【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、水圧ハンマーを用いて前方地山の地盤性状を探査する場合に信頼性を向上させることが可能な前方地山の探査方法を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る前方地山の探査方法は請求項1に記載したように、ボーリングマシンに装着した削孔ロッドの先端に水圧ハンマーを取り付け、該水圧ハンマーで切羽等の露出面の前方に拡がる地山を削孔することにより、該前方地山の地盤性状を探査する前方地山の探査方法において、
前記水圧ハンマーによる打撃エネルギーをE2、その打撃効率をKとしたとき、該水圧ハンマーによる削孔エネルギーE1を、次式、
E1=E2・K (1)
で、前記打撃エネルギーE2を、次式、
E2=P・√(F)・f/V (2)
P;水圧ハンマーへの送水圧
F;給進力
f;水圧ハンマーの打撃数(Hz)
V;削孔速度
でそれぞれ表すとともに、値が大きいほど地盤性状が良好であることを示す地山評価指標をXとしたとき、前記打撃効率Kを、該地山評価指標Xの値に応じ、0%を下限、100%を上限として単調増加する関数K(X)として定義し、
互いに地盤性状が異なる複数の地山に対して得られた前記X及び前記E2を、次式、
X=E2・K(X)・c+d (3)
に適用することでc,d及びK(X)をそれぞれc′,d′,K′(X)として求め、
探査対象となる地山に対して得られた前記E2を、次式、
X=E2・K′(X)・c′+d′ (4)
に適用することで、該探査対象となる地山のXを推定するものである。
【0012】
また、本発明に係る前方地山の探査方法は、前記打撃効率K(X)を、
K(X)=1/{1+exp(−a(X−b))} (5)
として定義するとともに、該(5)式が前記(3)式に代入されてなる次式、
X=E2・c/{1+exp(−a(X−b))}+d (3′)
に前記X及び前記E2を適用する際、a,bをa′,b′として求めることで、前記K′(X)を求めるものである。
【0013】
本発明に係る前方地山の探査方法においては、水圧ハンマーによる打撃エネルギーをE2、その打撃効率をKとしたとき、該水圧ハンマーによる削孔エネルギーE1を、次式、
E1=E2・K (1)
で、打撃エネルギーE2を、次式、
E2=P・√(F)・f/V (2)
P;水圧ハンマーへの送水圧
F;給進力
f;水圧ハンマーの打撃数(Hz)
V;削孔速度
でそれぞれ表すが、削孔機を用いて前方探査を行うにあたり、削孔機で発生させた打撃エネルギーE2は、削孔面に伝達されるまでの間に熱、振動等の形で消費され、該打撃エネルギーが全て削孔エネルギーE1に用いられるものではない点を打撃効率Kという形で考慮する必要があり、トップハンマー式の削孔機であれば、主として削孔ロッド同士の継ぎ目で発生するエネルギーロスの影響が打撃効率に組み込まれる。
【0014】
一方、水圧ハンマーの場合、該水圧ハンマーに内蔵されたハンマーピストンによって先端で衝撃力が発生するため、削孔ロッド同士の継ぎ目でエネルギーロスが発生することはほとんどないが、水圧ハンマーの構造特性として、ある程度の大きさの反力を削孔面から受けないと、打撃が開始されない構造になっており、軟らかい地盤では、反力が得られずに打撃が行われない場合がある。
【0015】
したがって、本発明においては、値が大きいほど地盤性状が良好であることを示す地山評価指標をXとし、打撃効率Kを、この地山評価指標Xの値に応じ、0%を下限、100%を上限として単調増加する関数K(X)として定義する。
【0016】
このようにすれば、水圧ハンマー特有の性質が反映された打撃効率K(X)で削孔エネルギーE1が評価される。
【0017】
本発明に係る前方地山の探査方法を用いて前方地山を探査するには、まず、互いに地盤性状が異なる複数の地山に対し、地山評価指標X及び打撃エネルギーE2を複数組のデータとして取得し、得られたX及びE2を、次式、
X=E2・K(X)・c+d (3)
に適用することでc,d及びK(X)をそれぞれc′,d′,K′(X)として求める。
【0018】
(3)式は、地山評価指標Xと削孔エネルギーE1との間に強い正の相関、すなわち直線関係があることを根拠としたものであって、複数組のX及びE2を取得してこれらを(3)式に代入することで、未知数であるc,dを既知数のc′,d′として求めるとともに、未知関数であるK(X)をK′(X)として定める。
【0019】
ここで、打撃エネルギーE2は、ボーリングマシンや水圧ハンマーから出力される計測データを(2)式に適用することで求めることが可能であり、地山評価指標Xは、水圧ハンマーによる削孔の後、通常のトンネル掘削を行うことによって、上述した削孔面が切羽の一部として露出したときにその切羽を観察することによって取得することが可能である。
【0020】
このようないわば予備工程によって地山評価指標Xと打撃エネルギーE2との関係が定められたならば、次に、探査対象となる地山に対して水圧ハンマーを用いた削孔を行い、そのときの打撃エネルギーE2を予備工程のときと同様に求める。
【0021】
次に、求められた打撃エネルギーE2を、次式、
X=E2・K′(X)・c′+d′ (4)
に適用することで、探査対象地山に対する地山評価指標Xを推定する。
【0022】
本発明の対象となる地山は、主としてトンネル切羽の前方地山であるが、地盤性状を予め推定したい地山が存在するのであれば、トンネル切羽の前方地山に限定されるものではなく、例えば急傾斜地岩盤において崩落対策を行う工事に先立ち、法面の背後に拡がる地山を前方地山として探査したい場合には、該地山も包摂される。
【0023】
地山評価指標Xは、地山の地盤性状を数値化した指標であればどのような指標でも採用可能であって、例えば地山等級を数値化したものでもよいが、例えば圧縮強度、風化変質、割目間隔及び割目状態の4つを観察指標、湧水量と劣化を補正指標として切羽を観察し、それら項目ごとで得られた点数を所定の割合で配点してなる切羽評価点、特に、日本道路協会の指針に定められている切羽評価点を採用することが可能である。
【0024】
予備工程における複数の地山は、互いに地盤性状が異なれば足りるものであって、相異なるトンネル掘削現場でそれぞれ地盤性状が明らかになった地山、あるいは同一のトンネル掘削現場であってトンネル掘削によって次々に地盤性状が明らかになった地山をそれぞれ複数の地山とすることが可能であり、これらの場合においては、探査対象となる地山は、それらのトンネル掘削現場とは異なる別のトンネル掘削現場の地山となる。
【0025】
一方、一つのトンネル掘削現場のうち、ある区間において次々に地盤性状が明らかになった地山をそれぞれ複数の地山とし、残りの区間の地山を探査対象地山とすることも可能である。
【0026】
打撃効率K(X)は、地山評価指標Xの値に応じ、0%を下限、100%を上限として単調増加する関数として定義されれば足りるものであって、具体的な構成は任意であり、例えば、シグモイド関数を用いて、
K(X)=1/{1+exp(−a(X−b))} (5)
として定義するとともに、該(5)式が前記(3)式に代入されてなる次式、
X=E2・c/{1+exp(−a(X−b))}+d (3′)
に前記X及び前記E2を適用する際、a,bをa′,b′として求めることで、前記K′(X)を求めることが可能である。