(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記車輪は、上部側の前記プレート部材に、前記上下一対のプレート部材の移動方向に対して所定間隔離して2個設けられていることを特徴とする請求項1に記載の養生テープ貼り付け治具。
前記ハンドルは、前記上下一対のプレート部材の移動方向に対して所定間隔離して2個設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の養生テープ貼り付け治具。
前記それぞれのハンドルは、上端が上部側の前記プレート部材よりも上方に位置するように上下方向に延びる棒状部と、前記それぞれの棒状部の上端側に設けられ、前記立ち上がり部の側面から離れる方向に向けて延びる把持部とを有していることを特徴とする請求項4に記載の養生テープ貼り付け治具。
前記移動方向前方側のハンドルは、後方側のハンドルよりも前記立ち上がり部の側面から離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の養生テープ貼り付け治具。
前記押圧ローラに対して前記立ち上がり部の側面の反対側に位置するように、前記養生テープを切断する際に前記押圧ローラを保護するためのガード部材が、前記上下一対のプレート部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の養生テープ貼り付け治具。
請求項1乃至7のいずれかに記載の養生テープ貼り付け治具を用いて、基礎の立ち上がり部の側面に前記養生テープを貼り付けることを特徴とする養生テープ貼り付け方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建物における基礎としては、耐久性を高めるために、コンクリート内部に鉄筋を埋設した鉄筋コンクリート造のものが一般的に知られている。このような鉄筋コンクリート造の基礎では、コンクリート型枠を脱枠した後、大気中に曝される基礎の立ち上がり部のコンクリート表面から水分が蒸発し、乾燥収縮を引き起こすことにより表面にひび割れが発生することがある。また、鉄筋コンクリート造の基礎は、コンクリートに含まれる水酸化カルシウムによって強アルカリ性になっているため、鉄筋における錆の発生が抑制されているが、大気中に含まれる二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物等の酸性物質、或いは雨水や結露水等に含まれる水分といった劣化因子と反応することにより、コンクリートが経時的に中性化する。このようにコンクリートが中性化すると、コンクリート内部の鉄筋に錆が発生することにより、鉄筋が膨張し、コンクリートにひび割れ等を引き起こすことになり、基礎の耐久性が低下するといった問題が生じる。このようなコンクリートの中性化の問題は、地中に埋没された部分よりも大気中に曝された基礎の立ち上がり部において発生し易く、特に屋外側よりも劣化因子が滞留し易い床下空間に面する屋内側において進行し易い傾向にある。
【0003】
そこで、従来から、基礎の立ち上がり部にコンクリートの中性化を抑制する塗料を塗布することにより、立ち上がり部の表面にひび割れが発生するのを抑制し、耐久性を向上させた基礎構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。一方で、本発明者らは、コストを軽減すると共に、作業効率を向上させるために、基礎の立ち上がり部にこのような塗料を塗布する代わりに、コンクリート型枠の脱枠後に、養生テープを立ち上がり部の側面に貼り付けることにより、立ち上がり部のコンクリート表面を保水養生することで、乾燥収縮を低減して、ひび割れが発生するのを抑制することを考え出した。
【0004】
