(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5720987
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】かしめ装置
(51)【国際特許分類】
B21D 39/00 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
B21D39/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-14900(P2011-14900)
(22)【出願日】2011年1月27日
(65)【公開番号】特開2012-152793(P2012-152793A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北條 正樹
【審査官】
馬場 進吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−000727(JP,A)
【文献】
特開2010−082675(JP,A)
【文献】
実開昭51−033652(JP,U)
【文献】
実開昭58−000826(JP,U)
【文献】
特開昭63−242428(JP,A)
【文献】
特開2000−117361(JP,A)
【文献】
特開2009−018323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上に上下方向に移動するポンチを設け、そのポンチによってベース上に載置したワーク本体の取付孔に嵌め込んだ結合部材の端面部付近を複数箇所かしめてワーク本体と結合部材とを一体化するようにしたかしめ装置において、ベースには、ワーク本体を保持し、前記結合部材の軸線を中心に旋回するように構成した旋回部と、その旋回部を跨ぐように門型に形成された支持部が夫々設置され、その支持部に設けたガイド部材には前記結合部材の軸線に対して平行な軸線に沿って上下方向に移動するようにポンチを取り付けた軸部材が挿入され、その軸部材の上端側に取り付けた第2板部材とガイド部材との間にバネ部材と調整部材とを介在させ、前記旋回部によって結合部材の軸線を中心にワーク本体と共に結合部材を旋回させ、所定角度旋回させた結合部材の端面部を前記ポンチによってかしめる時に、ハンマーによりバネ部材に当接させた状態の第2板部材をバネ部材のバネ力に抗して下方へ移動させ、その第2板部材が調整部材に当接することでポンチが移動する距離が規制されていることを特徴とするかしめ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース上に上下方向に移動するポンチを設け、そのポンチによってベース上に載置したワーク本体の取付孔に嵌め込んだ結合部材の端面部付近を複数箇所かしめてワーク本体と結合部材とを一体化するようにしたものであって、特に、小径の結合部材の端面部付近を複数箇所かしめるようにしたかしめ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベース上に上下方向に移動するポンチを設け、そのポンチによってベース上に載置したワーク本体の取付孔に嵌め込んだ結合部材の端面部付近を複数箇所かしめてワーク本体と結合部材とを一体化するようにしたかしめ装置が知られている。
特許文献1に記載のかしめ装置は、基台には、一対のポンチが上下方向へスライド移動可能に支持されたガイドアーチと、前記一対のポンチの頭部に当接させる付勢ヘッドを備えたアームを揺動可能に支持する支持台が夫々設けられ、前記一対のポンチの先端はネジ部材(ワーク本体)の雌ネジ部材(結合部材)の端面近傍に配置されている。よって、アームを揺動させることで付勢ヘッドを介して一対のポンチに付勢力を与え、付勢される一対のポンチによって雌ネジ部材のネジ山の複数箇所(2箇所)を一度に変形させるようになっている。また、特許文献2には、複数のかしめ部を底面に設けたかしめ工具を用いて、セットスクリュー(結合部材)のねじ部の複数箇所を同時にかしめるようにしたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−82675号公報
