特許第5720909号(P5720909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5720909アルミニウム乾式被覆および熱処理が施されたカソード材料前駆体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720909
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】アルミニウム乾式被覆および熱処理が施されたカソード材料前駆体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20150430BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20150430BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20150430BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20150430BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20150430BHJP
【FI】
   H01M4/485
   C01G53/00 A
   H01M4/36 C
   H01M4/525
   H01M4/505
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-524406(P2013-524406)
(86)(22)【出願日】2011年8月4日
(65)【公表番号】特表2013-541129(P2013-541129A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011063456
(87)【国際公開番号】WO2012022624
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2013年3月29日
(31)【優先権主張番号】61/344,555
(32)【優先日】2010年8月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10008563.8
(32)【優先日】2010年8月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502270497
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】パウルゼン、ジェンス
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジヘ
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ビョンポ
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−116603(JP,A)
【文献】 特開平08−069902(JP,A)
【文献】 特開2001−106534(JP,A)
【文献】 特開2013−541129(JP,A)
【文献】 特開2011−146360(JP,A)
【文献】 特開2010−198904(JP,A)
【文献】 特開2006−261132(JP,A)
【文献】 特開2005−317499(JP,A)
【文献】 特開2010−170741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池中の活性正極材料として使用可能なリチウム遷移金属(M)酸化物粉末を製造するための粒子状前駆体複合物であって、該前駆体複合物の各粒子が、
遷移金属(M)酸化物コアと、
該コアを覆う結晶性酸化アルミニウムAl被覆層と、
を含み、前記被覆層は結晶性アルミナナノ粒子を含有する、粒子状前駆体複合物。
【請求項2】
前記前駆体複合物が、一般式(M酸化物)(Al〔式中、a+(2×b)=1〕を有すること、かつ前記遷移金属(M)が、NiMnCo〔式中、0.3≦x≦0.9、0≦y≦0.45、および0<z≦0.4、ならびにx+y+z=1〕であることを特徴とする、請求項1に記載の前駆体複合物。
【請求項3】
b≦0.4でありx=0.821、y=0、かつz=0.154である、請求項2に記載の前駆体複合物。
【請求項4】
0.0225≦b≦0.0275である、請求項3に記載の前駆体複合物。
【請求項5】
前記被覆層が透明膜で構成される、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の前駆体複合物。
【請求項6】
前記前駆体複合物の炭素含有率が、400℃超の温度での該前駆体複合物の熱処理により低減され、かつ該前駆体複合物の硫酸イオン含有率が、少なくとも700℃の温度での該前駆体の熱処理により低減される、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の前駆体複合物。
【請求項7】
前記硫酸イオン含有率が0.3質量%未満である、請求項に記載の前駆体複合物。
【請求項8】
前記前駆体複合物が200ppm未満の炭素含有率を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の前駆体複合物。
【請求項9】
前記前駆体複合物中の前記アルミニウム濃度が前記コアのサイズの増加に伴って減少する、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の前駆体複合物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池中の活性正極材料として使用可能なリチウム遷移金属(M)酸化物粉末を製造するための粒子状前駆体複合物を調製する方法であって、
・体積V1を有する第1の量のアルミナ粉末を提供する工程と、
・体積V2を有する第1の量の遷移金属(M)酸化物粉末、遷移金属(M)水酸化物粉末、または遷移金属(M)オキシ水酸化物粉末を前記粒子状前駆体として提供する工程と、・V1+V2=Vとして、該第1の量のアルミナ粉末を、該第1の量の遷移金属(M)酸化物、遷移金属(M)水酸化物、または遷移金属(M)オキシ水酸化物と、第1の乾式被覆手順で、混合する工程と、
・該体積Vが一定体積V3に減少するまで混合を継続することにより、遷移金属(M)酸化物コア、遷移金属(M)水酸化物コア、または遷移金属(M)オキシ水酸化物コアを、結晶性アルミナノ粒子を含む結晶性酸化アルミニウムAl被覆層で覆う工程と、・該被覆層により覆われた該コアを400乃至800℃の範囲内の温度で熱処理する工程と、
を含む、方法。
【請求項11】