しかしながら、養生テープを手作業で基礎の立ち上がり部の側面に貼り付ける場合には、作業に手間を要すると共に、しわが生じてしまい、見栄えが悪くなるという問題がある。また、養生テープを貼り付けるための装置としては、これまでに様々なものが提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)が、これらは、基礎の立ち上がり部の側面に貼り付けるためのものではないため、基礎の立ち上がり部の側面に養生テープを貼り付ける際に用いることはできない。また、従来は、養生テープを貼り付けるための装置として、基礎の立ち上がり部の側面に養生テープを効率的に貼り付けるためのものはなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、養生テープを基礎の立ち上がり部の側面に貼り付ける際の作業時間を短縮すると共に、しわの発生を抑えて、見栄えを改善し、密着性を高めることができる養生テープ貼り付け治具及び養生テープ貼り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の養生テープ貼り付け治具は、基礎の立ち上がり部の側面に養生テープを貼り付けるための養生テープ貼り付け治具であって、上下一対のプレート部材と、ロール状に巻かれた養生テープを保持する保持部と、上部側の前記プレート部材に設けられ、前記立ち上がり部の天端面に引っ掛けられた状態で転動する車輪と、前記上下一対のプレート部材に取り付けられ、前記車輪を前記天端面上で転動させることにより前記上下一対のプレート部材を前記立ち上がり部の側面に沿って移動させるためのハンドルと、前記上下一対のプレート部材に回転自在に取り付けられ、当該上下一対のプレート部材の移動に伴って前記保持部から引き出された前記養生テープを前記立ち上がり部の側面に押圧して貼り付ける押圧ローラと、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の養生テープ貼り付け治具は、前記車輪が、上部側の前記プレート部材に、前記上下一対のプレート部材の移動方向に対して所定間隔離して2個設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の養生テープ貼り付け治具は、前記車輪の高さ位置を調節する高さ調節手段を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の養生テープ貼り付け治具は、前記ハンドルが、前記上下一対のプレート部材の移動方向に対して所定間隔離して2個設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の養生テープ貼り付け治具では、前記それぞれのハンドルは、上端が上部側の前記プレート部材よりも上方に位置するように上下方向に延びる棒状部と、前記それぞれの棒状部の上端側に設けられ、前記立ち上がり部の側面から離れる方向に向けて延びる把持部とを有していることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の養生テープ貼り付け治具は、前記移動方向前方側のハンドルが、後方側のハンドルよりも前記立ち上がり部の側面から離れた位置に配置されていることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の養生テープ貼り付け治具は、前記押圧ローラに対して前記立ち上がり部の側面の反対側に位置するように、前記養生テープを切断する際に前記押圧ローラを保護するためのガード部材が、前記上下一対のプレート部材に取り付けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の養生テープ貼り付け方法は、請求項1乃至7のいずれかに記載の養生テープを貼り付け治具を用いて、基礎の立ち上がり部の側面に前記養生テープを貼り付けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の養生テープ貼り付け治具によれば、作業者は、ハンドルを用いて、上下一対のプレート部材の上部側のプレート部材に設けられた車輪を基礎の立ち上がり部の天端面に引っ掛けた状態で転動させることにより、上下一対のプレート部材を立ち上がり部の側面に沿って移動させることで、養生テープを押圧ローラによって立ち上がり部の側面に押圧しながら貼り付けることができるので、養生テープと立ち上がり部の側面を密着させ、気泡の混入を防止して、貼り付け時にしわが発生することを抑制しつつ、養生テープの天端面からの高さ(水平性)を一定に維持したまま、養生テープの貼り付け作業を効率的に行うことができる。これにより、作業時間を大幅に短縮することができると共に、見栄えを改善することができる。
