特許第5721022号(P5721022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5721022
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】回転電機の固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20150430BHJP
   H02K 5/00 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   H02K1/18 B
   H02K5/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-112546(P2014-112546)
(22)【出願日】2014年5月30日
【審査請求日】2014年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147315
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧本 十良三
(74)【代理人】
【識別番号】100119699
【弁理士】
【氏名又は名称】塩澤 克利
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸本 勝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌剛
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 信一郎
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−070450(JP,A)
【文献】 特開昭63−224648(JP,A)
【文献】 特開平02−303339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に積層した積層鋼板を、当該積層鋼板の外周面の周方向に複数配置され、軸方向の全長に延設した複数の固定板で固定してなる固定子鉄心と、
周方向に配置され、軸方向に延設する複数のリブによって形成される空間内に前記固定子鉄心を嵌合し、前記複数のリブを介して前記固定子鉄心を保持する固定子枠と、を備えた回転電機の固定子において、
前記固定板は、前記固定子鉄心の外周面上の少なくとも4か所で、軸心を基準とした対称位置に、外方向に突出して設けると共に、
前記リブは、前記固定板の内の少なくとも4か所の固定板に近接し、前記固定子鉄心が正逆回転しようとしたときに、当該回転方向に対し、軸心を基準とした対称位置の少なくとも2か所の固定板と、その側面が軸方向の全長にわたって当接するように設け、
軸心を基準とした対称位置で、その側面が軸方向の全長にわたって当接する固定板とリブとにより前記固定子鉄心の回り止めを行うことを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
前記リブは前記各固定板の両側に近接して設けられたことを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子。
【請求項3】
前記固定板は前記各リブの両側に近接して設けられたことを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子。











【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数のリブを介して固定子鉄心を固定子枠に保持する回転電機の固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に回転電機においては、運転時に回転子の回転トルクに対して、固定子鉄心に反力として、回転子の回転方向とは逆の力が発生し、特に突発短絡故障時等には、正逆両方の力が瞬発的に発生し、それに伴い固定子鉄心は正逆両方に回転しようとする。
【0003】
そこで、固定子鉄心の回転を止めるために固定子枠と固定子鉄心を打込み鋲にて固定する方法、固定子枠に凹部、固定子鉄心に凸部をそれぞれ設けて、凹凸の係合により回り止めする方法など種々の対策が講じられている。
【0004】
例えば、下記先行技術文献に開示された回転電機は、図6に示すように、固定子枠21に、軸方向に延びる複数の軸方向リブ29c、29e、29f、29g、29hが固定子鉄心28の軸心Cを通る水平面Xより下面に配設されるとともに、積層鋼板を積層した固定子鉄心28の外周をかしめ固定する固定子鉄心固定板50dの軸方向2か所に突部51a、51b(不図示)が、また固定子鉄心固定板50eの軸方向2か所に突部52a、52b(不図示)が溶接されている。
【0005】