アルミナ粉末の目に見える痕跡が残らなくなるまで前記混合工程が継続される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記被覆層により覆われた前記コアを5時間または10時間の持続時間にわたり前記温度で熱処理する工程をさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルミナ粉末が結晶性非凝集アルミナナノ粒子で構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前駆体複合物を取得する工程をさらに含み、前記コアが遷移金属酸化物であり、かつ前記コアが前記結晶性酸化アルミニウムAl被覆層により完全に覆われる、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子状前駆体をリチウム前駆体化合物と混合し、かつ該混合物を焼結する工程をさらに含む、請求項10乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再充電可能なリチウム電池で使用されるカソード材料用の前駆体、より具体的には、乾式被覆プロセス時にアルミニウムで被覆された後で追加の熱処理プロセスが施された粒子状の混合遷移金属酸化物MO2前駆体、混合遷移金属水酸化物M(OH)2前駆体、または混合遷移金属オキシ水酸化物MOOH前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能なリチウム電池およびリチウムイオン電池は、エネルギー密度が高いため、携帯電話、ラップトップコンピューター、ディジタルカメラ、ビデオカメラなどの携帯電子機器用の電源として広く使用されている。市販のリチウムイオン電池は、典型的には、グラファイト系アノードと活性カソードとで構成され、リチウムイオンを可逆的に挿入および放出することが可能である。
【0003】
以前は、LiCoO2が最も多く使用されるカソード材料であった。しかしながら、L
iCoO2系カソード材料は、高価であり、かつ典型的には約150mAh/gの比較的
低い容量を有する。したがって、LiNi0.8Co0.22などのリチウムニッケル酸化物
系カソード材料(LNO)、LiNi0.5Mn0.3Co0.22などのニッケルリッチなリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物系カソード材料(LNMO)、LiNi0.33Mn0.33Co0.332などのリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物系カソード材料(LMN
CO)などの材料によるLiCoO2の置換えが進行中である。しかしながら、これらの
層状酸化物に対する重大な懸念は、有機電解液中でのそれらの熱不安定性である。電池を充電した場合、潜在的に、脱リチウム化カソードは、電解液と反応して熱を発生し、これにより反応が加速されて、最終的に、電池が爆発することを意味する「熱暴走」を引き起こす可能性がある。カソードのドーピングは、それによりカソードと電解液との反応性が低減されるのであれば、電池の安全性の改良に役立ちうる。これらのカソード材料中にアルミニウムをドープしうることは、一般に知られている。また、アルミニウムドーピングがこれらの材料の安全性を改良することも、広く認められている。たとえば、LiNi0.8Co0.22は、比較的高い熱不安定性のために実用されていないが、関連するアルミニ
ウムドープ材料(NCA)LiNi0.8Co0.15Al0.052は、市販されている。一般に、層構造を有する層状カソード材料中にアルミニウムがドープされた場合、可逆容量は、アルミニウム1mol%あたり1乃至2mAh低下する。したがって、LiNi0.8Co0.22は、4.3乃至3.0Vで約200mAh/gの可逆容量を有するが、5%Alド
ープ材料(NCA)は、約190乃至194mAh/gの可逆容量を有する。しかしながら、改良された安全性を得ることが比較的重要である場合、この容量低下は、許容できることもある。
【0004】
さらに、エネルギー密度がそれほど重要でないと思われる用途では、たとえば、HEVやEVの電池のような大サイズの電池では、Li−Mn−Oスピネル系およびLiFePo4系のカソード材料は、の前述のLNO材料、LNMO材料、およびLMNCO材料よ
りもかなり低いエネルさギー密度にもかかわらず、それら電池の安全性能に基いて、現在、検討されている。
【0005】
研究によれば、アルミニウムのLNMCOカソード材料への固溶体「溶解度」は比較的高いこと、アルミニウムのドーピングレベルの増加に伴って熱不安定性は低下するので安全性は比較的急速に増加すること、およびLi−Mn−Oスピネル系またはLiFePo4系のカソード材料よりも高い体積エネルギー密度を維持しつつ比較的有意量のアルミニ
ウムをLMNCOカソード材料中にドープしうることが示唆されている。これらの事実を
考慮すれば、比較的高濃度、たとえば>5mol%Al/(Al+遷移金属)のアルミニウムドーピングが、Li−Mn−Oスピネル系およびLiFePo4系のカソード材料と
比較して優れた性能を有するカソードを達成する有望な手法になりうることは、明らかである。
【0006】
しかしながら、アルミニウムのドーピングは単純なプロセスではないという大きな問題が存在する。製造スケールでは、LNMCOカソードは、典型的には、混合遷移金属水酸化物M(OH)2や混合遷移金属オキシ水酸化物MOOHなどの混合金属前駆体から作製
される。前駆体は、典型的には、可能であればNH4OHのようなキレート化剤の存在下
で、塩基および酸の溶液の沈殿により、たとえば、2NaOH+MSO4→M(OH)2+Na2SO4により得られる。次いで、前駆体は、通常、リチウム源(たとえばLi2CO3)と混合され、続いて、単純な固相反応が行われる。前駆体中にアルミニウムをドープすることは可能であるが、遷移金属が二価であるのに対してアルミニウムが三価であるので、アルミニウムはM(OH)2構造中に容易に嵌入しないという問題が存在する。結果と
して、M(OH)2構造ではなく、アニオン不純物や結晶水を含有する層状複水酸化物な
どのより複雑な構造が得られる。さらに、良好なモルフォロジーを得ることは、かなり困難である。たとえば、M(OH)2が良好なモルフォロジーで沈殿すると思われる条件(
たとえば、温度、pHなど)下で、Al(OH)3は、可溶性となって比較的劣るモルフ
ォロジーを生じる可能性がある。アルミニウムの共沈に特有なのは、比較的低密度であること、および得られる粉末が、通常、うまく生成された粒子ではなく構造化されていない綿毛状の凝集体で構成されることである。
【0007】
他の選択肢の公知の手法は、M(OH)2構造を沈殿させた後で個別の沈殿によりアル
ミニウムで被覆することである。理想的な条件下では、Al(OH)3層はM(OH)2コアを被覆するであろう。そのような手法は、欧州特許出願公開第1637503A1号明細書に記載されており、そこでは、リチウムニッケル系カソード前駆体が湿式アルミニウム被覆プロセスで水酸化アルミニウムのアモルファス層により被覆される。湿式アルミニウム被覆は、Al(OH)3膜の十分な密度が達成されない場合があるので、比較的劣る
モルフォロジーをしばしば生じる、比較的困難なプロセスである。上記で説明した既存の不純物問題は、解決されない場合があり、しかも比較的厚い被覆層が形成されるので、湿式アルミニウム被覆によりアルミニウムの高いドーピングレベル(>5mol%)を達成することは、非常に困難である場合がある。さらに、湿式アルミニウム被覆は、比較的費用のかかるプロセスである。
【0008】
カソードまたはカソード前駆体の被覆は、従来技術で報告されてきた。ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、ヒュームドジルコニウムなどのナノ粒子による乾式被覆が開示されてきたが、発明者らの知るかぎり、開示は、典型的には1質量%を超えない非常に低い被覆レベルに限定される。
【0009】
大量スケールでは、沈殿金属水酸化物は、主に公知の先行技術である、NH4OHなど
のキレート化剤の存在下でMSO4の酸性溶液を用いてNaOHの塩基溶液を沈殿させる
