(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クリーンルーム内の天井側に配設された走行レールに沿って走行自在な天井搬送車に対して空気を噴出させて前記天井搬送車を清掃する清掃手段を備えた天井搬送車の清掃装置であって、
外部空間から遮蔽された遮蔽空間を形成する区画体が設けられ、
前記区画体は、前記天井搬送車が走行移動により前記遮蔽空間に進入自在に構成され、
前記清掃手段は、前記遮蔽空間において走行停止状態の前記天井搬送車に対して清掃作動し、
前記走行レール上を走行する前記天井搬送車が進入自在な筐体を備えて、前記天井搬送車を床側に離脱させる昇降機構を前記筐体内に備えたメンテナンス用の昇降装置が設けられ、
前記遮蔽空間が、前記区画体としての前記筐体により形成され、
前記清掃手段が前記筐体内に設けられている天井搬送車の清掃装置。
前記遮蔽空間内の空気を吸入して吸入空気を前記遮蔽空間外に排出するファンとこの排出空気を浄化するフィルタとを備えるファンフィルタユニットが、前記区画体に備えられている請求項1記載の天井搬送車の清掃装置。
前記走行レール上を走行する前記天井搬送車が進入自在な筐体を備えて、前記天井搬送車を床側に離脱させる昇降機構を前記筐体内に備えたメンテナンス用の昇降装置が設けられ、
前記遮蔽空間が、前記区画体としての前記筐体により形成され、
前記清掃手段が前記筐体内に設けられている請求項1〜4のいずれか1項記載の天井搬送車の清掃装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成であると、天井搬送車は、清掃装置が清掃作動する間に走行経路に沿って走行移動することになるので、清掃に伴い発生する塵埃がクリーンルーム内に飛散することを防止することができる。また、そのためには、遮蔽空間を形成する区画体を清掃中に走行移動する天井搬送車の走行移動量に応じた長さの長いものにて構成する必要があり、清掃装置の構成が大掛かりとなる。また、クリーンルームでは高度の空間使用効率が要求されるが、上記従来構成では、区画体を設置するために走行経路における長い部分を占有することになるため好ましくない。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、クリーンルームでの設置が有利な天井搬送車の清掃装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る天井搬送車の清掃装置の第1特徴構成は、
クリーンルーム内において移動経路に沿って配設された走行レールに沿って走行自在な天井搬送車に対して空気を噴出させて前記天井搬送車を清掃する清掃手段を備えた天井搬送車の清掃装置であって、
外部空間から遮蔽された遮蔽空間を形成する区画体が設けられ、
前記区画体は、前記天井搬送車が走行移動により前記遮蔽空間に進入自在に構成され、
前記清掃手段は、前記遮蔽空間において走行停止状態の前記天井搬送車に対して清掃作動
し、
前記走行レール上を走行する前記天井搬送車が進入自在な筐体を備えて、前記天井搬送車を床側に離脱させる昇降機構を前記筐体内に備えたメンテナンス用の昇降装置が設けられ、
前記遮蔽空間が、前記区画体としての前記筐体により形成され、
前記清掃手段が前記筐体内に設けられている点にある。
【0007】
本特徴構成によれば、天井搬送車は、区画体にて形成された遮蔽空間に走行移動により進入した後、遮蔽空間内に停止することで、清掃手段が天井搬送車を清掃することができる。天井搬送車は清掃手段にて清掃される間は、遮蔽空間内に停止しているので、遮蔽空間としては、天井搬送車を包囲する程度の大きさで済む。そのため、区画体の走行方向における長さは、天井搬送車の大きさに相当する程度のコンパクトなもので済み、クリーンルームにおける設置が有利となる。
このように、第1特徴構成によると、クリーンルームでの設置が有利な天井搬送車の清掃装置を提供する。