【特許文献2】特許第4152791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のかしめ装置では、小径の雌ネジ部材のネジ山の2箇所を一度にかしめるためには、一対のポンチの先端側が互いに近づくように配置しなければならず、一対のポンチの頭部に当接する付勢ヘッドの付勢面が正確な円弧状に形成されていないと、前記力を一対のポンチに均一に与えることができない。従って、かしめ箇所でかしめ量が異なるおそれがあった。そこで、複数箇所かしめるには、特許文献2のような、複数のかしめ部を設けた工具を用いることが考えられるが、小径の結合部材の端面部付近をかしめるような工具を設けることが難しい。また、次のネジ部材を設置する毎に、アームをネジ部材から遠ざかる方向へ揺動させ、その状態を手によって維持しなければネジ部材を交換することができず、複数のネジ部材へのかしめ作業を繰り返すことが煩わしかった。そこで本発明の課題は、上記問題点に鑑み、確実に小径の結合部材の端面部付近を複数箇所かしめることが可能なかしめ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ベース上に上下方向に移動するポンチを設け、そのポンチによってベース上に載置したワーク本体の取付孔に嵌め込んだ結合部材の端面部付近を複数箇所かしめてワーク本体と結合部材とを一体化するようにしたかしめ装置において、ベースには、ワーク本体を保持し、前記結合部材の軸線を中心に旋回するように構成した旋回部と、その旋回部を跨ぐように門型に形成された支持部が夫々設置され、その支持部
に設けたガイド部材には前記結合部材の軸線に対して平行な軸線に沿って上下方向に移動するようにポンチを取り付けた軸部材が挿入され、その軸部材の上端側に取り付けた第2板部材とガイド部材との間にバネ部材と調整部材とを介在させ、前記旋回部によって結合部材の軸線を中心にワーク本体と共に結合部材を旋回させ、所定角度旋回させた結合部材の端面部を前記ポンチによってかしめる時に、
ハンマーによりバネ部材に当接させた状態の第2板部材をバネ部材のバネ力に抗して下方へ移動させ、その第2板部材が調整部材に当接することでポンチが移動する距離が規制されていることを
特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、
ベースには、ワーク本体を保持し、前記結合部材の軸線を中心に旋回するように構成した旋回部と、その旋回部を跨ぐように門型に形成された支持部が夫々設置され、その支持部に設けたガイド部材には前記結合部材の軸線に対して平行な軸線に沿って上下方向に移動するようにポンチを取り付けた軸部材が挿入され、その軸部材の上端側に取り付けた第2板部材とガイド部材との間にバネ部材と調整部材とを介在させ、前記旋回部によって結合部材の軸線を中心にワーク本体と共に結合部材を旋回させ、所定角度旋回させた結合部材の端面部を前記ポンチによってかしめる時に、ハンマーによりバネ部材に当接させた状態の第2板部材をバネ部材のバネ力に抗して下方へ移動させ、その第2板部材が調整部材に当接することでポンチが移動する距離が規制されていることで、結合部材の端面部付近の複数箇所を一定のかしめ量で確実にかしめることが
可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図1のIII視であって、旋回部を示す図である。
【
図5】ポンチを近傍位置に移動させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すかしめ装置1は、ワーク本体Wの取付孔Waに嵌め込んだ結合部材2の端面部付近を複数箇所(3箇所)かしめて、ワーク本体Wと結合部材2とを一体化させるもので、ベース3にワーク本体Wを保持する旋回部4と、その旋回部4を跨ぐように門型に形成された支持部5が夫々設置されている。前記旋回部4は、ベース3の中心に設けた段付き孔6に旋回可能に嵌め込まれる本体7に、ワーク本体Wを載置する保持体8がボルト9によって固着されたものである。保持体8には、ワーク本体Wの貫通孔Wbに挿入させる位置決めピン10が設けられている。また、保持体8の取付位置は、位置決めピン10によって位置決めされたワーク本体Wの取付孔Waの軸線CL1が本体7の軸線CL2と略同一となるように調整されている。よって、本体7はワーク本体Wの取付孔Waに嵌め込んだ結合部材2の軸線を中心に旋回することになる。本体7には、位置決めピン10によって位置決めされたワーク本体Wを保持体8に押し付けるようにクランプ部材11が設置されている。本実施形態のクランプ部材11は、
図4に示すように、ハンドル部11aの旋回によって、クランプ本体11bと共に、クランプ本体11bに取り付けた押付部材11cを上下方向へ移動させるものである。本体7の外周面には等間隔に複数(3個)のV字溝12が形成されている。ベース3には、前記各溝12に係合可能な位置決め部材として例示するボールプランジャ13が設置されている。よって、