【0016】
請求項2に記載の養生テープ貼り付け治具によれば、上部側のプレート部材に設けられる車輪は、上下一対のプレート部材の移動方向に対して所定間隔離して2個設けられているので、立ち上がり部の天端面に安定した状態で引っ掛けることができ、養生テープの貼り付け作業をより効率良く行うことができる。
【0017】
請求項3に記載の養生テープ貼り付け治具によれば、車輪の高さ位置を調節する高さ調節手段を備えているので、作業者は、必要に応じて車輪の高さ位置を調節することにより、立ち上がり部の側面に貼り付ける養生テープの高さを容易に調節することができる。
【0018】
請求項4に記載の養生テープ貼り付け治具によれば、ハンドルは、上下一対のプレート部材の移動方向に対して所定間隔離して2個設けられているので、作業者は、それぞれのハンドルをそれぞれの手で把持した状態で、立ち上がり部の天端面に引っ掛けられた車輪を転動させることにより、上下一対のプレート部材を立ち上がり部の側面に沿って移動させることができるため、養生テープの貼り付け作業を安定的且つ容易に行うことができる。
【0019】
請求項5に記載の養生テープ貼り付け治具によれば、それぞれのハンドルは、上端が上部側のプレート部材よりも上方に位置するように上下方向に延びる棒状部と、それぞれの棒状部の上端側に設けられ、立ち上がり部の側面から離れる方向に向けて延びる把持部とを有しているので、作業者は棒状部の上端側に設けられた把持部を把持した状態で作業を行うことにより、ほとんど屈むことなく、立ち上がり部の側面に養生テープを貼り付けることができるため、作業者の負担を軽減することができる。また、把持部は、棒状部の上端側に、立ち上がり部の側面から離れる方向に向けて延びるように設けられているので、作業者は、把持部に対して下向きの力を加えることにより、立ち上がり部の天端面に引っ掛けられた車輪を支点としたてこの原理により押圧ローラに対して養生テープを立ち上がり部の側面に押し付ける力を容易に作用させることができる。そのため、作業者は、少ない力で押圧ローラにより養生テープを立ち上がり部の側面側に押圧することができるので、作業者の負担を軽減しつつ、効率的に貼り付け作業を行うことができる。
【0020】
請求項6に記載の養生テープ貼り付け治具によれば、上下一対のプレート部材の移動方向の前方側に位置するハンドルは、後方側のハンドルよりも立ち上がり部の側面から離れた位置に配置されているため、作業者は、押圧ローラによって立ち上がり部の側面に養生テープを押圧しながら、上下一対のプレート部材の移動方向に対して力を入れ易い体勢でハンドルを把持して作業を行うことができるので、養生テープの貼り付け作業をより効率的に行うことができる。
【0021】
請求項7に記載の養生テープ貼り付け治具によれば、養生テープを切断する際に押圧ローラを保護するためのガード部材が設けられているので、立ち上がり部の側面へ貼り付けた養生テープをカッター等で切断する際に、誤って押圧ローラを傷つけてしまうことを防止することができる。
【0022】
請求項8に記載の養生テープ貼り付け方法によれば、しわが発生することを抑制しつつ、養生テープの天端面からの高さを一定に維持したまま、養生テープの貼り付け作業を効率的に行うことができるので、作業時間を大幅に短縮することができると共に、見栄えを改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る養生テープ貼り付け治具の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る養生テープ貼り付け治具1は、基礎の立ち上がり部の側面に養生テープを貼り付けるためのものであって、
図1〜
図5に示すように、上下一対のプレート部材2,3と、ロール状に巻かれた養生テープ4を保持する保持部5と、上部側のプレート部材2に設けられる車輪6と、上下一対のプレート部材2,3に取り付けられるハンドル7a,7bと、上下一対のプレート部材2,3に回転自在に取り付けられる押圧ローラ8とを備えている。また、養生テープ貼り付け治具1は、保持部5から引き出された養生テープ4を案内するためのガイドローラ9と、車輪6の高さ位置を調節するための高さ調節手段10と、押圧ローラ8を保護するためのガード部材11とを備えている。