また、本特徴構成によれば、天井搬送設備に設置されたメンテナンス用の昇降装置の筐体内で天井搬送車の清掃を行うことができるため、メンテナンス用の昇降装置が占有しているクリーンルームにおける床面部分に対応する空間領域を有効に活用できる。
【0008】
本発明に係る天井搬送車の清掃装置の第2特徴構成は、
前記遮蔽空間内の空気を吸入して吸入空気を前記遮蔽空間外に排出するファンとこの排出空気を浄化するフィルタとを備えるファンフィルタユニットが、前記区画体に備えられている点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、清掃手段から空気が噴出されて天井搬送車が清掃されるに伴って天井搬送車に堆積していた塵埃が吹き飛ばされて、遮蔽区間に浮遊することになる。こうして天井搬送車の清掃に伴って発生する塵埃を含む空気は、ファンフィルタユニットのファンにより吸入され排出空気として排出される。その排出空気は、ファンフィルタユニットのフィルタにより浄化され塵埃が除去されることになる。
このように、ファンとフィルタとがユニット化されたファンフィルタユニットを区画体に備える簡素な構成により、天井搬送車の清掃に伴って発生する塵埃が遮蔽空間の外部に飛散することを防止できる。したがって、クリーンルームの汚染防止を図りつつ構成の複雑化を抑制することができる。
【0010】
本発明に係る天井搬送車の清掃装置の第3特徴構成は、
前記区画体に、前記天井搬送車が前記遮蔽空間に進入する進入口と前記天井搬送車が前記遮蔽空間から退出する退出口が設けられ、
前記進入口を開放する開状態と閉鎖する閉状態とに切り換え自在な進入口開閉手段と、前記退出口を開放する開状態と閉鎖する閉状態とに切り換え自在な退出口開閉手段と、前記進入口開閉手段及び前記退出口開閉手段の開閉作動並びに前記清掃手段の清掃作動を制御する制御手段と、前記遮蔽空間における塵埃の濃度を計測する塵埃濃度計測手段とが設けられ、
前記制御手段が、前記天井搬送車が前記遮蔽空間に停止した状態で前記進入口開閉手段及び前記退出口開閉手段を前記閉状態とするべく、前記進入口開閉手段及び前記退出口開閉手段の作動を制御し、その後、前記清掃手段の清掃作動を開始させた後、前記塵埃濃度計測手段の計測情報に基づいて、前記遮蔽空間における塵埃の濃度が設定塵埃濃度まで低下すると前記清掃手段の清掃作動を終了させるべく、前記清掃手段の作動を制御するように構成されている点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、天井搬送車が遮蔽空間に停止した状態で進入口開閉手段及び退出口開閉手段が閉状態となった後に、清掃手段の清掃作動が開始される。そして、清掃手段による天井搬送車の清掃により発生する塵埃は、ファンフィルタユニットにより浄化されて遮蔽空間から排出される。こうして天井搬送車の清掃が進行すると、遮蔽空間における塵埃の濃度は徐々に低下することになる。
制御手段は、塵埃濃度検出手段の検出情報に基づいて、遮蔽空間における塵埃の濃度が設定塵埃濃度まで低下すると清掃手段の清掃作動を終了させるので、設定塵埃濃度として天井搬送車に堆積していた塵埃が所望の状態まで清掃できた場合の塵埃濃度を予め設定しておくことで、天井搬送車を所望の状態まで清掃できた段階で清掃手段の作動を停止させることができる。
本特徴構成によると、天井搬送車が所望の清掃状態になるまで確実に清掃手段を作動させることができ、しかも、清掃のために必要以上に天井搬送車を遮蔽空間に停止させて拘束することを防止できる。
なお、清掃手段の作動を停止させた後又は同時若しくは停止させる直前に退出口開閉手段を開状態とすることで、清掃が完了した天井搬送車は遮蔽空間から外部に走行移動して退出することができる。なお、天井搬送車が退出した後は、進入口開閉手段を開状態にし、退出口開閉手段を閉状態にした待機用開閉状態にて、次の天井搬送車の進入を待機するようにしてもよい。ちなみに、走行経路の端部に清掃装置を設ける場合は、進入口開閉手段及び退出口開閉手段は兼用されることになる。
【0012】