そして、固定子鉄心28を固定子枠21の内部に組み込んだ時、すなわち軸方向リブ29c、29e、29f、29g、29hで固定子鉄心28の外周面を保持した時に、突部51a、51bが軸方向リブ29cの上面近傍に位置し、また、突部52a、52bが軸方向リブ29eの上面近傍に位置するように構成され、当該構成によって固定子鉄心28の正逆両方向の回り止めを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−98550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来例では、固定子鉄心28の外周をかしめ固定する固定子鉄心固定板50d、50e上に、それぞれ軸方向に2か所突部51a、51bと52a、52bを設けるために、それぞれの突部を溶接する等の加工の手間が発生する問題がある。
【0008】
また、固定子鉄心28の回転方向によって固定子鉄心固定板50dの突部51a、51bと軸方向リブ29cとが、あるいは固定子鉄心固定板50eの突部52a、52bと軸方向リブ29eとが当接する1方向1か所の回り止め構成であるので、短絡故障等によって瞬発的に過大な正逆回転トルクが固定子鉄心28にかかった場合、その当接部を支点に固定子鉄心28の軸心が移動したり、あるいは、固定子鉄心固定板50d、50eにそれぞれ設けた2か所の突部51a、51bと52a、52bと、固定子枠21に設けた軸方向リブ29c、29eとの2点の当接によって回り止め機能を持たせているため、当該当接部分にのみ集中応力がかかり、固定子鉄心固定板50d、50eや軸方向リブ29c、29eが変形して、場合によっては固定子鉄心28自体に変形を起こす問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、突発短絡故障等によって瞬発的に過大な正逆回転トルクが固定子鉄心にかかった場合でも、固定子鉄心の軸心移動や変形を確実に回避することができ、かつ簡単な加工により回転電機固定子の回り止め構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の実施形態に係る回転電機の固定子では、軸方向に積層した積層鋼板を、当該積層鋼板の外周面の周方向に複数配置され、軸方向の全長に延設した複数の固定板で固定してなる固定子鉄心と、周方向に配置され、軸方向に延設する複数のリブによって形成される空間内に前記固定子鉄心を嵌合し、前記複数のリブを介して前記固定子鉄心を保持する固定子枠と、を備えた回転電機の固定子において、前記固定板は、前記固定子鉄心の外周面上の少なくとも4か所で、軸心を基準とした対称位置に、外方向に突出して設けると共に、前記リブは、前記固定板の内の少なくとも4か所の固定板に近接し、前記固定子鉄心が正逆回転しようとしたときに、当該回転方向に対し、軸心を基準とした対称位置の少なくとも2か所の固定板と、その側面が軸方向の全長にわたって当接するように設け、軸心を基準とした対称位置で、その側面が軸方向の全長にわたって当接する固定板とリブとにより前記固定子鉄心の回り止めを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以下に述べる本発明の実施形態によれば、突発短絡故障等によって瞬発的に過大な正逆の回転トルクが固定子鉄心にかかった場合でも、固定子鉄心の軸心移動や変形を確実に回避することができ、かつ簡単な加工により回転電機固定子の回り止め構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る回転電機の固定子の正面図。
図2】本発明の実施形態に係る回転電機の固定子の斜視図。
図3】本発明の実施形態に係る固定子鉄心の斜視図。
図4】本発明の変形例1に係る回転電機の固定子の正面図。
図5】本発明の変形例2に係る回転電機の固定子の正面図。
図6】従来例に係る回転電機の固定子の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る回転電機の固定子について、図1図3を用いて説明する。
【0014】
図1図2に示すように、本発明の回転電機の固定子は、固定子鉄心1と固定子枠3とからなっている。
固定子鉄心1は、図3に示すように、円盤状の薄板鋼板を軸方向に積層してなり、その積層した積層鋼板5の外周面の周方向に複数配置され、軸方向に延設し外周面より外方向に突出した板状の複数の固定板2で溶接等で一体に固定されている。
【0015】
固定子鉄心1の内部には図示しない回転子が配置される円筒状の空間6が形成されている。
固定板2の取付位置は、軸心を基準とした対象位置で、図示の例では軸心を通る中心線A、Bを基準に上下、左右対称の少なくとも4か所の位置に取り付けている。
【0016】