【0025】
上下一対のプレート部材2,3は、
図6及び
図7に示すように、それぞれ略同一形状に形成された薄板状の部材である。上部プレート部材2は、
図9に示すように、養生テープ4を基礎の立ち上がり部14の側面14bに貼り付ける際の
図9中に矢印で示す養生テープ貼り付け治具1の移動方向Aに対して長尺に形成されている。この上部プレート部材2は、略中央に立ち上がり部14の側面14bから離れる方向に直交するように形成された保持部取付片21と、両端側に立ち上がり部14の側面14bから離れる方向に直交するように形成されたハンドル取付片22,23とを有している。保持部取付片21の先端には、
図1,
図6に示すように、保持部5の上部側の保持部材51を取り付けるための切欠部21aが形成されている。また、ハンドル取付片22,23の先端側には、ハンドル7a,7bの棒状部71a、71bをそれぞれ取り付けるための孔22a,23aがそれぞれ形成されている。養生テープ貼り付け治具1の移動方向Aの前方側に位置するハンドル取付片22は、後方側に位置するハンドル取付片23よりも長く形成されており、そのために養生テープ4の貼り付け作業時においては、ハンドル取付片22の先端は、ハンドル取付片23の先端よりも立ち上がり部14の側面14bから離れた位置にくる。また、上部プレート部材2には、
図6に示すように、押圧ローラ8の上端側を取り付けるための孔2aと、ガイドローラ9の上端側を取り付けるための孔2bと、高さ調節手段10を取り付けるための孔2cと、ガード部材11の上端側を取り付けるための孔2dとが形成されている。
【0026】
下部プレート部材3も上部プレート部材2と同様に、
図7に示すように、略中央に立ち上がり部14の側面14bから離れる方向に直交するよう形成された保持部取付片31と、両端側に立ち上がり部14の側面14bから離れる方向に直交するよう形成されたハンドル取付片32,33とを有している。保持部取付片31の先端には、保持部取付片21の先端に形成されている切欠部21aと対応するように、保持部5の下部側の保持部材52を取り付けるための孔31aが形成されている。また、ハンドル取付片32,33の先端側には、ハンドル取付片22,23の先端側に形成されている孔22a,23aとそれぞれ対応するように、ハンドル7a,7bの棒状部71a、71bの下端側を取り付けるための孔32a,33aがそれぞれ形成されている。養生テープ貼り付け治具1の移動方向Aの前方側に位置するハンドル取付片32も、上部プレート部材2のハンドル取付片22と同様に後方側に位置するハンドル取付片33よりも長く形成されており、そのために養生テープ4の貼り付け作業時においては、ハンドル取付片22の先端がハンドル取付片33の先端よりも立ち上がり部14の側面14bから離れた位置にくる。また、下部プレート部材3には、押圧ローラ8の下端側を取り付けるための孔3aと、ガイドローラ9の下端側を取り付けるための孔3bと、ガード部材11の下端側を取り付けるための孔3dとが形成されている。これらの孔3a、3b,3dは、それぞれ上部プレート部材2に形成されている孔2a、2b,2dの位置に対応するように下部プレート部材3にそれぞれ形成されている。
【0027】
養生テープ4は、基礎の立ち上がり部14の側面14bに貼り付けるためのものであって、詳しくは図示しないが、円筒状の芯材にロール状に巻かれたものである。この養生テープ4は、
図3及び
図4に示すように、保持部5によって回転自在に保持されており、作業時は上下一対のプレート部材2,3の
図9中の矢印A方向への移動に伴って回転することにより、保持部5から引き出されるようになっている。養生テープ4としては、例えば、基材としてポリオレフィン系フィルム、粘着剤としてアクリル系粘着剤が使用されている住友スリーエム社製の「3M
TMコンクリート保水養生テープ2227HP」等を用いることができる。このような養生テープ4をコンクリート型枠の脱枠後に、立ち上がり部14の側面14bに貼り付けることにより、コンクリート表面を保水養生することで、乾燥収縮を大幅に低減でき、コンクリート表面の緻密化し、耐久性を向上させることができる。尚、養生テープ4の種類は、これに限定されるものではなく、基礎の立ち上がり部14の側面14bのコンクリート表面を保水養生することで、乾燥収縮を低減できるものであれば良い。