ことにより調製される。この安価な工業経路により一般に調製され得られる混合金属水酸化物前駆体は、不要な不純物を含有する。対象となる主な不純物は、硫酸イオン(典型的には0.1乃至1質量%のSO42-)、炭酸イオン(典型的には0.1乃至1質量%のC
32-)、およびナトリウムである。硫酸イオンは、MSO4に由来し、炭酸イオンは、(a)NaOH中の炭酸イオン不純物および(b)空気中のCO2に由来する。わかるよう
に、炭酸イオンを排除することは比較的難しい。硫酸イオン不純物および炭酸イオン不純物は、結晶構造内に位置するので、たとえば洗浄では容易に除去されない場合がある。
【0010】
LNMCOなどの最終カソード材料を調製するために、リチウムは、たとえば、炭酸リ
チウムまたは水酸化リチウムの形態で添加される。炭酸リチウム系さらには硫酸リチウム系の塩は、熱力学的に安定であるので、最終LNMCOカソード中に炭酸イオン不純物および硫黄不純物が残存する傾向がある。とくに問題となるのは、Li−Ni酸化物系カソード(たとえばLiNi0.8Co0.15Al0.052)中の炭酸イオン不純物である。炭酸イオン不純物は、そのようなカソード材料を含有する電池の劣る高温性能、たとえば膨張や膨出などの原因となる。大量の硫黄不純物は、カソード性能が劣る一因となる可能性があり、排除されることが好ましい。当技術分野で必要とされるのは、公知の先行技術と比較して改良されたモルフォロジーおよびより低い不純物濃度を有するアルミニウムがドープされた粒子状の混合遷移金属酸化物MO2前駆体、混合遷移金属水酸化物M(OH)2前駆体、または混合遷移金属オキシ水酸化物MOOH前駆体の形成を可能にする被覆プロセスである。
【0011】
現在入手可能な前駆体と比較してより低コストでLNMCOカソード材料やNCAカソード材料などのより高品質のアルミニウムドープカソード材料の調製を可能にする新規な前駆体を提供することが、本発明の主目的である。
【0012】
特開平08−069902号公報には、仮焼されたマンガンニッケル銅系酸化物に粉砕時に0.1乃至20.0質量%の酸化アルミニウムおよび/または酸化ジルコニウムを添加し、その後、粉砕された材料を成形および焼成したものを含むサーミスターセラミックスが開示されている。この方法では、酸化アルミニウムも酸化ジルコニウムも、マンガンニッケル銅系酸化物と固溶体を形成せずに、粒界に分散形態で存在する。セラミックス上に酸化アルミニウム被覆は形成されない。
【0013】
特開平10−116603号公報には、酸化マンガンが活物質である正極と、負極と、非水電解液と、を含み、かつAl23、In23、Ga23、Tl23、LiAlO2
LiInO2、LiGaO2、およびLiTiO2の中から選択される少なくとも1種の添
加剤が酸化マンガンに添加された、電池が開示されている。しかしながら、正極の形成時、実施例によれば、アルミナ(Al23)は、マンガン100原子に対して5molの割合で、400℃で脱水された二酸化マンガン(MnO2)と混合された。得られた混合物
、導電剤として機能する炭素粉末、および結着剤として機能するフッ素樹脂粉末は、8:1:1の重量比で混合され、そして円板状に圧縮成形され、次いで、これは、正極を作製するために250℃で熱処理に付された。そのような混合物を熱処理することにより、アルミナと炭素は、酸化マンガンを被覆するうえで競合するであろうから、アルミナの連続被覆を形成することは不可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
簡潔に説明すると、本発明は、乾式被覆プロセス時にアルミニウムで被覆された粒子状の混合遷移金属酸化物MO2前駆体、混合遷移金属水酸化物M(OH)2前駆体、または混合遷移金属オキシ水酸化物MOOH前駆体を提供することにより、再充電可能なリチウム電池およびリチウムイオン電池用のカソード材料の調製に好適な先行技術の前駆体の欠点に対処する。本発明に係る前駆体の粉末状粒子は、たとえば、ニッケル/マンガン/コバルトオキシ水酸化物またはニッケル/コバルト水酸化物のコアと、結晶性アルミナ(Al23)ナノ粒子で被覆された表面と、を含む。
【0015】
本発明に係る前駆体の被覆粒子は、粒子サイズの増加に伴って相対アルミニウム含有率が減少するサイズ依存性組成を示す。これは、より小さい粒子ほどより多く粉末の表面に寄与するので、良好な安全性を達成するうえで望ましい。電解液とカソードとの反応は、表面上で起こる。一方、Alが電気化学的性能(特にLi拡散性能)の劣化の原因である場合、小粒子であれば影響はより少ない。したがって、粒子サイズの減少に伴ってAl濃
度が増加すれば、有利である。
【0016】
本発明はさらに、公知である従来の湿式アルミニウム被覆プロセスで現在可能なレベルよりも高いアルミニウムのドーピングレベルを有する前駆体の形成を可能にするアルミニウム乾式被覆プロセスを提供する。これは、1つ以上の被覆手順で、粒子状の遷移金属酸化物MO2、遷移金属水酸化物M(OH)2、または遷移金属オキシ水酸化物MOOHをアルミナと混合することにより、達成可能である。アルミナは、沈殿、噴霧乾燥、ミル処理などにより、取得可能である。一実施形態では、アルミナは、典型的には、少なくとも50m2/gのBETを有し、かつd50<100nmを有する一次粒子で構成され、一次
粒子は、凝集していない。他の実施形態では、ヒュームドアルミナが使用される。ヒュームドアルミナナノ粒子は、高温の水素空気火炎中で生成され、そして日用品を含むいくつかの用途で使用される。ヒュームドアルミナの結晶構造は、被覆手順時、維持されるので、MO2コア、(OH)2コア、またはMOOHコアの周囲の被覆層中に見いだされる。
【0017】
本発明はさらに、炭酸イオンや硫酸イオンなどの望ましくない不純物を低減させるための、粒子状の混合遷移金属酸化物MO2前駆体、混合遷移金属水酸化物M(OH)2前駆体、または混合遷移金属オキシ水酸化物MOOH前駆体の熱処理を提供する。熱処理は、結晶性アルミニウム被覆層で取り囲まれた混合金属酸化物コアを有する粒子を組み込むことにより公知の先行技術の前駆体と比較して改良された特性を有するとともに低い不純物レベルを有するアルミニウム被覆前駆体を得るべく、本発明の一実施形態に従ってアルミニウム乾式被覆プロセスと組み合わせてもよい。
【0018】
さらに、本発明の有利な実施形態に従ってアルミニウム乾式被覆処理および前処理が施された前駆体は、基本的に結晶水を含まないので、大量スケールの製造時、かなり少ないガス流量が必要とされるという公知の先行技術よりも優れた利点を有する。このことは、炉内の処理能力を増加させて製造コストをかなり削減しうることを意味する。
【0019】
一実施形態では、適合する前駆体複合物は、一般式(M酸化物)(Alを有し、式中、a+(2×b)=1、かつ遷移金属(M)はNiMnCoであり、ただし、0.3≦x≦0.9、0≦y≦0.45、かつ0<z≦0.4、x+y+z=1である。遷移金属(M)は不可避不純物のみをさらに含みうる。
【0020】