本発明に係る天井搬送車の清掃装置の第4特徴構成は、
前記清掃手段が、空気を噴出自在なノズルを、噴出対象箇所を変更自在な状態で複数備えて構成されている点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、清掃手段が備える噴出ノズルは、噴出対象箇所を変更自在であり、しかも、複数設けられているので、清掃手段は、天井搬送車の複数の箇所に対して噴出箇所を変更させながら清掃作動をすることができる。したがって、複数の噴出ノズルを適切に配置して、それらの噴出ノズルの噴出対象箇所を変化させて、天井搬送車に空気を噴出することで、天井搬送車における清掃が必要な箇所の全てに対応して噴出ノズルを各別に設けなくても、天井搬送車における清掃が必要な箇所を適切に清掃できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る天井搬送車の清掃装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、複数の物品処理部1を経由するように設定された設定移動経路に沿って、天井搬送車走行用の走行レール2が天井側に設置されており、設定移動経路に沿って走行する天井搬送車3が走行レール2に案内支持される状態に設けられている。
そして、天井搬送車3は、図外の物品搬入箇所から物品処理部1、物品処理部1から他の物品処理部1、及び、物品処理部1から図外の物品搬出箇所に物品を搬送するように構成されている。上記走行レール2は、クリーンルーム内に設置されており、天井搬送車3は、半導体を複数枚収納自在な基板収納容器を搬送対象物として搬送する
【0018】
天井搬送車3の走行部4には、走行レール2の上面を転動する走行車輪5aと走行レール2の横側面を転動する案内車輪5bとが設けられており、走行車輪5aが走行用モータM1にて回転駆動されることによって、天井搬送車3が走行レール2に案内されながら設定移動経路に沿って走行するように構成されている。
【0019】
また、天井搬送車3には、物品を把持するとともに走行部4に対して昇降移動する昇降部6が備えられている。昇降部6は、昇降用モータM2(
図5(b)参照)にて回転ドラム(図示せず)を正逆方向に回転駆動させてワイヤを巻き取り及び繰り出し操作することにより昇降移動するように構成されている。
【0020】
昇降部6は、先端側が互いに遠近移動するように基端側を揺動自在に連結されて基板収納容器が上部に備えるフランジを把持自在な一対の把持具7とを備えている。一対の把持具7は、把持用モータM3にて先端部が互いに近接して物品を把持する把持姿勢や先端部が互いに離間して物品の把持を解除する解除姿勢に切り換え操作されるように構成されている。
【0021】
天井搬送車3は上記構成により、物品処理部1の載置台(図示せず)に載置されている基板収納容器を受け取る場合は、基板収納容器を支持していない空荷状態の天井搬送車3を物品処理部1に対応する目標停止位置に停止させた状態において、一対の把持具7にて基板収納容器を把持できる高さまで昇降部6を下降移動させた後、一対の把持具7を解除姿勢から把持姿勢に切り換えて載置台に載置されている基板収納容器のフランジを把持し、その後、昇降部6を上昇移動させる。
また、物品処理部1の載置台に基板収納容器を受け渡す場合は、基板収納容器を支持している実荷状態の天井搬送車3を物品処理部1に対応する目標停止位置に停止させた状態において、基板収納容器が載置台に載置支持されるまで昇降部6を下降移動させた後、一対の把持具7を把持姿勢から解除姿勢に切り換えて基板収納容器に対する把持を解除し、その後、昇降部6を上昇移動させる。
【0022】
天井搬送車3による基板収納容器の搬送作動は、上位のホストコントローラH3から指令される搬送指令に基づいて、天井搬送車コントローラH2(
図5(b)参照)により制御される。天井搬送車コントローラH2は、例えば天井搬送車コントローラH2に接続自在な端末装置にて構成される手動運転用指令手段D(