【0028】
保持部5は、ロール状に巻かれた養生テープ4を保持するためのものであって、
図1及び
図2に示すように、それぞれ略円柱状に形成されている上下一対の保持部材51,52を備えている。上部側の保持部材51は、上部プレート部材2の保持部取付片21の先端に形成された切欠部21aにノブ53及び不図示のベアリングを介して回転自在に取り付けられている。また、下部側の保持部材52は、下部プレート部材3の保持部取付片31の先端に形成された孔31aに不図示のベアリングを介して回転自在に取り付けられている。従って、養生テープ4は、
図3及び
図4に示すように、上下一対の保持部材51,52に養生テープ4がロール状に巻かれた円筒状の芯材が挿し込まれることにより、上下一対の保持部材51,52の間に挟まれた形で回転自在に保持される。
【0029】
車輪6は、
図8及び
図9に示すように、立ち上がり部14の天端面14aに引っ掛けられた状態で転動するものであり、車輪6の天端面14aに接触する外周部分は、例えば、摩擦抵抗の大きいゴムや樹脂等により形成されている。この車輪6は、高さ調節手段10を介して軸61を中心に回転自在に上部プレート部材2に設けられている。養生テープ貼り付け治具1では、車輪6は、
図9に示すように、移動方向Aに対して所定間隔離して2個設けられており、立ち上がり部14の天端面14aに安定した状態で引っ掛けることができる。車輪6の幅は、当該車輪6が天端面14a上を転動する際に、立ち上がり部14の天端面14aから上方へ突出するアンカーボルト15に接触することがないように調整されている。尚、
図8では、車輪6の幅方向の高さ調節手段10側の端部が天端面14aの縁からはみ出している状態になっているが、
図10に示すように、車輪6の幅方向全体が、天端面14aの縁よりも内側に位置するように構成しても良い。この場合には、立ち上がり部14の上端側のレベリング材が施工された仕上層16により天端面14aの縁にバリが生じている場合や縁に面取りを施しているような場合でも、車輪6は、そのバリや面取りの影響を受けることなく、天端面14a上を転動することができるので、養生テープ4を天端面14aからの高さを一定に維持したまま、貼り付けることができる。この調節は、車輪6の軸61の長さを変えることにより行うことができる。
図8では、養生テープ4の上端が立ち上がり部14の天端面14aから所定距離hだけ下方に位置するように、立ち上がり部14の側面14bに養生テープ4を貼り付けている。これにより、養生テープ4を側面14bから剥がれ難くすることができる。また、車輪6の外周面に滑り止め用の溝等を形成することにより、作業時に養生テープ貼り付け治具1の移動方向Aに対して直交する方向に滑りにくくするように構成しても良い。また、車輪6が設けられる位置及び車輪6の数は、本実施形態に限定されるものではなく、少なくとも養生テープ貼り付け治具1が立ち上がり部14の天端面14aに引っ掛けられた状態で転動できるように設けられていれば良い。
【0030】
高さ調節手段10は、車輪6の高さ位置を調節するためのものであって、
図2〜
図5に示すように、上部プレート部材2の上面に固定される薄板状の固定片10aと、固定片10aに対して直交して設けられる薄板状の車輪取付片10bとにより略L字形状に構成されている。車輪取付片10bには、車輪6が回転自在に装着される軸61を支持するための支持孔10cが複数形成されている。この支持孔10cは、それぞれ高さが異なる位置に形成されており、軸61を取り付ける支持孔10cを変更することにより、車輪6の高さを調節できるようになっている。軸61は、その基端側に雄ねじ(不図示)が形成されており、基端側が支持孔10cに挿通された状態で、ナット62と締結されることにより、車輪取付片10bに取り付けられる。また、このように車輪6の高さを調節することにより、養生シート4の天端面14aからの高さを必要に応じて調節することができる。尚、高さ調節手段10は、これに限定されるものではなく、車輪6の高さ位置を調節できるものであれば良い。