次に、例として、添付の図面を参照しながら、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る第1のアルミニウム被覆手順前のMOOH前駆体コアのSEM(走査型電子顕微鏡)顕微鏡写真である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る第2のアルミニウム被覆手順後(10mol%アルミニウム)のMOOH前駆体のSEM顕微鏡写真である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る第1および第3のアルミニウム被覆手順後(それぞれ5mol%アルミニウムおよび15mol%アルミニウム)のM(OH)2前駆体のX線回折パターンである。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る第2のアルミニウム被覆手順後(10mol%アルミニウム)のMOOH前駆体の研磨断面のFESEM(電界放出走査型電子顕微鏡)顕微鏡写である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る第2のアルミニウム被覆手順後(10mol%アルミニウム)のMOOH前駆体の異なるサイズ画分からICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)により得られた金属化学量論比を示す図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る第1のアルミニウム被覆手順後(5mol%アルミニウム)のM(OH)2前駆体の異なるサイズ画分からICP−MSにより得られた金属化学量論比を示す図である。
図7図7は、本発明の他の実施形態に係るアルミナ被覆Ni(OH)2系前駆体の回折パターンの進展を熱処理温度の関数として示す図である。
図8図8は、700℃で熱処理されたNi0.5Mn0.3Co0.22前駆体のX線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に明記された事例は、一形態として本発明の好ましい実施形態を示したものであり、そのような事例は、なんら本発明の範囲を限定するものとみなしてはならない。
【0023】
本発明の一実施形態では、第1の工程として、粒子状の遷移金属酸化物MO2前駆体複
合物、遷移金属水酸化物M(OH)2前駆体複合物、または遷移金属オキシ水酸化物MO
OH前駆体複合物中へのアルミニウムのより高いドーピングレベル(先行技術のものよりも)の達成を可能にするアルミニウム乾式被覆プロセスを提供する。遷移金属(M)酸化物、遷移金属(M)水酸化物、または遷移金属(M)オキシ水酸化物は、前記遷移金属Mを構成する元素の硫酸塩を水酸化アルカリの存在下で共沈させることにより、取得されえる。たとえば、組成MOOH(M=NixMnyCoz、式中、0.3≦x≦0.9、0≦
y≦0.45、および0<z≦0.4、ならびにx+y+z=1)を有するニッケル/マンガン/コバルト前駆体複合物または組成M(OH)2を有するニッケル/コバルト前駆
体複合物は、粒子状前駆体とアルミナ(Al23)粉末とで構成される特定容積でHaensel型2Lミキサーなどのミキサーに充填することにより、酸化アルミニウム(アルミナ)で乾式被覆してもよい(実施例1および実施例2を参照)。次いで、一定の速度たとえば1000rpmで、ある時間、たとえば30分間の時間にわたり、ミキサーを回転させる。この混合時間の間、アルミナ粒子は、徐々に見えなくなってMOOH粉末粒子を被覆し、ミキサー中の容量は、減少する。混合時間は、肉眼で見えるアルミナの痕跡が最終的に残らないように選択することができる。また、その時点では、体積は、混合時にもはや減少しない。ナノサイズのヒュームドアルミナをプロセスで使用してもよい。
【0024】
粒子状前駆体およびアルミナの量は、たとえば、被覆手順時に5mol%アルミナのドーピングレベルが達成されるように、選択してもよい。したがって、混合遷移金属前駆体1molあたり5mol%のアルミナを添加してもよい。この量比は、良好に機能することが判明したが、他の比を用いることもできる。アルミニウムのより高いドーピングレベルを達成すべく、記載の被覆手順を複数回繰り返してもよい。したがって、10mol%のアルミニウムのドーピングレベルは、5mol%のアルミナを用いた第1の被覆手順、続いて5mol%のアルミナを用いた第2の被覆手順を行うことにより、達成することができる。毎回5mol%のアルミナを利用した3回の連続被覆手順を行うことにより、結果的に、15mol%のアルミナのドーピングレベルを達成することができる。
【0025】
アルミナの体積は、混合金属酸化物前駆体、混合金属水酸化物前駆体、または混合金属オキシ水酸化物前駆体の体積をはるかに超えるが、被覆前駆体は、元の混合金属水酸化物前駆体または混合金属オキシ水酸化物前駆体とほぼ同一の体積を有する。MO2、MOO
H、またはM(OH)2の粉末は、被覆手順時、それほど変色しない。その結果、アルミ
ナは、薄い透明の比較的緻密な膜で前駆体の粒子を覆うことができる。
【0026】
混合金属前駆体から調製されるカソード材料の最終品質は、不純物レベルに依存する。Fe、Cr、Na、…のような明らかな不純物以外に、アニオン不純物もまた重要である。LNCまたはLNCA(リチウムニッケル系カソード)の場合、最終生成物中の炭酸イオン不純物は、きわめて望ましくない。炭酸イオンを排除するために、高価な二酸化炭素フリーのガス中でクッキング(クッキングとは、金属前駆体とリチウム塩とからリチウム金属酸化物を形成する反応を意味する)を行わなければならない。混合金属前駆体が炭酸
イオン不純物を含有する可能性があることが分かった。クッキング時、前駆体の炭酸イオン不純物は、比較的安定なきわめて望ましくない炭酸リチウムを形成する傾向がある。したがって、とくにLNCやNCAのようなリチウムニッケル酸化物系カソード材料の場合、前駆体中の炭酸イオン不純物を排除することが重要である。
【0027】
そのほか、炭酸イオンは、混合金属前駆体中の自然の不純物である。それは、Na不純物または沈殿時の空気中の二酸化炭素との反応に由来する。前駆体中のこの自然の炭酸イオン不純物を除去することは、非常に困難である。本発明は、中温で混合金属前駆体を熱処理することにより、炭酸イオンフリーの金属酸化物前駆体を形成して炭酸イオン不純物を効率的に除去しうることを開示する。
【0028】
類似の硫酸イオン不純物は、混合金属水酸化物に自然に含まれる。それは、沈殿反応時に使用される金属硫酸塩の残りである。クッキング時、硫酸イオンは、リチウムと優先的に反応して、きわめて安定な硫酸リチウム不純物を形成する。本発明は、高温で混合金属前駆体を熱処理することにより、硫黄フリーの金属酸化物前駆体を形成して硫酸イオン不純物を除去しうることを開示する。
【0029】
熱処理は、典型的には、空気中で行われる。典型的な温度は、400乃至900℃、より正確に述べると、炭酸イオン不純物を除去するには500乃至700℃、硫黄不純物を除去するには700乃至900℃である。厳密な最適温度は、典型的には、この範囲内(典型的には400乃至800℃)であるが、その範囲外でも可能である。最適温度の選択は、最適化の結果である。一例として、温度は、炭酸イオン不純物または硫黄不純物の大部分を効果的に除去するのに十分な程度に高くする必要がある。そのほか、一般的な場合、温度は、最終酸化物の反応性(単相リチウム化カソードLiMO2を作製する)が低く
なるのを回避するのに十分な程度に低くする必要がある。このことは、高温でいくつかの酸化物(fx.スピネル相+岩塩相混合物)への相分離の発生および進行が過度である場合にあてはまりうる。空気は、熱処理を行うための自然のガスである。しかしながら、特別な制御雰囲気中で熱処理を行うことが有利であることもある。一例として、窒素のような不活性ガスを使用することにより、M(OH)2の酸化を防止することが可能である。