図5(b)参照)からの手動運転指令に基づいて、天井搬送車3を天井搬送車抜き取り箇所Aまで走行させるメンテナンス用運転制御を実行自在に構成されている。
【0023】
図1に示すように、上記設定移動経路における環状の移動経路から分岐された移動経路に天井搬送車抜き取り箇所Aが定められており、その天井搬送車抜き取り箇所Aに走行レール昇降装置8が設置されている。
そして、
図2に示すように、走行レール昇降装置8には、走行レール2における天井搬送車抜き取り箇所Aに対応する走行レール部分2aが、天井搬送車3を支持した状態で前記走行レール2における走行レール本体2bと連なる搬送車走行用高さ(
図2参照)と床面側に下降させた搬送車取出し用高さとに昇降移動自在に設けられている。これにより、天井搬送車抜き取り箇所Aまで走行した天井搬送車3をメンテナンスのために床側に取り出すことができるようになっている。つまり、走行レール昇降装置8は、天井搬送車3を床側に離脱させる昇降機構を備えたメンテナンス用の昇降装置として機能する。
【0024】
走行レール部分2aは昇降体9に支持されており、昇降体9は複数のフレーム材を縦横に組み付けた枠体にて構成されている。そして、走行レール昇降装置8は、パンタグラフ式の昇降機構10にて昇降体9を昇降操作することで、走行レール部分2aを搬送車走行用高さと搬送車取出し用高さとに昇降移動させることができるようになっている。ちなみに、
図2に示すように、走行レール本体2bは支持ブラケット11を介して天井に連結支持されているが、走行レール2における天井搬送車抜き取り箇所Aに対応する走行レール部分2aは、昇降体9における頂部に支持ブラケット11を介して連結支持されている。
【0025】
昇降体9の下端部には、縦軸芯周りに回転する電動式の送風ファンと、その送風ファンの上方を覆う板状の除塵フィルタとを一体的に組み付けて構成されたファンフィルタユニット12が、天井搬送車3の車体横幅方向に2台並設されている。これらのファンフィルタユニット12は、天井搬送車3を清掃する際に作動し、天井搬送車3が位置する清掃空間Z2内の空気を浄化して外部空間Z1に排出する。
【0026】
昇降体9及びパンタグラフ式の昇降機構10は、縦支柱及び水平フレームにて枠組みされて上面パネル13T及び側面パネル13Sを備えた箱状の筐体14の内部に配設されている。図示は省略するが、筐体14の外側面には、作業者が指令操作する昇降指令スイッチが設けられており、この昇降指令スイッチによる上昇指令基づいてパンタグラフ式の昇降機構10が上昇方向に伸長駆動されることで昇降体9が上昇駆動され、また、下降指令基づいてパンタグラフ式の昇降機構10が下降方向に短縮駆動されることで昇降体9が下降駆動される。
【0027】
4つの側面パネル13Sのうち走行レール本体2bに対向する側面に配設された側面パネル13Sの上部には、搬送車進入口15が形成されている。また、この搬送車進入口15が形成された側面パネル13Sと対向する面に配置された側面パネル13Sの下部には、搬送車取出口16が形成されている。
【0028】
筐体14には、搬送車進入口15を開閉自在な電動シャッター17が設けられている。電動シャッター17は、走行レール部分2aと走行レール本体2bとの間に形成された間隙の長さよりも薄い板圧の板状体からなるシャッター本体17aを縦姿勢で上下方向自在に配設して、このシャッター本体17aを開閉駆動するシャッター開閉用モータM4を備えて構成されている。これにより、電動シャッター17は、シャッター本体17aが搬送車進入口15より下方に位置して搬送車進入口15を開放する開状態と、搬送車進入口15に対応する高さに位置して搬送車進入口15を閉鎖する閉状態とに切り換え自在となっている。
【0029】