【0031】
ハンドル7a、7bは、
図9に示すように、持部5から引き出される養生テープ4を立ち上がり部14の側面14bに貼り付ける際に、作業者が手動にて養生テープ貼り付け治具1を立ち上がり部14の側面14bに沿って移動させるためのものであって、上下一対のプレート部材2,3に移動方向Aに対して所定間隔離してそれぞれ取り付けられている。ハンドル7a、7bは、
図1及び
図4に示すように、上端が上部プレート部材2よりも上方に位置するように上下方向に延びる略円柱状に形成された棒状部71a、71bと、それぞれの棒状部71a、71bの上端側に設けられ、棒状部71a、71bに略直交し、立ち上がり部14の側面14bから離れる方向に延びる略円柱状の把持部72a、72bとを有している。また、棒状部71a、71bと把持部72a、72bは、
図3〜
図5に示すように、それぞれ連結部材73を介して連結されている。この連結部材73には、詳しくは図示しないが、棒状部71a、71bの上端側を嵌合可能な嵌合孔と、把持部72a、72bの基端側を嵌合可能な嵌合孔とを有しており、それぞれを嵌合させた状態で、例えば、ねじ等の締付部材によって締め付けることにより棒状部71a、71b及び把持部72a、72bが連結部材73に取り付けられる。尚、棒状部71a、71bと把持部72a、72bをそれぞれ一体として形成するようにしても良い。
【0032】
ハンドル7aの棒状部71aは、上下一対のプレート部材2,3の移動方向Aの前方側の端部にそれぞれ形成されているハンドル取付片22,32の先端側に取り付けられている。また、ハンドル7bの棒状部71bは、上下一対のプレート部材2,3の移動方向Aの後方側の端部にそれぞれ形成されているハンドル取付片23,33の先端側に取り付けられている。また、移動方向Aの前方側に位置するハンドル取付片22,32は、後方側に位置するハンドル取付片23,33よりも長く形成されているので、ハンドル7aは、
図9に示すように、養生テープ4の貼り付け作業時において、ハンドル7bよりも立ち上がり部14の側面14bから離れて位置する。従って、作業者は、移動方向Aに対して力を入れ易い体勢でハンドル7aの把持部72a及びハンドル7bの把持部72bをそれぞれ把持して作業を行うことができる。また、把持部72a,72bは、上部プレート部材2よりも上方に位置するように設けられているので、作業者は、把持部72a、72bを把持した状態で養生テープ取り付け治具1を移動させて立ち上がり部14の側面14bに養生テープ4を貼り付けることができるので、姿勢をほとんど屈める必要がなく、作業者の負担を軽減することができる。また、把持部72a、72bは、棒状部71a、71bの上端側に、立ち上がり部14の側面14bから離れる方向に向けて延びるように設けられているので、作業者は、把持部72a、72bに対して下向きの力を加えることにより、立ち上がり部14の天端面14aに引っ掛けられた車輪6を支点としたてこの原理により押圧ローラ8に対して養生テープ4を立ち上がり部14の側面14bに押し付ける力を容易に作用させることができる。そのため、作業者は、少ない力で押圧ローラ8により養生テープ4を立ち上がり部14の側面14b側に押圧することができるので、作業者の負担を軽減しつつ、効率的に貼り付け作業を行うことができる。尚、棒状部71a,71bの上部プレート部材2と下部プレート部材3と間の位置する部分を把持して作業を行うことも可能である。
【0033】
また、棒状部71a、71bは、それぞれ1つの部材で構成しても良いが、例えば、下方側と上方側の2本の棒部材に分割したものを連結することにより構成しても良い。具体的には、例えば、下方側の棒部材の上端に雌ねじ又は雄ねじを形成しておき、上方側の棒部材の下端に下方側の棒部材の上端に形成された雌ねじ又は雄ねじに螺合可能な雄ねじ又は雌ねじを形成しておくことで、上下の棒部材を螺合させることにより連結することができる。この場合、下方側の棒部材を、上下一対のプレート部材2,3に取り付けるようにしておけば、上方側の棒部材を取り外した場合でも、下方側の棒部材のみをハンドルとして利用することも可能である。
【0034】
押圧ローラ8は、上下一対のプレート部材2,3の移動に伴って保持部5から引き出された養生テープ4を立ち上がり部14の側面14に押圧して貼り付けるためのものであって、