この場合、スピネル相−岩塩相混合物への相分離が抑制される。この代わりに、最終単相LiMO2を形成するより良好な反応性を有する単相混合岩塩型MOを達成することが可
能である。
【0030】
典型的な処理時間は、2乃至12時間である。最適時間は、最適化の結果であり、より長くしたりまたはより短くしたりすることが可能である。流動床加熱のような特別な方法により、短い反応時間にすることが可能であるが、たとえば、過度の相分離を防止すべく熱処理温度の低下が望まれる場合には、長い反応時間が好ましいこともある。
【0031】
熱処理後、一般式(M酸化物)(Al〔式中、a+(2×b)=1〕を有しうる最終前駆体複合物が得られる。一実施形態では、b≦0.4である。アルミニウム乾式被覆プロセスの実施形態を以下の実施例ではさらに説明する。
【実施例】
【0032】
実施例1
組成MOOH、M=Ni0.46Mn0.39Co0.15を有する1kgのNi−Mn−Co系粉末をミキサー(たとえばHaensel型2Lミキサー)中に充填し、25.5gのヒュームドアルミナ(Al23)粉末を添加した。1000rpmで30分間の混合時、ヒュームドアルミナは、徐々に見えなくなり、最初の粉末と非常によく似た外観(黒色、小体積)の被覆MOOH粉末を生じた。この量比の前駆体/ヒュームドアルミナを用いて、5mol%のアルミニウムのドーピングレベルが達成された。
【0033】
次いで、さらに25.5gのヒュームドアルミナを添加し、1000rpmで30分間継続して混合すると、再度、小体積を有する黒色粉末を生じた。2回の被覆手順後、ヒュームドアルミナの肉眼で見える痕跡は、残らなかった。明らかに、ヒュームドアルミナのすべてまたはほぼすべてが、薄い透明の比較的緻密な膜で前駆体粒子を覆うために利用された。この第2の被覆手順を追加することにより、10mol%のアルミニウムのドーピングレベルが達成された。
【0034】
乾式被覆前駆体粉末をポリマー中に浸漬し、続いて、研磨することにより、FESEMによる分析に供される10mol%アルミニウム被覆MOOH粉末の断面を作製した。
【0035】
実施例2
この実施例では、実施例1の一般的概要に従って行って、組成M(OH)2(M=Ni0.8Co0.15)を有するNi−Coコア化合物をヒュームドアルミナ粉末で被覆した。2組の被覆サンプルを作製した。第1の組の被覆サンプルは、1回のみの被覆手順を行った後、5mol%のアルミニウムのドーピングレベル(5mol%Al+0.95mol%M)を有する。第2の組のサンプルは、遷移金属1molあたり5mol%のヒュームドアルミナを毎回添加して、3回の連続被覆手順を行った後、15mol%のアルミニウムのドーピングレベルを有していた。X線回折パターンから、アルミニウム被覆層がアモルファスでないことは明らかである。したがって、ヒュームドアルミナの結晶構造は、被覆手順時には、維持され、M(OH)2前駆体粒子のコアは、結晶性アルミナナノ粒子を含有
する被覆層またはシェルで取り囲まれる。
【0036】
図1および2を参照すると、それぞれ、第1のアルミニウム被覆手順前および第2のアルミニウム被覆手順後(10mol%アルミニウム)のMOOH前駆体のSEM(走査型電子顕微鏡)顕微鏡写真が、本発明の一実施形態に従っておよび実施例1の説明に従って示されている。見てわかるように、前駆体粉末粒子を覆うアルミニウム被覆層は、高密度を有し、連続であり、かつ平滑であった。その厚さは、さまざまであり、0.1乃至1.5μmの間にあった。
【0037】
次に、図3を参照すると、第1および第3のアルミニウム被覆手順後(それぞれ、5mol%(下側)および15mol%(上側)のアルミニウム)のM(OH)2前駆体の例
示的なX線回折パターンが、本発明の一実施形態に従っておよび実施例2の説明に従って示されている。アルミナのパターンは、下端のラインとして参考のために追加されている。見てわかるように、表面被覆はアモルファスではない。このことは、5mol%アルミニウムで被覆されたサンプルで明らかになり、15mol%アルミニウムで被覆されたサンプルで明確にわかる(アルミナパターンに対応するピークを指す2つの矢印に注目されたい)。したがって、ヒュームドアルミナの結晶構造は、第1さらには第2の被覆手順時の間は維持され、各混合遷移金属前駆体粒子のコアは、結晶性アルミナナノ粒子を含有する非アモルファス被覆層で覆われるので結晶構造を有する。
【0038】
図4には、第2のアルミニウム被覆手順後(10mol%アルミニウム)のMOOH前駆体の研磨断面のFESEM(電界放出走査型電子顕微鏡)顕微鏡写真が、本発明の一実施形態に従っておよび実施例1の説明に従って示されている。図4の顕微鏡写真は、本発明に係る乾式被覆プロセスを用いて得られた典型的な結果を表す。目で見る目安として、被覆層が各前駆体粒子の全外表面を完全に覆うこと示すのに役立つ2つのラインを追加した。わかるように、被覆層は、比較的緻密であるので、比較的低い多孔度を有する。
【0039】
被覆層は、平均では前駆体粒子のサイズに依存しなくてもよい。被覆層の厚さが粒子サイズと共に変化しない場合(図4に示されるとおり)、より大きい粒子ほど典型的にはよ
り低いアルミニウム化学量論比を有するので、組成依存性が予想されうる。より小さい粒子がより大きい粒子よりも高いアルミニウム含有率を有するそのような組成依存性は、とくにより小さい前駆体粒子がその比較的低い熱安定性に起因して安全性の問題をもたらすので、かつアルミニウムが有機電解液中で前駆体の熱安定性を増加させるので、アルミニウムドープ前駆体の場合には望ましい。これを確認するために、分画実験により粉末を異なるサイズ画分に分けて、レーザー回折により調べた。そのような分画実験では、水中に浸漬されたアルミニウム被覆前駆体粉末の低速層流を用いて、異なるサイズ画分に分けた。図5からわかるように、アルミニウム被覆前駆体のサイズ依存性組成は、実施例1の説明に従った第2のアルミニウム被覆手順後(10mol%アルミニウム)のMOOH前駆体の異なるサイズ画分のICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)分析により、および表1に表示されたデータにより、確認された。より小さい粒子は、より大きい粒子よりもかなり高いアルミニウム濃度を有する。粒子中のアルミニウム濃度は、被覆前駆体粒子のサイズ(PSDのD50)が約5μmから約16μmに増加するにつれて、約12mol%から約6mol%に減少する(表1も参照されたい)。
【0040】
【表1】
【0041】
次に、図6を参照すると、第1のアルミニウム被覆手順後(5mol%アルミニウム)のM(OH)2前駆体の異なるサイズ画分のICP−MSにより得られた金属化学量論比
を示す図が、実施例2の説明に従って示されている。データは、図5に記載のものと類似のサイズ分画サンプルのICP分析により得られた。見てわかるように、アルミニウム含有率は、被覆前駆体粒子のサイズの増大に伴って減少した。
【0042】
さらに、アルミニウム前駆体からカソード材料を調製するために、アルミニウムは、被覆層の形態で、たとえば、本発明の一実施形態に係るアルミニウム乾式被覆プロセスにより達成される被覆層の形態で、存在することが不可欠でありうる。反例として、数質量%超のアルミナが使用され、かつアルミナが被覆層として存在せずに、混合物中の個別の粒子として存在する場合、すべてのアルミナが活物質と接触するとは限らず、粉末を焼結した後、不十分に被覆された活物質と残留アルミナとの混合物が達成される。したがって、アルミニウム前駆体と遷移金属前駆体とリチウム塩とのブレンドを加熱するなどの単純な固相反応では、きわめて不活性な相であるAl23(コランダム)が比較的低い温度で生成するので、過剰の焼結を適用せずに良好にドープされた最終リチウム化生成物を得ることはできない。コランダムは、リチウム遷移金属酸化物との反応が比較的遅く、したがって、過度の高温または過度に長い焼結を適用した場合に限り、良好にドープされたカソード材料が達成されうる。しかしながら、そのようなリチウム化材料は、典型的には、過剰焼結される。このことは、典型的には劣る性能の原因となる比較的大きい結晶子サイズにより示唆される。アルミナ含有率が高いほど、この問題は顕在化する。したがって、アル
