(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5721038
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A62B 18/02 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
A62B18/02 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-133247(P2013-133247)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-6269(P2015-6269A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2013年6月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503186283
【氏名又は名称】小中 富雄
(74)【代理人】
【識別番号】100137372
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 徳子
(72)【発明者】
【氏名】小中 富雄
【審査官】
山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−217936(JP,A)
【文献】
特開2000−312724(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3098811(JP,U)
【文献】
特開2011−224094(JP,A)
【文献】
特開2004−344387(JP,A)
【文献】
実開昭62−155864(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有し、口及び鼻を覆うマスク本体と、
マスク本体の両端部に設けられ、当該マスク本体を顔に保持するための一対の耳掛け部と、捕集部材を有するマスクにおいて、
耳掛け部(5)の一方端縁(5a)をマスク本体(2)に固着すると共に、他方端(5c)は、マスク本体(2)に設けた保持部材(6)により任意位置でマスク本体(2)に固定可能に設け、さらに他方端縁(5b)に面状ファスナ(7)を取り付けたこと、
ガーゼ或いは不織布をドーナツ状に形成し、一乃至三段いずれかに重ね設けた捕集部材(3)の一方開口部をガーゼ或いは不織布(9)で密封し、
当該捕集部材(3)で口を覆うと共に、上部外周面(3a)を鼻孔に当接させ、
捕集部材(3)に外鼻を覆う形状の布体(4)を設けたことを特徴とするマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は花粉やウィルスを捕集するためのマスクに関し、より詳しくは、装着感の心地よさと捕集効率の両立を可能とするマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスクは、風邪をひいたときやその予防、或いはホコリの吸引防止等のために従来から広く使用されている。さらに、マスクは花粉が飛来する春先にあっては花粉症の緩和に使用される。一般的なマスクは、鼻及び口を覆うマスク本体と、このマスク本体を保持するための耳掛け用のゴムを備えた構造である。昨今、平面形状でガーゼを使用した従来タイプのマスクの他、不織布を使用したものや、密着性を高くするために立体形状となっているもの、また、静電フィルター等の特殊なフィルターを使用したものなどが汎用化されている。
【0003】
マスク内にマスク本体とは別個の材料を装備させることで、効能を高めることを目指す発明として、以下に示すようなものがある。特許文献1には、人の鼻全体を包囲する外形の本体カバーと、この本体カバーの周縁部に配置され、人の鼻の外周部に吸着する吸着部材と、本体カバーの鼻孔付近に配置され、花粉等を含む微粒子の透過を阻止する微細孔を多数有するフィルターとを備え、通常のマスクと併用可能な鼻炎パッドが開示されている。特許文献2には、鼻孔周りを覆う大きさの略長方形の脱脂綿を、ガーゼで袋状に覆ったマスク補助具が開示されている。特許文献3にはマスクの本体内に保水具を設置したマスクが開示されており、特許文献4には、マスク本体内に、鼻孔を塞ぐフィルターを装備したマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−115314号公報
【特許文献2】特開2004−344387号公報
【特許文献3】特開平11−253567号公報
【特許文献4】登録実用新案公報第3110781号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスクによる花粉の捕集率は、ガーゼや不織布といった素材やフィルターの種類の違いにかかわらず、一般的に高いことが知られている。他方で花粉より極めて小さな粒子の捕集率は、特殊なフィルターを組み合わせた不織布マスクが高く、不織布やガーゼの単一素材のものは低いことが立証されている。但し、マスク自体の捕集率が高くても、装着時にマスクと顔の間に隙間ができると、捕集率は20パーセント程度低下するとのデータもある。係る事態を避け、捕集率を高めるために耳掛け用のゴムを用いてマスク本体を強く顔にあてがうと捕集率は高くなるが、耳掛けゴムが皮膚に食い込んだり、その他、装着時の不快感が高まってしまう。そこで、本発明は着用者自身がマスク本体を心地良い状態で装着可能に調整可能であり、しかも花粉やウィルス等の捕集効率が高いマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の構成は次の通りである。
【0007】
本願発明は、通気性を有し、口及び鼻を覆うマスク本体と、マスク本体の両端部に設けられ、当該マスク本体を顔に保持するための一対の耳掛け部と、捕集部材を有するマスクにおいて、耳掛け部の一方端縁をマスク本体に固着すると共に、他方端は、マスク本体に設けた保持部材により任意位置でマスク本体に固定可能に設け、さらに他方端縁に面状ファスナを取り付け構成する。更に、ガーゼ或いは不織布をドーナツ状に形成したものを一乃至三段いずれかに重ね設けると共に、一方開口部をガーゼ或いは不織布で密封することで捕集部材を設けると共に、捕集部材の両端付近に面状ファスナを設け、当該捕集部材で口を覆うと共に、その上部外周面を鼻孔に当接させ、さらに当該捕集部材に外鼻を覆う形状の布体を設けて構成するのである。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成される本願発明が、如何に作用して課題を解決するかを図面を参照しながら概説する。