図3及び
図4に示すように、上下一対のプレート部材2,3に回転自在に縦向きに取り付けられている。養生テープ取り付け治具1では、
図9に示すように、上下一対のプレート部材2,3に移動方向Aに対して所定間隔離して2個の押圧ローラが設けられている。押圧ローラ8は、例えば、外周面がゴム、スポンジ等の若干弾性を有する部材で構成されており、養生テープ4と立ち上がり部14の側面14との間に気泡が入らないように密着させながら貼り付けることができる。また、押圧ローラ8の高さは、
図8に示すように、養生テープ4の幅よりも若干長く形成されており、養生テープ4全体を立ち上がり部14の側面14にしっかりと押圧できるように構成されている。
【0035】
ガイドローラ9は、
図3及び
図5に示すように、主に上下一対のプレート部材2,3の移動に伴って保持部5から引き出された養生テープ4を張った状態で押圧ローラ8等に案内するためのものであって、上下一対のプレート部材2,3に回転自在に取り付けられている。養生テープ貼り付け治具1では、ガイドローラ9は、
図9に示すように、保持部5から引き出された養生テープ4が移動方向Aに対して前方側の押圧ローラ8に至るまでの間に2個設けられている。
【0036】
また、
図9に示すように、移動方向前方側の押圧ローラ8に対して立ち上がり部14の側面14bの反対側には、ガード部材11が設けられている。ガード部材11は、保持部5から引き出された養生テープ4を作業者がカッター等で切断する際に、前方側の押圧ローラ8の表面を誤って傷付けてしまうことを防止するためのものであって、
図2及び
図9に示すように、上下一対のプレート部材2,3にその上下端が取り付けられている。このガード部材11は、前方側の押圧ローラ8の回転を阻害することなく、押圧ローラ8を保護するために、押圧ローラ8から若干離して配置されており、背面側を覆うように高さが押圧ローラ8と略同等に形成されている。
【0037】
以下、本実施形態に係る養生テープ取り付け治具1を用いて、基礎12の立ち上がり部14の側面14bに養生テープ4を貼り付ける作業について図面を参照しつつ説明する。ここでは、
図8に示すように、基礎12として、コンクリート内部に鉄筋17を埋設した鉄筋コンクリート造のものであって、略直方体状のフーチング部13と、該フーチング部13の上面略中央から立ち上がった略四角柱状の立ち上がり部14とを有する断面逆T字状に形成されている基礎12の立ち上がり部14の側面(内側面)14bに養生テープ4を貼り付ける場合を例に説明する。この基礎12では、立ち上がり部14の上端側は、レベル調整や水平性を確保する不陸調整のために、レベリング材を施工してなる平滑な仕上層16が所定の厚みで形成されており、その仕上層16の上面を立ち上がり部14の天端面14aとしている。また、立ち上がり部14には、アンカーボルト15が埋設されており、このアンカーボルト15は、上端が立ち上がり部14の天端面14aから上方へ突出するように設けられている。尚、
図8では図示していないが、フーチング部13及び立ち上がり部14の下端は、地盤に埋設された状態になる。
【0038】
養生テープ取り付け治具1を用いた養生テープ4の貼り付け作業のタイミングとしては、例えば、基礎12を構築して、コンクリート型枠を脱枠した後に貼り付け作業を行う。基礎12の構築に際しては、まず鉄筋17やアンカーボルト15をセットした型枠内にコンクリートを打設して、フーチング部13及び立ち上がり部14を形成する。次に、立ち上がり部14にレベリング材を流し込んで仕上層16を形成する。そして、型枠を脱枠した後、養生テープ取り付け治具1を用いて、立ち上がり部14の側面14bにコンクリート表面を保水養生することで、乾燥収縮を低減するための養生テープ4を貼り付ける。
【0039】
立ち上がり部14の側面14bに養生テープ4を貼り付ける際には、まず作業者は、保持部5からガイドローラ9を介して押圧ローラ8を通過し、ハンドル取付片23側のガイドローラー9まで養生テープ4を引き出した状態で、
図8及び
図9に示すように、車輪6を立ち上がり部14の天端面14aに引っ掛けた状態にする。尚、作業者は、必要に応じて養生テープ4の貼り付け作業を行うに際して、予め車輪6の高さを調節しておく。例えば、