ミニウムのより高いドーピングレベルを適用するには、良好な被覆が必要である。Al2
3が、被覆層の形態で、たとえば、本発明の一実施形態に係る上記で説明したアルミニ
ウム乾式被覆プロセスで取得可能な被覆層の形態で、前駆体粒子と良好に接触する場合、比較的高いAlドーピングレベルおよび高い結晶性を有するアルミニウム被覆リチウム遷移金属を比較的低い温度で取得してもよいことが、実験により示された。
【0043】
実施例3
他の実施例では、本発明は、望ましくない不純物を低減させる、アルミナ被覆された遷移金属酸化物MO2前駆体、遷移金属水酸化物M(OH)2前駆体、または遷移金属オキシ水酸化物MOOH前駆体の熱処理を提供する。アルミニウム乾式被覆前駆体の一用途は、LiNi0.8Co0.15Al0.052などの高ニッケルカソード材料の調製である。そのようなカソードの調製の主な問題は、いくらかの炭酸イオンが混合金属前駆体中に通常存在するので、炭酸イオンによる汚染である。他の問題は、前駆体製造プロセスに由来することが多い硫酸イオン不純物である。さらに、硫酸イオンおよび炭酸イオンは、MOOHなどの非リチウム化前駆体中よりもリチウム化生成物(カソード材料)(LiMO2)中のほ
うがかなり安定であることが観測された。その理由は、Li2SO4およびLi2CO3の熱力学的安定性がMSO4およびMCO3と比較して増大されるからである。したがって、混合金属前駆体の熱処理は、揮発性のSO4不純物およびCO3不純物を除去するのに効果的でありうる。組成Ni0.85Co0.15(OH)2を有する前駆体コア化合物は、実施例2で
説明したのと類似のヒュームドアルミナ(Al23)で乾式被覆される。乾式被覆前駆体の組成は、Ni0.85Co0.15(OH)2*0.05AlO1.5である。アルミニウム乾式被覆前駆体は、空気中で400、600、800、または900℃に加熱され、それにより、コアは、被覆酸化物に変換される。熱処理として、5時間および10時間の持続時間が選択される。熱処理後、熱処理された前駆体の硫酸イオン含有率は、ICPにより測定され、炭素含有率は、2つの異なる装置を用いて炭素硫黄分析により測定される。結果を表2にまとめる。
【0044】
【表2】
【0045】
明らかに、T>400℃でNi(OH)2系(または被覆)前駆体を前処理することに
より、炭酸イオン不純物が低減され、T≧600℃で比較的低い値に達して炭素含有率が200ppm未満になる。硫酸イオン含有率は、700乃至800℃超の温度で劇的に減少する。重量損失は、Ni(OH)2が分解してNiOを形成することに一致する。X線
分析では、アルミニウム含有相に起因する比較的小さいピークを無視すれば、≧400℃で作製されたすべてのサンプルが基本的には単相のNiOであることが示される。
【0046】
したがって、前駆体を400℃以上で熱処理した場合、前駆体粒子のコアは、遷移金属酸化物である。中温(400℃)では、コアは、依然として、結晶性アルミナナノ粒子を含有する非アモルファス被覆層の残存物により覆われる。より高い温度では、Alの一部がコア中に拡散するが、被覆は残存する。800℃超では、Alはすべて、コア中に拡散した状態になるであろう。
【0047】
次に、図7を参照すると、アルミナ被覆Ni(OH)2系前駆体の回折パターン(カウ
ント数毎秒単位の強度が散乱角に対して与えられている)の進展を熱処理温度の関数として示す図が、本発明の一実施形態に従っておよび実施例2の説明に従って示されている。下端の回折パターンは、Al被覆を有しておらず、その次は、Al被覆を有するが温度処理されておらず、次いで、上の4つのパターンは、処理温度を400℃から900℃に上昇させたものである。すべての温度で、単相を観測可能である。600℃のサンプルでは、比較的小さい追加のピークを観測可能であり(図7の上端から3つ目のパターン)、400℃ではまだ見られなかったアルミニウム含有相の痕跡に帰属することができる。それは、高分解能X線では見えるであろう(たとえば、走査時間を増加させた場合)。600℃でのこの出現に対する1つの可能な説明は、アルミニウム含有相の結晶性が温度の上昇に伴って増加してピークが見えるようになることである。さらに高い約800℃の温度では、おそらくNi−Co−Al固溶体が形成されるため、第2の相は消失した。主な相のX線回折パターンは、単相Ni(OH)2(熱処理されていない)または単相NiO(熱
処理されている)として表すことができる。明らかに、より高い温度では、コバルトさらにはアルミニウムは、固溶体を形成する。
【0048】
さらに、表2からわかるように、組成Ni0.85Co0.15(OH)2を有するアルミニウ
ム乾式被覆前駆体のモルフォロジーの変化が熱処理時に起こる。比較的高い温度では、モルフォロジーは、スパングル様である。BET表面積は、約400℃で顕著な最大を有する。これは、メソ多孔性マイクロ構造の形成により引き起こされうる。また、色は、緑色から黒色を経て緑色に変化する。
【0049】
以下では、アルミニウム乾式被覆および熱処理が施された前駆体複合物から高品質のニッケル系カソード材料を取得可能であることを示す。高品質は、電池製造業者により課される要件に関連する。それは、単に「良好な電気化学的性能」だけを意味するものではない。電気化学的性能は、多くの性能パラメーターの1つであるにすぎない。そのほかに、製造業者は、低い炭酸イオン含有率または硫黄含有率を要求しうる。典型的には、電気化学的性能のごくわずかな劣化は、不純物レベルを低減できれば、許容されることもある。上記で説明したのと同様に、組成Ni0.85Co0.15(OH)2を有する前駆体コア化合物
は、実施例2で説明したのと類似のヒュームドアルミナ(Al23)で乾式被覆される。乾式被覆前駆体の組成は、Ni0.85Co0.15(OH)2*0.05AlO1.5である。アルミニウム乾式被覆前駆体は、空気中で400、600、800、または900℃で熱処理される。熱処理として、5時間および10時間の持続時間が選択される。最終リチウム化生成物のカソード材料を得るために、アルミニウム乾式被覆および熱処理が施された前駆体は、ミル処理されたLiOH*H2Oと混合され、酸素流動中、750℃で10時間焼
成される。焼結プロセスは、700℃乃至1200℃の温度範囲内であってもよく、空気流動中でも実施することができる。焼結プロセスに続いて、リチウム化材料の電気化学的性質を以下の手順に従って決定する。
【0050】
コイン電池の作製:
最初に、NMP中の活性カソード材料、スーパー ピー(super P)(炭素導電性添加剤)、およびPVDF(バインダー)のスラリーを調製した。活性材:炭素:PVDFの比は、90:5:5であった。スラリーをドクターブレードコーターによりアルミニウム箔シート上に被覆した。空気中120℃で乾燥後、電極をロールプレスし、続いて
、電極ディスクをパンチングした。減圧下90℃で電極をさらに乾燥させた後、グローブボックス内でLi金属アノードを有するコイン電池を組み立てた。