【0009】
図1に示すように、請求項1記載のマスク1は、ドーナツ状に形成し、且つ、一乃至三段いずれかに重ねた捕集部材3を、マスク本体2内部に装備して成るものである。
図1においては二段に重ねてある。
【0010】
図2はマスク1の使用状態を示す説明図である。前記捕集部材3の上部外周面3aが着用者10の鼻孔12aに当接し、しかも捕集部材3に取り付けられた布体4が外鼻を覆うことから、捕集効率が極めて高くなるものである。しかも、マスク1においては、捕集部材3がドーナツ形状に形成されていることから、捕集部材3が着用者10の口の周り全体を覆い、しかも捕集部材3の一方開口部はガーゼや不織布等(9)で密封されていることから口が完全に捕集部材3で覆われることになり、極めて捕集効率が高まるものである。すなわち、鼻孔及び口からの異物侵入を極めて抑制することが可能となるのである。
【0011】
また、着用者の口の前方に空間が形成されるため、呼吸のしやすさも確保できるものである。更には、口紅のマスクへの付着を防ぐことも可能となる。
【0012】
また、マスク本体2の両端部に設けられた一対の耳掛け部5は、その一端縁5bが保持部材6により任意位置で固定可能であり、
図1におけるマスク本体2に固定されている部位5aから、保持部材6により支持固定される位置5cまでの長さを、任意に調整可能である。つまり、耳掛け部5の長さを着用者が調整可能であり、装着時にマスクと顔の間に隙間ができず、しかも耳掛け部5がきつく皮膚に当接することがない位置を着用者自身が
設定可能となるのである。これにより、捕集効率を保ったまま、装着時の不快感を低減することが可能となるのである。
【0013】
また、耳掛け部5の長さを調節可能であることから、着用者の様々な顔面形状やサイズに対応可能である。
【0014】
本発明においては捕集部材3に設けられた面状ファスナ8と、耳掛け部5の端縁5bに設けられた面状ファスナ7とが接合することで、捕集部材3はマスク1に装備されるものである。つまりは、捕集部材3は容易に取り替え可能であり、使い捨てが可能となり衛生面でも優れたものになる。又、マスク全体を取り替えなくとも、捕集部材3のみ取り替えれば済むことから、安価に提供可能となる。又、着用者が一旦捕集部材3の装備位置を決めれば、装着毎の位置決めは不要であり、一般的なマスクと変わらない装着容易性が得られるものである。
【0015】
捕集部材3の位置決めは着用者自身が行えることから、フィット感に優れた、つまりは捕集効率の高いマスクの提供が可能となる。
【0016】
更には、マスク本体2のみの洗濯・洗浄が可能であり、衛生面で優れたマスクの提供が可能となる。
【0017】
本願発明によれば、マスク本体2内に装備される捕集部材3が、装着時に外部より視認できないため、外見上は一般的なマスクと何ら変わらず、外観上の違和感を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】a 捕集部材の正面側斜視図 b 同、背面側斜視図 c 同、A-A線端面図
【
図4】a 捕集部材の正面側斜視図 b 同、B-B線端面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、好ましい発明の一実施形態につき、図面を参照しながら概説する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0020】
図1は請求項1記載に係るマスク1を示す説明図である。マスク1は
図2に示すように着用時において少なくとも着用者10の口唇11や鼻12を覆うマスク本体2と、マスク本体2の両側部から延びて着用者10の両耳に掛けられる一対の耳掛け部5と、耳掛け部5により支持される捕集部材3と、捕集部材3に取付けられ、外鼻を覆う形状に形成された布体4より成るものである。
【0021】
マスク本体2は、ガーゼマスク、不織布マスク、プラスチック防塵マスクなど、既存の素材をそのまま用いることができる。また、プリーツを設けても構わない。
【0022】
マスク本体2の両端上部には、耳掛け部5を支持固定するための保持部材6が設けられている。保持部材6は細長い形状の布体の下部をマスク本体2に縫着等の方法で固定した
ものであり、雌型ホック6aと雄型ホック6bを装備するものである。この雄型ホック6bを雌型ホック6aに嵌めこむことで、耳掛け部5を挟持し、もって耳掛け部5を支持固定するものである。なお、雌型ホック6aと雄型ホック6bによらずとも、耳掛け部5を挟持可能なものであれば、面状ファスナやボタン等でも、代用可能なものである。
【0023】
マスク本体2の両端に一対設けられる耳掛け部5は、その一方端縁5aはマスク本体2に固着されている。他方端縁5bはマスク本体2に固定されておらず、面状ファスナ7が設けられている。この面状ファスナ7は後述の捕集部材3に設けられた面状ファスナ8と接合することで、捕集部材3を支持するためのものである。
【0024】
捕集部材3は
図3に示すようにガーゼや不織布をロール状に巻回したものを更に横長のドーナツ状に形成し、二段に重ねて形成したものである。その両端部には面状ファスナ8が設けられている。二段に重ねられたドーナツ形状部材の一方の開放面は
図3bや
図3cに示されるように、ガーゼや不織布等から成る布9で封鎖されている。
【0025】
なお、捕集部材3は
図3に示すように二段に重ねたもののほか、
図4に示すように一段に重ねて形成しても良いし、図示していないが三段に重ねて形成しても良い。捕集部材3には布体4が縫着その他の方法により固定されている。布体4は
図5に示すように一面が開放された略四角錐状の部材であり、その縁部には図示されないワイヤーが通されることで形状が保持されている。
【符号の説明】
【0026】
1、マスク
2、マスク本体
3、捕集部材 3a、捕集部材上部外周面
4、布体
5、耳掛け部
6、保持部材 6a、雌型ホック 6b、雄型ホック
7、面状ファスナ(耳掛け部)
8、面状ファスナ(捕集部材)
9、布