昇降体9が搬送車走行用高さに位置している状態では、電動シャッター17を閉状態とすることで、昇降体9の底部と、筐体14の上面パネル13T及び側面パネル13Sとで閉じた空間が形成され、この空間内で口述する清掃手段Cにより天井搬送車3の清掃が行われる。つまり、筐体14の上方側に位置する清掃空間Z2が遮蔽空間として機能し、ファンフィルタユニット12を備えた昇降体9の底部と、筐体14の上面パネル13T及び側面パネル13Sとが、外部空間Z1から遮蔽された遮蔽空間を形成する区画体Kとして機能する。そして、区画体Kとしての側面パネル13Sは、天井搬送車3が走行移動により遮蔽空間に進入自在に構成されている。なお、清掃空間Z2の気密性を確保するために、搬送車走行用高さに位置している昇降体9の外周部と筐体14との間を封止する封止構造を適宜用いることが好ましい。
【0030】
搬送車進入口15は、清掃対象の天井搬送車3やメンテナンス対象の天井搬送車3が走行レール昇降装置8の内部に進入する場合に通過するとともに、清掃完了後やメンテナンス完了後の天井搬送車3が走行レール昇降装置8の外部に退出する場合にも通過する。すなわち、搬送車進入口15は、進入口及び退出口を兼用しており、電動シャッター17は、進入口開閉手段及び退出口開閉手段として機能している。
【0031】
ちなみに、走行レール昇降装置8には、床面側を走行自在で、且つ、搬送車取出し用高さに下降された走行レール部分2aと同じ高さの天井搬送車乗り移り用補助レール2cを備えたメンテナンス用台車18が設けられている。これにより、昇降体9を搬送車取出し用高さに下降させた状態で、搬送車取出口16を通過させるようにして天井搬送車3を走行レール部分2aから天井搬送車乗り移り用補助レール2cに移動させて、天井搬送車3をメンテナンス用台車18の天井搬送車乗り移り用補助レール2cにて支持した状態で、メンテナンス作業を行う箇所等にメンテナンス用台車18を移動させることができるようになっている。
【0032】
図2及び
図3に示すように、昇降体9は、清掃空間Z2において天井搬送車3に対して空気を噴出させて天井搬送車3を清掃する清掃手段Cを備えている。清掃手段Cは、空気を噴出自在な複数のノズル20を噴出対象箇所を変更自在な状態で複数備えて構成されている。清掃手段Cは、清掃空間Z2において走行停止状態の天井搬送車3に対して清掃作動する。
【0033】
複数のノズル20は、天井搬送車3の前後方向に沿って並行に配置された4本の回転操作軸19の夫々に対して、軸心方向(天井搬送車3の前後方向に同じ)に分散配置される形態で一体回転自在に支持されている。4本の回転操作軸19は、上下方向及び車体幅方向に間隔を隔てる状態で昇降体9に回転自在に支持されている。昇降体9における各回転操作軸19の端部が位置する箇所には、減速機21を介して回転操作軸19を回転駆動するノズル回転用モータM5が取り付けられている。
【0034】
複数のノズル20に対しては、地上側に設けられた図示しない清掃用空気供給手段から変形自在な供給ホースを介して清掃用空気が供給される。これによりノズル20は、清掃用空気供給手段から供給を受けることができるとともに、昇降体9と一体昇降自在となっている。複数のノズル20を噴出状態と噴出停止状態とに切り換える噴出用切換弁22(
図5(a)参照)が清掃用空気供給手段から複数のノズル20に至る清掃用空気供給路の途中箇所に設けられている。
【0035】
4本の回転操作軸19のうち、上方側に配置された2本の上側回転操作軸19Uは、清掃対象の天井搬送車3の走行部4の高さよりも高い位置で近接する高さに取り付けられている。一対の上側回転操作軸19Uに設けられたノズル20から空気を噴出させた状態で、上側回転操作軸19Uを回転させることにより、走行部4に堆積した塵埃を適確に清掃できるようになっている。また、4本の回転操作軸19のうち、下方側に配置された2本の下側回転操作軸19Dは、清掃対象の天井搬送車3の昇降部6の高さよりと略同じ高さに取り付けられている。一対の下側回転操作軸19Dに設けられたノズル20から空気を噴出させた状態で、下側回転操作軸19Dを回転させることにより、昇降部6やその駆動部に堆積した塵埃を適確に清掃できるようになっている。
【0036】