【0051】
コイン電池を以下のように試験した。
1)電圧プロファイルを4.3Vと3.0Vの間でC/10レートで取得する。(1Cレートは、160mA/gの電流に対応する)
2)放電速度性能(C/5 C2、1C、2C、3C)をサイクル2乃至6で測定する。充電速度はC/4である。
3)サイクル7および8では、4.5Vと3.0Vの間でそれぞれC/10およびC/1で放電容量を測定する。
4)サイクル9からサイクル30までは、電池を4.5Vと3.0Vの間でサイクル処理する。充電速度はC/4であり、放電速度はC/2である。
5)サイクル31およびサイクル32では、4.5Vと3.0Vの間でそれぞれC/10および1Cレートで残存可逆容量を再測定する。
【0052】
サイクル2乃至6の放電容量とサイクル1の放電容量との比を比較することにより、速度性能を計算する。サイクル31と6さらにはサイクル32と7の残存可逆容量を比較することにより、フェージング速度を取得する。フェージング速度は、100サイクルあたりの容量損失として表される。
【0053】
電気化学的試験の結果を表3に示し、X線データのRietveld解析の結果を表4にまとめる。
【0054】
【表3】
【0055】
見てわかるように、約400乃至600℃の中温領域で熱処理を行った場合、低減された炭素不純物、高容量、良好なサイクル安定性、または改良された速度により示される最良の結果を達成し得る。したがって、最終生成物の電気化学的性能を犠牲にせずに、前駆体の炭酸イオン不純物を低減することが可能である。温度がより高い場合、低減されたサイクル安定性およびより低い容量が得られるが、低減された硫黄不純物レベルもまた得られる。より高い熱処理温度での性能がより劣る理由の1つは、より低い結晶性であろう。X線データのリートフェルト(Rietveld)精密化処理により(表4)、T>600℃では歪みは有意に増加するが、結晶子サイズは減少することが示される。
【0056】
【表4】
【0057】
実施例4
ニッケル系カソード材料では熱処理前駆体複合物をうまく適用できることが以上で実証されたが、このことは常にあてはまるとは限らない。熱処理前駆体が結晶性共存相に分解した場合、結晶性最終Li−M−O2カソード材料を形成する反応は、非常に遅く、最終
リチウム化カソード材料は、劣る性能を有する。たとえば、Ni0.5Mn0.3Co0.22前駆体で熱処理温度が400℃を超えた場合、2つの主要な相、すなわち、NiO相およびM34スピネル相への分解が観測可能であり、温度が600℃を超えた場合、結晶相混合物は、高性能の生成物を達成できない。
【0058】
本発明の一実施形態に係るコイン電池試験の結果を表5に示す。より高い処理温度の場合、前加熱前駆体は、図8に示されるように、結晶性のNiOおよびM34スピネルの相混合物である。それにもかかわらず、処理温度<600℃の場合、優れた電気化学的性能を熱処理前駆体から達成することが可能である。おそらく、より高い温度では、良好な性能を達成できない程度まで、相分離が進行したのであろう。明らかに、500℃では、結晶子サイズ(ドメインサイズ)は、高結晶性カソードの形成を可能にするのに十分な程度に小さいが、700℃では、より大きいドメインサイズにより、高結晶性最終カソードが抑制された。図8は、700℃で熱処理された前駆体のリートフェルト(Rietveld)精密化処理を示している。X線回折パターンは、NiOとM34スピネルとの混合物により良好にあてはまる。細い実線(回折パターンのすぐ下)は、NiO(精密化処理によれば17質量%)のパターンを示している。その結果、最終LiMO2への反応は、困
難であり、最終LiMO2は、劣る結晶性、高い歪み、および劣る電気化学的性能を示す
。表5で明確にわかるように、可逆容量さらには速度性能は、より高い処理温度で劇的に劣化する。
【0059】
【表5】
【0060】
高温での前駆体処理では、典型的には500乃至600℃が、炭酸イオン不純物を効果的に除去するのに十分な程度に高いことが示された。熱処理時、金属前駆体は、表5に見られるように相分解しうる。高すぎる温度では、相分解が進行して(より大きい個別の結晶子を形成して)、問題を引き起こす。この場合、劣る性能のカソードが達成される。しかしながら、より低い温度では、相分解は、それほど進行せず、より小さいスケールで起こり、小さい結晶子は、十分に反応性であるので、得られるカソードは、高結晶性を有し、良好な性能を示す。酸化物を形成しかつ炭酸イオンを放出するのに十分な程度に強いが、同時に、大きい結晶子への完全相分離を回避するのに十分な程度に弱い、熱処理条件を選択することにより、常に炭酸イオン不純物を効率的に除去可能であると考えられる。
【0061】
表2に示される乾式被覆および熱処理が施されたNi0.85Co0.15(OH)2前駆体の
不純物含有率と、表3、4、および5にまとめられた最終リチウム化カソード材料の電気化学的性能と、を比較することにより、一般に、硫黄および炭素の含有率を有意に低減させるのに十分な程度に高い処理温度は、最終リチウム化カソード材料の良好な電気化学的性能を達成するには高すぎることが示される。その結果、Ni含有率が比較的小さいかまたは前駆体複合物がマンガンを含まない場合に限り、硫黄および炭素の不純物を有意に低減させるのに十分な程度に高く(>700℃)、かつ最終リチウム化カソード材料の良好な電気化学的性能を達成するのに高すぎない、熱処理温度を見いだしうる。しかしながら、ほとんどすべての場合、最終カソードの電気化学的性能を犠牲にせずに、熱処理により炭素不純物を低減させることが可能であろう。
【0062】
さらに、本発明の有利な実施形態に係るアルミニウム乾式被覆された粒子状の混合遷移金属酸化物MO2前駆体、混合遷移金属水酸化物M(OH)2前駆体、または混合遷移金属オキシ水酸化物MOOH前駆体は、基本的に結晶水を含まない公知の先行技術の前駆体とは正反対である。例として、水酸化物前駆体は、1molの結晶水を有する酸化物として説明可能である。
(M(OH)2=MO+H2O)
したがって、水酸化物M(OH)2は、多量の水を発生し、酸素を必要とする。
M(OH)2+1/2Li2CO3+1/4O2→LiMO2+1/2CO2+H2
所要の大流量のガス(サンプルへの酸素、サンプルから離れるCO2およびH2O)の操作は、大スケールでは問題である。理想的な反応では、三価金属酸化物が使用されるであろう。
1/2M23+1/2Li2CO3→LiMO2+1/2CO2
【0063】
この反応は、ガス(1/4molのO2の代わりに)を必要とせず、また、かなり少な
いガス(1.5molの代わりに1/2mol)を発生する。このようにして、ガス流量操作を劇的に単純化することが可能である。したがって、本発明に係るアルミニウム乾式被覆および熱処理が施された前駆体は、大スケールの製造時にかなり少ないガス流量を必要とするという利点を有する。このことは、炉内の処理能力を増加させて製造コストを劇的に削減しうること意味する。
【0064】
実施例5
最後に、本発明の上記で説明した実施形態に係る前駆体の熱処理は、原理的には、高ニッケル系前駆体に限定されうるものではなく、さまざまな組成を有する前駆体、たとえば、ニッケルマンガンコバルト(NMC)混合水酸化物前駆体などにも適用することができる。NMC前駆体の場合、炭素不純物は、最終リチウム化生成物の調製時に容易に分解されるので、それほど関心の対象とならない。したがって、この材料では、前駆体中さらには最終リチウム化生成物中の硫黄不純物に重点が置かれうる。
