有する平面で切断したような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 バレル研磨用無機質メディア
E1,E2,E3 実施例1,2,3の結果
CE1,CE2 比較例1,2の結果