なお、複数のノズル20は、清掃効果を十分なものとするために清掃対象の天井搬送車3に対して先端部が近接するように配置しているが、回転操作軸19によりいずれの姿勢に回転操作されても先端部が天井搬送車3と干渉しないような大きさ及び位置にて配設されている。
【0037】
清掃手段Cを作動させているときの清掃空間Z2における塵埃の濃度を計測する塵埃濃度計測手段としての周知のパーティクルカウンタ23が筐体14の内部に設けられている。パーティクルカウンタ23は、搬送車走行用高さに位置しているときの昇降体9より上方側で近接する高さに設けられている。これにより、清掃空間Z2の下部に位置するファンフィルタユニット12により吸引される汚染空気の通流経路途中においてその空気に含有される塵埃の濃度を計測できる。パーティクルカウンタ23の出力信号は清掃装置コントローラH1に入力される(
図5(a)参照)。
【0038】
図5(a)に示すように、清掃手段Cの清掃作動及び電動シャッター17の開閉作動を制御する制御手段としての清掃装置コントローラH1が設けられている。清掃装置コントローラH1は、清掃空間Z2にて停止状態の天井搬送車3を検出自在な搬送車検出センサ24の検出情報に基づいて、清掃空間Z2に清掃対象の天井搬送車3が停止状態で存在しているか否かを判別自在に構成されている。搬送車検出センサ24は、清掃箇所に位置している天井搬送車3、つまり、搬送車走行用高さに位置する走行レール部分2aに支持されている天井搬送車3を検出自在に構成されており、例えば、検出対象範囲に存在する検出対象体までの距離を計測自在な測距式の光センサにて構成することが好ましい。
【0039】
そして、清掃装置コントローラH1は、作業者が清掃指令スイッチ25にて清掃指令を指令すると、この清掃指令に基づいて、天井搬送車3が清掃空間Z2に停止した状態で電動シャッター17を閉状態とするべく、シャッター開閉用モータM4の作動を制御し、その後、清掃手段Cの清掃作動を開始させた後、パーティクルカウンタ23の計測情報に基づいて、清掃空間Z2における塵埃の濃度が設定塵埃濃度まで低下すると清掃手段Cの清掃作動を終了させるべく、清掃手段Cの作動を制御するように構成されている。
【0040】
以下に、作業者が手動運転用指令手段Dを指令操作して天井搬送車コントローラH2がメンテナンス用運転制御を実行することにより、天井搬送車3が天井搬送車抜き取り箇所Aまで走行した後、作業者が清掃指令スイッチ25を指令操作した場合の清掃装置コントローラH1が実行する清掃制御の制御内容について、
図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0041】
清掃装置コントローラH1は、ステップ#1にて、清掃指令が指令されたことを判別すると、ステップ#2に移行し、搬送車検出センサ24の検出情報に基づいて、清掃空間Z2に清掃対象の天井搬送車3が停止しているか否かを判別する。天井搬送車3が清掃箇所に停止していなければ、天井搬送車3が清掃箇所に到着するまで待機する。天井搬送車3が清掃箇所に停止した状態となると、ステップ#3に移行し、シャッター開閉用モータM4の駆動を制御して電動シャッター17を閉状態に切り換える。そして、ステップ#4にて、清掃手段Cによる清掃作動を開始する。すなわち、ファンフィルタユニット12の作動を開始させ、噴出用切換弁22を噴出状態に切り換えてノズル20から清掃用空気を噴出させるとともに、ノズル回転用モータM5を整逆に駆動させて、複数のノズル20を回転操作軸19と一体回転させ、ノズル20の先端部を設定角度範囲内で繰り返し往復揺動させる。
【0042】
清掃装置コントローラH1は、清掃手段Cによる清掃作動を開始した後、ステップ#5にて清掃空間Z2における塵埃濃度を監視する。清掃作動が継続するに伴い、天井搬送車3に堆積していた塵埃が清掃空間Z2に飛散し、一時的に清掃空間Z2における塵埃濃度が上昇するが、その後、ファンフィルタユニット12の浄化作用により、徐々に低下することになる。
【0043】