【0065】
たとえば、組成MOOH〔式中、M=Ni0.5Mn0.3Co0.2〕を有する混合金属水酸化物前駆体は、空気中で300、500、700、800、または900℃で10時間熱処理される。前駆体は、アルミニウム乾式被覆されない。リチウム化生成物は、LiM=1.027の化学量論比(Li前駆体:LiCO)を用いて調製され、空気中940℃で10時間焼結される。表6は、熱処理温度の関数として前駆体および最終リチウム化生成物の熱処理後の硫黄含有率を示している。わかるように、前駆体の熱処理は、硫黄含有率を有意に低減させる。さらに、熱処理後の前駆体中に存在する硫黄のほとんどは、最終リチウム化生成物を調製する焼結プロセス時に維持されることが観測されえた。硫黄は、通常の固溶体中に不純物として残存し、前駆体熱処理は、比較的低い硫黄含有率を有する最終リチウム化生成物の取得に不可欠であると結論付けられうる。本実施例では、最終電気化学的性能は、劣化するが、低不純物が必要とされる場合、電池製造業者は、特定の劣化を容認することもありうる。また、当然ながら、異なる組成または変更されたプロセス条件では、劣化は、かなり少ないであろう。
【0066】
炭酸イオンと比較して、硫酸イオン不純物の除去は、一般に、より高い温度を必要とする。より高い温度では、混合酸化物が熱力学的に安定でない場合、相分離は、さらに大きく進行し、大きな相分離結晶子を形成するであろう。したがって、大きな相分離結晶子は、比較的不活性であり、クッキング(混合酸化物とリチウム源との反応)の結果、劣る性能のカソードがもたらされるであろうから、硫黄の除去は、常に可能であるとは限らない。したがって、実用上、硫黄の除去は、単相酸化物を生成する組成物に限定されるであろう。クッキング時、単相酸化物とリチウム源は、高品質カソードの取得を可能にする。たとえば、単相コバルト酸化物が生成するので、硫黄をCo(OH)2から除去することが
可能である。したがって、硫黄の効果的な除去の条件は、混合酸化物が存在するということである。詳細には触れないが、多種多様な単相混合一酸化物MOを調製することが可能である。他の選択肢では、多種多様な混合スピネル相が存在する。最後に、たとえばNiMnO3のような特別な組成物は、興味深い。
【0067】
【表6】
【0068】
結論
本発明は、乾式被覆プロセス時にアルミニウムで被覆された粒子状の混合遷移金属水酸化物M(OH)2前駆体または混合遷移金属オキシ水酸化物MOOH前駆体を提供すると
結論付けることが可能である。得られるアルミニウム乾式被覆前駆体は、たとえば、再充電可能なリチウム電池およびリチウムイオン電池のカソード材料の調製に好適である。アルミニウム乾式被覆プロセスを提供することにより、公知の先行技術と比較してアルミニウムのより高いドーピングレベルを達成することができる。被覆手順時、ヒュームドアルミナの結晶構造を維持してもよく、結晶性アルミナナノ粒子を含有する被覆層で各混合遷移金属前駆体粒子のコアを取り囲んでもよい。したがって、本発明に係るアルミニウム乾式被覆前駆体のモルフォロジーは、公知の先行技術の前駆体と比較して改良される。
【0069】
アルミニウム乾式被覆プロセスと組み合わせうる混合金属前駆体の熱処理プロセスを提供することにより、高品質のニッケル系カソード材料を形成すべく使用可能な新規なアルミニウム含有前駆体が得られる。アルミニウム乾式被覆および熱処理が施された前駆体は、非アモルファス酸化アルミニウム被覆層により覆われた遷移金属酸化物コアを有する粒子を含み、先行技術の前駆体と比較して、炭酸イオンおよび/または硫酸イオンの比較的低い不純物レベルを有し、かつより低コストで生成可能である。
【0070】
本発明は、他の選択肢として、以下の項目により記述可能である。
【0071】
1.リチウムイオン電池中の活性正極材料として使用可能なアルミニウム被覆リチウム遷移金属(M)酸化物粉末を製造するための粒子状前駆体複合物であって、前記前駆体複合物の各粒子が、
遷移金属(M)酸化物コアと、
前記コアを覆う非アモルファス酸化アルミニウムAl23被覆層と、
を含む、粒子状前駆体複合物。
【0072】
2.前記前駆体複合物が、一般式(M酸化物)(Al〔式中、a+(2×b)=1〕を有すこと、かつ前記遷移金属(M)が、NiMnCo〔式中、0.3≦x≦0.9、0≦y≦0.45、かつ0<z≦0.4、x+y+z=1〕であり、前記遷移金属(M)が、不可避不純物のみをさらに含むことを特徴とする、項目1に記載の前駆体複合物。
【0073】
3.b≦0.4である、項目2に記載の前駆体複合物。
【0074】
4.y=0である、項目2に記載の前駆体複合物。
【0075】
5.前記被覆層が結晶性アルミナナノ粒子を含有する、項目1に記載の前駆体複合物。
【0076】
6.前記前駆体複合物の炭素含有率が、約400℃超から約600℃以上の比較的低い値に及ぶ温度での前記前駆体複合物の熱処理により低減され、かつ前記前駆体複合物の硫酸イオン含有率が、約700℃以上の温度での前記前駆体の熱処理により低減される、項目1に記載の前駆体複合物。
【0077】
7.前記硫酸イオン含有率が約0.3質量%未満である、項目6に記載の前駆体複合物。
【0078】
8.前駆体複合物が基本的に結晶水を含まないことを特徴とする、項目1に記載の前駆体複合物。
【0079】
9.前記被覆層中の前記アルミニウム濃度が前記コアのサイズの増加に伴って減少する、項目1に記載の前駆体複合物。
【0080】
10.リチウムイオン電池中の活性正極材料として使用可能なアルミニウム被覆リチウム遷移金属(M)酸化物粉末を製造するための粒子状前駆体複合物を調製する方法であって、
体積V1を有する第1の量のアルミナ粉末を提供する工程と、
体積V2を有する第1の量の遷移金属(M)酸化物粉末、遷移金属(M)水酸化物粉末、または遷移金属(M)オキシ水酸化物粉末を前記粒子状前駆体として提供する工程と、
V1+V2=Vとして、前記第1の量のアルミナ粉末を、前記第1の量の遷移金属(M)酸化物、遷移金属(M)水酸化物、または遷移金属(M)オキシ水酸化物と、第1の乾式被覆手順で、混合する工程と、
前記体積Vが、V1とほぼ同一の値を有するV3に減少するまで混合を継続することにより、遷移金属(M)酸化物コア、遷移金属(M)水酸化物コア、または遷移金属(M)オキシ水酸化物コアを、非アモルファス酸化アルミニウムAl23被覆層で覆う工程と、
前記被覆層により覆われた前記コアを約400乃至800℃の範囲内の温度で熱処理する工程と、
を含む、方法。
【0081】
11.前記熱処理工程が約400乃至600℃の範囲内の温度で行われる、項目10に記載の方法。
【0082】
12.前記被覆層により覆われた前記コアを5時間または10時間の持続時間にわたり前記温度で熱処理する工程をさらに含む、項目10に記載の方法。
【0083】
13.前記前駆体複合物の炭素含有率および硫酸イオン含有率を低減させる工程をさらに含む、項目10に記載の方法。
【0084】
14.アルミニウム乾式被覆前駆体複合物を取得する工程をさらに含み、前記コアが遷移金属酸化物であり、かつ前記コアが前記非アモルファス被覆層により完全に覆われる、項目10に記載の方法。
【0085】
15.前記粒子状前駆体をリチウム前駆体化合物と混合し、かつその混合物を焼結する
工程をさらに含む、項目10に記載の方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1637503A1号明細書
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