図8に示すように、養生テープ4の上端が立ち上がり部14の天端面14aから所定距離hだけ下方に位置するように、車輪6の高さを調節しておくことにより、側面14bに貼り付けられた養生テープ4を剥がれ難くすることができる。
【0040】
次に、作業者は、ハンドル7aの把持部72a及びハンドル7bの把持部72bをそれぞれの手で把持した状態で、軽く下向きに力を入れることにより押圧ローラ8を立ち上がり部14の側面14bに押し付けた状態で、移動方向Aへと押し進める。これにより、車輪6は、天端面14a上を転動し、養生テープ貼り付け治具1が立ち上がり部14の側面14bに沿って移動方向A側へ移動する。この養生テープ貼り付け治具1の移動に伴って、保持部5から引き出された養生テープ4は、押圧ローラ8によって粘着剤が付着した貼付面が立ち上がり部14の側面14bに押圧されて貼り付けられる。
【0041】
そして、養生テープ4が立ち上がり部14の側面14bの所望の位置まで貼り付けられた後、作業者は、カッター等の切断手段によって、保持部5と当該保持部5から最初に案内されるガイドローラ9との間に位置する部分の養生テープ4を切断する。この際、保持部5と最初に案内されるガイドローラ9との間には、前方側の押圧ローラ8を保護するガード部材11が設けられているので、作業者は、押圧ローラ8を傷付けないことを特に意識することなく、切断作業を行うことができる。そして、切断された後の前方側の押圧ローラ8から切断箇所までの養生テープ4は、再び養生テープ貼り付け治具1を移動方向A側へ移動させることにより、押圧ローラ8によって立ち上がり部14の側面14bに押圧して貼り付けたり、必要に応じて手作業で丁寧に貼り付けたり、不必要な場合には切り取る等、適宜状況に応じて作業を行う。また、基礎12の立ち上がり部14が交差して形成される角部に養生テープ4を貼り付ける場合には、例えば、作業者は、養生テープ貼り付け治具1をハンドル取付片32が移動方向Aに対して直交する側の基礎12の立ち上がり部14の内側面に当接する直前、つまり角部の直前まで移動させ、その位置で、保持部5と当該保持部5から最初に案内されるガイドローラ9との間に位置する部分の養生テープ4を切断する。そして、作業者は、切断された後の前方側の押圧ローラ8から切断箇所までの養生テープ4を角部を跨ぐように貼り付ける。その後、作業者は、養生テープ貼り付け治具1を養生テープ4が貼り付け終わった立ち上がり部14に直交する側の立ち上がり部14の側面へと方向を転換し、同様の貼り付け作業を行う。
【0042】
このように、養生テープ貼り付け治具1を用いて、立ち上がり部14の側面14bに貼り付け作業を行うことにより、貼り付け時にしわが発生することを抑制しつつ、養生テープ4の天端面14aからの高さを一定に維持したまま、養生テープ4の貼り付け作業を効率的に行うことができる。これにより、作業時間を大幅に短縮することができると共に、見栄えを改善することができる。また、このような養生テープ4をコンクリート型枠の脱枠後に、立ち上がり部14の側面14bに貼り付けることにより、コンクリート表面を保水養生することで、乾燥収縮を大幅に低減でき、コンクリート表面の緻密化し、耐久性を向上させることができる。
【0043】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【課題】養生テープを基礎の立ち上がり部の側面に貼り付ける際の作業時間を短縮すると共に、しわの発生を抑えて、見栄えを改善することができる養生テープ貼り付け治具及び養生テープ貼り付け方法を提供する。
【解決手段】 基礎の立ち上がり部の側面に養生テープを貼り付けるための養生テープ貼り付け治具1であって、上下一対のプレート部材2,3と、ロール状に巻かれた養生テープ4を保持する保持部5と、立ち上がり部の天端面に引っ掛けられた状態で転動する車輪6と、車輪6を天端面上で転動させることにより上下一対のプレート部材2,3を立ち上がり部の側面に沿って移動させるためのハンドル7a,7bと、上下一対のプレート部材2,3の移動に伴って保持部5から引き出された養生テープ4を立ち上がり部の側面に押圧して貼り付ける押圧ローラ8とを備えている。