清掃装置コントローラH1は、パーティクルカウンタ23の計測情報に基づいて、清掃空間Z2における塵埃濃度が目標塵埃濃度まで低下したと判別されると、ステップ#6に移行して清掃手段Cによる清掃作動を終了する。すなわち、ファンフィルタユニット12の作動を停止させ、噴出用切換弁22を噴出停止状態に切り換えてノズル20から清掃用空気を噴出停止させるとともに、複数のノズル20が待機位置となるように、回転操作軸19の回転位相を初期位相となるようにノズル回転用モータM5の駆動を制御する。そして、ステップ#7にてシャッター開閉用モータM4の駆動を制御して電動シャッター17を開状態に切り換える。
【0044】
こうして清掃が完了した天井搬送車3を再び基板収納容器の搬送作業に復帰させるには、手動運転用指令手段DにてホストコントローラH3に対して引当可能となった旨の情報を送信する。なお、清掃作業に引き続き当該天井搬送車3のメンテナンス作業を行う場合は、筐体14の外側面に設けられた図外の昇降指令スイッチにて下降指令を指令して昇降体9を搬送車取出し用高さに下降させ、メンテナンス用台車18に移動操作して、天井搬送車3を、メンテナンス作業を行う箇所等に移動させればよい。
【0045】
〔別の実施形態〕
以上、発明者によってなされた発明を発明の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。以下、本発明の別実施形態を例示する。
【0046】
(1)上記実施形態では、天井搬送車の清掃装置における区画体が進入口と退出口とを兼用した開口を備えたものを例示したが、区画体が進入口と退出口とを各別に備えたものであってもよい。すなわち、天井搬送車の走行経路が区画体を貫通するように、走行経路の途中箇所に区画体を設けて、区画体における走行方向の前後両端部に進入口及び退出口を設けた通過式の清掃装置でもよい。また、上記実施形態では清掃装置が床面に立設された区画体内に設けられたものを例示したが、区画体は、天井から吊り下げ支持されたものであってもよい。
【0048】
(
2)上記実施形態では、作業者が指令する手動運転指令により、天井搬送車を清掃箇所に走行させるものを例示したが、これに代えて、天井搬送車の走行を管理する管理装置(例えば、上記実施形態における天井搬送車コントローラH2にて構成できる。)にて、複数の天井搬送車の夫々の累積走行量を管理し、累積走行量が清掃時期判別用に設定された設定走行量に達した天井搬送車を清掃装置に走行させるべく、天井搬送車の走行を制御してもよい。
【0049】
また、清掃時期判別用に設定された設定走行量に達したか否かの判別条件に代えて、管理装置が、走行経路上に複数又は単一の走行量計測用箇所を設定し、走行量計測用箇所を通過した回数に基づき清掃時期を判別するように構成してもよい。この場合、走行量計測用箇所に光センサ等で構成された通過検出手段を設けて、天井搬送車の走行を管理する管理装置が、通過検出手段の検出情報に基づいて、各天井搬送車の走行量計測用箇所を通過した回数を管理すればよい。
【0050】
(
3)上記実施形態では、清掃手段の清掃作動を制御する制御手段が、清掃手段の清掃作動を開始させた後、塵埃濃度計測手段の計測情報に基づいて、遮蔽空間における塵埃の濃度が設定塵埃濃度まで低下すると清掃手段の清掃作動を終了させるものを例示したが、清掃手段の清掃作動を開始させた後、計時手段により設定時間経過すると清掃手段の清掃作動を終了させるものでもよい。
【0051】
(
4)上記実施形態では、清掃手段が、ノズルが回転操作されることで噴出対象箇所を変更自在なものを例示したが、これに代えて又は加えて、ノズルを上下又は左右に移動することで噴出対象箇所を変更自在なものでもよい。また、ノズルは、噴出対象箇所を変更できないものでもよい。
【0052】
(
5)上記実施形態では、清掃手段が、昇降機構により昇降操作される昇降体に一体昇降自在に設けられたものを例示したが、これに代えて、清掃手段が、区画体に対して固定されたものでもよい。この場合も、ノズルは、噴出対象箇所を変更自在としてもよいし、噴出対象箇所を変更できないものでもよい。