固定子枠3は、内部に筒状の空間が形成されており、該空間内に、周方向に複数配置され、軸方向に延設したリブ4が複数取り付けられている。そして、その複数のリブ4によって形成される空間6内に固定子鉄心1が嵌合され、固定子鉄心1がリブ4を介して固定子枠3に固定されるように構成されている。
【0017】
複数のリブ4の取付位置は、固定子鉄心1がリブ4によって形成された空間6内に嵌合された時に、固定子鉄心1の外周面に複数取り付けた固定板2の内の少なくとも4か所の固定板2に近接し、固定子鉄心1が正逆回転しようとしたときに、その回転方向に対し、軸心を基準とした対称位置の少なくとも2か所の固定板2と、その側面が軸方向の全長にわたって当接する位置に取り付けている。図示の例では、軸心を通る中心線A、Bを基準に上下、左右対称の少なくとも4か所の位置で、上側、下側のリブ4は、上側、下側の固定板2のそれぞれ内方位置、すなわち中心線B側に設けている。
【0018】
リブ4の軸方向長さは固定子枠3の形状、構造等により決められるが、本実施形態では固定子鉄心1の軸方向長さより長くしてある。また、固定板2およびリブ4の径方向の高さは、両者の側面が当接する高さを有することが必要であるが、通常、リブ4の高さを固定板2より高くしてある。
【0019】
以上、本実施形態に係る回転電機の固定子によれば、回転電機の運転時、突発短絡故障等によって固定子鉄心1に正逆回転トルクがかかり固定子鉄心1が回転しようとした場合、軸心を基準とした対象位置の少なくとも2か所、具体的には、対面関係にある2か所の固定板2とリブ4の当接面において、大きさが同じでその回転を止める逆方向の偶力が働くので、従来のような固定子鉄心1の軸心位置を移動させたり、変形やひずみを生じさせたりするような力が発生しない。また、固定板2とリブ4の側面同士が固定子鉄心1のほぼ全長にわたり当接するので、部分的な応力集中が生じず、固定板2やリブ4に変形や破損が生じることを確実に防止して固定子鉄心1の回転を止めることができる。
【0020】
また、固定板2は、鋼板を積層した積層鋼板5の固定機能と、リブ4との当接による固定子鉄心1の回り止めの機能の両方を兼用しているため、回り止め用の特別の突起を改めて設ける必要がない。
【0021】
(変形例1)
本変形例が上記実施形態と異なるのは、図4に示すようにリブ4を、固定板2を挟むように一対(2か所)に設けた点である。
【0022】
本変形例では、上記実施形態による効果に加えて、リブ4の本数が増えるので、回り止めの強度を向上することができる。
【0023】
また、固定子鉄心1を固定子枠3に軸方向から挿入する際、固定板2を2か所のリブ4の間に沿って挿入することができるので、リブ4、4をガイド部材として利用することができる。
【0024】
(変形例2)
本変形例が上記実施形態と異なるのは、図5に示すようにリブ4の両側に、固定板2を、リブ4を挟むように一対(2か所)に設けた点である。
【0025】
本変形例では、上記実施形態による効果に加えて、固定板2の本数が増えるので、回り止めの強度および積層鋼板5の固定強度を向上することができる。
【0026】
また、固定子鉄心1を固定子枠3に軸方向から挿入する際、2か所の固定板2をリブ4に沿って挿入することができるので、固定板2、2をガイド部材として利用することができる。
【0027】
以上、本発明のいくつかの実施形態、変形例を説明したが、これらの実施形態等は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態等は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態等は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1…固定子鉄心、2…固定板、3…固定子枠、4…リブ、5…積層鋼板、6…空間。
【要約】      (修正有)
【課題】瞬発的に過大な正逆回転トルクが固定子鉄心にかかった場合でも、固定子鉄心の軸心移動や変形を確実に回避することができ、かつ簡単な加工により回転電機固定子の回り止め構造を提供する。
【解決手段】軸方向に積層した積層鋼板を、当該積層鋼板の外周面の周方向に複数配置され、軸方向の全長に延設した複数の固定板2で固定してなる固定子鉄心1と、周方向に配置され、軸方向に延設する複数のリブ4によって形成される空間6内に前記固定子鉄心を嵌合し、前記複数のリブを介して前記固定子鉄心を保持する固定子枠3と、を備えた回転電機の固定子において、前記固定板は、前記固定子鉄心の外周面上の少なくとも4か所で、軸心を基準とした対称位置に、外方向に突出して設けると共に、前記リブは、前記固定子鉄心が正逆回転しようとしたときに、少なくとも2か所の固定板と、その側面が軸方向の全長にわたって当接するように設ける。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6