図3に示すように、前記各溝12とボールプランジャ13との係合により、本体7を所定角度(本実施形態では120度)ずつ旋回移動させることができる。
【0009】
前記支持部5は、ベース3の端部に立設される複数(3本)の柱14に前記旋回部4を覆うような第1板部材15が連結されたものである。第1板部材15には、前記取付孔Waの軸線CL1(本体7の軸線CL2)に対して平行な軸線CL3の貫通孔16が設けられている。その貫通孔16を塞ぐようにガイド孔17aを設けたガイド部材17が第1板部材15に取付けられている。ガイド孔17aには下端にポンチ18を取り付けた軸部材19が挿入され、軸部材19を介してポンチ18が上下方向へ移動するようになっている。軸部材19の上端側には第2板部材20が取り付けられる。第2板部材20とガイド部材17上面との間には、バネ部材21と調整部材22とが介在されている。バネ部材21のバネ長さL1は、バネ部材21に軸部材19の第2板部材20を当接させたときに、ポンチ18が結合部材2の端面部の近傍位置Aで停止する長さにしてある。また、調整部材22の長さL2は、ポンチ18が近傍位置Aから結合部材2の端面部付近をかしめるまで移動する長さにしてある。第1板部材15には、前記第2板部材20を係合させる係合部23aを備えた落下防止部材23が立設されている。その落下防止部材23の長さL3は、軸部材19を上方へ移動させ、軸部材19の第2板部材20を係合部23aに係合させたとき、ポンチ18が第1板部材15の下面位置Bで停止する長さにしてある(
図1の状態)。
【0010】
上記のように構成したかしめ装置1を用いて、ワーク本体Wの取付孔Waに嵌め込んだ結合部材2の端面部付近を複数箇所かしめてワーク本体Wと結合部材2とを一体化させる動作を説明する。
図1に示すように、予め軸部材19を上方へ移動させた後、軸部材19を回転させ、軸部材19の第2板部材20を落下防止部材23に係合させてポンチ18を第1板部材15の下面位置Bで停止させる。その状態で、位置決めピン10によって位置決めされたワーク本体Wをクランプ部材11によって保持体8に押し付ける。その後、
図5に示すように、軸部材19を前記と逆方向に回転させて、軸部材19の第2板部材20と落下防止部材23との係合を解除し、
第2板部材20をバネ部材21に当接するまで下方へ降下させ、ポンチ18を結合部材2の端面部の近傍位置Aで停止させる。そして、図示しないハンマーにより軸部材19に衝撃力を与えると、その力により軸部材19がバネ部材21のバネ力に抗して下方へ移動して、軸部材19に取り付けたポンチ18によって結合部材2の端面部の一部がかしめられる。また、軸部材19の第2板部材20が調整部材22に当接することで、軸部材19(ポンチ18)の下方への移動する距離L4(L1−L2)が規制され、ポンチ18による結合部材2の端面部へのかしめ量が均一となる。
【0011】
結合部材2の端面部をかしめたポンチ18はバネ部材21によって上方へ押し上げられ、再びポンチ18を結合部材2の端面部の近傍位置Aで停止させる。
図5の状態で、
図3(a)から(b)となるように、本体8を旋回させ、次の溝12とボールプランジャ13との係合によって、本体8を所定角度で旋回させる。再び前記動作を繰り返し、結合部材2の端面部の複数箇所をかしめてワーク本体Wと結合部材2とを一体化させる。その後、軸部材19を上方へ移動させ、軸部材19を落下防止部材23に係合させてポンチ18を第1板部材15の下面位置Bで停止させる。
図1の状態で、クランプ部材11を緩めてワーク本体Wを保持体8から取り外し、次に一体化させるワーク本体Wと結合部材2とを保持体8に装着する。
従って、本発明のように、ワーク本体Wの取付孔Waの軸線CL1に対して平行な軸線CL3に沿って上下方向に移動するポンチ18を設け、そのポンチ18の移動する距離L4を調整部材22によって調整可能とし、ポンチ18によってかしめる結合部材2を所定角度旋回するようにしたことで、結合部材2の端面部付近の複数箇所を一定のかしめ量で確実にかしめることができる。また、ポンチ18を取り付けた軸部材19を支持部5の落下防止部材23に係合させて、ポンチ18を第1板部材15の下面位置Bで停止させるようにしたことで、保持体8に繰り返しワーク本体Wを装着することが容易にできる。
【符号の説明】
【0012】
1 かしめ装置
2 結合部材
3 ベース
4 旋回部
5 支持部
7 本体
8 保持体
12 V字溝
13 ボールプランジャ
18 ポンチ
22 調整部材
23 落下防止部材
W ワーク本体
Wa 取付孔
L4 距離
CL3 軸線